(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
導線により形成されるスロット収容部とコイルエンド部とを有するコイルを、バックヨークからそれぞれ径方向内側へ向けて延びる複数のティースと2つの前記ティースの間に形成されるスロットとを有する円環状のステータコアに装着するステータ組立方法であって、
複数の前記コイルが円環状に配置され、かつ、周方向に離れた2つの前記コイルの前記スロット収容部が前記ステータコアの同じ前記スロットに収容されるスロット収容束を有するコイルアッセンブリを形成するコイルアッセンブリ形成工程と、
前記コイルアッセンブリの、周方向に隣接して配置される2つの前記スロット収容束の間に形成されるティース穴に対して、ガイド面を形成するためのガイド治具を移動させて挿入し、該ガイド治具を前記コイルアッセンブリに配置する治具配置工程と、
前記コイルアッセンブリが前記ステータコアの内径側空間に配置され、かつ、前記ガイド治具の前記ガイド面が前記ティースの壁面と平行である状態で、該コイルアッセンブリを構成する複数の前記コイルを内径側から外径側へ放射状に押し出すことにより、該複数の前記コイルを前記ガイド治具でガイドしつつ、前記コイルの前記スロット収容部を前記ステータコアの前記スロットへ挿入するコイル挿入工程と、
を備えることを特徴とするステータ組立方法。
前記治具配置工程は、前記ガイド治具を、前記ティース穴に前記コイルアッセンブリの外径側から内径側へ向けて挿入することにより、前記コイルアッセンブリに配置することを特徴とする請求項1又は2記載のステータ組立方法。
前記コイルアッセンブリは、それぞれ前記スロット収容部が同じ前記スロットに収容される2つの前記コイル同士の組み付けが、前記スロット収容部の前記導線が径方向に交互に並ぶように行われるものであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項記載のステータ組立方法。
導線により形成されるスロット収容部とコイルエンド部とを有するコイルを、バックヨークからそれぞれ径方向内側へ向けて延びる複数のティースと2つの前記ティースの間に形成されるスロットとを有する円環状のステータコアに装着するステータ組立装置であって、
複数の前記コイルが円環状に配置され、かつ、周方向に離れた2つの前記コイルの前記スロット収容部が前記ステータコアの同じ前記スロットに収容されるスロット収容束を有するコイルアッセンブリの、周方向に隣接して配置される2つの前記スロット収容束の間に形成されるティース穴に対して移動されて挿入され、該コイルアッセンブリに配置される、ガイド面を形成するためのガイド治具と、
前記コイルアッセンブリが前記ステータコアの内径側空間に配置され、かつ、前記ガイド治具の前記ガイド面が前記ティースの壁面と平行である状態で、該コイルアッセンブリを構成する複数の前記コイルを内径側から外径側へ放射状に押し出すことにより、該複数の前記コイルを前記ガイド治具でガイドしつつ、前記コイルの前記スロット収容部を前記ステータコアの前記スロットへ挿入する押出手段と、
を備えることを特徴とするステータ組立装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて、本発明に係るステータ組立方法及びステータ組立装置の具体的な実施の形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施例であるステータ組立方法及びステータ組立装置を用いて組み立てが完了したステータの斜視図である。
図2は、本実施例において複数の同芯巻きコイルから円環籠状のコイルアッセンブリを形成する手順を表した図を示す。また、
図3は、本実施例における同じスロットにスロット収容部が収容される同相の2つの同芯巻きコイルの位置関係を表した図を示す。尚、
図3(A)には軸中心側から見た際の図を、
図3(B)には軸方向側から見た際の図を、それぞれ示す。
【0014】
本実施例のステータ組立装置10は、例えば三相交流モータなどの回転電機に用いられる固定子であるステータ12を組み立てる装置である。ステータ12は、回転子であるロータに対して径方向外側に所定のエアギャップを介して配置され、通電によってロータを回転させる磁界を発生する部材である。ステータ12は、ステータコア14と、ステータコイル16と、を備えている。
【0015】
ステータコア14は、中空円筒状に形成された部材である。ステータコア14の内径側には、ロータを収容するための空間(内径側空間)18が形成されている。尚、ステータコア14は、絶縁コーティングされた複数の電磁鋼板を軸方向に積層して形成されていてもよい。また、ステータコア14の径方向外側端面には、絶縁コーティングされた軟磁性体粉末を圧縮成型した材料で形成された円筒状のヨークが取り付けられていてもよい。
【0016】
ステータコア14は、円環状に形成されるバックヨーク20と、バックヨーク20の径方向内側端面から径方向内側(軸中心側)へ向けて延びるティース22と、を有している。ティース22は、バックヨーク20に対して周方向に複数(例えば、48個)設けられており、周方向に沿って等間隔で設けられている。周方向に隣接する2つのティース22の間には、ステータコイル16が保持されるスロット24が形成されている。
【0017】
ステータコア14には、ステータ12をモータケースに取り付け固定するための耳部26が設けられている。耳部26は、ステータコア14本体(具体的には、バックヨーク20)の径方向外側端面(外周面)から径方向外側へ向けて突出した山型形状に形成されている。耳部26は、周方向に離れて複数箇所(例えば3箇所)設けられている。各耳部26には、軸方向に貫通する貫通穴28が設けられている。ステータ12は、耳部26の貫通穴28を貫通するボルトがモータケースを介してナット締結されることによりモータケースに固定される。
【0018】
また、ステータコイル16は、導線により形成されている。この導線は、導電性の高い例えば銅やアルミニウム等の金属により構成されている。また、この導線は、断面が円形状に形成されたものであってもよいが、断面が矩形状(具体的には、長方形)に形成された平角導線であってもよい。以下、この導線は、平角導線であるものとする。尚、この平角導線の断面角部は、R加工されていてもよい。ステータコイル16は、ステータコア14に対して周方向に複数(例えば、48個)配設される。
【0019】
各ステータコイル16はそれぞれ、所定複数周(例えば5周)巻回された導線が曲げ加工されることにより成形される同芯巻きコイル(カセットコイル)である。以下、各ステータコイル16を同芯巻きコイル16と称す。各同芯巻きコイル16はそれぞれ、一本の直線状の導線が巻線形成装置により楕円形状に形成されつつ所定複数周巻回された後に成形装置により略六角形状又は略八角形状に曲げ加工されることにより成形される。
