(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の基礎となった知見)
本発明者は、例えば
図2に示すような画素回路において、画素回路に供給される低電圧側の電源(
図2のVEL)が0Vでも負の電圧でもなく正の電圧(例えば2、3V程度)とすべきであることを見出した。
【0013】
まず、この点についての発明者の知見および背景について
図2の画素回路の例を用いて説明する。
【0014】
図2は、有機EL表示装置に用いられる画素回路の構成例を示す回路図である。
【0015】
図2の画素回路60は、発光素子66、駆動トランジスタ61、容量素子67、スイッチトランジスタ62を基本的な構成要素として備えている。
【0016】
発光素子66は、例えば有機EL発光素子であり、供給される電流量に応じた明るさで発光する。
【0017】
駆動トランジスタ61は、第1電源線69の電圧VTFTがスイッチトランジスタ65を介して供給され、ゲート−ソース間の電圧に応じた電流を発光素子66に供給する。
【0018】
保持容量素子は、駆動トランジスタ61のゲート−ソース間に明るさを表す電圧(つまり輝度電圧)を印加する。
【0019】
スイッチトランジスタ62は、Data線76から容量素子67に輝度電圧を書き込むためのスイッチである。
【0020】
さらに、画素回路60は、スイッチトランジスタ63、64、65を、付加的な構成要素として備えている。付加的な構成要素というのは、スイッチトランジスタ63、64、65を備えることにより、画素回路間における駆動トランジスタ61のしきい値電圧のばらつきを補償する動作を可能にするためである。駆動トランジスタ61は、TFT(Thin Film Transistor)が一般的である。そのしきい値電圧Vtは、個々の使用率により経時変化によってシフトすることがわかっている。スイッチトランジスタ63、64、65は、しきい値補償動作を可能にする構成要素として備えられている。
【0021】
次に、しきい値補償動作について簡単に説明する。しきい値補償動作とは、スイッチトランジスタ62によって保持容量素子67に輝度電圧を書き込む直前に、保持容量素子67に、駆動トランジスタ61の実際のしきい値とほぼ同等の電圧を保持させる動作をいう。このしきい値補償動作の直後に、スイッチトランジスタ62によって保持容量素子67に輝度電圧を導通すると、保持容量素子67は、(駆動トランジスタ61の実際のしきい値電圧)+(輝度電圧)にほぼ等しい電圧を保持することになる。これにより、例えば、輝度電圧が0Vであれば当該画素回路60が黒画素になる(つまり発光素子66が発光しない)ので、しきい値電圧のばらつきの影響を抑制できる。こうして、画素回路間におけるしきい値のばらつきに起因する画質劣化を抑制することができる。
【0022】
次に、このような画素回路において低電圧側の電源(
図2のVEL)について説明する。
【0023】
画素回路60において電源VELがもし0Vであれば、次の不具合が発生し得る。すなわち、駆動トランジスタ61がnチャネル型であって、画素回路間におけるしきい値電圧Vtのばらつきが大きい場合(例えば、しきい値電圧Vtが1.5V〜5V程度にばらつく場合)には、(1)上述したしきい値補償動作が不完全になることがある。その結果、(2)輝度電圧として非発光の黒色を表す0Vを容量素子67に書き込んだのに、少し光ってしまう。(3)容量素子67に保持される電圧の有効範囲が狭くなってしまう。これらの不具合が発生し得る。
【0024】
発明者は、画素回路60の電源電圧VELを0Vでもなく負の電圧でもなく正の電圧(例えば2、3V)に設定することにより、これらの不具合を解消し得ることを見出した。
【0025】
したがって、画素回路60に電源を供給する電源装置は、電源VTFT(例えば、20数V)、電源VEL(例えば、2、3V)の2種類の電源電圧を生成する必要がある。
【0026】
上述したように従来技術において、入力電圧に対して並列接続された2つの電源回路は、一方の電源回路において、出力電圧が入力電圧に対し数十分の一の場合には、超短パルス動作によるスイッチング損失が発生し、電源効率の向上が困難であるという問題がある。また、電源回路がトランスを備える場合には重量が増大しかつ大型化するので、表示装置の薄型化および軽量化を困難にするという問題がある。
【0027】
加えて、入力電圧に対して並列接続された2つの電源回路の一方の電源回路が2、3V程度の低電圧の電源電圧を生成する場合には、スイッチング電源を用いたとしても、スイッチング動作におけるオン期間のデューティ比が小さくなってしまう。例えば、入力電圧が30V程度の場合、出力電圧を2、3Vに設定すれば、上記のデューティ比が極端に小さくなってしまい、出力電圧の安定化が困難であるという問題もある。
【0028】
本開示は、電源効率を向上しかつ薄型化および軽量化に適した電源装置を有する表示装置を提供することを目的とする。
【0029】
(実施の形態)
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0030】
なお、発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0031】
以下、
図1〜
図4A、
図4Bを用いて実施の形態における表示装置について説明する。
【0032】
[1.表示装置の構成]
図1は、実施の形態における表示装置の構成例を示すブロック図である。
図2は、実施の形態における画素回路の構成例を示す回路図である。
【0033】
