【文献】
芳村知可 他,光学異性体を用いたポリ乳酸圧電フィルム,高分子学会予稿集,2014年 9月 3日,第63巻第2号,第5585−5586頁
【文献】
世界初!2種のポリ乳酸積層フィルムで従来の圧電効果を超越越 新規透明圧電材料の開発について,2012年 9月 6日,https://www.teijin.co.jp/news/2012/jbd120906.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の
図10に記載の圧電素子は、被検出体の表面が面方向に変位すると、装着側と反対側の圧電フィルムが固定されていないため、当該圧電フィルムに比べて被検出体側の圧電フィルムの伸縮量が多くなる。その結果、被検出体側の圧電フィルムが発生させた電荷は、被検出体側と反対側の圧電フィルムが発生させた電荷によって全てが相殺されない。従って、特許文献1に記載の圧電素子を用いると、被検出体の表面の面方向の変位を、被検出体の表面の法線方向の変位として誤検出する場合がある。
【0009】
また、特許文献1に記載の圧電素子は、各圧電フィルムとシグナル電極との間に接着層を介しているため、電極に比べて弾性変形しやすい接着層によって、各圧電フィルム間に伸縮量の差が生じやすくなっている。この伸縮量の差が大きければ大きいほど、被検出体の表面が面方向に変位した際に、相殺されない電荷量が多くなる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、被検出体の表面の法線方向の変位のみで電荷を発生させ、かつ被検出体の表面の面方向の変位で電荷を発生させにくい圧電フィルムの積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の圧電フィルムの積層体は、第1基準電位電極と、一部に圧電性樹脂を含む第1フィルムと、一部に圧電性樹脂を含む第2フィルムと、シグナル電極と、一部に圧電性樹脂を含む第3フィルムと、一部に圧電性樹脂を含む第4フィルムと、第2基準電位電極と、が順に積層方向に配置されてなり、前記第1フィルム、前記第2フィルム、前記第3フィルム、及び前記第4フィルムは、伸縮する歪が生じると、一方主面及び他方主面に電荷を発生させ、同じ伸縮方向に対し、前記第1フィルムの発生させた電荷の極性の方向である電荷方向は、前記第2フィルムの前記電荷方向と逆であり、前記第3フィルムの前記電荷方向は、前記第4フィルムの前記電荷方向と逆であり、前記第1フィルムの前記電荷方向は、前記第4フィルムの前記電荷方向と同じである。
【0012】
本発明の圧電フィルムの積層体の作用について、2つの変形モードを用いて説明する。
【0013】
(第1変形モード)
例えば、圧電フィルムの積層体が第1基準電位電極側で被検出体の表面に装着され、被検出体の表面が面方向に伸張すると、各フィルムは、積層方向と直交する方向に伸張する歪が生じる。第1フィルム及び第2フィルムは、第3フィルム及び第4フィルムに比べて被検出体の表面により近いため、伸張量が第3フィルム及び第4フィルムよりも多い。第1フィルム及び第2フィルムは、シグナル電極を介さず、互いに近接に配置されているため、伸張量が略同じである。同様に、第3フィルム及び第4フィルムは、シグナル電極を介さず、互いに近接に配置されているため、伸張量が略同じである。
【0014】
従って、第1フィルムで発生した電荷は、第1フィルム及び第2フィルムの電荷方向が互いに逆であるため、第2フィルムで発生した電荷によって相殺される。同様に、第3フィルムで発生した電荷は、第3フィルム及び第4フィルムの電荷方向が互いに逆であるため、第4フィルムで発生した電荷に相殺される。シグナル電極及び第1基準電位電極間は、第1フィルム及び第2フィルム間、並びに、第3フィルム及び第4フィルム間で電荷が相殺されるため、電位差が生じにくい。この作用及び効果は、圧電フィルムの積層体を第2基準電位電極側で被検出体の表面に装着しても得られる。
【0015】
(全体が積層方向に湾曲する第2変形モード)
このモードでは、各フィルムは、積層体の積層方向に突状に湾曲する。すると、例えば第1フィルムは第2フィルムに対して伸張する歪が生じる。換言すれば、第2フィルムは第1フィルムに対して収縮する歪が生じる。すなわち、第1フィルム及び第2フィルムは、互いに逆の変位の歪が生じる。すると、第1フィルムの電荷方向と第2フィルムの電荷方向とは揃う。
【0016】
同様に、第3フィルムは第4フィルムに対して伸張する歪が生じる。換言すれば、第4フィルムは第3フィルムに対して収縮する歪が生じる。すると、第3フィルムの電荷方向と第4フィルムの電荷方向とは揃う。
【0017】
第2モードでは、例えば、第1フィルムは伸張する歪が生じ、第1フィルムの電荷方向と電荷方向が同じである第4フィルムは収縮する歪が生じる。従って、第1フィルム及び第2フィルムで揃った電荷方向と第3フィルム及び第4フィルムで揃った電荷方向とは、シグナル電極を境に互いに逆となる。従って、第1フィルム及び第2フィルムで発生した電荷は、第3フィルム及び第4フィルムで発生した電荷に相加される。これにより、シグナル電極及び第1基準電位電極の間には電位差が生じる。
