特許第6206517号(P6206517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206517
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20170925BHJP
   B60C 11/01 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   B60C11/03 300C
   B60C11/01 B
【請求項の数】15
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-23545(P2016-23545)
(22)【出願日】2016年2月10日
(65)【公開番号】特開2017-140927(P2017-140927A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2017年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山川 貴弘
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/136500(WO,A1)
【文献】 特開平11−342708(JP,A)
【文献】 特開2014−177236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在する4本以上の周方向主溝と、前記周方向主溝に区画されて成る5列以上の陸部とを備える空気入りタイヤであって、
タイヤ幅方向の最も外側にある左右の前記陸部をショルダー陸部として定義し、タイヤ幅方向外側から2列目にある左右の前記陸部をセカンド陸部として定義し、前記セカンド陸部よりもタイヤ赤道面側にある陸部をセンター陸部として定義するときに、
前記センター陸部および左右の前記セカンド陸部が、タイヤ幅方向に対して所定の傾斜角で傾斜すると共に前記陸部をタイヤ幅方向に貫通する複数の貫通ラグ溝をそれぞれ備え、
前記センター陸部にある前記複数の貫通ラグ溝と、前記左右のセカンド陸部にある前記複数の貫通ラグ溝とが、タイヤ幅方向に向かって相互に逆方向に傾斜し、
前記左右のセカンド陸部にある前記貫通ラグ溝の少なくとも一方の溝壁が、トレッド平面視にてタイヤ周方向に屈曲するステップ状の屈曲部を有し、
前記センター陸部および前記左右のセカンド陸部の少なくとも一つが、前記複数の貫通ラグ溝に区画されて成る複数のブロックをそれぞれ備え、且つ、
タイヤ周方向に隣り合う前記ブロックが、相互に異なる形状を有することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記センター陸部および前記左右のセカンド陸部の少なくとも一方が、タイヤ周方向に隣り合うと共に相互に異なる前記傾斜角を有する複数組の前記貫通ラグ溝を備える請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記センター陸部のタイヤ周方向に隣り合う前記貫通ラグ溝が、相互に異なる溝幅を有し、且つ、
幅狭な前記貫通ラグ溝の溝幅Wg11と幅広な前記貫通ラグ溝の溝幅Wg12とが、1.10≦Wg12/Wg11≦3.00の関係を有する請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記センター陸部の前記貫通ラグ溝の左右の溝壁が、トレッド平面視にてステップ状の屈曲部をそれぞれ有し、且つ、
前記左右のセカンド陸部の前記貫通ラグ溝の一方の溝壁が、トレッド平面視にてステップ状の屈曲部を有すると共に、他方の溝壁が、直線形状あるいは円弧形状を有する請求項1〜のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記センター陸部および前記左右のセカンド陸部の前記貫通ラグ溝の左右の溝壁が、トレッド平面視にてステップ状の屈曲部をそれぞれ有する請求項1〜のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記周方向主溝に対する前記センター陸部の前記貫通ラグ溝の開口部と前記セカンド陸部の前記貫通ラグ溝の開口部とが、タイヤ周方向に相互にオフセットして配置される請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記センター陸部のタイヤ周方向に隣り合う前記貫通ラグ溝が、相互に異なる溝幅を有し、且つ、
前記センター陸部が、幅狭な前記貫通ラグ溝の開口部のみに切欠部を有し、幅広な前記貫通ラグ溝の開口部には前記切欠部を有さない請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記センター陸部が、前記切欠部のエッジ部に面取部を有する請求項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記セカンド陸部の隣り合う前記貫通ラグ溝が、相互に異なる前記傾斜角を有し、
前記セカンド陸部の前記隣り合う貫通ラグ溝の溝中心線の延長線が、前記センター陸部のエッジ部で相互に交差し、且つ、
前記センター陸部の前記切欠部が、前記セカンド陸部の前記隣り合う貫通ラグ溝の溝中心線の延長線を囲んで形成される請求項7または8に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記セカンド陸部が、前記複数の貫通ラグ溝に区画されて成る複数のブロックを備え、且つ、
前記複数のブロックが、タイヤ幅方向に振幅を有する屈曲形状を有すると共に前記ブロックをタイヤ周方向に貫通する周方向細溝をそれぞれ備える請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
左右の前記ショルダー陸部が、タイヤ幅方向に対して所定の傾斜角で傾斜すると共に前記ショルダー陸部をタイヤ幅方向に貫通する複数の貫通ラグ溝をそれぞれ備え、
前記左右のショルダー陸部にある前記複数の貫通ラグ溝と、前記左右のセカンド陸部にある前記複数の貫通ラグ溝とが、タイヤ幅方向に向かって相互に逆方向に傾斜する請求項1〜10のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記ショルダー陸部の前記貫通ラグ溝の少なくとも一方の溝壁が、トレッド平面視にてタイヤ周方向に屈曲するステップ状の屈曲部を有する請求項11に記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記周方向主溝に対する前記ショルダー陸部の前記貫通ラグ溝の開口部と前記セカンド陸部の前記貫通ラグ溝の開口部とが、タイヤ周方向に相互にオフセットして配置される請求項1〜12のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
タイヤ周方向に延在する4本以上の周方向主溝と、前記周方向主溝に区画されて成る5列以上の陸部とを備える空気入りタイヤであって、
タイヤ幅方向の最も外側にある左右の前記陸部をショルダー陸部として定義し、タイヤ幅方向外側から2列目にある左右の前記陸部をセカンド陸部として定義し、前記セカンド陸部よりもタイヤ赤道面側にある陸部をセンター陸部として定義するときに、
前記センター陸部および左右の前記セカンド陸部が、タイヤ幅方向に対して所定の傾斜角で傾斜すると共に前記陸部をタイヤ幅方向に貫通する複数の貫通ラグ溝をそれぞれ備え、
前記センター陸部にある前記複数の貫通ラグ溝と、前記左右のセカンド陸部にある前記複数の貫通ラグ溝とが、タイヤ幅方向に向かって相互に逆方向に傾斜し、
前記左右のセカンド陸部にある前記貫通ラグ溝の少なくとも一方の溝壁が、トレッド平面視にてタイヤ周方向に屈曲するステップ状の屈曲部を有し、
前記センター陸部および前記左右のセカンド陸部の少なくとも一方が、タイヤ周方向に隣り合うと共に相互に異なる前記傾斜角を有する複数組の前記貫通ラグ溝を備えることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項15】
タイヤ周方向に延在する4本以上の周方向主溝と、前記周方向主溝に区画されて成る5列以上の陸部とを備える空気入りタイヤであって、
タイヤ幅方向の最も外側にある左右の前記陸部をショルダー陸部として定義し、タイヤ幅方向外側から2列目にある左右の前記陸部をセカンド陸部として定義し、前記セカンド陸部よりもタイヤ赤道面側にある陸部をセンター陸部として定義するときに、
前記センター陸部および左右の前記セカンド陸部が、タイヤ幅方向に対して所定の傾斜角で傾斜すると共に前記陸部をタイヤ幅方向に貫通する複数の貫通ラグ溝をそれぞれ備え、
前記センター陸部にある前記複数の貫通ラグ溝と、前記左右のセカンド陸部にある前記複数の貫通ラグ溝とが、タイヤ幅方向に向かって相互に逆方向に傾斜し、
前記左右のセカンド陸部にある前記貫通ラグ溝の少なくとも一方の溝壁が、トレッド平面視にてタイヤ周方向に屈曲するステップ状の屈曲部を有し、
前記センター陸部のタイヤ周方向に隣り合う前記貫通ラグ溝が、相互に異なる溝幅を有し、且つ、
