特許第6206596号(P6206596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6206596内燃機関の燃料噴射制御装置及び燃料噴射制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206596
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】内燃機関の燃料噴射制御装置及び燃料噴射制御方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/34 20060101AFI20170925BHJP
   F02D 41/22 20060101ALI20170925BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20170925BHJP
   F02D 41/02 20060101ALI20170925BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   F02D41/34 C
   F02D41/22 325M
   F02D41/04 325E
   F02D41/02 325A
   F02D45/00 314J
   F02D45/00 364A
   F02D45/00 345Z
   F02D45/00 364N
   F02D45/00 366F
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-543550(P2016-543550)
(86)(22)【出願日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】JP2014071926
(87)【国際公開番号】WO2016027354
(87)【国際公開日】20160225
【審査請求日】2017年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池内 孝暢
【審査官】 藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−239487(JP,A)
【文献】 特開平10−227241(JP,A)
【文献】 特開2001−248505(JP,A)
【文献】 特開2009−281157(JP,A)
【文献】 特開2012−219622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00 〜 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気ポート内に燃料噴射を行なうポート噴射インジェクタと燃焼室内へ直接燃料を噴射する直噴インジェクタとを備えた内燃機関の燃料噴射制御装置において、
ポート噴射インジェクタと直噴インジェクタとに燃料を供給可能な低圧燃料ポンプと;
低圧燃料ポンプの吐出燃料をさらに加圧して直噴インジェクタに供給する高圧燃料ポンプと;
内燃機関の負荷を検出する負荷検出センサと;
次のようにプログラムされたプログラマブルコントローラ;
内燃機関が低負荷状態で運転されているかどうかを判定し;
内燃機関が燃料噴射を必要としているかどうかを判定し;
内燃機関の低負荷状態であって内燃機関が燃料噴射を必要としている場合に、ポート噴射インジェクタによる燃料噴射を停止するとともに、高圧燃料ポンプの運転を停止し、内燃機関の要求燃料噴射量の全量を低圧燃料ポンプの吐出燃料を用いて直噴インジェクタに噴射させる、
とを備えることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項2】
コントローラは、内燃機関が低負荷状態で運転されている場合であってポート噴射インジェクタと直噴インジェクタがともに燃料を噴射している場合にのみ、ポート噴射インジェクタによる燃料噴射を停止するようさらにプログラムされる、請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項3】
内燃機関は車両用の内燃機関であり、負荷検出センサは車両が備えるアクセルレータペダルの踏み込み量を検出するアクセルレータペダル踏み込みセンサで構成され、コントローラはアクセルレータペダルの踏み込み量が所定量を下回る場合に内燃機関が低負荷状態にあると判定するようさらにプログラムされる、請求項1または2に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項4】
コントローラはアクセルレータペダルの踏み込み量が所定量を下回ってから所定期間に渡ってポート噴射インジェクタによる燃料噴射を停止するようさらにプログラムされる、請求項3に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項5】