【0020】
各同芯巻きコイル16は、スロット収容部30,32と、コイルエンド部34,36と、を有している。スロット収容部30,32はそれぞれ、ステータコア14のスロット24内に収容される部位であって、そのスロット24を軸方向に貫くように略直線状に延びる部位である。スロット収容部30とスロット収容部32とは、ステータコア14の周方向に所定距離離れた互いに異なるスロット24に収容される。コイルエンド部34,36はそれぞれ、ステータコア14の軸方向端部から軸方向外側に飛び出る部位であって、周方向に離れた2つのスロット収容部30,32同士を繋ぐように湾曲する部位である。
【0021】
同芯巻きコイル16は、複数本の導線が積層されるように構成されていると共に、積層方向に隣り合う導線間に所定の隙間が形成されるように構成されている。尚、導線が平角導線である場合は、導線の積層方向は、平角導線の断面短辺方向であればよい。同芯巻きコイル16は、2つのスロット収容部30,32の離間距離(間隔)が積層方向位置に応じて変化するように断面台形状に形成されている。この断面台形状の形成は、同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32をそれぞれ適切にスロット24に収容するために行われるものである。同芯巻きコイル16は、導線の積層方向がステータコア14の軸方向に直交する径方向に一致するようにステータコア14に組み付けられる。
【0022】
同芯巻きコイル16のコイルエンド部34,36はそれぞれ、複数の相異なる非直線形状に形成される。具体的には、コイルエンド部34,36はそれぞれ、3種類の非直線形状に形成されるものであって、ステータコア14の径方向に向けて階段状に屈曲するクランク状にクランク成形され、円環状のステータコア14の円弧に合わせて湾曲する円弧状に円弧成形されると共に、平角導線の断面長辺方向に屈曲する屈曲状にエッジワイズ成形される。クランク成形は、平角導線の積層方向への導線間のレーンチェンジのために行われる曲げ加工である。円弧成形は、同芯巻きコイル16をスロット24内に効率的に収容するために行われる曲げ加工である。また、エッジワイズ成形は、複数の同芯巻きコイル16を効率的に配置するために行われる曲げ加工である。
【0023】
同芯巻きコイル16は、周方向に複数配置されることにより円環籠状のコイルアッセンブリ40を構成する。コイルアッセンブリ40は、複数の同芯巻きコイル16が周方向に並んで円環状に配置されることにより円環籠状に形成される。同芯巻きコイル16は、コイルアッセンブリ40の形成のために組み合わせられる前において、両側のスロット収容部30,32同士の間隔が比較的小さくなるように構成されている。また、複数の同芯巻きコイル16が円環状に配置されて組み合わされることでコイルアッセンブリ40が形成された後、そのコイルアッセンブリ40は、ステータコア14の内径側空間18に収容される程度の外径を有する。
【0024】
コイルアッセンブリ40の形成は、以下の(A)〜(C)に示す内容が実現されるように行われる。(A)複数の同芯巻きコイル16は、収容されるスロット24を周方向に一つずつずらしながら配置される。(B)互いに周方向に隣接して配置される2つの同芯巻きコイル16同士は、各段の平角導線が積層方向(すなわち、径方向)に交互に重なるように組み付けられる。(C)互いに周方向に所定距離離れて配置される同相の2つの同芯巻きコイル16は、一方のスロット収容部30の各段の平角導線と他方のスロット収容部32の各段の平角導線とがステータコア14の同じスロット24において積層方向(すなわち径方向)に交互に並んで収容されるように組み付けられる。
【0025】
上記(B)に示す組み付けが行われると、コイルアッセンブリ40の、互いに周方向に隣接して配置される2つの同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32の間に、ステータコア14のティース22が挿入配置されるティース穴42が形成される。また、以下、コイルアッセンブリ40の、同じスロット24に収容される2つの同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32の束を、スロット収容束46と称す。すなわち、上記のティース穴42は、コイルアッセンブリ40の、周方向に隣接して配置される2つのスロット収容束46の間に形成される。
【0026】
尚、各同芯巻きコイル16はそれぞれ、ステータ12が例えば三相交流モータに適用される場合は、U相コイル、V相コイル、及びW相コイルの何れかを構成する。例えば、コイルアッセンブリ40は、同芯巻きコイル16であるU相コイル、V相コイル、及びW相コイルの同相のコイルが2個ずつ周方向に並んで配置されることにより、周方向に並んだ6つの同芯巻きコイル16で一極が形成されるように構成される。
【0027】
ステータ12は、また、ステータコア14と各同芯巻きコイル16との電気的絶縁性を確保するための絶縁部材44を備えている。絶縁部材44は、ステータコア14のスロット24の形状に合致した形状を有し、スロット24ごとに装着される断面コの字状に形成されている。絶縁部材44は、紙や樹脂(例えば、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂など)などにより構成された薄膜状に形成される部材である。絶縁部材44は、所定複数の同芯巻きコイル16からなるコイルアッセンブリ40が形成された後、その各同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32(すなわち、そのコイルアッセンブリ40のスロット収容束46)にそのスロット収容部30,32の外径側から内径側へ向けて挿入されることによりコイルアッセンブリ40に装着される。
【0028】
次に、
図4〜
図10を参照して、本実施例のステータ組立装置10によるステータ12の組み立て手順について説明する。
【0029】
図4は、本実施例のステータ組立装置10が備えるガイド治具の斜視図を示す。
図5は、本実施例のステータ組立装置10においてステータ12を組み立てる際の工程を表した図を示す。尚、
図5には、説明の便宜や理解の容易さの観点から、ステータ組立装置10やステータ12が軸に平行な方向に沿って半分にカットされた状況が示されている。
【0030】
本実施例において、ステータ組立装置10は、ステータ12の組み立て(具体的には、ステータコア14の各スロット24への同芯巻きコイル16の挿入)に必要なガイド治具50を備えている。ガイド治具50は、コイルアッセンブリ40のティース穴42ごとに取り付けられる治具であって、一コイルアッセンブリ40に対して複数設けられる。ガイド治具50は、円環籠状のコイルアッセンブリ40が形成された後かつそのコイルアッセンブリ40の各同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32に絶縁部材44が装着された後にそのコイルアッセンブリ40に取り付けられる。