図1の表示装置1は、有機ELディスプレイ装置の例であって、制御部2、走査線駆動回路3、電源部4、データ線駆動回路5、表示パネル6を備える。
【0034】
表示パネル6は、例えば有機EL表示パネルであって、行列状に配置された複数の画素回路を有している。複数の画素回路のそれぞれは、第1電圧VTFTと、前記第1電圧VTFTより低い正の第2電圧VELとにより駆動され、データ線駆動回路5から供給される輝度電圧に応じた発光量で発光する機能を有する。
【0035】
ここで
図2の画素回路の構成例について詳細に説明する。
【0036】
[1−1.画素回路の構成]
図2の画素回路60は、駆動トランジスタ61と、スイッチトランジスタ62〜65と、発光素子66と、容量素子67とを備えている。また、Data線76は、データ線駆動回路5から輝度電圧を供給するためのデータ線である。基準電圧電源線68は、電源部4から基準電圧VREFを供給するための電源線である。基準電圧VREFは、初期化期間に容量素子67の第1電極の電位として設定される。初期化期間については後述する。第1電源線69は、電源部4から第1電圧VTFTを供給するための電源線である。第2電源線70は、電源部4から第2電圧VELを供給するための電源線である。初期化電源線71は初期化電圧VINIを供給するための電源線である。初期化電圧VINIは、初期化期間に容量素子67の第2電極に設定される。
【0037】
発光素子66は、例えば有機EL素子であり、駆動トランジスタ61から供給される電流の量に応じた発光量で発光する。発光素子66のカソードは、第2電源線70に接続され、アノードは、駆動トランジスタ61のソースに接続されている。ここで、第2電源線70に供給されている電圧はVELであり、例えば2〜3Vである。
【0038】
駆動トランジスタ61は、発光素子66への電流の供給量を制御する電圧駆動の駆動素子であり、発光素子66に電流を駆動することで発光素子66を発光させる。具体的には、駆動トランジスタ61は、ゲートが容量素子67の第1電極に接続され、ソースが容量素子67の第2電極および発光素子66のアノードに接続されている。
【0039】
駆動トランジスタ61は、スイッチトランジスタ63がオフ状態にされて基準電圧電源線68と容量素子67の第1電極とが非導通で、かつ、スイッチトランジスタ65がオン状態にされて第1電源線69とドレイン電極と導通した場合に、輝度電圧に応じた電流である駆動電流を発光素子66に流すことにより、発光素子66を発光させる。ここで、第1電源線69に供給されている電圧はVTFTであり、例えば20Vである。これにより、駆動トランジスタ61は、ゲート−ソース間に印加された輝度電圧に対応した電流に変換し、変換された電流を発光素子66に供給する。
【0040】
さらに、駆動トランジスタ61のしきい値電圧は、経時的なしきい値電圧シフトによって画素回路毎にばらつくことがある。このばらつきによる影響は、しきい値電圧補償動作によって抑制することができる。このしきい値補償動作およびしきい値設定動作を、簡単に説明すると、画素回路のそれぞれにおける容量素子67に、対応する駆動トランジスタ61のしきい値電圧に相当する電圧を設定する動作である。この動作の詳細については後述する。
【0041】
容量素子67は、駆動トランジスタ61の流す電流量を決める輝度電圧を保持する。具体的には、容量素子67の第2電極(節点B側の電極)は、駆動トランジスタ61のソースおよび発光素子66のアノードに接続されている。また、容量素子67の第2電極は、スイッチトランジスタ64を介して初期化電源線71に接続されている。容量素子67の第1電極(節点A側の電極)は、駆動トランジスタ61のゲートに接続されている。また、容量素子67の第1電極は、基準電圧電源線68(VREF)とスイッチトランジスタ63を介して接続されている。
【0042】
スイッチトランジスタ62は、輝度電圧を供給するためのData線76と容量素子67の第1電極との導通および非導通を切り換える。具体的には、スイッチトランジスタ62は、ドレインおよびソースの一方の端子がData線76に接続され、ドレインおよびソースの他方の端子が容量素子67の第1電極に接続され、ゲートがScan線72に接続されているスイッチングトランジスタである。換言すると、スイッチトランジスタ62は、Data線76を介して供給された映像信号電圧(映像信号)に応じた輝度電圧を容量素子67に書き込むための機能を有する。
【0043】
スイッチトランジスタ63は、基準電圧VREFを供給する基準電圧電源線68と容量素子67の第1電極との導通および非導通を切り換える。具体的には、スイッチトランジスタ63は、ドレインおよびソースの一方の端子が基準電圧電源線68に接続され、ドレインおよびソースの他方の端子が容量素子67の第1電極に接続され、ゲートがRef線73に接続されているスイッチングトランジスタである。換言すると、スイッチトランジスタ63は、容量素子67の第1電極に対して基準電圧VREFを与える機能を有する。
【0044】
スイッチトランジスタ64は、容量素子67の第2電極と初期化電源線71との導通および非導通を切り換える。具体的には、スイッチトランジスタ64は、ドレインおよびソースの一方の端子が初期化電源線71に接続され、ドレインおよびソースの他方の端子が容量素子67の第2電極に接続され、ゲートがInit線74に接続されているスイッチングトランジスタである。換言すると、スイッチトランジスタ64は、容量素子67の第2電極に対して初期化電圧VINIを与える機能を有する。
【0045】