幅狭な前記貫通ラグ溝の溝幅Wg11と幅広な前記貫通ラグ溝の溝幅Wg12とが、1.10≦Wg12/Wg11≦3.00の関係を有することを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、タイヤのスノー性能を向上できる空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特に、オールシーズン向けの乗用車用タイヤおよびライトトラック用タイヤでは、タイヤのスノー性能を向上するために、複数のブロック列をもつブロックパターンが採用されている。かかる従来の空気入りタイヤとして、特許文献1に記載される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3718021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、タイヤのスノー性能を向上できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、この発明にかかる空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在する4本以上の周方向主溝と、前記周方向主溝に区画されて成る5列以上の陸部とを備える空気入りタイヤであって、タイヤ幅方向の最も外側にある左右の前記陸部をショルダー陸部として定義し、タイヤ幅方向外側から2列目にある左右の前記陸部をセカンド陸部として定義し、前記セカンド陸部よりもタイヤ赤道面側にある陸部をセンター陸部として定義するときに、前記センター陸部および左右の前記セカンド陸部が、タイヤ幅方向に対して所定の傾斜角で傾斜すると共に前記陸部をタイヤ幅方向に貫通する複数の貫通ラグ溝をそれぞれ備え、前記センター陸部にある前記複数の貫通ラグ溝と、前記左右のセカンド陸部にある前記複数の貫通ラグ溝とが、タイヤ幅方向に向かって相互に逆方向に傾斜し、前記左右のセカンド陸部にある前記貫通ラグ溝の少なくとも一方の溝壁が、トレッド平面視にてタイヤ周方向に屈曲するステップ状の屈曲部を有し、前記センター陸部および前記左右のセカンド陸部の少なくとも一つが、前記複数の貫通ラグ溝に区画されて成る複数のブロックをそれぞれ備え、且つ、タイヤ周方向に隣り合う前記ブロックが、相互に異なる形状を有することを特徴とする。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在する4本以上の周方向主溝と、前記周方向主溝に区画されて成る5列以上の陸部とを備える空気入りタイヤであって、タイヤ幅方向の最も外側にある左右の前記陸部をショルダー陸部として定義し、タイヤ幅方向外側から2列目にある左右の前記陸部をセカンド陸部として定義し、前記セカンド陸部よりもタイヤ赤道面側にある陸部をセンター陸部として定義するときに、前記センター陸部および左右の前記セカンド陸部が、タイヤ幅方向に対して所定の傾斜角で傾斜すると共に前記陸部をタイヤ幅方向に貫通する複数の貫通ラグ溝をそれぞれ備え、前記センター陸部にある前記複数の貫通ラグ溝と、前記左右のセカンド陸部にある前記複数の貫通ラグ溝とが、タイヤ幅方向に向かって相互に逆方向に傾斜し、前記左右のセカンド陸部にある前記貫通ラグ溝の少なくとも一方の溝壁が、トレッド平面視にてタイヤ周方向に屈曲するステップ状の屈曲部を有し、前記センター陸部および前記左右のセカンド陸部の少なくとも一方が、タイヤ周方向に隣り合うと共に相互に異なる前記傾斜角を有する複数組の前記貫通ラグ溝を備えることを特徴とする。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在する4本以上の周方向主溝と、前記周方向主溝に区画されて成る5列以上の陸部とを備える空気入りタイヤであって、タイヤ幅方向の最も外側にある左右の前記陸部をショルダー陸部として定義し、タイヤ幅方向外側から2列目にある左右の前記陸部をセカンド陸部として定義し、前記セカンド陸部よりもタイヤ赤道面側にある陸部をセンター陸部として定義するときに、前記センター陸部および左右の前記セカンド陸部が、タイヤ幅方向に対して所定の傾斜角で傾斜すると共に前記陸部をタイヤ幅方向に貫通する複数の貫通ラグ溝をそれぞれ備え、前記センター陸部にある前記複数の貫通ラグ溝と、前記左右のセカンド陸部にある前記複数の貫通ラグ溝とが、タイヤ幅方向に向かって相互に逆方向に傾斜し、前記左右のセカンド陸部にある前記貫通ラグ溝の少なくとも一方の溝壁が、トレッド平面視にてタイヤ周方向に屈曲するステップ状の屈曲部を有し、前記センター陸部のタイヤ周方向に隣り合う前記貫通ラグ溝が、相互に異なる溝幅を有し、且つ、幅狭な前記貫通ラグ溝の溝幅Wg11と幅広な前記貫通ラグ溝の溝幅Wg12とが、1.10≦Wg12/Wg11≦3.00の関係を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明にかかる空気入りタイヤでは、(1)センター陸部の貫通ラグ溝と左右のセカンド陸部の貫通ラグ溝とが相互に逆方向に傾斜するので、車両旋回時におけるスノー路面でのトラクション性が向上する。また、(2)左右のセカンド陸部にある貫通ラグ溝がステップ状の屈曲部の溝壁を有するので、トレッド部センター領域における貫通ラグ溝のエッジ成分が増加する。これらにより、タイヤのスノー性能が向上する利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。
図2図2は、図1に記載した空気入りタイヤのトレッドパターンを示す平面図である。
図3図3は、図2に記載したトレッドパターンのセンター領域を示す拡大図である。
図4図4は、図2に記載したトレッドパターンのセンター陸部を示す拡大図である。
図5図5は、図2に記載したトレッドパターンのセカンド陸部を示す拡大図である。
図6図6は、図5に記載したセカンド陸部の変形例を示す説明図である。
図7図7は、図2に記載したトレッドパターンのショルダー陸部を示す拡大図である。
図8図8は、三次元サイプの一例を示す説明図である。
図9図9は、三次元サイプの一例を示す説明図である。
図10図10は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0009】
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、タイヤ径方向の片側領域の断面図を示している。また、同図は、空気入りタイヤの一例として、乗用車用ラジアルタイヤを示している。
【0010】
同図において、タイヤ子午線方向の断面とは、タイヤ回転軸(図示省略)を含む平面でタイヤを切断したときの断面をいう。また、符号CLは、タイヤ赤道面であり、タイヤ回転軸方向にかかるタイヤの中心点を通りタイヤ回転軸に垂直な平面をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向をいい、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向をいう。
【0011】
この空気入りタイヤ1は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16と、一対のリムクッションゴム17、17とを備える(図1参照)。
【0012】
一対のビードコア11、11は、複数のビードワイヤを束ねて成る環状部材であり、左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を構成する。
【0013】
カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造あるいは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチールあるいは有機繊維材(例えば、アラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなど)から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で80[deg]以上95[deg]以下のカーカス角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの繊維方向の傾斜角)を有する。
【0014】
ベルト層14は、一対の交差ベルト141、142と、ベルトカバー143とを積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。一対の交差ベルト141、142は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で20[deg]以上55[deg]以下のベルト角度を有する。また、一対の交差ベルト141、142は、相互に異符号のベルト角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの繊維方向の傾斜角)を有し、ベルトコードの繊維方向を相互に交差させて積層される(クロスプライ構造)。ベルトカバー143は、コートゴムで被覆されたスチールあるいは有機繊維材から成る複数のコードを圧延加工して構成され、絶対値で0[deg]以上10[deg]以下のベルト角度を有する。また、ベルトカバー143は、交差ベルト141、142のタイヤ径方向外側に積層されて配置される。
