(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の燃焼器ノズルでは、前述したように、第一筒及びノズルチップの外周側と第二筒の内周側との間が、この間の先端側に配置されているスペーサにより保持されていている。このため、この燃焼器ノズルでは、第一筒の外周側と第二筒の内周側との間であって、第二筒の基端部側の間隔を安定保持できず、第一筒の外周側と第二筒の内周側との間に流入する冷却空気の周方向における流量バラツキが生じる。言い換えると、冷却ガス流路の上流側で、冷却空気の周方向における流量バラツキが生じる。よって、この燃焼器ノズルでは、第二筒の先端部における周方向の一部やノズルチップの一部が十分に冷却されず、これらが熱損傷するおそれがある、という課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、燃焼器ノズルの熱損傷を抑えることができるチップホルダ、これを備える燃焼器ノズル、この燃焼器ノズルを備える燃焼器、及び燃焼器ノズルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための発明に係る一態様としての燃焼器ノズルのチップホルダは、 軸線を基準にして筒状を成し、内周側に燃料が流れる燃料流路が形成され、軸方向の一方側の先端部に該燃料を噴出するノズルチップが接続される内筒と、前記軸線を基準にして筒状を成し、内周側と前記内筒の外周側との間に冷却ガスが流れる冷却ガス流路を形成し、前記軸方向の前記一方側の先端部に前記軸線を基準にして筒状を成すスリーブが接続される外筒と、前記内筒の外周側と前記外筒の内周側との間
であって前記冷却ガス流路における前記スリーブよりも上流側で、前記軸線を基準にした周方向に間隔をあけて複数配置され、前記内筒に対して前記外筒を支えるリブと、を備えていることを特徴とする。
【0009】
当該チップホルダでは、外筒及びスリーブの内周側に冷却ガス流路が形成される。この冷却ガス流路で上流側(軸方向の他方側)を形成する外筒は、周方向に間隔をあけて配置されている複数のリブにより、内筒との間隔を保持されて支えられている。このため、当該チップホルダでは、冷却ガス流路の上流側で、冷却ガスの周方向における流量バラツキを抑えることができる。よって、当該チップホルダでは、チップホルダにおける外筒の先端部に接続されるスリーブの内周側に供給される冷却ガスの周方向における流量バラツキが抑えられ、スリーブ等の熱損傷を抑えることができる。
【0010】
また、当該チップホルダは、火炎や燃焼ガスに晒されるおそれがなく、冷却ガス流路の下流側部分を形成するスリーブと別部品であるため、耐熱性の高い材料で形成する必要がなく、製造コストを抑えることができる。
【0011】
上記課題を解決するための発明に係る一態様としての燃焼器ノズルは、
前記チップホルダと、前記チップホルダにおける前記内筒の前記先端部に接続されている前記ノズルチップと、前記軸線を基準にして筒状を成し、前記ノズルチップの外周側を覆うカバーリング筒部を有するカバーリングと、前記軸線を基準にして筒状を成し、前記軸方向の前記一方側における内周側と前記カバーリング筒部の外周側との間に、前記チップホルダの前記冷却ガス流路を流れてきた前記冷却ガスが流れる冷却ガス流路を形成し、前記軸方向の前記一方側と反対側の基端部が前記チップホルダの前記外筒に接続されている前記スリーブと、前記カバーリング筒部の外周側と前記スリーブの内周側との間に、前記周方向に間隔をあけて複数配置され、前記カバーリング筒部の外周側と前記スリーブの内周側との間隔を保持するスペーサと、を備えていることを特徴とする。
【0012】
当該燃焼器ノズルでは、チップホルダの外筒及びスリーブの内周側に冷却ガス流路が形成される。この冷却ガス流路で下流側(軸方向の一方側)を形成するスリーブは、周方向に間隔をあけて配置されている複数のスペーサにより、カバーリング筒部との間隔を保持されて支えられている。このため、当該燃焼器ノズルでは、冷却ガス流路の下流側で、冷却ガスの周方向における流量バラツキを抑えることができる。よって、当該燃焼器ノズルでは、スリーブの内周側を流れる冷却ガスの周方向における流量バラツキが抑えられ、スリーブ等の熱損傷を抑えることができる。
