(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、本発明に係る車両の走行制御装置を、車両に搭載された走行制御システムに適用した場合を例にして説明する。本発明の走行制御装置の実施の形態は限定されず、車両側と情報の授受が可能な携帯端末装置に適用することもできる。走行制御装置、走行制御システム、及び携帯端末装置は、いずれも演算処理を実行するコンピュータである。
【0010】
図1は、走行制御システム1のブロック構成を示す図である。本実施形態の走行制御システム1は、車両に搭載され、走行制御装置100と車載装置200とを備える。
【0011】
本実施形態の走行制御装置100は、自車両が走行している車線を認識し、車線のレーンマークの位置と自車両の位置とが所定の関係を維持するように、自車両の走行を制御する車線逸脱防止機能(レーンキープサポート機能)を備える。本実施形態の走行制御装置100は車線の中央を自車両が走行するように、自車両の走行を制御する。走行制御装置100は、車線のレーンマークから自車両までの路幅方向に沿う距離が所定値域となるように、自車両の走行を制御してもよい。
本実施形態におけるレーンマーカは、車線を規定する機能を有するものであれば限定されず、路面に描かれた線図であってもよいし、道路の間に存在する植栽であってもよいし、道路の路肩側に存在するガードレール、縁石、歩道、二輪車専用道路などの道路構造物であってもよい。また、道路の路肩側に存在する看板、標識、店舗、街路樹などの不動の物体であってもよい。これらのレーンマーカの検出手法は限定されず、本願出願時に知られたパターンマッチングなどの各種の手法を用いることができる。
走行制御装置100は通信装置20を有し、車載装置200は通信装置40を有し、両装置は有線通信又は無線通信により互いに情報の授受を行う。
【0012】
まず、車載装置200について説明する。
本実施形態の車載装置200は、検出装置50と、センサ60と、車両コントローラ70と、駆動装置80と、操舵装置90と、出力装置110と、ナビゲーション装置120とを備える。車載装置200を構成する各装置は、相互に情報の授受を行うためにCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。
【0013】
以下、車載装置200を構成する各装置についてそれぞれ説明する。
検出装置50は、自車両が回避するべき回避対象の存在及びその存在位置を検出する。特に限定されないが、本実施形態の検出装置50はカメラ51を含む。本実施形態のカメラ51は、例えばCCD等の撮像素子を備えるカメラである。本実施形態のカメラ51は自車両に設置され、自車両の周囲を撮像し、自車両の周囲に存在する回避対象を含む画像データを取得する。なお、本実施形態で説明する「回避対象」の具体例等については後述する。
【0014】
検出装置50は、取得した画像データを処理し、自車両に対する回避対象の位置に基づいて、自車両から回避対象までの距離を算出する。検出装置50は、回避対象の位置の経時的な変化から自車両と回避対象との相対速度、自車両と回避対象との相対加速度を対象情報として算出する。画像データに基づく自車両と他車両との位置関係の導出処理、その経時的な変化量に基づく速度情報の導出処理については、本願出願時に知られている手法を適宜に用いることができる。
【0015】
また、検出装置50は、画像データを解析し、その解析結果に基づいて回避対象の種別を識別してもよい。検出装置50は、パターンマッチング技術などを用いて、画像データに含まれる回避対象が、車両であるか、歩行者であるか、標識であるかを識別できる。また、検出装置50は、画像データから対象物の像を抽出し、その像の大きさや形状から対象物の具体的な種別(四輪車、二輪車、バス、トラック、工事車両など)、車種(小型車、大型車)を識別できる。さらに、検出装置50は、画像データに含まれるナンバープレートに表記された識別子から、その車両の種別、車種を識別することができる。この識別情報は、対象領域の設定処理において用いることができる。
【0016】
なお、本実施形態の検出装置50はレーダー装置52を用いてもよい。レーダー装置52としては、ミリ波レーダー、レーザーレーダー、超音波レーダーなどの出願時に知られた方式のものを用いることができる。
【0017】
このように検出された少なくとも回避対象の位置を含む対象情報は、走行制御装置100側へ送出される。検出装置50は、回避対象の位置の変化から求めた自車両と回避対象との相対速度情報、相対加速度情報、回避対象の種別情報、回避対象が車両である場合には車種などの情報を対象情報に含めて、走行制御装置100側へ送出してもよい。
【0018】
なお、本実施形態における「回避対象」は、自車両がそのものを避けて(接近しすぎないように)走行するべき対象である。検出装置50は、自車両と所定の位置関係を有する対象を回避対象として検出する。たとえば、検出装置50は、自車両の周囲に存在する物体等であって、自車両から所定距離以内に存在するものを回避対象として検出することができる。
【0019】
また、本実施形態の回避対象は、静止物と移動物を含む。静止している回避対象としては、駐車中の他車両、停車中の他車両、歩道,中央分離帯,ガードレールなどの道路構造物、標識,電柱などの道路設置物、落下物や除雪された雪などの道路の載置物など、車両の走行の障害となる物体が含まれる。移動する回避対象としては、他車両、歩行者が含まれる。他車両としては、自車両の先方車両、後方車両、対向車両が含まれる。車両としては、自転車、バイクなどの二輪車、バス,トラックなどの大型車両、トレーラ、クレーン車などの特殊車両が含まれる。さらに、回避対象としては、工事現場、路面の損傷エリア、水溜りなど、物体が存在しないものの自車両が回避すべき対象を含む。
【0020】
本実施形態のセンサ60は、操舵角センサ61、車速センサ62を備える。操舵角センサ61は、自車両の操舵量、操舵速度、操舵加速度などの操舵に関する操舵情報を検出し、車両コントローラ70、走行制御装置100へ送出する。車速センサ62は、自車両の車速、加速度を検出し、車両コントローラ70および走行制御装置100へ送出する。
【0021】
本実施形態の車両コントローラ70は、エンジンコントロールユニット(Engine Control Unit, ECU)などの車載コンピュータであり、車両の運転状態を電子的に制御する。本実施形態の車両としては、電動モータを走行駆動源として備える電気自動車、内燃機関を走行駆動源として備えるエンジン自動車、電動モータ及び内燃機関の両方を走行駆動源として備えるハイブリッド自動車を例示することができる。なお、電動モータを走行駆動源とする電気自動車やハイブリッド自動車には、二次電池を電動モータの電源とするタイプや燃料電池を電動モータの電源とするタイプのものも含まれる。