【0018】
以上のように、本発明の圧電フィルムの積層体は、被検出体の表面に装着されると、被検出体の表面の法線方向の変位で電荷を発生させ、かつ被検出体の表面の面方向の変位で電荷を発生させにくくすることができる。
【0019】
電荷方向を上述のように構成するには、例えば、以下のように各フィルムを構成する。
【0020】
前記第1フィルム及び前記第2フィルムのうち一方のフィルムは、L型ポリ乳酸からなり、他方のフィルムは、D型ポリ乳酸からなり、前記第1フィルム及び前記第2フィルムは、共押出工程で積層状に一体成形された後、一体に延伸され、前記第3フィルム及び前記第4フィルムのうち一方のフィルムは、L型ポリ乳酸からなり、他方のフィルムは、D型ポリ乳酸からなり、前記第3フィルム及び前記第4フィルムは、共押出工程で積層状に一体成形された後、一体に延伸される。
【0021】
共押出工程は、例えば、融解したL型ポリ乳酸(PLLA;Poly−L−Latic Acid)を押し出す押出機と、融解したPDLA(PDLA;Poly−D−Latic Acid)を押し出す押出機とを重ねた状態で、PLLAとPDLAとを冷却ドラムに押し出すことで第1フィルム及び第2フィルムを積層状に一体成形する。
【0022】
PLLAとPDLAとは、鏡像異性体の関係にある。それぞれのポリ乳酸は、所定方向に延伸されると、当該同じ方向に分子が配向する。PLLAとPDLAとは、鏡像異性体であるため、分子の配向方向が同じであれば、電荷方向が互いに逆となる。
【0023】
共押出工程では、第1フィルム及び第2フィルムは、一体形成されるため、接着層を介さず、かつ、互いにより近接に配置される。その結果、第1フィルム及び第2フィルムは、上述の第1モードの変形において、積層方向に直交する方向に伸縮する時の伸縮量の差がさらに生じにくくなる。これにより、第1フィルム及び第2フィルムは、第1変形モードにおいて発生する電荷量の差がさらに生じにくくなる。従って、この電荷量の差が小さくなるため、第1フィルム及び第2フィルム間で相殺されずに残留する電荷量は、さらに小さくなる。同様に、第3フィルム及び第4フィルム間も、第1モードの変形において、相殺されずに残留する電荷量がさらに小さくなる。
【0024】
なお、共押出工程では、PDLAがPLLAより厚く成形されることがある。この場合、以下の第3モードの変形を鑑みて、厚いPDLAからなるフィルムを外側に配置することが望ましい。すなわち、第1フィルム及び第4フィルムがPDLAからなる態様が望ましい。また、PLLAがPDLAより厚く成形されることがある。この場合、以下の第3モードの変形を鑑みて、厚いPLLAからなるフィルムを外側に配置することが望ましい。すなわち、第1フィルム及び第4フィルムがPLLAからなる態様が望ましい。
【0025】
第3モードの変形は、フィルムの積層体が積層方向に湾曲する第2モードの変形と同時に発生する。
【0026】
(第3変形モード)
このモードでは、例えば、第1フィルム及び第2フィルムは、シグナル電極を基準にすると、第3フィルム及び第4フィルムに対して、伸張する歪が生じる。換言すれば、第3フィルム及び第4フィルムは、シグナル電極を基準にすると、第1フィルム及び第2フィルムに対して、収縮する歪が生じる。
【0027】
第1フィルムが第2フィルムより厚い場合、第1フィルムで発生した電荷は、第2フィルムで発生した電荷に全てが相殺されず、一部が残留する。残留した電荷の方向は、第2変形モードにおける第1フィルム及び第2フィルムの間で揃った電荷方向と一致する。これにより、第2変形モードによるシグナル電極及び第1基準電位電極間の電位差は大きくなる。同様に、第4フィルムが第3フィルムより厚い場合、第4フィルムで発生した電荷は、第3フィルムで発生した電荷に全てが相殺されず、一部が残留する。残留した電荷の方向は、第2変形モードにおける第3フィルム及び第4フィルムの間で揃った電荷方向と一致する。これにより、第2変形モードによるシグナル電極及び第1基準電位電極間の電位差は大きくなる。
【0028】
また、本発明の各フィルムの電荷方向は、PLLAとPDLAと異なる材料を用いなくても、同じ材料を用いて構成することも可能である。
【0029】
例えば、前記第1フィルム、前記第2フィルム、前記第3フィルム、及び前記第4フィルムは、それぞれL型ポリ乳酸からなり、前記第1フィルムの前記L型ポリ乳酸の分子の配向方向は、前記第2フィルムの前記配向方向に直交し、前記第3フィルムの前記L型ポリ乳酸の分子の配向方向は、前記第4フィルムの前記配向方向に直交する。
【0030】
分子の配向方向が互いに直交するPLLAからなるフィルムを積層すると、各フィルムの電荷方向は互いに逆となる。無論、PLLAに限らず、PDLAからなる4枚のフィルムにおいて、分子の配向方向を互いに直交するように配置しても構わない。
