(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記構成の可変容量型斜板式ピストンポンプにおいて、第2ハウジングのストッパ部には、斜板の傾角を規制する際に、コントロールピストンの力を受けて移動してきた凸部が当接する。このため、第2ハウジングにおけるストッパ部の周辺は比較的応力が集中し易い部位であるといえる。すなわち、第1ハウジング及び第2ハウジングにおける斜板の凸部に対応する部分でのシール性が十分でないと、斜板の移動によってハウジングの応力が集中する部分の周辺が変形して、第1ハウジングと第2ハウジングとが離間してしまう虞がある。すると、ハウジング内の作動油が、第1ハウジングの開口端と第2ハウジングの開口端との間から洩れてしまうといった不具合が生じる場合がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ハウジングの応力が集中する部分におけるシール性を十分に確保できる可変容量型斜板式ピストンポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する可変容量型斜板式ピストンポンプは、ハウジングと、前記ハウジングに回転可能に支持される回転軸と、前記回転軸と一体的に回転可能なシリンダブロックと、前記ハウジング内に収容されるとともに前記回転軸の回転軸線に直交する方向に対して傾動可能な斜板と、を備え、前記斜板は、外方に延設される凸部を備え、前記ハウジングは、前記シリンダブロックを収容する筒状の第1ハウジングと、前記第1ハウジングの開口側に連結される筒状の第2ハウジングと、を有する可変容量型斜板式ピストンポンプであって、前記第1ハウジングの内周面の一部には、前記凸部が配置される凹部が形成され、前記第1ハウジングにおける前記シリンダブロックよりも前記回転軸の径方向外側には、前記凹部に連通するピストン収納室が形成され、前記第1ハウジングの外周壁の一部には、前記凹部及び前記ピストン収納室が形成されたことにより外方へ膨出するとともに前記第1ハウジングの軸方向に沿って延びる膨出部が形成されており、前記第2ハウジングの外周壁の一部には、前記膨出部に沿って外方へ膨出するとともに前記凹部の開口を閉鎖する有底状の凹部閉鎖部が形成されており、前記凹部閉鎖部の底面の一部は、前記凸部が当接可能なストッパ部になっており、前記ピストン収納室には、前記ピストン収納室に対して出没可能なコントロールピストンが収納されており、前記ピストン収納室と前記コントロールピストンとによって制御圧室が区画され、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとが複数の締結部材によって締結されており、前記複数の締結部材は、
第1締結部材及び第2締結部材を備え、前記第1締結部材及び前記第2締結部材は、その全体が前記斜板の傾動軸線に沿う方向において前記斜板の幅よりも内側で前記凹部を挟む位置であって、且つ前記膨出部及び前記凹部閉鎖部における膨出方向の先端部よりも前記回転軸寄りに配置され
ている。
【0009】
例えば、第1締結部材及び第2締結部材が、斜板の傾動軸線に沿う方向において斜板の幅よりも外側で凹部を挟む位置であって、且つ膨出部及び凹部閉鎖部における膨出方向の先端部よりも回転軸とは離れて配置されている場合を考える。この場合に比べて、第1締結部材及び第2締結部材の位置が、膨出部及び凹部閉鎖部に近づくため、第1ハウジングにおける膨出部の周辺と第2ハウジングにおける凹部閉鎖部の周辺との締結力が高まる。よって、第1ハウジング及び第2ハウジングにおける斜板の凸部に対応する部分の周辺の変形を抑制することができ、ハウジングの応力が集中する部分におけるシール性を十分に確保できる。
【0010】
上記可変容量型斜板式ピストンポンプにおいて、前記斜板の傾角の変更を許容しつつ、且つ前記斜板を保持する斜板保持部を備え、前記斜板は、前記シリンダブロックとは反対側に向けて膨出する弧状に湾曲した摺動面を有する摺動部を備え、前記斜板保持部は、前記摺動面に沿って延びるとともに前記摺動面が摺動する被摺動面を備え、前記複数の締結部材のうち、前記第1締結部材及び前記第2締結部材以外の、前記摺動部に対して前記第1締結部材及び前記第2締結部材とは反対側に配置される締結部材は、少なくともその一部が、前記斜板の幅よりも外側に配置されていることが好ましい。
