【実施例】
【0023】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。
図1は本発明の接続部分止水構造及び接続部分止水方法を採用してなる電線付き圧着端子の斜視図である。また、
図2は止水前の電線付き圧着端子の斜視図、
図3はブーツを成型した状態の図、
図4はブーツを拡張した状態の図、
図5はブーツを接続部分に被せた状態の図、
図6はブーツを加熱して収縮させた状態の図、
図7はブーツの先端部に隙間がない状態の斜視図である。
【0024】
図1において、引用符号21は本発明の接続部分止水構造及び接続部分止水方法を採用してなる電線付き圧着端子を示す。この電線付き圧着端子21は、太物電線22(第一部材)と、圧着端子23(第二部材)と、これらの接続部分24を水密に覆うブーツ25(熱収縮部材)とを備えて構成される。本実施例の電線付き圧着端子21は、自動車のスターター等の電気機器に接続されるものとする(一例であるものとする)。
【0025】
図1及び
図2において、太物電線22は、導体26(第一接続部)と、この導体26を被覆する絶縁体27とを備えて構成される。太物電線22は、電気的な接続に必要な長さを有するように形成される。太物電線22の端末は、所定長さで導体26が露出するように加工される。
【0026】
導体26は、銅や銅合金、或いはアルミニウムやアルミニウム合金により製造される。導体26に関しては、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面矩形又は丸形となる棒状の導体構造(例えば平角単心や丸単心となる導体構造であり、この場合、電線自体も棒状となる)のもののいずれであってもよいものとする。本実施例においては、アルミニウム製又はアルミニウム合金製のものが採用される。以上のような導体26の外面には、絶縁性の樹脂材料からなる絶縁体27が押出成型される。
【0027】
圧着端子23は、銅や銅合金からなる金属板をプレス加工することにより製造される。圧着端子23は、雄型のものであって、先端側が平面視略U字状となる電気接触部28と、この電気接触部28の後端に連成される電線接続部29(第二接続部)とを有する。電気接触部28には、図示しないスタッドボルトを挿通するための円形の貫通孔30が形成される。
【0028】
電線接続部29は、底板31の部分を介して電気接触部28に連成される。電線接続部29には、公知形状のワイヤーバレル32及びインシュレーションバレル33が一体に形成される。ワイヤーバレル32は、太物電線22の導体26を電気的に接続する部分として形成される。また、インシュレーションバレル33は、太物電線22の絶縁体27を機械的に接続する部分として形成される。ワイヤーバレル32及びインシュレーションバレル33は、加締め金型により圧縮されて太物電線22の端末に加締めつけられる(特許請求の範囲に記載された「第一部材の第一接続部及び第二部材の第二接続部を接続する接続工程」に相当)。
【0029】
加締めにより形成される接続部分24は、インシュレーションバレル33の部分からワイヤーバレル32の部分にかけて一段下がり、また、ワイヤーバレル32の部分から底板31の部分にかけて一段下がるような側面視段付き形状に外形が形成される。引用符号34及び35は段部を示す。尚、ワイヤーバレル32の部分における引用符号36はベルマウスを示す。
【0030】
本実施例は、上記説明から分かるように、異種金属による電気的な接続になることから、接続部分24に関し外部から水分等が浸入しないように止水する必要がある。
【0031】
ブーツ25は、上記の如く太物電線22と圧着端子23との接続部分24を水密に覆うための部材であって、加熱をすると所定の収縮率で熱収縮する材質からなる。本実施例においては、ポリオレフィンからなる(一例であるものとする)。ブーツ25は、熱収縮チューブであるとも言える。ブーツ25は、接続部分24を覆ってこれに密着するのは勿論のこと、底板31及び絶縁体27の部分にまで跨って水密に覆うことができるものとする。
【0032】
図3において、ブーツ25は、インジェクション成型によりなる樹脂成型品であって、図からも分かるように、従来例のような大きな内径を有する円筒形状の熱収縮チューブ1(
図8参照)とは異なる形状に形成される。具体的には、接続部分24(
図2参照)の外形形状に概略合うように形成される。すなわち、非円筒形となる形状に形成される。成型直後のブーツ25は、接続部分24の外形形状よりも小さめの形状に形成される。
