特許第6206602号(P6206602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206602
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20170925BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H02M7/48 Z
   H05K1/02 J
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-562134(P2016-562134)
(86)(22)【出願日】2014年12月3日
(86)【国際出願番号】JP2014081935
(87)【国際公開番号】WO2016088211
(87)【国際公開日】20160609
【審査請求日】2016年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 真司
【審査官】 柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−130967(JP,A)
【文献】 特開2012−65431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源に接続された蓄電手段と、
この蓄電手段に接続された一対のスイッチング素子を備え、このスイッチング素子のスイッチング動作により直流電力を交流電力に変換する複数のスイッチング手段と、
前記スイッチング動作を制御する制御回路からの制御信号を受けて前記スイッチング素子を駆動させる駆動回路と、
前記駆動回路に給電する電源回路と、
前記制御回路、前記駆動回路、前記電源回路を実装する基板と、
を備えた電力変換装置であって、
前記基板上に、前記駆動回路と前記電源回路とを配置する強電系の駆動回路/電源回路領域を、弱電系の前記制御回路との間に絶縁領域を介在させて前記スイッチング素子ごとに設けるとともに、前記一対のスイッチング素子にそれぞれ接続された対となる前記駆動回路/電源回路領域同士の間に所定の間隔を確保して配置した上で、前記制御回路からの供給電圧を駆動用電圧に変圧する給電トランスを、前記電源回路ごとに前記絶縁領域を跨いで設け、
さらに、前記対となる駆動回路/電源回路領域同士の間に確保した前記間隔部分に、前記絶縁領域を挟んで前記制御回路およびその配線を配置する制御回路配置配線領域を配置するとともに、前記対となる駆動回路/電源回路領域と、他の対となる駆動回路/電源回路領域と、の間に、前記絶縁領域を挟んで前記制御回路およびその配線を配置する第2の制御回路配置配線領域を配置したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記基板と並列に前記スイッチング素子を備えたパワーモジュールを備え、
前記駆動回路/電源回路領域ごとに、前記パワーモジュールの前記スイッチング素子と接続する接続部を設けたことを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力変換装置において、小型化およびインダクタンスの低減を図るようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この従来技術では、基板上で、上アームのスイッチング素子を駆動させる駆動回路としての半導体モジュールと下アームの駆動回路としての半導体モジュールとの間に、給電トランスを配置した構造としている。
したがって、給電トランスと半導体モジュールとの間で制御電力の伝送距離の短縮が可能となる。これにより、各半導体モジュールへ給電する制御電源電圧のばらつきを低減できるとともに、配線インダクタンスに誘起されるスイッチングサージ電圧を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−118815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来技術では、上アームの半導体モジュール(駆動回路)と下アームの半導体モジュール(駆動回路)との間に、両アームへの給電を行う給電トランスを配置した構造としていた。
