(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1のスクリュー搬送路が延びているベント室を使用し、該第1のスクリュー搬送路を利用してポリ乳酸と解重合触媒とキャリヤ樹脂とを含む溶融樹脂組成物を、減圧下に保持された前記ベント室内に導入し、該溶融樹脂組成物中に含まれるラクチドをガス化し、ガス状ラクチドを該ベント室から回収するラクチドの回収方法において、
前記ベント室内の前記第1のスクリュー搬送路の下側に、キャリヤ樹脂回収用の第2のスクリュー搬送路を設けたことを特徴とするラクチドの回収方法。
前記第1のスクリュー搬送路上には、前記ラクチドのガス化と共に生成する樹脂塊を該第1のスクリュー搬送路に戻すための戻し部材が設けられている請求項1に記載の方法。
前記第2のスクリュー搬送路内を延びている第2搬送スクリューの直径SD2が、前記第1のスクリュー搬送路内を延びている第1搬送スクリューの直径SD1よりも小さく設定されている請求項1または2に記載の方法。
前記ベント室の上部壁には、該上部壁に沿って流れ落ちる還流液を受ける槽が前記第1のスクリュー搬送路とは区画して設けられている請求項1〜4の何れかに記載の方法。
【背景技術】
【0002】
近年におけるプラスチック使用量の増大に伴うプラスチック廃棄物の異常な増大を解決する手段として、バクテリヤや真菌類が体外に放出する酵素の作用で崩壊する生分解性プラスチックが注目されている。このような生分解性プラスチックの中でも、工業的に量産されて入手が容易であり、環境にも優しい脂肪族ポリエステルとして、ポリ乳酸が注目され、広範囲の分野での使用が種々提案されている。
【0003】
ポリ乳酸(PLA)は、トウモロコシなどの穀物でんぷんを原料とする樹脂であり、でんぷんの乳酸発酵物、L−乳酸をモノマーとする直接重縮合の重合体や、そのダイマーであるラクチドの開環重合により製造される重合体である。この重合体は、自然界に存在する微生物により、水と炭酸ガスに分解され、生物的な完全リサイクルシステム型の樹脂としても着目されている。
【0004】
最近では、ポリ乳酸のリサイクルシステムとして、ポリ乳酸を分解して再利用し得るケミカルリサイクル法が最も注目を浴びている。この方法は、ポリ乳酸を解重合触媒の存在下で加熱することにより解重合を行い、得られるラクチドを再度開環重合に供してポリ乳酸として再利用するというものである。
【0005】
このようなケミカルリサイクルに適用されるポリ乳酸からのラクチド回収装置は、例えば特許文献1及び2で提案されている。これら特許文献で提案されている装置では、ポリ乳酸と解重合触媒及びキャリヤ樹脂が、二軸押出機中に投入されて溶融混練され、溶融混練物は、二軸押出機中のスクリューによりベント室(ベントゾーン)に搬送され、このベント室でポリ乳酸の解重合により生成したラクチドがガス化して他の成分と分離して回収される。即ち、ポリ乳酸の解重合により生成する低分子量のラクチド(分子量144)は、標準大気圧下の沸点が255℃と高いため、減圧下に保持されたベント室にポリ乳酸と解重合触媒とを含む溶融混練物を供給することにより、生成するラクチドを
ガス化して回収するというものである。
【0006】
このような回収装置で実施されるラクチドの回収方法は、実験室レベルでの実施には問題は無いのであるが、大量のポリ乳酸が投入される工業的実施には、解決すべき問題が残されている。例えば、押出機
中では、キャリヤ樹脂が溶融圧縮されながら移動しており、このキャリヤ樹脂によって溶融粘度の小さなポリ乳酸の溶融物や解重合触媒が搬送されるのであるが、溶融圧縮されたキャリヤ樹脂が減圧されているベント室に導入されたとき、圧力開放によって膨張、及び解重合ラクチドの膨張により、キャリヤ樹脂が樹脂塊となってスクリュー搬送路から浮いてしまうという現象を生じることが本発明者等による研究により判っている。このような樹脂塊が大きく成長すると、キャリヤ樹脂表面全面を覆いガス状ラクチドが揮発しなくなったり、ポリ乳酸の解重合により生成し
