特許第6206604号(P6206604)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206604
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】押圧検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/16 20060101AFI20170925BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   G01L1/16 C
   G06F3/041 600
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-564805(P2016-564805)
(86)(22)【出願日】2015年12月9日
(86)【国際出願番号】JP2015084489
(87)【国際公開番号】WO2016098652
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2017年3月13日
(31)【優先権主張番号】特願2014-255520(P2014-255520)
(32)【優先日】2014年12月17日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 健一
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−170515(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/057593(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0027352(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00 − 1/26
G06F 3/041− 3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電膜を有する押圧センサと、
前記押圧センサを筐体に固定する保持部材と、
操作面を有し、前記押圧センサを前記保持部材に固定する層間粘着剤と、
前記保持部材を前記筐体に固定する固定用接着剤と、を備え、
前記層間粘着剤は、低温でのヤング率が高温でのヤング率よりも大きく
前記固定用接着剤は、低温でのヤング率が高温でのヤング率よりも大きい
押圧検知装置。
【請求項2】
前記層間粘着剤は、低温でのヤング率の温度変化率が高温でのヤング率の温度変化率よりも高く
前記固定用接着剤は、低温でのヤング率の温度変化率が高温でのヤング率の温度変化率よりも低い
請求項1に記載の押圧検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作面への押圧を検知する押圧検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、平膜状の押圧センサを用いて操作面への押圧を検知する装置が各種考案されている。例えば、特許文献1に記載のタッチ入力装置は、平膜状の感圧センサ(押圧センサ)と、平膜状のタッチパネル(押圧位置検出センサ)とを備える。感圧センサとタッチパネルは、ベースプレート上に、感圧センサ、タッチパネルの順で重ねられている。
【0003】
このように、感圧センサとタッチパネルを重ねて配置する場合、一般的には、感圧センサとタッチパネルとの間に粘着層を介在させ、感圧センサとタッチパネルとの位置関係が変化しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−61592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タッチ式入力装置において感圧センサとタッチパネルが透光性を有する場合、これらの間に介在する粘着層も透光性を必要とする。現在、一般的に利用されている透光性を有する粘着剤は、低温でのヤング率が大きく、高温でのヤング率が小さい。
【0006】
したがって、感圧センサとタッチパネルのみの構成では、低温時には押圧力による歪みが感圧センサに伝わりやすく、高温時には押圧力による歪みが感圧センサに伝わりにくい。このため、感圧センサの出力電圧をそのまま利用して押圧力を算出すると、低温時と高温時で押圧力が異なってしまう。
【0007】
さらに、このようなタッチ式入力装置は、筐体等に固定された状態で利用される。タッチ式入力装置を筐体に固定する場合、温度によるヤング率の変化は殆ど無い固定用接着剤が用いられることがある。
【0008】
図12は、層間粘着剤のヤング率と固定用接着剤のヤング率との関係による出力電圧の変化を示す図である。図中の色の濃さが出力電圧を示す。層間粘着剤とは、上述の従来技術における感圧センサとタッチパネルとを粘着させるための粘着剤である。固定用接着剤とは、上述のタッチ式入力装置を筐体に固定するための粘着剤である。