【0013】
また、燃焼器ノズルのスリーブは、火炎や燃焼ガスに晒されるおそれがあるが、冷却ガス流路の上流側部分を形成するチップホルダと別部品であるため、耐熱性の高い材料で形成することができる。よって、当該燃焼器ノズルでは、この観点からも、スリーブ等の熱損傷を抑えることができる。
【0014】
ここで、前記燃焼器ノズルにおいて、複数の前記スペーサのそれぞれは、軸方向視で、前記チップホルダの複数の前記リブのうちのいずれかのリブと少なくとも一部が重なっていてもよい。
【0015】
当該燃焼器ノズルでは、チップホルダの複数のリブの下流側に冷却ガス流れのウェイクが形成される。このため、リブの下流側での冷却ガスの下流側へ向かう流速が低下する。一方、周方向で隣り合っている2つのリブ間の下流側では冷却ガスの流速は低下しない。また、各スペーサの下流側にも、ウェイクが形成される。このため、条件によって火炎の一部がスペーサに向って逆流する。しかしながら、当該燃焼器ノズルでは、前述したように、複数のスペーサのそれぞれは、軸方向視で、チップホルダの複数のリブのうちのいずれかのリブと少なくとも一部が重なっている。このため、上流側のリブの存在により、上流側からスペーサに向って流れる冷却ガスの流速が遅くなり、スペーサの下流側に形成されるウェイクを小さくすることができる。この結果、当該燃焼器ノズルでは、スペーサに向う火炎の逆流を抑えることができる。よって、当該燃焼器ノズルでは、スペーサやスリーブ等の熱損傷を抑えることができる。
【0016】
また、以上のいずれかの前記燃焼器ノズルにおいて、前記ノズルチップは、前記軸線を基準にして筒状を成し、前記軸方向の前記一方側と反対側の基端部が前記チップホルダの前記内筒に接続されているチップ筒部を有し、前記チップ筒部の外周側と前記カバーリング筒部の内周側との間に、前記周方向に間隔をあけて複数配置され、前記チップ筒部の外周側と前記カバーリング筒部の内周側との間隔を保持するスペーサを備えていてもよい。
【0017】
当該燃焼器ノズルでは、前記チップ筒部の外周側と前記カバーリング筒部の内周側との間が、チップホルダを流れてきた冷却ガスが流れる冷却ガス流路を成す。このため、ノズルチップ及びカバーリングを冷却することができる。しかも、カバーリング筒部は、周方向に間隔をあけて配置されている複数のスペーサにより、チップ筒部との間隔を保持されて支えられている。このため、当該燃焼器ノズルでは、当該冷却ガス流路で、冷却ガスの周方向における流量バラツキを抑えることができる。
【0018】
上記課題を解決するための発明に係る一態様としての燃焼器は、
以上のいずれかの前記燃焼器ノズルである第一燃焼器ノズルと、前記軸線に対して垂直な方向で、前記第一燃焼器ノズルに隣接し、燃料と空気とが混合された予混合気体を噴出する第二燃焼器ノズルと、前記第一燃焼器ノズル及び前記第二燃焼器ノズルを保持するノズル保持部と、を備えていることを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決するための発明に係る一態様としての燃焼器ノズルの製造方法は、
以上のいずれかの前記燃焼器における前記チップホルダ、前記ノズルチップ、前記カバーリング、及び前記スリーブを準備し、準備された前記カバーリングと前記スリーブとのうち、一方には複数の前記スペーサが設けられており、前記チップホルダにおける前記内筒の前記先端部に、前記ノズルチップを接続し、前記ノズルチップの外周側に前記カバーリングを配置し、前記カバーリングの外周側に前記スリーブを配置し、該スリーブの前記基端部を前記チップホルダにおける前記外筒に接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、燃焼器ノズルの熱損傷を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るチップホルダ、これを備えている燃焼器ノズル、及びこの燃焼器ノズルを備える燃焼器の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
