【実施例】
【0029】
実施例により本発明の方法を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例および比較例において、組成はガスクロマトグラフィー分析により得られた面積百分率値を示す。
【0030】
<実施例1>
攪拌機付き200mLオートクレーブ(SUS316L製)に、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル(以下2,6−NDCM)30g、エヌ・イーケムキャット社製5%Pdカーボン粉末(含水率50重量%)PEタイプ90mg、イソプロパノール50gを仕込んだ。室温で、オートクレーブ内を窒素1MPaで2回置換し、次いで水素1MPaで2回置換した。その後常圧まで落圧した後、反応器内の温度を170℃に昇温し、水素で5MPaまで加圧し、同温度、同圧力を保持して攪拌下(回転数1500rpm)で水素添加反応を実施した。水素は圧力が一定に維持されるように消費量に見合う量を供給した。
60分後、水素供給量が微量(5mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却した。水素を放出し、窒素1MPaで2回置換した後、焼結金属を通して触媒を分離し、反応液を抜き出した。得られた反応液から溶媒を除去して、粗2,6−テトラリンジカルボン酸ジメチル(以下2,6−TDCM)(30.1g)を得た。ガスクロマトグラフィー分析を行ったところ、生成物の組成は、2,6−NDCM:0.5%、2,6−TDCM:98.0%、2,6−デカリンジカルボン酸ジメチル(以下2,6−DDCM):0.3%であった。2,6−TDCMの収率は96.7モル%であった。
【0031】
<実施例2>
反応温度を190℃とした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
45分後、水素供給量が微量(5mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(29.9g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。
【0032】
<実施例3>
5%Pdカーボン粉末(含水率50重量%)PEタイプの仕込み量を30mgとした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
150分後、水素供給量が微量(5mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(30.0g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。
【0033】
<実施例4>
5%Pdカーボン粉末(含水率50重量%)PEタイプの仕込み量を30mgとし、反応圧力を10MPaとした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
60分後、水素供給量が微量(5mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(29.9g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。
【0034】
<実施例5>
5%Pdカーボン粉末(含水率50重量%)PEタイプの仕込み量を100mgとし、反応温度を160℃とした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
100分後、水素供給量が微量(5mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(30.1g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。
【0035】
<実施例6>
5%Pdカーボン粉末(含水率50重量%)PEタイプの仕込み量を150mgとした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
45分後、水素供給量が微量(5mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(29.8g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。
【0036】
<実施例7>
5%Pdカーボン粉末(含水率50重量%)PEタイプの仕込み量を300mgとした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
30分後、水素供給量が微量(5mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(30.2g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。
【0037】
<実施例8>
反応圧力を3MPaとした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
300分後、水素供給量が微量(3mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(30.0g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。
【0038】
<実施例9>
2,6−NDCMの仕込み量を15g、5%Pdカーボン粉末(含水率50重量%)PEタイプの仕込み量を45mg、イソプロパノールの仕込み量を75gとした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
75分後、水素供給量が微量(5mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(29.4g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。
【0039】
<実施例10>
貴金属触媒として5%Pdカーボン粉末(含水率50重量%)PEタイプ100mg、及びエヌ・イーケムキャット社製5%Ruカーボン粉末(含水率50重量%)Aタイプ100mgを仕込んだ以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
60分後、水素供給量が微量(5mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(29.6g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。
【0040】
<実施例11>
溶媒としてイソプロパノールに代えて酢酸エチル50gを用いた以外は実施例5と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
105分後、水素供給量が微量(5mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(29.5g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。
【0041】
<比較例1>
反応温度を130℃とした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
360分後、水素供給量が微量(3mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(21.3g)を得た。なお、未反応の原料と思われる結晶が、触媒と共に焼結金属で反応液から分離された。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。反応温度が低い条件では、原料の2,6−NDCMの残存量が多く、反応の進行が不十分である。
【0042】
<比較例2>
5%Pdカーボン粉末(含水率50重量%)PEタイプの仕込み量を150mgとし、反応温度を150℃、反応圧力を3.5MPaとした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
360分後、水素供給量が微量(3mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(22.6g)を得た。なお、未反応の原料と思われる結晶が、触媒と共に焼結金属で反応液から分離された。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。反応温度が低い条件では、原料の2,6−NDCMの残存量が多く、反応の進行が不十分である。
【0043】
<比較例3>
2,6−NDCMの仕込み量を20g、5%Pdカーボン粉末(含水率50重量%)PEタイプの仕込み量を1000mg、イソプロパノールの仕込み量を60gとし、反応温度を140℃、反応圧力を1.0MPaとした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
240分後、水素供給量が微量(3mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(20.6g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。反応温度および反応圧力が低い条件では、触媒濃度を大幅に高くしても、原料の2,6−NDCMの残存量が多く、反応の進行が不十分になっている。
【0044】
<比較例4>
5%Pdカーボン粉末(含水率50重量%)PEタイプの仕込み量を1000mgとし、イソプロパノールの仕込み量を30gとし、反応温度を140℃、反応圧力を3.0MPaとした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
60分後、水素供給量が微量(5mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(30.2g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。触媒使用量が過大な条件では、反応温度を下げて反応を行っても水添反応が過剰に進行し2,6−DDCMの副生が増加し、2,6−TDCMの収率が低下している。
【0045】
<比較例5>
2,6−NDCMの仕込み量を20g、5%Pdカーボン粉末(含水率50重量%)PEタイプの仕込み量を400mg、イソプロパノールの仕込み量を60gとし、反応温度を135℃、反応圧力を2.0MPaとした以外は実施例1と同様にして、2,6−NDCMの水素添加反応を実施した。
75分後、水素供給量が微量(5mL/min以下)となったので反応終了と判断し、室温まで冷却し、以下、実施例1と同様にして生成物の粗2,6−TDCM(19.5g)を得た。得られた生成物分析結果及び2,6−TDCMの収率を表1に示す。触媒使用量を比較例4よりも少なくしたものの、やはり触媒使用量が過大な条件では、水添反応が過剰に進行し、2,6−TDCMの収率が低下している。
【0046】
【表1】