【0022】
本実施形態の駆動装置80は、自車両V1の駆動機構を備える。駆動機構には、上述した走行駆動源である電動モータ及び/又は内燃機関、これら走行駆動源からの出力を駆動輪に伝達するドライブシャフトや自動変速機を含む動力伝達装置、及び車輪を制動する制動装置81などが含まれる。駆動装置80は、運転者のアクセル操作及びブレーキ操作による入力信号、車両コントローラ70又は走行制御装置100から取得した制御信号に基づいてこれら駆動機構の各制御信号を生成し、車両の加減速を含む走行制御を実行する。駆動装置80に指令情報を送出することにより、車両の加減速を含む走行制御を自動的に行うことができる。なお、ハイブリッド自動車の場合には、車両の走行状態に応じた電動モータと内燃機関とのそれぞれに出力するトルク配分も駆動装置80に送出される。
【0023】
本実施形態の操舵装置90は、ステアリングアクチュエータを備える。ステアリングアクチュエータは、ステアリングのコラムシャフトに取り付けられるモータ等を含む。操舵装置90は、車両コントローラ70から取得した制御信号、又は運転者のステアリング操作により入力信号に基づいて車両の転回制御を実行する。車両コントローラ70は、操舵量を含む指令情報を操舵装置90に送出することにより、転回制御を実行する。また、走行制御装置100は、車両の各輪の制動量をコントロールすることにより転回制御を実行してもよい。この場合、車両コントローラ70は、各輪の制動量を含む指令情報を制動装置81へ送出することにより、車両の転回制御を実行する。
【0024】
本実施形態のナビゲーション装置120は、自車両の現在位置から目的地までの経路を算出し、後述する出力装置110を介して経路案内情報を出力する。ナビゲーション装置120は、位置検出装置121と、道路種別、道路幅、道路形状その他の道路情報122と、道路情報122が各地点に対応づけられた地図情報123とを有する。本実施形態の位置検出装置121は、グローバル・ポジショニング・システム(Global Positioning System, GPS)を備え、走行中の車両の走行位置(緯度・経度)を検出する。ナビゲーション装置120は、位置検出装置121により検出された自車両の現在位置に基づいて、自車両が走行する道路リンクを特定する。本実施形態の道路情報122は、各道路リンクの識別情報ごとに、道路種別、道路幅、道路形状、追い越しの可否(隣接レーンへの進入の可否)その他の道路に関する情報を対応づけて記憶する。そして、ナビゲーション装置120は、道路情報122を参照し、自車両が走行する道路リンクが属する道路に関する情報を取得し、走行制御装置100へ送出する。自車両が走行する道路種別、道路幅、道路形状は、走行制御処理において、自車両が走行する目標経路の算出に用いられる。
【0025】
本実施形態の出力装置110は、走行支援に関する各種の情報をユーザ又は周囲の車両の乗員に向けて出力する。本実施形態において、出力装置110は、対象情報に応じた情報、対象領域の位置に応じた情報、目標経路の位置に応じた情報、及び目標経路上を自車両に走行させる指令情報に応じる情報のうち、何れか一つ以上を出力する。本実施形態の出力装置110は、ディスプレイ111、スピーカ112、車室外ランプ113、車室内ランプ114を含む。車室外ランプ113は、ヘッドライト、ウィンカランプ、ブレーキランプを含む。車室内ランプ114は、インジケータの点灯表示、ディスプレイ111の点灯表示、その他ステアリングに設けられたランプや、ステアリング周囲に設置されたランプを含む。また、本実施形態の出力装置110は、通信装置40を介して、高度道路交通システム(Intelligent Transport Systems:ITS)などの外部装置に走行支援に関する各種の情報を出力してもよい。高度道路交通システムなどの外部装置は、車両の速度、操舵情報、走行経路などを含む走行支援に関する情報を、複数の車両の交通管理に用いる。
【0026】
情報の具体的な出力態様を、自車両の左側前方に回避対象としての駐車車両が存在する場合を例にして説明する。
出力装置110は、対象情報に応じた情報として、駐車車両が存在する方向や位置を自車両の乗員に提供する。ディスプレイ111は、駐車車両が存在する方向や位置を視認可能な態様で表示する。スピーカ112は「左側前方に駐車車両が存在します」といった駐車車両が存在する方向や位置を伝えるテキストを発話出力する。車室外ランプ113である左右のドアミラーに設けられたランプのうち、左側のランプのみを点滅させて、左側前方に駐車車両が存在することを自車両の乗員に知らせてもよい。車室内ランプ114であるステアリング近傍の左右に設けられたランプのうち、左側のランプのみを点滅させて、左側前方に駐車車両が存在することを乗員に知らせてもよい。
【0027】
また、対象領域の位置に応じた情報として、対象領域の設定方向や設定位置を、出力装置110を介して出力してもよい。先述したように、対象領域が左側前方に設定されたことを、ディスプレイ111、スピーカ112、車室外ランプ113、車室内ランプ114により乗員に知らせることができる。
【0028】
本実施形態では、自車両の動きを他車両の乗員に予め知らせる観点から、対象領域の設定方向や設定位置を、車室外ランプ113を用いて外部に出力する。対象領域が設定されると、対象領域の側方を通過するために自車両の進行方向が変更される(転回が行われる)。対象領域が設定されたことを外部に知らせることにより、対象領域の側方を通過するために自車両の進行方向が変化することを、他車両のドライバに予告できる。例えば、対象領域が左側前方に設定されたときに、右側のウィンカランプ(車室外ランプ113)を点灯させることにより、左側に設定された対象領域の側方を通過するために自車両が右側に移動することを外部の他車両等に知らせることができる。
【0029】
さらに、目標経路の位置に応じた情報として、目標経路の形状や曲点の位置をディスプレイ111、スピーカ112により乗員に知らせることができる。ディスプレイ111は、目標経路の形状等を視認可能な線図として表示する。スピーカ112は、「前方の駐車車両の側方を通過するため、右に転回します」などのアナウンスを出力する。
【0030】
さらにまた、目標経路上を自車両に走行させる指令情報に応じた情報として、転回操作や加減速が実行されることをディスプレイ111、スピーカ112、車室外ランプ113、車室内ランプ114を介して、自車両の乗員又は他車両の乗員に予め知らせる。
【0031】
このように、対象領域の側方を通過する際の走行制御に関する情報を出力することにより、自車両及び/又は他車両の乗員に自車両の挙動を予め知らせることができる。出力装置110は、上述した情報を、通信装置20を介して高度道路交通システムの外部装置に出力してもよい。これにより、自車両の乗員及び/他車両の乗員は、走行制御される自車両の挙動に応じた対応ができる。