【0031】
尚、コイルアッセンブリ40は、各同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32がステータコア14の各スロット24へ挿入される前は、挿入された後に比べて、各同芯巻きコイル16の2つのスロット収容部30,32の離間距離(すなわち、周方向に隣接する2つのスロット収容部束46の間隔)が小さくなるように構成される。すなわち、コイルアッセンブリ40は、上記の挿入前は上記の挿入後に比べて、軸方向長さ(コイルエンド部34の軸方向先端からコイルエンド部36の軸方向先端までの距離)が大きくかつ外径が小さくなる(具体的には、外径がステータコア14のティース22の内径に比して僅かに小さくなる)ように構成される。
【0032】
以下、便宜的に、スロット収容部30,32がステータコア14の各スロット24へ挿入される前のコイルアッセンブリ40を初期コイルアッセンブリ40と、スロット収容部30,32がステータコア14の各スロット24へ挿入された後のコイルアッセンブリ40を最終コイルアッセンブリ40と、それぞれ称す。
【0033】
図4に示す如く、上記の各ガイド治具50は、初期コイルアッセンブリ40のティース穴42にその全体が挿入される第1のガイド治具52を有している。第1のガイド治具52は、初期コイルアッセンブリ40のティース穴42に嵌まるようにステータ12及びステータコア14の径方向及び軸方向の双方に向けて延びた板状に形成された治具である。第1のガイド治具52は、外径側から内径側にかけて周方向厚さ(幅)が小さくなるように先細り形状に形成されている。
【0034】
第1のガイド治具52は、コイルアッセンブリ40の各同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32がスロット24へ挿入される時にティース22に対してそのティース22の内径側で隣接して対向する。第1のガイド治具52は、平面状のガイド面を有する。第1のガイド治具52のガイド面は、同芯巻きコイル16のスロット24への挿入時において、ティース22の壁面(すなわち、周方向のスロット24側に向いた側面)と平行となる。第1のガイド治具52は、その外径端位置における幅(すなわち、周方向厚さ)がステータコア14のティース22の先端(内径端位置)における幅と略同じ或いは僅かに大きくなるように形成されている。第1のガイド治具52は、コイルアッセンブリ40の各同芯巻きコイル16がスロット24へ挿入される時にその同芯巻きコイル16を周方向でガイドする機能を有する。
【0035】
各ガイド治具50は、また、初期コイルアッセンブリ40のティース穴42にその一部が挿入される第2及び第3のガイド治具54,56を有している。第2のガイド治具54は、第1のガイド治具52に対して軸方向一方側に隣接して配置される治具である。また、第3のガイド治具56は、第1のガイド治具52に対して軸方向他方側に隣接して配置される治具である。第2及び第3のガイド治具54,56はそれぞれ、径方向に向けて延びた、内径側先端が尖った楔状に形成された治具である。
【0036】
第2及び第3のガイド治具54,56はそれぞれ、外径側から内径側にかけて周方向厚さが小さくなるように先細り形状に形成されている。第2のガイド治具54は、コイルアッセンブリ40の各同芯巻きコイル16がスロット24へ挿入される時にティース22に対してティース22の軸方向外側で隣接して対向する。また、第3のガイド治具56は、コイルアッセンブリ40の各同芯巻きコイル16がスロット24へ挿入される時にティース22に対してティース22の軸方向外側で隣接して対向する。
【0037】
第2及び第3のガイド治具54,56はそれぞれ、ステータコア14の軸方向外側において軸方向から見てティース22と重なるように径方向に向けて延びている。第2及び第3のガイド治具54,56はそれぞれ、その内径側の各径方向位置それぞれにおける幅(すなわち、周方向厚さ)が第1のガイド治具52の同じ径方向位置における幅と略同じになるように形成されていると共に、かつ、その各径方向位置それぞれにおける幅がティース22の同じ径方向位置における幅以上となるように形成されている。
【0038】
第2及び第3のガイド治具54,56はそれぞれ、コイルアッセンブリ40の各同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32がスロット24へ挿入される時にその同芯巻きコイル16を周方向でガイドする機能を有すると共に、上記の絶縁部材44がティース22に対して軸方向に抜けるのを防止する機能を有する。
【0039】
第2及び第3のガイド治具54,56にはそれぞれ、切欠部60,62が設けられている。切欠部60,62はそれぞれ、内径側に設けられており、同芯巻きコイル16がスロット24へ挿入される時に互いに周方向に隣接する2つの第1のガイド治具52の間に形成される穴及びステータコア14のスロット24に連通される部位である。互いに周方向に隣接して配置される2つの第2のガイド治具54が周方向に並ぶと、一方のガイド治具54の切欠部60と他方のガイド治具54の切欠部62とが同芯巻きコイル16をスロット挿入時にガイドする穴を形成する。また、互いに周方向に隣接して配置される2つの第3のガイド治具56が周方向に並ぶと、一方のガイド治具56の切欠部60と他方のガイド治具56の切欠部62とが同芯巻きコイル16をスロット挿入時にガイドする穴を形成する。
【0040】
本実施例のステータ組立装置10においては、複数の同芯巻きコイル16が円環状に配置された初期コイルアッセンブリ40を形成しかつその初期コイルアッセンブリ40の同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32に絶縁部材44を装着した後、ガイド治具50を、その初期コイルアッセンブリ40のティース穴42に挿入して取り付ける。具体的には、まず、
図5(A)に示す如く、複数の同芯巻きコイル16が円環状に配置されかつ絶縁部材44が装着された初期コイルアッセンブリ40と、複数のガイド治具50と、ステータコア14と、を用意する。そして、
図5(B)に示す如く、初期コイルアッセンブリ40のティース穴42に対して、第1のガイド治具52及び第3のガイド治具56をそのティース穴42ごとにコイルアッセンブリ40の外径側から内径側へ移動して挿入することにより、それらのガイド治具52,56をコイルアッセンブリ40に配置する。
【0041】
初期コイルアッセンブリ40は、上記の如く、その外径がステータコア14のティース22の内径に比して僅かに小さくなるように構成されるので、ティース穴42に第1のガイド治具52及び第3のガイド治具56が挿入された初期コイルアッセンブリ40に対しては、第2のガイド治具54が未だ取り付けられていない軸方向側からステータコア14の組み付けが可能である。