本実施形態の燃焼器は、ガスタービン用の燃焼器である。そこで、まず、
図1を参照して、ガスタービンについて説明する。
【0024】
本実施形態のガスタービンは、空気を圧縮する圧縮機1と、圧縮機からの空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器10と、燃焼ガスにより駆動するタービン3と、を備えている。
【0025】
タービン3は、回転軸線Arを中心として回転するタービンロータ4と、このタービンロータ4を回転可能に収納するタービンケーシング7と、を備えている。このタービンロータ4は、例えば、このタービンロータ4の回転で発電する発電機(図示されていない。)と接続されている。タービンロータ4は、回転軸線Arを中心とし且つ回転軸線Arと平行な回転軸方向に延びているロータ軸部5と、回転軸方向に並んでロータ軸部5の外周に固定されている複数の動翼列6と、を有している。各動翼列6は、いずれも、回転軸線Arを基準とした周方向に並んでロータ軸部5に固定されている複数の動翼6aを有している。
【0026】
タービンケーシング7の内周側とロータ軸部5の外周側との間は、燃焼器10からの燃焼ガスが流れるガス流路9を形成している。タービンケーシング7の内周側であって、複数の動翼列6のそれぞれの上流側の位置には、静翼列8が配置されている。各静翼列8は、いずれも、回転軸線Arを基準として周方向に並んでタービンケーシング7の内周面に固定されている複数の静翼8aを有している。
【0027】
燃焼器10は、
図2に示すように、タービンケーシング7に固定されている外筒19と、タービンケーシング7内に配置され、高温・高圧の燃焼ガスGをタービン3のガス流路9に送る尾筒11と、この尾筒11内に燃料Fm,Fp及び空気Aを供給する燃料供給器20と、を備えている。
【0028】
燃料供給器20は、内筒21と、内筒21の軸線Ac上に配置されているパイロットノズル(第一燃焼器ノズル)30と、このパイロットノズル30を中心として周方向に等間隔で配置されている複数のメインノズル(第二燃焼器ノズル)22と、パイロットノズル30及び複数のメインノズル22を保持するノズル保持台(ノズル保持部)25と、を有している。
【0029】
ここで、内筒21の軸線Acが延びている方向を軸方向Da、この軸線Acを基準とした周方向を単に周方向Dc、この軸線Acを基準にした径方向を単に径方向Drとする。また、径方向Drであって軸線Acから遠ざかる側を径方向外側、その反対側を径方向内側とする。さらに、軸方向Daであって、燃料供給器20に対して尾筒11が存在する側を下流側、その反対側を上流側とする。
【0030】
ノズル保持台25は、外筒19の最上流側の位置に固定されている。各ノズル22,30の上流側の部分である基端部は、このノズル保持台25に固定されている。パイロットノズル30の基端部には、このパイロットノズル30にパイロット燃料Fpを供給するパイロット燃料配管(図示されていない)が接続されている。また、メインノズル22の基端部には、このメインノズル22にメイン燃料Fmを供給するメイン燃料配管23が接続されている。パイロットノズル30は、その下流側の部分である先端部から、下流側へパイロット燃料Fpを噴射する。このパイロット燃料Fpは、燃焼により拡散火炎を形成する。また、複数のメインノズル22は、メイン燃料Fmと圧縮機1で圧縮された空気Aとを混合した予混合気体を噴射する。この予混合気体は、燃焼により予混合火炎を形成する。
【0031】
内筒21の下流側の部分である先端部は、尾筒11の上流側の部分である基端部の内周側に挿入されている。燃料Fm,Fpの燃焼により形成された燃焼ガスGは、この尾筒11内を下流側に流れて、タービン3のガス流路9内に流入する。
【0032】
次に、
図3〜