【0011】
斜板保持部には、摺動部の摺動面と斜板保持部の被摺動面とが摺動するため、斜板からの応力が作用する。ここで、第1締結部材及び第2締結部材以外の、摺動部に対して第1締結部材及び第2締結部材とは反対側に配置される締結部材の全体が、斜板の幅よりも内側に配置されている場合に比べて、斜板から斜板保持部に作用する応力を締結部材により受け易くすることができる。よって、斜板保持部を介して第1ハウジング及び第2ハウジングに応力が作用して、第1ハウジング及び第2ハウジングが変形してしまうことを抑制することができる。
【0012】
上記可変容量型斜板式ピストンポンプにおいて、前記第2ハウジング内には、前記斜板に当接して、前記斜板を前記コントロールピストンに向けて付勢する斜板傾角復帰機構が設けられ、前記斜板における前記斜板傾角復帰機構との接触点は、前記コントロールピストンが前記ピストン収納室に対して最も没入した位置にあるときの前記斜板の傾角時において、前記第1ハウジング内に位置していることが好ましい。
【0013】
これによれば、コントロールピストンがピストン収納室に対して最も没入した位置にあるときの斜板の傾角時において、斜板における斜板傾角復帰機構との接触点が、第1ハウジングの開口端よりも飛び出して、第1ハウジング外に位置している場合に比べて、第1ハウジングと第2ハウジングとの組み付けを容易なものとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、ハウジングの応力が集中する部分におけるシール性を十分に確保できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、可変容量型斜板式ピストンポンプを具体化した一実施形態を
図1〜
図4にしたがって説明する。本実施形態の可変容量型斜板式ピストンポンプは、エンジン式のフォークリフトに搭載される油圧ポンプとして使用される。
【0017】
図1に示すように、可変容量型斜板式ピストンポンプ10は、ハウジング11と、ハウジング11に回転可能に支持される回転軸12とを備えている。ハウジング11は、有底筒状の第1ハウジング13と、第1ハウジング13の開口側に連結される有底筒状の第2ハウジング14とを有する。第1ハウジング13と第2ハウジング14とは、互いに開口端同士が突き合わさった状態で組み付けられている。
【0018】
第1ハウジング13の底壁13aには、回転軸12における第1ハウジング13側の部位が挿入される挿入孔13hが形成されている。そして、回転軸12における第1ハウジング13側の部位は、軸受15を介して第1ハウジング13の底壁13aに回転可能に支持されている。
【0019】
第2ハウジング14の底壁14aには、回転軸12における第2ハウジング14側の部位が挿入される挿入孔14hが形成されている。そして、回転軸12における第2ハウジング14側の部位は、軸受16を介して第2ハウジング14の底壁14aに回転可能に支持されている。
【0020】
回転軸12における第2ハウジング14側の端部は、第2ハウジング14から外部に突出している。そして、回転軸12における第2ハウジング14側の端部は、図示しない動力伝達機構を介して外部駆動源としてのエンジンに連結されている。回転軸12は、エンジンの駆動により回転する。
【0021】
第1ハウジング13内には、シリンダブロック17及び斜板18が収容されている。斜板18は、回転軸12が挿通される挿通孔18hが形成された板状の本体部31を備えている。そして、回転軸12が挿通孔18hに挿通されることにより、斜板18が回転軸12に取り付けられている。斜板18は、回転軸12の回転軸線L1に直交する方向に対して傾斜している。斜板18は、回転軸12の回転軸線L1に直交する方向に対して傾動可能になっており、回転軸12の回転軸線L1に直交する方向に対する傾斜角度(傾角)の変更が可能である。
【0022】