【0015】
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。一対のリムクッションゴム17、17は、左右のビードコア11、11およびカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側にそれぞれ配置されて、リムフランジに対する左右のビード部の接触面を構成する。
【0016】
[トレッドパターン]
図2は、図1に記載した空気入りタイヤのトレッドパターンを示す平面図である。同図は、オールシーズン用タイヤのトレッドパターンを示している。同図において、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸周りの方向をいう。また、符号Tは、タイヤ接地端である。
【0017】
図2に示すように、空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝21、22と、これらの周方向主溝21、22に区画された複数の陸部31〜33と、これらの陸部31〜33に配置された複数のラグ溝411、412、421、422、431、432とをトレッド部に備える。
【0018】
周方向主溝とは、摩耗末期を示すウェアインジケータを有する周方向溝であり、一般に、5.0[mm]以上の溝幅および7.5[mm]以上の溝深さを有する。また、ラグ溝とは、2.0[mm]以上の溝幅および3.0[mm]以上の溝深さを有する横溝をいう。また、後述するサイプとは、陸部に形成された切り込みであり、一般に1.5[mm]未満のサイプ幅を有する。
【0019】
溝幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、溝開口部における左右の溝壁の距離の最大値として測定される。陸部が切欠部や面取部をエッジ部に有する構成では、溝長さ方向を法線方向とする断面視にて、トレッド踏面と溝壁の延長線との交点を基準として、溝幅が測定される。また、溝がタイヤ周方向にジグザグ状あるいは波状に延在する構成では、溝壁の振幅の中心線を基準として、溝幅が測定される。
【0020】
溝深さは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド踏面から溝底までの距離の最大値として測定される。また、溝が部分的な凹凸部やサイプを溝底に有する構成では、これらを除外して溝深さが測定される。
【0021】
規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が最大負荷能力の88[%]である。
【0022】
例えば、図2の構成では、空気入りタイヤ1が、タイヤ赤道面CL上の点を中心とする左右点対称なトレッドパターンを有している。また、4本の周方向主溝21、22がタイヤ赤道面CL上を中心として左右対称に配置されている。また、4本の周方向主溝21、22により、5列の陸部31〜33が区画されている。また、1つの陸部31が、タイヤ赤道面CL上に配置されている。
【0023】
しかし、これに限らず、5本以上の周方向主溝が配置されても良い(図示省略)。また、周方向主溝21、22がタイヤ赤道面CLを中心として左右非対称に配置されても良い(図示省略)。また、周方向主溝が、タイヤ赤道面CL上に配置されても良い(図示省略)。このため、陸部31が、タイヤ赤道面CLから外れた位置に配置され得る。
【0024】
また、図2の構成では、4本の周方向主溝21、22が、全体としてストレート形状を有し、左右の陸部31〜33のエッジ部が周方向主溝21、22側に突出することにより、各周方向主溝21、22の溝壁がタイヤ周方向に向かってステップ状に変化している。
【0025】
しかし、これに限らず、周方向主溝21、22が、単純なストレート形状を有しても良いし、タイヤ周方向に屈曲あるいは湾曲しつつ延在するジグザグ形状あるいは波状形状を有しても良い(図示省略)。
【0026】
ここでは、タイヤ幅方向の最も外側にある左右の周方向主溝22、22を最外周方向主溝と呼ぶ。また、左右の最外周方向主溝22、22を境界として、トレッド部センター領域およびトレッド部ショルダー領域を定義する。
【0027】
また、周方向主溝21、22に区画された複数の陸部31〜33のうち、タイヤ幅方向の最も外側にある陸部33をショルダー陸部として定義する。ショルダー陸部33は、最外周方向主溝22に区画されたタイヤ幅方向外側の陸部であり、タイヤ接地端Tをトレッド面に有する。また、タイヤ幅方向外側から2列目の陸部32をセカンド陸部として定義する。セカンド陸部32は、最外周方向主溝22に区画されたタイヤ幅方向内側の陸部であり、最外周方向主溝22を挟んでショルダー陸部33に隣接する。また、セカンド陸部32よりもタイヤ赤道面CL側にある陸部31をセンター陸部として定義する。センター陸部31は、タイヤ赤道面CL上に配置されても良いし(図2)、タイヤ赤道面CLから外れた位置に配置されても良い(図示省略)。
【0028】
また、図2の構成では、すべて陸部31〜33が、タイヤ幅方向に延在する複数のラグ溝411、412;421、422;431、432をそれぞれ有している。また、一部のラグ溝411、412;421、422;431が、対応する陸部31;32;33をタイヤ幅方向に貫通する貫通ラグ溝であり、また、タイヤ周方向に所定間隔で配列されている。これにより、すべての陸部31〜33が、ラグ溝411、412;421、422;431によりタイヤ周方向に分断されて、複数のブロックから成るブロック列が形成されている。
【0029】
しかし、これに限らず、例えば、ショルダー陸部33のすべてのラグ溝431、432が一方の端部にてショルダー陸部33内で終端する非貫通ラグ溝であっても良い(図示省略)。この場合には、ショルダー陸部33が、タイヤ周方向に連続するリブとなる。
【0030】
[貫通ラグ溝の配置構造]
特に、オールシーズン向けの乗用車用タイヤおよびライトトラック用タイヤでは、タイヤのスノー性能を向上するために、複数のブロック列をもつブロックパターンが採用されている。一方で、かかるブロックパターンでは、パターンノイズが増加して、タイヤの騒音性能が悪化する傾向にある。
【0031】
そこで、この空気入りタイヤ1は、タイヤのスノー性能と騒音性能とを両立するために、以下の構成を採用している。
【0032】
図3は、図2に記載したトレッドパターンのセンター領域を示す拡大図である。同図は、特にセンター陸部31の貫通ラグ溝411、412およびセカンド陸部32の貫通ラグ溝421、422の配置構造を簡略に示している。
【0033】
図3に示すように、センター陸部31および左右のセカンド陸部32、32が、陸部31;32をタイヤ幅方向に貫通する複数の貫通ラグ溝411、412;421、422をそれぞれ備える。これらの貫通ラグ溝411、412;421、422により、センター陸部31および左右のセカンド陸部32、32がタイヤ周方向に分断されてブロック列となる。これにより、スノー路面でのトラクション性(雪中剪断力)が増加して、タイヤのスノー性能(特に駆動性能)が向上する。
【0034】
また、センター陸部31および左右のセカンド陸部32、32の貫通ラグ溝411、412、421、422が、タイヤ幅方向に対して所定の傾斜角(図中の寸法記号省略)で傾斜する。また、貫通ラグ溝411、412、421、422の傾斜角の絶対値が、5[deg]以上70[deg]以下の範囲にあることが好ましく、10[deg]以上60[deg]以下の範囲にあることがより好ましく、20[deg]以上48[deg]以下の範囲にあることがより好ましい。また、センター陸部31の貫通ラグ溝411、412の傾斜角の絶対値が、左右のセカンド陸部32、32の貫通ラグ溝421、422の絶対値よりも、15[deg]以上の差をもって小さいことが好ましい。
【0035】
センター陸部およびセカンド陸部における貫通ラグ溝の傾斜角は、左右の周方向主溝に対する貫通ラグ溝の開口部の中心点を結ぶ仮想線とタイヤ回転軸とのなす角として測定される。また、ショルダー陸部における貫通ラグ溝の傾斜角は、最外周方向主溝およびタイヤ接地端に対する貫通ラグ溝の開口部の中心点を結ぶ仮想線とタイヤ回転軸とのなす角として測定される。
【0036】
このとき、センター陸部31にある複数の貫通ラグ溝411、412と、左右のセカンド陸部32にある複数の貫通ラグ溝421、422とが、タイヤ幅方向に向かって相互に逆方向に傾斜する。また、左右のセカンド陸部32、32にある貫通ラグ溝411、412は、相互に同一方向に傾斜する。これにより、車両旋回時におけるスノー路面でのトラクション性が増加して、タイヤのスノー性能(特に旋回性能)が向上する。
【0037】
