特許第6206621号(P6206621)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6206621呼気センサ、呼気センサユニットおよび呼気検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206621
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】呼気センサ、呼気センサユニットおよび呼気検出方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/08 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   A61B5/08ZDM
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-512183(P2017-512183)
(86)(22)【出願日】2015年11月9日
(86)【国際出願番号】JP2015081512
(87)【国際公開番号】WO2016166911
(87)【国際公開日】20161020
【審査請求日】2017年7月7日
(31)【優先権主張番号】特願2015-83283(P2015-83283)
(32)【優先日】2015年4月15日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】大寺 昭三
【審査官】 門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−262224(JP,A)
【文献】 特開平3−286741(JP,A)
【文献】 特表2011−516190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/08
G01N 27/333
G01N 27/416
G01N 27/409
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
前記基体の表面の一部に設けられた第1電極と、
前記基体の表面の一部に設けられた第2電極と、
水分を透過しない材料から形成され、前記第2電極を前記基体との間で覆う被覆層と、を備え、
前記基体は、前記第1電極または前記基体の表面への水分の付着により表面電位が変化する材料から形成されている、
呼気センサ。
【請求項2】
前記基体は、フィルム状であり、
前記第1電極は、前記基体の一の主面に設けられ、
前記第2電極は、前記基体の他の主面に設けられている、
請求項1に記載の呼気センサ。
【請求項3】
前記基体は、フィルム状であり、
前記第1電極および前記第2電極は、前記基体の同一の主面に設けられている、
請求項1に記載の呼気センサ。
【請求項4】
前記基体は、陽イオン交換膜から形成されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の呼気センサ。
【請求項5】
前記被覆層は、陰イオン交換膜から形成されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の呼気センサ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の呼気センサと、
前記第1電極と前記第2電極との間の電位差を検出する検出回路と、
前記電位差の変動から予め定められた期間内の呼吸回数を算出する呼吸回数算出部と、を備える、
呼気センサユニット。
【請求項7】
前記電位差と呼気に含まれる水分濃度との相関関係を示す相関情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記相関情報と前記検出回路で検出された電位差とに基づいて、呼気に含まれる水分濃度を算出する水分濃度算出部と、を更に備える、
請求項6に記載の呼気センサユニット。
【請求項8】
基体と、
前記基体に設けられた第1電極と、
前記基体に設けられた第2電極と、
水分を透過しない材料から形成され、前記第2電極を前記基体との間で覆う被覆層と、を有し、前記基体が、前記第1電極または前記基体の表面への水分の付着により表面電位が変化する材料から形成されている呼気センサの、前記第1電極と前記第2電極との間の電位差を検出するステップと、
前記電位差の変動から予め定められた期間内の呼吸回数を算出するステップと、を含む、
呼気検出方法。
【請求項9】
前記電位差と呼気に含まれる水分濃度との相関関係を示す相関情報と、前記第1電極と前記第2電極との間の電位差とに基づいて、呼気に含まれる水分濃度を算出するステップを更に含む、
請求項8に記載の呼気検出方法。
【請求項10】
陽イオン交換膜から形成された基体と、
前記基体に設けられた第1電極と、
前記基体に設けられた第2電極と、
水分を透過しない材料から形成され、前記第2電極を前記基体との間で覆う被覆層と、を備え、
前記第1電極と前記第2電極との間に、前記基体または前記第1電極に接触する呼気に含まれる水分に応じた電位差が発生する、