シリンダブロック17は円筒状であり、斜板18よりも第1ハウジング13の底壁13a寄りに配置されている。シリンダブロック17には、回転軸12が挿入される挿入孔17aが形成されている。シリンダブロック17は、円筒状の小径部171と、小径部171よりも孔径が大きい円筒状の大径部172とを有する。小径部171は、大径部172よりも第2ハウジング14寄りに位置する。そして、回転軸12の外周面と小径部171の内周面とがスプライン嵌合されることにより、回転軸12とシリンダブロック17とが一体的に回転可能になっている。小径部171と軸受15との間には付勢ばね19が介在されている。
【0023】
シリンダブロック17には、シリンダボア17hが回転軸12の周囲に複数(本実施形態では9つ)形成されている。複数のシリンダボア17hは、同心円上に等間隔置きに配列されている。各シリンダボア17h内には、ピストン20が往復動可能にそれぞれ収納されている。ピストン20における斜板18側の端部には、シュー21が設けられている。ピストン20には、ピストン20の軸方向に貫通する貫通孔20hが形成されている。シュー21には、貫通孔20hに連通するとともにシュー21を貫通する貫通孔21hが形成されている。
【0024】
各シュー21は、円環状のリテーナプレート22に保持されている。リテーナプレート22の内側には、円筒状のピボット23が設けられている。ピボット23の内側には、回転軸12が挿入されている。そして、回転軸12の外周面とピボット23の内周面とがスプライン嵌合されることにより、回転軸12とピボット23とが一体的に回転可能になっている。ピボット23は、付勢ばね19の付勢力が、図示しないピンを介して伝達されて、斜板18に向けて付勢されている。そして、斜板18に向けて付勢されたピボット23が、リテーナプレート22を斜板18に向けて押圧することで、各シュー21が斜板18におけるシリンダブロック17側の端面に密着している。
【0025】
回転軸12が回転してシリンダブロック17が回転軸12と一体的に回転すると、各シュー21が斜板18におけるシリンダブロック17側の端面を摺接しながら、各ピストン20が回転軸12の周囲を回転軸12の周方向に沿って移動する。これにより、各ピストン20は、シリンダブロック17の回転に伴って斜板18の傾角に応じたストロークでシリンダボア17h内を往復動する。
【0026】
図2(a)に示すように、斜板18は、本体部31を両側から挟む位置に一対の摺動部32を備えている。一対の摺動部32は本体部31と一体的に形成されている。一対の摺動部32は、その一部が本体部31におけるシリンダブロック17とは反対側の端面よりも突出し、シリンダブロック17とは反対側に向けて膨出する弧状に湾曲した摺動面32aを有する。
【0027】
図1に示すように、第2ハウジング14の内壁には、斜板18の傾角の変更を許容しつつ、且つ斜板18を保持する斜板保持部としてのブッシュ25が二つ設けられている。各ブッシュ25は弧状に湾曲した板状であり、摺動面32aに沿って延びるとともに摺動面32aが摺動する被摺動面25aを備えている。そして、一対の摺動部32の摺動面32aが被摺動面25aを摺動することで、斜板18の傾角が変更される。よって、斜板18は、摺動面32a(被摺動面25a)上を通過する仮想円C1の中心を通過し、且つ回転軸12の回転軸線L1に垂直な傾動軸線L2周りで傾動する。
【0028】
斜板18は、本体部31におけるピストン20の上死点に対応する側の縁部から外方に延設される凸部33を備えている。凸部33は、斜板18におけるシュー21が摺接する摺接面の一部よりも径方向に突出して設けられている。凸部33におけるシリンダブロック17側の端面には収容凹部33aが形成されている。また、斜板18は、収容凹部33aに収容される円柱状の接触部材34aを備えている。接触部材34aは、収容凹部33aに収容された状態において、その一部が凸部33におけるシリンダブロック17側の端面から突出している。また、凸部33におけるシリンダブロック17とは反対側の端面には収容凹部33bが形成されている。そして、斜板18は、収容凹部33bに収容される円柱状の接触部材34bを備えている。接触部材34bは、収容凹部33bに収容された状態において、その一部が凸部33におけるシリンダブロック17とは反対側の端面から突出している。
【0029】