【0042】
そこで、上記した第1及び第3のガイド治具52,56が初期コイルアッセンブリ40に取り付けられ後、
図5(C)に示す如く、その初期コイルアッセンブリ40に対して、ティース22が内径側へ向けて突出したステータコア14を、第2のガイド治具54が未だ取り付けられていない軸方向側から組み付ける。かかる組み付けが行われると、ステータコア14の内径側空間18に初期コイルアッセンブリ40が配置されることとなる。そして最後に、
図5(D)に示す如く、初期コイルアッセンブリ40のティース穴42に対して、第2のガイド治具54をそのティース穴42ごとにコイルアッセンブリ40の外径側から内径側へ移動して挿入することにより、その第2のガイド治具54をコイルアッセンブリ40に配置する。
【0043】
尚、第1及び第3のガイド治具52,56が取り付けられた初期コイルアッセンブリ40とステータコア14との挿入配置が行われた後、又は、その挿入配置後におけるティース穴42への第2のガイド治具54の挿入が行われた後、初期コイルアッセンブリ40とステータコア14とは、互いに周方向で位置決めされる。この位置決めは、第1のガイド治具52がティース22に対してそのティース22の内径側で隣接して対向しかつ各同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32がスロット24に対してそのスロット24の内径側で隣接して対向するように行われる。
【0044】
図6は、本実施例のステータ組立装置10が備える押出装置の斜視図を示す。尚、
図6(A)にはステータコア14の各スロット24への同芯巻きコイル16の挿入前の状況を、また、
図6(B)にはステータコア14の各スロット24への同芯巻きコイル16の挿入中の状況を、それぞれ示す。
図7は、本実施例のステータ組立装置10が備える押出装置の、スロット24への同芯巻きコイル16の挿入前の状況を表した図を示す。
図8は、本実施例のステータ組立装置10が備える押出装置の、スロット24への同芯巻きコイル16の挿入中の状況を表した図を示す。尚、
図7(A)及び
図8(A)には押出装置の側面図を、
図7(B)及び
図8(B)には
図7(A)及び
図8(A)に示す押出装置を直線III−IIIに沿って切断した際の断面図を、また、
図7(C)及び
図8(C)には
図7(B)及び
図8(B)に示す押出装置をIV−IVに沿って切断した位置からの側面図を、それぞれ示す。
【0045】
ステータ組立装置10は、また、ステータ12の組み立て(具体的には、ステータコア14の各スロット24への同芯巻きコイル16の挿入)に必要な押圧力を発生する押出装置70を備えている。押出装置70は、保持台72と、ローラ74と、を有している。
【0046】
保持台72は、同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32に絶縁部材44が装着されかつティース穴42にガイド治具50が取り付けられたコイルアッセンブリ40と、ステータコア14と、を含むステータ12を保持する台である。保持台72は、そのステータ12を軸回りに回転可能に保持する。保持台72は、例えば、
図6に示す如く、ステータ12をその軸が水平方向に向くように保持する。
【0047】
ローラ74は、保持台72に保持されているステータ12のコイルアッセンブリ40を構成する複数の同芯巻きコイル16(具体的には、そのコイルエンド部34,36)を内径側から外径側へ放射状に押し出す部材である。ローラ74は、そのコイルアッセンブリ40の内径側に配置されると共に、ステータコア14の軸方向外側に配置される。ローラ74は、円柱状に形成された部材であって、その軸がステータ12の軸と同一方向に延びるように配置されている。
【0048】
ローラ74は、コイルアッセンブリ40の同芯巻きコイル16のコイルエンド部34に接するローラ74aと、コイルアッセンブリ40の同芯巻きコイル16のコイルエンド部36に接するローラ74bと、を含む。ローラ74aとローラ74bとは、コイルアッセンブリ40の内径側を軸方向に貫通するシャフト76により互いに連結されている。
【0049】
保持台72とローラ74とは、相対的に径方向へ移動可能である。例えば、ローラ74が、保持台72に対して、その保持台72が保持するステータ12の径方向へ移動可能である。また、保持台72がステータ12をその軸が水平方向に向くように保持する場合、その保持台72(すなわち、ステータ12)とローラ74とは、上下方向に相対移動可能である。上記した保持台72とローラ74との相対移動は、コイルアッセンブリ40の各同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32がスロット24に適切に収容されると共に、シャフト76がステータコア14のティース22の先端に接触しない範囲で行われる。
【0050】
尚、ローラ74aとローラ74bとは、上記のシャフト76により互いに連結されておらず、それぞれいわゆる片持ちでコイルエンド部34,36に接するものであってもよい。また、ローラ74aとローラ74bとは、上記のシャフト76により互いに連結されている一方、それら2つのローラ74a,74bの一方のみが支持されるものであってもよい。
【0051】
図9は、本実施例のステータ組立装置10によるステータ組立時におけるガイド治具50と同芯巻きコイル16との位置関係を表した図を示す。尚、
図9(A)にはスロット24へのスロット収容部30,32の挿入前の状況を、
図9(B)にはスロット24へのスロット収容部30,32の挿入後の状況を、それぞれ示す。また、
図10は、本実施例のステータ組立装置10によるステータ組立の効果を説明するための図を示す。
【0052】
本実施例のステータ組立装置10においては、上記の如く、初期コイルアッセンブリ40のティース穴42にガイド治具50が取り付けられかつその初期コイルアッセンブリ40がステータコア14の内径側空間18へ挿入配置された後、そのガイド治具50付きの初期コイルアッセンブリ40がステータコア14の内径側空間18に配置されているステータ12を、保持台72に回転可能にセットする(
図6(A)及び
図7に示す状態)。以下適宜、ガイド治具50付きのステータ12を治具付きステータ12と称す。尚、治具付きステータ12においては、ガイド治具50同士の位置関係及びステータコア14とガイド治具50との位置関係が変化しないように、図示しないボルト等で固定される。
【0053】
