特許第6206636号(P6206636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206636
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】接続部分止水構造及び接続部分止水方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/72 20060101AFI20170925BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H01R4/72
   H01R43/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-19080(P2013-19080)
(22)【出願日】2013年2月4日
(65)【公開番号】特開2014-150008(P2014-150008A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2016年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075959
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 保
(72)【発明者】
【氏名】塩浜 貴宏
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−029102(JP,A)
【文献】 実開平05−031130(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/72
H01R 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一接続部を有する第一部材と、第二接続部を有する第二部材と、熱収縮にて前記第一接続部及び前記第二接続部の接続部分を覆う熱収縮部材とを備え、熱収縮部材は、樹脂成型品で内部空間を有するとともに、該内部空間を、前記接続部分の外形形状である側面視段付き形状に概略合わせた段付きの形状に形成してなり、該段付きの形状の前記内部空間としては、前記熱収縮部材の成型直後で、前記外形形状よりも小さくなる形状に、且つ、前記接続部分に挿入する前で、拡張により前記外形形状よりも一回り大きくなる形状に、且つ、前記接続部分に挿入した後で前記熱収縮部材を前記拡張の前の状態に戻す方向に熱収縮させる際に、前記熱収縮部材の内面をほぼ同じタイミングで前記接続部分の外面に万遍なく密着させる形状に形成してな
ことを特徴とする接続部分止水構造。
【請求項2】
請求項1に記載の接続部分止水構造において、
前記内部空間を形成する前記内面の一部又は全部に接着手段を設ける、及び/又は、前記接続部分の前記外面の一部又は全部に接着手段を設ける
ことを特徴とする接続部分止水構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の接続部分止水構造において、
前記内部空間を形成する前記内面に、前記接続部分に対する当接部を形成する
ことを特徴とする接続部分止水構造。
【請求項4】
第一部材の第一接続部及び第二部材の第二接続部を接続する接続工程と、
該接続工程にて形成された接続部分に対し、該接続部分の外形形状である側面視段付き形状に概略合わせた段付きの内部空間を有する樹脂成型品の熱収縮部材を挿入により被せる第一被せ工程と、
該第一被せ工程に伴い前記内部空間を形成する内面及び前記接続部分の外面を位置合わせする第二被せ工程と、
該第二被せ工程の後に前記熱収縮部材を熱にて収縮させ前記接続部分を覆う熱収縮工程と、
を含み、
前記第一被せ工程では、前記熱収縮部材の成型直後が前記外形形状よりも小さく形成された前記内部空間を拡張にて前記外形形状よりも一回り大きくしてから前記挿入をし、
前記熱収縮工程では、前記拡張の前の状態に戻す方向に前記熱収縮部材を収縮させて、該熱収縮部材の前記内面をほぼ同じタイミングで前記接続部分の前記外面に万遍なく密着させるような状態にする
ことを特徴とする接続部分止水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮部材を用いて接続部分を止水する止水構造及び止水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車を例に挙げると、このエンジンルーム内にはバッテリーが搭載される。バッテリーのプラス電極には、バッテリーターミナルが取り付けられ、このバッテリーターミナルには、スターター用の太物電線や電源取り出し用の太物電線が電気的に接続される。それぞれの太物電線の端末には、導電性を有する圧着端子(ターミナル)が取り付けられ、この圧着端子を介して電気的な接続が行われる(例えば下記特許文献1参照)。