呼気センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼気センサ、呼気センサユニットおよび呼気検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場等では、患者の呼吸状態を監視するためのセンサが要請される。そこで、両面に導電体層が形成されたポリフッ化ビニルデン(PVDF)膜とこのPVDF膜の両面に配設された電極とを備えるセンサが提案されている(例えば特許文献1参照)。このセンサは、呼気がPVDF膜に当たることによるPVDF膜の温度変化により呼気の有無を評価する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4989932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたセンサは、温度に基づいて呼気の有無を検出する構成であるため、外部の温度環境等の影響を受けやすい。従って、このセンサでは、使用環境によっては、呼気の有無を正確に評価することができない虞がある。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、呼気の有無を正確に評価できる呼気センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る呼気センサは、
基体と、
前記基体の表面の一部に設けられた第1電極と、
前記基体の表面の一部に設けられた第2電極と、
水分を透過しない材料から形成され、前記第2電極を前記基体との間で覆う被覆層と、を備え、
前記基体は、前記第1電極または前記基体の表面への水分の付着により表面電位が変化する材料から形成されている。
【0007】
また、本発明に係る呼気センサは、
前記基体が、フィルム状であり、
前記第1電極は、前記基体の一の主面に設けられ、
前記第2電極は、前記基体の他の主面に設けられている、ものであってもよい。
【0008】
また、本発明に係る呼気センサは、
前記基体が、フィルム状であり、
前記第1電極および前記第2電極が、前記基体の同一の主面に設けられている、ものであってもよい。
【0009】
また、本発明に係る呼気センサは、
前記基体が、陽イオン交換膜から形成されている、ものであってもよい。
【0010】
また、本発明に係る呼気センサは、
前記被覆層が、陰イオン交換膜から形成されている、ものであってもよい。
【0011】
また、本発明に係る呼気センサユニットは、
上記呼気センサと、
前記第1電極と前記第2電極との間の電位差を検出する検出回路と、
前記電位差の変動から予め定められた期間内の呼吸回数を算出する呼吸回数算出部と、を備える。
【0012】
また、本発明に係る呼気センサユニットは、
前記電位差と呼気に含まれる水分濃度との相関関係を示す相関情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記相関情報と前記検出回路で検出された電位差とに基づいて、呼気に含まれる水分濃度を算出する水分濃度算出部と、を更に備える、ものであってもよい。
【0013】
他の観点から見た本発明に係る呼気検出方法は、
基体と、
前記基体に設けられた第1電極と、
前記基体に設けられた第2電極と、
水分を透過しない材料から形成され、前記第2電極を前記基体との間で覆う被覆層と、を有し、前記基体が、前記第1電極または前記基体の表面への水分の付着により表面電位が変化する材料から形成されている呼気センサの、前記第1電極と前記第2電極との間の電位差を検出するステップと、
前記電位差の変動から予め定められた期間内の呼吸回数を算出するステップと、を含む。
【0014】
また、本発明に係る呼気検出方法は、
前記電位差と呼気に含まれる水分濃度との相関関係を示す相関情報と、前記第1電極と前記第2電極との間の電位差とに基づいて、呼気に含まれる水分濃度を算出するステップを更に含んでもよい。
【0015】
本発明に係る呼気センサは、
陽イオン交換膜から形成された基体と、
前記基体に設けられた第1電極と、
前記基体に設けられた第2電極と、
水分を透過しない材料から形成され、前記第2電極を前記基体との間で覆う被覆層と、を備え、
前記第1電極と前記第2電極との間に、前記基体または前記第1電極に接触する呼気に含まれる水分に応じた電位差が発生する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、水分を含む呼気が第1電極または基体の表面に付着したときの、基体の表面電位の変化を検出することにより、呼気の有無を検出することができる。つまり、呼気に含まれる水分の有無に基づいて呼気の有無を検出することができる。これにより、呼気センサが使用される温度環境に左右されることなく呼気の有無を検出することができるので、例えば呼気の温度に基づいて呼気の有無を検出する構成に比べて呼気の有無を正確に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態に係る呼気センサユニットの構成図である。
図2】実施の形態に係る呼気センサを示し、(A)は基体の一の主面側から見た平面図、(B)は基体の他の主面側から見た平面図である。
図3】実施の形態に係る算出部の構成図である。
