特許第6206587号(P6206587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206587
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/14 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   B65G47/14 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-525151(P2016-525151)
(86)(22)【出願日】2015年5月29日
(86)【国際出願番号】JP2015065692
(87)【国際公開番号】WO2015186645
(87)【国際公開日】20151210
【審査請求日】2016年11月2日
(31)【優先権主張番号】特願2014-115490(P2014-115490)
(32)【優先日】2014年6月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114502
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 俊則
(72)【発明者】
【氏名】原田 真稔
【審査官】 中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第8710387(US,B2)
【文献】 特開2005−015149(JP,A)
【文献】 特開2004−315227(JP,A)
【文献】 実開平03−015822(JP,U)
【文献】 特開昭49−115664(JP,A)
【文献】 特開2013−053936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/00−47/20、47/80
B65G 19/02、19/22、19/30
H05K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを収容可能である収容部を有する搬送部材と、
前記収容部に収容された前記ワークが接触可能である搬送面を有する基台と、
を備え、前記搬送部材が前記基台に対して相対移動することによって、前記収容部に収容された前記ワークが前記搬送面に接しながら搬送方向下流側に搬送される搬送装置において、
前記基台に、
前記搬送面に対して窪む方向に設けられ、前記ワークの角が入ることが可能である穿穴部と、
前記搬送面に対して窪む方向に設けられ、前記ワークの前記角が入ることが可能であり、前記穿穴部のうち前記搬送方向下流側に接続され前記搬送方向下流側に延在する逃がし部と、
が形成され、
前記穿穴部と前記逃がし部とが接続される接続部分は、前記穿穴部に前記角が入っている前記ワークが前記接続部分を通過するときに前記ワークと干渉しないように形成され、
前記逃がし部は、
前記逃がし部に入っている前記ワークの前記角に対向する底面の前記搬送面からの深さが、前記搬送方向下流側に向かうにつれて小さくなる第1の抜け出し領域、
前記角が前記逃がし部に入っている前記ワークに、前記ワークの搬送方向に交差する方向の両側から接して前記ワークを挟む部分の幅が、前記搬送方向下流側に向かうにつれて小さくなる第2の抜け出し領域、
前記逃がし部に入っている前記ワークの前記角に対向する底面の前記搬送面からの深さが、前記搬送方向下流側に向かうにつれて小さくなり、かつ、前記角が前記逃がし部に入っている前記ワークに、前記ワークの搬送方向に交差する方向の両側から接して前記ワークを挟む部分の幅が、前記搬送方向下流側に向かうにつれて小さくなる第3の抜け出し領域、
のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする、搬送装置。
【請求項2】
前記逃がし部の前記第1乃至第3の抜け出し領域の少なくとも一つは、前記ワークの前記角が前記穿穴部に入ることなく前記ワークが前記穿穴部上を通過して前記搬送方向下流側に搬送される通常搬送方向から離れる方向に延在する部分を含むことを特徴とする、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記穿穴部が真空源に接続されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置に関し、詳しくは、基台に対して搬送部材が相対移動する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基台に対して搬送部材が相対移動する搬送装置は、電子部品の特性を測定する工程や、電子部品を包装する工程等において用いられている。
【0003】