このため、基板上の駆動回路同士の間隔が給電トランスの寸法分しか離すことができず、駆動回路が、半導体モジュールをスイッチ駆動させた際に誘起されるスイッチングノイズの増大を招いていた。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、駆動回路がスイッチング素子を駆動させた際のスイッチングノイズ影響を軽減可能な電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、
基板上に、スイッチング手段の各スイッチング素子に対して通電状態と遮断状態とに切り換えるスイッチング動作を行わせる制御信号を出力する制御回路と、この制御回路に絶縁して設けられ、前記制御回路からの制御信号を受けて前記スイッチング素子を駆動させる駆動回路と、前記制御回路に絶縁して設けられ、前記駆動回路に給電する電源回路とを実装した電力変換装置であって、
前記基板上に、前記駆動回路と前記電源回路とを配置する強電系の駆動回路/電源回路領域を、弱電系の前記制御回路との間に絶縁領域を介在させて前記スイッチング素子ごとに設けるとともに、前記一対のスイッチング素子にそれぞれ接続された対となる前記駆動回路/電源回路領域同士の間に所定の間隔を確保して配置した上で、前記制御回路からの供給電圧を駆動用電圧に変圧する給電トランスを、前記電源回路ごとに前記絶縁領域を跨いで設けたことを特徴とする電力変換装置とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電力変換装置では、給電トランスを前記電源回路ごとに設け、駆動回路同士の間に、給電トランスに制約されることなく所定の間隔を確保した。このため、駆動回路同士の間隔が給電トランスに制約を受ける場合と比較して、駆動回路同士の間隔を広げてスイッチング素子を駆動させる際に誘起されるスイッチングノイズを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1の電力変換装置の回路構成を示す回路図である。
図2】実施の形態1の電力変換装置における駆動回路、電源回路、制御回路を実装した基板を示す平面図である。
図3】実施の形態1の電力変換装置におけるスイッチ部を搭載したパワーモジュールを示す底面図である。
図4A】実施の形態1の電力変換装置に用いた多層構造の基板のL1層における給電トランスなどの配置を示す平面図である。
図4B】実施の形態1の電力変換装置に用いた多層構造の基板のL1層における駆動回路/電源回路領域と制御回路配置配線領域と絶縁領域の配置を示す平面図である。
図4C】実施の形態1の電力変換装置に用いた多層構造の基板のL2層における駆動回路/電源回路領域と制御回路配置配線領域と絶縁領域の配置を示す平面図である。
図4D】実施の形態1の電力変換装置に用いた多層構造の基板のL3層における駆動回路/電源回路領域と制御回路配置配線領域と絶縁領域の配置を示す平面図である。
図5】実施の形態2の電力変換装置における駆動回路、電源回路、制御回路を実装した基板を示す平面図である。
図6】実施の形態3の電力変換装置におけるスイッチ部を搭載したパワーモジュールを示す底面図である。
図7】実施の形態3の電力変換装置における駆動回路、電源回路、制御回路を実装した基板を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の電力変換装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施の形態に基づいて説明する。
(実施の形態1)
まず、実施の形態1の電力変換装置の構成を説明する。
図1は実施の形態1の電力変換装置Aの回路構成を示す回路図であって、この電力変換装置Aは、直流電源2から供給される直流電力を三相交流電力に変換して、回転電機Mに給電し、回転電機Mの駆動を制御するものである。
【0010】
この電力変換装置Aは、U相、V相、W相の相ごとにスイッチ手段としてのスイッチング部SW1,SW2,SW3を備えている。これらのスイッチング部SW1,SW2,SW3は、周知のもので、それぞれ、上アームのスイッチング素子Q1,Q3,Q5と、下アームのスイッチング素子Q2,Q4,Q6とを備えている。そして、各スイッチング素子Q1〜Q6に、整流素子D1〜D6が並列に設けられている。