例えば、図2の構成では、上記のように、5列の陸部31〜33が、タイヤ幅方向に対して所定の傾斜角で傾斜する複数の貫通ラグ溝411、412、421、422、431をそれぞれ備えている。また、センター陸部31および左右のショルダー陸部33、33の貫通ラグ溝411、412、431と、左右のセカンド陸部32、32の貫通ラグ溝421、422とが、タイヤ幅方向に向かって相互に逆方向に傾斜している。また、センター陸部31の貫通ラグ溝411、412とショルダー陸部33の貫通ラグ溝431とが相互に同一方向に傾斜し、また、左右のセカンド陸部32、32の貫通ラグ溝411、412が相互に同一方向に傾斜している。また、隣り合う陸部31、32;32、33の貫通ラグ溝の向きが、相互に反転している。これにより、トレッドパターン全体では、貫通ラグ溝411、412、421、422、431が、タイヤ幅方向に向かってジグザグ状に配列されている。これにより、車両旋回時におけるスノー路面でのトラクション性がさらに高められている。
【0038】
また、図2に示すように、隣り合う陸部31、32;32、33の貫通ラグ溝411、412、421、422;421、422、431の各周方向主溝21、22に対する開口部の位置が、タイヤ周方向に相互にオフセットして配置されている。このため、隣り合う陸部31、32;32、33の貫通ラグ溝411、412、421、422;421、422、431が、相互に溝中心線の延長線上になく、相互に不連続に配置されている。これにより、スノー路面でのトラクション性がさらに高められている。
【0039】
[異種ブロックの配列構造]
図4は、図2に記載したトレッドパターンのセンター陸部を示す拡大図である。図5は、図2に記載したトレッドパターンのセカンド陸部を示す拡大図である。図6は、図5に記載したセカンド陸部の変形例を示す説明図である。
【0040】
図2および図3に示すように、センター陸部31および左右のセカンド陸部32、32は、複数種類の貫通ラグ溝411、412;421、422と、これらの貫通ラグ溝411、412;421、422に区画されて成る複数種類のブロック311、312;321、322(図3参照)とをそれぞれ備える。また、複数種類の貫通ラグ溝411、412;421、422がタイヤ周方向に周期的に配列される。また、複数種類のブロック311、312;321、322が、相互に異なる形状を有する。また、上記複数種類のブロック311、312;321、322を一組とする複数組のブロックユニットが、タイヤ全周に渡って繰り返し配列されている。かかる構成では、トレッド部センター領域の陸部31、32が複数種類のブロック311、312;321、322から成るブロック列をそれぞれ備えることにより、ブロック形状に起因するタイヤ転動時のパターンノイズが低減される。これにより、タイヤの騒音性能(特に車内騒音性能)が向上する。
【0041】
上記した貫通ラグ溝およびブロックの種類数は、2種以上3種以下の範囲で設定される。
【0042】
さらに、空気入りタイヤ1が、トレッドパターン全体としてピッチ配列をタイヤ周方向に変化させて成るピッチバリエーション構造を備え、各陸部31〜33のブロックの周方向長さがタイヤ周方向に向かって周期的に変化している。このため、センター陸部31および左右のセカンド陸部32、32では、上記した複数種類のブロック311、312;321、322を一組とするブロックユニットの周方向長さが、上記したピッチバリエーション構造により、タイヤ周方向に向かって周期的に変化している。これにより、タイヤ転動時のパターンノイズが効果的に低減されている。
【0043】
例えば、図4の構成では、センター陸部31が、2種類の貫通ラグ溝411、412を備え、これらの貫通ラグ溝411、412がタイヤ周方向に交互に配置されている(図2参照)。また、タイヤ周方向に隣り合う貫通ラグ溝411、412が、相互に異なる傾斜角θ11、θ12(図中の寸法記号省略)を有している。また、これらの貫通ラグ溝411、412に区画されて成る2種類のブロック311、312がタイヤ周方向に交互に配列されている。また、タイヤ周方向に隣り合うブロック311、312が、相互に異なる形状を有している。また、これらのブロック311、312が、相互に点対称な輪郭形状を有している。
【0044】
また、第一ブロック311の一方の周方向主溝21側(図4の右側)のエッジ部がタイヤ周方向に長尺であり、他方の周方向主溝21側(図4の左側)のエッジ部が短尺である。逆に、第二ブロック312の一方の周方向主溝21側(図4の右側)のエッジ部が短尺であり、他方の周方向主溝21側(図4の左側)のエッジ部が長尺である。このため、センター陸部31の片側のエッジ部に着目すると、長尺なエッジ部と短尺なエッジ部とがタイヤ周方向に交互に配置されている。
【0045】
また、2種類の貫通ラグ溝411、412がタイヤ幅方向に対して同一方向に傾斜し、また、幅狭な第一貫通ラグ溝411の傾斜角θ11が幅広な第二貫通ラグ溝412の傾斜角θ12よりも大きい(θ12<θ11)。このとき、これらの傾斜角θ11、θ12の差が、3[deg]≦θ11−θ12≦20[deg]の範囲にあることが好ましく、5[deg]≦θ11−θ12≦10[deg]の範囲にあることがより好ましい。これにより、隣り合う貫通ラグ溝411、412の傾斜角θ11、θ12の差θ11−θ12が確保されて、タイヤ転動時のパターンノイズの軽減作用が確保され、また、タイヤ周方向に隣り合うブロック311、312;321、322の剛性差あるいはエッジ長の差が低減されて、ブロックの偏摩耗が抑制される。
【0046】
また、幅狭な第一貫通ラグ溝411の溝幅Wg11と幅広な第二貫通ラグ溝412の溝幅Wg12とが、1.10≦Wg12/Wg11≦3.00の関係を有することが好ましく、1.30≦Wg12/Wg11≦2.00の関係を有することがより好ましい。これにより、隣り合う貫通ラグ溝411、412の溝幅Wg11、Wg12の比Wg12/Wg11が適正化される。
【0047】
なお、幅広な第二貫通ラグ溝412の溝幅Wg12は、タイヤサイズに応じて適宜選択され得る。一般的なオールシーズン向けの乗用車用タイヤおよびライトトラック用タイヤでは、幅広な第二貫通ラグ溝412の溝幅Wg12が、3.8[mm]≦Wg12≦5.3[mm]の範囲内にある。
【0048】
また、図4に示すように、センター陸部31の貫通ラグ溝411、412が、トレッド平面視にてステップ状の屈曲部をそれぞれ有する。具体的には、センター陸部31の貫通ラグ溝411、412の左右の溝壁が、ブロック311、312のタイヤ幅方向の中央領域(ブロック幅の1/3の領域)にてタイヤ周方向に屈曲するステップ状の屈曲部をそれぞれ有する。また、貫通ラグ溝411、412の屈曲部が、トレッド平面視にてZ字形状あるいはクランク形状を有する。また、貫通ラグ溝411、412の溝幅が略一定となるように、貫通ラグ溝411、412の左右の溝壁が平行に配置される。かかる構成では、ラグ溝がストレート形状を有する構成と比較して、貫通ラグ溝411、412のエッジ成分が増加する。これにより、タイヤのスノー性能が向上する。
【0049】
ステップ状の屈曲部は、第一溝壁部と、前記第一溝壁部に対してタイヤ周方向にオフセットして配置された第二溝壁部と、タイヤ周方向に延在して前記第一溝壁部および前記第二溝壁部を接続する周方向溝壁部とにより定義される。また、前記周方向溝壁部の壁面とタイヤ周方向とのなす角(図中の寸法記号省略)が、80[deg]以上100[deg]以下の範囲にあることが好ましく、85[deg]以上95[deg]以下の範囲にあることがより好ましい。
【0050】
また、図4の構成では、貫通ラグ溝411、412が単一の屈曲部のみを有するが、これに限らず、貫通ラグ溝411、412が複数の屈曲部を有しても良い(図示省略)。また、図4の構成では、貫通ラグ溝411、412の溝壁が屈曲部を除いて全体として直線形状を有するが、これに限らず、後述するセカンド陸部32の貫通ラグ溝421、422(図5参照)のように、貫通ラグ溝411、412の溝壁が全体として円弧状に湾曲しても良い。
【0051】
また、図4の構成では、センター陸部31の貫通ラグ溝411、412が、溝長さ方向の全域に渡って一定の溝幅Wg11、Wg12をそれぞれ有している。しかし、これに限らず、例えば、貫通ラグ溝411、412が周方向主溝21に対する開口部にて拡幅することにより、貫通ラグ溝411、412の溝幅Wg11、Wg12が溝長さ方向に向かって変化しても良い(図示省略)。
【0052】
同様に、図5の構成では、左右のセカンド陸部32、32が、2種類の貫通ラグ溝421、422を備え、これらの貫通ラグ溝421、422がタイヤ周方向に交互に配置されている(図2参照)。また、タイヤ周方向に隣り合う貫通ラグ溝421、422が、相互に異なる傾斜角θ21、θ22(図中の寸法記号省略)を有している。また、これらの貫通ラグ溝421、422に区画されて成る2種類のブロック321、322が、タイヤ周方向に交互に配列されている。これにより、タイヤ周方向に隣り合うブロック321、322が、相互に異なる形状を有している。
【0053】