そして、その保持台72に保持されている治具付きステータ12を回転させつつ、ローラ74をそのステータ12の軸中心側から径方向外側へ保持台72に対して相対的に徐々に移動させる。かかるステータ12の回転及びローラ74の相対移動が行われると、ローラ74aがそのステータ12のコイルアッセンブリ40を構成する各同芯巻きコイル16のコイルエンド部34に逐次接しつつ各コイルエンド部34を逐次外径側へ押圧すると共に、ローラ74bがその各同芯巻きコイル16のコイルエンド部36に逐次接しつつ各コイルエンド部36を逐次外径側へ押圧する。
【0054】
同芯巻きコイル16のコイルエンド部34,36がローラ74により外径側へ押圧されると、そのコイルエンド部34,36の押圧に追従してそれらのコイルエンド部34,36に繋がるスロット収容部30,32が内径側から外径側へ引っ張られる。上記の如く、初期コイルアッセンブリ40とステータコア14とは、第1のガイド治具52がティース22に対してそのティース22の内径側で隣接して対向し、かつ、各同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32がスロット24に対してそのスロット24の内径側で隣接して対向するように、互いに周方向で位置決めされる。この際、第1のガイド治具52のガイド面は、スロット24の壁面と平行になる。また、第2及び第3のガイド治具54,56には、同芯巻きコイル16をスロット挿入時にガイドする切欠部60,62が形成されている。
【0055】
このため、スロット収容部30,32は、上記の如くコイルエンド部34,36の外径側への押圧に追従して外径側へ引っ張られることにより、第1、第2、及び第3のガイド治具52,54,56にガイドされつつスロット24に挿入されることとなる。尚、この挿入の過程において、各同芯巻きコイル16は、コイルエンド部34の軸方向先端とコイルエンド部36の軸方向先端との軸方向距離が徐々に小さくなりつつ、スロット収容部30とスロット収容部32との周方向距離(間隔)が徐々に拡大されるように変形する(
図9参照)。
【0056】
円環籠状のコイルアッセンブリ40を構成するすべての同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32が外径側へ押圧されると、それら周方向に存在するすべての同芯巻きコイル16が内径側から外径側へ放射状に押し出されるので、各同芯巻きコイル16がガイド治具50でガイドされつつそのスロット収容部30,32がスロット24に挿入される。尚、このスロット収容部30,32の挿入は、同じスロット24に収容される2つの同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32を含むスロット収容束46として行われる。そして、すべての同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32がスロット24に挿入されると、その後、ローラ74の外径側への相対移動及びステータ12の回転が停止される。
【0057】
かかるステータ組立手法によれば、互いに周方向位置を異ならせて周方向に離れて配置される2つの同芯巻きコイル16同士の組み付けを、一方の同芯巻きコイル16のスロット収容部30の平角導線と他方の同芯巻きコイル16のスロット収容部32の平角導線とが同じスロット24において径方向に交互に並ぶように行うと共に、所定複数の同芯巻きコイル16が円環状に配置されるコイルアッセンブリ40を形成した後、そのコイルアッセンブリ40を構成する複数の同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32を円環状のステータコア14のスロット24へ挿入することができる。
【0058】
すなわち、上記構造の初期コイルアッセンブリを形成した後、その初期コイルアッセンブリ40の、互いに周方向に隣接して配置される2つの同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32(すなわち、2つのスロット収容束46)の間に形成されるティース穴42ごとにガイド治具50を取り付け配置すると共に、そのガイド治具50付きの初期コイルアッセンブリ40をステータコア14の内径側空間18に配置し、かつ、そのガイド治具50(具体的には、第1のガイド治具52)のガイド面をティース22の壁面と平行にした状態で、そのガイド治具50付きの初期コイルアッセンブリ40を構成する各同芯巻きコイル16のコイルエンド部34,36を押出装置70のローラ74により外径側へ押圧して各同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32をスロット24へ挿入しつつ各同芯巻きコイル16を外径側へ押し出すことにより、そのコイルアッセンブリ40を円環状のステータコア14に組み付けることができる。
【0059】
また、本実施例のステータ組立装置10によるステータ組立手法においては、ティース穴42にガイド治具50が取り付けられたコイルアッセンブリ40を、その各同芯巻きコイル16を外径側へ押し出して円環状のステータコア14に組み付ける際、各同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32がガイド治具50により支持される。具体的には、スロット収容部30,32が、周方向両側に隣接する2つの第1のガイド治具52に挟まれつつガイドされると共に、互いに周方向に隣接する2つの第2のガイド治具54の切欠部60,62においてガイドされかつ互いに周方向に隣接する2つの第3のガイド治具56の切欠部60,62においてガイドされる。
【0060】
このため、本実施例によれば、
図10に示す如く、コイルアッセンブリ40の各同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32をスロット24への挿入時にガイドするうえで、そのスロット収容部30,32が周方向に膨らむのを抑制することができると共に、そのスロット収容部30,32が座屈するのを抑制することができる。
【0061】
また、本実施例の構成と異なり、外周面に複数の保持溝が設けられたガイド治具に複数の同芯巻きコイル16を配置する構成(対比例の構成)では、各コイル16がそのガイド治具に組み付けられる過程で、コイル16が両側のスロット収容部30,32同士が比較的遠い状態から近づく方向へ変形され、その後、そのコイル16がステータコア14へ組み付けられる際に再度変形されることとなる。このため、上記の対比例の構成では、コイル16のステータコア14への組み付け前の治具への組み付け時に、コイルエンド部34,36の本来曲げたくない部位(例えば、コイルエンド部34,36の直線状の斜辺部)が変形により加工硬化する。この場合は、コイル16のステータコア14への組み付け時においてその組み付け後にスロット24に収容されるスロット収容部30,32の変形が大きくなり、スロット24内にてコイル16がティース22の壁面に押し付けられる圧力(面圧)が大きくなり、その挿入荷重が大きくなってしまう。