【0031】
また、前記シグナル電極は、銅箔からなり、前記第1基準電位電極及び前記第2基準電位電極は、それぞれ銀ペーストや導電性不織布などの柔らかい導電性材料からなることが望ましい。
【0032】
銀ペースト材料は、銅箔よりもヤング率が小さいため、同じ応力で銅箔よりも大きな歪が生じる。このように硬い銅をシグナル電極として中央に配置し、柔らかい銀を第1基準電位電極及び第2基準電位電極として最外層に配置することにより、圧電フィルムの積層体は、積層方向に変形しやすくなりつつも、積層方向と直交する方向には変形しにくくなる。これにより、圧電フィルムの積層体は、被検出体の表面の法線方向への変位のみで電荷がさらに発生しやすくなり、被検出体の表面の面方向の変位では電荷がさらに発生しにくくなる。
【0033】
さらに、シグナル電極にバイアス電圧がかかる場合、シグナル電極を銅で形成すれば、銀に比べて銅がイオン化しにくいため、シグナル電極のマイグレーションを防止することができる。
【0034】
また、圧電フィルムの積層体は、第3フィルム及び第4フィルムに代えて絶縁性を有する誘電フィルムを備えてもよい。
【0035】
シグナル電極の一方主面側のみにフィルムが配置される態様であっても、圧電フィルムの積層体は、積層方向に湾曲した時のみに電荷を発生させることができる。また、この構成では、誘電フィルムを挟むシグナル電極及び第2基準電位電極間で容量(キャパシタンス)が形成される。この容量は、例えば、シグナル電極及び第1基準電位電極間の電位差を検出する検出回路に用いることができる。
【0036】
上述の圧電フィルムの積層体は、前記シグナル電極及び前記第1基準電位電極に電気的に接続され、前記シグナル電極及び前記第1基準電位電極の電位差を検出する検出回路、を備えると、被検出体の表面の法線方向の変位を検出する曲げセンサとなる。例えば、曲げセンサは、生体の皮膚に装着され、皮膚の法線方向の変位(例えば皮膚下における脈動等に起因する)を検出する生体センサとして用いられる。
【発明の効果】
【0037】
この発明によれば、被検出体の表面が面方向に変位し、当該表面とシグナル電極との間の対のフィルムが他の対のフィルムよりも伸縮量が多くなった場合であっても、各対のフィルム間の電荷は相殺され、被検出体の表面が法線方向に変位し、全てのフィルムが積層方向に湾曲する場合、各フィルムで発生した電荷が相加される。従って、この発明の圧電フィルムの積層体は、被検出体の表面の法線方向の変位のみで電荷を発生させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
実施形態1に係る生体センサ100について、
図1(A)、
図1(B)、
図2、
図3、
図4(A)、及び
図4(B)を用いて説明する。
図1(A)は、生体センサ100の斜視図であり、
図1(B)は、生体センサ100の使用例を説明するための図である。
図2は、奥行方向に視たセンサ素子10の側面図である。
図3は、生体センサ100の構成の一部を示すブロック図である。
図4(A)は、第1フィルム(フィルム1)の上面図であり、
図4(B)は、第2フィルム(フィルム2)の上面図である。
【0040】
生体センサ100は、例えば生体の皮膚の表面に装着され、脈動、等による皮膚表面の法線方向の変位のみを検出し、かつ、皮膚の伸縮等による皮膚表面の面方向の変位を検出しないものである。
【0041】
図1(A)に示すように、生体センサ100は、センサ素子10及び検出部20を備えている。センサ素子10及び検出部20は、シグナル線21及びシグナル線22を介して電気的に接続されている。ただし、検出部20は、シグナル線を介さず、センサ素子10と直結される構造であってもよい。
【0042】
センサ素子10は、幅方向及び奥行方向に比べて高さ方向に薄いフィルム状である。
【0043】
図1(B)に示すように、生体センサ100は、センサ素子10の上面(高さ方向の面)又は下面(高さ方向と反対方向の面)が生体900の皮膚901の表面に当接するように装着される。例えば、センサ素子10を皮膚901の表面とで挟むようにバンド30を巻きつけることでセンサ素子10は装着される。
【0044】
図2に示すように、センサ素子10では、基準電位電極7、フィルム4、フィルム3、シグナル電極6、フィルム2、フィルム1、及び基準電位電極5が順に高さ方向に配置されている。実際のセンサ素子10には、各電極と各フィルムを接着する接着層が存在するが、各接着層の説明及び図示は省略する。また、実際のセンサ素子10には、基準電位電極5及び基準電位電極7を絶縁する絶縁材料が最外層に配置されているが、それら絶縁材料の説明および図示は省略する。
【0045】
シグナル電極6は、例えば銅(Cu)からなる薄膜である。シグナル電極6の幅方向端部には、シグナル線22が電気的に接続されている。
【0046】