【0033】
ブーツ25に関し、引用符号37はブーツ25の外面を示す。また、引用符号38はブーツ25の内面、39は内面38により区画形成される内部空間、40はブーツ25の前端に形成される前端開口部、41はブーツ25の後端に形成される後端開口部、42は底板31(
図2参照)の部分を覆う前側密着部、43は前側の段部34(
図2参照)の部分を覆う前段密着部、44はワイヤーバレル32(
図2参照)の部分を覆う中間密着部、45は後側の段部35(
図2参照)の部分を覆う後段密着部、46はインシュレーションバレル33(
図2参照)の部分を覆う後側密着部をそれぞれ示す。さらに、引用符号47は前段密着部43の内面38に形成される前段当接部(当接部)、48は後段密着部45の内面38に形成される後段当接部(当接部)をそれぞれ示す。
【0034】
尚、特に図示しないが、内面38には接着手段も設けられる(接着手段に関しては後述する)。
【0035】
図4において、ブーツ25は、この内部空間39が接続部分24(
図2参照)の外形形状よりも例えば一回り大きくなるように形成される。この形成は、図示しない金型を差し込んで拡張することにより行われる。金型は、後端開口部41から内部空間39に差し込まれ、各部分を拡張することができる形状に形成される。
【0036】
図4及び
図5において、図示しない金型にて拡張されたブーツ25は、圧着端子23に挿入される。具体的には、ブーツ25の後端開口部41から内部空間39へ、そして、前端開口部40へと電気接触部28が通過するように圧着端子23に挿入される。また、接続部分24が後端開口部41から内部空間39へと位置するように挿入される。
【0037】
ブーツ25は、この内部空間39が接続部分24の外形形状よりも一回り大きくなるように形成されることから、挿入はスムーズである。ブーツ25の挿入は、ブーツ25の前段当接部47及び/又は後段当接部48が接続部分24の段部34及び/又は段部35に当接するまで行われる。前段当接部47及び/又は後段当接部48が段部34及び/又は段部35に当接すると、ブーツ25は接続部分24に対して位置決めされる。この時、ブーツ25の内面38は、接続部分24の外面に対向した状態に位置合わせされる。ブーツ25は、接続部分24に対し確実に被せられた状態に配置される。
【0038】
尚、
図5の状態までは、特許請求の範囲に記載された「熱収縮部材を被せる第一被せ工程と、この第一被せ工程に伴い内面38及び接続部分24の外面を位置合わせする第二被せ工程」が行われたことになる。
【0039】
図5ないし
図7において、接続部分24に対しブーツ25を被せた後にブーツ25の全体を例えば図示しないヒーターにて加熱し収縮させると、接続部分24はブーツ25により覆われる。ブーツ25は接続部分24の外形形状に概略合わせた内部空間39を有することから、接続部分24の外面に対しブーツ25の内面38(
図4参照)が万遍なく密着する(側面視段付き形状の接続部分24であっても、ほぼ同じタイミングでブーツ25の内面38が接続部分24の各部分に密着する)。
【0040】
また、ブーツ25は、
図7に示す如くこの前端に隙間が生じないように底板31にも密着する(図示しないが、後端も隙間は生じない)。
【0041】
尚、
図6及び
図7の状態までは、特許請求の範囲に記載された「ブーツ25を熱にて収縮させて接続部分24を覆う熱収縮工程」が行われたことになる。
【0042】
ここで、図示しない接着手段に関し説明をする。接着手段は、接続部分24とブーツ25とを接着状態にするための例えば公知の接着剤であって、内面38の一部又は全部に、及び/又は、接続部分24の外面の一部又は全部に設けられる(接着手段を設けることは任意であるものとする)
。接着剤は、ブーツ25を熱収縮させる際に受ける熱を利用することができる。
【0043】
以上、
図1ないし
図7を参照しながら説明してきたように、電線付き圧着端子21は、接続部分24の外形形状に概略合わせた内部空間39を有するブーツ25を備えることから、接続部分24の外面に対しブーツ25の内面38を万遍なく密着させることができる。これにより、水分等の浸入が起きてしまうような隙間の発生を防止することができる(電位差腐食は生じない)。
【0044】
また、電線付き圧着端子21は、接着手段を設けて接着状態にすることから、接続部分24をブーツ25で覆った状態に維持することができ、さらには、微少な隙間までも埋めることができる。
【0045】