また、各スイッチング素子Q1〜Q6には、直流電源2と蓄電手段としての平滑コンデンサ3とが並列に接続されている。さらに、直流電源2と平滑コンデンサ3との間には、スイッチング作動により電圧値を制御するリレースイッチ4が設けられている。
【0011】
これらスイッチング部SW1,SW2,SW3により、回転電機Mの各相に出力する電位が生成され、さらに、これらの電位を択一的に接続するとともに、その接続時間の割合を変化させることで、回転電機Mに必要な電圧を供給する。
【0012】
スイッチング素子Q1〜Q6には、それぞれ、スイッチング素子Q1〜Q6を駆動させる駆動回路DR1〜DR6が接続されている。また、各駆動回路DR1〜DR6は、それぞれ、電源を供給する電源回路P1〜P6が接続されている。そして、駆動回路DR1〜DR6には、これらの駆動回路DR1〜DR6を駆動させる制御信号を送る制御回路CNTが接続されている。
【0013】
なお、制御回路CNTは、いわゆる弱電系の回路であるのに対し、各駆動回路DR1〜DR6および電源回路P1〜P6は、後述する給電トランスT1〜T6により生成された高電位の電力を回転電機Mに向けて出力する強電系の回路である。
【0014】
図1に示す電力変換装置Aは、図2に示す基板11および図3に示すパワーモジュール12に実装されている。
図2に示す基板11は、プリント基板であり、各駆動回路DR1〜DR6、電源回路P1〜P6および制御回路CNTが実装されている。
図3に示すパワーモジュール12には、各スイッチング部SW1〜SW3(図2参照)を構成する各スイッチング素子Q1〜Q6が実装されている。そして、基板11の駆動回路DR1〜DR6と、パワーモジュール12のスイッチング部SW1〜SW3の各スイッチング素子Q1〜Q6とが、図2および図3に示す接続部CN1〜CN6を介して接続されている。
【0015】
すなわち、パワーモジュール12には、それぞれ対となるスイッチング素子搭載領域121a,121b、スイッチング素子搭載領域122a,122b、スイッチング素子搭載領域123a,123bが設けられている。
【0016】
スイッチング素子搭載領域121a,121bには、U相のスイッチング部SW1を構成するスイッチング素子Q1,Q2(図1参照)および整流子D1,D2(図1参照)が実装されている。スイッチング素子搭載領域122a,122bには、V相のスイッチング部SW2を構成するスイッチング素子Q3,Q4(図1参照)および整流子D3,D4(図1参照)が実装されている。スイッチング素子搭載領域123a,123bには、W相のスイッチング部SW3を構成するスイッチング素子Q5,Q6(図1参照)および整流子D5,D6(図1参照)が実装されている。
すなわち、図3に示すように組となるスイッチング素子Qnおよび整流子Dnが、各スイッチング素子搭載領域121a,121b、122a,122b、123a,123bに実装されている。また、この図3に示すスイッチング素子Qnおよび整流子DnのSG1〜SG3に示す各端子が、各接続部CN1〜CN6の接続端子SG1〜SG3に接続されている。
【0017】
次に、図2に示す基板11について説明する。
基板11は、周知の絶縁性の樹脂を主体とした板材に電気回路を設けたものであり、上アーム側の駆動回路/電源回路配置配線領域UP,VP,WPと、下アーム側の駆動回路/電源回路配置配線領域UN,VN,WNとを備えている。
【0018】
第1の駆動回路/電源回路配置配線領域UPには、第1の駆動回路DR1、電源回路P1およびその配線が実装されている。第2の駆動回路/電源回路配置配線領域UNには、第2の駆動回路DR2、電源回路P2およびその配線が実装されている。第3の駆動回路/電源回路配置配線領域VPには、第3の駆動回路DR3、電源回路P3およびその配線が実装されている。第4の駆動回路/電源回路配置配線領域VNには、第4の駆動回路DR4、電源回路P4およびその配線が実装されている。第5の駆動回路/電源回路配置配線領域WPには、第5の駆動回路DR5、電源回路P5およびその配線が実装されている。第6の駆動回路/電源回路配置配線領域WNは、第6の駆動回路DR6、電源回路P6およびその配線が実装されている。
【0019】