スイッチトランジスタ65は、第1電源線69と駆動トランジスタ61のドレイン電極との導通および非導通を切り換える。具体的には、スイッチトランジスタ65は、ドレインおよびソースの一方の端子が第1電源線69に接続され、ドレインおよびソースの他方の端子が駆動トランジスタ61のドレイン電極に接続され、ゲートがEnable線75に接続されているスイッチングトランジスタである。
【0046】
以上のように画素回路60は構成されている。
【0047】
なお、画素回路60を構成するスイッチトランジスタ62〜65はn型TFTとして、以下では説明を行うが、それに限られない。スイッチトランジスタ62〜65は、p型TFTであってもよい。また、スイッチトランジスタ62〜65において、n型TFTとp型TFTとが混在して用いられてもよい。なお、p型TFTのゲートに接続された信号線については以下で説明する電圧レベルを逆転させればよい。
【0048】
また、基準電圧電源線68の基準電圧VREFと初期化電源線71の初期化電圧VINIとの電位差は駆動トランジスタ61の最大しきい値電圧よりも大きな電圧に設定される。
【0049】
また、基準電圧電源線68の基準電圧VREF及び初期化電源線71の初期化電圧VINIは、発光素子66に電流が流れないように、次のように設定されている。
【0050】
初期化電圧VINI<基準電圧VEL+(発光素子66の順方向電流しきい値電圧)、(基準電圧電源線68の基準電圧VREF)<第2電圧VEL+(発光素子66の順方向電流しきい値電圧)+(駆動トランジスタ61のしきい値電圧)
【0051】
ここで、第2電圧VELは、上述したように、第2電源線70の電圧である。これらの条件を満たすには、第2電圧VELが正の2、3V程度であることが望ましい。
【0052】
以上のように画素回路60は構成されている。引き続いて
図1の構成について説明する。
【0053】
図1の制御部2は、表示装置1の全体の制御を行う。具体的には、制御部2は、表示すべき映像信号に基づいて1フレーム毎の表示動作の制御を行う。
【0054】
走査線駆動回路3は、制御部2の制御に基づいて、表示パネル6の複数の画素回路に対してゲート信号を駆動および走査する。ここでいうゲート信号は、
図2の画素回路60を前提とする場合、Scan信号、Ref信号、Enable信号、Init信号の4つである。より具体的には、走査線駆動回路3は、表示すべき映像信号に含まれる垂直同期信号および水平同期信号に基づいて、Scan信号、REF信号、Enable信号、init信号を、画素回路の行単位で走査する。これらのScan信号、Ref信号、Enable信号、Init信号は、
図2に示す画素回路例では、Scan線72、Ref線73、Enable線75、Init線74に出力され、接続先のスイッチのオンおよびオフを制御するために用いられる。
【0055】
電源部4は、制御部2、走査線駆動回路3、表示パネル6の各部に電力を供給するとともに、表示パネル6に各種電圧を供給する。ここでいう各種電圧は、
図2に示す画素回路例では、第1電圧VTFT、第2電圧VEL、初期化電圧VINI、基準電圧VREFであり、それぞれ初期化電源線71、基準電圧電源線68、第1電源線69、第2電源線70を介して各画素回路60に供給される。第2電圧は、上述したように0Vではなく2〜3Vであり、電源部4により生成される。
【0056】
データ線駆動回路5は、制御部2の制御に基づいて、表示パネル6のData線76をソース信号として輝度電圧を出力する。より具体的には、データ線駆動回路5は、映像信号および水平同期信号に基づいて、各画素回路にソース信号を出力する。
【0057】
以上のように、表示装置1は構成される。
【0058】
[1−2.電源部の構成]
次に電源部4の構成について説明する。
図3は、実施の形態における電源部の回路例と、画素回路60をと示す回路図である。同図では、電源部4の回路構成のうち、主として第1電圧VTFTおよび第2電圧VELを生成する回路部分を示している。同図では、複数の画素回路60のうちの1つのみ代表として簡略化し図示している。
【0059】
図3のように電源部4は、入力キャパシタ409、VTFT電源410、VEL電源420を含む。VTFT電源410は第1電源回路、VEL電源420は第2電源回路とも呼ぶ。
【0060】
入力電圧Vinは、入力電源線401から供給される30数Vの直流電圧である。
【0061】
入力キャパシタ409は、VTFT電源410の入力端付近の入力電源線401と、接地線との間に接続され、入力電圧Vinの電圧安定化およびノイズカット用の容量素子である。
【0062】
[1−2−1.TFT電源(第1電源回路)の構成]
VTFT電源410(つまり第1電源回路)は、入力電圧Vinをチョッピングすることにより第1電源線69に第1電圧VTFTを出力する同期整流型の電源回路である。このVTFT電源410は、第1ハイサイドスイッチ411、第1ローサイドスイッチ412、第1インダクタ413、第1制御回路414、第1出力キャパシタ419を備える。
【0063】
第1ハイサイドスイッチ411および第1ローサイドスイッチ412は、入力電圧Vinが印加される入力電源線401と接地線の間に直列に接続され、それぞれ例えばパワーMOSFETである。第1ハイサイドスイッチ411および第1ローサイドスイッチ412は、第1制御回路414によって排他的にオンするように制御される。
【0064】