また、隣り合う貫通ラグ溝421、422が相互に異なる傾斜角を有するため、ブロック321、322の周方向主溝21、22側の左右のエッジ部が、相互に異なる周方向長さを有する。また、隣り合う一方のブロック321のタイヤ赤道面CL側のエッジ部がタイヤ周方向に長尺であり、タイヤ接地端T側のエッジ部が短尺である。逆に、他方のブロック322のタイヤ赤道面CL側のエッジ部がタイヤ周方向に短尺であり、タイヤ接地端T側のエッジ部がタイヤ周方向に長尺である。このため、セカンド陸部32の片側のエッジ部に着目すると、長尺なエッジ部と短尺なエッジ部とがタイヤ周方向に交互に配置されている。また、左右の周方向主溝21、22では、短尺なエッジ部が長尺なエッジ部よりも周方向主溝21、22側に突出するように、隣り合うブロック321、322のエッジ部がタイヤ幅方向に相互にオフセットして配置されている。
【0054】
また、2種類の貫通ラグ溝421、422がタイヤ幅方向に対して同一方向(図5では、タイヤ赤道面側に向かって上方)に傾斜し、また、貫通ラグ溝421の傾斜角θ21が貫通ラグ溝422の傾斜角θ22よりも大きい(θ22<θ21)。このとき、これらの傾斜角θ21、θ22の差が、5[deg]≦θ21−θ22≦40[deg]の範囲にあることが好ましく、10[deg]≦θ21−θ22≦20[deg]の範囲にあることがより好ましい。これにより、隣り合う貫通ラグ溝421、422の傾斜角θ21、θ22の差θ21−θ22が確保されて、タイヤ転動時のパターンノイズの軽減作用が確保され、また、タイヤ周方向に隣り合うブロック311、312;321、322の剛性差あるいはエッジ長の差が低減されて、ブロックの偏摩耗が抑制される。
【0055】
また、図5に示すように、セカンド陸部32のブロック321、322が、1本の周方向細溝324、324をそれぞれ有する。また、周方向細溝324、324が、タイヤ幅方向に振幅を有する屈曲形状を有すると共に、ブロック321、322をタイヤ周方向に貫通して隣り合う貫通ラグ溝421、422にそれぞれ開口する。これにより、ブロック321、322がタイヤ幅方向に分断されて、タイヤ接地時におけるブロック321、322の接地面圧が均一化される。また、周方向細溝324、324が屈曲形状を有することにより、セカンド陸部32のエッジ成分が増加して、タイヤのスノー性能が向上する。
【0056】
また、図5の構成では、周方向細溝324、324が、ブロック321、322のタイヤ幅方向の中央領域(ブロック幅の1/3の領域)に配置されて、ブロック321、322の踏面をタイヤ幅方向に略二等分する。また、周方向細溝324、324が、タイヤ幅方向に振幅を有するステップ状の屈曲部を有する。また、周方向細溝324、324の屈曲部が、ブロック321、322のタイヤ周方向の中央部(ブロック321、322をタイヤ周方向に3等分したときの中央部)に配置される。これにより、ブロック321、322のタイヤ周方向の剛性が均一化される。
【0057】
また、周方向細溝324、324の溝幅Wsが、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を付与したときのタイヤと平板との接触面にて、周方向細溝324、324が塞がらないように、設定される。具体的には、周方向細溝324、324の溝幅Wsが、1.5[mm]≦Ws≦6.0[mm]の範囲に設定される。これにより、周方向細溝324、324がタイヤ接地時にて適正に開口し、ブロック321、322が分断されて、ブロック321、322の接地面圧が適正に均一化される。同時に、ブロック321、322のエッジ成分が周方向細溝324、324により確保されて、タイヤのトラクション性が向上する。
【0058】
周方向細溝324、324の溝幅Wsは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときの、対向する溝壁面の開口部の距離として測定される。
【0059】
また、タイヤ周方向に隣り合う周方向細溝324、324が、共通のラグ溝421、422に対して相互に異なる位置で開口する。すなわち、ラグ溝421、422を挟んで対向する周方向細溝324、324の開口部が、タイヤ幅方向に相互に位置をずらして配置されている。したがって、隣り合う周方向細溝324、324の開口部がタイヤ幅方向に分散して配置されている。これにより、セカンド陸部32の全体の剛性が均一化される。
【0060】
なお、図5の構成では、上記のように、周方向細溝324、324がステップ状の屈曲部を有するが、これに限らず、周方向細溝324、324がストレート形状、円弧形状あるいは波状形状を有しても良い(図示省略)。
【0061】
また、図5に示すように、貫通ラグ溝421、422が、タイヤ接地端T(図2参照)側に向かって溝幅を拡幅した形状を有する。また、貫通ラグ溝421、422のタイヤ赤道面CL側の開口部における溝幅Wg21_cl、Wg22_clが、タイヤ接地端T側の開口部における溝幅Wg21_t、Wg22_tよりも狭い。これにより、セカンド陸部32のブロック321、322のタイヤ赤道面CL側の領域の剛性が確保されて、ブロック321、322の偏摩耗が抑制される。また、タイヤ周方向に隣り合う貫通ラグ溝421、422では、タイヤ赤道面CL側の開口部の溝幅Wg21_cl、Wg22_clが相互に等しく(Wg21_cl=Wg22_cl)、また、タイヤ接地端T側の開口部の溝幅Wg21_t、Wg22_tが相互に等しい(Wg21_t=Wg22_t)。なお、これらの溝幅が相互に相異しても良い(図示省略)。
【0062】
また、図5の構成では、セカンド陸部32の貫通ラグ溝421、422の一方の溝壁が、トレッド平面視にてステップ状の屈曲部を有すると共に、他方の溝壁が、直線形状あるいは円弧形状を有する。これにより、貫通ラグ溝421、422の左右の溝開口部の溝幅Wg21_cl、Wg21_t;Wg22_cl、Wg22_tの差が形成される。また、貫通ラグ溝421、422の溝壁がかかるステップ状の屈曲部を有することにより、ラグ溝421、422のエッジ成分が増加して、トラクション性が高められる。
【0063】
また、貫通ラグ溝411、412の一方の溝壁がセカンド陸部32の中央部で屈曲することにより、屈曲部の左右の溝中心線がセカンド陸部32の中央部でタイヤ周方向にオフセットする。このとき、貫通ラグ溝421、422の溝中心線のタイヤ周方向のオフセット量G1、G2が、2.0[mm]以上12.0[mm]以下の範囲にあることが好ましい。
【0064】
また、隣り合う貫通ラグ溝421、422の溝中心線の屈曲方向が、タイヤ周方向に対して相互に逆方向となる。このため、隣り合う貫通ラグ溝421、422の屈曲部に挟まれたブロック322のエッジ部が、タイヤ赤道面CL側で拡幅され、また、タイヤ接地端T側で短縮される。これにより、貫通ラグ溝421、422の傾斜角の差に起因して幅狭となるブロック322の部分(周方向細溝324に分断されたブロック322のタイヤ赤道面CL側の部分)のタイヤ周方向の長さが適正に確保される。
【0065】
なお、図5の構成では、上記のように、セカンド陸部32の貫通ラグ溝421、422の一方の溝壁が、トレッド平面視にてステップ状の屈曲部を有すると共に、他方の溝壁が、直線形状あるいは円弧形状を有している。しかし、これに限らず、図6の変形例に示すように、セカンド陸部32の貫通ラグ溝421、422の左右の溝壁が、トレッド平面視にてステップ状の屈曲部をそれぞれ有しても良い。
【0066】
[センター陸部の切欠部および面取部]
図3において、センター陸部31が、幅狭な貫通ラグ溝411の開口部のみに切欠部313を有し、幅広な貫通ラグ溝412の開口部には切欠部を有していない。また、図4に示すように、センター陸部31が、切欠部313のエッジ部に面取部314を有している。これらにより、幅狭な貫通ラグ溝411の排水性および排雪性が確保される。また、幅狭なラグ溝411の溝容積が切欠部313および面取部314により補完されて、センター陸部31のタイヤ周方向の剛性が均一化される。
【0067】
切欠部313とは、陸部31のエッジ部に形成された所定の深さを有する部分をいう。切欠部313は、ラグ溝411の溝容積を拡大することを目的とするため、切欠部313の面取部314や陸部31のエッジ部に形成される面取部(図示省略)よりも大きな深さD2を有する。切欠部313の深さD2については、後述する。
【0068】
面取部とは、隣接する面のエッジ部を平面(例えば、C面取り)または曲面(例えば、R面取り)で接続する部分をいう。
【0069】
また、図3に示すように、セカンド陸部32の隣り合う貫通ラグ溝421、422が相互に異なる傾斜角を有し、これらの貫通ラグ溝421、422の溝中心線の延長線が、センター陸部31のエッジ部で相互に交差している。また、センター陸部31の切欠部313が、隣り合う貫通ラグ溝411、412の溝中心線の延長線を囲んで形成される。また、切欠部313が、一対の貫通ラグ溝421、422の溝中心線の延長線を囲むL字状ないしはV字形状の屈曲した壁面を有している。また、面取部314が、この屈曲した切欠部313に沿って形成されている。
【0070】