例えば、図9は、積層セラミックコンデンサの特性測定に用いる搬送装置の説明図である。図9に示すように、ワークWは、搬送部材102に形成された貫通孔である収容部104に収容される。搬送部材102は基台101の上に配置され、基台101に対して回転し、矢印Aで示す方向に移動する。この移動に伴って、ワークWは基台101の上面(搬送面)に接しながら搬送される。
【0004】
測定部106として、基台101の所定位置に下側プローブ161が設けられ、搬送面から露出している。また、搬送部材102の上には、下側プローブ161に対向する位置に、ローラ状の上側プローブ160が配置されている。ワークWが上下のプローブ160,161間を通過すると、ワークWの外部電極Wa,Wbがプローブ160,161に接触し、プローブ160,161を介してワークWの電気的特性が測定される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−53936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、ワークを吸引したり、プローブを進退させたりする場合などには、基台の搬送面に、搬送面に対して窪む方向に穿穴部が形成される。
【0007】
図7は、ワーク2と穿穴部12を示す説明図である。図7(a)は、互いに直交するX方向、Y方向、Z方向のうち、Z方向正側から負側に基台の搬送面10sを見た平面図である。ワーク2の搬送方向は、X方向である。図7(b)及び図7(c)は、図7(a)の線F−Fに沿って見た断面図であり、ワーク2の搬送方向の上流側から下流側を見た断面図である。
【0008】
図7(a)に示すように、直方体形状のワーク2の幅が、基台の搬送面10sにおける穿穴部12の開口の寸法よりも小さい場合、図7(b)に示すようにワーク2が穿穴部12を跨いでいると、ワーク2は、X方向に問題なく搬送される。しかしながら、図7(c)に示すように、ワーク2の角2kが穿穴部12に入ると、ワーク2のX方向の搬送に伴ってワーク2の角2kが穿穴部12からうまく出ることができなければ、ワーク2が穿穴部12にかみ込み、ワーク2に傷や欠けなどの不良が発生する。
【0009】
図8は、ワーク2と穿穴部12xを示す説明図である。図8(a)は、基台の搬送面10sを見た平面図である。図8(b)は、基台の搬送面10sを見た要部拡大透視図である。ワーク2の搬送方向は、X方向である。
【0010】
図8(a)に示すように、基台の搬送面10sにおける穿穴部12xの開口の寸法をワーク2の幅より小さくすれば、上述したようなワーク2の不良は、発生確率が小さくなる。例えば図8(b)に示したように、ワーク2の角2kが穿穴部12xに入っても、ワーク2の辺2p,2q,2rが穿穴部12xの外縁12wに接するため、ワーク2の搬送に伴ってワーク2の角2kが穿穴部12xからうまく出ることもある。しかしながら、ワーク2の傾く角度が大きければワーク2が穿穴部12xにかみ込み、依然としてワーク2に傷や欠けなどの不良が発生してしまう。
【0011】
また、基台の搬送面10sにおける穿穴部12xの開口の寸法をワーク2の幅より小さくすることが容易でない場合がある。例えば、ワーク2の小型化に対応して穿穴部12xの寸法を小さくすると、穿穴部12xの加工が困難になったり、穿穴部12xを介して吸引しても所望の吸引力が得られなかったりする。
【0012】
かかる実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、基台の搬送面に形成された穿穴部にワークの角が入ることによってワークに不良が発生することを抑制できる搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した搬送装置を提供する。
【0014】
搬送装置は、ワークを収容可能である収容部を有する搬送部材と、前記収容部に収容された前記ワークが接触可能である搬送面を有する基台とを備え、前記搬送部材が前記基台に対して相対移動することによって、前記収容部に収容された前記ワークが前記搬送面に接しながら搬送方向下流側に搬送されるタイプのものである。前記基台に、前記搬送面に対して窪む方向に設けられ、前記ワークの角が入ることが可能である穿穴部と、前記搬送面に対して窪む方向に設けられ、前記ワークの前記角が入ることが可能であり、前記穿穴部のうち前記搬送方向下流側に接続され前記搬送方向下流側に延在する逃がし部とが形成されている。前記穿穴部と前記逃がし部とが接続される接続部分は、前記穿穴部に前記角が入っている前記ワークが前記接続部分を通過するときに前記ワークと干渉しないように形成される。前記逃がし部は、(a)前記逃がし部に入っている前記ワークの前記角に対向する底面の前記搬送面からの深さが、前記搬送方向下流側に向かうにつれて小さくなる第1の抜け出し領域、(b)前記角が前記逃がし部に入っている前記ワークに、前記ワークの搬送方向に交差する方向の両側から接して前記ワークを挟む部分の幅が、前記搬送方向下流に向かうにつれて小さくなる第2の抜け出し領域、(c)前記逃がし部に入っている前記ワークの前記角に対向する底面の前記搬送面からの深さが、前記搬送方向下流側に向かうにつれて小さくなり、かつ、前記角が前記逃がし部に入っている前記ワークに、前記ワークの搬送方向に交差する方向の両側から接して前記ワークを挟む部分の幅が、前記搬送方向下流側に向かうにつれて小さくなる第3の抜け出し領域、のうち少なくとも一つを含む。