また、電線付き圧着端子21は、ブーツ25の前段当接部47及び/又は後段当接部48を接続部分24の段部34及び/又は段部35に当接させるまで熱収縮前のブーツ25を挿入するだけでよいことから、接続部分24に対する位置決めを容易に行うことができる。これにより、ずれた状態で接続部分24を覆ってしまうことを防止することができる。
【0046】
従って、電線付き圧着端子21は、止水性がよく、また、位置決めもし易くなる接続部分止水構造を有すると言える。
【0047】
ここで、上記構成及び構造の場合での電線付き圧着端子21の特徴をまとめてみると次のようになる。
【0048】
(1)導体26を有する太物電線22と、電線接続部29を有する圧着端子23と、熱収縮にて導体26及び電線接続部29の接続部分24を覆うブーツ25とを備え、
このブーツ25
は、樹脂成型品で内部空間39を有するとともに、この内部空間39を、接続部分24の外形形状である側面視段付き形状に概略合わせた段付きの
形状に形成し
てなり、段付きの形状の内部空間39としては、ブーツ25
の成型直後で、前記外形形状よりも小さくなる
形状に、且つ、接続部分24に挿入する前で、拡張に
より前記外形形状よりも一回り大きくなる
形状に、且つ、接続部分24に挿入した後でブーツ25を前記拡張の前の状態に戻す方向に熱収縮させる際に、ブーツ25の内面38をほぼ同じタイミングで接続部分24の外面に万遍なく密着させる形状に形成する
ことを特徴とする電線付き圧着端子21。
【0049】
(2)上記(1)の電線付き圧着端子21において、
内部空間39を形成する内面38の一部又は全部に接着手段を設ける、及び/又は、接続部分24の外面の一部又は全部に接着手段を設ける
ことを特徴とする電線付き圧着端子21。
【0050】
(3)上記(1)〜(2)の電線付き圧着端子21において、
内部空間39を形成する内面38に、接続部分24に対する前段当接部47及び/又は後段当接部48を形成する
ことを特徴とする電線付き圧着端子21。
【0051】
また、上記構成及び構造の場合での電線付き圧着端子21の製造方法の特徴をまとめてみると次のようになる。
【0052】
(4)太物電線22の導体26及び圧着端子23の電線接続部29を接続する接続工程と、
接続工程にて形成された接続部分24に対し、この接続部分24の外形形状である側面視段付き形状に概略合わせた段付きの内部空間39を有する
樹脂成型品のブーツ25を挿入により被せる第一被せ工程と、
第一被せ工程に伴い内部空間39を形成する内面38及び接続部分24の外面を位置合わせする第二被せ工程と、
第二被せ工程の後にブーツ25を熱にて収縮させ接続部分24を覆う熱収縮工程と、
を含み、
前記第一被せ工程では、
前記ブーツ25の成型直後が前記外形形状よりも小さく形成された内部空間39を
、拡張にて前記外形形状よりも一回り大きくして
から前記挿入を
し、
熱収縮工程では、前記拡張の前の状態に戻す方向にブーツ25を収縮させて、このブーツ25の内面38をほぼ同じタイミングで接続部分24の前記外面に万遍なく密着させるような状態にする
ことを特徴とする電線付き圧着端子21の製造方法。
【0053】
(5)上記(4)の電線付き圧着端子21の製造方法において、
内部空間39を形成する内面38の一部又は全部に接着手段を設けた上で、及び/又は、接続部分24の外面の一部又は全部に接着手段を設けた上で、第一被せ工程を行う
ことを特徴とする電線付き圧着端子21の製造方法。
【0054】
(6)上記(4)〜(5)の電線付き圧着端子21の製造方法において、
ブーツ25の内面38に形成された前段当接部47及び/又は後段当接部48を接続分24に当接させるまでブーツ25を挿入することにより、第一被せ工程と第二被せ工程とを行う
ことを特徴とする電線付き圧着端子21の製造方法。
【0055】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【0056】
尚、上記説明では、電線付き圧着端子21が自動車のスターター等の電気機器に接続されるものとしたが、ハイブリッド自動車や電気自動車のバッテリー及びインバーターに、又は、インバーター及びモーターに接続されるものとしてもよいものとする。或いは、自動車分野以外の電気機器に接続されるものとしてもよいものとする。
【0057】
また、上記説明では、太物電線22と圧着端子23とが圧着により接続されるものとしたが、これに限らず圧接や溶接等で接続されるものとしてもよいものとする。