第1インダクタ413は、一端が第1ハイサイドスイッチ411と第1ローサイドスイッチ412との接続点に接続され、他端が第1電源線69に接続された誘導素子つまりコイルである。第1ハイサイドスイッチ411にオンであり第1ローサイドスイッチ412がオフであるときに一端から印加される入力電圧Vinによる電気エネルギーを蓄積するとともに上記の他端から第1電源線69に電気エネルギーを伝達する。また、第1インダクタ413は、第1ハイサイドスイッチ411がオフであり第1ローサイドスイッチ412がオンであるときに蓄積した電気エネルギーを上記の他端から第1電源線69に放出する。
【0065】
第1制御回路414は、第1ハイサイドスイッチ411および第1ローサイドスイッチ412のオンおよびオフを制御し、第1電源線69の第1電圧VTFTが所望の電圧になるように第1ハイサイドスイッチ411のオン期間の割合であるデューティ比を制御する。第1電圧VTFTとしての所望の電圧は、
図1の表示装置においては例えば20Vである。
【0066】
また、第1ハイサイドスイッチ411と第1ローサイドスイッチ412とが同時にオンにならないように制御する。
【0067】
第1出力キャパシタ419は、第1電源線69と接地線との間に接続され、第1インダクタ413の上記の他端から放出される電気エネルギーにより発生する電圧を平滑化、電圧安定化およびノイズカットするための容量素子である。この第1出力キャパシタ419は、VEL電源420の入力容量素子としても機能する。よって、VEL電源420に、別途入力容量素子を備える必要がなく、また第一出力キャパシタ419は、後述のVEL電源420における回生動作によりリプル電流が抑えられ、より小さいキャパシタ容量の使用が可能であり、コストを低減することができる。
【0068】
[1−2−2.VEL電源(第2電源回路)の構成]
VEL電源420には、上記の入力電圧Vinではなく、入力電圧Vinよりも低い電圧の第1電圧VTFTが入力される。
【0069】
VEL電源420(つまり第2電源回路)は、第1電圧VTFTをチョッピングすることにより第2電源線70に第2電圧VELを出力する同期整流型の電源回路である。
図3に示すようにVEL電源420は、第2ハイサイドスイッチ421、第2ローサイドスイッチ422、第2インダクタ423、第2制御回路424、第2出力キャパシタ429を備える。
【0070】
第2ハイサイドスイッチ421および第2ローサイドスイッチ422は、第1電圧VTFTが印加される入力電源線401と接地線の間に直列に接続され、それぞれ例えばパワーMOSFETである。第2ハイサイドスイッチ421および第2ローサイドスイッチ422は、第2制御回路424によって排他的にオンするように制御される。
【0071】
第2インダクタ423は、一端が第2ハイサイドスイッチ421と第2ローサイドスイッチ422との接続点に接続され、他端が第2電源線70に接続された誘導素子つまりコイルである。第2ハイサイドスイッチ421にオンであり第2ローサイドスイッチ422がオフであるときに一端から印加される第1電圧VTFTによる電気エネルギーを蓄積するとともに上記の他端から第2電源線70に電気エネルギーを伝達する。また、第2インダクタ423は、第2ハイサイドスイッチ421がオフであり第2ローサイドスイッチ422がオンであるときに蓄積した電気エネルギーを上記の他端から第2電源線70に放出する。
【0072】
第2制御回路424は、第2ハイサイドスイッチ421および第2ローサイドスイッチ422のオンおよびオフを制御し、第2電源線70の第2電圧VELが所望の電圧になるように第2ハイサイドスイッチ421のオン期間の割合であるデューティ比を制御する。第2電圧VELとしての所望の電圧は、
図1の表示装置においては例えば2Vまたは3Vである。また、第2制御回路424は、第2ハイサイドスイッチ421と第2ローサイドスイッチ422とが同時にオンにならないように制御する。
【0073】
第2出力キャパシタ429は、第2電源線70と接地線との間に接続され、第2インダクタ423の上記の他端から放出される電気エネルギーにより発生する電圧を平滑化、電圧安定化およびノイズカットするための容量素子である。
【0074】
VEL電源420は、VTFT電源410と同じ構成であるが、出力電圧の違いにより回路定数が異なっている。
【0075】
また、
図3において、画素回路60に流れる電流は接地線ではなく第2の電源線に吸い込まれる。言い換えれば、表示パネル6の複数の画素回路60において発光素子66に流れる電流は、第2電源線70に吸い込まれる。この電流の一部は、第2ハイサイドスイッチ421および第2出力キャパシタ429に電気エネルギーとして蓄積および再利用され、他の一部は、第2インダクタ423および第2ハイサイドスイッチ421を介して第1電源線69に回生電流として流れる。この再利用および回生電流は、電源効率を向上させる。
【0076】
以上のように電源部4は構成されている。
【0077】
なお、入力電圧、第1電圧、第2電圧の具体的な値は、駆動トランジスタ61であるTFTの特性(例えば駆動トランジスタ61のしきい値電圧、しきい値シフトの大きさ等)、発光素子66特性(例えば、順方向電流しきい値電圧)等に応じて定めるべきである。表示装置が有機EL表示装置である場合例えば、入力電圧、第1電圧、第2電圧はそれぞれ30V、20V、2Vでよい。よりおおまかな目安としては、入力電圧が30数V、第1電圧が15V〜25Vの範囲内の電圧、第2電圧が5V以下の正の電圧でよい。
【0078】
[2.動作]
次に、
図3に示した電源装置の動作および
図1に示した表示装置の動作について説明する。
【0079】
[2−1.VTFT電源(第1電源回路)の動作]