また、切欠部313が、屈曲形状の凸側をタイヤ周方向かつセンター陸部31の幅方向内側に向けている。また、V字形状を有する1つの切欠部313が、タイヤ周方向に隣り合う2つのブロック311、312に跨って形成されて、貫通ラグ溝411、412の1つの開口部を横断している。言い換えると、貫通ラグ溝411、412が、切欠部313に連通し、切欠部313を介して周方向主溝21に開口している。これにより、1つの切欠部313が、貫通ラグ溝411、412の開口部を周方向主溝21に沿って左右に拡幅している。
【0071】
また、複数の切欠部313が、センター陸部31の左右のエッジ部にそれぞれ形成されている。また、左右の開口部に切欠部313を有する幅狭な貫通ラグ溝411と、いずれの開口部にも切欠部313を有さない幅広な貫通ラグ溝412とが、タイヤ周方向に交互に配置されている。切欠部313を有さない貫通ラグ溝412が、切欠部313に対してタイヤ周方向に離間して配置されて、切欠部313に連通することなく周方向主溝21に開口している。
【0072】
また、一方の貫通ラグ溝421の溝中心線と周方向主溝21の溝中心線との交差角φ1(図3参照)が50[deg]以上75[deg]以下の範囲にあり、他方の貫通ラグ溝422の溝中心線と周方向主溝21の溝中心線との交差角φ2が15[deg]以上40[deg]以下の範囲にある。
【0073】
切欠部313の屈曲角(図中の寸法記号省略)が、10[deg]以上70[deg]以下の範囲にあることが好ましく、15[deg]以上55[deg]以下の範囲にあることがより好ましい。このように、切欠部313がタイヤ周方向に凸となる鋭角な屈曲形状を有することにより、図3に示すように、切欠部313がセカンド陸部32の貫通ラグ溝421、422の溝中心線の延長線に沿って前記延長線の交差部を囲み得る。
【0074】
切欠部313の屈曲角は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態としたときの、トレッド平面視における切欠部の壁面の輪郭線にて測定される。なお、切欠部313の屈曲角は、ピッチバリエーション構造を有するトレッドパターンのピッチ長との関係で適宜設定される。
【0075】
また、図4において、センター陸部31の最大幅W1と、切欠部313の最大幅W2とが、0.05≦W2/W1≦0.25の関係を有することが好ましく、0.10≦W2/W1≦0.15の関係を有することがより好ましい。これにより、切欠部313の最大幅W2が確保されて、幅狭な貫通ラグ溝411の排水性および排雪性が向上し、また、切欠部313が過大となることに起因するセンター陸部31の剛性の低下が抑制される。
【0076】
陸部の最大幅W1は、陸部の踏面のタイヤ軸方向の幅の最大値であり、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態にて測定される(図4参照)。
【0077】
切欠部の最大幅W2は、切欠部のタイヤ軸方向の幅の最大値であり、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態にて、陸部の最大幅W1の測定点を基準として測定される(図4参照)。
【0078】
また、貫通ラグ溝411の最大溝深さD1(図示省略)と、切欠部313の最大深さD2(図示省略)とが、0.30≦D2/D1≦1.00の関係を有することが好ましく、0.50≦D2/D1≦0.80の関係を有することがより好ましい。これにより、切欠部313の最大深さD2が確保されて、貫通ラグ溝411の排水性および排雪性が向上し、また、切欠部313が深すぎることに起因する陸部31の剛性の低下が抑制される。
【0079】
ラグ溝の最大溝深さD1は、トレッド踏面から溝底までの距離の最大値であり、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて測定される。また、ラグ溝が部分的な底上部やサイプを底部に有する構成では、これらを除外して深さが測定される。
【0080】
切欠部の最大深さD2は、トレッド踏面から底部までの距離の最大値であり、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて測定される。また、切欠部が部分的な底上部やサイプを溝底に有する構成では、これらを除外して溝深さが測定される。
【0081】
また、周方向主溝21の最大溝深さD0(図示省略)と、センター陸部31の貫通ラグ溝411の最大溝深さD1(図示省略)とが、0.6≦D1/D0≦0.8の範囲にあることが好ましい。これにより、貫通ラグ溝411の最大溝深さD1が適正化されて、ラグ溝411(412)の排水性が確保される。
【0082】
また、図4において、切欠部313の最大幅W2と、面取部314の幅W3とが、0.20≦W3/W2≦4.00の関係を有することが好ましく、0.30≦W3/W2≦2.00の関係を有することがより好ましい。また、面取部314の幅W3が、1.5[mm]≦W3≦6.0[mm]の範囲にあることが好ましい。これにより、面取部314の幅W3が適正化される。
【0083】
面取部の幅W3は、トレッド平面視における切欠部の輪郭線とトレッド踏面との距離であり、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される(図4参照)。
【0084】
また、面取部314の深さD3(図示省略)と、切欠部313の最大深さD2(図示省略)とが、0.50≦D3/D2≦0.80の関係を有することが好ましい。また、面取部314の深さD3が、1.3[mm]≦D3≦5.5[mm]の範囲にあることが好ましい。これにより、面取部314の深さD3が適正化される。
【0085】
面取部の深さD3は、トレッド踏面から面取部の最大深さ位置までの距離であり、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される。切欠部と面取部との境界は、切欠部313の底部側の壁面の延長線と、センター陸部31の踏面に接続する面取部314の傾斜面との交点により定義される。
【0086】
[ショルダー陸部の非貫通ラグ溝]
図7は、図2に記載したトレッドパターンのショルダー陸部を示す拡大図である。
【0087】
図2の構成では、図7に示すように、ショルダー陸部33が、上記した複数の貫通ラグ溝431に加えて、複数の非貫通ラグ溝432を備える。
【0088】
貫通ラグ溝431は、ショルダー陸部33をタイヤ幅方向に貫通して周方向主溝22およびタイヤ接地端Tに開口する。例えば、図3の構成では、貫通ラグ溝431が、周方向主溝22からタイヤ接地端Tに向かって溝幅を拡幅した形状を有している。具体的には、貫通ラグ溝431の一方の溝壁が、トレッド平面視にてステップ状の屈曲部を有すると共に、他方の溝壁が、直線形状あるいは円弧形状を有している。しかし、これに限らず、貫通ラグ溝431の左右の溝壁が直線形状あるいは円弧形状を有しても良い。また、貫通ラグ溝431における周方向主溝22側の幅狭部の溝深さが、タイヤ接地端T側の幅広部の溝深さに対して30[%]以上80[%]以下の範囲を有することが好ましい。これにより、貫通ラグ溝431の排雪作用および騒音低減作用が確保される。
【0089】
非貫通ラグ溝432は、図7に示すように、一方の端部にて周方向主溝22に開口すると共に他方の端部にてショルダー陸部33の接地面内で終端する。
【0090】
[サイプ]
図4図5および図7に示すように、センター陸部31、セカンド陸部32およびショルダー陸部33は、複数のサイプ5をそれぞれ備える。これらのサイプ5は、二次元サイプ(いわゆる平面サイプ)および三次元サイプ(いわゆる立体サイプ)に分類される。これらのサイプ5により、陸部31〜33のエッジ成分が確保されて、タイヤのトラクション性が向上する。
【0091】
二次元サイプは、サイプ長さ方向を法線方向とする任意の断面視(サイプ幅方向かつサイプ深さ方向を含む断面視)にてストレート形状のサイプ壁面を有する。二次元サイプは、上記の断面視にてストレート形状を有すれば足り、サイプ長さ方向へは、ストレート形状、ジグザグ形状、波状形状、円弧形状などを有して延在し得る。
【0092】
三次元サイプは、サイプ長さ方向を法線方向とする断面視およびサイプ深さ方向を法線方向とする断面視の双方にて、サイプ幅方向に振幅をもつ屈曲形状のサイプ壁面を有する。三次元サイプは、二次元サイプと比較して、対向するサイプ壁面の噛合力が強いため、陸部の剛性を補強する作用を有する。三次元サイプは、サイプ壁面にて上記の構造を有すれば足り、トレッド踏面では、例えば、ストレート形状、ジグザグ形状、波状形状、円弧形状などを有し得る。かかる三次元サイプには、例えば、以下のものが挙げられる(図8および図9参照)。
【0093】
図8および図9は、三次元サイプの一例を示す説明図である。これらの図は、ピラミッド型のサイプ壁面を有する三次元サイプの透過斜視図を示している。
【0094】