図8を参照して、第一燃焼器ノズルであるパイロットノズル30の詳細について説明する。
【0033】
パイロットノズル30は、
図3〜
図5に示すように、軸線Acを中心として筒状を成し内周側に燃料流路71が形成されているノズル本体31、軸線Acを中心として筒状を成しノズル本体31の先端部31fに接続されるチップホルダ35と、チップホルダ35の先端部36fに接続されパイロット燃料(以下、単に燃料という)Fpを噴出するノズルチップ41と、ノズルチップ41を覆うカバーリング51と、軸線Acを中心として筒状を成しカバーリング51の外周側を覆うスリーブ61と、を備えている。なお、以上の各部材における先端部とは、軸方向の一方側である上流側の部位である。また、以下では、各部位における下流側の部位を基端部とする。
【0034】
チップホルダ35は、軸線Acを中心として筒状を成す内筒36及び外筒37と、内筒36に対して外筒37を支える複数のリブ38と、を備えている。内筒36の基端部36bには、インローの雌部又は雄部が形成され、ノズル本体31に先端部31fには、インローの雄部又は雌部が形成されている。チップホルダ35は、この内筒36のインローの雌部又は雄部がノズル本体31のインローの雄部又は雌部に嵌め込まれて、ノズル本体31に接続されている。
【0035】
この内筒36の内周側は、ノズル本体31の燃料流路71を流れてきた燃料Fpが流れる燃料流路72が形成されている。外筒37は、内筒36の外周側における軸方向の一部を覆う。外筒37の内径は、内筒36の外径よりも大きく、外筒37の内周面と内筒36の外周面との間に間隙が存在する。複数のリブ38は、内筒36の外周側と外筒37の内周側との間に、周方向Dcに間隔をあけて配置されている。複数のリブ38は、外筒37の内周側と内筒36の外周側との間の間隙を保持しつつ両部材36,37を連結する。
【0036】
外筒37の内周側と内筒36の外周側との間の間隙は、冷却ガスである空気Aが流れる空気流路(冷却ガス流路)82を成す。外筒37の内周側と内筒36の外周側との間であって、軸方向における外筒37の基端の位置は、環状の空気流入開口81を成している。
【0037】
以上で説明したチップホルダ35は、例えば、ステンレスで形成されている。
【0038】
ノズルチップ41は、軸線Acを中心として筒状を成し、基端部42bがチップホルダ35における内筒36の先端部に接続されるチップ筒部42と、チップ筒部42の先端を塞ぐチップ先端壁部43と、チップ筒部42の先端部42fからチップ先端壁部43の外周側の部分にかけて形成されている複数の突起部44と、を有している。
【0039】
チップ筒部42の内径とチップホルダ35における内筒36の内径は、実質的に同じである。また、チップ筒部42の外径とチップホルダ35における内筒36の外径も、実質的に同じである。チップ筒部42の基端部42bには、インローの雄部又は雌部が形成され、チップホルダ35における内筒36の先端部36fには、インローの雌部又は雄部が形成されている。ノズルチップ41は、このチップ筒部42のインローの雄部又は雌部がチップホルダ35における内筒36のインローの雌部又は雄部に嵌め込まれて、チップホルダ35に接続される。チップ筒部42の内周側は、チップホルダ35における内筒36の内周側に形成されている燃料流路72とつながる燃料流路73を成している。
【0040】
ノズルチップ41の複数の突起部44は、周方向Dcに等間隔で、チップ筒部42の先端部42fからチップ先端壁部43の外周側の部分にかけて形成されている。突起部44は、チップ筒部42から外周側に向かって突出している外周突起部45と、先端壁部から下流側に向かうに連れて次第に径方向外側に向う方向に突出している先端突起部46と、を有している。先端突起部46には、燃料噴出孔47が形成されている。この燃料噴出孔47は、チップ先端壁部43の上流側の端面から先端突起部46の先端にかけて貫通した孔で、下流側に向かうに連れて次第に径方向外側に向かう方向に延びている。
【0041】