図4】実施の形態に係る呼気センサユニットの出力信号の一例を示す図である。
図5】実施の形態に係る算出部が実行する呼気回数・水分濃度計測処理の一例を示すフローチャートである。
図6】実施の形態に係るルックアップテーブルに記録された電圧と水分濃度との相関関係を示す図である。
図7】実施の形態の第1の変形例に係る呼気センサの平面図である。
図8】実施の形態の第1の変形例に係る呼気センサユニットの構成図である。
図9】実施の形態の第2の変形例に係る呼気センサユニットの構成図である。
図10】実施の形態の第2の変形例に係る呼気センサユニットの構成図である。
図11】実施の形態の第3の変形例に係る算出部の構成図である。
図12】実施の形態の第3の変形例に係る検出回路の出力電圧と、比較器の出力電圧と、演算部のトリガ端子の電圧と、演算部の検出端子への入力電圧と、呼吸カウンタのカウント値との関係の一例を示すタイムチャートであり、(A)は検出回路の出力電圧、(B)は比較器の出力電圧、(C)は演算部のトリガ端子の電圧、(D)は演算部の検出端子への入力電圧、(E)は呼吸カウンタのカウント値のタイムチャートである。
図13】実施の形態の第4の変形例に係る算出部の構成図である。
図14】実施の形態の第4の変形例に係る検出回路の出力電圧と、積分回路の出力電圧の絶対値と、微分回路の出力電圧との関係の一例を示すタイムチャートであり、(A)は検出回路の出力電圧、(B)は積分回路の出力電圧の絶対値、(C)は微分回路の出力電圧のタイムチャートである。
図15】実施の形態の第4の変形例に係る算出部が実行する呼気回数・水分濃度計測処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の各実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
本実施の形態に係る呼気センサユニットは、図1に示すように、呼気センサ1と、呼気センサ1から出力される信号を検出する検出回路2と、呼気回数と呼気に含まれる水分濃度を算出する算出部3と、表示部4と、を備える。
【0020】
呼気センサ1は、基体11と、基体11の一の主面に設けられた第1電極12と、基体11の他の主面に設けられた第2電極13と、第2電極13を介してその下方の基体11の表面を覆う被覆層14と、を備える。第1電極12、第2電極13それぞれには、導電部材15a,15bを介してリード線16a,16bが接続されている。
【0021】
この呼気センサ1に呼気が当たると、基体11の第1電極12側では、呼気中に含まれる水素イオンが基体11表面に入り込むことにより、基体11表面のイオンの状態が変化して基体11の表面電位が変化する。一方、被覆層14で覆われた基体11の第2電極13側では、基体11表面に呼気が当たらないので基体11の表面電位が変化しない。呼気センサ1は、このような第1電極12の電位と第2電極13の電位との電位差の変動に基づいて呼吸回数を計測するためのものである。
【0022】
また、水素イオンは、呼気に含まれる水分濃度に比例しているので、第1電極12の電位と第2電極13の電位との間の電位差は、呼気に含まれる水分濃度を反映していることになる。従って、呼気センサ1の第1電極12の電位と第2電極13の電位との電位差から、呼気に含まれる水分濃度を計測することもできる。
【0023】
以下、呼気センサ1の各構成について詳細に説明する。基体11は、水分を含む呼気が第1電極12または基体11に付着すると、基体11の第1電極12側の表面電位が変化する陽イオン交換膜から形成されている。基体11は、フィルム状であり、例えば縦横20mmの平面視正方形状である。陽イオン交換膜は、例えばパーフルオロカーボン材料から形成される。このような、陽イオン交換膜として、例えばシグマアルドリッチ社製のナフィオン(登録商標)や旭硝子社製のセレミオンCMV(登録商標)が挙げられる。このように、基体11が陽イオン交換膜から形成されていることにより、水が付着した部分とそれ以外の部分とで、水分濃度に応じて検出可能な程度に十分大きい電位差を生じさせることができる。
【0024】
第1電極12は、図2(A)に示すように、基体11の一の主面全体を覆うように設けられている。また、第2電極13は、基体11の他の主面全体を覆うように設けられている。第1電極12および第2電極13は、白金(Pt)等から形成される。第1電極12および第2電極13は、スパッタリング法や蒸着法、めっき法等を利用して形成される。
【0025】
被覆層14は、ポリイミド等の水分を透過しない樹脂材料や陰イオン交換膜から形成される。被覆層14は、図2(B)に示すように、基体11の他の主面全体を覆うように設けられた第2電極12全体を覆うように設けられている。
【0026】
導電部材15a,15bは、例えば金属粉と樹脂バインダとを混練してなる導電ペーストから構成される。導電ペーストしては、例えば藤倉化成株式会社製の「ドータイトFA−333(登録商標)」が挙げられる。リード線16a、16bは、銅線等の金属ワイヤから構成される。
【0027】
検出回路2は、プラス入力端子とマイナス入力端子との間の電位差を増幅して出力する差動増幅回路21を備える。差動増幅器21には、定電圧VCC、−VCCが供給される。