第1ハウジング13の底壁13aには、吸入孔26及び吐出孔27が形成されている。吸入孔26及び吐出孔27は、回転軸12の周方向に沿って延びる半円弧状に形成されている。吸入孔26は、底壁13aにおいて、吸入行程中のピストン20が収納された各シリンダボア17hにそれぞれ連通可能な位置に設けられている。吐出孔27は、底壁13aにおいて、吐出行程中のピストン20が収納された各シリンダボア17hにそれぞれ連通可能な位置に設けられている。ここで、「吸入行程中のピストン20」とは上死点側から下死点側に向けて移動しているピストン20のことを言う。また、「吐出行程中のピストン20」とは、下死点側から上死点側に向けて移動しているピストン20のことを言う。
【0030】
シリンダブロック17と第1ハウジング13の底壁13aとの間には、円環状のバルブプレート28が設けられている。バルブプレート28の内側には、回転軸12が挿入されている。バルブプレート28は、シリンダブロック17に対して回転軸12の軸方向に並んで配置されている。バルブプレート28には、吸入孔26とシリンダボア17hとを連通する円弧状の連通孔28aが回転軸12の周囲に形成されるとともに、吐出孔27とシリンダボア17hとを連通する円弧状の連通孔28bが回転軸12の周囲に複数(本実施形態では3つ)形成されている。そして、ピストン20の往復動に伴って、作動油が吸入孔26から連通孔28aを介して吸入行程中のピストン20が収納された各シリンダボア17hに吸入されるとともに、吐出行程中のピストン20が収納された各シリンダボア17h内の作動油が連通孔28bを介して吐出孔27から吐出される。吸入孔26及び連通孔28aは各シリンダボア17hに連通可能な吸入ポート29を形成しており、吐出孔27及び連通孔28bは各シリンダボア17hに連通可能な吐出ポート30を形成している。
【0031】
図2(a)に示すように、第1ハウジング13の内周面の一部には、凸部33が配置される凹部41が形成されている。斜板18は、凸部33が凹部41内に配置されることにより、回転軸12の周方向において位置決めされた状態でハウジング11内に収容されている。
【0032】
図1に示すように、第1ハウジング13におけるシリンダブロック17よりも回転軸12の径方向外側には、凹部41に連通するとともに第1ハウジング13の軸方向に沿って延びるピストン収納室35が形成されている。そして、第1ハウジング13の外周壁の一部には、凹部41及びピストン収納室35が形成されたことにより外方へ膨出するとともに第1ハウジング13の軸方向に沿って延びる膨出部42が形成されている。
【0033】
ピストン収納室35には、ピストン収納室35に対して出没可能なコントロールピストン36が収納されている。そして、ピストン収納室35とコントロールピストン36とによって制御圧室35aが区画されている。制御圧室35aには、吐出ポート30から吐出された作動油の一部が供給される。制御圧室35aに供給される作動油の供給量は、図示しない制御弁によって制御される。コントロールピストン36における斜板18側の端面は、接触部材34aに当接している。
【0034】
第2ハウジング14の外周壁の一部には、膨出部42に沿って外方へ膨出するとともに凹部41の開口を閉鎖する有底状の凹部閉鎖部43が形成されている。凹部閉鎖部43の底面の一部は、凸部33が当接可能なストッパ部43aになっている。
【0035】
第2ハウジング14の底壁14aには、斜板18に当接して、斜板18をコントロールピストン36に向けて付勢する斜板傾角復帰機構37が設けられている。斜板傾角復帰機構37は、有底筒状のバネ受け凹状部材38と、バネ受け凹状部材38内に挿入される中空ピストン39と、中空ピストン39の内部に収容される傾角増大ばね39aとを備えている。バネ受け凹状部材38は、螺子38aによって底壁14aに取り付けられている。バネ受け凹状部材38は、斜板18に向けて開口している。中空ピストン39は、傾角増大ばね39aの付勢力によって、バネ受け凹状部材38の底部から離間する方向へ付勢されている。そして、中空ピストン39における斜板18側の端面は、接触部材34bに当接している。
【0036】
上記構成の可変容量型斜板式ピストンポンプ10において、制御圧室35aに供給される作動油の供給量が増大すると、制御圧室35aの圧力が高くなり、コントロールピストン36がピストン収納室35に対して突出する方向に移動する。すると、コントロールピストン36は、傾角増大ばね39aの付勢力に抗して、斜板18の傾角を減少させるように接触部材34aを介して斜板18を押圧する。これにより、斜板18の傾角が減少して、ピストン20のストロークが小さくなり、吐出容量が減少する。斜板18の最小傾角時には、斜板18の凸部33が凹部閉鎖部43のストッパ部43aに当接することにより、斜板18の最小傾角が維持されている。