図4Aは、VTFT電源410のスイッチングのデューティ比と出力電圧の関係を示す説明図である。
図4Aにおいて横軸は時間軸、縦軸は電圧であり、チョッピングされた入力電圧(つまり第1インダクタ413の一端に入力されるパルス状の入力電圧)と、出力電圧である第1電圧VTFTとを模式的に図示してある。
【0080】
第1ハイサイドスイッチ411のオン時間のデューティが0であるときは、出力電圧Voutは当然0Vである。上記のデューティが小さいときは出力電圧も小さく、デューティが大きいほど出力電圧が大きくなる。
【0081】
このように、VTFT電源410のようなチョッパ制御による電源回路では、出力電圧および出力電流に応じて第1ハイサイドスイッチ411のオン時間のデューティを制御することにより、負荷が変動しても安定した出力を得られるようになっている。入力電圧Vin、出力電圧である第1電圧VTFT、デューティαには次の関係がある。
【0083】
デューティαは、第1ハイサイドスイッチ411におけるオン時間/(オン時間+オフ時間)である。入力電圧が30Vの場合、出力電圧を20Vにするには、デューティα=20/30=約0.67になる。第1制御回路414は、PWM(Pulse Width Modulation)制御の場合、このデューティで例えば3百数十kHzの周波数で第1ハイサイドスイッチ411をスイッチングする。
【0084】
[2−2.VEL電源(第2電源回路)の動作]
VEL電源420の動作については、基本的にVTFT電源410と同様であるので、異なる点を中心に説明する。VEL電源420では、入力電圧である第1電圧VTFT、出力電圧である第2電圧、デューティβには次の関係がある。
【0086】
デューティβは、第2ハイサイドスイッチ421におけるオン時間/(オン時間+オフ時間)である。入力電圧である第1電圧が20Vの場合、出力電圧を2Vにするには、デューティβ=2/20=0.1になる。第2制御回路424は、PWM制御の場合、このデューティで例えば1百数十kHzの周波数で第2ハイサイドスイッチ421をスイッチングする。
【0087】
図4Bは、
図4Bは、VTFT電源およびVEL電源の動作例を示すタイムチャートである。
図4Bの縦軸、横軸は
図4Aと同じである。同図左側は、VTFT電源410における第1インダクタ413の一端に入力されるパルス状の入力電圧と、出力電圧である第1電圧VTFTとを示す。同図右側は、VEL電源420における第2インダクタ423の一端に入力されるパルス状の入力電圧と、出力電圧である第2電圧VELとを示す。
【0088】
このように、電源部4内のVTFT電源410およびVEL電源420は、入力電圧Vinに対して並列に接続されるのではなく、VEL電源420には入力電圧Vinよりも低い電圧の第1電圧VTFTが入力される。これにより、デューティ比が極端に小さくなってしまうことを回避し、出力電圧の安定化を容易にしている。
【0089】
なお、VTFT電源410内の第1ローサイドスイッチ412は、それぞれパワーMOSFETの代わりに、アノードを接地したダイオードを用いることも可能である。しかし、ダイオードでは順方向電圧降下による損失が発生するので、電源効率向上の観点からはダイオードよりもパワーMOSFETの方が優れている。また、VEL電源420内の第2ローサイドスイッチ422については前述の回生(昇圧)動作の為、ダイオード置換は原理的に不可である。一方、第2ハイサイドスイッチ421はダイオード置換でも回生可能であるが、発光素子66に電流が流れない期間(
図5のT26、T28、T30)があると第2電圧VELの電圧を保持できない為、VEL電源420の動作としては不十分となる。結果として第2ハイサイドスイッチ421および第2ローサイドスイッチ421のダイオード化は不可である。
【0090】
[2−3.表示動作]
次に、表示パネルにおける、既に触れたしきい値電圧補償動作を含む表示動作について説明する。
【0091】
図5は、表示動作の詳細なタイミング例を示すタイムチャートである。
【0092】
同図の横軸は時間軸、縦軸は、
図2の画素回路におけるInit線74、Ref線73、Enable線75、Scan線72、Data線76の各制御信号を示す。同図は、1フレーム期間における表示動作を示している。同図では、特に、しきい値電圧保障動作によって、期間T25の終了時点で各画素回路60において、該駆動トランジスタ61のしきい値電圧に相当する電圧が容量素子67に保持された状態になる。これによりしきい値電圧のばらつきを補償している。以下具体的に説明する。
【0093】
(期間T21)
図5に示す時刻t0〜時刻t1の期間T21は、スイッチトランジスタ64のみを導通状態であり、
図2の節点Bの電位を初期化電源線71の初期化電圧VINIに設定するための期間である。
【0094】
この期間T21を設ける理由は次の通りである。
【0095】
表示装置1を構成する表示パネル6のサイズや画素回路60あたりのサイズが大きい場合に、発光素子66の容量が大きくなり、初期化電源線71の配線時定数が大きくなることで、節点Bの電圧を初期化電源線71の初期化電圧VINIにすることに時間を要する。そのため、スイッチトランジスタ64を先に導通させる期間T21を設けることにより、節点Bの電位を初期化電源線71の初期化電圧VINIにより確実に設定することができる。
【0096】
