(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
円形部材が載置される置台と、この置台に対して移動可能に設置されている二次元センサと、この二次元センサを回転させる回転駆動機構と、前記二次元センサによる測定データが入力される演算部とを備えて、
前記置台が上面に上方に突出する凸状支持部を有し、この凸状支持部の上に前記円形部材が無拘束の状態で平置きされる構成にして、前記置台に無拘束状態で平置きされた前記円形部材の内周面に対向して前記二次元センサが所定の測定位置に配置されて、前記円形部材の内側の所定位置を中心にして前記二次元センサを前記回転駆動機構により回転させることにより、前記二次元センサから前記内周面まで離間距離が前記円形部材の全周の範囲で、前記円形部材に非接触で測定され、測定された前記離間距離と、平面視の前記所定位置と前記二次元センサとの距離と、に基づいて前記演算部により前記円形部材の内周長が算出される構成にしたことを特徴とする円形部材の内周長測定装置。
前記二次元センサを水平方向に移動させる水平移動機構を有し、この水平移動機構により前記二次元センサが平面視で前記測定位置に位置決めされる構成にした請求項1に記載の円形部材の内周長測定装置。
前記二次元センサを上下方向に移動させる上下移動機構を有し、この上下移動機構により前記二次元センサが前記内周面と対向する位置に位置決めされる構成にした請求項1または2に記載の円形部材の内周長測定装置。
【背景技術】
【0002】
タイヤ等のゴム製品の製造工程では、ビード部材や円筒形状のゴム部材など、様々な円形部材(円筒部材および円環部材)が使用されている。これら円形部材の内周長は設計上の設定値がある。しかしながら、実物の円形部材の内周長は、製造誤差等に起因して予め設定された設定値に対してズレが生じる。このズレ量が許容範囲内であれば問題はないが、許容範囲を外れる場合には、この円形部材を用いて製造したゴム製品の品質に悪影響が生じ易くなる。そのため、円形部材の内周長を測定して把握する必要がある。
【0003】
従来、円環状のビード部材の内周長の測定装置が種々提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1で提案されている装置では、半円柱状の2つの分割体で構成された円柱状の測定台をビード部材の内側に配置する。ビード部材の内周長を測定する際には、互いの分割体を離間する方向に移動させて、それぞれ分割体の外周面をビード部材の内周面に密着させた状態にする。この時の互いの分割体の離間距離と、分割体の外周面に周長とに基づいてビード部材の内周長を測定する。分割体の外周面をビード部材の内周面に密着させた状態にすることにより、ビード部材には拡径させる力が付与されるので変形が生じる。そのため、内周長の測定精度を向上させるには不利になる。
【0004】
特許文献2で提案されている装置では、ビード部材の内周面に直接、ローラを押圧して接触させる。そして、このローラをビード部材の内周面の上で転動させて周方向に1回転させる。この際のローラの回転数に基づいてビード部材の内周長を測定する。ビード部材の内周面はローラによって直接、押圧されるため、変形が生じる。それ故、内周長の測定精度を向上させるには不利になる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の円形部材の内周長測定装置を、図に示す実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0011】
図1、2に例示する本発明の円形部材の内周長測定装置1(以下、測定装置1という)を用いて、内周長を測定する対象になるのは、タイヤ等のゴム製品に使用されるビード部材や円筒形状のゴム部材など、様々な円形部材12(円筒部材および円環部材)である。
図1では、円形部材12を二点鎖線で示している。測定時には1本の円形部材12が測定装置1にセットされる。
【0012】
測定装置1は、測定対象となる円形部材12が載置される置台4と、置台4に対して移動可能に設置されている二次元センサ8と、二次元センサ8を回転させる回転駆動機構10aと、二次元センサ8による測定データが入力される演算部11とを備えている。演算部11としては種々のコンピュータ等を用いることができる。