【0003】
圧着端子は、導電性の金属板を加工してなるものであり、電気接触部と電線接続部とを有する。電気接触部は、バッテリーターミナルやスターター等のスタッドボルトに対し締め付け固定されて電気的に接続される。また、電線接続部は、太物電線の端末部分に対し加締められて電気的及び機械的に接続される(電線接続部のワイヤーバレルと太物電線の導体とが電気的に接続され、電線接続部のインシュレーションバレルと太物電線の被覆とが機械的に接続される)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−253223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、圧着端子の電線接続部と太物電線の端末部分との接続部分に対し、外部から水分等が浸入しないように止水するためには、上記接続部分を覆う部材の追加が有効である。接続部分を覆う部材としては、加熱することにより収縮する熱収縮チューブが挙げられる。しかしながら、この熱収縮チューブを用いる場合は、次のような問題点を有する。
【0006】
すなわち、図8(a)に示す如く熱収縮チューブ1は接続部分2よりも大きな内径を有する円筒形状に形成され、また、接続部分2は電気的接続部分3及び機械的接続部分4により外形形状が側面視で段付きとなる形状に形成されることから、このような形状の違いがあるままで図8(b)に示す如く熱収縮チューブ1を収縮させると、熱収縮チューブ1は先端部5の位置に底板6との間の隙間7ができてしまうことになる(形状に応じて収縮率が変化するわけでないことから、隙間7ができてしまう)。そのため水分等の浸入が起こる虞があり、従って、十分な止水をすることができないという問題点を有する。
【0007】
また、熱収縮チューブ1は上記の如く大きな内径を有する円筒形状に形成されることから、図8(a)の熱収縮させる前の状態においては位置決めがし難く、ずれた状態で接続部分2が覆われてしまうと、この場合も十分な止水をすることができないという問題点を有する。尚、引用符号8は電線、9は圧着端子を示す。
【0008】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、止水性がよく、また、位置決めもし易くなる接続部分止水構造及び接続部分止水方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明の接続部分止水構造は、第一接続部を有する第一部材と、第二接続部を有する第二部材と、熱収縮にて前記第一接続部及び前記第二接続部の接続部分を覆う熱収縮部材とを備え、熱収縮部材は、樹脂成型品で内部空間を有するとともに、該内部空間を、前記接続部分の外形形状である側面視段付き形状に概略合わせた段付きの形状に形成してなり、該段付きの形状の前記内部空間としては、前記熱収縮部材の成型直後で、前記外形形状よりも小さくなる形状に、且つ、前記接続部分に挿入する前で、拡張により前記外形形状よりも一回り大きくなる形状に、且つ、前記接続部分に挿入した後で前記熱収縮部材を前記拡張の前の状態に戻す方向に熱収縮させる際に、前記熱収縮部材の内面をほぼ同じタイミングで前記接続部分の外面に万遍なく密着させる形状に形成してなることを特徴とする。
【0010】
このような特徴を有する本発明によれば、熱収縮部材を加熱して熱収縮させると、熱収縮部材は所定の収縮率で収縮し接続部分に密着する。熱収縮部材は接続部分の外形形状に概略合わせた内部空間を有することから、熱収縮部材の内面が接続部分の外面に万遍なく密着する。
【0011】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の接続部分止水構造において、前記内部空間を形成する前記内面の一部又は全部に接着手段を設ける、及び/又は、前記接続部分の前記外面の一部又は全部に接着手段を設けることを特徴とする。
【0012】
このような特徴を有する本発明によれば、熱収縮部材を加熱して熱収縮させると、熱収縮部材は接続部分に密着する。この時、熱収縮部材と接続部分は接着手段により接着状態にもなる。
【0013】
請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の接続部分止水構造において、前記内部空間を形成する前記内面に、前記接続部分に対する当接部を形成することを特徴とする。