負荷検出センサは内燃機関の回転速度を検出する回転速度センサで構成され、コントローラは内燃機関の回転速度から出力トルクを求め、出力トルクが所定トルクを下回る場合に内燃機関が低負荷状態にあると判定するようプログラムされる、請求項1または2に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項6】
負荷検出センサは内燃機関の回転速度を検出する回転速度センサで構成され、コントローラは内燃機関の回転速度から出力トルクを求め、出力トルクの低下量が所定量以上となった場合に内燃機関が低負荷状態にあると判定するようプログラムされる、請求項1または2に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項7】
負荷検出センサは内燃機関の吸入空気量または燃料噴射量を検出するセンサで構成され、コントローラは吸入空気量または燃料噴射量が所定量を下回る場合に内燃機関が低負荷状態にあると判定するようさらにプログラムされる、請求項1または2に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項8】
負荷検出センサは内燃機関の吸入空気量または燃料噴射量を検出するセンサで構成され、コントローラは吸入空気量または燃料噴射量の低下量が所定量以上となった場合に内燃機関が低負荷状態にあると判定するようさらにプログラムされる、請求項1または2に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項9】
コントローラはポート噴射インジェクタが正常に噴射しているかどうかを判定するようさらにプログラムされる、請求項1から8のいずれかに記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項10】
コントローラは、ポート噴射インジェクタによる燃料噴射を停止する前後の空燃比変化に基づき、ポート噴射インジェクタが正常に噴射しているかどうかを判定するようさらにプログラムされる、請求項9に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項11】
コントローラは、所定の燃料カット条件でポート噴射インジェクタと直噴インジェクタの双方の燃料噴射を停止するとともに、燃料カット条件が成立しない場合は内燃機関が燃料噴射を必要としていると判定するようさらにプログラムされる、請求項1から10のいずれかに記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項12】
吸気ポート内に燃料噴射を行なうポート噴射インジェクタと、燃焼室内へ直接燃料を噴射する直噴インジェクタと、ポート噴射インジェクタと直噴インジェクタとに燃料を供給可能な低圧燃料ポンプと、低圧燃料ポンプの吐出燃料をさらに加圧して直噴インジェクタに供給する高圧燃料ポンプと、を備えた内燃機関の燃料噴射制御方法において、
内燃機関の負荷を検出し;
内燃機関が低負荷状態で運転されているかどうかを判定し;
内燃機関が燃料噴射を必要としているかどうかを判定し;
内燃機関の低負荷状態であって内燃機関が燃料噴射を必要としている場合に、ポート噴射インジェクタによる燃料噴射を停止するとともに、高圧燃料ポンプの運転を停止し、内燃機関の要求燃料噴射量の全量を低圧燃料ポンプの吐出燃料を用いて直噴インジェクタに噴射させる、内燃機関の燃料噴射制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吸気ポート内に燃料噴射を行なうポート噴射インジェクタと燃焼室内へ直接燃料を噴射する直噴インジェクタとを備えた内燃機関の燃料噴射制御に関する。
【背景技術】
【0002】
日本国特許庁が発行したJP2007−064131Aは、吸気ポート内に燃料噴射を行なうポート噴射インジェクタと燃焼室内へ直接燃料を噴射する直噴インジェクタとを備えたデュアルインジェクション内燃機関の燃料噴射制御を提案している。デュアルインジェクション内燃機関は、燃焼室内への直噴インジェクタによる燃料噴射のみでは必要とする燃料を供給できないような、格別に高出力を要求される内燃機関に適用される。
【0003】
従来技術による燃料噴射制御は、内燃機関の燃料カット条件が成立すると、まずポート噴射インジェクタの燃料噴射を停止し、その後に直噴インジェクタの燃料噴射を停止する。これは次の理由による。
【0004】
すなわち、ポート噴射インジェクタにより吸気ポート内に噴射された燃料の一部はポートの壁面などに付着する。ポートの壁面に付着した燃料は、ポートの壁面に付着せずに燃焼室に流入する燃料と比べて、燃焼室に到達するまでより多くの時間がかかる。燃料カット条件が成立した場合にポート噴射インジェクタと直噴インジェクタの噴射を同時に停止すると、その時点で内燃機関の燃焼が停止する。一方、ポートの壁面などに付着した燃料は遅れて燃焼室に到達するため、燃焼室に到達した時点では既に燃焼が停止している可能性がある。燃焼停止後に燃焼室に到達した燃料が未燃燃料として排出されると、排気組成が悪化することは避けられない。