【0013】
水平状態の置台4には円形部材12が無拘束状態で平置きされる。無拘束状態とは、円形部材12に重力(自重)に起因する外力以外が作用していない状態である。この実施形態では、置台4が周方向に分割された複数の分割体5で形成されている。それぞれの分割体5は、その上面に上方に突出する凸状支持部6を有している。この凸状支持部6の上に円形部材12が無拘束の状態で平置きされる。棒状の凸状支持部6は円形部材12の半径方向に延在している。
【0014】
置台4は複数の分割体5で形成せずに、分割されていない1つの板状体で形成してもよい。凸状支持部6の本数は、少なくとも3本にして、例えば3〜12本の適宜の本数にする。
【0015】
置台4はフレーム2に取り付けられている。フレーム2はベースフレーム2aと可動フレーム2bとで構成され、可動フレーム2bの一端部はベースフレーム2aに回転可能に接続されている。可動フレーム2bは起伏機構3によってベースフレーム2aに対して起伏可能になっている。例えば、
図3に示すように、可動フレーム2bは水平状態から鉛直になるまでの所定の角度範囲で起伏して起立状態になる。これに伴い、置台4も水平状態から起立した状態に起伏可能になっている。起伏機構3としては油圧シリンダ等を用いることができる。
【0016】
置台4の表面には間隔をあけてその表面から突出する複数の突出部7が設けられている。それぞれの突出部7は出没機構7aによって移動して、置台4の表面に対して出没可能になっている。出没機構7aとしては、エアシリンダや油圧シリンダ等を用いることができる。2つの突出部7が組になって使用され、組みになる突出部7どうしの平面視の間隔および位置は、測定対象になる円形部材12の内径に基づいて設定されている。
【0017】
二次元センサ8は、平面視で置台4の中央部に配置されていて、置台4に平置きされた円形部材12の内側に配置される。二次元センサ8は、水平移動機構10bにより円形部材12の半径方向に移動可能になっている。これにより、平置きされた円形部材12の内周面12aに対向して配置された二次元センサ8は、内周面12aに対して近接および離反する方向に移動することができる。
【0018】
二次元センサ8および水平移動機構10bは、平面視で置台4の所定位置(例えば、置台4の中心)に配置されて上下に延在する回転軸9に支持されている。回転軸9は回転駆動機構10aによって、その軸心を中心に回転駆動される。これに伴い、二次元センサ8は回転軸9を中心にして回転駆動される。
【0019】
二次元センサ8としてはレーザセンサを用いることができる。二次元センサ8は照射したレーザ光を内周面12aで反射させ、反射したレーザ光を受光することにより、二次元センサ8から内周面12aまでの離間距離dを円形部材12に非接触で測定する。二次元センサ8は、レーザ光を内周面12aの一点だけに照射するのではなく、一度にある程度の長さの範囲に照射して、二次元センサ8と照射した範囲の内周面12aとの間の離間距離dを測定する。
【0020】
二次元センサ8により測定された離間距離dは演算部11に入力される。また、平面視の回転軸9(軸心)の位置と二次元センサ8との距離wも演算部11に入力される。
【0021】
以下、この測定装置1を用いて円形部材12の内周長Lを測定する手順を説明する。
【0022】
置台4に円形部材12を平置きするには、まず、
図3に例示するように、置台4を所定角度にして起立させた状態にする。そして、円形部材12の内径に基づいて選択した2つの突出部7を置台4の表面から突出させた状態にする。水平に対する起立状態の置台4の傾斜角度は例えば、45°以上75°以下にする。
【0023】
次いで、円形部材12の内周面12aを置台4の表面から突出している2つ突出部7に係合させることにより、円形部材12を置台4に移載する。これにより、円形部材12は、内周面12aが2つの突出部7により支持されるとともに、下面12bが凸状支持部6によって支持された状態になる。大型の円形部材12の場合は、クレーン等を用いて移載する。
【0024】
次いで、
図2に例示するように、起伏機構3によって置台4を倒伏させて水平状態にする。その後、突出部7を置台4の表面下に没入させた状態にする。これにより、円形部材12は置台4に無拘束の状態で平置きされる。