なお、基準電圧電源線68の基準電圧VREFを節点Aに印加することも同様に時間を要する。しかし、基準電圧VREFを充放電する対象は、容量素子67および基準電圧電源線68の配線時定数である。つまり、基準電圧電源線68と初期化電源線71との配線時定数がほぼ同等であるが、(発光素子66の容量)>(容量素子67の容量)であり、その容量比(発光素子66の容量)/(容量素子67の容量)が1.3〜9倍である。そのため、発光素子66を充電する(節点Bの電位に初期化電源線71の初期化電圧VINIを書き込む)方が容量素子67を充電する(節点Aの電位に基準電圧電源線68の基準電圧VREFを書き込む)よりも時間がかかる。
【0097】
また、期間T21において、スイッチトランジスタ64のみを導通させスイッチトランジスタ63の導通を遅らせる利点としては次のようなものもある。
【0098】
すなわち、期間T21において、節点Bの電位に初期化電源線71の初期化電圧VINIを書き込む期間を設けることで基準電圧電源線68の初期化電圧VINIを節点Aに書き込む負荷を軽くすることができる利点がある。つまり、期間T21を設けることで、節点Aの電圧を低い電圧に設定することができ、基準電圧電源線68は画素回路60に充電するための電流(電圧)を供給するのみでよくなる。換言すると、基準電圧電源線68の基準電圧VREFが発光素子66を充電するための電圧として用いられないため、基準電圧電源線68の負荷が軽くなるという利点がある。
【0099】
このように、先に節点Bの電位を確定させる期間T21を設ける。それにより、表示パネル6の電力消費と表示パネル6の輝度変動の影響とを小さくしつつ、期間T21以降の期間T22の総時間を短くすることができる。
【0100】
(期間T22:初期化期間)
図5に示す時刻t1〜時刻t2の期間T22は、駆動トランジスタ61のしきい値電圧補償を行うためのドレイン電流を流すのに必要な初期電圧を容量素子67に保持させ、駆動トランジスタ61のソースゲート間に印加するための初期化期間である。
【0101】
これにより、節点Aの電位が基準電圧電源線68の基準電圧VREFに設定される。このとき既に、節点Bの電位は初期化電源線71の初期化電圧VINIに設定されている。すなわち、駆動トランジスタ61のゲート、ソースには、基準電圧電源線68の基準電圧VREF、初期化電源線71の初期化電圧VINIがそれぞれ印加される。
【0102】
なお、期間T22は、節点Aおよび節点Bの電位が、安定するまでの長さ(時間)に設定される。
【0103】
また、上述したように、駆動トランジスタ61のゲート・ソース間電圧は、しきい値補償動作を行うのに必要な初期ドレイン電流を確保できる初期電圧に設定されることが必要である。つまり、初期電圧は、複数の画素回路60の容量素子67のそれぞれに駆動トランジスタ61のしきい値電圧よりも高く、かつ、発光素子66を発光させない電圧であることが必要である。そのため、基準電圧電源線68の基準電圧VREFと初期化電源線71の初期化電圧VINIの電位差は駆動トランジスタ61の最大しきい値電圧よりも大きな電圧に設定される。また、基準電圧VREF及び初期化電圧VINIは、発光素子66に電流が流れないように、初期化電圧VINI<(第2電圧VEL+発光素子66の順方向電流しきい値電圧)、および、VREF<(第2電圧VEL+発光素子66の順方向電流しきい値電圧+駆動トランジスタ61のしきい値電圧)、となるように設定される。
【0104】
これらの条件を満たすためには、第2電圧VELが0Vでなく2、3Vであることは、これらの条件を満たすことを容易にする。また、しきい値電圧補償動作によって駆動トランジスタ61のしきい値シフトの影響を抑制することができる。
【0105】
(期間T23)
図5に示す時刻t2〜時刻t3の期間T23は、スイッチトランジスタ64とスイッチトランジスタ65とが同時に導通状態とならないようにするための期間である。
【0106】
このように、Init線74の動作によりスイッチトランジスタ64を非導通とする期間T23を設けることにより、期間T23がなければスイッチトランジスタ64とスイッチトランジスタ65とが同時に導通状態となり、スイッチトランジスタ65、駆動トランジスタ61、および、スイッチトランジスタ64を介して、第1電源線69と初期化電源線71との間に貫通電流が流れてしまうのを防止することができる。
【0107】
(期間T24:しきい値補償期間)
次に、
図5の時刻t3〜時刻t4の期間T24は、複数の画素回路60における駆動トランジスタ61のしきい値電圧のばらつきを補償するしきい値設定期間である。つまり、複数の画素回路60における駆動トランジスタ61のしきい値電圧にばらつきがあっても、個々の駆動トランジスタ61のしきい値電圧に相当する電圧を対応する容量素子67に設定する期間である。
【0108】
時刻t3において、スイッチトランジスタ62およびスイッチトランジスタ64は非導通状態(オフ状態)に、かつ、スイッチトランジスタ63は導通状態(オン状態)に維持されつつ、スイッチトランジスタ65が導通状態(オン状態)にされる。この時点で、容量素子67の電圧は、初期化期間(期間T22)で上述したように初期電圧に設定されているので、発光素子66には電流が流れない。駆動トランジスタ61は、第1電源線69の第1電圧VTFTによりドレイン電流が供給され、それとともに駆動トランジスタ61のソース電位が変化する。言い換えると、駆動トランジスタ61は、第1電源線69の第1電圧VTFTにより供給されるドレイン電流が0となるまで駆動トランジスタ61のソース電位が変化する。ドレイン電流が0になった時点で、節点Aと節点Bとの電圧(つまり駆動トランジスタ61のゲート・ソース間電圧)は駆動トランジスタ61の実際のしきい値に相当する電圧となっている。この電圧は、容量素子67に保持される。