【0014】
このような特徴を有する本発明によれば、当接部を接続部分に当接させるまで熱収縮部材の挿入を行うと、熱収縮部材の接続部分に対する位置決めが完了する。
【0015】
また、上記課題を解決するためになされた請求項4に記載の本発明の接続部分止水方法は、第一部材の第一接続部及び第二部材の第二接続部を接続する接続工程と、該接続工程にて形成された接続部分に対し、該接続部分の外形形状である側面視段付き形状に概略合わせた段付きの内部空間を有する樹脂成型品の熱収縮部材を挿入により被せる第一被せ工程と、該第一被せ工程に伴い前記内部空間を形成する内面及び前記接続部分の外面を位置合わせする第二被せ工程と、該第二被せ工程の後に前記熱収縮部材を熱にて収縮させ前記接続部分を覆う熱収縮工程と、を含み、前記第一被せ工程では、前記熱収縮部材の成型直後が前記外形形状よりも小さく形成された前記内部空間を拡張にて前記外形形状よりも一回り大きくしてから前記挿入をし、前記熱収縮工程では、前記拡張の前の状態に戻す方向に前記熱収縮部材を収縮させて、該熱収縮部材の前記内面をほぼ同じタイミングで前記接続部分の前記外面に万遍なく密着させるような状態にすることを特徴とする。
【0016】
このような特徴を有する本発明によれば、接続部分に対し熱収縮部材を被せ、この後に熱収縮部材を加熱して収縮させると、接続部分は熱収縮部材により覆われる。熱収縮部材は接続部分の外形形状に概略合わせた内部空間を有することから、接続部分の外面に対し熱収縮部材の内面が万遍なく密着する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載された本発明によれば、接続部分の外形形状に概略合わせた内部空間を有する熱収縮部材を備えることから、接続部分の外面に対し熱収縮部材の内面を万遍なく密着させることができる。これにより、水分等の浸入が起きてしまうような隙間の発生を防止することができる。従って、本発明によれば、止水性のよい接続部分止水構造を提供することができるという効果を奏する。
【0018】
請求項2に記載された本発明によれば、接着手段を設けて接着状態にすることにより、接続部分を熱収縮部材で覆った状態に維持することができる。また、接着手段により、微少な隙間までも埋めることができる。従って、本発明によれば、止水性を向上させることができるという効果を奏する。
【0019】
請求項3に記載された本発明によれば、当接部を接続部分に当接させるまで熱収縮前の熱収縮部材を挿入することで、接続部分に対する熱収縮部材の位置決めをすることができる。これにより、ずれた状態で接続部分を覆ってしまうことを防止することができる。従って、本発明によれば、位置決めをすることができるという効果や、止水性を向上させることができるという効果を奏する。
【0020】
請求項4に記載された本発明によれば、止水性のよい接続部分止水方法を提供することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、複雑な工程を経る必要がなく、そのため作業性よく接続部分を止水することができるという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の接続部分止水構造及び接続部分止水方法を採用してなる電線付き圧着端子の斜視図である。
図2】止水前の電線付き圧着端子の斜視図である。
図3】ブーツを成型した状態の図である。
図4】ブーツを拡張した状態の図である。
図5】ブーツを接続部分に被せた状態の図である。
図6】ブーツを加熱して収縮させた状態の図である。
図7】ブーツの先端部に隙間がない状態の斜視図である。
図8】従来例の電線付き圧着端子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
接続部分を止水するにあたり、接続部分の外形形状に概略合わせた内部空間を有する熱収縮部材を用いる。接続部分としては、所定長さで端末に導体を露出させた電線と、この電線端末に接続される圧着端子との接続部分が挙げられる。
【実施例】
【0023】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。図1は本発明の接続部分止水構造及び接続部分止水方法を採用してなる電線付き圧着端子の斜視図である。また、図2は止水前の電線付き圧着端子の斜視図、図3はブーツを成型した状態の図、図4はブーツを拡張した状態の図、図5はブーツを接続部分に被せた状態の図、図6はブーツを加熱して収縮させた状態の図、図7はブーツの先端部に隙間がない状態の斜視図である。