ガス化したラクチドの流路を塞いでしまい、ラクチドの回収効率が大幅に低下してしまったり、さらには、樹脂塊が飛散してベント室から捕集されたラクチドに混ざってしまうという重大な問題が生じることもある。
上記のようなキャリヤ樹脂の樹脂塊によりガス状ラクチドが揮発しにくい状態、あるいは揮発しなくなった状態を、一般に「ベントアップ」と呼んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のラクチド回収方法を実施するために使用される回収装置は、大まかに言って、押出機(溶融混練装置)1、押出機1に連なるベント室3、ベント室3の下方に位置するキャリヤ樹脂回収室4、ベント室3に連なる捕集装置5、及びキャリヤ樹脂回収室に連なるキャリヤ樹脂排出用押出機6から構成されており、通常、捕集装置5側に設けられている真空ポンプ7により、ベント室3が所定の減圧度に保持されるようになっている。
【0015】
本発明では、このような回収装置を使用し、ポリ乳酸、
解重合触媒及びキャリヤ樹脂を、押出機1のホッパーに投入し、押出機1のシリンダー内で溶融混練し、ポリ乳酸を解重合させた後、溶融混練物をベント室3に供給し、このベント室3において、ポリ乳酸の解重合により生成したラクチドを
ガス化し、
ガス化したラクチドは、ベント室3に連なる捕集装置5に導入され、気液分離塔51と第1の
凝縮器53を経て液化して、受け器59から回収され、さらに、キャリヤ樹脂は、ベント室3の下方のキャリヤ樹脂回収室4からキャリヤ樹脂排出用押出機6を通して排出されることとなる。
【0016】
ラクチド回収のために使用されるポリ乳酸としては、市場回収品(Post Consumer)や樹脂加工メーカー工場から排出される産業廃棄物、或いはポリ乳酸樹脂の製造工程で発生するスペックアウト樹脂などが使用される。さらに、L−乳酸(PLLA)とD−乳酸(PDLA)とを混合したステレオコンプレックスタイプでもよいし、分子鎖中のL−乳酸単位とD−乳酸単位とが混在するメソタイプのものであっても差し支えない。勿論、バージンのポリ乳酸であっても問題はない。
また、用いるポリ乳酸は、少量の共重合単位が組みこまれているもの、例えば、50モル%以上が乳酸単位であることを条件として、ラクチドと共重合可能なラクトン類、環状エーテル類、環状アミド類、各種アルコール類、カルボン酸類などに由来する単位を含んでいてもよい。
【0017】
ポリ乳酸の
解重合触媒としては、MgOが代表的であり、最も好適に使用されるが、CaO、SrO、BaO等のアルカリ土類金属酸化物なども使用し得る。更に、重合触媒に使用される
Tin(II)2−ethyl hexanoateや難燃剤である水酸化アルミニウムAl(OH)3も好適に使用することができる。またこれら触媒を混合して使用することもできる。かかる解重合触媒は、ポリ乳酸の解重合温度を低下させるものであり、解重合触媒の使用により、ポリ乳酸の熱分解が促進され、ポリ乳酸の低分子量化が進行し、例えば押出機1のホッパー投入時に約20万の分子量を有していたポリ乳酸が、分子量が144のラクチドまで分解する。また、MgOなどは、熱反応時のラセミ化現象を抑制する効果もある。
【0018】
上記のポリ乳酸の
解重合触媒は、通常、ポリ乳酸100質量部当り、0.1〜5質量部の量で使用される。
【0019】
キャリヤ樹脂は、ポリ乳酸の溶融物をスクリュー搬送するために使用されるものであると同時に、シール材としての機能も有している
。
【0020】
即ち、ラクチドを含んだポリ乳酸は、その分子量によっても異なるが、概して溶融粘度が通常のポリマーに比してかなり低いため、スクリューによるポリ乳酸溶融物の搬送を効率よく行うことが困難である。スクリューが空回りに近い状態となってしまうからである。このため、キャリヤ樹脂を併用することにより、押出機中でのポリ乳酸溶融物を含む溶融樹脂の粘性を高め、効率よく、ポリ乳酸の溶融物をスクリュー搬送することができる。