【0032】
次いで、本実施形態の走行制御装置100について説明する。
【0033】
図1に示すように、本実施形態の走行制御装置100は、制御装置10と、通信装置20と、出力装置30とを備える。通信装置20は、車載装置200との情報の授受を行う。出力装置30は、先述した車載装置200の出力装置110と同様の機能を有する。走行制御装置100が、乗員が持ち運び可能なコンピュータである場合には、走行制御装置100は、車載装置200の車室外ランプ113、車室内ランプ114の点滅を制御する指令情報を、各装置に出力してもよい。
【0034】
走行制御装置100の制御装置10は、自車両の走行を制御するプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)12と、このROM12に格納されたプログラムを実行することで、走行制御装置100として機能する動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)11と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)13と、を備えるコンピュータである。
【0035】
本実施形態に係る走行制御装置100の制御装置10は、自車情報取得機能と、対象情報取得機能と、対象領域設定機能と、目標経路設定機能と、制御機能と、提示機能とを有する。本実施形態の制御装置10は、上記機能を実現するためのソフトウェアと、上述したハードウェアの協働により各機能を実行する。
【0036】
以下、本実施形態に係る走行制御装置100の各機能について説明する。
まず、制御装置10の自車情報取得機能について説明する。自動情報取得機能は、自車両の位置を含む自車情報を取得する。自車両の位置は、ナビゲーション装置120の位置検出装置121により取得できる。自車情報は、自車両の車速、加速度を含む。制御装置10は、自車両の速度を車速センサ62から取得する。自車両の速度は、自車両の位置の経時的な変化に基づいて取得することもできる。自車両の加速度は、自車両の速度から求めることができる。
【0037】
制御装置10の対象情報取得機能について説明する。対象情報取得機能は、自車両が回避すべき回避対象の位置を含む対象情報を取得する。対象情報取得機能は、検出装置50により検出された回避対象の位置を含む対象情報を取得する。対象情報は回避対象の相対位置、相対速度、相対加速度を含む。
【0038】
回避対象が他車両であり、この他車両と自車両とが車車間通信が可能であれば、自車両の制御装置10は、他車両の車速センサが検出した他車両の車速、加速度を対象情報として取得してもよい。もちろん、制御装置10は、高度道路交通システムの外部装置から他車両の位置、速度、加速度を含む対象情報を取得することもできる。
【0039】
制御装置10の対象領域設定機能は、自車両の位置と回避対象の位置との関係に基づいて対象領域Rを設定する。
図2は、対象領域Rの設定手法の一例を示す図である。
図2において、自車両の走行方向Vd1は、図中+y方向である。同図において、自車両が走行する走行レーンLn1の延在方向も、図中+y方向である。
【0040】
図2は、自車両の走行レーンLn1の左側の路肩に駐車された他車両V2が検出された場面を上方から見た図である。検出された他車両V2は、自車両V1の走行レーンLn1に存在し、自車両V1の直進を妨げるため、自車両V1の回避するべき回避対象である。制御装置10は、他車両V2を含む範囲を対象領域Rとして設定する。
【0041】
図2に示すように、自車両の走行方向Vd1を前方とし、その逆方向を後方として定義した場合において、対象領域Rはその前後に前後端部RL1,RL2を有する。この前後端部RL1,RL2は、自車両の走行レーンLn1の延在方向(+y)に沿う対象領域Rの長さを規定する端線である。
図2に示す対象領域Rの走行レーンLn1の延在方向(+y)に沿う長さは、前後端部RL1の(y1)と前後端部RL2(y2)の間の距離であるL0である。前後端部RL1,RL2のうち、対象領域Rに接近する自車両V1から見て手前側(上流側)に位置する前後端部を第1端部RL1とする。一方、前後端部RL1,RL2のうち、対象領域Rに接近乃至通過する自車両V1から見て奥手側(下流側)に位置する前後端部を第2端部RL2とする。第1端部RL1と第2端部RL2は、対象領域Rの境界上に位置する。
【0042】
図2に示すように、自車両の車幅方向をVw1(図中X方向)として定義した場合において、対象領域Rはその左右のそれぞれに左右端部RW1,RW2を有する。この左右端部RW1,RW2は、自車両V1との車幅方向に沿う距離を規定する端線(端部)である。また、左右端部RW1,RW2は、自車両の走行レーンLn1の路幅方向(X)に沿う対象領域の長さ(幅)を規定する端線である。
図2に示す対象領域Rの路幅方向に(X)沿う長さは、左右端部RW1(x1)と左右端部RW2(x2)との間の距離であるW0である。左右端部RW1,RW2のうち、自車両が車幅方向に沿って回避対象V2に接近するときに、対象領域Rの左右端部RW1,RW2のうち、自車両V1から見てその自車両V1の側方に位置する左右端部を第1横端部RW1とする。一方、左右端部RW1,RW2のうち、自車両V1から見てその自車両V1の側方とは反対の側方(路肩側)に位置する左右端部を第2横端部RW2とする。第1横端部RW1と第2横端部RW2は、対象領域Rの境界上に位置する。
【0043】
なお、
図2に示すように、自車両V1の走行レーンLn1の対向車線Ln2を対向走行する他車両V3が存在する場合には、他車両V3は回避対象として検出される。同図には示さないが、他車両V3が回避対象として検出された場合には、同様の手法で、他車両V3を含む範囲の対象領域を設定する。また、対象領域Rは、回避対象を検出したタイミング、つまり自車両V1の転回操作が行われるよりも前のタイミングにおいて設定される。
【0044】
制御装置10の目標経路設定機能は、設定された対象領域Rの境界の位置に基づいて目標経路RTを算出する。ここで、「対象領域Rの位置に基づいて目標経路RTを算出する」とは、対象領域R内に自車両V1が進入しないように目標経路RTを算出してもよいし、対象領域Rと自車両V1の存在領域とが重複する面積が所定値未満となるように目標経路RTを算出してもよいし、対象領域Rの境界線から所定距離だけ離隔した位置を目標経路RTとして算出してもよいし、対象領域Rの境界線を目標経路RTとして算出してもよい。先述したように、対象領域Rは、自車両V1と回避対象との距離が所定値未満とならないように、又は、自車両V1と回避対象との距離が所定閾値に保たれるように設定されるので、結果的に、目標経路RTも自車両V1と回避対象との距離が所定値未満とならない位置に、又は、自車両V1と回避対象との距離が所定閾値に保たれる位置に設定される。