カバーリング51は、軸線Acを中心として筒状を成し、チップ筒部42の外周側を覆うカバーリング筒部52と、カバーリング筒部52の先端の一部を塞ぐカバーリング先端壁部53と、を有している。カバーリング筒部52の内径は、チップ筒部42の外径よりも大きく、カバーリング筒部52の内周側とチップ筒部42の外周側との間には間隙が存在する。カバーリング先端壁部53は、軸線Acを中心して、上流側から下流側に向かって貫通した円形の軸上空気噴出開口87が形成されている。また、このカバーリング先端壁部53中の外周側には、上流側から下流側に向かって貫通した複数の突起挿通孔54が形成されている。複数の突起挿通孔54は、軸線Acを中心として周方向Dcに並んでいる。
【0042】
このカバーリング51内には、ノズルチップ41が入れられる。この際、チップ筒部42の外周側とカバーリング筒部52の内周側との間の間隔は、ノズルチップ41の外周突起部45により保持される。また、チップ先端壁部43の下流側とカバーリング先端壁部53の上流側との間の間隔は、ノズルチップ41の先端突起部46により保持される。すなわち、ノズルチップ41の外周突起部45は、チップ筒部42の外周側とカバーリング筒部52の内周側との間の間隔を保持するスペーサとして機能し、ノズルチップ41の先端突起部46は、チップ先端壁部43の下流側とカバーリング先端壁部53の上流側との間の間隔を保持するスペーサとして機能する。チップ筒部42の外周側とカバーリング筒部52の内周側との間、及びチップ先端壁部43の下流側とカバーリング先端壁部53の上流側との間の間隙は、空気Aが流れる内側空気流路84を成す。また、ノズルチップ41の各先端突起部46は、いずれも、カバーリング51の突起挿通孔54に挿通され、カバーリング51の外部に臨んでいる。
【0043】
軸線Acを中心として筒状のスリーブ61の内径は、カバーリング筒部52の外径よりも大きく、スリーブ61の内周側とカバーリング51筒の外周側との間には間隙が存在する。この間隙は、空気Aが流れる外側空気流路85を成す。スリーブ61の内周側とカバーリング筒部52の外周側との間であって、軸方向におけるスリーブ61の基端の位置は、環状の外側空気噴出開口86を成している。スリーブ61の内径は、チップホルダ35における外筒37の内径と実質的に同じである。また、スリーブ61の外径は、チップホルダ35における外筒37の外径と実質的に同じである。スリーブ61の基端部61bとチップホルダ35における外筒37の先端部37fとは、例えば、溶接等により接続される。スリーブ61の基端部61bとチップホルダ35における外筒37の先端部37fとが接続されると、スリーブ61とチップホルダ35における外筒37とは、ノズルチップ41及びカバーリング51、さらにチップホルダ35における内筒36の外周側を覆う一体の筒となる。
【0044】
このスリーブ61は、耐熱性の高いニッケル基合金により形成され、必要に応じて耐熱コーティングが施されている。
【0045】
本実施形態のパイロットノズル30は、さらに、スリーブ61の内周側とカバーリング51筒の外周側との間の間隙を保持する複数のスペーサ59を備えている。複数のスペーサ59は、軸線Acを中心として周方向Dcに並んで配置されている。複数のスペーサ59は、いずれも、カバーリング筒部52の外周側に形成され、カバーリング51と一体である。なお、複数のスペーサ59は、スリーブ61の内周側に形成され、スリーブ61と一体であってもよい。
【0046】
次に、カバーリング筒部52の外周側とスリーブ61の内周側との間に形成されている複数のスペーサ59と、チップホルダ35の内筒36の外周側と外筒37の内周側との間に形成されている複数のリブ38との位置関係について、
図6を参照して説明する。なお、
図6は、
図4におけるIV−IV線断面図である。但し、
図6では、スペーサ59とリブ38との位置関係を明瞭にするため、チップ筒部42及びカバーリング筒部52を省略している。
【0047】
ここで、パイロットノズル30の軸線Acを中心とした周方向Dcの位置で、タービンロータの回転軸線Acとパイロットノズル30の軸線Acとを含む仮想平面上VPの位置を基準位置BPとする。