【0062】
これに対して、本実施例の構成においては、コイルアッセンブリ40の各同芯巻きコイル16の、ステータコア14への組み付け前、コイル16とガイド治具50とが組み付けられる過程でコイル16のスロット収容部30,32同士が近づく方向へ変形されることは不要である或いはその変形量は極めて小さい。このため、コイル16とガイド治具50との組み付け時に、コイルエンド部34,36の斜辺部などが変形により加工硬化することはなく、スロット収容部30,32の変形が大きくなることはない。
【0063】
従って、本実施例によれば、コイル16のステータコア14への組み付け時、スロット24内にてコイル16がティース22の壁面に押し付けられる圧力(面圧)が大きくなることはなく、そのコイル16がスロット24に挿入される際の挿入荷重が抑制される。このため、コイル16の傷付きやステータコア4への組み付け後のコイル16の形状精度の悪化を防止することができ、製造設備の大型化などの不都合を回避することができる。
【0064】
また、本実施例のステータ組立装置10において、第2及び第3のガイド治具54,56はそれぞれ、その各径方向位置それぞれにおける幅(すなわち、周方向厚さ)がステータコア14のティース22の同じ径方向位置における幅以上であるように形成されている。このため、本実施例によれば、コイルアッセンブリ40の各同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32がスロット24への挿入時に第2及び第3のガイド治具54,56によりガイドされる際、そのスロット収容部30,32の平角導線がティース22の表面(特に、端面に形成された鋭角な角部)に擦るのを避けることができるので、同芯巻きコイル16に傷が付くことやティース22の表面に傷が付くこと,絶縁部材44が破断し易くなることなどを防止することができる。
【0065】
また、本実施例のステータ組立装置10によるステータ組立手法においては、ティース穴42にガイド治具50が取り付けられたコイルアッセンブリ40を、その各同芯巻きコイル16を外径側へ押し出して円環状のステータコア14に組み付ける際、その組み付けを、押出装置70のローラ74による外径側への押圧のみにより各同芯巻きコイル16を変形させながら行うことができる。
【0066】
このため、本実施例によれば、同芯巻きコイル16を軸方向側に向けて押圧する押圧治具が設けられる構造と異なり、コイルアッセンブリ40をステータコア14へ組み付ける際、同芯巻きコイル16がその軸方向側の押圧治具により軸方向側に向けて押圧されることは無く、かかる軸方向側の押圧治具と同芯巻きコイル16との接触面積が微小になることは無いので、同芯巻きコイル16に傷が付くのを防止することができる。
【0067】
また、本実施例のステータ組立装置10によるステータ組立手法においては、ティース穴42にガイド治具50が取り付けられたコイルアッセンブリ40を、その各同芯巻きコイル16を外径側へ押し出して円環状のステータコア14に組み付ける際、その組み付けを、ステータコア14を移動させることなく保持台72に保持しながら行うので、ステータコア14を移動させる装置を設けることは不要であり、ステータ組立装置10の簡素化を図ることができる。
【0068】
また、本実施例のステータ組立装置10によるステータ組立手法においては、複数の同芯巻きコイル16が円環状に配置された初期コイルアッセンブリ40を形成した後、その初期コイルアッセンブリ40の各同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32それぞれに外径側から内径側へ向けて断面コの字状の絶縁部材44を挿入する。上記の如く、コイルアッセンブリ40の、互いに周方向に隣接して配置される2つの同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32の間には、ステータコア14のティース22が挿入配置されるティース穴42が形成されるので、コイルアッセンブリ40がステータコア14へ組み付けられる前は、各同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32の周方向には、ティース22などが存在しない空間が形成される。このため、各同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32への絶縁部材44の挿入を容易に行うことができる。また、従来はコイルの挿入とは別工程で行われていた絶縁部材44の挿入を同時に行うことができるため、作業時間を短縮し、生産性を向上させることができる。
【0069】
上記の如く各同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32にその外径側から絶縁部材44が装着された後は、コイルアッセンブリ40の各同芯巻きコイル16を外径側へ押し出して円環状のステータコア14への組み付けを行う。この際、各同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32は、絶縁部材44と一体となって内径側から外径側へ移動してステータコア14のスロット24に挿入される。このため、コイルアッセンブリ40をその各同芯巻きコイル16を外径側へ押し出して円環状のステータコア14に組み付ける際に、同芯巻きコイル16とステータコア14との間に配置される薄膜状の絶縁部材44をスロット24内で適切に配置することができ、その絶縁部材44に皺が形成されること或いは破断が生ずることを抑制することができる。
【0070】
ところで、上記の実施例においては、押出装置70が特許請求の範囲に記載した「押出手段」に、第1のガイド治具52が特許請求の範囲に記載した「ガイド治具」に、第2及び第3のガイド治具54,56が特許請求の範囲に記載した「ガイド治具」及び「拡幅ガイド治具」に、それぞれ相当している。
【0071】
また、上記の実施例においては、初期コイルアッセンブリ40へのガイド治具50の取り付けを、そのコイルアッセンブリ40の外径側から内径側への挿入により行うこととしている。かかる構成によれば、初期コイルアッセンブリ40へのガイド治具50の取り付けを容易に行うことができる。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、初期コイルアッセンブリ40の内径側に十分な空間があれば、初期コイルアッセンブリ40へのガイド治具50の取り付けを、そのコイルアッセンブリ40の内径側から外径側への挿入により行うこととしてもよい。
【0072】