【0009】
図12の黒丸に示すように、温度が変化しても、固定用接着剤のヤング率は変化しない。図12に示すように、各温度を示す黒丸の背景色は、温度によって異なる。すなわち、従来の構成では、温度の変化によって、出力電圧が変化することを意味する。
【0010】
図13は、押圧検知装置に相当する感圧センサの出力特性の温度特性を示すグラフである。図13における横軸は温度であり、縦軸は、20℃の出力電圧を基準値とした各温度での出力電圧比である。図13に示すように、従来の構成では、−20℃から+60℃の温度区間において、+70%から−60%の温度バラツキを生じる。したがって、従来の構成では、検知した押圧力が温度の影響を受ける。
【0011】
本発明の目的は、検知した押圧量が温度によって変化することを抑制できる押圧検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の押圧検知装置は、圧電膜を有する押圧センサと、操作面を有し押圧センサを筐体に固定する保持部材と、押圧センサを保持部材に固定する層間粘着剤と、保持部材を筐体に固定する固定用接着剤と、を備える。層間粘着剤は、低温でのヤング率が大きく、高温でのヤング率が小さい。固定用接着剤は、低温でのヤング率が大きく、高温でのヤング率が小さい。
【0013】
この構成では、層間粘着剤のヤング率の温度変化による圧電膜に伝わる保持部材の歪みの変化が、固定用接着剤のヤング率の温度変化によって抑制される。これにより、層間粘着剤のヤング率の温度変化による圧電膜の発生する電荷量の変化が、固定用接着剤のヤング率の温度変化によって抑制される。
【0014】
また、この発明の押圧検知装置は、次の構成であることが好ましい。層間粘着剤は、低温でのヤング率の温度変化率が高く、高温でのヤング率の温度変化率が低い。固定用接着剤は、低温でのヤング率の温度変化率が低く、高温でのヤング率の温度変化率が高い。
【0015】
この構成では、高温における層間粘着剤の温度変化による圧電膜の電荷量の変化は、低温における層間粘着剤の温度変化による圧電膜の電荷量の変化よりも大きい。したがって、固定用接着剤における、高温でのヤング率の温度変化率を高くすることによって、保持部材の歪みが大きくなるので、この高温における層間粘着剤の温度変化による圧電膜の電荷量の変化を、より正確に抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、検出した押圧量が温度によって変化することを抑制できる。これにより、温度に影響されることなく安定して押圧力を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係るタッチ式入力装置の外観斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るタッチ式入力装置の断面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るタッチ式入力装置の層間粘着剤と固定用接着剤のヤング率の温度特性を示すグラフである。
図4】本発明の第1の実施形態に係るタッチ式入力装置における層間粘着剤のヤング率と固定用接着剤のヤング率との関係による出力電圧の変化を示す図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係るタッチ式入力装置における出力電圧比の温度特性を示す。
図6】本発明の第2の実施形態に係るタッチ式入力装置の固定用接着剤のヤング率の温度特性を示すグラフである。
図7】本発明の第2の実施形態に係るタッチ式入力装置における層間粘着剤のヤング率と固定用接着剤のヤング率との関係による出力電圧の変化を示す図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係るタッチ式入力装置における出力電圧比の温度特性を示す。
図9】本発明の第3の実施形態に係るタッチ式入力装置の固定用接着剤のヤング率の温度特性を示すグラフである。
図10】本発明の第3の実施形態に係るタッチ式入力装置における層間粘着剤のヤング率と固定用接着剤のヤング率との関係による出力電圧の変化を示す図である。
図11】本発明の第3の実施形態に係るタッチ式入力装置における出力電圧比の温度特性を示す。
図12】従来構成における層間粘着剤のヤング率と固定用接着剤のヤング率との関係による出力電圧の変化を示す図である。
図13】従来構成における押圧検知装置に相当する感圧センサの出力特性の温度特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る押圧検知装置を備えるタッチ式入力装置について、図を参照して説明する。図1は本発明の実施形態に係るタッチ式入力装置の外観斜視図である。図2は本発明の実施形態に係るタッチ式入力装置の断面図である。
【0019】