図8の構成では、サイプ壁面が、三角錐と逆三角錐とをサイプ長さ方向に連結した構造を有する。言い換えると、サイプ壁面が、トレッド面側のジグザグ形状と底部側のジグザグ形状とを互いにタイヤ幅方向にピッチをずらせ、該トレッド面側と底部側とのジグザグ形状の相互間で互いに対向し合う凹凸を有する。また、サイプ壁面が、これらの凹凸において、タイヤ回転方向に見たときの凹凸で、トレッド面側の凸屈曲点と底部側の凹屈曲点との間、トレッド面側の凹屈曲点と底部側の凸屈曲点との間、トレッド面側の凸屈曲点と底部側の凸屈曲点とで互いに隣接し合う凸屈曲点同士の間をそれぞれ稜線で結ぶと共に、これら稜線間をタイヤ幅方向に順次平面で連結することにより形成される。また、一方のサイプ壁面が、凸状の三角錐と逆三角錐とを交互にタイヤ幅方向に並べた凹凸面を有し、他方のサイプ壁面が、凹状の三角錐と逆三角錐とを交互にタイヤ幅方向に並べた凹凸面を有する。そして、サイプ壁面が、少なくともサイプの両端最外側に配置した凹凸面をブロックの外側に向けている。なお、このような三次元サイプとして、例えば、特許第3894743号公報に記載される技術が知られている。
【0095】
図9の構成では、サイプ壁面が、ブロック形状を有する複数の角柱をサイプ深さ方向に対して傾斜させつつサイプ深さ方向およびサイプ長さ方向に連結した構造を有する。言い換えると、サイプ壁面が、トレッド面においてジグザグ形状を有する。また、サイプ壁面が、ブロックの内部ではタイヤ径方向の2箇所以上でタイヤ周方向に屈曲してタイヤ幅方向に連なる屈曲部を有し、また、該屈曲部においてタイヤ径方向に振幅を持ったジグザグ形状を有する。また、サイプ壁面が、タイヤ周方向の振幅を一定にする一方で、トレッド面の法線方向に対するタイヤ周方向への傾斜角度をトレッド面側の部位よりもサイプ底側の部位で小さくし、屈曲部のタイヤ径方向の振幅をトレッド面側の部位よりもサイプ底側の部位で大きくする。なお、このような三次元サイプとして、例えば、特許第4316452号公報に記載される技術が知られている。
【0096】
例えば、図4の構成では、センター陸部31のブロック311、312が、複数のサイプ5をそれぞれ有し、これらのサイプ5が、いずれも三次元サイプである。また、サイプ5が、一方の端部にてブロック311、312の内部で終端し、他方の端部にてブロック311、312のエッジ部に開口して周方向主溝21に連通している。また、サイプ5が、タイヤ周方向に対して貫通ラグ溝411と同一方向に傾斜しつつ、センター陸部31の中心線(図4では、タイヤ赤道面CL)を横切ってタイヤ幅方向に延在している。また、サイプ5および貫通ラグ溝411、412が、タイヤ周方向に相互に等間隔かつ平行に配置されることにより、ブロック311、312を矩形状かつ略等幅な領域に区画している。また、タイヤ周方向に隣り合うブロック311、312では、サイプ5が、タイヤ周方向に対して同一方向に傾斜し、且つ、相互に異なる側のエッジ部に開口している。
【0097】
また、いずれのサイプ5も、切欠部313に連通することなく、ブロック311のエッジ部に開口している。したがって、サイプ5の開口部と切欠部313とが、ブロック311のエッジ部にて、タイヤ周方向に相互にオフセットして配置される。このとき、ブロック311のエッジ部にて、サイプ5の開口部と切欠部313との距離g1(図中の寸法記号省略)が、2.0[mm]≦g1の範囲にあることが好ましい。これにより、サイプ5の開口部と切欠部313との距離g1が適正に確保される。
【0098】
また、一部のサイプ5が、切欠部313の面取部314を貫通して、ブロック311のエッジ部に開口している。具体的には、図4に示すように、切欠部313および面取部314が、タイヤ周方向に凸となるV字形状を有し、また、貫通ラグ溝411を越えて2つのブロック311、312に跨って延在している。このとき、切欠部313および面取部314のV字形状を有するブロック311では、すべてのサイプ5が、切欠部313および面取部314に対して離間して配置されている。一方で、他方のブロック311では、一部のサイプ5が、面取部314を貫通して、ブロック311のエッジ部に開口している。
【0099】
また、上記のように、ブロック311の内部におけるサイプ5の終端部が、切欠部313および面取部314に対して離間して配置されている。かかる構成では、ブロック311の踏面が、サイプ5、切欠部313および面取部314により分断されることなく、タイヤ周方向に連続して延在する。これにより、ブロック311の踏面が確保される。また、このとき、サイプ5の終端部と、面取部314との距離g2(図中の寸法記号省略)が、2.0[mm]≦g2の範囲にあることが好ましい。これにより、サイプ5の終端部と面取部314との距離g2が適正に確保される。
【0100】
なお、図4の構成では、上記のように、一部のサイプ5が、切欠部313の面取部314に貫通している。しかし、これに限らず、すべてのサイプ5が、切欠部313および面取部314に対して離間して配置されても良い。これにより、センター陸部31の剛性が確保される。
【0101】
また、図5の構成では、セカンド陸部32のブロック321、322が、複数のサイプ5をそれぞれ有し、これらのサイプ5が、いずれも三次元サイプである。また、サイプ5が、一方の端部にてブロック321、322の内部で終端し、他方の端部にてブロック321、322のエッジ部に開口して周方向主溝21、22に連通している。また、サイプ5が、タイヤ周方向に対して貫通ラグ溝421、422と同一方向に傾斜しつつタイヤ幅方向に延在している。また、サイプ5および貫通ラグ溝421、422が、タイヤ周方向に相互に等間隔かつ平行に配置されることにより、ブロック321、322を矩形状かつ略等幅な領域に区画している。
【0102】
また、セカンド陸部32の2種類の貫通ラグ溝421、422が相互に異なる傾斜角を有するため、一部のブロック322の踏面が、周方向細溝324に区画されたタイヤ赤道面CL側の領域で相対的に狭くなっている。このため、この領域のサイプ本数が、他の領域のサイプ本数よりも少なく設定されている。これにより、各ブロック321、322の踏面におけるサイプ密度が均一化されている。
【0103】
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する4本以上の周方向主溝21、22と、周方向主溝21、22に区画されて成る5列以上の陸部31〜33とを備える(図2参照)。また、センター陸部31および左右のセカンド陸部32、32が、タイヤ幅方向に対して所定の傾斜角で傾斜すると共に陸部31、32をタイヤ幅方向に貫通する複数の貫通ラグ溝411、412;421、422をそれぞれ備える(図3参照)。センター陸部31にある複数の貫通ラグ溝411、412と、左右のセカンド陸部32にある複数の貫通ラグ溝421、422とが、タイヤ幅方向に向かって相互に逆方向に傾斜する。また、左右のセカンド陸部32、32にある貫通ラグ溝421、422の少なくとも一方の溝壁が、トレッド平面視にてタイヤ周方向に屈曲するステップ状の屈曲部を有する。
【0104】
かかる構成では、(1)センター陸部31の貫通ラグ溝411、412と左右のセカンド陸部32、32の貫通ラグ溝421、422とが相互に逆方向に傾斜するので、車両旋回時におけるスノー路面でのトラクション性が向上する。また、(2)左右のセカンド陸部32、32にある貫通ラグ溝421、422がステップ状の屈曲部を有するので、トレッド部センター領域(図2参照)における貫通ラグ溝のエッジ成分が増加する。これらにより、タイヤのスノー性能が向上する利点がある。
【0105】
また、この空気入りタイヤ1では、センター陸部31および左右のセカンド陸部32、32の少なくとも一つ(図3では、すべての陸部31、32)が、複数の貫通ラグ溝411、412、421、422に区画されて成る複数のブロック311、312、321、322をそれぞれ備える(図3参照)。また、タイヤ周方向に隣り合うブロック311、312;321、322が、相互に異なる形状を有する。かかる構成では、トレッド部センター領域の陸部31、32が複数種類のブロック311、312;321、322から成るブロック列をそれぞれ備えることにより、ブロック形状に起因するタイヤ転動時のパターンノイズが低減される。これにより、タイヤの騒音性能(特に車内騒音性能)が向上する利点がある。
【0106】
また、この空気入りタイヤ1では、センター陸部31および左右のセカンド陸部32、32の少なくとも一方(図3では、センター陸部31および左右のセカンド陸部32、32の双方)が、タイヤ周方向に隣り合うと共に相互に異なる傾斜角を有する複数組の貫通ラグ溝411、412;421、422を備える(図3参照)。これにより、タイヤ転動時のパターンノイズが低減されて、タイヤの騒音性能(特に車内騒音性能)が向上する利点がある。
【0107】
また、この空気入りタイヤ1では、センター陸部31のタイヤ周方向に隣り合う貫通ラグ溝411、412が、相互に異なる溝幅Wg11、Wg12を有する(図4参照)。また、幅狭な貫通ラグ溝411の溝幅Wg11と幅広な貫通ラグ溝412の溝幅Wg12とが、1.10≦Wg12/Wg11≦3.00の関係を有する。これにより、隣り合う貫通ラグ溝411、412の溝幅Wg11、Wg12の比Wg12/Wg11が適正化される利点がある。すなわち、1.10≦Wg12/Wg11であることにより、溝幅比が確保されて、タイヤ転動時のパターンノイズが低減される。また、Wg12/Wg11≦3.00により、溝幅比が過大となることに起因するブロックの偏摩耗が抑制される。