また、上記の実施例においては、コイルアッセンブリ40を構成する各同芯巻きコイル16を内径側から外径側へ放射状に押し出すローラ74a,74bを、円柱状に形成することとしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、そのローラ74a,74bを、同芯巻きコイル16が接する外径側の角部がカットされたテーパ状に形成することとしてもよい。かかる変形例によれば、同芯巻きコイル16のコイルエンド部34,36をスロット収容部30,32に対して径方向外側へ傾斜した形状に成形することが可能となり、ステータ12の軸長を短くすることができる。
【0073】
また、上記の実施例においては、コイルアッセンブリ40を構成する各同芯巻きコイル16を内径側から外径側へ放射状に押し出すローラ74a,74bを、コイルアッセンブリ40の内径側を軸方向に貫通するシャフト76により互いに連結することとしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、ローラ74aとローラ74bとを、上記のシャフト76を用いることなく別個独立して支持することとしてもよい。かかる変形例においても、同芯巻きコイル16のコイルエンド部34,36をスロット収容部30,32に対して径方向外側へ傾斜した形状に成形することが可能となり、ステータ12の軸長を短くすることができる。
【0074】
また、上記の実施例においては、保持台72に保持されている治具付きステータ12を回転させつつ、ローラ74をそのステータ12の軸中心側から径方向外側へ相対的に移動させることにより、ローラ74が接触するコイルアッセンブリ40の周方向位置を変えながら各同芯巻きコイル16を放射状に押し出すこととしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ステータ12の軸中心側から径方向外側に向けて移動する棒状或いは板状の治具を用いて、すべての同芯巻きコイル16を全周同時に放射状に押し出すこととしてもよい。
【0075】
また、上記の実施例においては、絶縁部材44を、複数の同芯巻きコイル16が円環状に配置されたコイルアッセンブリ40に配置した後、同芯巻きコイル16と一緒にステータコア14のスロット24に挿入した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、絶縁部材44をステータコア14のスロット24内に配置し、その後にコイルアッセンブリ40の同芯巻きコイル16をそのスロット24に挿入することとしてもよい。
【0076】
また、上記の実施例においては、ガイド治具50のコイルアッセンブリ40への組み付けを、円環籠状のコイルアッセンブリ40を完成した後に行うこととしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、そのガイド治具50の組み付けを、コイルアッセンブリ40の同芯巻きコイル16がある程度の数(例えば半分の数)だけ組み付けられた段階で行うこととしてもよい。そしてその後、同芯巻きコイル16が半分ずつであるセミアッセンブリ同士を組み合わせて、最後のガイド治具50を組み付けるようにしてもよい。
【0077】
また、上記の実施例においては、ガイド治具50の形状を先細り形状とし、そのガイド治具50をコイルアッセンブリ40の外径側から内径側へ挿入するようにした。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、板状のガイド治具をコイルアッセンブリ40の内径側から径方向外側へスライドさせてそのコイルアッセンブリ40に組み付けることとしてもよい。
【0078】
また、上記の実施例においては、複数の同芯巻きコイル16により構成されるコイルアッセンブリ40を、コイルエンド部34側とコイルエンド部36側とで同じ径を有するように円筒状に形成することとしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、コイルアッセンブリ40を、コイルエンド部34側とコイルエンド部36側とで異なる径を有するように円錐状(すなわち、断面テーパ状)に形成することとしてもよい。
【0079】
尚、以上の実施例に関し、更に以下を開示する。
【0080】
[1]導線により形成されるスロット収容部(30,32)とコイルエンド部(34,36)とを有するコイル(16)を、バックヨーク(20)からそれぞれ径方向内側へ向けて延びる複数のティース(22)と2つの前記ティース(22)の間に形成されるスロット(24)とを有する円環状のステータコア(14)に装着するステータ組立方法であって、複数の前記コイル(16)が円環状に配置され、かつ、周方向に離れた2つの前記コイル(16)の前記スロット収容部(30,32)が前記ステータコア(14)の同じ前記スロット(24)に収容されるスロット収容束(46)を有するコイルアッセンブリ(40)を形成するコイルアッセンブリ形成工程と、前記コイルアッセンブリ(40)の、周方向に隣接して配置される2つの前記スロット収容束(46)の間に形成されるティース穴(42)に対して、ガイド面を形成するためのガイド治具(50)を移動させて挿入し、該ガイド治具(50)を前記コイルアッセンブリ(40)に配置する治具配置工程と、前記コイルアッセンブリ(40)が前記ステータコア(14)の内径側空間に配置され、かつ、前記ガイド治具(50)の前記ガイド面が前記ティース(22)の壁面と平行である状態で、該コイルアッセンブリ(40)を構成する複数の前記コイル(16)を内径側から外径側へ放射状に押し出すことにより、該複数の前記コイル(16)を前記ガイド治具(50)でガイドしつつ、前記コイル(16)の前記スロット収容部(30,32)を前記ステータコア(14)の前記スロット(24)へ挿入するコイル挿入工程と、を備えるステータ組立方法。
【0081】
上記[1]記載の構成によれば、複数のコイル(16)が円環状に配置され、かつ、周方向に離れた2つのコイル(16)のスロット収容部(30,32)が同じスロット(24)に収容されるスロット収容束を有するコイルアッセンブリ(40)が形成される。そして、そのコイルアッセンブリ(40)のティース穴(42)にガイド治具(50)が移動されて挿入され、そのガイド治具(50)がコイルアッセンブリ(40)に配置される。また、そのコイルアッセンブリ(40)がステータコア(14)の内径側空間に配置され、かつ、ガイド治具(50)のガイド面がティース(22)の壁面と平行である状態で、コイルアッセンブリ(40)の各コイル(16)がガイド治具でガイドされつつ、コイル(16)のスロット収容部(30,32)がステータコア(14)のスロット(24)へ挿入される。
【0082】
かかる手法においては、コイルアッセンブリ(40)を複数のコイル(16)により構成するうえで、各コイル(16)を治具に組み付けることは不要であり、各コイル(16)を両側のスロット収容部(30,32)同士が近づく方向に変形させることは不要であり或いはその変形量は少ない。従って、コイルアッセンブリ(40)をステータコア(14)に装着するうえで、各コイル(16)をスロット(24)に挿入する際の挿入荷重を抑制することができる。
