(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206660
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】透明撥水体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 3/30 20060101AFI20170925BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20170925BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20170925BHJP
C09K 3/18 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
B32B3/30
B32B9/00 A
B32B27/30 D
C09K3/18 101
C09K3/18 102
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-198124(P2013-198124)
(22)【出願日】2013年9月25日
(65)【公開番号】特開2015-63068(P2015-63068A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(72)【発明者】
【氏名】野口 雄司
(72)【発明者】
【氏名】渋川 聡哉
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 康朗
【審査官】
増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−132839(JP,A)
【文献】
特開2008−122435(JP,A)
【文献】
特開2012−171277(JP,A)
【文献】
特開2010−201799(JP,A)
【文献】
特開2001−131318(JP,A)
【文献】
特開2013−103414(JP,A)
【文献】
特開平05−345387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 3/30
B32B 9/00
B32B 27/30
C09K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に第1及び第2の微細凹凸構造を有する基材を備えた透明撥水体であって、
第2微細凹凸構造は第1微細凹凸構造の上にあり、
第2微細凹凸構造を形成する凸部は、第1微細凹凸構造内に収容されるとともに、柱状構造及び/又は針状構造であり、
第1微細凹凸構造を形成する凹凸はそのピッチが100nm〜500nmであり、且つ第1微細凹凸構造によって規定される面の表面粗さRyが40nm〜400nmである、ことを特徴とする透明撥水体。
【請求項2】
第2微細凹凸構造を形成する凸部の径が30nm〜150nmであり、その高さが第1微細凹凸構造によって規定される面の表面粗さRyよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の透明撥水体。
【請求項3】
第1微細凹凸構造を形成する構成材料が酸化ケイ素と酸化チタンの複合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明撥水体。
【請求項4】
第2微細凹凸構造を構成する構成材料がC軸方向に結晶配向性を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の透明撥水体。
【請求項5】
第2微細凹凸構造の構成材料が酸化亜鉛であことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の透明撥水体。
【請求項6】
第2微細凹凸構造の構成材料がアスペクト比2〜100の針状粒子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の透明撥水体。
【請求項7】
第2微細凹凸構造の構成材料が針状酸化アルミニウム粒子であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の透明撥水体。
【請求項8】
第1微細凹凸構造及び第2微細凹凸構造上に、表面自由エネルギーが30mJ/m2以下で且つ厚み20nm以下の薄膜を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の透明撥水体。
【請求項9】
上記薄膜が、炭素を主成分とする薄膜、パーフルオロアルキルを含む薄膜及びパーフルオロポリエーテルを含む薄膜から成る群より選ばれた少なくとも1種の薄膜であることを特徴とする請求項8に記載の透明撥水体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つの項に記載の透明撥水体を備えることを特徴とする自動車用部品。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の透明撥水体を製造するに当たり、
自己組織化により微細凹凸構造を形成する材料を基材表面に用いて、第1微細凹凸構造を基材表面に形成し、
第1微細凹凸構造に、第2微細凹凸構造を形成する無機酸化物の凸部を形成する、ことを特徴とする透明撥水体の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の透明撥水体を製造する当たり、