タッチ式入力装置10は、略直方体形状の筐体40を備える。筐体40の表面側は開口している。なお、以下では、筐体40の幅方向(横方向)をX方向とし、長さ方向(縦方向)をY方向とし、厚み方向をZ方向として説明する。
【0020】
筐体40内には、タッチ検知センサ20、表示パネル(図示せず)、および演算回路モジュール(図示せず)が配置されている。
【0021】
筐体40の表面は開口しており、当該開口部に保持部材30が配置されている。保持部材30は、透光性を有する平板である。例えば、保持部材30はガラスである。筐体40における開口面の近傍には、開口内に向かって突出する形状の保持用突起41が形成されている。保持部材30の外周端は、保持用突起41上に載置される。保持部材30における保持用突起41に当接する面は、固定用接着剤50によって保持用突起41に固定されている。この保持部材30の表面が操作面、すなわち、ユーザからの押圧やタッチを受け付ける面である。
【0022】
タッチ検知センサ20は、層間粘着剤26によって保持部材30の裏面に固定されている。
【0023】
タッチ検知センサ20は、圧電膜21、絶縁性フィルム22,23,24、押圧検知用導体221,231、位置検知用導体222,242、層間粘着剤251,252,253を備える。
【0024】
圧電膜21は、押圧力に応じた電荷量を発生する圧電材料からなり、例えば、キラル高分子から形成されるフィルムである。キラル高分子として、本実施形態では、ポリ乳酸(PLA)、特にL型ポリ乳酸(PLLA)を用いている。PLLAは、一軸延伸されている。圧電膜21の一軸延伸方向は、タッチ式入力装置10のX方向およびY方向に対して略45°である。
【0025】
このようなキラル高分子からなるPLLAは、主鎖が螺旋構造を有する。PLLAは、一軸延伸されて分子が配向すると圧電性を有する。そして、一軸延伸されたPLLAは、圧電フィルムの平板面が押圧されることにより、電荷を発生する。この際、発生する電荷量は、押圧により平板面が、当該平板面に直交する方向へ変位する変位量によって一意的に決定される。一軸延伸されたPLLAの圧電定数は、高分子中で非常に高い部類に属する。したがって、押圧による変位を高感度に検知することができる。
【0026】
なお、延伸倍率は3〜8倍程度が好適である。延伸後に熱処理を施すことにより、ポリ乳酸の延びきり鎖結晶の結晶化が促進され圧電定数が向上する。尚、二軸延伸した場合はそれぞれの軸の延伸倍率を異ならせることによって一軸延伸と同様の効果を得ることが出来る。例えばある方向をX軸としてその方向に8倍、その軸に直交するY軸方向に2倍の延伸を施した場合、圧電定数に関してはおよそX軸方向に4倍の一軸延伸を施した場合とほぼ同等の効果が得られる。単純に一軸延伸したフィルムは延伸軸方向に沿って裂け易いため、前述したような二軸延伸を行うことにより幾分強度を増すことができる。
【0027】
また、PLLAは、延伸等による分子の配向処理で圧電性を生じ、PVDF等の他のポリマーや圧電セラミックスのように、ポーリング処理を行う必要がない。すなわち、強誘電体に属さないPLLAの圧電性は、PVDFやPZT等の強誘電体のようにイオンの分極によって発現するものではなく、分子の特徴的な構造である螺旋構造に由来するものである。このため、PLLAには、他の強誘電性の圧電体で生じる焦電性が生じない。さらに、PVDF等は経時的に圧電定数の変動が見られ、場合によっては圧電定数が著しく低下する場合があるが、PLLAの圧電定数は経時的に極めて安定している。したがって、周囲環境に影響されることなく、押圧による変位を高感度に検知することができる。
【0028】
また、PLLAは比誘電率が約2.5と非常に低いため、dを圧電定数とし、εを誘電率とすると、圧電出力定数(=圧電g定数、g=d/ε)が大きな値となる。ここで、誘電率ε33=13×ε,圧電定数d31=25pC/NのPVDFの圧電g定数は、上述の式から、g31=0.2172Vm/Nとなる。一方、圧電定数d14=10pC/NであるPLLAの圧電g定数をg31に換算して求めると、d14=2×d31であるので、d31=5pC/Nとなり、圧電g定数は、g31=0.2258Vm/Nとなる。したがって、圧電定数d14=10pC/NのPLLAで、PVDFと同様の押し込み量の検出感度を十分に得ることができる。そして、本願発明の発明者らは、d14=15〜20pC/NのPLLAを実験的に得ており、当該PLLAを用いることで、さらに非常に高感度に押圧を検知することが可能になる。
【0029】
圧電膜21の保持部材30側には、絶縁性フィルム22が配置されている。絶縁性フィルム22の表面には、押圧検知用導体221および位置検知用導体222が配置されている。押圧検知用導体221および位置検知用導体222は、複数設けられている。押圧検知用導体221および位置検知用導体222は、Y方向に沿って延びる形状であり、X方向に沿って間隔をおいて配列されている。
【0030】
絶縁性フィルム22は、層間粘着剤252によって圧電膜21に固定されている。
【0031】