【0108】
また、この空気入りタイヤ1では、センター陸部31の貫通ラグ溝411、412の左右の溝壁が、トレッド平面視にてステップ状の屈曲部をそれぞれ有する(図4参照)。また、左右のセカンド陸部32、32の貫通ラグ溝421、422の一方の溝壁が、トレッド平面視にてステップ状の屈曲部を有すると共に、他方の溝壁が、直線形状あるいは円弧形状を有する(図5参照)。これにより、貫通ラグ溝のエッジ成分が増加して、タイヤのスノー性能が向上する利点がある。
【0109】
また、この空気入りタイヤ1では、センター陸部31および左右のセカンド陸部32、32の貫通ラグ溝411、412、421、422の左右の溝壁が、トレッド平面視にてステップ状の屈曲部をそれぞれ有する(図4および図6参照)。これにより、貫通ラグ溝のエッジ成分が増加して、タイヤのスノー性能が向上する利点がある。
【0110】
また、この空気入りタイヤ1では、周方向主溝21に対するセンター陸部31の貫通ラグ溝411、412の開口部とセカンド陸部32の貫通ラグ溝421、422の開口部とが、タイヤ周方向に相互にオフセットして配置される(図3参照)。これにより、左右の陸部のラグ溝の開口部が対向する構成(図示省略)と比較して、タイヤ転動時のパターンノイズが低減される利点がある。
【0111】
また、この空気入りタイヤ1では、センター陸部31のタイヤ周方向に隣り合う貫通ラグ溝411、412が、相互に異なる溝幅Wg11、Wg12を有する(図4参照)。また、センター陸部31が、幅狭な貫通ラグ溝411の開口部のみに切欠部313を有し、幅広な貫通ラグ溝412の開口部には切欠部313を有さない。これにより、幅狭な貫通ラグ溝411の排水性および排雪性が確保される利点がある。
【0112】
また、この空気入りタイヤ1では、センター陸部31が、切欠部313のエッジ部に面取部314を有する(図4参照)。これにより、幅狭な貫通ラグ溝411の排水性および排雪性が向上する利点がある。
【0113】
また、この空気入りタイヤ1では、セカンド陸部32の隣り合う貫通ラグ溝421、422が、相互に異なる傾斜角を有する(図3参照)。また、セカンド陸部32の隣り合う貫通ラグ溝421、422の溝中心線の延長線が、センター陸部31のエッジ部で相互に交差する。また、センター陸部31の切欠部313が、セカンド陸部32の隣り合う貫通ラグ溝421、422の溝中心線の延長線を囲んで形成される。かかる構成では、センター陸部31の切欠部313からセカンド陸部32のラグ溝421、422を介してセカンド陸部32のタイヤ接地端T側の周方向主溝22に至る排水経路が形成される。これにより、トレッド部センター領域の排水性が向上して、タイヤのウェット性能が向上する利点がある。
【0114】
また、この空気入りタイヤ1では、セカンド陸部32が、複数の貫通ラグ溝421、422に区画されて成る複数のブロック321、322を備える(図5参照)。また、複数のブロック321、322が、タイヤ幅方向に振幅を有する屈曲形状を有すると共にブロック321、322をタイヤ周方向に貫通する周方向細溝324、324をそれぞれ備える。かかる構成では、ブロック321、322のタイヤ幅方向の剛性が周方向細溝324、324により緩和される。これにより、タイヤ接地時におけるブロック321、322の接地面圧が低減されて、ブロック321、322の偏摩耗が抑制される利点がある。また、周方向細溝324、324より、ブロック321、322のエッジ成分が増加して、タイヤのスノー性能が向上する利点がある。
【0115】
また、この空気入りタイヤ1では、左右のショルダー陸部33が、タイヤ幅方向に対して所定の傾斜角で傾斜すると共にショルダー陸部33をタイヤ幅方向に貫通する複数の貫通ラグ溝431をそれぞれ備える(図2参照)。また、左右のショルダー陸部33にある複数の貫通ラグ溝431と、左右のセカンド陸部32にある複数の貫通ラグ溝421、422とが、タイヤ幅方向に向かって相互に逆方向に傾斜する。かかる構成では、左右のショルダー陸部33、33の貫通ラグ溝431と左右のセカンド陸部32、32の貫通ラグ溝421、422とが相互に逆方向に傾斜するので、車両旋回時におけるスノー路面でのトラクション性が向上する。これにより、タイヤのスノー性能が向上する利点がある。
【0116】
また、この空気入りタイヤ1では、ショルダー陸部33の貫通ラグ溝431の少なくとも一方(図7では、双方)の溝壁が、トレッド平面視にてタイヤ周方向に屈曲するステップ状の屈曲部を有する(図7参照)。これにより、貫通ラグ溝431のエッジ成分が増加して、タイヤのスノー性能が向上する利点がある。
【0117】
また、この空気入りタイヤ1では、周方向主溝22に対するショルダー陸部33の貫通ラグ溝431の開口部とセカンド陸部32の貫通ラグ溝421、422の開口部とが、タイヤ周方向に相互にオフセットして配置される(図2参照)。これにより、左右の陸部のラグ溝の開口部が対向する構成(図示省略)と比較して、タイヤ転動時のパターンノイズが低減される利点がある。特に、最外周方向主溝22に開口する貫通ラグ溝421、422、431の配置構造は、パターンノイズに対する影響が大きい。
【実施例】
【0118】
図10は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【0119】
この性能試験では、複数種類の試験タイヤについて、(1)スノー性能および(2)騒音性能に関する評価が行われた。また、タイヤサイズ265/65R17 112Hの試験タイヤがリムサイズ17×8Jのリムに組み付けられ、この試験タイヤに230[kPa]の空気圧およびJATMA規定の最大負荷が付与される。また、試験タイヤが、試験車両である排気量3.5[L]の四輪駆動のRV(Recreational Vehicle)車の総輪に装着される。
【0120】
(1)スノー性能に関する評価では、試験車両が雪路である所定のハンドリングコースを速度40[km/h]で走行して、テストドライバーが操縦安定性に関する官能評価を行う。この評価は従来例を基準(100)とした指数評価により行われ、その数値が大きいほど好ましい。
【0121】
(2)騒音性能に関する評価では、試験車両が粗い路面を有するテストコースを60[km/h]で走行し、運転席の窓側位置に取り付けられたマイクロフォンにより車内騒音(パターンノイズ)の音圧レベルが測定される。そして、従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、その数値が小さいほど音圧レベルが低くて、好ましい。
【0122】
実施例1〜12の試験タイヤは、図1および図2の構成を基本的に備え、4本の周方向主溝21、22と5列の陸部31〜33とを有する。また、各陸部31〜33が、Z字形状あるいはクランク状に屈曲した複数の貫通ラグ溝411、412、421、422、431と、これらの貫通ラグ溝に区画されて成るブロック列とをそれぞれ備える。また、周方向主溝の溝深さが10.0[mm]であり、貫通ラグ溝411、412、421、422、431の最大溝深さが7.0[mm]である。また、セカンド陸部32の周方向細溝324、324の溝幅Wsが2.0[mm]であり、溝深さが5.0[mm]である。セカンド陸部32の貫通ラグ溝421、422の溝中心線のオフセット量G1、G2(図5参照)が、G1=G2=6.0[mm]である。また、実施例11では、センター陸部31が切欠部313を備え、図2に示すように、セカンド陸部32の貫通ラグ溝421、422の延長線がセンター陸部31の切欠部で合流している。また、実施例12では、ショルダー陸部33が、貫通ラグ溝431および非貫通ラグ溝432の双方を備える。なお、図10において、「CE」はセンター陸部31を示し、「2nd」は左右のセカンド陸部32、32を示し、「SH」は左右のショルダー陸部33、33を示す。
【0123】
従来例の試験タイヤは、実施例1の試験タイヤにおいて、すべての陸部が単一種類の貫通ラグ溝を備え、また、各ラグ溝が直線状あるいは円弧状の溝形状を有する。
【0124】
試験結果に示すように、実施例1〜12の試験タイヤでは、タイヤのスノー性能および騒音性能が向上することが分かる。
【符号の説明】
【0125】
1:空気入りタイヤ、11:ビードコア、12:ビードフィラー、13:カーカス層、14:ベルト層、141、142:交差ベルト、143:ベルトカバー、15:トレッドゴム、16:サイドウォールゴム、17:リムクッションゴム、21、22:周方向主溝、31:センター陸部、311、312:ブロック、313:切欠部、314:面取部、32:セカンド陸部、321、322:ブロック、323、324:周方向細溝、33:ショルダー陸部、411、412、421、422、431:貫通ラグ溝、432:非貫通ラグ溝、5:サイプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10