【0028】
算出部3は、予め定めた期間内の呼吸回数を算出する呼吸回数算出部3a、呼吸1回当たりの呼気に含まれる水分濃度を算出する水分濃度算出部3bとして機能する。算出部3は、図3に示すように、ハードウェア構成として、ADC(Analog to Digital converter)33と演算部34とを備える。演算部34は、CPU(Central Processing Unit)34aと主記憶部34bと補助記憶部34cと入力部34dと出力部34eとインタフェース部34fと各部を接続するシステムバス34gとを備える。演算部34は、ADC33から出力される電圧値を随時取り込む。
【0029】
CPU34aは、補助記憶部34cに記憶されたプログラムを読み出して実行し、プログラムに応じて、算出部3全体を制御する。主記憶部34bは、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリを有している。主記憶部34bは、CPU34aの作業領域として用いられる。補助記憶部34cは、磁気ディスク、半導体メモリなどの不揮発性メモリを有している。補助記憶部34cは、CPU34aが実行するプログラムおよび各種パラメータを記憶する。また、補助記憶部34cは、CPU34aによる処理結果等を順次記憶する。更に、補助記憶部34cは、第1電極12と第2電極13との間の電位差と呼気に含まれる水分濃度との相関関係を示すルックアップテーブル(LUT)342を記憶している。
【0030】
入力部34dは、算出部3に情報を入力するためのものであり、タッチパネル等から構成される。出力部34eは、表示部4に接続され、主記憶部34bまたは補助記憶部34cからシステムバス34gを介して取得したデータ等を表示部4へ出力する。
【0031】
表示部4は、表示装置から構成され、算出部3から入力される呼吸回数または水分濃度を表示する。
【0032】
ADC33は、検出回路2から出力される電圧をサンプリングして得られる電圧値を演算部34へ出力し続ける。ADC33のサンプリング周波数は、例えば100kHzに設定される。
【0033】
次に、本実施の形態に係る呼気センサユニットの動作について説明する。呼気センサユニットは、呼気センサ1が患者の口元近傍に配置された状態で、呼気センサ1の第1電極12と第2電極13との間の電位差の変動から、患者の呼吸回数と呼気に含まれる水分濃度を検出する。呼気センサユニットは、例えばユーザが患者の呼吸回数と呼気に含まれる水分濃度との検出を開始するための操作を受け付けたことを契機として、患者の呼吸回数と呼気に含まれる水分濃度との検出を開始する。
【0034】
呼気センサユニットの検出回路2から出力される信号の時間波形の一例を図4に示す。検出回路2は、前述のように、呼気センサ1の第1電極12と第2電極13との間の電位差を増幅して出力する。呼気センサ1に呼気が当たっていない場合、図4の「呼気無し」の期間に示されるように、検出回路2から出力される電圧△Vの時間波形は0V付近で推移する。その後、呼気センサ1に呼気が略一定の時間間隔で当たる状態に推移させると、図4の「呼気有り」の期間に示されるように、検出回路2から出力される電圧△Vの時間波形は、呼吸に応じて変化する波形となる。具体的には、電圧△Vの時間波形は、略一定の時間間隔で特定の電圧閾値△Vthを超えるような波形となる。ここで、呼気が呼気センサ1に当たっている状態での電圧△Vが50mVから200mV程度である。呼気センサユニットは、このような電圧△Vの変動から患者の呼吸回数と呼気に含まれる水分濃度を検出する。
【0035】
次に、本実施の形態に係る呼気センサユニットが実行する呼吸回数・水分濃度計測処理について図5を参照しながら説明する。この呼吸回数・水分濃度計測処理において、呼気センサユニットは、検出回路2から出力される電圧が予め定められた期間内において、予め定められた電圧閾値未満から電圧閾値以上に変化した回数を呼吸回数として算出する。また、呼気センサユニットは、検出回路2から出力される電圧が電圧閾値以上で推移した期間の電圧平均値から、1回の呼吸で吐き出される呼気中に含まれる水分濃度を算出する。
【0036】
まず、演算部34は、呼吸カウンタのカウント値TCを「0」に設定する(ステップS1)。次に、演算部34は、ADC33から入力される電圧値△Vが予め設定された電圧閾値以上であるか否かを判定する(ステップS2)。演算部34により電圧値が電圧閾値未満であると判定されると(ステップS2:No)、そのままステップS5の処理が実行される。一方、電圧値△Vが電圧閾値△Vth以上であると判定されると(ステップS2:Yes)、演算部34は、カウント値TCを「1」だけインクリメントする(ステップS3)。
【0037】