【0015】
上記構成によれば、ワークの角が穿穴部に入っても、ワークの角は逃がし部に入り、第1乃至第3の抜け出し領域の少なくとも一つを通過して逃がし部から出るため、ワークが穿穴部にかみ込まないようにすることができる。その結果、穿穴部にワークの角が入ることに起因するワーク不良の発生を抑制することができる。
【0016】
好ましくは、前記逃がし部の前記第1乃至第3の抜け出し領域の少なくとも一つは、前記ワークの前記角が前記穿穴部に入ることなく前記ワークが前記穿穴部上を通過して前記搬送方向下流側に搬送される通常搬送方向から離れる方向に延在する部分を含む。
【0017】
この場合、穿穴部に入ったワークの角を、通常搬送方向から離れる方向に延在する部分に沿って移動させることによって、ワークを所望方向に傾け、逃がし部を通過した後のワークの姿勢を制御することができる。
【0018】
好ましくは、前記穿穴部が真空源に接続される。
【0019】
この場合、ワークの角が穿穴部に入りやすく、穿穴部に入ると穿穴部から出にくいため、特に本発明による効果が顕著である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、基台の搬送面に形成された穿穴部にワークの角が入ることによってワークに不良が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1(a)は基台の斜視図であり、図1(b)及び図1(c)は基台の断面図である。(実施例1)
図2図2(a)は基台の平面図であり、図2(b)は基台の断面図である。(実施例1)
図3図3は逃がし部の加工方法の説明図である。(実施例1)
図4図4(a)及び図4(b)はワークの角が穿穴部に入った状態を示す図であり、図4(a)は平面図、図4(b)は断面図である。(実施例1)
図5図5は基台の平面図である。(実施例2)
図6図6はワークの角が逃がし部に入る状態を示す断面図である。(実施例2)
図7図7(a)及び図7(b)はワークと穿穴部を示す説明図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は断面図、図7(c)は断面図である。(説明例1)
図8図8(a)及び図8(b)はワークと穿穴部を示す説明図であり、図8(a)は平面図、図8(b)は要部拡大透視図である。(説明例2)
図9図9は積層セラミックコンデンサの特性測定に用いる搬送装置の説明図である。(従来例1)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図1図6を参照しながら説明する。
【0023】
<実施例1> 実施例1の搬送装置について、図1図4を参照しながら説明する。
【0024】
図1(a)は、搬送装置の基台10の斜視図である。図1(b)は、図1(a)の線A−Aに沿って切断した断面図である。図1(c)は、図1(a)の線B−Bに沿って切断した断面図である。図2(a)は、基台10の平面図である。図2(b)は、図2(a)の線C−Cに沿って切断した断面図である。
【0025】
図1(b)及び図1(c)に示すように、基台10の上面10aは、XY方向に延在する平面であり、Z軸に垂直な平面である。基台10の上には、鎖線で示す搬送部材20が配置される。搬送部材20は、図示したように基台10の上面10aとの間に隙間を形成するように配置されている。搬送部材20は、基台10の上面10aに接するように配置されても構わない。
【0026】
搬送部材20には、ワーク2を収容可能である収容部22が形成されている。例えば、板状の搬送部材20に、収容部22として、貫通穴が形成されている。なお、搬送部材20は板状以外の形状でもよい。搬送部材に形成される収容部は、非貫通穴や、搬送部材の外周に沿って切り欠かれた凹部などの形状でもよい。
【0027】
ワーク2は、直方体、円柱などの形状を有する。ワーク2は、例えば、寸法が数mm程度の完成品の電子部品である。
【0028】
搬送部材20は、図1(a)及び(b)においてX方向正側に、基台10に対して相対移動し、収容部22に収容されたワーク2は、基台10の上面10aに接しながら搬送方向下流側(X方向正側)に搬送される。例えば、搬送部材20が基台10に対して回転したり、直線状又は曲線状の一定の経路を移動したりする。搬送部材20が静止し、基台10が移動しても、搬送部材20と基台10の両方が移動しても構わない。例えば、搬送部材20は基台10に対して回転し、収容部22は0.0001〜0.0150m/s程度の速度で移動する。