【0037】
制御圧室35aに供給される作動油の供給量が減少すると、制御圧室35aの圧力が低くなり、傾角増大ばね39aの付勢力によって、中空ピストン39が、斜板18の傾角を増大させるように接触部材34bを介して斜板18を押圧する。これにより、コントロールピストン36がピストン収納室35に対して没入する方向へ移動し、斜板18の傾角が増大して、ピストン20のストロークが大きくなり、吐出容量が増大する。斜板18の最大傾角時には、制御圧室35aに供給される作動油の供給量が最も少なく、コントロールピストン36がピストン収納室35に対して最も没入した位置にある状態が維持されることで、斜板18の最大傾角が維持されている。
【0038】
斜板18における斜板傾角復帰機構37との接触点P1は、コントロールピストン36がピストン収納室35に対して最も没入した位置にあるときの斜板18の傾角時(最大傾角時)において、第1ハウジング13内に位置している。本実施形態において、接触点P1は、中空ピストン39と接触部材34bとが接触する点である。
【0039】
図2(a)及び(b)に示すように、第1ハウジング13と第2ハウジング14とは、複数の締結部材であるボルト50によって締結されている。第1ハウジング13には、複数のボルト50のうちの二つである第1締結部材としての第1ボルト51及び第2締結部材としての第2ボルト52が螺合される第1雌ねじ孔61及び第2雌ねじ孔62が形成されている。第1雌ねじ孔61及び第2雌ねじ孔62は、斜板18の傾動軸線L2に沿う方向において斜板18の幅H1よりも内側で凹部41を挟む位置であって、且つ膨出部42及び凹部閉鎖部43における膨出方向の先端部42e,43eよりも回転軸12寄りに配置されている。
【0040】
ここで、「膨出部42及び凹部閉鎖部43における膨出方向」とは、回転軸12の回転軸線L1に対して直交し、且つ斜板18の傾動軸線L2に対しても直交する方向である。そして、「膨出部42及び凹部閉鎖部43における膨出方向の先端部42e,43e」とは、膨出部42及び凹部閉鎖部43において、回転軸12の回転軸線L1に対して直交し、且つ斜板18の傾動軸線L2に対しても直交する方向に延びる仮想直線L3上に位置する部位のことである。
【0041】
また、第1ハウジング13の開口端には、複数のボルト50のうち、第1ボルト51及び第2ボルト52以外の、一対の摺動部32に対して第1ボルト51及び第2ボルト52とは反対側に配置されるボルト50である第3ボルト53及び第4ボルト54が螺合される第3雌ねじ孔63及び第4雌ねじ孔64が形成されている。第3雌ねじ孔63及び第4雌ねじ孔64は、少なくともその一部が、斜板18の幅H1よりも外側に配置されている。本実施形態では、第3雌ねじ孔63及び第4雌ねじ孔64の中心が、斜板18の幅H1よりも外側に配置されており、第3雌ねじ孔63及び第4雌ねじ孔64の一部が、斜板18の幅H1よりも内側に配置されている。
【0042】
第2ハウジング14には、第1ハウジング13及び第2ハウジング14の軸方向において第1雌ねじ孔61と重なる位置に、第1ボルト51が挿通される第1挿通孔71が形成されている。また、第2ハウジング14には、第1ハウジング13及び第2ハウジング14の軸方向において第2雌ねじ孔62と重なる位置に、第2ボルト52が挿通される第2挿通孔72が形成されている。さらに、第2ハウジング14には、第1ハウジング13及び第2ハウジング14の軸方向において第3雌ねじ孔63と重なる位置に、第3ボルト53が挿通される第3挿通孔73が形成されている。また、第2ハウジング14には、第1ハウジング13及び第2ハウジング14の軸方向において第4雌ねじ孔64と重なる位置に、第4ボルト54が挿通される第4挿通孔74が形成されている。
【0043】