【0024】
図1において、引用符号21は本発明の接続部分止水構造及び接続部分止水方法を採用してなる電線付き圧着端子を示す。この電線付き圧着端子21は、太物電線22(第一部材)と、圧着端子23(第二部材)と、これらの接続部分24を水密に覆うブーツ25(熱収縮部材)とを備えて構成される。本実施例の電線付き圧着端子21は、自動車のスターター等の電気機器に接続されるものとする(一例であるものとする)。
【0025】
図1及び図2において、太物電線22は、導体26(第一接続部)と、この導体26を被覆する絶縁体27とを備えて構成される。太物電線22は、電気的な接続に必要な長さを有するように形成される。太物電線22の端末は、所定長さで導体26が露出するように加工される。
【0026】
導体26は、銅や銅合金、或いはアルミニウムやアルミニウム合金により製造される。導体26に関しては、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面矩形又は丸形となる棒状の導体構造(例えば平角単心や丸単心となる導体構造であり、この場合、電線自体も棒状となる)のもののいずれであってもよいものとする。本実施例においては、アルミニウム製又はアルミニウム合金製のものが採用される。以上のような導体26の外面には、絶縁性の樹脂材料からなる絶縁体27が押出成型される。
【0027】
圧着端子23は、銅や銅合金からなる金属板をプレス加工することにより製造される。圧着端子23は、雄型のものであって、先端側が平面視略U字状となる電気接触部28と、この電気接触部28の後端に連成される電線接続部29(第二接続部)とを有する。電気接触部28には、図示しないスタッドボルトを挿通するための円形の貫通孔30が形成される。
【0028】
電線接続部29は、底板31の部分を介して電気接触部28に連成される。電線接続部29には、公知形状のワイヤーバレル32及びインシュレーションバレル33が一体に形成される。ワイヤーバレル32は、太物電線22の導体26を電気的に接続する部分として形成される。また、インシュレーションバレル33は、太物電線22の絶縁体27を機械的に接続する部分として形成される。ワイヤーバレル32及びインシュレーションバレル33は、加締め金型により圧縮されて太物電線22の端末に加締めつけられる(特許請求の範囲に記載された「第一部材の第一接続部及び第二部材の第二接続部を接続する接続工程」に相当)。
【0029】
加締めにより形成される接続部分24は、インシュレーションバレル33の部分からワイヤーバレル32の部分にかけて一段下がり、また、ワイヤーバレル32の部分から底板31の部分にかけて一段下がるような側面視段付き形状に外形が形成される。引用符号34及び35は段部を示す。尚、ワイヤーバレル32の部分における引用符号36はベルマウスを示す。
【0030】
本実施例は、上記説明から分かるように、異種金属による電気的な接続になることから、接続部分24に関し外部から水分等が浸入しないように止水する必要がある。
【0031】
ブーツ25は、上記の如く太物電線22と圧着端子23との接続部分24を水密に覆うための部材であって、加熱をすると所定の収縮率で熱収縮する材質からなる。本実施例においては、ポリオレフィンからなる(一例であるものとする)。ブーツ25は、熱収縮チューブであるとも言える。ブーツ25は、接続部分24を覆ってこれに密着するのは勿論のこと、底板31及び絶縁体27の部分にまで跨って水密に覆うことができるものとする。
【0032】
図3において、ブーツ25は、インジェクション成型によりなる樹脂成型品であって、図からも分かるように、従来例のような大きな内径を有する円筒形状の熱収縮チューブ1(図8参照)とは異なる形状に形成される。具体的には、接続部分24(図2参照)の外形形状に概略合うように形成される。すなわち、非円筒形となる形状に形成される。成型直後のブーツ25は、接続部分24の外形形状よりも小さめの形状に形成される。
【0033】
ブーツ25に関し、引用符号37はブーツ25の外面を示す。また、引用符号38はブーツ25の内面、39は内面38により区画形成される内部空間、40はブーツ25の前端に形成される前端開口部、41はブーツ25の後端に形成される後端開口部、42は底板31(図2参照)の部分を覆う前側密着部、43は前側の段部34(図2参照)の部分を覆う前段密着部、44はワイヤーバレル32(図2参照)の部分を覆う中間密着部、45は後側の段部35(図2参照)の部分を覆う後段密着部、46はインシュレーションバレル33(図2参照)の部分を覆う後側密着部をそれぞれ示す。さらに、引用符号47は前段密着部43の内面38に形成される前段当接部(当接部)、48は後段密着部45の内面38に形成される後段当接部(当接部)をそれぞれ示す。