【0029】
基台10の上面10aのうち、ワーク2が接しながら移動する部分が搬送面10sとなる。搬送面10sは、基台10の上面10aのうち搬送面10s以外の部分に対して、面一であるが、必ずしも面一である必要はなく、レール状に突出しても、溝状に凹んでいても構わない。搬送面10sは、平面であっても曲面であっても構わない。搬送部材20の上からワーク2を基台10側に押圧しても構わない。
【0030】
搬送部材20と、基台10の上面10aのうち少なくとも搬送面10sとは、金属又は樹脂で形成できる。
【0031】
図1及び図2に示すように、基台10には、基台10の搬送面10sに対して窪む方向(Z方向負側)に穿穴部12と逃がし部14とが形成されている。図1(b)及び(c)に示すように、穿穴部12と逃がし部14は、ワーク2の角2kが入ることが可能である。
【0032】
穿穴部12は、例えば、ワーク2を真空吸着するための空気の流路である。穿設部12が空気等の通路となる場合、穿穴部12は、基台10を貫通するように形成される。しかし、穿穴部12が通路としての機能を必要としない場合、穿穴部12は、基台10に対して非貫通でも構わない。穿穴部12は、搬送面10sに噴き出る圧縮空気の流路であっても、搬送面10s側に出没する測定プローブや排出ピンを収容する空間であって、搬送面10s側を観察するためのカメラやセンサなどを収納する空間であっても、ねじ穴であっても構わない。穿穴部12の形状は、円でも長穴でも長方形でも構わない。
【0033】
搬送部材20の収容部22に収容されたワーク2は、通常、基台10の搬送面10sに接した状態のまま、穿穴部12及び逃がし部14の上を通過する。
【0034】
しかしながら、振動や異物付着等の何らかの原因によって、搬送部材20の収容部22に収容されたワーク2の姿勢が乱れたり位置がずれたりして、穿穴部12にワーク2の角2kが入ることがある。この場合、前述したようにワーク2が穿穴部12にかみ込むと、ワーク2に傷や欠けなどの不良が発生する。これを回避するため、穿穴部12に隣接して逃がし部14を形成し、穿穴部12にワーク2の角2kが入っても、逃がし部14によって、ワーク2の角2kを搬送面10sまで戻すように構成する。図2(b)に示すように、逃がし部14は傾斜角θを有している。傾斜角θは、0°<θ<60°が好ましく、0.1°≦θ≦45°がより好ましい。
【0035】
次に、逃がし部14について、図4を参照しながら説明する。図4(a)は、ワーク2の角2kが、穿穴部12に入った状態を示す平面図である。図4(b)は、図4(a)の線Z−Zに沿って切断した断面図である。
【0036】
図4(a)及び(b)に示すように、直方体形状のワーク2の長さをL、幅をW、厚みをTとし、T<L、かつT<W、円筒形状の穿穴部12の内径をDとする。
【0037】
図4(a)に示すように、ワーク2の角2kが穿穴部12に入るとき、ワーク2が穿穴部12に入る幅をPとすると、(D/2)=(P/2)+(T/2) であるから、P=D(1−T/D1/2となる。
【0038】
ワーク2の角2kは直角であるため、ワーク2の角2kは、ワーク2の傾きに応じて、図4(b)において鎖線で示す半円13x上に位置する。この半円13xの直径はPであるから、ワーク2の角2kの搬送面10sからの最大深さをQとすると、Q=P/2であり、Q=D(1−T/D1/2/2となる。
【0039】
図4(a)に示す穿穴部12と逃がし部14とが接続される接続部分13は、穿穴部12に角2kが入っているワーク2が、図4(a)においてX方向に搬送されるときに、ワーク2が接続部分13に干渉することなく、接続部分13を通過できるように、図4(b)に示す半円13xと同じ深さか、それより深くする。すなわち、接続部分13の深さは、穿穴部12にワーク2の角2kが入るときの角2kの搬送面10sからの最大深さQと同じか、それよりも大きくする。
【0040】
逃がし部14は、穿穴部12から逃がし部14に入ったワーク2の角2kが、ワーク2の搬送に伴って逃がし部14から出るように形成する。
【0041】
例えば、逃がし部14の底面を、図1(b)及び図2(b)に示すように斜面とし、この斜面に、逃がし部14に入ったワーク2の角2kが当接し、ワーク2の搬送に伴ってワーク2の角2kが持ち上げられ、ついには逃がし部14から出るようにする。この場合、逃がし部14は、逃がし部14に入っているワーク2の角2kに対向する底面(逃がし部14の底面)の搬送面10sからの深さが、搬送方向下流側(X方向正側)に向かうにつれて小さくなる第1の抜け出し領域となっている。逃がし部14の深さは、徐々に小さくなり最終的に零になることが好ましい。逃がし部14に入っているワーク2の角2kは、この第1の抜け出し領域を通過することによって逃がし部14から出る。