【0005】
従来技術は、燃料カット条件の成立から一定時間に渡って直噴インジェクタの噴射を継続することで、ポート噴射によりポートの壁面などに付着した燃料が遅れて燃焼室に到達するまで、燃焼室内の燃料の燃焼を維持し、遅れて燃焼室に到達した燃料を確実に燃焼させている。
【発明の概要】
【0006】
従来技術において上記の燃料噴射制御が行われるのは、燃料カット条件が成立した場合に限られる。その他の場合にはポート噴射インジェクタと直噴インジェクタとが、所定の分担率のもとで燃料噴射を行なう。一般に、直噴インジェクタの燃料圧力はポート噴射インジェクタの燃料圧力より高く設定されている。
【0007】
しかしながら、例えばアイドル状態のような内燃機関の低負荷時に要求される燃料噴射量は少量である。こうした低負荷条件で、ポート噴射インジェクタと直噴インジェクタの両者が燃料噴射を行なうと、直噴インジェクタの燃料圧力はなかなか低下しない。
【0008】
低負荷条件で燃料圧力が高いと直噴インジェクタの噴射量にばらつきが生じやすくなる。そのため、低負荷条件では直噴インジェクタの燃料圧力をできるだけ早く低下させることが望ましい。しかしながら、従来技術による燃料噴射制御では、燃料カット条件が成立しない限り、低負荷条件でもポート噴射インジェクタと直噴インジェクタの両者が燃料噴射を行なうため、直噴インジェクタの燃料圧力を短い時間で低下させることは難しい。
【0009】
この発明の目的は、したがって、燃料カット条件に至らない低負荷条件で直噴インジェクタの燃料圧力を効率良く低下させることである。
【0010】
以上の目的を達成するために、この発明の実施形態は、吸気ポート内に燃料噴射を行なうポート噴射インジェクタと燃焼室内へ直接燃料を噴射する直噴インジェクタとを備えた内燃機関の燃料噴射制御装置を提供する。
【0011】
燃料噴射制御装置は内燃機関の負荷を検出する負荷検出センサと、負荷に応じて燃料噴射を制御するプログラマブルコントローラを備えている。コントローラは、内燃機関が低負荷状態にあるかどうかを判定し、内燃機関が燃料噴射を必要としているかどうかを判定し、内燃機関の低負荷状態であって内燃機関が燃料噴射を必要としている場合に、ポート噴射インジェクタによる燃料噴射を停止するとともに、内燃機関の要求燃料噴射量の全量を直噴インジェクタに噴射させるようプログラムされる。
【0012】
この発明の詳細並びに他の特徴や利点は、明細書の以下の記載の中で説明されるとともに、添付された図面に示される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】FIG.1はこの発明による内燃機関の燃料噴射制御装置の概略構成図である。
図2】FIG.2はこの発明の第1の実施形態によるエンジン制御モジュールが実行する燃料噴射制御ルーチンを説明するフローチャートである。
図3】FIGS.3A−3Fは燃料噴射制御ルーチンの実行結果を説明するタイミングチャートである。
図4】FIG.4はこの発明の第2の実施形態によるエンジン制御モジュールが実行する燃料噴射制御ルーチンを説明するフローチャートである。
図5】FIG.5はこの発明の第3の実施形態によるエンジン制御モジュールが実行する燃料噴射制御ルーチンを説明するフローチャートである。
図6】FIGS.6A−6FはFIG.5の燃料噴射制御ルーチンの実行結果を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面のFIG.1を参照すると、この発明の第1の実施形態による燃料噴射制御装置1は車両用の多気筒内燃機関に適用される。内燃機関は各気筒の吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射インジェクタ4と、各気筒の燃焼室内に直接燃料を噴射する直噴インジェクタ5と、を備えるデュアルインジェクション内燃機関で構成される。内燃機関は吸気ポートの吸気中にポート噴射インジェクタ4から燃料を噴射し、燃焼室に吸い込まれた噴射燃料と空気の混合気にさらに直噴インジェクタ5から燃料を噴射することで所望の吸入空気量と燃料量からなる混合気を生成し、混合気を火花点火により燃焼させる。
【0015】
ポート噴射インジェクタ4はマルチポイントインジェクション(MPI)と呼ばれる方式で気筒別に燃料噴射を行なうインジェクタであり、共通のMPI燃料チューブ2に接続され、MPI燃料チューブ2の燃料圧力のもとで燃料を噴射する。以下の説明ではポート噴射インジェクタ4による燃料噴射をMPI噴射と称する。
【0016】