そして、各駆動回路/電源回路配置配線領域UP,UN,VP,VN,WP,WNの各駆動回路DR1〜DR6が、各接続部CN1〜CN6の各接続端子SG1〜SG3を介して、各スイッチング素子Q1〜Q6および整流素子D1〜D6に接続されている。なお、図2図3に示す各接続部CN1〜CN6は、それぞれ同一のものを各図において示しており、基板11とパワーモジュール12とは、図示の各接続部CN1〜CN6を一致させた位置で上下に重なって配置されている。
【0020】
図2に示すように、各駆動回路/電源回路配置配線領域UP,UN,VP,VN,WP,WNの外周は、それぞれ、制御回路CNT側の弱電系の制御回路配置配線領域CA1と絶縁する絶縁領域AR11〜AR16により囲まれている。なお、各絶縁領域AR11〜AR16は、電気的な構成を何も設けない領域であり、制御回路CNTおよびその配線を配置した後述する制御回路配置配線領域CA1との間に、必要な絶縁距離が確保されている。
【0021】
制御回路配置配線領域CA1は、制御回路CNTならびにその配線を分散して配置する領域である。なお、その配線とは、制御回路CNTと各駆動回路DR1〜DR6および電源回路P1〜P6とを接続する配線を指す。
【0022】
制御回路配置配線領域CA1は、基板11において、各駆動回路/電源回路配置配線領域UP,UN,VP,VN,WP,WNを囲む各絶縁領域AR11〜AR16と、基板11の外周を囲む絶縁領域AR17に囲まれた領域に設置されている。
すなわち、制御回路配置配線領域CA1は、基板11を長手方向に縦断する縦断配線領域CA11と、この縦断配線領域CA11を横断する横断配線領域CA12、CA13、CA14と、を備えている。
【0023】
縦断配線領域CA11は、上アーム側の絶縁領域AR11、AR13,AR15と、下アーム側の絶縁領域AR12、AR14、AR16との間で、基板11の縦方向の全長に亘り設けられている。よって、この縦断配線領域CA11並びに前記絶縁領域AR11〜AR16により、対となる上アーム側の各駆動回路/電源回路配置配線領域UP,VP,WPと下アーム側の各駆動回路/電源回路配置配線領域UN,VN,WNとは、幅方向に間隔Lだけ離されている。なお、この間隔Lは、後述するが、同相の対となる駆動回路DR1とDR2、DR3とDR4、DR5とDR6が、相互にスイッチングノイズの影響を所定以上受けない寸法としている。
【0024】
横断配線領域CA12は、U相の各駆動回路/電源回路配置配線領域UP,UNを囲む絶縁領域AR11、AR12と、V相の各駆動回路/電源回路配置配線領域VP,VNを囲む絶縁領域AR13、AR14との間で、基板11の幅方向(図2の横方向)に全幅に亘って設けられている。
横断配線領域CA13は、V相の各駆動回路/電源回路配置配線領域VP,VNを囲む絶縁領域AR13、AR14と、W相の各駆動回路/電源回路配置配線領域WP,WNを囲む絶縁領域AR15、AR16との間で、基板11の幅方向(図2の横方向)に全幅に亘って設けられている。
横断配線領域CA14は、W相の各駆動回路/電源回路配置配線領域WP,WNを囲む絶縁領域AR15、AR16と、基板11の外周の絶縁領域AR17との間で、基板11の幅方向(図2の横方向)の全幅に亘って設けられている。
【0025】
各駆動回路/電源回路配置配線領域UP,UN,VP,VN,WP,WNには、それぞれ、絶縁領域AR11〜AR16に跨って、給電トランスT1〜T6およびスイッチ回路IC1〜IC6が接続されている。
【0026】
各給電トランスT1〜T6は、制御回路CNTから供給される弱電系の供給電圧を強電系の駆動用電圧に昇圧して電源回路P1〜P6に供給する。そして、この強電系の駆動用電圧が駆動回路DR1〜DR6を経て、各スイッチング部SW1〜SW3に供給される。
また、各スイッチ回路IC1〜IC6は、制御回路CNTからの弱電系のスイッチング制御信号を、各駆動回路DR1〜DR6を駆動させる強電系のスイッチング信号に変換する。
【0027】
次に、上述した基板11の回路構成の具体的な構成について説明を加える。
基板11は、3層の配線構造を備えている。この層構造を、図4A図4B図4C図4Dに基づいて説明する。
基板11は、図4Aおよび図4Bに示すL1層111と、図4Cに示すL2層112と、図4Dに示すL3層113と、を備えている。
【0028】