また、キャリヤ樹脂は、ラクチドを含んだポリ乳酸に比して溶融粘度が高いことから、これをある程度以上の量で使用してポリ乳酸と溶融混合することにより、押出機のシリンダー内面とスクリューとの間の空隙を溶融混合物が充満した状態を維持しながら、該溶融混合物をスクリュー搬送することができる。即ち、キャリヤ樹脂の使用により、シリンダー内面とスクリューとの間の空隙が常にシールされている状態を保持することが可能となり、これにより、ベント室3の減圧を効果的に行うことができる。
また、溶融粘度が低いキャリヤ樹脂の場合においても、PLAの解重合温度より高い熱分解温度を有する樹脂(PET・PC・PSなど)であれば、それ自体が熱分解することがないため、ポリ乳酸、及び、その解重合物をスクリュー搬送(前走)させることができ、適用することが可能である。
【0021】
このようなキャリヤ樹脂としては、ポリ乳酸の解重合に悪影響を与えず、且つポリ乳酸の解重合により生成するラクチドに対して反応性を示さない限りにおいて、種々の熱可塑性樹脂を使用することができるが、一般的には、
高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)などが好適に使用されるが、なかでも溶融粘度の高いHDPE、LDPE、PPがより好適に使用される。またこれらの樹脂は、上述した機能を発揮するに十分な分子量を有するものが使用される。
【0022】
本発明において、上記のキャリヤ樹脂は、一般に、装置の仕様等に応じて適宜の量範囲に設定される。例えば、ポリ乳酸100質量部当り20〜10000質量部程度、より好適には20〜100質量部であり、スクリュー搬送性及び真空シール性を確保し得るような量に設定される。この量は一般的な量よりもかなり低減できた量であり、理由については後述する。
【0023】
上述したポリ乳酸、解重合触媒及びキャリヤ樹脂は、その所定量が押出機1のホッパーから投入され、この押出機1のシリンダー内で溶融混合されることとなる。
即ち、押出機1のシリンダーを覆うように設けられているヒーターによりシリンダー内部が加熱され、シリンダー内部を走行しているスクリューにより、撹拌及び搬送されながら、溶融混合が行われ、250℃以上の温度でポリ乳酸を解重合することとなる。押出機1としては、通常、2本以上のスクリューを備えた2軸押出機が使用され、シリンダー内部を250℃〜350℃に加熱して溶融混合が行われ、この溶融混合に伴い、ポリ乳酸の解重合が始まり、ポリ乳酸の低分子量化が進行していくこととなる。
【0024】
上記の溶融混合によりポリ乳酸の低分子量化が進行していき、ポリ乳酸の基本単位を形成しているラクチド(乳酸2量体)が得られるが、このラクチドの標準大気圧下での沸点は255℃であるため、このままでは、気体液体の相分離境界領域のため、安定したガス捕集が困難である。即ち、ラクチドが液状のままの状態では、溶融キャリヤ樹脂との分離を効果的、且つ安定的に行うことができないため、この溶融混練物を減圧状態に保持されたベント室3内に導入することで、ラクチドの沸点を降下させ、ガス化を促進させる必要がある。
【0025】
図2を
図1と併せて参照して、ベント室3は、第1のスクリュー搬送路11を備えており、この第1のスクリュー搬送路11の下方には、キャリヤ樹脂回収室4が配置されていると同時に、第1のスクリュー搬送路11から上方に立ち上がっている側壁13の上部には、捕集装置5に連なる捕集管15が連結されている。
また、このベント室3の天井壁17は、傾斜構造を有しており、この傾斜した部分に覗き窓19が取り付けられており、この覗き窓19からベント室3の内部、特に第1のスクリュー搬送路11の状態を常時観察できるようになっている。
さらに、上記の覗き窓19の下方端部は、第1のスクリュー搬送路11から上方に立ち上がっている側壁13の外側部分にまで延びており、その下側には、還流液の受け槽21が設けられている。即ち、この受け槽21は、上記の側壁13によって第1のスクリュー搬送路11とは区画されており、還流液がスクリュー搬送路11に混ざらないようになっている。
【0026】
このような構造のベント室3において、スクリュー搬送路11は、同方向に回転する一対の第1搬送スクリュー23a,23bと、一方の第1搬送スクリュー23aの上部に適宜配置される落とし込みスクリュー25と、第1搬送スクリュー23a,23bを収容しているシリンダー壁(バレル)27とから構成されている。