続いて、演算部34は、ADC33から入力される電圧値△Vを取得して主記憶部34bに記憶する(ステップS4)。その後、演算部34は、ADC33から入力される電圧値△Vが電圧閾値△Vth未満になったか否かを判定する(ステップS5)。演算部34は、電圧値△Vが電圧閾値△Vth以上である限り(ステップS5:No)、ADC33から入力される電圧値△Vを取得して主記憶部34bに記憶すること(ステップS4)を繰り返し実行する。一方、電圧値△Vが電圧閾値△Vth以上と判定されると(ステップS5:Yes)、演算部34は、電圧値△Vが電圧閾値△Vth以上で推移した期間の電圧値△Vの積算値を、期間内に取得した電圧値△Vのデータ数で除することにより電圧値△Vの平均値を算出して補助記憶部34cに記録する(ステップS6)。ここで、演算部34は、主記憶部34bに記憶された、電圧値△Vが電圧閾値△Vth以上で推移した期間内に取得された電圧値△Vを積算することにより電圧値△Vの積算値を算出する。そして、演算部34は、主記憶部34bに記憶された電圧値△Vのデータ数を算出し、算出した積算値をこのデータ数で除することにより電圧値△Vの平均値を算出する。
【0038】
その後、演算部34は、補助記憶部34cに記憶されたルックアップテーブル342を参照して、算出した電圧値△Vの平均値から水分濃度を算出して補助記憶部34cに記録する(ステップS7)。ここで、ルックアップテーブル342は、例えば図6に示すような電圧値△Vと水分濃度との相関関係を示すものである。このルックアップテーブル342は、例えば予め呼気センサ1に当てる加湿ガスの湿度(水分濃度)を変化させながら、加湿ガスの湿度と電圧値△Vとを計測することにより作成される。
【0039】
その後、演算部34は、計測期間が終了したか否かを判定し(ステップS8)、計測期間が終了していない場合(ステップS8:No)、再びステップS2の処理を実行する。ここで、演算部34は、タイマのカウント値に基づいて、予め設定された計測期間が終了したか否かを判定する。演算部34は、計測期間が終了しない限り、ステップS2からS6の処理を繰り返し実行する。なお、このステップS2からS7の繰り返し間隔は、人が1回の呼吸で呼気を吐き出し続けている時間および人の呼吸間隔に比べて十分短い。
【0040】
一方、計測期間が終了した場合(ステップS8:Yes)、演算部34は、カウント値TCに設定された数を呼吸回数として補助記憶部34cに記録して(ステップS9)、呼吸回数・水分濃度計測処理を終了する。そして、演算部34の出力部34eは、補助記憶部34cに記憶された計測期間における水分濃度の履歴と呼吸回数とを表示部4へ出力する。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態に係る呼気センサ1によれば、水分を含む呼気が第1電極12の表面に接触したときの、基体11の第1電極12側の表面と基体11の第2電極13側の表面との間に生じる電位差を検出することにより、呼気の有無を検出することができる。つまり、呼気に含まれる水分の有無に基づいて呼気の有無を検出することができる。これにより、呼気センサ1が使用される温度環境に左右されることなく呼気の有無を検出することができるので、例えば呼気の温度に基づいて呼気の有無を検出する構成に比べて呼気の有無を正確に計測することができる。
【0042】
また、本実施の形態に係る呼気センサ1では、第1電極12を基体11の一表面全体を覆うように設けるとともに、第2電極13を基体11の他の表面全体を覆うように設けることができる。この場合、スパッタリング法等を利用して第1電極12と第2電極13とを形成する場合、基体11表面に導電体層をパターニングする必要がないので、その分、簡単に製造することができる。更に、本実施の形態に係る演算部34は、第1電極12と第2電極13との間の電位差の変動から予め設定された計測期間内の呼吸回数を算出する。これより、温度環境に左右されることなく計測期間内の呼吸回数を正確に計測することができる。
【0043】
また、本実施の形態に係る呼気センサユニットでは、水分を含む呼気が呼気センサ1に当たったときに、基体11表面の被覆層14で覆われた部分と覆われていない部分との間に生じる電位差に比例した電圧を出力する検出回路2を備える。ここで、基体11表面の被覆層14で覆われた部分と覆われていない部分との間に生じる電位差は、呼気に含まれる水分濃度が多いほど大きくなる。そして、演算部34は、電圧△Vと呼気に含まれる水分濃度との相関関係を示すルックアップテーブル342を参照して、検出回路2から出力される電圧△Vから1回の呼吸で吐き出される呼気に含まれる水分濃度を算出する。これにより、呼気に含まれる水分濃度を評価することができる。
【0044】
患者の呼吸状態を監視するに当たっては、患者の呼吸器系の異常を検出するために呼気に含まれる水分濃度が正常であるか否かを監視することも要請されている。呼気の湿度を検出するセンサとして、高分子膜から形成されたコンデンサを用いたセンサが提供されている(非特許文献1:麿田裕、「加温加湿と気道管理 人工気道での加温加湿をめぐる諸問題」、人工呼吸 第27巻第1号(2010年)57〜63頁参照)。このセンサは、コンデンサに呼気が当たったときにコンデンサの高分子膜に呼気に含まれる水分が取り込まれコンデンサの静電容量が変化することを利用して呼気の湿度を検出するものである。ところが、このセンサでは、その応答時間が速いものでも2秒から5秒程度である。一方、人が呼吸する時間間隔は通常1秒以下である。そうすると、非特許文献1に記載されたセンサでは、1回の呼吸で吐き出される呼気に含まれる水分濃度を評価することができない。