【0045】
制御装置10の制御機能は、目標経路RT上を自車両V1に走行させるための指令情報を車両側の車両コントローラ70、駆動装置80、および操舵装置90に出力する。制御装置10から指令情報を取得した車両コントローラ70は、駆動装置80および操舵装置90を制御して、目標経路RTに沿って自車両V1を走行させる。車両コントローラ70は、検出装置50により検出された道路形状や、ナビゲーション装置120の道路情報122および地図情報123が記憶するレーンマーカモデルを用いて、自車両が車線に対して所定の横位置を維持しながら走行するように操舵装置90の制御を行う。車両コントローラ70は、操舵角センサ61から取得した操舵角、車速センサ62から取得した車速、およびステアリングアクチュエータの電流の情報などに基づいて、転回制御量を算出し、ステアリングアクチュエータに電流指令を送ることで、自車両が目標の横位置を走行するように制御を行う。
なお、自車両V1の横位置を制御する方法として、上述した操舵装置90を用いる他、駆動装置80及び/又は制動装置81を用いて左右の駆動輪の回転速度差により自車両V1の走行方向(すなわち、横位置)を制御してもよい。その意味において、車両の「転回」とは、操舵装置90による場合の他、駆動装置80及び/又は制動装置81による場合も含む趣旨である。
【0046】
上述したように、本実施形態では、回避対象が検出された場合には、回避対象を含む対象領域Rが設定され、この対象領域Rの側方を通過するように目標経路RTが算出される。また、本実施形態では、回避対象の検出、対象領域Rの設定、目標経路RTの算出、および目標経路RTに基づく走行制御が一定間隔で繰り返し行われる。これにより、制御装置10は、自車両V1の最新の周囲状況に基づいて、自車両V1の目標経路RTを逐次設定することができ、自車両V1の周囲状況に適した経路を自車両V1に走行させることができる。
【0047】
一方、このように、自車両V1の目標経路RTを設定する場合において、たとえば、回避対象が自車両V1に並走する他車両V2であり、かつ、当該他車両V2が左右にふらついて走行している場合には、ふらついている他車両V2の位置に応じて、目標経路RTが異なる経路で繰り返し設定されてしまい、その結果、自車両V1の走行までふらついてしまう場合がある。そこで、本実施形態において、制御装置10は、他車両V2のふらつきに伴う自車両V1のふらつきを軽減するために、以下に説明するように、自車両V1の走行制御を行う。
【0048】
すなわち、本実施形態において、制御装置10は、自車両V1と回避対象との車幅方向に沿う距離に基づいて、予め設定されている目標経路RTに基づいて自車両V1を走行させるか、回避対象の現在位置に基づいて目標経路RTを新たに設定し、新たな目標経路RTに基づいて自車両V1を走行させるかを判断する。
【0049】
具体的には、制御装置10は、まず、自車両V1と回避対象との車幅方向に沿う距離が変動した場合でも、自車両V1が予め設定されている目標経路RTを走行することを許容する変動距離の範囲を、許容車幅距離範囲として設定する(なお、許容車幅距離範囲の設定方法については後述する。)。
【0050】
そして、制御装置10は、自車両V1と回避対象との車幅方向に沿う実際の距離(以下、実際車幅距離ともいう。)が、許容車幅距離範囲内であるか否かを判断する。実際車幅距離が許容車幅距離範囲内である場合には、目標経路RTを新たに設定せずに、予め設定されている目標経路RTを自車両V1に走行させる。一方、実際車幅距離が許容車幅距離範囲を超える場合には、回避対象の現在の位置に基づいて、目標経路RTを新たに設定し、新たに設定した目標経路RTを自車両V1に走行させる。
【0051】
なお、
図2に示すように、自車両V1が回避対象を追い越す場面において、制御装置10は、回避対象の側方を通過するために自車両V1の転回を開始し、自車両V1が回避対象を追い越した後に、所定の横位置(たとえば追い越し開始前の横位置)まで戻り直進を開始するように、自車両V1を制御する。この一連の制御を行う期間を処理対象期間とし、この処理対象期間において、上述した走行制御処理を行うことができる。また、自車両V1が回避対象の側方を通過するために転回を開始してから一定時間が経過するまでの期間を処理対象期間とし、この処理対象期間において、上述した走行制御処理を行う構成としてもよい。さらに、自車両V1が対向車両V3などの回避対象とすれ違う場面も同様に、回避対象の側方を通過するために自車両V1の転回を開始してから、自車両V1と回避対象とがすれ違い、所定の横位置(たとえば走行レーンの中央位置)まで戻り直進を開始するまでの期間を、処理対象期間とし、この処理対象期間において、上述した走行制御処理を行う構成とすることができる。
【0052】
続いて、許容車幅距離範囲の設定方法について説明する。ここで、
図3は、自車両V1と回避対象である他車両V2とが並走しており、自車両V1が他車両V2を追い越す場面を例示した図である。また、
図4は、
図3に示す場面において設定される許容車幅距離範囲の設定方法を説明するための図である。なお、
図4において、時刻t1は、回避対象の側方を通過するために自車両V1の転回を開始した時刻であり、時刻t2は、自車両V1が回避対象の追い越しを完了して所定の横位置まで戻り直進を開始した時刻、または、転回を開始してから一定時間が経過した時刻である。すなわち、
図4において、時刻t1から時刻t2までの期間が、上述した処理対象期間となる(
図5〜
図8においても同じ。)。
【0053】
たとえば、
図3に示す例において、制御装置10は、自車両V1が他車両V2の側方を通過するために転回を開始する前(たとえば、
図3に示す例では、自車両V1が時刻t1の位置となる前)から、他車両V2の位置を繰り返し検出し、他車両V2の位置に応じた目標経路RTを繰り返し算出する。そして、制御装置10は、他車両V2の側方を通過するために自車両V1が転回を開始する際に(
図3に示す例において、自車両V1が時刻t1の位置となった際に)、
図3に示すように、転回開始時に設定されている目標経路RTを走行した場合に、自車両V1から回避対象の現在位置までの車幅方向に沿う各距離W
tを目標車幅距離として算出する。そして、制御装置10は、
図4に示すように、目標車幅距離を基準とし、目標車幅距離を含む所定の距離範囲を、許容車幅距離範囲として設定する。
【0054】
また、本実施形態において、制御装置10は、以下の要素を考慮して、許容車間距離範囲の幅を設定することができる。
【0055】
第1に、制御装置10は、自車両V1の走行速度を考慮して、許容車間距離範囲の幅を設定することができる。具体的には、制御装置10は、自車両V1の走行速度が所定速度以上である場合には、自車両V1の走行速度が所定速度未満である場合と比べて、許容車間距離範囲の幅が広くなるように、許容車間距離範囲を設定することができる。これにより、自車両V1の走行速度が速い場合に、自車両V1がふらついてしまうことをより有効に防止することができ、乗員の違和感を軽減することができる。