圧電膜21の絶縁性フィルム22と反対側には、絶縁性フィルム23が配置されている。絶縁性フィルム23の表面には、押圧検知用導体231が配置されている。押圧検知用導体231は、複数設けられている。押圧検知用導体231は、Y方向に沿って延びる形状であり、X方向に沿って間隔をおいて配列されている。押圧検知用導体231は、圧電膜21を間に介して、押圧検知用導体221に対向している。
【0032】
絶縁性フィルム23は、層間粘着剤251によって圧電膜21に固定されている。
【0033】
絶縁性フィルム22の保持部材30側には、絶縁性フィルム24が配置されている。絶縁性フィルム24の表面には、位置検知用導体242が配置されている。位置検知用導体242は、複数設けられている。位置検知用導体242は、X方向に沿って延びる形状であり、Y方向に沿って間隔をおいて配列されている。位置検知用導体242と位置検知用導体222は、絶縁性フィルム24を間に介して、部分的に重なっている。
【0034】
絶縁性フィルム24の裏面は、層間粘着剤253によって、絶縁性フィルム22に固定されている。絶縁性フィルム24の表面は、層間粘着剤26によって、保持部材30の裏面に固定されている。
【0035】
本実施形態では、位置検知用導体242はX方向に、位置検知用導体222、押圧検知用導体221、231はY方向に沿って延びる形状としたが、これとは逆に位置検知用導体242はY方向に、位置検知用導体222、押圧検知用導体221、231はX方向に沿って延びる形状であってもよい。
【0036】
なお、本実施形態では、押圧力と押圧位置を検知するタッチ式入力装置10の態様を示したが、押圧力を検知する押圧検知装置であってもよい。この場合、押圧位置の検知に必要な部材、上述の態様であれば、絶縁性フィルム24、位置検知用導体222,242、層間粘着剤253は、省略される。
【0037】
このような構成において、層間粘着剤251,252,253,26と、固定用接着剤50は、次の物性を有する。
【0038】
図3は、本発明の第1の実施形態に係るタッチ式入力装置の層間粘着剤と固定用接着剤のヤング率の温度特性を示すグラフである。
【0039】
図3に示すように、層間粘着剤251,252,253,26のヤング率は、低温で大きく、高温で小さい。層間粘着剤251,252,253,26は、+20℃以下の温度領域でヤング率の温度変化率が大きく、0℃以下の温度領域でヤング率の温度変化率がさらに大きい。層間粘着剤251,252,253,26は、+20℃以上の温度領域でヤング率の温度変化率が小さく、+40℃以上の温度領域でヤング率の温度変化率がさらに小さい。
【0040】
固定用接着剤50のヤング率は、低温で大きく、高温で小さい。固定用接着剤50は、0℃以下の温度領域でヤング率の温度変化率が小さい。固定用接着剤50は、0℃以上の温度領域でヤング率の温度変化率が大きい。
【0041】
なお、ここで言う低温の領域とは、概ね0℃から10℃よりも低温の領域であり、高温の領域とは、概ね0℃から10℃よりも高温の領域である。
【0042】
図4は、本発明の第1の実施形態に係るタッチ式入力装置における層間粘着剤のヤング率と固定用接着剤のヤング率との関係による出力電圧の変化を示す図である。図中の色の濃さが出力電圧を示す。図4に示すように、本実施形態の構成を用いることによって、各温度での出力を示す黒丸の背景色が同じになる。低温時では、固定用接着剤のヤング率が大きいため、ガラスが変形し難くなり、ガラスの歪みは高温時に比べて小さくなる。また、低温時は層間粘着剤のヤング率も大きいため、ガラスの歪みは緩和されず、出力が大きく低下することはない。一方、高温時では、固定用接着剤のヤング率が小さいため、ガラスが変形し易くなり、ガラスの歪みは低温時よりも大きくなる。また、高温時では、層間粘着剤のヤング率のヤング率も小さいため、ガラスの歪みが緩和されて、出力が低下する。つまり、ガラスの歪みの大きさとその歪みの緩和の大きさが低温時と高温時で相反する関係となり、図中の黒線が同じ背景色の部分を通過する。すなわち、各温度での出力電圧が温度に影響されることなく一定になる。
【0043】
図5は、本発明の第1の実施形態に係るタッチ式入力装置における出力電圧比の温度特性を示す。図5の縦軸は、20℃の時の出力電圧を基準値とした出力電圧比である。図5に示すように、本実施形態の構成を用いることによって、出力電圧の温度による変化を抑制することができる。これにより、温度に影響されず、押圧力に応じて安定した出力電圧を検知することができる。したがって、温度に影響されず、押圧力を正確に検知することができる。
【0044】
なお、上述の層間粘着剤252,253,26は、全てが粘着剤である必要はなく、少なくとも1つが粘着剤であり、他は固定用接着剤と同じであってもよい。
【0045】