【0109】
そして、期間T24の終了時(時刻t4)には、駆動トランジスタ61の実際のしきい値に相当する電圧が容量素子67に保持される。これにより、期間T25の後に容量素子67に書き込まれる輝度を表す電圧が、しきい値電圧のばらつきにより正しい値からしきい値電圧シフト分ずれるのを抑制する。
【0110】
(期間T25)
図5に示す時刻t4〜時刻t5の期間T25は、しきい値補償動作を終了させるための期間である。
【0111】
時刻t4〜t5で、Enable線75の信号によりスイッチトランジスタ65を非導通とする期間T25を設けることにより、駆動トランジスタ61経由で、第1電源線69から節点Bへの電流の供給をなくすことができ、しきい値補償動作を確実に終了させてから次の動作を行うことができる。
【0112】
以上のように、期間T25を終えた時刻t5の時点で、複数の画素回路60内の各容量素子67は、対応する駆動トランジスタ61の実際のしきい値電圧に相当する電圧を保持している。
【0113】
上記の期間T21〜T25の動作は、表示パネル6の全行について、行毎に順に実行される。
【0114】
(期間T26)
時刻t5〜時刻t6の期間T26は、スイッチトランジスタ63を非導通状態(オフ状態)にすることで、Data線76を介して供給されたデータ信号電圧と基準電圧電源線68の基準電圧VREFとが同時に節点Aに印加されるのを防止する期間である。
【0115】
(期間T27:書込期間)
時刻t6〜時刻t7の期間T27は、Data線76から表示階調に応じた輝度電圧を画素回路60にスイッチトランジスタ62を介して取り込み、容量素子67に書き込む書込期間である。
【0116】
具体的には、時刻t6において、スイッチトランジスタ63とスイッチトランジスタ64とスイッチトランジスタ65は非導通状態(オフ状態)に維持されつつ、スイッチトランジスタ62が導通状態(オン状態)にされる。
【0117】
これにより、しきい値補償期間で記憶された駆動トランジスタ61の実際のしきい値電圧Vthに加えて輝度電圧と基準電圧電源線68の基準電圧VREFとの電圧差が、(発光素子66の容量)/(発光素子66の容量+容量素子67の容量)倍されて、容量素子67に保持される。スイッチトランジスタ65が非導通状態にあるため、駆動トランジスタ61はドレイン電流を流さない。
【0118】
このように、期間T27(書込期間)では、Data線76からの輝度電圧及び駆動トランジスタ61の実際のしきい値電圧に応じた電圧が容量素子67に保持される。
【0119】
(期間T28)
時刻t7〜時刻t8の期間T28は、スイッチトランジスタ62を確実に非導通にさせるための期間である。
【0120】
(期間T29:発光期間)
次に、時刻t8〜時刻t9の期間T29は、発光期間である。
【0121】
具体的には、時刻t8において、スイッチトランジスタ62、スイッチトランジスタ63及びスイッチトランジスタ64はオフ状態に維持されつつ、スイッチトランジスタ65オン状態にされる。スイッチトランジスタ65をオン状態にさせることで、容量素子67に蓄えられた電圧に応じて駆動トランジスタ61に発光素子66に電流を供給し発光素子66を発光させる。
【0122】
(期間T30)
刻t9〜時刻t0の期間T30は、すべてのスイッチを非導通状態として、節点Aおよび節点Bの電位を、期間T21で必要な電圧に近い電圧まで変化させるための期間である。
【0123】
以上のようなシーケンスにより、表示パネル6は表示を行う。また、期間T24におけるしきい値電圧補償動作は、既に説明したように、駆動トランジスタ61がnチャネル型であって、画素回路間におけるしきい値電圧Vtのばらつきが大きい場合(例えば、しきい値電圧Vtが1.5V〜5V程度にばらつく場合)には、有効に機能しないことがある。すなわち、(1)しきい値補償動作が不完全になることがある。その結果、(2)輝度電圧として非発光の黒色を表す0Vを容量素子67に書き込んだのに、少し光ってしまう。(3)容量素子67に保持される電圧の有効範囲が狭くなってしまう。これらの不具合が発生し得る。
【0124】
そこで、画素回路60の電源電圧VELを0Vでもなく負の電圧でもなく正の電圧(例えば2、3V)に設定することにより、これらの不具合を解消し得る。
【0125】
そのため、画素回路60に電源を供給する電源部4は、第1電圧VTFT(例えば、20数V)、0Vでない正の第2電圧VEL(例えば、2、3V)の2種類の電源電圧を生成し、複数の画素回路60に供給している。その結果、しきい値電圧補償動作によって駆動トランジスタ61のしきい値シフトの影響を抑制する機能を有効に利用することができる。
【0126】
[3.効果等]
本実施の形態における表示装置によれば、第2電圧を生成する第2電源回路であるVEL電源420が入力電圧Vinよりも低い電圧の第1電源VTFTをチョッピングするので、入力電圧Vinをチョッピングすることと比べて、スイッチング素子の遷移損失を軽減させることで、ディーティ比が極端に小さくなることによるスイッチング動作の不安定化を回避することができ、第2電圧を安定化することができる。
【0127】
また、第1電源回路であるVTFT電源410、第2電源回路であるVEL電源420は、どちらも、トランスを備えていないので、薄型化および軽量化が容易である。
【0128】