直噴インジェクタ5はガソリンダイレクトインジェクション(GDI)と呼ばれる方式で各燃焼室に直接燃料を噴射するインジェクタであり、共通のGDI燃料チューブ3に接続され、GDI燃料チューブ3の燃料圧力のもとで燃料を噴射する。以下の説明では直噴インジェクタ5による燃料噴射をGDI噴射と称する。
【0017】
MPI燃料チューブ2には低圧燃料ポンプ7から低圧ホース14を介して燃料が供給される。低圧燃料ポンプ7は内燃機関によって機械的に駆動されるか、あるいは電動モータに駆動されるポンプである。低圧燃料ポンプ7は燃料タンク9の燃料を吸い込んで加圧し、加圧した燃料を低圧ホース14を介してMPI燃料チューブ2と高圧燃料ポンプ8に供給する。
【0018】
高圧燃料ポンプ8は内燃機関によって機械的に駆動されるか、あるいは電動モータに駆動されるポンプであり、低圧ホース14を介して低圧燃料ポンプ7から供給される燃料をさらに加圧し、高圧サブチューブ15を介してGDI燃料チューブ3に供給する。
【0019】
ポート噴射インジェクタ4の燃料噴射量と噴射タイミング及び直噴インジェクタ5の燃料噴射量と噴射タイミングはエンジンコントロールモジュール(ECM)10によって制御される。具体的にはポート噴射インジェクタ4と直噴インジェクタ5はいずれもECM10が信号回路を介して出力するパルス幅信号に対応した期間とタイミングで燃料を噴射する。
【0020】
ECM10はまた高圧燃料ポンプ8の運転の制御を行なう。この制御のために、GDI燃料チューブ3の燃料圧力を検出する燃圧センサ12が信号回路を介してECM10に接続される。ECM10は燃圧センサ12が検出したGDI燃料チューブ3の燃料圧力に基づき高圧燃料ポンプ8の運転を制御する。なお、高圧燃料ポンプ8は内燃機関のエンジン負荷が低い場合には公知の制御によって運転が停止される。
【0021】
ECM10は中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/O インタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。ECM10を複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。
【0022】
一方、低圧燃料ポンプ7の運転は燃料ポンプコントロールモジュール(FPCM)11によって制御される。FPCM11も中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/O インタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。FPCM11を複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。あるいは、ECM10とFPCM11を単一のマイクロコンピュータで構成することも可能である。
【0023】
ECM10には内燃機関の負荷として、車両が備えるアクセルレータペダルの踏み込み量、を検出するアクセルレータペダル踏み込みセンサ13が信号回路で接続される。また、内燃機関の排気ガスの酸素濃度から燃焼室で燃焼する混合気の空燃比を検出する空燃比センサ16が信号回路を介してECM10に接続される。さらに、アクセルレータペダルが踏まれた状態ではOFFを保ち、アクセルレータペダルが解放されるとONになるアイドルスイッチ17が信号回路を介してECM10に接続される。
【0024】
ECM10はアクセルレータペダルの踏み込み量に基づき、図2に示す燃料噴射制御ルーチンを実行することにより、ポート噴射インジェクタ4による燃料噴射と直噴インジェクタ5による燃料噴射とを制御する。このルーチンは内燃機関の運転中に例えば10ミリ秒の一定時間間隔で繰り返し実行される。
【0025】
図2を参照すると、ECM10はまずステップS1で燃料カット条件が成立するかどうかを判定する。ここでは、内燃機関が燃料噴射を必要としているかどうかを判定している。燃料カット条件が成立するかどうかの判定は例えば次の方法により行なうことができる。
【0026】
すなわち、内燃機関の燃料カットが別ルーチンによって行なわれる場合には、別ルーチンにより燃料カットが実行されているかどうかをECM10が判定し、燃料カットが行なわれている場合に燃料カット条件が成立すると判定することができる。
【0027】
ステップS1で燃料カット条件が成立する場合には、ECM10は直ちにルーチンを終了する。
【0028】
ステップS1で燃料カット条件が成立しない場合は、内燃機関が燃料噴射を必要としていることを意味する。
【0029】
この場合には、ECM10はステップS2でエンジン負荷を取得する。次のステップS3でECM10は、エンジン負荷が所定負荷を下回っているかどうか、言い換えれば内燃機関が低負荷状態であるかどうかを判定する。
【0030】
ステップS2とS3の処理に関して、この実施形態では、エンジン負荷としてアクセルレータペダル踏み込みセンサ13が検出するアクセルレータペダルの踏み込み量を用いる。そして、アクセルレータペダルの踏み込み量がゼロの場合に、エンジン負荷が所定負荷を下回っていると判定する。