【0056】
第2に、制御装置10は、自車両V1が走行する道路の幅を考慮して、許容車間距離範囲の幅を設定することができる。具体的には、制御装置10は、自車両V1が走行する道路の幅が所定値以下である場合には、自車両V1が走行する道路の幅が所定値よりも大きい場合と比べて、許容車間距離範囲の幅を大きくすることができる。これにより、自車両V1が道路の幅が狭い場合に、自車両V1がふらついてしまい、乗員に違和感を与えてしまうことをより有効に防止することができる。
【0057】
第3に、制御装置10は、自車両V1が走行する道路の種別に応じて、許容車間距離範囲の幅を設定することができる。たとえば、制御装置10は、自車両V1が走行する道路の種別が高速道路である場合には、自車両V1が走行する道路の種別が一般道路である場合と比べて、許容車間距離範囲の幅を大きくすることができる。この場合も、自車両V1の走行速度が速くなる環境において、自車両V1のふらつきを有効に防止することが可能となる。
【0058】
第4に、制御装置10は、自車両V1が走行する道路が複数レーンを有している場合には、自車両V1が走行するレーンに応じて、許容車間距離範囲の幅を設定することができる。たとえば、自車両V1が走行する道路が片道3車線の道路であり、自車両V1が走行するレーンが追い越しに関して最も優先される追い越しレーンである場合には、許容車間距離範囲の幅を最も広くすることができる。この場合も、自車両V1の走行速度が速くなる環境において、自車両V1のふらつきを有効に防止することが可能となる。
【0059】
また、制御装置10は、以下のように、許容車間距離範囲の幅を設定することができる。ここで、
図5(A)は、許容車間距離範囲の設定方法の他の例を説明するための図であり、
図5(B)は、
図5(A)に示すA部分の拡大図である。たとえば、制御装置10は、
図5(B)に示すように、許容車間距離範囲のうち、目標車幅距離よりも距離が大きい範囲を第1車幅距離範囲とし、目標車幅距離よりも距離が小さい範囲を第2車幅距離範囲とした場合に、第2車幅距離範囲が第1車幅距離範囲よりも狭くなるように、許容車間距離範囲を設定することができる。この場合、自車両V1が回避対象に近づく場合には、自車両V1は回避対象の動きに対して敏感に反応することができるとともに、自車両V1が回避対象から離れる場合には、回避対象の動きに追従して自車両V1がふらつかないようにすることができる。また、第2車幅距離範囲の広さをゼロとして、自車両V1が回避対象から離れる方向の第1車幅距離範囲のみを設定する構成としてもよい。あるいは、第1車幅距離範囲の上限値を設けずに、自車両V1が回避対象から離れる場合には、自車両V1と回避対象との車幅方向に沿う距離に拘わらず、自車両V1を予め設定された目標経路RTに沿って走行させる構成としてもよい。
【0060】
さらに、制御装置10は、自車両V1が回避対象の側方を通過する際に、
図6に示すように、自車両V1が回避対象の追い越しを開始するまでの区間Aと、自車両V1が回避対象を追い越している間の区間Bと、回避対象の追い越しを完了した後の区間Cとで、許容車幅距離範囲を異なる広さとすることができる。
【0061】
ここで、
図7は、自車両V1が回避対象である他車両V2を追い越す場面を例示した図である。なお、
図7においては、各時刻t1,t3,t4における、自車両V1と他車両V2の各位置を表している。たとえば、
図7に示す例において、制御装置10は、走行する自車両V1の前方端部と対象領域Rとの距離が所定距離(ゼロも含む)未満となる位置を追い越し開始位置PSとして検出し、自車両V1が転回を開始してから追い越し開始位置PSに到達するまでの区間を区間Aとして設定することができる。
【0062】
たとえば、
図7に示す例では、回避対象である他車両V2が自車両V1と同じ走行方向に走行している。そのため、制御装置10は、自車両V1と他車両V2との相対速度を考慮して、時刻t3において、自車両V1(t3)の前方端部と対象領域R(t3)の後端部RL1との距離が所定距離未満になると判断し、時刻t3における自車両V1の位置を、追い越し開始位置PSとして検出することができる。なお、自車両V1の前方端部と対象領域Rとの距離は、自車両V1の進行方向に沿う距離とすることが好ましいが、自車両V1の前方端部と対象領域Rとを結ぶ直線距離とすることもできる。
【0063】
また、制御装置10は、自車両V1の後方端部と対象領域Rとの距離が減少した後に増加する位置を、追い越し完了位置PEとして検出し、自車両V1が追い越し開始位置PSに到達した後、追い越し完了位置PEに到達するまでの区間を区間Bとして設定することができる。また、制御装置10は、自車両V1が回避対象の追い越しを完了した後に所定の横位置に戻るまでの区間を区間Cとして設定することができる。
【0064】
ここで、自車両V1が回避対象を追い越す場合、自車両V1の後方端部と対象領域Rとの距離は、回避対象の追い越しが完了する前は、自車両V1が回避対象に近づくほど減少し、回避対象の追い越しが完了した後は、自車両V1が回避対象から遠ざかるほど増加する。そのため、自車両V1の後方端部と対象領域Rとの距離が減少した後に増加する位置が、追い越しが完了した位置PEとなる。たとえば、
図7に示す例において、制御装置10は、自車両V1と他車両V2との相対速度を考慮して、時刻t4において、自車両V1(t4)の後方端部と対象領域R(t4)の前端部RL2との距離が減少した後に増加すると判断し、時刻t4における自車両V1の位置を、追い越し完了位置PEとして検出することができる。なお、自車両V1の後方端部と対象領域Rとの距離は、自車両V1の進行方向に沿う距離とすることが好ましいが、自車両V1の後方端部と対象領域Rとを結ぶ直線距離とすることもできる。
【0065】
そして、制御装置10は、
図6に示すように、区間Aおよび区間Cに対応する許容車幅距離範囲の幅を、区間Bに対応する許容車幅距離範囲の幅よりも狭くすることができる。区間Bと比べて、区間Aおよび区間Cにおいては、自車両V1と回避対象との距離が近いため、区間Aおよび区間Cに対応する許容車幅距離範囲を狭くすることで、回避対象が自車両V1に大きく近づいた場合には、回避対象から迅速に離れることができる。
【0066】
また、制御装置10は、
図6に示す区間A〜Cのうち、区間Aおよび区間Bのみに許容車間距離範囲を設定する構成としてよい。また、制御装置10は、区間Bのみに許容車間距離範囲を設定する構成としてもよい。さらに、制御装置10は、区間Bの一部のみに許容車間距離範囲を設定する構成としてもよい。自車両V1と回避対象との車幅方向に沿う距離が離れる区間において、許容車間距離範囲をこのように設定することで、回避対象と自車両V1とが離れている場合に、回避対象のふらつきに伴う自車両V1のふらつきを有効に防止することができる。