自己組織化により第1微細凹凸構造を形成する塗液にナノ粒子を混合し、
この混合塗液を基材表面に塗付し乾燥させて、第1微細凹凸構造と第2微細凹凸構造を基材表面に同時に形成する、ことを特徴とする透明撥水体の製造方法。
【請求項13】
第1微細凹凸構造と第2微細凹凸構造上に、表面自由エネルギーが30mJ/m2以下で且つ厚み20nm以下の薄膜を被覆することを特徴とする請求項11又は12に記載の透明撥水体の製造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明撥水体及びその製造方法に係り、更に詳細には、ビル等の建物や自動車に適用されて水滴の付着を防ぎ、建物、自動車等の外観や視認性の向上を長期に亘って実現し得る撥水体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超撥水構造はハスの葉や里芋の葉のように自然界に多く存在する構造の一つで、これらを模倣して作製した超撥水構造体については多数の学術文献や特許広報が存在する。例えば、光の波長より小さなピッチをもつナノ錐体構造の規則配列により超撥水性と透明性を両立させている。
さらに、このようなナノ錐体構造の耐磨耗性を向上させるために、特許文献1に開示されたような表面にナノ粒子を配置した構造が知られている。
【0003】
かかる機能を有する構造を自動車や鉄道車両、船舶、航空機などの各種ウインドウパネルに用いることにより、ワイパーの要らないウインドウパネルの実現が期待でき、部品数の削減や生産工数削減によるコスト削減が期待できる。
さらに、ボディパネルに用いることによって、水しみ等の汚れを防ぐことができるものと期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−132839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように特許文献1の撥水性構造が提案されているが、この構造についても、以下のような検討の余地が存在する。
【0006】
即ち、錐体状突起も撥水性の発現に寄与するため、そのアスペクト比を大きくとらなければ超撥水性を発現できず、アスペクト比を大きくとると耐摩耗性が低下するという長期耐久性に関してはトレードオフな関係が存在する。
【0007】
本発明は、このような従来の撥水構造が有する課題を解決すべくなされたものであって、その目的とするところは、耐傷付き性に優れ、極めて良好な超撥水性能を長期に亘って発揮することができる透明撥水体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、大きさなどが異なる2種類の微細凹凸を所定形式で表面に配設することにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の透明撥水体は
、表面に第1及び第2の微細凹凸構造を有する基材を備えた透明撥水体であって、
第2微細凹凸構造は第1微細凹凸構造の上にあり、
第2微細凹凸構造を形成する凸部は、第1微細凹凸構造内に収容されるとともに、柱状構造及び/又は針状構造であり、
第1微細凹凸構造を形成する凹凸はそのピッチが100nm〜500nmであり、且つ第1微細凹凸構造によって規定される面の表面粗さRyが40nm〜400nmである。
【0010】
本発明の透明撥水体の製造方法は、上述のような透明撥水体を製造する方法である。
自己組織化により微細凹凸構造を形成する材料を基材表面に用いて、第1微細凹凸構造を基材表面に形成し、
第1微細凹凸構造に、第2微細凹凸構造を形成する無機酸化物の凸部を形成する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の透明撥水体の他の製造方法は、上述の如き透明撥水体を製造する方法であって、自己組織化により第1微細凹凸構造を形成する塗液にナノ粒子を混合し、
この混合塗液を基材表面に塗付し乾燥させて、第1微細凹凸構造と第2微細凹凸構造を基材表面に同時に形成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大きさなどが異なる2種類の微細凹凸を所定形式で表面に配設することとしたため、耐傷付き性に優れ、極めて良好な超撥水性能を長期に亘って発揮することができる透明撥水体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の透明撥水体の一実施形態を示す部分拡大断面図である。
【
図2】本発明の透明撥水体の他の実施形態を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の透明撥水体について説明する。
図1は、本発明の透明撥水体の一実施形態を示す部分拡大断面図である。
同図において、透明撥水体1は基材40を有し、基材40の表面には第1微細凹凸構造10と第2微細凹凸構造20が形成されている。
図示のように、第2微細凹凸構造20は第1微細凹凸構造10の上にあり、第2微細凹凸構造を形成する凹凸である凹部20r、凸部20pは、第1微細凹凸構造を形成する凹凸である凹部10r、凸部10pの上にある。
【0015】
透明撥水体1において、第1微細凹凸構造10は、耐久性を実現すべく、第2微細凹凸構造20を保護する役割を有する。したがって、第1微細凹凸構造10は摩耗や外部入力による折損に耐え得る形状であることが好ましい。