基準電位電極5及び基準電位電極7は、それぞれ例えば銀(Ag)からなる。ただし、基準電位電極5及び基準電位電極7の材料として、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、酸化インジウムスズ(ITO)等を用いることができる。
【0047】
基準電位電極5及び基準電位電極7は、幅方向と反対方向の端部で連結部8を介して電気的に接続されている。基準電位電極5、基準電位電極7、及び連結部8は、例えば銀ペーストが塗布されたウレタンフィルムが折り曲げられることによって、それぞれ形成される。基準電位電極7の幅方向端部には、シグナル線21が電気的に接続されている。ただし、基準電位電極5、基準電位電極7、及び連結部8は、銀ペーストが塗布されたウレタンフィルムが折り曲げられることによって形成されるに限らず、導電性不織布が折り曲げられることによって形成されてもよい。
【0048】
また、基準電位電極5と基準電位電極7とは、連結部8を備えず、検出部20の検出回路23(
図3を参照)で電気的に接続される態様であっても構わない。ただし、連結部8で基準電位電極5と基準電位電極7とを電気的に接続すれば、基準電位電極5と基準電位電極7とを電気的に接続するシグナル線を別途設ける必要がない。これにより、当該シグナル線の接続不良は発生することがない。さらに、連結部8を備える構成は、銀ペーストが塗布されたウレタンフィルムを折り曲げるだけで、簡単に、基準電位電極5と基準電位電極7とを電気的に接続することができる。
【0049】
また、幅方向において連結部8の長さをシグナル電極6の長さと等しくすることにより、幅方向の外側からシグナル電極6がノイズの影響を受けることが抑制される。
【0050】
センサ素子10は、基準電位電極5側又は基準電位電極7側が、皮膚901の表面に装着される。基準電位電極5及び基準電位電極7を構成する銀ペースト材料は、銅箔よりもヤング率が小さいため、同じ応力で銅箔よりも大きな歪が生じる。センサ素子10は、歪みやすい銀ペーストからなる基準電位電極5及び基準電位電極7を最外層に配置し、かつ歪みにくい銅箔からなるシグナル電極6を中央に配置する。これにより、センサ素子10は、高さ方向及びその反対方向に突状に湾曲しやすくなりつつも、幅方向及び奥行方向に伸縮しにくくなる。
【0051】
さらに、シグナル電極6を構成する銅は、銀に比べてイオン化しにくく、マイグレーションが発生しにくい。従って、センサ素子10は、シグナル電極6にバイアス電圧が印加される場合、シグナル電極6のマイグレーションによる劣化を防止することができる。
【0052】
図3に示すように、基準電位電極7は、シグナル線21を介して検出部20の検出回路23に接続されている。シグナル電極6は、シグナル線22を介して検出回路23に接続されている。検出回路23は、基準電位電極7と、シグナル電極6との電位差を検出し、当該電位差に基づく検出結果を出力する。例えば、検出回路23は、当該電位差の絶対値が所定値以上であれば、皮膚901の表面が法線方向に変位したという検出結果を出力し、当該電位差の絶対値が所定値未満であれば、皮膚901の表面が法線方向に変位していないという検出結果を出力する。
【0053】
フィルム1、フィルム2、フィルム3、及びフィルム4は、それぞれ圧電性樹脂であるポリ乳酸からなる。フィルム1、フィルム2、フィルム3及びフィルム4は、それぞれ厚み(高さ方向の長さ)が略同じである。フィルム1及びフィルム2は、接着層を介さず、一体となっている。フィルム3及びフィルム4は、接着層を介さず、一体となっている。
【0054】
ただし、フィルム1及びフィルム2は、フィルム1及びフィルム2の弾性率と略同じ弾性率の接着剤によって貼り合わされてもよい。フィルム3及びフィルム4も、フィルム3及びフィルム4の弾性率と略同じ弾性率の接着剤によって貼り合わされてもよい。
【0055】
また、フィルム1、フィルム2、フィルム3、及びフィルム4は、それぞれ圧電性樹脂を一部に含めばよい。例えば、圧電体と樹脂とを合成したものをフィルム1、フィルム2、フィルム3、及びフィルム4として用いてもよい。
【0056】
フィルム1、フィルム2、フィルム3及びフィルム4は、それぞれ圧電性樹脂からなるため、主面における所定方向への歪が生じると、電荷が発生する。ただし、各フィルムは、同じ厚みであれば、同じ歪量で同じ電荷量が発生するものとする。以下、各フィルムにおいて、歪が生じることにより、負の電荷が発生した一方主面から正の電荷が発生した他方主面への方向を電荷方向と称す。
【0057】
各フィルムの電荷方向は、歪の向き(伸張又は収縮)、ポリ乳酸の分子の配向方向、及びポリ乳酸の組成に依存する。歪の向きが同じであり、ポリ乳酸の分子の配向方向が同じであり、かつポリ乳酸の組成がD型ポリ乳酸(PDLA(;Poly−D−Latic Acid))とL型ポリ乳酸(PLLA(;Poly−L−Latic Acid))とで異なる2枚のフィルムの場合、各フィルムの電荷方向は互いに逆となる。