【0034】
尚、特に図示しないが、内面38には接着手段も設けられる(接着手段に関しては後述する)。
【0035】
図4において、ブーツ25は、この内部空間39が接続部分24(図2参照)の外形形状よりも例えば一回り大きくなるように形成される。この形成は、図示しない金型を差し込んで拡張することにより行われる。金型は、後端開口部41から内部空間39に差し込まれ、各部分を拡張することができる形状に形成される。
【0036】
図4及び図5において、図示しない金型にて拡張されたブーツ25は、圧着端子23に挿入される。具体的には、ブーツ25の後端開口部41から内部空間39へ、そして、前端開口部40へと電気接触部28が通過するように圧着端子23に挿入される。また、接続部分24が後端開口部41から内部空間39へと位置するように挿入される。
【0037】
ブーツ25は、この内部空間39が接続部分24の外形形状よりも一回り大きくなるように形成されることから、挿入はスムーズである。ブーツ25の挿入は、ブーツ25の前段当接部47及び/又は後段当接部48が接続部分24の段部34及び/又は段部35に当接するまで行われる。前段当接部47及び/又は後段当接部48が段部34及び/又は段部35に当接すると、ブーツ25は接続部分24に対して位置決めされる。この時、ブーツ25の内面38は、接続部分24の外面に対向した状態に位置合わせされる。ブーツ25は、接続部分24に対し確実に被せられた状態に配置される。
【0038】
尚、図5の状態までは、特許請求の範囲に記載された「熱収縮部材を被せる第一被せ工程と、この第一被せ工程に伴い内面38及び接続部分24の外面を位置合わせする第二被せ工程」が行われたことになる。
【0039】
図5ないし図7において、接続部分24に対しブーツ25を被せた後にブーツ25の全体を例えば図示しないヒーターにて加熱し収縮させると、接続部分24はブーツ25により覆われる。ブーツ25は接続部分24の外形形状に概略合わせた内部空間39を有することから、接続部分24の外面に対しブーツ25の内面38(図4参照)が万遍なく密着する(側面視段付き形状の接続部分24であっても、ほぼ同じタイミングでブーツ25の内面38が接続部分24の各部分に密着する)。
【0040】
また、ブーツ25は、図7に示す如くこの前端に隙間が生じないように底板31にも密着する(図示しないが、後端も隙間は生じない)。
【0041】
尚、図6及び図7の状態までは、特許請求の範囲に記載された「ブーツ25を熱にて収縮させて接続部分24を覆う熱収縮工程」が行われたことになる。
【0042】
ここで、図示しない接着手段に関し説明をする。接着手段は、接続部分24とブーツ25とを接着状態にするための例えば公知の接着剤であって、内面38の一部又は全部に、及び/又は、接続部分24の外面の一部又は全部に設けられる(接着手段を設けることは任意であるものとする)。接着剤は、ブーツ25を熱収縮させる際に受ける熱を利用することができる。
【0043】
以上、図1ないし図7を参照しながら説明してきたように、電線付き圧着端子21は、接続部分24の外形形状に概略合わせた内部空間39を有するブーツ25を備えることから、接続部分24の外面に対しブーツ25の内面38を万遍なく密着させることができる。これにより、水分等の浸入が起きてしまうような隙間の発生を防止することができる(電位差腐食は生じない)。
【0044】
また、電線付き圧着端子21は、接着手段を設けて接着状態にすることから、接続部分24をブーツ25で覆った状態に維持することができ、さらには、微少な隙間までも埋めることができる。
【0045】
また、電線付き圧着端子21は、ブーツ25の前段当接部47及び/又は後段当接部48を接続部分24の段部34及び/又は段部35に当接させるまで熱収縮前のブーツ25を挿入するだけでよいことから、接続部分24に対する位置決めを容易に行うことができる。これにより、ずれた状態で接続部分24を覆ってしまうことを防止することができる。
【0046】
従って、電線付き圧着端子21は、止水性がよく、また、位置決めもし易くなる接続部分止水構造を有すると言える。
【0047】
ここで、上記構成及び構造の場合での電線付き圧着端子21の特徴をまとめてみると次のようになる。
【0048】