また、上述の説明では、保持部材30の裏面を、固定用接着剤50によって、保持用突起41の表面に接着する態様を示した。しかしながら、保持部材30の側面を固定用接着剤50によって筐体40の内壁に接着する態様であってもよい。また、保持部材30の底面を固定用接着剤50によって保持用突起41に接着し、且つ、保持部材30の側面を固定用接着剤50によって筐体40の内壁に接着する態様であってもよい。この際、固定用接着剤50は、保持部材30の側面から底面に亘る形状にするとよい。
【0046】
次に、本発明の第2の実施形態に係るタッチ式入力装置について、図を参照して説明する。本実施形態に係るタッチ式入力装置は、固定用接着剤の特性が第1の実施形態に係るタッチ式入力装置10と異なる。他の構成は、第1の実施形態に係るタッチ式入力装置10と同じである。
【0047】
図6は、本発明の第2の実施形態に係るタッチ式入力装置の固定用接着剤のヤング率の温度特性を示すグラフである。図6に示すように、本実施形態に係るタッチ式入力装置の固定用接着剤は、低温でのヤング率が高く、高温でのヤング率が低い。より具体的には、本実施形態に係るタッチ式入力装置の固定用接着剤は、図3に示す層間粘着剤と同じヤング率の温度特性を有する。
【0048】
図7は、本発明の第2の実施形態に係るタッチ式入力装置における層間粘着剤のヤング率と固定用接着剤のヤング率との関係による出力電圧の変化を示す図である。図中の色の濃さが出力電圧を示す。図7に示すように、本実施形態の構成を用いることによって、各温度での出力を示す黒丸の背景色は若干異なるものの、殆ど同じになる。すなわち、各温度での出力電圧が温度に影響されるものの、その影響を小さく抑制することができる。
【0049】
図8は、本発明の第2の実施形態に係るタッチ式入力装置における出力電圧比の温度特性を示す。図8の縦軸は、20℃の時の出力電圧を基準値とした出力電圧比である。図8に示すように、本実施形態の構成を用いることによって、出力電圧の温度による変化を、従来構成よりも抑制することができる。これにより、温度の影響は受けるものの、所定の誤差範囲内で、従来構成よりも安定して押圧力を検知することができる。例えば、本実施形態の構成では、±30%の誤差範囲内で押圧力を検知することができる。
【0050】
次に、本発明の第3の実施形態に係るタッチ式入力装置について、図を参照して説明する。本実施形態に係るタッチ式入力装置は、固定用接着剤の特性が第1の実施形態に係るタッチ式入力装置10と異なる。他の構成は、第1の実施形態に係るタッチ式入力装置10と同じである。
【0051】
図9は、本発明の第3の実施形態に係るタッチ式入力装置の固定用接着剤のヤング率の温度特性を示すグラフである。図9に示すように、本実施形態に係るタッチ式入力装置の固定用接着剤は、低温でのヤング率が高く、高温でのヤング率が低い。より具体的には、本実施形態に係るタッチ式入力装置の固定用接着剤は、図3に示す層間粘着剤に類似するヤング率の温度特性を有する。
【0052】
図10は、本発明の第3の実施形態に係るタッチ式入力装置における層間粘着剤のヤング率と固定用接着剤のヤング率との関係による出力電圧の変化を示す図である。図中の色の濃さが出力電圧を示す。図10に示すように、本実施形態の構成を用いることによって、各温度での出力を示す黒丸の背景色は或程度異なるものの、従来構成よりはバラツキがない。すなわち、各温度での出力電圧が温度に影響されるものの、その影響を従来構成よりも小さく抑制することができる。
【0053】
図11は、本発明の第3の実施形態に係るタッチ式入力装置における出力電圧比の温度特性を示す。図11の縦軸は、20℃の時の出力電圧を基準値とした出力電圧比である。図8に示すように、本実施形態の構成を用いることによって、出力電圧の温度による変化を、従来構成よりも抑制することができる。これにより、温度の影響は受けるものの、所定の誤差範囲内で、従来構成よりも安定して押圧力を検知することができる。例えば、本実施形態の構成では、+20%から−50%の誤差範囲内で押圧力を検知することができる。
【0054】
なお、第2、第3の実施形態では、温度による影響を受けているが、その影響は従来構成よりも小さい。従来構成では、20℃の時の出力電圧に比べ、60℃の時の出力電圧が60%も減少してしまう。60℃の時の出力電圧を押圧力として検知するには、ユーザがタッチ式入力装置を押したとみなすことができる出力電圧の閾値を大幅に下げなければならない。閾値を大幅に下げると押圧検知用導体に発生するノイズも押圧力として検知してしまい、誤動作してしまう。一方で、第2、第3の実施形態での温度による影響は閾値を大幅に下げる必要が無いため誤動作が発生せず、実用的に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
10:タッチ式入力装置
20:タッチ検知センサ
21:圧電膜
22,23,24:絶縁性フィルム
30:保持部材
40:筐体
41:保持用突起
50:固定用接着剤
221,231:押圧検知用導体
222,242:位置検知用導体
251,252,253,26:層間粘着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13