L1層111は、図4Bに示すように、各駆動回路/電源回路配置配線領域UP,UN,VP,VN,WP,WN(図2参照)に配置された強電配線部aA1と、制御回路配置配線領域CA1(図2参照)に配置された弱電配線部aA2とを備えている。そして、強電配線部aA1と弱電配線部aA2との間には、前述の絶縁領域AR11〜AR16を構成する区画部aA3が設定されている。
【0029】
また、L1層111には、区画部aA3を跨いで、図4Aに示すように、各給電トランスT1〜T6およびスイッチ回路IC1〜IC6が、強電配線部aA1と弱電配線部aA2とに接続して実装されている。さらに、L1層111には、図示のように、制御回路CNTの一部を構成する電子部品が、弱電配線部aA2に重なる位置で弱電配線部aA2に接続されて実装されている。また、L1層111には、強電配線部aA1に重なる位置に、駆動回路DR1〜DR6および電源回路P1〜P6を構成する電子部品が、強電配線部aA1に接続されて実装されている。
【0030】
そして、L2層112は、各駆動回路/電源回路配置配線領域UP,UN,VP,VN,WP,WN(図2参照)に配置された強電配線部bA1と、制御回路配置配線領域CA1(図2参照)に配置された弱電配線部bA2とを備えている。そして、強電配線部bA1と弱電配線部bA2との間に、絶縁領域AR11〜AR16を構成する区画部bA3が設定されている。
【0031】
同様に、L3層113は、各駆動回路/電源回路配置配線領域UP,UN,VP,VN,WP,WN(図2参照)に配置された強電配線部cA1と、制御回路配置配線領域CA1(図2参照)に配置された弱電配線部cA2とを備えている。そして、強電配線部cA1と弱電配線部cA2との間に、絶縁領域AR11〜AR16を構成する区画部cA3が設定されている。
【0032】
(実施の形態1の作用)
次に、実施の形態1の作用を説明する。
各駆動回路DR1〜DR6がスイッチ駆動した際に、スイッチングノイズが誘起される。特に、同相の上アーム側と下アーム側の駆動回路で、例えば、U相であれば駆動回路DR1と駆動回路DR2とは、両者の距離が短いと、このスイッチングノイズの増大を招く。
このため、特許文献1のように、上アーム側と下アーム側との駆動回路の距離が、給電トランスの幅に制約されて両者の間隔を十分に確保できない場合、両駆動回路のスイッチ駆動により誘起されるスイッチングノイズの影響を相互に与えていた。
【0033】
これに対し、本実施の形態1では、各駆動回路DR1〜DR6のそれぞれに、給電トランスT1〜T6を設けた。このため、上アーム側の駆動回路DR1、DR3、DR5と、下アーム側の駆動回路DR2、DR4、DR6との距離が、給電トランスT1〜T6の幅に制限されることが無く、両者の間隔Lを広く確保することが可能となった。 これにより、上アーム側の駆動回路DR1、DR3、DR5と、下アーム側の駆動回路DR2、DR4、DR6との間隔Lを、給電トランスT1〜T6に制約される幅寸法よりも広く確保した。
【0034】
したがって、本実施の形態1では、この間隔Lが給電トランスT1〜T6に制約される場合と比較して、自アーム以外のスイッチング駆動に誘起されるスイッチングノイズの影響を最小限に軽減できる。
【0035】
さらに、給電トランスT1〜T6を、各アームに独立して設けたことにより、電源回路P1〜P6の出力配線と、各駆動回路DR1〜DR6と、の距離を短縮できる。
これにより、各駆動回路/電源回路配置配線領域UP〜WNの縮小化が可能となり、基板11の小型化が可能となる。
加えて、給電トランスT1〜T6を、各アームに独立して設けたことにより、各駆動回路DR1〜DR6の配置の自由度が高くなり、各駆動回路DR1〜DR6から各スイッチング素子Q1〜Q6への給電配線の短縮が可能となる。したがって、上記の各電源回路P1〜P6から各駆動回路DR1〜DR6への給電配線の短縮に加え、この各スイッチング素子Q1〜Q6への給電配線の短縮により、インダクタンス低減、ならびに、スイッチングノイズの低減を図ることができる。
【0036】
すなわち、電源回路P1〜P6の位置が、特許文献1のように給電トランスの寸法に制約される一方、駆動回路DR1〜DR6の位置が、接続部CN1〜CN6の位置に規定され場合、両者の距離が実施の形態1と比べて遠くなる。この場合、基板11が大型化し、また、給電配線が長くなることにより、インダクタンスおよびスイッチングノイズが増大する。本実施の形態1は、このような不具合を抑制できる。