【0045】
これに対して、本実施の形態に係る呼気センサユニットでは、前述のように、1回の呼吸で吐き出される呼気に含まれる水分濃度を評価することができるので、患者の呼吸状態をより緻密に監視することが可能となる。
【0046】
[変形例]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば第1電極、第2電極が、基体表面の一部を覆う、つまり、基体表面の一部が露出している構成であってもよい。
【0047】
基体表面の一部が露出している構成の一例を図7に示す。図7に示すように、基体211の一部は、第1電極212、第2電極213および被覆層214で覆われずに露出している。また、この変形例に係る呼気センサユニットは、図8に示すように、呼気センサ201の第1電極212と第2電極213とがフィルム状の基体211の片面側に設けられている。なお、図8において、実施の形態と同様の構成については図1と同一の符号を付している。
【0048】
基体211は、陽イオン交換膜から形成される。第1電極212、第2電極213は、金属材料から形成される。被覆層214は、ポリイミド等の水分を透過しない樹脂材料から形成される。
【0049】
本構成によれば、第1電極212と第2電極213とが、基体211の片面側に配設されている。これにより、スパッタリング法等を利用して第1電極212と第2電極213とを形成する場合、基体211を裏返す作業が不要となるので、製造容易化を図ることができ、ひいては製造コストを低減することができる。
【0050】
実施の形態では、基体11が1層構造である例について説明したが、これに限らない。例えば、基体が陽イオン交換膜からなる層を2つ重ねた構造であってもよい。
【0051】
或いは、基体が陽イオン交換膜からなる層と、陰イオン交換膜等の水分を含む呼気が電極または基体の表面に付着しても表面電位が変化しないような材料からなる層とを重ねた構造であってもよい。
【0052】
このような、陽イオン交換膜からなる層と陰イオン交換膜等の材料からなる層とを重ねた構造を有する呼気センサの変形例を図9に示す。呼気センサ501は、第1サブ基体511aと第2サブ基体511bとが積層されてなる基体511を備える。ここで、第1サブ基体511aは、陽イオン交換膜から形成されている。一方、第2サブ基体511bは、陰イオン交換膜等の、水分を含む呼気が第2電極13の表面に接触しても第2電極13側の表面電位が変化しない材料から形成されている。
【0053】
また、陽イオン交換膜からなる層と陰イオン交換膜等の材料からなる層とを重ねた構造を有する他の変形例を図10に示す。なお、図10において図9に示した構成と同様の構成は図9と同一の符号を付している。呼気センサ601では、陰イオン交換膜等の材料からなる第2サブ基体511bが、被覆層14で覆われた第2電極13に隣接して配置されている。また、陽イオン交換膜からなる第1サブ基体511aが、被覆層で覆われていない第1電極12に隣接しては配置されている。
【0054】
本構成によれば、第2サブ基体511bの第2電極13側の表面電位と、第1サブ基体511aの第1電極12側の表面電位との差が顕著になるので、例えば基体が陽イオン交換膜からなる単一の層からなる構成(例えば実施の形態に係る呼気センサ1)に比べて、呼気の有無や呼気に含まれる水分濃度等を高精度で測定できる。
【0055】
実施の形態および上記各変形例では、基体11がフィルム状である例について説明したが、基体11の形状はこれに限定されるものではなく、例えば板状、直方体状等の他の形状を有するものであってもよい。基体が例えば直方体状である場合、電極がある一表面とこの一表面に直交する他の一表面とに設けられてもよい。
【0056】
実施の形態に係る呼気センサユニットは、予め設定された計測期間内の呼吸回数と呼気に含まれる水分濃度との両方を計測する構成について説明した。これに限らず、例えば呼吸回数の計測に特化した構成であってもよい。
【0057】
このような、呼吸回数の計測に特化した構成の呼気センサユニットの変形例を図11に示す。この呼気センサユニットは、比較器331と基準電圧源332とAND回路333と演算部334とを備える。比較器331は、オペアンプ等から構成され、プラス入力端子に検出回路2からの電圧信号が入力され、マイナス入力端子に基準電圧源332が出力する基準電圧が入力される。比較器331は、検出回路2から入力される電圧信号の電圧値が基準電圧源332の出力電圧よりも大きい場合、「High」レベルの電圧を出力する。一方、比較器331は、検出回路2から入力される電圧信号の電圧値が基準電圧源332の出力電圧よりも小さい場合、「Low」レベルの電圧を出力する。
【0058】
AND回路333は、一方の入力端子が比較器331の出力端子に接続され、他方の入力端子が演算部334のトリガ端子teTに接続され、出力端が演算部334の検出端子teDに接続されている。AND回路333は、予め設定された期間中において、呼気の検出有無に応じて異なるレベルの電圧を演算部334の検出端子teDへ出力する。
【0059】