さらに、チョッピングのデューティ比に応じて出力電圧が決まるので、出力電圧の変更および出力電圧の微調整が容易である。例えば、トランス方式の電源では、出力電圧を変更するためにはトランス巻き線の変更(つまり、巻き線数や巻き線比の変更)が必要であるが、上記構成では、チョッピングのデューティの変更によって出力電圧を容易に変更および微調整をすることができる。
【0129】
また、第2電源VELは0Vではなく正の電圧なので、しきい値補償動作をより完全に機能させることができる。
【0130】
以上説明してきたように、本開示の一態様に係る表示装置は、第1電圧に維持される第1電源線と、前記第1電圧より低い正の第2電圧に維持される第2電源線とから電力供給を受ける行列状に配置された複数の画素回路と、入力電圧をチョッピングすることにより前記第1電源線に前記第1電圧を出力する同期整流型の第1電源回路と、前記第1電圧をチョッピングすることにより前記第2電源線に前記第2電圧を出力する同期整流型の第2電源回路とを備える。前記第1電源回路は、前記入力電圧が印加される入力電源線と接地線の間に直列に接続された第1ハイサイドスイッチおよび第1ローサイドスイッチと、一端が前記第1ハイサイドスイッチと前記第1ローサイドスイッチとの接続点に接続され、他端が前記第1電源線に接続された第1インダクタと、前記第1ハイサイドスイッチおよび前記第1ローサイドスイッチのオンおよびオフを制御する第1コントローラとを備える。前記第2電源回路は、前記第1電源線と前記接地線の間に直列に接続された第2ハイサイドスイッチおよび第2ローサイドスイッチと、一端が前記第2ハイサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチとの接続点に接続され、他端が前記第2電源線に接続された第2インダクタと、前記第2ハイサイドスイッチおよび前記第2ローサイドスイッチのオンおよびオフを制御する第2コントローラとを備える。
【0131】
この構成によれば、第2電圧を生成する第2電源回路が入力電圧Vinよりも低い電圧の第1電圧をチョッピングするので、入力電圧をチョッピングすることと比べて、電源効率を向上させることができ、さらに、この画素回路を流れる電流の一部は、第2電源回路を介して第1電源線69に回生電流として流れるので、電源効率をさらに向上させることができる。
【0132】
第2電源回路において、ディーティ比が極端に小さくなることを回避することができ、第2電圧を安定化することができる。
【0133】
また、第1電源回路、第2電源回路は、どちらも、トランスを備えないので、薄型化および軽量化が容易である。
【0134】
さらに、チョッピングのデューティ比に応じて出力電圧が決まるので、出力電圧の変更および出力電圧の微調整が容易である。例えば、トランス方式の電源では、出力電圧を変更するためにはトランス巻き線の変更(つまり、巻き線数や巻き線比の変更)が必要であるが、上記構成では、チョッピングのデューティの変更によって出力電圧を容易に変更および微調整をすることができる。
【0135】
ここで、前記複数の画素回路のそれぞれは、供給される電流量に応じた明るさで発光する発光素子と、前記発光素子に電流を供給する駆動トランジスタとを備え、前記駆動トランジスタおよび前記発光素子は、前記第1電源線と前記第2電源線との間に直列に接続されていてもよい。
【0136】
ここで、前記表示装置は、さらに前記入力電源線と前記接地線との間に接続された入力キャパシタと、前記第1電源線と前記接地線との間に接続された第1出力キャパシタと、前記第2電源線と前記接地線との間に接続された第2出力キャパシタとを備えていてもよい。
【0137】
この構成によれば、第1出力キャパシタは、第2電源回路の入力容量素子としても機能するので、第2電源回路は、別途入力容量素子を備える必要がなく、また第1出力キャパシタは、前述の回生動作によりリプル電流が抑えられ、より小さいキャパシタ容量の使用が可能であり、コストを低減することができる。
【0138】
ここで、前記複数の画素回路のそれぞれは、前記駆動トランジスタのゲートに接続された容量素子を備え、前記表示装置は、前記複数の画素回路の表示を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記容量素子に、当該容量素子が接続された駆動トランジスタの実際のしきい値電圧に相当する電圧を保持させるしきい値補償動作を行い、実際のしきい値電圧に相当する電圧が保持された前記容量素子に、輝度を表す電圧を上乗せする書き込み動作を行う構成としてもよい。
【0139】
この構成によれば、しきい値電圧補償動作による駆動トランジスタのしきい値シフトの影響を抑制する機能を、より有効に利用することができる。
【0140】
(変形例)
図6は、変形例における画素回路60の構成例を示す図である。表示装置1は、
図2に示した画素回路60の代わりに
図6に示す画素回路60を備える構成としてもよい。
図6の画素回路60は、
図1と比べて、スイッチトランジスタ63、スイッチトランジスタ64およびスイッチトランジスタ65が削除されている点が異なる。このように画素回路60の構成を単純化してもよい。
【0141】
以上、表示装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示における技術は、これらに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれる。
【0142】
また、上述した表示装置については、例えば
図7に示すようなフラットパネルディスプレイとして利用することができる。また、テレビ受像機、パーソナルコンピュータ、携帯電話機など、表示装置を有するあらゆる電子機器に適用することができる。