【0067】
なお、上述した例は、自車両V1が自車両V1に並走する回避対象を追い越す場面を例示して説明したが、自車両V1が停車している回避対象を追い越す場面においても同様に、区間A〜区間Cを設定し、区間A〜区間Cごとに、許容車両距離範囲の幅を設定する構成とすることができる。また、自車両V1が回避対象である対向車両V3とすれ違う場面においても、同様に区間A〜区間Cを設定し、区間A〜区間Cごとに許容車両距離範囲の幅を設定する構成とすることができる。すなわち、自車両V1の前方端部と対向車両V3を含む対象領域Rとの距離が所定距離(ゼロも含む)未満となる位置をすれちがい開始位置PSとして検出し、また、自車両V1の後方端部と対向車両V3を含む対象領域Rとの距離が減少した後に増加する位置を、すれ違い完了位置PEとして検出することで、区間A〜区間Cを設定することができる。
【0068】
そして、制御装置10は、
図4〜
図6に示すように、許容車幅距離範囲を設定した場合には、自車両V1と回避対象との車幅方向に沿う実際の距離(実際車幅距離)を繰り返し算出し、実際車幅距離が許容車幅距離範囲を超えたか否かを繰り返し判断する。そして、制御装置10は、実際車幅距離が許容車幅距離範囲の範囲内である場合には、予め設定されている目標経路RTを自車両V1に走行させ、一方、実際車幅距離が許容車幅距離範囲を超えた場合には、回避対象の現在の位置に基づいて目標経路RTを新たに設定し、新たに設定した目標経路RTを自車両V1に走行させる。なお、目標経路RTを新に設定する場合も、自車両V1が走行するレーンを越えない範囲で目標経路RTが算出される。
【0069】
図8(A)は、
図4に示す許容車間距離範囲と実際車幅距離の一例を示す図である。また、
図8(B)は、
図8(A)に示す場面において、自車両V1が走行する横位置を示す図である。
図8(A)に示す例において、実際車幅距離は、許容車間距離範囲の範囲内で推移している。そのため、
図8(A)に示す例では、
図8(B)に示すように、自車両V1は予め設定された目標経路RTに対応する横位置を走行することとなる。その結果、回避対象がふらついている場合でも、自車両V1はふらつくことなく走行することが可能となる。
【0070】
最後に、本実施形態の制御装置10の提示機能について説明する。提示機能は、算出された、対象情報に応じた情報、対象領域Rの位置に応じた情報、目標経路の位置に応じた情報、及び目標経路上を自車両に走行させる指令情報に応じる情報を出力装置110に送出し、上述した態様で外部に出力させる。
【0071】
続いて、本実施形態に係る走行制御処理を、
図9および
図10に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、各ステップでの処理の内容は、上述したとおりであるため、ここでは処理の流れを中心に説明する。
【0072】
まず、
図9に基づいて、走行制御の全体の手順について説明する。なお、上述したように、本実施形態では、
図9に示す走行制御処理が一定間隔で繰り返し実行される。
【0073】
ステップS101において、制御装置10は、少なくとも自車両V1の位置を含む自車情報を取得する。自車情報は、自車両V1の車速・加速度を含んでもよい。ステップS102において、制御装置10は、自車両V1が回避すべき回避対象の位置を含む対象情報を取得する。対象情報は、回避対象の速度・加速度を含んでもよい。
【0074】
ステップS103において、制御装置10は、回避対象の検出結果を検出装置50から取得する。回避対象の検出結果は、回避対象の位置の情報を含む。ステップS104において、制御装置10は、回避対象の位置に応じて対象領域Rを設定する。
【0075】
ステップS105において、制御装置10は、対象領域Rの側方を通過する目標経路RTを算出する。目標経路RTは、自車両V1が走行する一又は複数の目標座標を含む。各目標座標は、目標横位置(目標X座標)と目標縦位置(目標Y座標)とを含む。算出された一又は複数の目標座標と自車両V1の現在位置とを結ぶことにより、目標経路RTを求める。なお、ステップS105に示す目標座標の算出方法については後述する。
【0076】
ステップS106において、制御装置10は、ステップS105で算出された目標座標の目標横位置を取得する。また、ステップS107において、制御装置10は、自車両V1の現在の横位置とステップS106で取得した目標横位置との比較結果に基づいて、横位置に関するフィードバックゲインを算出する。
【0077】
そして、ステップS108において、制御装置10は、自車両V1の実際の横位置と、現在位置に対応する目標横位置と、ステップS107のフィードバックゲインとに基づいて、自車両V1を目標横位置上に移動させるために必要な自車両V1の転回角や転回角速度等に関する目標制御値を算出する。そして、ステップS112において、制御装置10は、算出した目標制御値を車載装置200に出力する。これにより、自車両V1は、目標横位置により定義される目標経路RT上を走行できる。なお、ステップS105において複数の目標座標が算出された場合には、目標横位置を取得する度にステップS106〜S112の処理を繰り返し、取得した目標横位置のそれぞれについての目標制御値を車載装置200に出力する。
【0078】
ステップS109において、制御装置10は、ステップS105で算出された一又は複数の目標座標についての目標縦位置を取得する。また、ステップS110において、制御装置10は、自車両V1の現在の縦位置、現在位置における車速及び加減速と、現在の縦位置に対応する目標縦位置、その目標縦位置における車速及び加減速との比較結果に基づいて、縦位置に関するフィードバックゲインを算出する。そして、ステップS111において、制御装置10は、目標縦位置に応じた車速および加減速度と、ステップS110で算出された縦位置のフィードバックゲインとに基づいて、縦位置に関する目標制御値が算出される。ステップS109〜S112の処理は、先述したステップS106〜S108,S112と同様に、目標縦位置を取得する度に繰り返し、取得した目標縦位置のそれぞれについての目標制御値を車載装置200に出力する。
【0079】