【0027】
上記のシリンダー壁27は、押出機1のシリンダー壁が延長して伸びているものであり、同様に、第1搬送スクリュー23a,23bは、押出機1のスクリューが延長しているものであり、前述した溶融混合物は、押出機1から
図2の紙面手前に搬送され、ベント室3内に導入されるようになっている。
また、適宜配置される落とし込みスクリュー25は、ベント室3内に選択的に設けられているものであり、第1搬送スクリュー23aと係合しており且つ搬送スクリュー23aとは逆方向(ニップ位置では同方向)に回転するように設けられている。
【0028】
即ち、ベント室3は、真空ポンプ7の作動により、0.1〜8kPaA程度に減圧される。また、シリンダー壁27に取り付けられているヒーター(図示せず)によって、第1のスクリュー搬送路11内は、押出機1内のシリンダー部分と同様、250℃〜350℃程度に加熱されている。これにより、第1のスクリュー搬送路11内を延びている上記の第1搬送スクリュー23a,23bによってベント室3内に導入された溶融混合物に含まれるポリ乳酸の解重合により生成したラクチドが
ガス化され、
ガス化したラクチドは、上記の捕集管15から捕集装置5に導入される。
【0029】
ところで、スクリュー搬送される溶融混合物は、蒸気圧の高いポリ乳酸解重合物を含有し、かつ圧縮されながら減圧されているベント室3内に導入されるため、このベント室3内で膨張し、スクリュー23a,23bから浮いた状態の樹脂塊30が発生してしまうことがある。従って、この回収装置の運転を続けていくと、ベント室3内で、一対の第1搬送スクリュー23a,23bから浮いてしまった樹脂塊30を連続して生じてしまうことがある。この樹脂塊30は、主としてキャリヤ樹脂により形成されたカサブタのようなものであり、この樹脂塊30が成長して大きくなっていくと、ラクチドガス回収を妨げる閉塞物となるばかりか、飛散した樹脂塊30が捕集管15を通って捕集装置5内に入り込んでしまい、捕集管15全体を閉塞してしまうこともある。即ち、ベントアップを引き起こしてしまう。
【0030】
上記の第1搬送スクリュー23aの上側に設けられている落とし込みスクリュー25は、
図2から理解されるように、第1搬送スクリュー23aとは逆方向に回転するように設けられている。このため、第1のスクリュー搬送路11から浮いてしまった状態の樹脂塊30は、この落とし込みスクリュー25によって再び第1搬送スクリュー23a上に戻され、次いで第2のスクリュー搬送路60に落下し、キャリヤ樹脂とともに排出される。
このように、落とし込みスクリュー25は、樹脂塊30を第1のスクリュー搬送路11に戻すための戻し部材として機能し、これにより、樹脂塊30の成長を抑制し、樹脂塊30の成長による不都合を有効に防止することができる。
【0031】
上述した戻し部材として使用される落とし込みスクリュー25の回転は、第1搬送スクリュー23a・23bと同期する回転であってもよく、同期しない回転であってもよい。
また、スクリュー搬送路11から浮いてしまった樹脂塊30をスクリュー搬送路11に戻すことができる限り、落とし込みスクリュー25以外の部材を戻し部材として用いることもできる。例えば、第1搬送スクリュー23a,23bにより搬送されている溶融混合物から
ガス化して捕集管15に流れるラクチドの流路を阻害しないように、第1搬送スクリュー23a及び/または23bの上方を覆うようにプレート状の戻し部材や、スクリュー羽根の代わりに楕円形状の羽根が複数配列されている回転シャフトなども戻し部材として好適に使用することができる。
【0032】
尚、ガス化したラクチドが覗き窓19などに接触して冷却されて再び液化(即ち、還流)してしまうと、ベントアップを生じることもあるが、上記のような構造のベント室3では、ラクチドの還流液による不都合を有効に防止することができる。
即ち、ポリ乳酸、解重合触媒及びキャリヤ樹脂を含む溶融混合物を、第1のスクリュー搬送路11により押出機1からベント室3に導入していき、ラクチドの