演算部334は、図2と同様の構成を有し、トリガ端子teTを備える。なお、実施の形態と同様の構成については図2と同一の符号を使って説明する。CPU34aは、インタフェース部34fを介してトリガ端子teTの電圧を制御する。演算部334は、予め設定された計測期間中、トリガ端子teTの電圧を「High」レベルで維持し、計測期間外は、トリガ端子teTを「Low」レベルで維持する。また、演算部334は、検出端子teDの電圧が「Low」レベルから「High」レベルに切り替わるタイミングでカウント値を1だけインクリメントする。更に、演算部334は、トリガ端子teTの電圧を「High」レベルから「Low」レベルに切り替えるタイミングで呼気カウンタのカウント値を補助記憶部34cに記録する。
【0060】
図12(A)から(C)は、本変形例に係る検出回路2の出力電圧△Vと、比較器331の出力電圧VCと、演算部334のトリガ端子teTの電圧VTと、演算部334の検出端子teDへの入力電圧VDとの関係の一例を示すタイムチャートである。ここで、基準電圧源332の出力電圧は、電圧閾値△Vthに等しい。検出端子teDへの入力電圧VDは、トリガ端子teTの電圧が「High」レベルである時刻tsから時刻tfの間の期間だけ、電圧△Vの波形に応じた矩形波状の電圧波形を示す。演算部334は、検出端子teDの電圧が「Low」レベルから「High」レベルに切り替わるタイミング(時刻t1、t2、t3)で呼吸カウンタのカウント値を「1」だけインクリメントしていく。その後、演算部334は、トリガ端子teTの電圧を「High」レベルから「Low」レベルに切り替える時刻tfで呼吸カウンタのカウント値「3」を補助記憶部34cに記録するとともに、呼吸カウンタのカウント値を「0」に設定する。
【0061】
本構成によれば、演算部334で実行する処理内容の簡素化を図ることができるので、演算部334での処理負担を軽減することができる。
【0062】
実施の形態に係る呼気センサユニットは、算出部3が、検出回路2から出力される電圧信号をサンプリングして得られるデータをソフトウェア上で処理して予め設定された計測期間内の呼吸回数と呼気に含まれる水分濃度を計測する構成について説明した。これに限らず、例えば積分回路および微分回路を含むハードウェアを組み合わせた構成であってもよい。
【0063】
このようなハードウェアを組み合わせた構成の呼気センサユニットの一例を図13に示す。呼気センサユニットは、比較器431、438と基準電圧源432、439とインバータ433と積分回路435とトランジスタ436と微分回路437とADC33と演算部434とを備える。なお、図13において、実施の形態と同様の構成については同一の符号を付す。比較器431は、図11に示す構成と同様に、プラス入力端子に検出回路2からの電圧信号が入力され、マイナス入力端子に基準電圧源432が出力する基準電圧が入力される。インバータ433は、反転増幅器等から構成され、比較器431の出力電圧が「High」レベルの場合、「Low」レベルの電圧を出力し、比較器431の出力電圧が「Low」レベルの場合、「High」レベルの電圧を出力する。積分回路435は、オペアンプ435aと抵抗R1とコンデンサC1とから構成されている。NPN型トランジスタからなるスイッチング素子436は、コレクタが積分回路435のオペアンプ435aのマイナス入力端子に接続され、エミッタが接地され、ベースがインバータ433の出力端子に接続されている。スイッチング素子436は、検出回路2から出力される電圧△Vが基準電圧よりも低い場合、オン状態となり、このとき、オペアンプ435aのマイナス入力端子への入力は強制的にゼロレベルに設定される。微分回路437は、オペアンプ437aと抵抗R2とコンデンサC2とから構成されている。比較器438は、プラス入力端子に基準電圧源439が出力する基準電圧が入力され、マイナス入力端子に微分回路437から出力される電圧信号が入力される。比較機438は、微分回路437から入力される電圧が基準電圧よりも低い場合、「High」レベルの電圧を演算部434の立ち下がり検出端子teSへ出力する。
【0064】
演算部434は、積分回路435の出力電圧の絶対値|VS|の立ち下がりを検出するための立ち下がり検出端子teSを備える。なお、実施の形態と同様の構成については図2と同一の符号を使って説明する。CPU34aは、インタフェース部34fを介して立ち下がり検出端子teSの電圧を検出する。また、演算部334は、立ち下がり検出端子teDの電圧が「Low」レベルから「High」レベルに切り替わるタイミングで呼吸カウンタのカウント値を「1」だけインクリメントするとともに、積分回路435の出力電圧VSから水分濃度を算出する。
【0065】
図14(A)から(E)は、本変形例に係る検出回路2の出力電圧△Vと、積分回路435の出力電圧の絶対値|VS|と、微分回路437の出力電圧△|VS|との関係の一例を示すタイムチャートである。ここで、基準電圧源332の出力電圧は、電圧閾値△Vthに等しい。電圧△Vが電圧閾値△Vth未満の間、比較器431の出力電圧は「Low」レベル、インバータ433の出力電圧は「High」レベルとなり、トランジスタ436はオン状態で維持される。このとき、オペアンプ435aのマイナス入力端子は接地電位で維持されるので、積分回路435の出力電圧の絶対値|VS|は0Vで維持される。一方、電圧△Vが電圧閾値△Vth以上の間、比較器431の出力電圧は「High」レベル、インバータ433の出力電圧は「Low」レベルとなり、トランジスタ436はオフ状態で維持される。このとき、積分回路435の出力電圧の絶対値|VS|は時間とともに増加して電圧閾値|VSth|以上まで上昇する。その後、電圧△Vが電圧閾値△Vth未満に低下すると、再びトランジスタ436がオフし、積分回路435の出力電圧の絶対値|VS|は電圧閾値|VSth|未満にまで低下する。