【0031】
ただし、エンジン負荷を判定するパラメータとして、アクセルレータペダルの踏み込み量以外にも様々なパラメータで代用することができる。例えば、内燃機関の回転速度、吸入空気量、燃料噴射量を用いてエンジン負荷を判定することができる。
【0032】
具体的には、内燃機関の回転速度が所定速度以下の場合、あるいは内燃機関の回転速度の低下量が所定量以上の場合に、エンジン負荷が低負荷であると判定することができる。さらに、内燃機関の出力トルクは回転速度によって決まるので、回転速度からトルクマップを参照して出力トルクを求め、出力トルクが所定トルクを下回る場合にエンジン負荷が低負荷であると判定することができる。
【0033】
内燃機関の吸入空気量はアクセルレータペダルに連動するスロットルにより制御されるので、エアフローメータを用いて計測した吸入空気量を、エンジン負荷を表すパラメータと見なすことができる。さらに、吸入空気量に対して目標空燃比となるように燃料噴射量が制御されるので、燃料噴射量もエンジン負荷を表すパラメータと見なすことができる。
【0034】
以上のように、ステップS2とS3で行なわれるエンジン負荷が低負荷であるかどうかの判定は、様々なパラメータを用いて行なうことができる。エンジン回転速度、エンジン出力トルク、吸入空気量、及び燃料噴射量は、いずれもアクセルレータペダルの踏み込み量と比べて実際のエンジン運転状態に近いパラメータであるため、内燃機関の負荷の状態をより緻密に判断することができる。
【0035】
ただし、上記の各パラメータはアクセルレータペダルの踏み込み量に基づき変化するので、アクセルレータペダルの踏み込み量をエンジン負荷として用いることで燃料噴射制御の応答性を最も高くすることができる。また、アクセルレータペダルの踏み込み量がゼロの場合にエンジン負荷が所定負荷を下回っていると判定することは、実質的にアクセルレータペダルのオンとオフを識別することになる。したがって、アクセルレータペダル踏み込みセンサ13の出力信号の適合処理を行なう必要がなく、燃料噴射制御装置1の実装が容易になる。なお、アクセルレータペダルのオンとオフはアイドルスイッチ17によっても検出可能である。
【0036】
さて、ステップS3で内燃機関が低負荷状態であると判定した場合には、ECM10はステップS4で次の処理を行なう。
【0037】
すなわち、ECM10はポート噴射インジェクタ4の燃料噴射量であるMPI噴射量をゼロに設定する。一方、ECM10は直噴インジェクタ5の燃料噴射量であるGDI噴射量を目標空燃比と吸入空気量とから計算される目標燃料噴射量に設定する。ステップS4のこの処理は、ポート噴射インジェクタ4によるMPI噴射を停止するとともに、内燃機関の要求燃料噴射量の全量を直噴インジェクタ5に噴射させる処理に相当する。ECM10はこのように設定した噴射量のもとで燃料噴射を実行する。ステップS4の処理の後、ECM10はルーチンを終了する。
【0038】
一方、ステップS3で内燃機関が低負荷状態でないと判定した場合には、ECM10はステップS5で次の処理を行なう。
【0039】
すなわち、ECM10はMPI噴射量を目標空燃比と吸入空気量とから計算される目標燃料噴射量に分担率を乗じた値に設定する。分担率は目標空燃比を達成するための要求燃料噴射量に対するMPI噴射量の比率を定めた値であり、あらかじめ定められた値である。ECM10は目標燃料噴射量からMPI噴射量を差し引いた量を直噴インジェクタ5によるDGI噴射量に設定する。ステップS5の処理の後ECM10はルーチンを終了する。
【0040】
次にFIGS.3A−3Fを参照して、燃料噴射制御ルーチンの実行結果を説明する。
【0041】
車両のドライバが、FIG.3Cに示すように、アクセルレータペダルを踏み込んだ状態から足を離すと、アクセルレータペダルの踏み込み量が急激に低下する。図の三角印に示された位置でアクセルレータペダルの踏み込み量はゼロになる。
【0042】
エンジン回転速度は、FIG.3Aに示すように、アクセルレータペダルの踏み込み量がゼロに向けて減少し始めるのと同時に低下を開始するが、その減少は緩やかである。エンジン出力トルクは、FIG.3Bに示すように、アクセルレータペダルの踏み込み量に追随して変化する。
【0043】
一方、燃料噴射制御ルーチンにおいては、アクセルレータペダルの踏み込み量が所定量を下回るまでは、ステップS3の判定が否定的となる。その結果、ECM10はステップS5において、目標空燃比を達成するために、所定の分担率のもとでポート噴射インジェクタ4によるMPI噴射と直噴インジェクタ5によるGDI噴射とを実行する。FIG.3EのGDIパルス幅は直噴インジェクタ5によるGDI噴射量に相当する。FIG.3FのMPIパルス幅はポート噴射インジェクタ4によるMPI噴射量に相当する。
【0044】