(1)導体26を有する太物電線22と、電線接続部29を有する圧着端子23と、熱収縮にて導体26及び電線接続部29の接続部分24を覆うブーツ25とを備え、このブーツ25は、樹脂成型品で内部空間39を有するとともに、この内部空間39を、接続部分24の外形形状である側面視段付き形状に概略合わせた段付きの形状に形成してなり、段付きの形状の内部空間39としては、ブーツ25の成型直後で、前記外形形状よりも小さくなる形状に、且つ、接続部分24に挿入する前で、拡張により前記外形形状よりも一回り大きくなる形状に、且つ、接続部分24に挿入した後でブーツ25を前記拡張の前の状態に戻す方向に熱収縮させる際に、ブーツ25の内面38をほぼ同じタイミングで接続部分24の外面に万遍なく密着させる形状に形成する
ことを特徴とする電線付き圧着端子21。
【0049】
(2)上記(1)の電線付き圧着端子21において、
内部空間39を形成する内面38の一部又は全部に接着手段を設ける、及び/又は、接続部分24の外面の一部又は全部に接着手段を設ける
ことを特徴とする電線付き圧着端子21。
【0050】
(3)上記(1)〜(2)の電線付き圧着端子21において、
内部空間39を形成する内面38に、接続部分24に対する前段当接部47及び/又は後段当接部48を形成する
ことを特徴とする電線付き圧着端子21。
【0051】
また、上記構成及び構造の場合での電線付き圧着端子21の製造方法の特徴をまとめてみると次のようになる。
【0052】
(4)太物電線22の導体26及び圧着端子23の電線接続部29を接続する接続工程と、
接続工程にて形成された接続部分24に対し、この接続部分24の外形形状である側面視段付き形状に概略合わせた段付きの内部空間39を有する樹脂成型品のブーツ25を挿入により被せる第一被せ工程と、
第一被せ工程に伴い内部空間39を形成する内面38及び接続部分24の外面を位置合わせする第二被せ工程と、
第二被せ工程の後にブーツ25を熱にて収縮させ接続部分24を覆う熱収縮工程と、
を含み、
前記第一被せ工程では、前記ブーツ25の成型直後が前記外形形状よりも小さく形成された内部空間39を拡張にて前記外形形状よりも一回り大きくしてから前記挿入をし、
熱収縮工程では、前記拡張の前の状態に戻す方向にブーツ25を収縮させて、このブーツ25の内面38をほぼ同じタイミングで接続部分24の前記外面に万遍なく密着させるような状態にする
ことを特徴とする電線付き圧着端子21の製造方法。
【0053】
(5)上記(4)の電線付き圧着端子21の製造方法において、
内部空間39を形成する内面38の一部又は全部に接着手段を設けた上で、及び/又は、接続部分24の外面の一部又は全部に接着手段を設けた上で、第一被せ工程を行う
ことを特徴とする電線付き圧着端子21の製造方法。
【0054】
(6)上記(4)〜(5)の電線付き圧着端子21の製造方法において、
ブーツ25の内面38に形成された前段当接部47及び/又は後段当接部48を接続分24に当接させるまでブーツ25を挿入することにより、第一被せ工程と第二被せ工程とを行う
ことを特徴とする電線付き圧着端子21の製造方法。
【0055】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【0056】
尚、上記説明では、電線付き圧着端子21が自動車のスターター等の電気機器に接続されるものとしたが、ハイブリッド自動車や電気自動車のバッテリー及びインバーターに、又は、インバーター及びモーターに接続されるものとしてもよいものとする。或いは、自動車分野以外の電気機器に接続されるものとしてもよいものとする。
【0057】
また、上記説明では、太物電線22と圧着端子23とが圧着により接続されるものとしたが、これに限らず圧接や溶接等で接続されるものとしてもよいものとする。
【符号の説明】
【0058】
21…電線付き圧着端子、 22…太物電線(第一部材)、 23…圧着端子(第二部材)、 24…接続部分、 25…ブーツ(熱収縮部材)、 26…導体(第一接続部)、 27…絶縁体、 28…電気接触部、 29…電線接続部(第二接続部)、 30…貫通孔、 31…底板、 32…ワイヤーバレル、 33…インシュレーションバレル、 34、35…段部、 36…ベルマウス、 37…外面、 38…内面、 39…内部空間、 40…前端開口部、 41…後端開口部、 42…前側密着部、 43…前段密着部、 44…中間密着部、 45…後段密着部、 46…後側密着部、 47…前段当接部(当接部)、 48…後段当接部(当接部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8