そして、第1ボルト51、第2ボルト52、第3ボルト53及び第4ボルト54が、第1挿通孔71、第2挿通孔72、第3挿通孔73及び第4挿通孔74を通過して、第1雌ねじ孔61、第2雌ねじ孔62、第3雌ねじ孔63及び第4雌ねじ孔64にそれぞれ螺合されることにより、第1ハウジング13と第2ハウジング14とが締結されている。よって、第1ボルト51及び第2ボルト52は、斜板18の傾動軸線L2に沿う方向において斜板18の幅H1よりも内側で凹部41を挟む位置であって、且つ膨出部42及び凹部閉鎖部43における膨出方向の先端部42e,43eよりも回転軸12寄りに配置されている。さらに、第3ボルト53及び第4ボルト54は、少なくともその一部が、斜板18の幅H1よりも外側に配置されている。本実施形態では、第3ボルト53及び第4ボルト54の軸心が、斜板18の幅H1よりも外側に配置されており、第3ボルト53及び第4ボルト54の一部が、斜板18の幅H1よりも内側に配置されている。
【0044】
図3に示すように、第1ハウジング13と第2ハウジング14とを組み付ける際には、第1ハウジング13の姿勢が、第1ハウジング13の開口が重力方向の上側に向いた姿勢となるように第1ハウジング13をセットし、シリンダブロック17を第1ハウジング13の底面に置く。さらに、回転軸12をシリンダブロック17の内側に挿入するとともに、コントロールピストン36をピストン収納室35に収納し、斜板18を、凸部33を凹部41内に配置させ、且つ回転軸12を斜板18の内側に通過させながら第1ハウジング13内に収容する。斜板18は、凸部33が凹部41内に配置されることにより、回転軸12の周方向において位置決めされた状態となるため、組み付け作業が容易となる。
【0045】
図4に示すように、第1ハウジング13の開口端と第2ハウジング14の開口端とが突き合わさるように第2ハウジング14を第1ハウジング13に組み付ける。このとき、第2ハウジング14内には、斜板傾角復帰機構37を構成する部品である中空ピストン39及び傾角増大ばね39aが配置されている。このため、第2ハウジング14の開口端が第1ハウジング13の開口端に対向配置されるように第2ハウジング14を第1ハウジング13に対して配置しようとすると、中空ピストン39及び傾角増大ばね39aが落下してしまい、組み付け作業が困難なものとなる。
【0046】
例えば、第2ハウジング14を第1ハウジング13に組み付ける際に、第1ハウジング13の姿勢を、第1ハウジング13の開口が横方向に向いた姿勢とする。これによれば、第2ハウジング14の開口端が第1ハウジング13の開口端に対向配置されるように第2ハウジング14を第1ハウジング13に対して配置しても、中空ピストン39及び傾角増大ばね39aが落下し難くなる。しかし、第1ハウジング13の姿勢を、第1ハウジング13の開口が横方向に向いた姿勢とすると、回転軸12は、第1ハウジング13によって片持ち支持されている状態であるために、重力によって傾いてしまい、回転軸12を第2ハウジング14に回転可能に支持し難くなり、組み付け作業が困難となる。
【0047】
そこで、中空ピストン39及び傾角増大ばね39aが落下しないように、部品落下防止用のガイド板80を第2ハウジング14の開口端に配置する。ガイド板80は、中空ピストン39及び傾角増大ばね39aが落下しないように中空ピストン39及び傾角増大ばね39aを支持しつつも、第1ハウジング13の開口端及び第2ハウジング14の開口端よりも外方へはみ出す矩形平板状である。そして、ガイド板80を第2ハウジング14の開口端に配置した状態で、ガイド板80における第2ハウジング14の開口端よりも外方へはみ出した部位と、二つのブッシュ25を手で支えた状態で、第2ハウジング14の開口端が第1ハウジング13の開口端に対向配置されるように第2ハウジング14を第1ハウジング13に対して配置する。その後、第1ハウジング13と第2ハウジング14とをボルト50(第3ボルト53及び第4ボルト54)によって仮締めする。
【0048】
このとき、コントロールピストン36は、ピストン収納室35に対して最も没入した位置にある。ここで、斜板18における斜板傾角復帰機構37との接触点P1が、第1ハウジング13の開口端よりも飛び出して、第1ハウジング13外に位置していると、斜板18における斜板傾角復帰機構37との接触点P1にガイド板80が接触することになる。すると、第1ハウジング13の開口端と第2ハウジング14の開口端と間隔が、ガイド板80の板厚よりも大きくなってしまい、ボルト50によって第1ハウジング13と第2ハウジング14とを仮締めすることが困難となってしまう虞がある。