ガス化を連続して行っていくと、覗き窓19の面で結露による液滴31(即ち、還流液)を生じる場合がある。この液滴31が第1のスクリュー搬送路11に滴下すると、この搬送路11を走行している第1搬送スクリュー23a,23bの表面或いはシリンダー壁27の内表面を覆うように液膜が形成されてしまい、溶融混合物がスリップし易くなり、結果として、前述した樹脂塊30を生成し易くなってしまう。
【0033】
しかるに、
図2に示されているような構造のベント室3では、覗き窓19が傾斜して設けられており、結露による液滴31は、覗き窓19の面に沿って流れ落ち、側壁13によって第1のスクリュー搬送路11とは完全に区画された受け槽21に収容されることとなる。即ち、液滴31が第1のスクリュー搬送路11内に滴下し、樹脂塊30の発生を促してしまうという不都合を有効に回避することができる。
また、液滴31の第1のスクリュー搬送路11への落下は、ラクチドの気化と液化の繰り返しをもたらし、ラクチドのラセミ化を促進させ、得られるラクチドの光学的純度を低下させるが、上記のような構造のベント室3では、このような不都合も有効に回避することができる。
【0034】
尚、上述した覗き窓19は、
図2に示されているように二重窓とし、Oリング33a,33bを備えたガスケット35により、天井壁17に取り付けられていることが好適である。このような構造により、覗き窓19の保温性を高め、結露を防止でき、還流液の生成を有効に回避することができる。
【0035】
また、上述した液滴31(還流液)を捕集する受け槽21の底部には、受け槽21に溜まった還流液31aを回収する回収ライン37が設けられており、その側壁の上部には、ベント室3の真空度を保持し或いは真空をブレイクするための真空ブレイク/復旧ライン39が設けられている。このような構造により、受け槽21に溜まった還流液31aを回収することができる。
【0036】
受け槽21の構造は、
図2に示されている構造に限定されるものではなく、例えば、受け槽21の底部に、捕集ラインを介して一時的捕集槽を連結し、この一時的捕集槽に真空ブレイク/復旧ライン及び回収ラインを設けることにより、受け槽21に溜まった還流液31aを、ベント室3の真空系を破壊せずに、捕集ラインを介して一時的捕集槽に移動させて回収することができる。
【0037】
さらに、ベント室3により
ガス化されたラクチドは、側壁13の上部に設けられている捕集管15を介して捕集装置5に導入されるが、
図2に示されているように、この捕集管15は、上方に傾斜して延びており且つ、真空ブレイク防止弁50が設けられており、異常時等に、この弁50を開閉し得るようになっている。
【0038】
また、この捕集管15の入り口部分にも、還流液を受けるための受け槽15aを設けておくことが望ましい。即ち、捕集管15内で液化した還流液は、この受け槽15aで捕集され、スクリュー搬送路11内に流れ落ちないような構造としておくことが好適である。尚、この受け槽15aにも、真空ブレイク/復旧ライン15b及び回収ライン15cが設けられる。
【0039】
上記の捕集管15が連結している捕集装置5においては、気液分離塔51、第1の凝縮器53、第2の凝縮器55及び深冷トラップ57を備えており、これにより、ベント室3から捕集されたラクチドの
ガス化物から気液分離により不純物を除き、高純度のラクチドが回収されるようになっている。即ち、ベント室3から捕集されたラクチドの
ガス化物には、ラクチド以外に、乳酸のオリゴマー、ポリ乳酸或いはキャリヤ樹脂に配合されていた重合開始剤等に由来する各種の低分子化合物などが含まれているため、これらを除去する必要がある。
【0040】
具体的には、ガス回収したラクチドを、気液分離塔(整流塔)51に通し気液分離塔内のデミスターで高分子量オリゴマー成分を除去後、第1の
凝縮器(熱交換器)53に導入し、ラクチドのみ相転換(Phase change)させ液状ラクチドとして回収する。
【0041】