ここで、縦方向の目標制御値とは、目標縦位置に応じた加減速度および車速を実現するための駆動機構の動作(エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車系にあっては電動モータ動作を含み、ハイブリッド自動車にあっては内燃機関と電動モータとのトルク配分も含む)およびブレーキ動作についての制御値である。たとえば、エンジン自動車にあっては、制御装置10は、現在および目標とするそれぞれの加減速度および車速の算出値に基づいて、目標吸入空気量(スロットルバルブの目標開度)と目標燃料噴射量を算出し、これを駆動装置80へ送出する。なお、制御装置10は、加減速度および車速を算出し、これらを車両コントローラ70へ送出し、車両コントローラ70において、これら加減速度および車速を実現するための駆動機構の動作(エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車系にあっては電動モータ動作を含み、ハイブリッド自動車にあっては内燃機関と電動モータとのトルク配分も含む)およびブレーキ動作についての制御値をそれぞれ算出してもよい。
【0080】
そして、ステップS112に進み、制御装置10は、ステップS111で算出された縦方向の目標制御値を、車載装置200に出力する。車両コントローラ70は、転回制御及び駆動制御を実行し、自車両に目標横位置及び目標縦位置によって定義される目標経路RT上を走行させる。
【0081】
ステップS113において、制御装置10は、出力装置110に情報を提示させる。出力装置110に提示させる情報は、ステップS104において算出された対象領域の位置・速度であってもよいし、ステップS105において算出された目標経路の形状であってもよいし、ステップS112において車載装置200へ出力された目標制御値であってもよい。
【0082】
ステップS114において、ドライバがステアリング操作等をしたか否か、ドライバの操作介入の有無を判断する。ドライバの操作が検出されなければ、ステップS101へ戻り、新たな対象領域の設定、目標経路の算出及び走行制御を繰り返す。他方、ドライバが操作をした場合には、ステップS115に進み、走行制御を中断する。次のステップS116において、走行制御を中断した旨の情報を提示する。
【0083】
続いて、
図10に示すフローチャートに基づいて、ステップS105の目標座標算出処理について説明する。
【0084】
まず、ステップS201では、制御装置10の目標経路設定機能により、目標縦位置の算出が行われる。たとえば、目標経路設定機能は、自車両V1の走行方向の前方側に、一定の距離間隔で目標縦位置を設定する。
【0085】
ステップS202では、目標経路設定機能により、ステップS103で取得した回避対象の検出結果に基づいて、回避対象が検出されたか否かの判断が行われる。回避対象が検出された場合には、ステップS203に進み、一方、回避対象が検出されない場合には、ステップS215に進む。
【0086】
なお、ステップS215では、回避対象が検出されないと判断されているため、目標経路設定機能により、自車両V1が所定の横位置(たとえば自車両V1の走行レーンの中央位置)を直進するように、ステップS201で算出された各目標縦位置に対応する各目標横位置が算出される。そして、ステップS216では、目標経路設定機能より、ステップS201で算出された目標縦位置と、ステップS215で算出された目標横位置とからなる目標経路RTが、制御装置10のRAM13に記憶される。
【0087】
一方、ステップS202で、回避対象が検出されたと判断された場合には、ステップS203に進む。ステップS203では、目標経路設定機能により、処理対象期間であるか否かの判断が行われる。ここで、処理対象期間とは、許容車幅距離範囲を用いた走行制御を行う期間であり、たとえば、自車両V1が回避対象の側方を通過するために転回を開始してから、自車両V1が回避対象を追い越して所定の横位置(たとえば走行レーンの中央位置)に戻り直進を開始するまでの期間とすることができる。あるいは、自車両V1が回避対象の側方を通過するために転回を開始してから一定時間が経過するまでの期間としてもよい。処理対象期間であると判断された場合には、ステップS204に進み、一方、処理対象期間ではないと判断された場合には、ステップS213に進む。
【0088】
なお、ステップS213では、処理対象期間ではないと判断されているため、目標経路設定機能により、ステップS104で設定された対象領域Rの側方を通過するように、ステップS201で算出された各目標縦位置に応じて各目標横位置が算出される。そして、ステップS214では、目標経路設定機能より、ステップS201で算出された目標縦位置と、ステップS213で算出された目標横位置とからなる目標経路RTが、制御装置10のRAM13に記憶される。
【0089】
一方、ステップS203で、処理対象期間であると判断された場合には、ステップS204に進む。ステップS204では、目標経路設定機能により、許容車幅距離範囲が既に設定されているか否かの判断が行われる。たとえば、
図9に示す走行制御処理の開始後、ステップS204の処理を初めて行う場合や、後述するステップS212において、許容車幅距離範囲の設定が解除された場合に、許容車幅距離範囲が設定されていないと判断される。そして、許容車幅距離範囲が設定されていないと判断された場合には、ステップS205に進み、一方、許容車幅距離範囲が既に設定されていると判断された場合には、ステップS207に進む。
【0090】
ステップS205では、目標経路設定機能により、予め設定されている目標経路RTに基づいて、目標車幅距離の算出が行われる。具体的には、目標経路設定機能は、RAM13に記憶されている目標経路RTを取得する。そして、目標経路設定機能は、
図3に示すように、自車両V1がこの目標経路RTを走行した場合における、自車両V1から回避対象までの車幅方向に沿う各距離W
tを目標車幅距離として算出する。そして、ステップS206では、目標経路設定機能により、
図4〜
図6に示すように、ステップS205で算出された目標車幅距離を基準として、許容車幅距離範囲の設定が行われる。
【0091】
上述したように、目標経路設定機能は、許容車間距離範囲を設定する際に、車速、道路幅、道路種別、自車両V1が走行するレーンの属性に基づいて、許容車間距離範囲の幅を適宜変更することができる。たとえば、目標経路設定機能は、まず、自車両V1の車速が所定速度以上であるか否かを判断する。そして、自車両V1の車速が所定速度以上である場合には、許容車間距離範囲を広く設定し、一方、自車両V1の車速が所定速度未満である場合には、次に、自車両V1が走行する道路の幅を判断する。自車両V1が走行する道路の幅が所定値以下である場合には、許容車間距離範囲の幅を広くし、一方、自車両V1が走行する道路の幅が所定値よりも大きい場合には、次に、自車両V1が走行する道路の種別を判断する。自車両V1が走行する道路が高速道路である場合には、許容車間距離範囲の幅を広くし、一方、自車両V1が走行する道路の種別が一般道路である場合には、次に、自車両V1が走行するレーンが追い越しレーンであるか否かを判断する。自車両V1が走行するレーンが追い越しレーンである場合には、許容車間距離範囲の幅を広くし、一方、自車両V1が走行するレーンが追い越しレーンではない場合には、許容車間距離範囲の幅をそのままの広さとすることができる。