【0037】
また、給電トランスT1〜T6を、各アームに独立して設けたことにより、多出力トランスを用いた場合と比較して、巻線の結合度のバラつきが抑制され、電源出力の精度向上を図ることができる。
さらに、上アーム側の駆動回路DR1、DR3、DR5と、下アーム側の駆動回路DR2、DR4、DR6との間の間隔Lの部分に、各絶縁領域AR11〜AR16に加え、制御回路配置配線領域CA1の縦断配線領域CA11を介在させた。
これにより、基板11における制御回路配置配線領域CA1を全体的に分散させて配置することが可能となり、制御回路配置配線領域CA1を1個所に集中させたものと比較して、基板11の小型化が可能となる。すなわち、特許文献1のように、実施の形態1の縦断配線領域CA11に相当する領域幅が給電トランスの幅に制限された場合、制御回路CNTおよびその配線を配置するために、横断配線領域CA14に相当する部分の面積を増大させる必要が生じる。また、この場合、横断配線領域CA14に相当する部分では、各駆動回路DR1〜DR6に対する配線距離の増大を招くことから、必要面積も増大する。
これに対して、本実施の形態1では、上述の制御回路配置配線領域CA1の分散化により、効率的な配置も可能になり、基板11の小型化が可能となる。
【0038】
しかも、本実施の形態1では、上アーム側の駆動回路DR1、DR3、DR5同士の間にも、制御回路配置配線領域CA1の横断配線領域CA12〜CA14を介在させた。したがって、上述の制御回路配置配線領域CA1の分散化をいっそう図ることが可能となり、より基板11の小型化が可能となる。
【0039】
(実施の形態1の効果)
以下に、実施の形態1の電力変換装置の効果を作用と共に列挙する。
1)実施の形態1の電力変換装置は、
直流電源2に接続された蓄電手段としての平滑コンデンサ3と、
この平滑コンデンサ3に接続された一対のスイッチング素子Q1〜Q6を備え、このスイッチング素子Q1〜Q6のスイッチング動作により直流電力を交流電力に変換する複数のスイッチング部SW1〜SW3と、
前記平スイッチング動作を制御する制御回路CNTからの制御信号を受けて前記スイッチング素子Q1〜Q6を駆動させる駆動回路DR1〜DR6と、
前記制御回路CNT、前記駆動回路DR1〜DR6、前記電源回路P1〜P6を実装する基板11と、
を備えた電力変換装置であって、
前記基板11上に、前記駆動回路DR1〜DR6と前記電源回路P1〜P6とを配置する強電系の駆動回路/電源回路配置配線領域UP,UN,VP,VN,WP,WNを、弱電系の前記制御回路CNTとの間に絶縁領域AR11〜AR16を介在させて前記スイッチング素子Q1〜Q6ごとに設けるとともに、前記一対のスイッチング素子(Q1,Q2)(Q3,Q4)(Q5,Q6)にそれぞれ接続された対となる前記駆動回路/電源回路配置配線領域(UP,UN)(VP,VN)(WP,WN)同士の間に所定の間隔Lを確保して配置した上で、前記制御回路CNTからの供給電圧を駆動用電圧に変圧する給電トランスT1〜T6を、前記電源回路P1〜P6ごとに前記絶縁領域AR11〜AR16を跨いで設けたことを特徴とする。
このように、給電トランスT1〜T6を、各アームに独立して設けたことにより、各駆動回路DR1〜DR6の配置の自由度が高くなり、設計自由度が向上する。これにより、上アーム側の駆動回路DR1、DR3、DR5と、下アーム側の駆動回路DR2、DR4、DR6との距離を十分に確保可能となり、自アーム以外のスイッチング駆動に誘起されるスイッチングノイズの影響を最小限に軽減できる。
さらに、給電トランスT1〜T6を、各アームに独立して設けたことにより、電源回路P1〜P6の出力配線と各駆動回路DR1〜DR6との距離を短縮して各駆動回路/電源回路配置配線領域UP,UN,VP,VN,WP,WNの縮小化が可能となり、基板11の小型化が可能となる。加えて、配線距離の短縮による、インダクタンス低減、ならびに、スイッチングノイズの低減を図ることができる。
また、給電トランスT1〜T6を、各アームに独立して設けたことにより、多出力トランスを用いた場合と比較して、巻線の結合度のバラつきが抑制され、電源出力の精度向上を図ることができる。
【0040】
2)実施の形態1の電力変換装置は、