【0058】
本実施形態では、フィルム1、フィルム2、フィルム3、及びフィルム4は、それぞれポリ乳酸の分子の配向方向が同じであるが、ポリ乳酸の組成を異ならせることによって、電荷方向を以下のように設定している。
【0059】
より具体的には、フィルム1、フィルム2、フィルム3、及びフィルム4は、センサ素子10を上面視して、幅方向から反時計回りに45°の方向にポリ乳酸の分子が配向している。ポリ乳酸の分子を当該方向に配向させるには、
図4(A)の矢印911及び
図4(B)の矢印912に示すように、フィルム1及びフィルム2が幅方向から反時計回りに45°の方向に延伸されていればよい。同様に、幅方向から反時計回りに45°の方向に延伸したフィルムをフィルム3及びフィルム4として用いる。
【0060】
ただし、幅方向とポリ乳酸の分子の配向の方向とは、略45°であればよく、35°〜55°の範囲であれば、電荷発生の効果を十分に得ることができる。
【0061】
本実施形態では、フィルム1及びフィルム4は、それぞれPDLAからなる。フィルム2及びフィルム3は、それぞれPLLAからなる。PLLA及びPDLAは、鏡像異性体の関係にある。従って、分子の配向方向が同じ場合、PLLAからなるフィルムとPDLAからなるフィルムとは、同じ向きの歪(伸張又は収縮)が生じると、発生する電荷の方向が互いに逆となる。
【0062】
なお、PLLAからなるフィルムをフィルム1及びフィルム4として用い、PDLAからなるフィルムをフィルム2及びフィルム3として用いてもよい。
【0063】
フィルム1の電荷方向は、下方向(高さ方向と反対方向)である。フィルム1に対して、ポリ乳酸の分子の配向方向が同じであり、かつポリ乳酸の組成が異なるフィルム2は、電荷方向が上方向(高さ方向)である。フィルム4は、フィルム1と同じ電荷方向(下方向)である。フィルム3は、電荷方向がフィルム4の電荷方向と逆方向である上方向である。すなわち、フィルム3の電荷方向は、フィルム2の電荷方向と同じ方向である。ただし、これら電荷方向は、各フィルムが幅方向に伸張する歪によって発生する電荷の方向である。
【0064】
センサ素子10に生じる歪と、各フィルムに発生する電荷の方向との関係について、
図5を用いて説明する。
図5は、皮膚901が幅方向に伸張した時の奥行方向に視たセンサ素子10の側面図である。また、
図5では、各フィルムの説明のために、基準電位電極5及び基準電位電極7の図示は省略している。また、
図5は、それぞれ各フィルムの変形を誇張して図示している。また、
図5では、黒塗り矢印及び白抜き矢印の大きさは、フィルムの伸張量及びフィルムに発生する電荷量の大きさを示している。
【0065】
(第1の変形モード)
図5の黒塗り矢印に示すように、皮膚901が幅方向に伸張すると、フィルム1、フィルム2、フィルム3、及びフィルム4は、それぞれ幅方向に伸張する歪が生じる。フィルム3及びフィルム4は、フィルム1及びフィルム2に比べて、皮膚901により近いため、フィルム1及びフィルム2より伸張量が多い。
【0066】
フィルム1及びフィルム2は、シグナル電極6を介さず、一体となっているため、伸張量が略同じである。同様に、フィルム3及びフィルム4は、シグナル電極6を介さず、一体となっているため、伸張量が略同じである。
【0067】
フィルム1は、幅方向に伸張する歪が生じているため、
図5の白抜き矢印801に示すように、電荷方向が下方向となる。フィルム2は、幅方向に伸張する歪が生じると、電荷方向がフィルム1の電荷方向と逆であるため、
図5の白抜き矢印802に示すように、電荷方向が上方向となる。フィルム1及びフィルム2は、厚みが等しく、かつ伸張量が略同じであるため、略同じ電荷量が発生する。従って、フィルム1で発生した電荷量は、フィルム1及びフィルム2の電荷方向が互いに逆であるため、フィルム2で発生した電荷量に相殺される。
【0068】
フィルム3は、幅方向に伸張する歪が生じているため、
図5の白抜き矢印803に示すように、電荷方向が上方向となる。フィルム4は、幅方向に伸張する歪が生じると、電荷方向がフィルム3の電荷方向と逆であるため、
図5の白抜き矢印804に示すように、電荷方向が下方向となる。フィルム3及びフィルム4は、厚みが等しく、かつ伸張量が略同じであるため、略同じ電荷量が発生する。従って、フィルム3で発生した電荷量は、フィルム3及びフィルム4の電荷方向が互いに逆であるため、フィルム3で発生した電荷量に相殺される。
【0069】
センサ素子10の装着箇所の皮膚901が幅方向に収縮し、フィルム1及びフィルム2の収縮量と、フィルム3及びフィルム4の収縮量との間に差があっても、フィルム1及びフィルム2の間で電荷は相殺され、フィルム3及びフィルム4の間で電荷は相殺される。
【0070】