図の三角印に示された位置でアクセルレータペダルの踏み込み量が所定量を下回ると、ステップS3の判定が否定的から肯定的へと変化する。その結果、ステップS4でポート噴射インジェクタ4によるMPI噴射の噴射量がゼロに設定される一方、目標空燃比を達成するための要求燃料噴射量の全量が直噴インジェクタ5によるGDI噴射量に設定される。
【0045】
MPIパルス幅は、FIG.3Fに示すように、ステップS3の判定が肯定的に転じると同時にゼロになる。また、GDI噴射量は、FIG.3Fに示すように、ステップS3の判定が肯定的に転じる前にはアクセルレータペダルの踏み込み量の減少に応じた減少を示す。一方、ステップS3の判定が肯定的に転じると同時に、それまでのポート噴射インジェクタ4によるMPI噴射量を肩代わりすることで、一時的な増大を示し、その後はアクセルレータペダルの踏み込み量がゼロになるため、アイドル運転時の目標燃料噴射量に向けて減少する。
【0046】
エンジン負荷が減少するのに伴い高圧燃料ポンプ8の運転は停止されている。そのため、直噴インジェクタ5によるGDI噴射が行なわれるたびに、FIG.3Dに示すようにGDI燃料チューブ3内の燃料圧力は低下する。結果として、次にアクセルレータペダルが踏み込まれる段階では、直噴インジェクタ5は低い燃料圧力のもとで燃料噴射を実行することになる。GDI燃料チューブ3内の燃料圧力が高い状態で、直噴インジェクタ5が燃料噴射を実行すると直噴インジェクタ5の実際の燃料噴射量にばらつきが生じやすい。しかしながら、このようにGDI燃料チューブ3内の燃料圧力が低下した状態で直噴インジェクタ5が燃料噴射を実行すると、ECM10は高い精度で燃料噴射制御を実行することができる。
【0047】
なお、ステップS4でポート噴射インジェクタ4によるMPI噴射の噴射量をゼロに設定した後、一定期間に渡ってポート噴射インジェクタ4によるMPI噴射の噴射量をゼロに維持するようにすることも好ましい。これにより、MPI噴射の実行と停止の頻繁な繰り返しを防止して、燃料噴射制御を安定させることができる。また、GDI噴射の継続により、GDIチューブ3の燃料圧力が過度に低下した場合には、MPI噴射を再開して要求燃料噴射量を賄うことが可能である。
【0048】
次に、FIG.4を参照して、この発明の第2の実施形態による燃料噴射制御ルーチンを説明する。
【0049】
このルーチンは、FIG.2の燃料噴射制御ルーチンに、ポート噴射インジェクタ4によるMPI噴射に異常がないかどうかを判定する異常判定プロセスを付加したルーチンである。
【0050】
異常判定プロセスは次のように構成される。すなわち、ECM10は空燃比センサ16からの入力信号に基づきステップS3の判定が否定的から肯定的に転じる前後の空燃比を取得する。そして、ステップS3の判定が否定的から肯定的に転じる前後の空燃比の差異が所定値以上となると、ポート噴射インジェクタ4によるMPI噴射に異常があると判定する。
【0051】
そのために、この燃料噴射制御ルーチンにおいては、FIG.2の燃料噴射制御ルーチンのステップS1とS2の間にステップS11が挿入され、ステップS5の後にステップS12−S14が挿入される。
【0052】
内燃機関が低負荷となる前はステップS3の判定が否定的となるため、ECM10はステップS5で所定の分担率のもとでMPI噴射とGDI噴射とを実行する。この設定による噴射の後に、ECM10はステップS12で空燃比センサ16の出力信号から実空燃比A/Fを取得する。
【0053】
次のステップS13でECM10は予め定めた目標空燃比と実空燃比A/Fとの偏差の絶対値を所定値と比較する。一般に、デュアルインジェクション方式の内燃機関においては、主噴射をGDI噴射で行ない、高出力要求時の不足分をMPI噴射で行っている。つまり、MPI噴射はGDI噴射に比べて実行頻度が低いため、目詰まりを起こしやすい。ステップS13の判定はMPI噴射が正常に行なわれているかどうかを判定する意味をもつ。
【0054】
ステップS13で偏差の絶対値が所定値以下の場合には、ECM10はMPI噴射が正常に行なわれていると判定し、ルーチンを終了する。。
【0055】
一方、ステップS13で偏差の絶対値が所定値を上回る場合には、ECM10はMPI噴射が正常に行なわれていないと判定し、ステップS14でMPI異常フラグを1に設定した後、ルーチンを終了する。なお、MPI異常フラグの初期値はゼロとする。
【0056】
次回のルーチン実行においては、ステップS11でMPI異常フラグが1であるかどうかが判定される。そして、MPI異常フラグが1でなければ、ステップS2以降の処理が行なわれる。MPI異常フラグが1の場合には、ステップS4でMPI噴射量をゼロに設定し、GDI噴射量を目標燃料噴射量に等しく設定する。ポート噴射インジェクタ4によるMPI噴射に異常が認められた場合は、内燃機関の負荷に関係なく、燃料噴射をGDI噴射のみで行なう必要があるからである。
【0057】