前記対となる駆動回路/電源回路領域(UP,UN)(VP,VN)(WP,WN)同士の間に確保した前記間隔部分に、前記絶縁領域AR11〜AR16を挟んで、前記制御回路CNTおよびその配線を配置する制御回路配置配線領域CA1の縦断配線領域CA11を配置したことを特徴とする。
したがって、対となる駆動回路/電源回路領域(UP,UN)(VP,VN)(WP,WN)同士の間に確保した基板11上の間隔Lの部分を有効に利用できるとともに、制御回路配置配線領域CA1の分散化を図って効率的な配置も可能となる。よって、基板11のいっそうの小型化が可能となる。
【0041】
3)実施の形態1の電力変換装置は、
前記対となる駆動回路/電源回路領域(UP,UN)(VP,VN)(WP,WN)と、他の対となる駆動回路/電源回路領域(UP,UN)(VP,VN)(WP,WN)と、の間に、前記絶縁領域AR11〜AR16を挟んで、前記制御回路配置配線領域CA1の横断配線領域CA12、CA13を配置したことを特徴とする。
したがって、上アーム側の駆動回路DR1、DR3、DR5同士、および、下アーム側の駆動回路DR2、DR4、DR6同士、すなわち、自アーム以外のスイッチングノイズ影響を軽減することができる。
加えて、縦断配線領域CA11および横断配線領域CA12〜CA14を設けたことにより、基板11における制御回路配置配線領域CA1の分散化を図り、基板11のいっそうの小型化が可能となる。特に、横断配線領域CA12、CA13と、上記2)の縦断配線領域CA11と、を併設した場合は、制御回路CNTの分散化をより一層図り、基板11のさらなる小型化が可能となる。
【0042】
4)実施の形態1の電力変換装置は、
前記駆動回路/電源回路配置配線領域UP,UN,VP,VN,WP,WNごとに、前記スイッチング素子Q1〜Q6と接続する接続部CN1〜CN6を設けたことを特徴とする。
したがって、各駆動回路DR1〜DR6から各スイッチング素子Q1〜Q6への給電配線の短縮が可能となり、これによっても、インダクタンス低減、ならびに、スイッチングノイズの低減を図ることができる。
【0043】
5)実施の形態1の電力変換装置は、
前記対となる駆動回路/電源回路領域(UP,UN)(VP,VN)(WP,WN)同士の間隔Lを、対となる駆動回路/電源回路領域(UP,UN)(VP,VN)(WP,WN)を1つの給電トランスにより駆動させた場合の間隔(給電トランスの幅)よりも、大きな寸法に形成したことを特徴とする。
これにより、上アーム側の駆動回路DR1、DR3、DR5と、下アーム側の駆動回路DR2、DR4、DR6との距離を、確実に十分に確保でき、自アーム以外のスイッチング駆動に誘起されるスイッチングノイズの影響を最小限に軽減できる。
【0044】
(他の実施の形態)
次に、他の実施の形態の電力変換装置について説明する。
なお、他の実施の形態は、実施の形態1の変形例であるため、実施の形態1と共通する構成には実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略し、実施の形態1との相違点のみ説明する。
【0045】
(実施の形態2)
実施の形態2の電力変換装置は、図5に示すように、各スイッチ回路IC1〜IC6および給電トランスT1〜T6の配置を変えるとともに、各駆動回路/電源回路配置配線領域UP,UN,VP,VN,WP,WNの形状を異ならせた例を示している。
【0046】
すなわち、実施の形態1と比較して、各駆動回路/電源回路配置配線領域UP,UN,VP,VN,WP,WNの図5における左右方向寸法を相対的に大きくし、上下方向寸法を相対的に小さく形成している。
また、これに伴って、制御回路配置配線領域CA201における縦断配線領域CA211の図5における左右方向の幅寸法を狭める一方、各横断配線領域CA212〜CA214の図5における上下方向幅寸法を広げている。
なお、各駆動回路/電源回路配置配線領域UP,UN,VP,VN,WP,WNは、それぞれ、実施の形態1と同様に、駆動回路DR21〜DR26および電源回路P21〜P26を備えている。そして、基板11の幅方向(図5における左右方向)で、外側に駆動回路DR21〜DR26を配置し、内側に電源回路P21〜P26を配置し、同相の駆動回路DR21〜DR26の間隔を広く確保している。
【0047】