【0049】
そこで、斜板18における斜板傾角復帰機構37との接触点P1が、第1ハウジング13の開口端よりも引っ込んでおり、第1ハウジング13内に位置している。このため、ガイド板80を第2ハウジング14の開口端に配置した状態で、第2ハウジング14の開口端が第1ハウジング13の開口端に対向配置されるように第2ハウジング14を第1ハウジング13に対して配置したときに、ガイド板80は、斜板18における斜板傾角復帰機構37との接触点P1に接触せずに、第1ハウジングの開口端に接触する。よって、第1ハウジング13の開口端と第2ハウジング14の開口端と間隔が、ガイド板80の板厚分だけとなるため、ボルト50によって第1ハウジング13と第2ハウジング14とを仮締めし易くなり、組み付け作業が容易になる。そして、ガイド板80を抜き取って、4本のボルト50を本締めすることにより、第1ハウジング13と第2ハウジング14とが4本のボルト50によって締結され、第1ハウジング13と第2ハウジング14との組み付けが行われる。
【0050】
次に、本実施形態の作用について説明する。
このような、組み付け作業が容易なものとなるように設計された上記構成の可変容量型斜板式ピストンポンプ10において、膨出部42には、制御圧室35aに供給される作動油の圧力が作用する。よって、第1ハウジング13における膨出部42の周辺は、第1ハウジング13において比較的応力が集中し易い部位である。また、第2ハウジング14のストッパ部43aには、斜板18の傾角を規制する際に、コントロールピストン36の力を受けて移動してきた凸部33が当接する。このため、第2ハウジング14における凹部閉鎖部43(ストッパ部43a)の周辺は、第2ハウジング14において比較的応力が集中し易い部位である。
【0051】
ここで、例えば、第1ボルト51及び第2ボルト52が、斜板18の傾動軸線L2に沿う方向において斜板18の幅H1よりも外側で凹部41を挟む位置であって、且つ膨出部42及び凹部閉鎖部43における膨出方向の先端部42e,43eよりも回転軸12とは離れて配置されている場合を考える。この場合に比べて、本実施形態では、第1ボルト51及び第2ボルト52の位置が、膨出部42及び凹部閉鎖部43に近づいているため、第1ハウジング13における膨出部42の周辺と第2ハウジング14における凹部閉鎖部43の周辺との締結力が高まっている。よって、第1ハウジング13及び第2ハウジング14における斜板18の凸部33に対応する部分の周辺の変形が抑制される。
【0052】
また、第3ボルト53及び第4ボルト54は、少なくともその一部が、斜板18の幅H1よりも外側に配置されている。ブッシュ25には、摺動部32の摺動面32aとブッシュ25の被摺動面25aとが摺動するため、斜板18からの応力が作用する。ここで、第3ボルト53及び第4ボルト54の全体が、斜板18の幅H1よりも内側に配置されている場合に比べて、斜板18からブッシュ25に作用する応力を第3ボルト53及び第4ボルト54により受け易くなる。
【0053】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)第1ボルト51及び第2ボルト52は、斜板18の傾動軸線L2に沿う方向において斜板18の幅H1よりも内側で凹部41を挟む位置であって、且つ膨出部42及び凹部閉鎖部43における膨出方向の先端部42e,43eよりも回転軸12寄りに配置されている。第1ボルト51及び第2ボルト52が、斜板18の傾動軸線L2に沿う方向において斜板18の幅H1よりも外側で凹部41を挟む位置であって、且つ膨出部42及び凹部閉鎖部43における膨出方向の先端部42e,43eよりも回転軸12とは離れて配置されている場合を考える。この場合に比べて、第1ボルト51及び第2ボルト52の位置が、膨出部42及び凹部閉鎖部43に近づく。このため、第1ハウジング13における膨出部42の周辺と第2ハウジング14における凹部閉鎖部43の周辺との締結力が高まる。よって、第1ハウジング13及び第2ハウジング14における斜板18の凸部33に対応する部分の周辺の変形を抑制することができ、ハウジング11の応力が集中する部分におけるシール性を十分に確保できる。