センサ素子10の装着箇所の皮膚901が奥行方向に伸縮し、フィルム1及びフィルム2の伸縮量と、フィルム3及びフィルム4の伸縮量との間に差があっても、フィルム1及びフィルム2の間で電荷は相殺され、フィルム3及びフィルム4の間で電荷は相殺される。
【0071】
(第2の変形モード)
次に、皮膚901の表面がセンサ素子10に対して高さ方向に変位したときの、センサ素子10に生じる歪と、各フィルムに発生する電荷の方向との関係について、
図6(A)及び
図6(B)を用いて説明する。
図6(A)及び
図6(B)は、それぞれ皮膚901が高さ方向に突状に隆起した時の奥行方向に視たセンサ素子10の側面図である。
図6(A)は、説明のために、フィルム1及びフィルム2の組と、フィルム3及びフィルム4の組とを分けて図示している。
【0072】
図6(A)に示すように、皮膚901の表面がセンサ素子10に対して高さ方向に隆起すると、フィルム1及びフィルム2は、一体に高さ方向に突状に湾曲する。これにより、フィルム1は、
図6(A)に示すフィルム1及びフィルム2の接合面を基準とすると、フィルム2に対して伸張する歪が生じる。換言すれば、フィルム2は、フィルム1に対して収縮する歪が生じる。すると、フィルム1は、白抜き矢印811に示すように、電荷方向が下方向となる。フィルム2は、白抜き矢印812に示すように、電荷方向が下方向となる。従って、フィルム1で発生した電荷は、フィルム2で発生した電荷に相加される。
【0073】
同様に、フィルム3及びフィルム4は、一体に高さ方向に突状に湾曲する。これにより、フィルム3は、
図6(A)に示すフィルム3及びフィルム4の接合面を基準とすると、フィルム4に対して伸張する歪が生じる。換言すれば、フィルム4は、フィルム3に対して収縮する歪が生じる。すると、フィルム3は、白抜き矢印813に示すように、電荷方向が上方向となる。フィルム4は、白抜き矢印814に示すように、電荷方向が上方向となる。従って、フィルム3で発生した電荷は、フィルム4で発生した電荷に相加される。
【0074】
フィルム1及びフィルム2で相加された電荷は、基準電位電極5に対するシグナル電極6の電位を上昇させる。フィルム3及びフィルム4で相加された電荷は、基準電位電極7に対するシグナル電極6の電位を上昇させる。従って、検出部20の検出回路23は、シグナル電極6と基準電位電極7との電位差を検出し、センサ素子10が装着された皮膚901が高さ方向に隆起したと検出する。
【0075】
センサ素子10の装着箇所の皮膚901の表面が高さ方向と反対方向に突状に沈降する場合、フィルム1及びフィルム2が一体に高さ方向と反対方向に突状に湾曲し、フィルム3及びフィルム4が一体に高さ方向と反対方向に突状に湾曲する。すると、この場合も、フィルム1及びフィルム2の間で電荷は相加され、フィルム3及びフィルム4の間で電荷は相加されて、シグナル電極6と基準電位電極7との間に電位差が生じる。
【0076】
以上のように、本実施形態に係る生体センサ100は、センサ素子10の装着箇所の皮膚901が表面の面方向(幅方向及び奥行方向)に変位することによって、フィルム3及びフィルム4がフィルム1及びフィルム2に対してより伸縮しても、フィルム3及びフィルム4の電荷方向が互いに逆であり、かつフィルム1及びフィルム2の電荷方向が互いに逆であるため、シグナル電極6及び基準電位電極7の間の電位差が小さくなり、皮膚901の表面の面方向の伸縮を皮膚901の表面の隆起又は沈降であると誤検出することを防ぐことができる。従って、本実施形態に係る生体センサ100は、当該誤検出を防ぎ、かつセンサ素子10の装着箇所の皮膚901の表面の隆起及び沈降のみを検出することができる。なお、センサ素子10の作用及び効果は、基準電位電極5側でセンサ素子10が皮膚901の表面に装着されても、得られる。
【0077】
また、フィルム1及びフィルム2は、接着層を介さず一体となっているため、接着層を介する場合に比べて、互いにより近接に配置されている。フィルム1及びフィルム2は、より近接に配置されているため、互いに伸縮した時の伸縮量が略同じである。これにより、フィルム1及びフィルム2は、第1変形モードにおいて発生する電荷量が略同じになる。従って、フィルム1及びフィルム2は、電荷方向が互いに逆であり、かつ発生する電荷量が略同じため、シグナル電極6及び基準電位電極7の間に電位差が略0(V)となる。フィルム3及びフィルム4も、接着層を介している場合に比べてより近接に配置されているため、シグナル電極6と基準電位電極7との電位差を略0(V)となる。従って、生体センサ100は、皮膚901の表面の伸縮を皮膚901の表面の隆起又は沈降であると誤検出することをより確実に防ぐことができる。
【0078】
また、センサ素子10の各フィルムに含まれるポリ乳酸は、ポリフッ化ビニリデン等の強誘電体のポリマーと異なり、焦電効果がなく、温度変化により電荷を発生することが無い。従って、ポリ乳酸を材料としたフィルムは、生体の温度が伝わってしまうセンサ素子10の構成として好適である。また、ポリ乳酸からなるフィルムは、透光性を有するため、シグナル電極6及び基準電位電極7等の他の構成を透光性のある材料で形成すれば、センサ素子10全体を透明にすることができ、センサ素子10を装着したまま皮膚901の表面を視認可能とすることができる。