【0066】
次に、本変形例に係る演算部34が実行する呼吸回数・水分濃度計測処理について図15を参照しながら説明する。
【0067】
まず、演算部34は、呼吸カウンタのカウント値TCを「0」に設定する(ステップS201)。次に、演算部34は、積分回路345の出力電圧の絶対値|VS|の立ち下がりを検出したか否かを判定する(ステップS202)。具体的には、立ち下がり検出端子teSの電圧が「Low」レベルから「High」レベルに切り替わったか否かを判定する。立ち下がり検出端子teSの電圧は、微分回路437の出力電圧△|VS|が、予め設定された電圧閾値Δ|VSth|よりも大きい間は「Low」レベルで維持され、電圧閾値Δ|VSth|以下になると「High」レベルに設定される。演算部434が、積分回路345の出力電圧の絶対値|VS|の立ち下がりを検出しない場合(ステップS202:No)、そのままステップS205の処理が実行される。一方、積分回路345の出力電圧の絶対値|VS|の立ち下がりを検出すると(ステップS202:Yes)、演算部34は、カウント値TCを「1」だけインクリメントする(ステップS203)。
【0068】
続いて、演算部34は、補助記憶部34cに記憶されたルックアップテーブル342を参照して、立ち下がりを検出したときの積分回路345の出力電圧VSから水分濃度を算出して補助記憶部34cに記録する(ステップS204)。ここでは、演算部34は、まず、直前に積分回路345の出力電圧の絶対値|VS|の立ち下がりを検出した時刻から今回立ち下がりを検出した時刻までの経過時間に比例する比例値を算出する。次に、演算部34は、積分回路345の出力電圧を、算出した比例値で除して得られる値を、検出回路2の出力電圧△Vの平均値として、ルックアップテーブルを参照して水分濃度を算出する。
【0069】
その後、演算部34は、計測期間が終了したか否かを判定し(ステップS205)、計測期間が終了していない場合(ステップS205:No)、再びステップS202の処理を実行する。一方、計測期間が終了した場合(ステップS205:Yes)、演算部34は、呼吸カウンタのカウント値TCを呼吸回数として補助記憶部34cに記録して(ステップS206)、呼吸回数・水分濃度計測処理を終了する。
【0070】
本構成によれば、検出回路2から出力される電圧△Vの積分値の算出を積分回路435と微分回路437とを用いて実行する。これにより、演算部434で実行すべき演算処理量を低減することができるので、演算部434での処理負荷を軽減できる。
【0071】
前述の実施の形態および各変形例では、算出部3がルックアップテーブル342を用いて水分濃度を算出する例について説明した。これに限らず、算出部3が、例えば第1電極12と第2電極13との間の電位差と呼気に含まれる水分濃度との相関関係を表す関数式を用いて水分濃度を算出するものであってもよい。本構成によれば、補助記憶部34cに関数式の形状だけを記憶しておけばよく、補助記憶部34cに記憶しておくべき情報量を低減することができるので、補助記憶部34cの低容量化を図ることができる。
【0072】
以上、本発明の実施の形態および変形例(なお書きに記載したものを含む。以下、同様。)について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態および変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
【0073】
本出願は、2015年4月15日に出願された日本国特許出願特願2015−83283号に基づく。本明細書中に日本国特許出願特願2015−83283号の明細書、特許請求の範囲、及び図面全体を参照として取り込むものとする。
【符号の説明】
【0074】
1,201,501:呼気センサ、2:検出回路、3,303:算出部、4:表示部、11,211:基体、12,212:第1電極、13,213:第2電極、14,214:被覆層、16a,16b:リード線、21:差動増幅器、33:ADC、34,334,434:演算部、34a:CPU、34b:主記憶部、34c:補助記憶部、34d:入力部、34e:出力部、34f:インタフェース部、34g:システムバス、331,431,438:比較器、332,432,439:基準電圧源、333:AND回路、342:ルックアップテーブル、433:インバータ、435:積分回路、435a,437a:オペアンプ、436:トランジスタ、437:微分回路、C1,C2:コンデンサ、R1,R2:抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15