【0054】
(2)第3ボルト53及び第4ボルト54は、少なくともその一部が、斜板18の幅H1よりも外側に配置されている。これによれば、第3ボルト53及び第4ボルト54の全体が、斜板18の幅H1よりも内側に配置されている場合に比べて、斜板18からブッシュ25に作用する応力を第3ボルト53及び第4ボルト54により受け易くすることができる。よって、ブッシュ25を介して第1ハウジング13及び第2ハウジング14に応力が作用して、第1ハウジング13及び第2ハウジング14が変形してしまうことを抑制することができる。
【0055】
(3)斜板18における斜板傾角復帰機構37との接触点P1は、コントロールピストン36がピストン収納室35に対して最も没入した位置にあるときの斜板18の傾角時(最大傾角時)において、第1ハウジング13内に位置している。よって、コントロールピストン36がピストン収納室35に対して最も没入した位置にあるときの斜板18の傾角時に、斜板18における斜板傾角復帰機構37との接触点P1が、第1ハウジング13の開口端よりも飛び出して、第1ハウジング13外に位置している場合に比べて、第1ハウジング13と第2ハウジング14との組み付けが容易になる。
【0056】
(4)本実施形態によれば、第1ボルト51及び第2ボルト52が、斜板18の傾動軸線L2に沿う方向において斜板18の幅H1よりも外側で凹部41を挟む位置であって、且つ膨出部42及び凹部閉鎖部43における膨出方向の先端部42e,43eよりも回転軸12とは離れて配置されている場合に比べて、ハウジング11全体を小型化できる。
【0057】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態において、第3ボルト53及び第4ボルト54の全体が、斜板18の幅H1よりも内側に配置されていてもよい。
【0058】
○ 実施形態において、複数のボルト50のうち、第1ボルト51及び第2ボルト52以外の、一対の摺動部32に対して第1ボルト51及び前記第2ボルト52とは反対側に配置されるボルトの数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0059】
○ 実施形態において、斜板18の傾動軸線L2に沿う方向において斜板18の幅H1よりも外側で凹部41を挟む位置であって、且つ膨出部42及び凹部閉鎖部43における膨出方向の先端部42e,43eよりも回転軸12とは離れた位置に、ボルト等の締結部材がさらに設けられていてもよい。
【0060】
○ 実施形態において、可変容量型斜板式ピストンポンプ10は、コントロールピストン36がピストン収納室35に対して最も没入した位置にあるときの斜板18の傾角が最小傾角である構成であってもよい。この場合、斜板18の最大傾角時には、斜板18の凸部33が凹部閉鎖部43のストッパ部43aに当接することにより、斜板18の最大傾角が維持される。そして、斜板18の最小傾角時には、制御圧室35aに供給される作動油の供給量が最も少なく、コントロールピストン36がピストン収納室35に対して最も没入した位置にある状態が維持されることで、斜板18の最小傾角が維持される。
【0061】
○ 実施形態において、第2ハウジング14の内壁に、ブッシュ25が設けられていなくてもよく、第2ハウジング14の内壁の一部が、斜板18を保持する斜板保持部として機能していてもよい。
【0062】
○ 実施形態において、本体部31と、一対の摺動部32とが別部材であってもよく、各摺動部32が本体部31に対してボルト等によって取り付けられていてもよい。
○ 実施形態において、斜板18に摺動部32が一つだけ設けられている構成であってもよい。
【0063】
○ 実施形態において、締結部材として、例えば、圧入ピンを用いてもよい。
○ 実施形態において、コントロールピストン36がピストン収納室35に対して最も没入した位置にあるときの斜板18の傾角時において、斜板18における斜板傾角復帰機構37との接触点P1が、第1ハウジング13の開口端よりも飛び出して、第1ハウジング13外に位置していてもよい。
【0064】
○ 実施形態において、作動流体は、作動油以外の流体であってもよく、可変容量型斜板式ピストンポンプ10を、油圧ポンプ以外のポンプとして用いてもよい。