この燃料噴射制御ルーチンによれば、FIG.2の燃料噴射制御ルーチンがもたらす効果に加えて、ポート噴射インジェクタ4によるMPI噴射が正常に行なわれているかどうかを判定することができる。また、MPI噴射に異常が生じた場合には、ポート噴射インジェクタ4によるMPI噴射を停止して、内燃機関の要求燃料噴射量の全量をGDI噴射で供給する。したがって、ポート噴射インジェクタ4によるMPI噴射に異常が発生した場合でも、直噴インジェクタ5によるGDI噴射を最大限に活用して、内燃機関への燃料供給量の不足を最小限に抑えることができる。
【0058】
また、この燃料噴射制御ルーチンでは空燃比A/Fの差異によりMPI噴射の異常の有無を判定している。MPI噴射の異常は直ちに空燃比A/Fに変化をもたらすため、この判定方法によりMPI噴射の異常発生を速やかに検出することができる。
【0059】
次にFIG.5とFIGS.6A−6Fを参照して、この発明の第3の実施形態による燃料噴射制御ルーチンを説明する。
【0060】
第1及び第2の実施形態による燃料噴射制御ルーチンでは、内燃機関のエンジン負荷を表すパラメータにアクセルレータペダルの踏み込み量を用いており、アクセルレータペダルの踏み込み量に基づき燃料噴射方式の切り換えを行っている。一方、前述のように内燃機関のエンジン負荷として、燃料噴射量を用いることも可能である。この実施形態はその一例を示す。
【0061】
エンジン負荷が高い状態では、ECM10はGDI噴射とMPI噴射を行なうことで要求燃料噴射量を確保する。エンジン負荷が高負荷状態から低下するとECM10はまずMPI噴射量を低下させる。
【0062】
ポート噴射インジェクタ4によるMPI噴射量には制御可能な最小噴射量MPIQminが存在する。そこで、ECM10は、MPI噴射量が最小噴射量MPIQminに達した後、MPI噴射量を最小噴射量MPIQminに保ったまま、エンジン負荷の低下に応じてGDI噴射量を低減させる。
【0063】
さらに、エンジン負荷に基づく要求燃料噴射量が直噴インジェクタ5によるGDI噴射の最大噴射量GDIQmaxを下回ると、ECM10はポート噴射インジェクタ4によるMPI噴射を停止し、以後は要求燃料噴射量の全量を直噴インジェクタ5によるGDI噴射で賄う。
【0064】
以上の制御のために、ECM10が実行する燃料噴射制御ルーチンを説明する。
【0065】
ECM10は第1及び第2の実施形態と同じく、ステップS1で燃料カット条件が成立するかどうかを判定する。燃料カット条件が成立する場合にはルーチンを終了する。燃料カット条件が成立しない場合は、ECM10はステップS21でアイドルスイッチ17の入力信号からアイドルスイッチ17がONかどうかを判定する。
【0066】
ECM10はアイドルスイッチ17がONでない場合には、ステップS28で、第1の実施形態のステップS5と同様に、所定の分担率のもとでMPI噴射とGDI噴射とを実行した後、ルーチンを終了する。ECM10はアイドルスイッチ17がONの場合には、ステップS22でアクセルレータペダルの踏み込み量から要求燃料噴射量を計算する。
【0067】
ステップS23でECM10は、要求燃料噴射量が、直噴インジェクタ5が噴射可能な最大噴射量GDIQmaxとポート噴射インジェクタ4が噴射可能な最小噴射量MPIQminとの和より大きいかどうかを判定する。
【0068】
判定が肯定的な場合には、ECM10はステップS24で直噴インジェクタ5のGDI噴射量を最大噴射量GDIQmaxに等しく設定する。要求燃料噴射量から直噴インジェクタ5が最大噴射量GDIQmaxを差し引いた値を、ポート噴射インジェクタ4によるMPI噴射量に設定する。ステップS24の処理の後ECM10はルーチンを終了する。
【0069】
ステップS23の判定が否定的な場合には、ECM10はステップS25で要求燃料噴射量が、直噴インジェクタ5が噴射可能な最大噴射量GDIQmaxより大きいかどうかを判定する。
【0070】
ECM10は、ステップS25の判定が肯定的な場合は、ステップS26でポート噴射インジェクタ4によるMPI噴射量を最小噴射量MPIQminに設定する。要求燃料噴射量から最小噴射量MPIQminを差し引いた値を直噴インジェクタ5のGDI噴射量に設定する。ステップS26の処理の後、ECM10はルーチンを終了する。
【0071】
一方、ステップS25の判定が否定的な場合には、ECM10はステップS27でポート噴射インジェクタ4によるMPI噴射を停止する。そして、要求燃料噴射量の全量を直噴インジェクタ5によるGDI噴射量で賄うべく、GDI噴射量を要求燃料噴射量に等しく設定する。ステップS27の処理の後、ECM10はルーチンを終了する。
【0072】
FIGS.6A−6Fを参照して、この燃料噴射制御ルーチンの実行結果を説明する。このタイミングチャートは内燃機関が高負荷で運転中にアクセルレータペダルが解放され、アイドルスイッチ17がFIG.6Cに示すようにONになった場合を示す。
【0073】