【0079】
なお、PLLAからなるフィルムとPDLAからなるフィルムとを一体成型するには、例えば共押出工程を用いる。共押出工程では、PLLAが融解した押出機と、PDLAが融解した押出機とを、押し出された樹脂が層状となるように重ねて、回転する冷却ドラムの周面にPLLA及びPDLAを同時に押し出す。
【0080】
ただし、本実施形態の生体センサ100は、フィルム1、フィルム2、フィルム3、及びフィルム4をポリフッ化ビニリデン(PVDF)から形成してもよい。PVDFからなるフィルムは、ポーリング(分極処理)において印加される電界の方向によって、電荷方向が設定される。
【0081】
なお、本実施形態のセンサ素子10の作用及び効果は、フィルム1及びフィルム2の配置を入れ替え、かつフィルム3及びフィルム4の配置を入れ替えた場合であっても得られる。
【0082】
また、実際には、センサ素子10は、
図6(A)に示す第2の変形モードで変形する時に、以下の第3の変形モードでも変形する。
【0083】
(第3の変形モード)
図6(B)に示すように、フィルム1及びフィルム2は、シグナル電極6を基準として、フィルム3及びフィルム4に対して、それぞれ幅方向に伸張する歪が生じている。換言すれば、フィルム3及びフィルム4は、第3の変形モードでは、フィルム1及びフィルム2に対して、それぞれ幅方向に収縮する歪が生じている。
【0084】
図5に示す第1の変形モードと同様に、フィルム1で発生した電荷(電荷方向が
図6(B)の白抜き矢印821に示す方向)は、フィルム2で発生した電荷(電荷方向が
図6(B)の白抜き矢印822に示す方向)によって相殺される。同様に、フィルム3で発生した電荷(電荷方向が
図6(B)の白抜き矢印823に示す方向)は、フィルム4で発生した電荷(電荷方向が
図6(B)の白抜き矢印824に示す方向)によって相殺される。
【0085】
図6(A)及び
図6(B)に示す皮膚901の高さ方向への変位によって、センサ素子10が第3の変形モードで変形しても、シグナル電極6及び基準電位電極7間の電位差は影響を受けない。すなわち、
図6(A)及び
図6(B)に示す皮膚901の高さ方向への変位が発生すると、シグナル電極6及び基準電位電極7間の電位差は、センサ素子10の第2の変形モードによる変形のみに影響される。
【0086】
次に、
図7は、実施形態2に係るセンサ素子10Aの奥行方向に視た側面図である。センサ素子10では、第3の変形モードによる変形は、シグナル電極6及び基準電位電極7間の電位差に影響を与えないものであったが、センサ素子10Aは、第3の変形モードを利用して第2の変形モードによるシグナル電極6及び基準電位電極7間の電位差を大きくして、感度を向上させたものである。
【0087】
より具体的には、センサ素子10Aは、フィルム1A及びフィルム4Aが、実施形態1に係るフィルム1及びフィルム4に比べて、より厚い点において、実施形態1に係るセンサ素子10と相違する。すなわち、フィルム1A及びフィルム4Aは、フィルム2及びフィルム3に比べて、それぞれ厚みが大きい。例えば、フィルム1A及びフィルム4Aは、フィルム2及びフィルム3の厚みを基準として、それぞれ略10%だけ厚みが大きい。
【0088】
センサ素子10Aの作用及び効果について、
図8を用いて説明する。
図8は、皮膚901の表面が隆起した時の奥行方向に視たセンサ素子10Aの側面図である。
【0089】
上述のように、センサ素子10Aは、全体が高さ方向に突状に湾曲すると、第2の変形モードで変形すると同時に第3の変形モードでも変形する。
【0090】
(第3の変形モード)
フィルム1A及びフィルム2は、シグナル電極6を基準として、フィルム3及びフィルム4Aに対して、それぞれ幅方向に伸張する歪が生じている。換言すれば、フィルム3及びフィルム4Aは、第3変形モードでは、フィルム1A及びフィルム2に対して、それぞれ幅方向に収縮する歪が生じている。
【0091】
フィルム1Aは、フィルム2より厚いため、発生する電荷量がフィルム2に発生する電荷量より多くなる。従って、第3変形モードにおいて、フィルム1Aに発生する電荷量(白抜き矢印821に示す方向に発生する。)は、フィルム2に発生する電荷量(白抜き矢印822に示す方向に発生する。)に全てが相殺されず、一部が残留する。この残留した電荷の方向は、第2変形モードにおける電荷方向(白抜き矢印811及び白抜き矢印812に示す方向)と一致する。
【0092】
同様に、フィルム4Aは、フィルム3より厚いため、発生する電荷量がフィルム3に発生する電荷量より多くなる。従って、第3変形モードにおいて、フィルム4Aに発生する電荷量(白抜き矢印824に示す方向に発生する。)は、フィルム3に発生する電荷量(白抜き矢印823に示す方向に発生する。)に全てが相殺されず、一部が残留する。この残留した電荷の方向は、第2変形モードにおける電荷方向(白抜き矢印813及び白抜き矢印814に示す方向)と一致する。