【0048】
本実施形態の複数のリブ38のうち、軸方向Daの上流側から見て、基準位置BPから時計回りに60°の第一リブ位置R1に第一リブ38aが形成され、この第一リブ位置R1から時計回りに60°の第二リブ位置R2に第二リブ38bが形成され、この第二リブ位置R2から時計回りに120°の第三リブ位置R3に第三リブ38cが形成され、この第三リブ位置R3から時計回りに60°の第四リブ位置R4に第四リブ38dが形成されている。なお、第四リブ位置R4から時計回りに120°の位置が第一リブ位置R1である。第一リブ38aは、第一リブ位置R1を中心として約25°の幅で形成されている。同様に、第二リブ38b、第三リブ38c、第四リブ38dも、対応する位置を中心として約25°の幅で形成されている。
【0049】
また、本実施形態の複数のスペーサ59のうち、軸方向Daの上流側から見て、基準位置BPから時計回りに45°の第一スペーサ位置S1に第一スペーサ59aが形成され、第一スペーサ位置S1から時計回りに90°の第二スペーサ位置S2に第二スペーサ59bが形成され、第二スペーサ位置S2から時計回りに90°の第三スペーサ位置S3に第三スペーサ59cが形成され、第三スペーサ位置S3から時計回りに90°の第四スペーサ位置S4に第四スペーサ59dが形成されている。なお、第四スペーサ位置S4から時計回りに90°の位置が第一スペーサ位置S1である。第一スペーサ59aは、第一スペーサ位置S1を中心として約10°の幅で形成されている。同様に、第二スペーサ59b、第三スペーサ59c、第四スペーサ59dも、対応する位置を中心として約10°の幅で形成されている。
【0050】
このため、本実施形態では、軸方向視で、第一スペーサ59aの一部が第一リブ38aと重なり、第二スペーサ59bの一部が第二リブ38bと重なり、第三スペーサ59cの一部が第三リブ38cと重なり、第四リブ38dの一部が第四リブ38dと重なっている。
【0051】
次に、以上で説明したパイロットノズル30の製造手順について説明する。
【0052】
まず、以上で説明したノズル本体31、チップホルダ35、ノズルチップ41と、カバーリング51、スリーブ61を準備する。なお、以上の各部材は、新たに製造したものであってもよいし、過去に使用したものであってもよい。具体的に、ノズル本体31は、高温のガスに晒されず、長期間使用してもほとんど損傷しないので、今まで使用したものを再利用してもよい。また、ここで準備するカバーリング51におけるカバーリング筒部52の外周には、複数のスペーサ59が予め形成されている。
【0053】
次に、チップホルダ35における内筒36の基端部36bのインローの雌部又は雄部をノズル本体31の先端部31fのインローの雄部又は雌部に嵌め込んで、チップホルダ35をノズル本体31に接続する。なお、ノズル本体31の先端部31fとチップホルダ35における内筒36の基端部bとを溶接して、ノズル本体31とチップホルダ35を接続してもよいし、以上のインロー構造を採用した上で両部材間を溶接して、両部材を接続してもよい。
【0054】
次に、ノズルチップ41におけるチップ筒部42の基端部42bのインローの雄部又は雌部をチップホルダ35における内筒36の先端部36fのインローの雌部又は雄部に嵌め込んで、ノズルチップ41をチップホルダ35に接続する。なお、チップホルダ35における内筒36の先端部36fとチップ筒部42の基端部42bとを溶接して、チップホルダ35とノズルチップ41とを接続してもよいし、以上のインロー構造を採用した上で両部材間を溶接して、両部材を接続してもよい。
【0055】
次に、カバーリング51内にノズルチップ41が入るよう、チップホルダ35に接続されているノズルチップ41に対してカバーリング51をセットする。このセットにより、ノズルチップ41の各先端突起部46は、いずれも、前述したように、カバーリング51の突起挿通孔54からカバーリング51の外部に臨むことになる。
【0056】