時刻t1にアイドルスイッチ17がOFFからONに切り換わると、ECM10はステップS22で要求燃料噴射量をアクセルレータペダルの踏み込み量に基づき計算する。時刻t1からt2の間は、ステップS23で要求燃料噴射量がGDI噴射の最大噴射量GDIQmaxとMPI噴射の最小噴射量MPIminとの和より大きい。したがって、ECM10はステップS24でGDI噴射量をFIG.6Eに示すように最大噴射量GDIQmaxに保つ一方、MPI噴射量をFIG.6Fに示すように減少させることで要求燃料噴射量を実現する。
【0074】
時刻t2以降はステップS23の判定が否定的になる。この段階では要求燃料噴射量がGDI噴射の最大噴射量GDIQmaxより大きいので、ステップS25の判定が肯定的になる。その結果、ECM10はステップS26でMPI噴射量を最小噴射量MPIminに保ちつつ、GDI噴射量を要求燃料噴射量からMPI噴射の最小噴射量MPIminを差し引いた値に設定する。その結果、時刻t2以降はFIG.6Fに示すようにMPI噴射量が最小噴射量MPIminに保たれる一方、FIG.6Eに示すようにGDI噴射量が要求燃料噴射量の減少に応じて減少する。
【0075】
時刻t3になると要求燃料噴射量がGDI噴射の最大噴射量GDIQmax以下になる。その結果ステップS25の判定が否定的に転じる。ECM10はステップS27でMPI噴射量をゼロに設定し、要求燃料噴射量をすべて直噴インジェクタ5のGDI噴射で賄う。この処理により、時刻t3以降はFIG.6Fに示すようにポート噴射インジェクタ4が燃料噴射を停止し、FIG.6Eに示すように直噴インジェクタ5によるGDI噴射のみが実行される。その結果、FIG.6Dに示すように、GDI燃料チューブ3内の圧力は順調に低下する。
【0076】
時刻t3においては、ポート噴射インジェクタ4によるMPI噴射が停止されるため、GDI噴射量は一時的に増加する。しかしながら、それ以後は要求燃料噴射量の減少に伴ってGDI噴射量も低下する。
【0077】
FIGS.6D−6Fの破線は、要求燃料噴射量がGDI噴射の最大噴射量GDIQmaxを下回った場合も、MPI噴射が最小噴射量MPIminのもとで引き続き実行される場合を示す。この場合には、内燃機関が低負荷状態となった後に、ポート噴射インジェクタ4によるMPI噴射が長い期間に渡って行なわれる。その結果、直噴インジェクタ5によるGDI噴射量は小さく抑えられ、結果としてFIG.6Dに示すように、GDI噴射によるGDI燃料チューブ3の燃料圧力の低下も遅くなる。言い換えれば、この実施形態による燃料噴射制御ルーチンを実行することで、GDI燃料チューブ3の燃料圧力を早期に低下させることができる。
【0078】
この燃料噴射制御ルーチンにおいては、FIG.5のステップS1が、内燃機関が燃料噴射を必要としているかどうかを判定するステップに相当する。ステップS25が、内燃機関が低負荷状態で運転されているかどうかを判定するステップに相当する。また、ステップS27が、内燃機関の低負荷状態であって内燃機関が燃料噴射を必要としている場合に、ポート噴射インジェクタ4による燃料噴射を停止するとともに、内燃機関の要求燃料噴射量の全量を直噴インジェクタ5に噴射させるステップに相当する。
【0079】
以上の各実施形態にいずれにおいても、内燃機関が低負荷状態で運転されているかどうかを判定し、内燃機関が燃料噴射を必要としているかどうかを判定し、内燃機関の低負荷状態であって内燃機関が燃料噴射を必要としている場合に、ポート噴射インジェクタ4による燃料噴射を停止するとともに、内燃機関の要求燃料噴射量の全量を直噴インジェクタ5に噴射させている。
【0080】
そのため、燃料カット条件に至らない内燃機関の低負荷状態でGDI燃料チューブ3内の燃料圧力を早期に低下させることができる。その結果、例えば直噴インジェクタ5が燃料噴射を停止した後、燃料噴射を再開する際の燃料圧力を低く抑えることができ、GDI噴射の燃料噴射量のばらつきを抑制することができる。
【0081】
以上のように、この発明をいくつかの特定の実施形態を通じて説明して来たが、この発明は上記の各実施形態に限定されるものではない。当業者にとっては、クレームされた技術範囲でこれらの実施形態にさまざまな修正あるいは変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
この発明によればポート噴射インジェクタと直噴インジェクタとを備えたデュアルインジェクション内燃機関の低負荷状態において、直噴インジェクタの燃料圧力を効果的に下げて、燃料噴射制御の精度を向上させることができる。そのため、車両用の高出力デュアルインジェクション内燃機関に適用することでとりわけ好ましい効果が得られる。
【0083】
この発明の実施例が包含する排他的性質あるいは特長は以下のようにクレームされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6