相転換の適正熱交換温度は真空度に依存し変化するが、一般に、標準大気圧下のラクチド(L−ラクチド/D−ラクチド)の沸点と融点がそれぞれ、255℃、及び、92℃〜94℃であることから、0.1KPaA〜8KPaAの真空度範囲で熱交換温度は60℃〜140℃が好ましく、真空度範囲が0.5PaA〜4KPaAで熱交換温度は80℃〜90℃がより好ましい。
例えば、0.1KPaAよりも低いと、真空度が高すぎるため、樹脂塊が多くできることとなり、ベントアッ
プしやすくなってしまい、8KPaAよりも高いと、真空度が低すぎるため、ラクチドの沸点降下が不十分であり、
ガス化が不十分となり、回収効率が低下する傾向がある。
また、熱交換温度が上記範囲よりも低いと、低沸点不純物の液状化を生じ、回収ラクチドの純度が落ちる虞があり、熱交換温度が上記範囲よりも高いと、ラクチドが液状化しにくいため、ラクチド回収効率が低下する虞がある。
【0042】
また、ポリ乳酸解重合物(ラクチド)をガス回収するため、捕集装置5内の設備(気液分離塔51,第1の
凝縮器53、第2の
凝縮器55など)はベント室3よりも高い位置に設置することが好ましい。
【0043】
このようにしてオリゴマーが除かれたガスは、第1の凝縮器(熱交換器)53により80℃程度に冷却され、これにより、目的とするラクチドが液化され、受け器59に回収される。残ったガスは、第2の凝縮器(熱交換
器)55で5℃程度に冷却され、低沸点の低分子化合物が除去され、最後に、深冷トラップ57により−50℃程度まで冷却され、残存化合物も液体として除去されることとなる。
【0044】
尚、前述した受け槽21に溜まった還流液31aや捕集管15に設けられている受け槽15aの底部に溜まった液などは、そのまま廃棄することもできるし、問題が無ければ、受け器59で回収された液状ラクチドと合わせて、精製工程に導入することができる。
【0045】
ところで、上記のようにしてポリ乳酸とキャリヤ樹脂とを含む溶融樹脂組成物を第1のスクリュー搬送路11(第1搬送スクリュー23a,23b)を用いてベント室3に供給し、ポリ乳酸の解重合により生成したラクチドを該ベント室3でガス化して捕集装置5により回収する場合、第1のスクリュー搬送路11により搬送される溶融樹脂組成物は、ラクチドのガス化によって大きく容積減少することとなる。
本発明では、このようなラクチドがガス化して取り除かれた
樹脂溶解物残渣(キャリヤ樹脂の樹脂塊、以下単に樹脂塊と呼ぶことがある)65
を、第1のスクリュー搬送路11により排出せず、ベント室3の下側に設けられているキャリヤ樹脂回収室4を通して排出するように構成されている。
【0046】
即ち、上記のキャリヤ樹脂回収室4内には、第1のスクリュー搬送路11の下側となる位置に設けられたキャリヤ樹脂回収用の第2のスクリュー搬送路60が設けられており、第1のスクリュー搬送路11を
行き止まりとし、この第2のスクリュー搬送路60によって、第1のスクリュー搬送路11から落下した樹脂塊65(キャリヤ樹脂)排出するようになっている。
【0047】
例えば、上記の第1のスクリュー搬送路11においては、第1搬送スクリュー23a,23bの下側のシリンダー壁27の少なくとも一部が開放されて開口となっており、第2のスクリュー搬送路60に通じている。
この第2の搬送路60は、同方向に回転する一対の第2搬送スクリュー60a,60bと、これら第2搬送スクリュー60a,60bの周囲のシリンダー壁63とから形成されている。
このような第2のスクリュー搬送路60は、
図2に示されているように、ベント室3の真空度を維持しつつ、キャリヤ樹脂の排出を効果的に行うために、該搬送路60と同方向に延びているキャリヤ樹脂排出用押出機6に連通している。
即ち、第2搬送スクリュー60a,60bは、
図3に示されているように、キャリヤ樹脂排出用押出機6のシリンダー内を延びており、その送り方向先端は、該押出機6に設けられている排出口70まで延びている。
尚、
図2等においては、押出機1、6に設けられているスクリュー駆動用モーターは省略されている。
【0048】
このような構造においては、第1のスクリュー搬送路11上でポリ乳酸の解重合により生成したラクチドがガス化して樹脂溶融物から除かれた樹脂溶融物の残渣である樹脂塊65(キャリヤ樹脂)は、第1の搬送路11から第2のスクリュー搬送路60上に落下する。