次に、スリーブ61内にノズルチップ41及びカバーリング51が入るよう、スリーブ61をセットし、スリーブ61の基端部61bをチップホルダ35における外筒37の先端部37fに溶接等で接続する。
【0057】
以上で、パイロットノズル30は完成する。なお、以上では、チップホルダ35をノズル本体31に接続してから、ノズルチップ41をチップホルダ35に接続しているが、ノズルチップ41をチップホルダ35に接続してから、チップホルダ35をノズル本体31に接続してもよい。
【0058】
次に、本実施形態のパイロットノズル30の作用効果について説明する。
【0059】
パイロット燃料配管(図示されていない)からの燃料(パイロット燃料)Fpは、
図4に示すように、ノズル本体31の燃料流路71、この燃料流路71とつながっているチップホルダ35の燃料流路72を介して、この燃料流路72とつながっているノズルチップ41の燃料流路73に流れ込む。ノズルチップ41の燃料流路73内に流れ込んだ燃料Fpは、ノズルチップ41におけるチップ先端壁部43及び先端突起部46を貫通する複数の燃料噴出孔47から、下流側に向かうに連れて次第に径方向外側に向かう方向に噴出する。
【0060】
圧縮機1(
図1及び
図2に示す)で圧縮された空気Aの一部は、チップホルダ35における内筒36と外筒37との間であって、これらの基端に形成されている環状の空気流入開口81から、チップホルダ35の空気流路82内に流入する。チップホルダ35の空気流路82内に流れ込んだ空気Aの一部は、スリーブ61の内周側とカバーリング筒部52の外周側との間の外側空気流路85に流入する。この外側空気流路85に流入した空気Aは、この外側空気流路85を下流側に向かって流れ、環状の外側空気噴出開口86から下流側に向かって噴出する。空気Aは、この外側空気流路85を下流側に向かって流れる過程で、スリーブ61及びカバーリング筒部52を冷却する。また、チップホルダ35の空気流路82内に流れ込んだ空気Aの残りの部は、カバーリング筒部52の内周側とチップ筒部42の外周側との間の内側空気流路84に流入する。この内側空気流路84に流入した空気Aは、この内側空気流路84を下流側に流れ、周方向Dcに並んでいるノズルチップ41の複数の突起部44の相互間を通過して、カバーリング51における円形の軸上空気噴出開口87から下流側に向かって噴出する。空気Aは、この内側空気流路84を流れる過程で、カバーリング51及びノズルチップ41を冷却する。特に、空気Aは、周方向Dcに並んでいるノズルチップ41の複数の突起部44の相互間を通過するので、複数の突起部44のそれぞれを冷却する。
【0061】
ノズルチップ41の複数の燃料噴出孔47からパイロットノズル30の外部に噴出した燃料Fpは、スリーブ61の内周側とカバーリング筒部52の外周側との間の環状の外側空気噴出開口86から噴出した空気A、及びカバーリング51の軸上空気噴出開口87から噴出した空気Aを燃焼用空気Aとして、燃焼し、拡散火炎を形成する。
【0062】
本実施形態では、ノズルチップ41のチップ筒部42の外周側とカバーリング51のカバーリング筒部52の内周側との間の間隔を、チップ筒部42の外周側に周方向Dcに間隔をあけて配置した複数の外周突起部45により保持しているので、環状の内側空気流路84の周方向Dcにおける各位置での空気流量のバラツキを抑えることができる。また、本実施形態では、カバーリング51のカバーリング筒部52の外周側とスリーブ61の内周側との間の間隔を、カバーリング筒部52の外周側に周方向Dcに間隔をあけて配置した複数のスペーサ59により保持しているので、環状の外側空気流路85の周方向Dcにおける各位置での空気流量のバラツキを抑えることができる。
【0063】
さらに、本実施形態では、スリーブ61及びノズルチップ41の上流側に配置されているチップホルダ35において、内筒36の外周側と外筒37の内周側との間の間隔を、この間に周方向Dcに間隔をあけて配置した複数のリブ38により保持しているので、環状の空気流路82の周方向Dcにおける各位置での空気流量のバラツキを抑えることができる。