また、各スイッチ回路IC21〜IC26および給電トランスT21〜T26は、各絶縁領域AR21〜AR26を跨いで、横断配線部CA212〜CA214と各駆動回路/電源回路配置配線領域UP,UN,VP,VN,WP,WNとに接続されている。なお、基板211の外周には、絶縁領域AR27が設けられている。
【0048】
この実施の形態2では、実施の形態1の効果において2)で述べたように、給電トランスT21〜T26を、電源回路P21〜P26ごとに独立して設けたことにより、各駆動回路DR21〜DR26の配置の自由度が高くなる。これにより、各スイッチ回路IC21〜IC26および給電トランスT21〜T26の配置の自由度が高くなり、必要に応じ、実施の形態2のような配置とすることも可能である。
また、実施の形態2にあっても、実施の形態1で述べた1)〜5)効果を奏する。
【0049】
(実施の形態3)
実施の形態3の電力変換装置は、図6に示すように、パワーモジュール313の接続部CN31〜CN36の配置を実施の形態1と異ならせた例である。
そこで、これに伴って、図7に示すように、各駆動回路/電源回路配置配線領域UP,UN,VP,VN,WP,WNも、その形状および接続部CN31〜CN36の配置を実施の形態1,2と異ならせている。
【0050】
すなわち、図6に示すパワーモジュール313において、接続部CN31〜CN36は、スイッチング素子搭載領域121a,121b、122a,122b、123a,123bの外側上部角部に配置されている。
【0051】
そして、各駆動回路/電源回路配置配線領域UP,UN,VP,VN,WP,WNは、接続部CN31〜CN36を囲むように、図において縦長に配置され、その外周が絶縁領域AR31〜AR36に囲まれている。また、基板311の外周は、絶縁領域AR37に囲まれている。
【0052】
また、各駆動回路/電源回路配置配線領域UP,UN,VP,VN,WP,WNは、実施の形態1と同様に、駆動回路DR31〜DR36と電源回路P31〜P36とが、図において上下に並設されている。
【0053】
そして、各スイッチ回路IC31〜IC36および給電トランスT31〜T36は、実施の形態1と同様に各絶縁領域AR31〜AR36を跨ぎ、縦断配線部CA311と各駆動回路/電源回路配置配線領域UP,UN,VP,VN,WP,WNとに接続されている。
また、実施の形態3では、各駆動回路/電源回路配置配線領域UP,UN,VP,VN,WP,WNを幅狭に形成したことにより、縦断配線部CA311の幅寸法が、実施の形態1よりもさらに広く確保されている。つまり、同相の駆動回路/電源回路配置配線領域UP,VP,WPと、駆動回路/電源回路配置配線領域UN,VN,WNとの間隔が、より広く形成されている。
【0054】
以上のように、実施の形態3にあっても、実施の形態1の効果において2)で述べたように、給電トランスT31〜T36を、電源回路P31〜P36ごとに独立して設けたことにより、各駆動回路DR31〜DR36の配置の自由度が高くなる。これにより、パワーモジュール312の接続部CN1〜CN6の配置に応じて、各駆動回路/電源回路配置配線領域UP,UN,VP,VN,WP,WNを配置することができる。
また、縦断配線部CA311の幅を広げて同相の駆動回路/電源回路配置配線領域UP,VP,WPと、駆動回路/電源回路配置配線領域UN,VN,WNとの間隔を、より広く形成したことにより、スイッチングノイズの影響を、さらに軽減することができる。
なお、実施の形態3にあっても、実施の形態1で述べた1)〜5)効果を奏する。
【0055】
以上、本発明の電力変換装置を実施の形態に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施の形態に限られるものではなく、請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
例えば、各駆動回路/電源回路配置配線領域の形状は、実施の形態に示した形状に限定されるものではなく、パワーモジュールの各スイッチ部配置領域の配置や形状に応じて、任意の形状に形成することができる。
また、実施の形態では、電力変換装置は、3相のものを例示したが、その相数は、3相に限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7