【0042】
あるいは、図2(a)に示すように、逃がし部14の幅が、ワーク搬送方向下流側に向かうにつれて狭くなり、ワーク2が逃がし部14に挟まれた状態で搬送されながら持ち上げられ、ついには逃がし部14から出るようにすることもできる。この場合、逃がし部14は、角2kが逃がし部14に入っているワーク2に、ワーク2の搬送方向(X方向)に交差する方向(Y方向)の両側から接してワーク2を挟む部分(逃がし部14の部分)の幅が、搬送方向下流側(X方向正側)に向かうにつれて小さくなる第2の抜け出し領域となっている。逃がし部14の幅は、徐々に小さくなり最終的に零になることが好ましい。逃がし部14に入っているワーク2の角2kは、この第2の抜け出し領域を通過することによって逃がし部14から出る。
【0043】
あるいは、図2(a)および図2(b)に示すように、逃がし部14の底面と幅の両方を、上記のように構成しても構わない。この場合、逃がし部14は、逃がし部14に入っているワーク2の角2kに対向する底面(逃がし部14の底面)の搬送面10sからの深さが、搬送方向下流側(X方向正側)に向かうにつれて小さくなり、かつ、角2kが逃がし部14に入っているワーク2に、ワーク2の搬送方向に交差する方向(Y方向)の両側から接してワーク2を挟む部分(逃がし部14の部分)の幅が、搬送方向下流側(X方向正側)に向かうにつれて小さくなる第3の抜け出し領域となっている。逃がし部14の深さおよび幅は、徐々に小さくなり最終的に零になることが好ましい。逃がし部14に入っているワーク2の角2kは、この第3の抜け出し領域を通過することによって逃がし部14から出る。
【0044】
また、図示しないが、逃がし部14は第1の抜け出し領域および第2の抜け出し領域が順列的に形成されていてもよい。例えば、第1の抜け出し領域の後に第2の抜け出し領域が設けられてもよいし、第2の抜け出し領域の後に第1の抜け出し領域が設けられてもよい。
【0045】
すなわち、逃がし部14は、第1乃至第3の抜け出し領域の少なくとも一つを含み、逃がし部14に入っているワーク2の角2kは、第1乃至第3の抜け出し領域の少なくとも一つを通過することによって逃がし部14から出る。
【0046】
図3は、逃がし部14の加工方法の説明図である。逃がし部14は、図3に示すように、先端4t側が半球状のドリル4を用いて形成することができる。詳しくは、穿穴部12にドリル4の先端4tを入れ、ドリル4の回転中心軸を基台10の上面10aに対して垂直に保ちながら、矢印X1で示すように、基台10の上面10aに対して斜め方向にドリル4を直線移動させながら、基台10を切削する。この場合、逃がし部14の傾斜角θ(すなわち、ドリル4を基台10の上面10aに対して斜めに直線移動させる方向と基台10の上面10aとがなす角)は、0°<θ<60°が好ましく、0.1°≦θ≦45°がより好ましい。なお、逃がし部14は、上記以外の方法で形成することも可能である。
【0047】
図2乃至図4に示す穿穴部12の外縁12sや逃がし部14の外縁14sは、面取り加工されても、されなくても構わない。ワーク2の角2kが穿穴部12や逃がし部14の入る深さは、面取りの形状や大きさに応じて変わる。穿穴部12の外縁12sや逃がし部14の外縁14sが面取り加工されていなければ、逃がし部14を最も浅くすることができる。一方、面取り加工によって、穿穴部12の外縁12sや逃がし部14の外縁14sによるワーク2の傷を抑制することができる。
【0048】
次に、実施例1の搬送装置の作用・効果を説明する。搬送部材20は、基台10に対して相対移動する。穿穴部12及び逃がし部14よりも搬送方向上流側において、搬送部材20の収容部22に、ワーク2が収容される。搬送部材20の移動に伴って、収容部22に収容されたワーク2は、穿穴部12及び逃がし部14を通過する。このとき、ワーク2の角2kが穿穴部12に入ると、ワーク2の搬送に伴って、ワーク2の角2k及びその近傍部分は、穿穴部12と逃がし部14との接続部分13に干渉することなく、接続部分13を通過し、逃がし部14に入る。そして、ワーク2の角2k及びその近傍部分は、逃がし部14の第1乃至第3の抜け出し領域のうち一つを通過し、逃がし部14から出て搬送面10sに戻る。そのため、ワーク2は、穿穴部12にかみ込まない。その結果、本発明の実施例1の搬送装置は、穿穴部12にワーク2の角2kが入ることに起因するワーク不良の発生を抑制することができる。
【0049】
例えば、穿穴部12は形成されているが、逃がし部14は形成されてない比較例1の搬送装置では、1000個中1個の頻度でワーク2に割れや欠けが発生した。これに対し、穿穴部12に隣接して逃がし部14が形成された実施例1の搬送装置では、ワーク2に割れや欠けが発生しなかった。