【0064】
すなわち、本実施形態では、パイロットノズル30における先端部側の内側空気流路84及び外側空気流路85と、内側空気流路84及び外側空気流路85の連通し且つ内側空気流路84及び外側空気流路85の上流側の空気流路82とのそれぞれで、周方向Dcの各位置での空気流量のバラツキを抑えることができる。
【0065】
本実施形態では、パイロットノズル30の最外周部分を形成するスリーブ61及びチップホルダ35の外筒37は、パイロットノズル30の完成時に一体の最外周筒を成す。本実施形態では、この最外周筒で、高温の燃焼ガスや火炎に晒される又はその可能性のある先端側のスリーブ61を耐熱性の高いニッケル基合金で形成し、燃焼ガスや火炎に晒されない基端側のチップホルダ35を低コスト材料であるステンレスで形成している。このため、本実施形態では、パイロットノズル30の耐熱性を高めつつも、製造コストを抑えることができる。
【0066】
チップホルダ35の空気流路82中には、周方向Dcに間隔をあけて複数のリブ38が配置されている。このため、
図7に示すように、各リブ38の下流には、ウェイクWaが形成され、リブ38の下流側における空気Aの下流側に向う流速Vaが低下する。一方、2つのリブ38の周方向Dcの間の下流側では空気Aの流速Vbは低下しない。また、各スペーサ59の下流側にも、ウェイクWbが形成される。このため、条件によって火炎91の一部がスペーサ59に向って逆流する。しかしながら、本実施形態では、前述したように、複数のスペーサ59のそれぞれは、軸方向視で、チップホルダ35の複数のリブ38のうちのいずれかのリブ38と一部が重なっている。このため、上流側のリブ38の存在により、上流側からスペーサ59に向って流れる空気Aの流速Vaが遅くなり、スペーサ59の下流側に形成されるウェイクWbを小さくすることができる。この結果、スペーサ59に向う火炎91の逆流を抑えることができる。
【0067】
仮に、
図8に示すように、複数のスペーサ59xのそれぞれが、軸方向視で、チップホルダ35の複数のリブ38のうちのいずれにも重なっていないとする。この場合も、前述の場合と同様に、各リブ38の下流には、同様のウェイクWaが形成され、リブ38の下流側における空気Aの流速Vaが低下する。さらに、この場合も、各スペーサ59xの下流側に、ウェイクWcが形成され、条件によって火炎92の一部がスペーサ59xに向って逆流する。但し、この場合、スペーサ59xの上流側にリブ38が存在しないため、上流側からスペーサ59xに向って流れる空気Aの流速Vbが遅くならず、スペーサ59xの下流側に形成されるウェイクWcは、前述のウェイクWbよりも大きくなる。この結果、条件によっては、逆流した火炎92がスペーサ59xに至ることもある。
【0068】
以上のように、本実施形態では、外側空気流路85内への火炎の逆流を抑えることができ、かかる観点からも、外側空気流路85を形成するスリーブ61、カバーリング51及びスペーサ59の熱損傷を抑えることができる。
【0069】
なお、本実施形態では、複数のスペーサ59のそれぞれは、軸方向視で、チップホルダ35の複数のリブ38のうちのいずれかのリブ38と一部のみが重なっている。しかしながら、複数のスペーサ59のそれぞれは、軸方向視で、チップホルダ35の複数のリブ38のうちのいずれかのリブ38と全体が完全に重なってもよい。また、本実施形態の複数のリブ38は、周方向Dcの間隔が異なっているが、この間隔は等間隔であってもよい。
【0070】
また、本実施形態では、スペーサ59及びリブ38の個数がいずれも4個であるが、それぞれ3個であっても、5個以上であってもよい。また、スペーサ59の個数とリブ38の個数とは同数でなくてもよい。但し、この場合、複数のスペーサ59のそれぞれが、軸方向視で、チップホルダ35の複数のリブ38のうちのいずれかのリブ38と少なくとも一部が重なるようにするため、リブ38の個数はスペーサ59の個数以上である必要がある。例えば、リブ38が5個でスペーサ59が4個であってもよい。