【0083】
[2]上記[1]記載のステータ組立方法において、前記ガイド治具(50)は、一方側から他方側にかけて幅が徐々に小さくなる治具であり、前記治具配置工程は、前記ガイド治具(50)を、該ガイド治具(50)の一方側が前記コイルアッセンブリ(40)の外径側に向きかつ該ガイド治具(50)の他方側が前記コイルアッセンブリ(40)の内径側に向くように前記コイルアッセンブリ(40)に配置するステータ組立方法。
【0084】
[3]上記[1]又は[2]記載のステータ組立方法において、前記治具配置工程は、前記ガイド治具(50)を、前記ティース穴(42)に前記コイルアッセンブリ(40)の外径側から内径側へ向けて挿入することにより、前記コイルアッセンブリ(40)に配置するステータ組立方法。
【0085】
上記[3]記載の構成によれば、コイルアッセンブリ(40)へのガイド治具(50)の配置を容易に行うことができる。
【0086】
[4]上記[1]乃至[3]の何れか一項記載のステータ組立方法において、前記ガイド治具(50)は、前記ステータコア(14)の径方向及び軸方向の双方に向けて延びる板状部材であるステータ組立方法。
【0087】
[5]上記[1]乃至[4]の何れか一項記載のステータ組立方法において、前記ガイド治具(50)は、前記ステータコア(14)の軸方向外側において軸方向から見て前記ティース(22)と重なるように径方向に向けて延びる拡幅ガイド部(54,56)を含み、前記拡幅ガイド部(54,56)の各径方向位置それぞれにおける幅は、前記ティース(22)の同じ径方向位置における幅以上であるステータ組立方法。
【0088】
上記[5]記載の構成によれば、コイルアッセンブリ(40)の各コイル(16)がスロット(24)への挿入時に拡幅ガイド部(54,56)によりガイドされる際、そのコイル(16)の導線がティース(22)の表面に擦るのを避けることができる。
【0089】
[6]上記[1]乃至[5]の何れか一項記載のステータ組立方法において、前記導線は、平角導線であるステータ組立方法。
【0090】
[7]上記[1]乃至[6]の何れか一項記載のステータ組立方法において、前記コイル(16)は、同芯巻きコイルであるステータ組立方法。
【0091】
[8]上記[1]乃至[7]の何れか一項記載のステータ組立方法において、前記コイルアッセンブリ(40)は、それぞれ前記スロット収容部(30,32)が同じ前記スロット(24)に収容される2つの前記コイル(16)同士の組み付けが、前記スロット収容部(30,32)の前記導線が径方向に交互に並ぶように行われるものであるステータ組立方法。
【0092】
[9]上記[1]乃至[8]の何れか一項記載のステータ組立方法において、前記コイルアッセンブリ形成工程において形成された前記コイルアッセンブリ(40)の複数の前記スロット収容束に絶縁部材(44)を装着する絶縁部材装着工程を備え、前記コイル挿入工程は、前記絶縁部材装着工程において前記絶縁部材(44)が装着された前記コイルアッセンブリ(40)の前記スロット収容束を前記ステータコア(14)の前記スロット(24)へ挿入することにより、前記コイル(16)の前記スロット収容部(30,32)を前記ステータコア(14)の前記スロット(24)へ挿入するステータ組立方法。
【0093】
上記[9]記載の構成によれば、コイル(16)とステータコア(14)との電気的絶縁性を確保するための絶縁部材(44)を容易にコイルアッセンブリ(40)のコイル(16)に装着することができる。
【0094】
[10]導線により形成されるスロット収容部(30,32)とコイルエンド部(34,36)とを有するコイル(16)を、バックヨーク(20)からそれぞれ径方向内側へ向けて延びる複数のティース(22)と2つの前記ティース(22)の間に形成されるスロット(24)とを有する円環状のステータコア(14)に装着するステータ組立装置であって、複数の前記コイル(16)が円環状に配置され、かつ、周方向に離れた2つの前記コイル(16)の前記スロット収容部(30,32)が前記ステータコア(14)の同じ前記スロット(24)に収容されるスロット収容束を有するコイルアッセンブリ(40)の、周方向に隣接して配置される2つの前記スロット収容束の間に形成されるティース穴(42)に対して移動されて挿入され、該コイルアッセンブリ(40)に配置される、ガイド面を形成するためのガイド治具(50)と、前記コイルアッセンブリ(40)が前記ステータコア(14)の内径側空間に配置され、かつ、前記ガイド治具(50)の前記ガイド面が前記ティース(22)の壁面と平行である状態で、該コイルアッセンブリ(40)を構成する複数の前記コイル(16)を内径側から外径側へ放射状に押し出すことにより、該複数の前記コイル(16)を前記ガイド治具(50)でガイドしつつ、前記コイル(16)の前記スロット収容部(30,32)を前記ステータコア(14)の前記スロット(24)へ挿入する押出手段(70)と、を備えるステータ組立装置(10)。
【0095】
上記[10]記載の構成によれば、複数のコイル(16)が円環状に配置され、かつ、周方向に離れた2つのコイル(16)のスロット収容部(30,32)が同じスロット(24)に収容されるスロット収容束を有するコイルアッセンブリ(40)が形成された後、そのコイルアッセンブリ(40)のティース穴(42)にガイド治具(50)が移動されて挿入され、そのガイド治具(50)がコイルアッセンブリ(40)に配置される。また、そのコイルアッセンブリ(40)がステータコア(14)の内径側空間に配置され、かつ、ガイド治具(50)のガイド面がティース(22)の壁面と平行である状態で、押出手段(70)により、コイルアッセンブリ(40)の各コイル(16)がガイド治具でガイドされつつ、コイル(16)のスロット収容部(30,32)がステータコア(14)のスロット(24)へ挿入される。
【0096】
かかる装置においては、コイルアッセンブリ(40)を複数のコイル(16)により構成するうえで、各コイル(16)を治具に組み付けることは不要であり、各コイル(16)を両側のスロット収容部(30,32)同士が近づく方向に変形させることは不要であり或いはその変形量は少ない。従って、コイルアッセンブリ(40)をステータコア(14)に装着するうえで、各コイル(16)をスロット(24)に挿入する際の挿入荷重を抑制することができる。
【0097】
[11]上記[10]記載のステータ組立装置(10)において、前記押出手段(70)は、前記コイル(16)の前記コイルエンド部(34,36)に接するローラ(74)を含むステータ組立装置(10)。
【0098】
尚、本国際出願は、2014年(平成26年)6月5日に出願した日本国特許出願2014−117144号に基づく優先権を主張するものであり、この日本国特許出願2014−117144号の全内容を本国際出願に援用する。