【0092】
なお、上述した例では、車速、道路の幅、道路の種別、走行レーンの順に判断して、許容車幅距離範囲の幅を設定する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、車速、道路の幅、道路の種別、走行レーンを総合的に考慮して、許容車幅距離範囲の幅を設定する構成としてもよい。
【0093】
ステップS207では、目標経路設定機能により、自車両V1と回避対象との車幅方向に沿う実際の距離(実際車幅距離)の算出が行われる。そして、ステップS208では、目標経路設定機能により、ステップS207で算出された実際車幅距離が、ステップS206で設定された許容車幅距離範囲を超えるか否かの判断が行われる。実際車幅距離が許容車幅距離範囲内である場合には、ステップS209に進み、一方、実際車幅距離が許容車幅距離範囲を超える場合には、ステップS210に進む。
【0094】
ステップS209では、実際車幅距離が許容車幅距離範囲内であると判断されているため、新たな目標経路RTを設定せずに、RAM13に記憶されている目標経路RTに基づいて目標横位置が算出される。すなわち、予め設定されている目標経路RTを走行するように、ステップS201で設定された各目標縦位置に応じて各目標横位置が算出される。
【0095】
一方、ステップS210では、実際車幅距離が許容車幅距離範囲を超えると判断されているため、回避対象の現在位置に基づいて、目標横位置が新たに算出される。すなわち、回避対象の現在位置に基づいて設定された対象領域Rの側方を通過するように、ステップS201で設定された各目標縦位置に応じた各目標横位置が算出される。そして、ステップS211では、目標経路設定機能より、ステップS201で算出された目標縦位置と、ステップS210で算出された目標横位置とからなる目標経路RTが、制御装置10のRAM13に記憶される。さらにステップS212では、目標経路設定機能により、ステップS206で設定された許容車幅距離範囲の設定が解除される。これにより、次回の走行制御処理においては、今回の走行制御処理において設定された目標経路RTに基づいて許容車幅距離範囲が設定されることとなる。
【0096】
本発明の実施形態の走行制御装置100は、以上のように構成され動作するので、以下の効果を奏する。
【0097】
本実施形態によれば、自車両V1と回避対象との車幅方向に沿う実際の距離(実際車幅距離)が許容車幅距離範囲内である場合には、予め設定されている目標経路RTを自車両V1に走行させる。これにより、たとえ回避対象がふらついており、実際車幅距離が繰り返し変動する場面においても、実際車幅距離が許容車幅距離範囲内である場合には、自車両V1は予め設定されている目標経路RTを走行するため、回避対象のふらつきに伴う自車両のふらつきを有効に防止することができる。特に、本発明では、回避対象が走行車両などの移動体となる場合がある。回避対象が走行車両などの移動体である場合には、回避対象である走行車両の走行条件、走行車両の運転者の技量、走行車両の車両性能に応じて、回避対象が車幅方向にふらつきながら走行することが想定される。そのため、回避対象が走行車両などの移動体である場合には、特に顕著な効果を得ることができる。
【0098】
また、本実施形態では、実際車幅距離が許容車幅距離範囲を超える場合には、回避対象の現在位置に基づいて新たな目標経路RTを設定することで、仮に回避対象が自車両V1に近づいてきた場合でも、回避対象と自車両V1との車幅方向に沿う距離を適切なものとすることができる。
【0099】
さらに、本実施形態の走行制御装置100によれば、対象領域Rの側方を通過する走行制御に関する情報を外部に出力することにより、自車両及び/又は他車両の乗員に自車両の挙動を予め知らせることができる。これにより、自車両の乗員及び/他車両の乗員は、自車両の挙動に応じた対応ができる。
【0100】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0101】
すなわち、本明細書では、本発明に係る走行制御装置の一態様として、車載装置200ともに走行制御システム1を構成する走行制御装置100を例にして説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0102】
また、上述した実施形態では、許容車幅範囲を設定することで、他車両V2のふらつきに伴う自車両V1のふらつきを軽減する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、目標経路RTを新たに設定するための閾値にヒステリシスを設けることで、他車両V2のふらつきに伴う自車両V1のふらつきを軽減する構成としてもよい。たとえば、
図11に示すように、自車両V1と回避対象とが近づく場合には、自車両V1と回避対象との車幅方向に沿う距離が第1距離W1以下となった場合に、自車両V1が回避対象から離れるように、目標経路RTを新たに設定する。一方、自車両V1と回避対象とが離れる場合には、自車両V1と回避対象との車幅方向に沿う距離が第1距離W1よりも大きい第2距離W2以上となった場合に、自車両V1が回避対象に近づくように、目標経路RTを新たに設定することができる。このように、第1距離W1と第2距離W2とを異なる閾値として、目標経路RTを新たに設定するか否かを判断することで、回避対象のふらつきに伴う自車両V1のふらつきを有効に防止することができる。なお、
図11は、ヒステリシスを用いた走行制御処理を説明するための図である。
【0103】
さらに、上述した実施形態では、目標経路RTを自車両V1に走行させた場合に自車両V1から回避対象までの車幅方向に沿う距離W
tを目標車幅距離として算出する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、目標経路RTを自車両V1に走行させた場合において、自車両V1から回避対象側の車線までの車幅方向に沿う距離、自車両V1から対象領域Rの自車両V1側の端線までの車幅方向に沿う距離、あるいは自車両V1から回避対象側の路肩までの車幅方向に沿う距離を、目標車幅距離として算出することができる。この場合、実際車幅距離も、目標車幅距離に合わせて、自車両V1から回避対象側の車線までの車幅方向に沿う実際の距離、自車両V1から対象領域Rの自車両V1側の端線までの車幅方向に沿う実際の距離、あるいは、自車両V1から回避対象側の路肩までの車幅方向に沿う実際の距離とされる。
【0104】
なお、上述した実施形態の対象情報取得機能は本発明の対象情報取得手段に相当し、目標経路設定機能は本発明の第1設定手段、第2設定手段、および設定手段に相当し、制御機能は本発明の制御手段に相当し、提示機能は本発明の出力手段に相当する。