【0050】
特に、穿穴部12が真空源に接続され、ワーク2が吸引される場合、ワーク2の角2kが穿穴部12に入りやすく、穿穴部に入ると穿穴部12から出にくいため、逃がし部14がなければ、穿穴部12にワーク2の角2kが入ることによってワーク2に不良が発生しやすい。そのため、穿穴部12が真空源に接続される場合には、特に本発明による効果が顕著である。
【0051】
<実施例2> 実施例2の搬送装置について、図5及び図6を参照しながら説明する。図5は、基台10の平面図である。図6(a)は、図5の線B1−B1に沿って切断した断面図である。図6(b)は、図5の線B2−B2に沿って切断した断面図である。図6(c)は、図5の線B3−B3に沿って切断した断面図である。図6(d)は、図5の線B4−B4に沿って切断した断面図である。
【0052】
実施例2の搬送装置は、実施例1の搬送装置と略同様に構成されている。以下では、実施例1との相違点を中心に説明する。
【0053】
図5に示すように、基台10には、実施例1と同じく、基台10の搬送面10sに対して窪む方向(Z方向負側)に穿穴部12と逃がし部16とが形成されている。鎖線で示した実施例1の逃がし部14は、ワーク搬送方向(X方向)に延在しているのに対し、実施例2の逃がし部16は、ワーク搬送方向(X方向)に対して斜めに延在している。すなわち、実施例2の逃がし部16は、ワーク2の角2kが穿穴部12に入ることなくワーク2が穿穴部12上を通過して搬送方向下流側に搬送される通常搬送方向から離れる方向に延在する部分を含んでいる。なお、逃がし部は、通常搬送方向から離れる方向に延在する部分以外に、通常搬送方向と平行に延在する部分や、通常搬送方向に接近する方向に延在する部分などを含んでもよい。
【0054】
図5及び図6に示すように、実施例2の逃がし部16は、ワーク2の搬送方向上流側から下流側を見ると、ワーク2の通常搬送方向に対して右側に離れるように延在している。
【0055】
図6(a)に示すように、搬送部材20の収容部22に直立姿勢で収容されるべきワーク2の右下の角2kが穿穴部12に入ると、ワーク2は右側に傾く。ワーク2が搬送されると、図6(b)に示すように、ワーク2の右下の角2kが逃がし部16に入る。そして、図6(c)及び(d)に示すように、ワーク2の搬送に伴って、ワーク2の右下の角2kが逃がし部16に沿って移動する。このとき、図6に示したように、ワーク2の右下の角2kは右側に移動し、ワーク2の右側が搬送部材20に当接する位置が規制されるため、ワーク2の右側への傾きは、ワーク2の搬送に伴って次第に小さくなる。これによって、ワーク2が逃がし部16から出たときに、ワーク2の姿勢が元の直立姿勢に戻るようにすることができる。
【0056】
これとは逆に、ワーク2の搬送方向上流側から下流側を見たときに、ワーク搬送方向に対して左側に離れるように逃がし部が延在している場合、図6(a)のようにワーク2の右下の角2kが逃がし部に入ると、ワークの搬送に伴って、右下の角2kが逃がし部に沿って左側に移動し、ワーク2が右側にさらに傾くようにすることができる。これによって、ワーク2が逃がし部から出たときに、ワーク2の姿勢が、直立姿勢から90°倒れた横倒姿勢になるようにすることができる。
【0057】
実施例2のように逃がし部16が通常搬送方向から離れる方向に延在する部分を含んでいると、穿穴部12に入ったワーク2の角2kを、通常搬送方向から離れる方向に延在する部分に沿って移動させることによって、ワーク2を所望方向に傾け、逃がし部16を通過した後のワーク2の姿勢を制御することができる。
【0058】
<まとめ> 以上に説明したように、穿穴部12の搬送方向下流側に逃がし部14,16を設けることによって、穿穴部12にワーク2の角2kが入ることによってワーク2に不良が発生することを抑制できる。
【0059】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。
【0060】
例えば、逃がし部の搬送方向下流側が分岐し、逃がし部が第1乃至第3の抜け出し領域のうち複数を含むように構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の搬送装置は、電子部品の特性を計測して選別する特性選別機や、電子部品の外観を検査して良品と不良品を選別する外観選別機や、電子部品を実装する実装機や、パーツフィーダなどに用いることができる。また、電子部品以外の部品を搬送する用途にも用いることができる
【符号の説明】
【0062】
2 ワーク
2k 角
10 基台
10a 上面
10s 搬送面
12,12x 穿穴部
13 接続部分
14,16 逃がし部
20 搬送部材
22 収容部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9