【0049】
かかる本発明方法においては、第1のスクリュー搬送路11内に残るキャリヤ樹脂(即ち、樹脂塊30の原因物質)は、速やかにキャリヤ樹脂専用の第2のスクリュー搬送路60に落下して排出されることとなり、従って、第1のスクリュー搬送路11上での樹脂塊30の生成を有効に抑制することができ、このような樹脂塊30の成長によって生じるベントアップを有効に防止することができる。
【0050】
本発明において、上記の第2のスクリュー搬送路60内を延びている第2搬送スクリュー60a,60bの直径SD2は、前述した第1搬送スクリュー23a,23bの直径SD1よりも小さく設定されていることが好ましい。
即ち、第2のスクリュー搬送路60に到達した溶融キャリヤ樹脂は、第2搬送スクリュー60a,60bにより搬送され、キャリヤ樹脂排出用押出機6を経て排出口70から溶融押出されるが、この場合、ベント室3内での真空度を保持するために、キャリヤ樹脂排出用押出機6の内部で真空シールが確保されるように、キャリヤ樹脂量を確保する必要がある。しかるに、第2の搬送スクリュー60a,60bの直径SD2を小さくすることで、該スクリュー60a,60bとその周囲のシリンダー壁との空隙の容積が小さくなり、この結果として、真空シールを確保するために必要なキャリヤ樹脂量を低減することができ、例えば、このような第2のスクリュー搬送路60が設けられておらず、第1のスクリュー搬送路11からキャリヤ樹脂を排出する場合と比較して、よりキャリヤ樹脂組成比率の小さい樹脂組成でポリ乳酸の解重合を行うことが可能となる。
【0051】
このように、本発明においては、第2搬送スクリュー60a,60bの直径SD2は、第1搬送スクリュー23a,23bの直径SD1よりも小さいことが好適であるが、より好ましくは、直径比SD2/SD1が0.25〜0.90、さらに好ましくは0.35〜0.80の範囲にあることが望ましい。
即ち、直径比SD2/SD1が上記範囲よりも小さいと、第2のスクリュー搬送路60に落下してくるキャリヤ樹脂の量に、第2搬送スクリュー60a,60bによる排出が追いつかないおそれがある。勿論、第2搬送スクリュー60a,60bの回転速度をより速くすることにより、キャリヤ樹脂の排出量を多くすることはできるが、このような場合には、装置かかる負荷が大きくなり過ぎ、装置の損傷或いは装置寿命の低下を引き起こすおそれがある。また、直径比SD2/SD1が上記範囲よりも大きいと、キャリヤ樹脂量を少なくするという利点を十分に活かすことができないばかりか、真空シールが不良になる虞がある。
【0052】
尚、上述した本発明において、第2のスクリュー搬送路60には、一対の搬送スクリュー60a,60bが設けられているが、樹脂塊65の搬送及び排出口70からの排出を効果的に行うことができる限り、この搬送スクリューの数は1本でもよい。
また、
図1及び
図2の例では、第2のスクリュー搬送路60(第2搬送スクリュー60a,60b)が第1のスクリュー搬送路11(搬送スクリュー23a,23b)と同方向に延びている例が示されているが、
図4の概略平面構造から理解されるように、第2のスクリュー搬送路60(搬送スクリュー60a,60b)
を第1のスクリュー搬送路11(搬送スクリュー23a,23b)と直交する方向に設けて、キャリヤ樹脂排出用押出機6に連通させることも可能である。
【0053】
上記のようにして第2のスクリュー搬送路60の送り方向先端に設けられている排出口70から排出されたキャリヤ樹脂は、そのまま廃棄されてもよいし、必要に応じて、再び押出機1に供給してポリ乳酸と混合して再利用することもできる。
【0054】
かかる本発明によれば、ベント室3内で生成する樹脂塊30に由来するベントアップの問題を有効に回避することができ、装置の安定稼働により、純度の高いラクチドをポリ乳酸から安定して連続回収することができる。
また、第1のスクリュー搬送路11を行き止まりにせず、この先端からキャリヤ樹脂を排出する場合と比較すると、キャリヤ樹脂の使用量を大幅に低減(例えば半減)させることができる。