【0025】
このようにして円形部材12を起立した状態の置台4に移載することで、大型で重量の大きな円形部材12であっても、比較的省スペースで置台4への移載作業を行うことができる。本発明により内周長Lを測定する円形部材12の内径は特に限定されないが、例えば内径が500mm〜2000mm程度であっても本発明を適用することができる。起立状態の置台4において2つの突出部7に円形部材12の内周面を係合させることで、置台4に対して円形部材12を位置決めすることができる。
【0026】
そして、起立した状態の置台4を水平状態にすれば、置台4に対して所望の位置に位置決めした状態で円形部材12を平置きすることができる。したがって、平置きした際に円形部材12を所望の位置に位置決めできる位置に、平面視での置台4における突出部7の位置を設定する。例えば、平置きした際の円形部材12の円中心の位置が、回転軸9の位置から20mm以下の範囲になるように、平面視での置台4における突出部7の位置を設定する。また、組となって使用する2つの突出部7の平面視の間隔が狭すぎると、起立状態の置台4では円形部材12を安定して保持し難くなるので、互いの突出部7の間には適度な間隔を確保する。
【0027】
円形部材12の内径が異なれば、平置きした際に円形部材12を所望の位置に位置決めするための突出部7の位置が異なる。そこで、例えば、円形部材12の内径のサイズ毎に、使用する2つの突出部7の適切な平面視の位置および間隔を設定し、その適切な位置に突出部7を設置するとよい。この実施形態では、そのように2つの突出部7の平面視の位置および間隔を適切に設定することにより、内径サイズが異なる円形部材12であっても、平置きした際に円形部材12の円中心が概ね回転軸9の位置になるように設定されている。内径サイズが異なる種々の円形部材12を、置台4に対して所望の位置に精度よく位置決めして平置きすることができるので、高い汎用性を有している。
【0028】
次いで、円形部材12の内周面12aに対向する二次元センサ8を、必要に応じて内周面12aに向かって水平移動機構10bにより移動させて所定の測定位置で停止させる。即ち、内周面12aが二次元センサ8による測定可能範囲に入るように二次元センサ8を移動させる。したがって、置台4に無拘束の状態で平置きされている円形部材12の内周面12aが、当初の位置にある二次元センサ8の測定可能範囲にあるならば、二次元センサ8を水平移動機構10bによって移動させる必要はない。水平移動機構10bを採用することで、内径サイズの異なる様々な円形部材12に対して二次元センサ8を容易に測定可能範囲にセットすることができる。
【0029】
次いで、
図4、
図5に例示するように、所定の測定位置に位置決めした二次元センサ8を回転軸9を中心にして回転させつつ、二次元センサ8から内周面12aまでの離間距離dを測定し、円形部材12の全周の範囲で離間距離dを測定する。測定した離間距離dは演算部11に入力される。平面視の回転軸9と所定の測定位置にある二次元センサ8との距離wは把握できるので、この距離wも演算部11に入力される。したがって、平面視の回転軸9の軸心から内周面12aまでの距離(w+d)を、円形部材12の全周の範囲で把握することができる。
【0030】
ここで、ある位置で離間距離dを測定してから次の位置で離間距離dを測定するまでに二次元センサ8が回転軸9を中心にして回転する角度は微小角度A(rad)である。例えば、この微小角度Aは、2π/15000(rad)程度である。
【0031】
円形部材12の内周長Lを算出する方法は幾つかあるが、例えば次のとおり算出する。
図6に例示するように、回転軸9の軸心を原点として、二次元センサ8が検知する円形部材12の内周面12a上の任意の位置P1(X,Y)と、位置Pの次に検知する位置P2(x,y)とを想定する。平面視の回転軸9の軸心から位置P1までの距離をw+d1とし、回転軸9の軸心から位置P2までの距離をw+d2とする。基準点Cから位置P1までの回転角度をθとすると、位置P1(X,Y)の座標は、X=(w+d1)cosθ、Y=(w+d1)sinθとなる。位置P2(x,y)の座標は、x=(w+d2)cos(θ+A)、y=(w+d2)sin(θ+A)となる。基準点Cの座標、回転角度θ、微小角度A、距離(w+d1)、(w+d2)は把握できるので、位置P1(X,Y)と位置P2(x、y)の座標は求めることができる。微小角度Aでの微小内周長L1は、L1={(X―x)