【0093】
センサ素子10Aでは、第2変形モードによる電荷量と、第3変形モードによる電荷量とが相加される。従って、センサ素子10Aは、皮膚901の表面の隆起又は沈降に対して、シグナル電極6及び基準電位電極7の間の電位差がより大きくなり、装着箇所の皮膚901の表面の隆起又は沈降に対する感度が向上する。
【0094】
同様に、フィルム1A及びフィルム2が、シグナル電極6を基準として、フィルム3及びフィルム4Aに対して、それぞれ幅方向に収縮する歪が生じても、フィルム1A及びフィルム4Aで残留する電荷は、第2変形モードによる電荷量に相加される。
【0095】
なお、センサ素子10Aは、各フィルムの厚みを等しくしたままで、フィルム2及びフィルム3に比べてフィルム1A及びフィルム4A中のポリ乳酸の含有量をより多くすることにより、フィルム1A及びフィルム4Aからより多くの電荷量が生じるようにしてもよい。
【0096】
以上の例は、フィルムに含まれるポリ乳酸の組成を変えることにより、各フィルムの電荷方向を設定していたが、以下のように、フィルムに含まれるポリ乳酸の組成を変えずに、各フィルムの電荷方向を設定することもできる。
【0097】
図9は、実施形態3に係るセンサ素子10Bの奥行方向に視た側面図である。
図10(A)は、第1フィルム(フィルム1B)の上面図であり、
図10(B)は、第4フィルム(フィルム4B)の上面図である。
【0098】
センサ素子10Bは、フィルム1B及びフィルム4Bを備える点において、センサ素子10と相違する。重複する構成の説明は省略する。
【0099】
フィルム1B及びフィルム4Bは、フィルム2及びフィルム3と同様に、PLLAからなる。図示は省略するが、フィルム1B及びフィルム2は、それぞれ接着層を介して貼り合わされている。フィルム3及びフィルム4Bは、それぞれ接着層を介して貼り合わされている。
【0100】
フィルム1B及びフィルム4Bは、フィルム原反において延伸方向に対する切り出し方向がフィルム2及びフィルム3と相違する。より具体的には、フィルム1B及びフィルム4Bは、
図10(A)の白抜き矢印913及び
図10(B)の白抜き矢印914に示すように、幅方向に対して時計回りに45°の方向が延伸方向となるように、それぞれフィルム原反から切り出されている。従って、フィルム1B及びフィルム4Bは、それぞれに含まれるPLLAの分子の配向方向がフィルム2(
図4(B)を参照。)及びフィルム3に含まれるPLLAの分子の配向方向と直交する。これにより、フィルム1B及びフィルム2は、電荷方向が互いに逆となる。同様に、フィルム3及びフィルム4Bは、電荷方向が互いに逆となる。
【0101】
センサ素子10Bの構成では、1枚のPLLAからなるフィルム原反から各フィルムを用意することが可能となる。従って、各フィルムは、厚みがより等しくなり、第1モードの変形において、厚みの差に起因する電荷量の残留をより防ぐことができる。
【0102】
次に、
図11は、実施形態4に係るセンサ素子10Cの奥行方向に視た側面図である。
【0103】
センサ素子10Cは、シグナル電極6の一方主面側のみに圧電性のフィルム1及びフィルム2を備え、他方主面側に絶縁性を有する絶縁体9を備える点において、センサ素子10と相違する。センサ素子10と重複する構成の説明は省略する。
【0104】
図11に示すように、シグナル電極6と基準電位電極7との間には、絶縁体(フィルム)9が配置されている。絶縁体9として例えば誘電フィルムを用いることができる。
【0105】
絶縁体9は、例えば、PET(;Polyethylene terephthalate)基材の両主面にアクリル粘着剤が塗布されてなる。絶縁体9は、厚みがフィルム1及びフィルム2の合計の厚みより小さい。絶縁体9は、フィルム1及びフィルム2に比べて誘電率ε(F/m)が高い。これにより、シグナル電極6、及び基準電位電極7の間には、容量(キャパシタンス)が形成される。この容量は、フィルム1及びフィルム2が基準電位電極5及びシグナル電極6で挟まれることで形成される容量より大きい。
【0106】
シグナル電極6、及び基準電位電極7の間に形成された容量は、検出回路23では、シグナル電極6、フィルム1、フィルム2、及び基準電位電極5からなる圧電素子に電気的に並列接続される。従って、検出回路23はキャパシタを別途備える必要がない。
【0107】
センサ素子10Cは、シグナル電極6の一方主面側にのみフィルム1及びフィルム2を備えても、面方向の伸縮に対してフィルム1及びフィルム2間で電荷が相殺され、かつ、高さ方向への湾曲に対してフィルム1及びフィルム2間で電荷が相加される。従って、センサ素子10Cは、皮膚901の表面の法線方向の変位のみで電荷を発生しつつ、容量(キャパシタンス)を形成することができる。