2+(Y−y)
2}
1/2と近似できる。そこで、演算部11では、この微小内周長L1を、円形部材12の全周で積算することにより内周長Lを算出する。尚、
図6では、微小角度Aを説明のため実際よりも誇張して大きな角度で記載している。
【0032】
二次元センサ8では、一度に上下方向の所定長さ範囲にレーザ光を照射して、二次元センサ8と照射した範囲の内周面12aとの間の離間距離dを測定している。そこで、内周長Lを算出する際の離間距離dとしては、例えば、内周面12aの上下方向中心位置での離間距離dや所定の上下方向位置での離間距離dなど、任意の上下方向位置での離間距離dを採用することができる。
【0033】
上述したように本発明によれば、置台4に無拘束の状態で平置きした円形部材12の内周長Lを円形部材12とは非接触な二次元センサ8を用いて測定する。それ故、円形部材12には不要な負荷が付与されることがなく、強制的な変形は生じない。したがって、円形部材12の内周長Lを精度よく測定するには有利になっている。
【0034】
この実施形態では、無拘束の状態で置台4に平置きされた円形部材12に隣接する置台4の隣接部分の表面が、二次元センサ8が照射するレーザ光に対して乱反射する低反射面6aで構成されている。具体的には、凸状支持部6の上面および内周側端面は、表面を微小凹凸にするブラスト処理などが施された低反射面6aになっている。これにより、凸状支持部6の上面および内周側端面にレーザ光が当たっても乱反射するので二次元センサ8に受光されることがない。これに伴い、ピンポイントではなく、ある程度の範囲にレーザ光を照射する二次元センサ8であっても、離間距離dを測定する際の測定ノイズを低減することができる。
【0035】
離間距離dを二次元センサ8により測定する際には、突出部7は置台4の表面下に没入している。そのため、二次元センサ8が照射するレーザ光を突出部7が遮断して邪魔になることはない。
【0036】
また、円形部材12が上方に突出する凸状支持部6に支持されているので、二次元センサ8の測定中心と円形部材12の内周面12aの上下方向中心とを位置合わせし易くなっている。そして、円形部材12の凸状支持部6に支持されていない部分では、内周面12aは空中に浮いた状態になるため、内周面12aに隣接する置台4の隣接部分が最小限になる。これに伴い、二次元センサ8により離間距離dを測定する際の測定ノイズを低減するには有利になっている。
【0037】
置台4は起伏可能な構成にすることなく、水平状態のままの置台4を採用することもできる。この仕様の場合は、フレーム2の水平に固定された上面(枠組み)に置台4が設置される。この置台4に対して、横倒し状態の円形部材12を載置する。大型の円形部材12の場合は、クレーン等によって円形部材12を横倒し状態で吊って置台4に移載する。
【0038】
図7に例示する測定装置1の別の実施形態は、先の実施形態に対して上下移動機構10cが追加されているだけで、その他の構成は同じである。上下移動機構10cは、二次元センサ8を上下方向に移動させる。
【0039】
上下移動機構10cとしては、油圧シリンダ等を用いることができる。内周長Lを測定する前に、二次元センサ8は上下移動機構10cにより円形部材12の内周面12aと対向する位置に位置決めされる。このようにして測定位置に位置決めされた二次元センサ8は、回転軸9を中心にして回転しつつ、二次元センサ8から内周面12aまでの離間距離dを測定し、円形部材12の全周の範囲で離間距離dを測定する。円形部材12の内周長Lを算出する方法は先の実施形態と同様である。
【0040】
この実施形態では、二次元センサ8を内周面12aの上下位置に応じて所望の位置に精度よく位置決めすることができる。測定をしない場合は、例えば、二次元センサ8を置台4の表面やフレーム2の表面よりも下方位置に移動させて待機させる。これにより、移動中の円形部材12やその他の物が二次元センサ8に衝突して損傷する等のトラブルを回避できる。