この観点から、第1微細凹凸構造10を形成する凹凸10r及び10pについては、そのピッチ、即ち平均した頂点間(10p−10p)又は谷間間(10r−10r)の距離が100〜200nm程度となる。
【0016】
このピッチが200nmを超えると、透明撥水体1の透明性が低下するほか、繊維などが進入し易くなり耐摩耗性が低下する。また、ピッチが100nmより小さくなると、第2微細凹凸構造20との寸法差が減少して第2微細凹凸構造20が最表面に露出してしまい、第1微細凹凸構造10の保護効果が実現し難くなる。
なお、本発明の透明撥水体を自動車のウィンドシールドなどに適用するためには、100〜150nmとすれば、光の散乱が殆ど無くなり透明性が顕著に向上する。
【0017】
また、本発明の透明撥水体において、第1微細凹凸構造10によって規定される面の表面粗さRyは40〜100nmである。
この範囲を逸脱すると、上記のピッチと同様な不具合が生じるが、この範囲内にあることで透明性が顕著に向上する。
【0018】
一方、本発明の透明撥水体において、第2微細凹凸構造20を形成する凸部20pの径については30〜150nmとすることが好ましく、高さは第1微細凹凸構造によって規定される面の表面粗度Ryより小さいことが好ましい。
ここで、「径」は凸部20pが円柱状の場合などのように、典型的には円柱底面の直径を意味するがこれに限定されるものではなく、凸部20pの太さの最大値(平均値)を意味する。
【0019】
凸部20pについては、第1微細凹凸構造10によって保護できる大きさであれば特に限定されるものではないが、径が30nm未満のものを形成するのは極めて困難であり、150nmを超えると、光を散乱し易くなり透明性が損なわれることがある。高さについては第1微細凹凸構造のRyを超えなければ十分な保護が受けられる。
【0020】
本発明の透明撥水体において、第2微細凹凸構造20の凸部20pは、第1微細凹凸構造10内に収容されていることが好ましく、これにより、透明撥水体の耐久性が実現される。
換言すると、凸部20pは第1微細凹凸構造10の凸部10p同士が形成する凹領域から露出ないしは突出していない方がよく(
図1参照)、これにより、凸部20pが第1微細凹凸構造10によって保護される。
【0021】
図2に本発明の透明撥水体の他の実施形態を示す。
なお、以下、
図1に示した透明撥水体の場合と実質的に同一の部材・要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
図2において、この透明撥水体は、第1微細凹凸構造10及び第2微細凹凸構造20の上に、撥水性を有する薄膜30を有している。
【0022】
ここで、以上に説明した第1微細凹凸構造と第2微細凹凸構造との階層構造については、表面自由エネルギーが30mJ/m
2未満であれば、超撥水性を発現しやすい。
しかしながら、第1微細凹凸構造や第2微細凹凸構造を構成する材料が無機酸化物の場合、表面自由エネルギーは30mJ/m
2を超えることがほとんどである。
本実施形態では、これらの表面をフッ素系の表面処理材料やDLCやグラフェンなどの炭素系薄膜で被覆することにより、その表面自由エネルギーを小さくしている。
【0023】
特にDLCでは、その表面が疎水性であることに加え、高硬度化や低摩擦係数化など、耐久性を向上させるための物性を同時に向上できる。
これら薄膜の膜厚は第2微細凹凸構造の形状を損なわなければ特に限定されないが、20nm以下であれば、第2微細凹凸構造の形状を損なうことなく撥水性を向上できる。
【0024】
以下、上述の第1微細凹凸構造10や第2微細凹凸構造20の構成材料、及び凹凸構造の形成方法などについて説明する。
第1微細凹凸構造を構成する材料としては、特に限定されず、アクリル系のハードコート樹脂や樹脂内に無機系の粒子や分子構造を持つ有機無機ハイブリッド材料、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ及び酸化チタンなどの無機酸化物、複数の金属元素が混在した無機酸化物などが用いられる。
摩耗に対して耐性を上げるためには硬度が高いほうがよく、これらの中でも無機酸化物が好ましい。更に好ましくは、屈折率が小さい酸化ケイ素中に靭性向上のための酸化チタンを添加した材料がよい。この場合、酸化チタンの添加する割合は1〜10質量%が好ましい。
【0025】
第1微細凹凸構造の形成方法については特に限定されないが、最も簡便な方法として、親和性の異なる2種類の無機系ゾル液を混合し、基材ガラス上への成膜乾燥時に相分離することで凹凸を形成する方法を挙げることができる。
例えば、親水性の強いテトラエトキシシランのゾル液と疎水性を持つメチルトリエトキシシランのゾル液を混合することで、これらの成分が相分離し、ガラス基材上に凹凸を形成する。
【0026】
なお、図示した実施形態では、基材40と第1微細凹凸構造10が別体で形成されているが、基材40と第1微細凹凸構造10を一体で形成することも可能である。
例えば、ガラスをサンドブラストやウェットブラスト、表面エッチング又はナノインプリントなどの直接成形により凹凸を成形する方法がある。
【0027】
第2微細凹凸構造を構成する材料についても特に限定されないが、C軸方向に配向性があり柱状に成長する酸化亜鉛や酸化チタンが好ましい。
また、ナノ粒子としてゾル液に添加できるアルミナやベーマイトなどの無機針状粒子も好ましい。アスペクト比2〜100の針状粒子も好適に用いることができる。これらの第2微細凹凸構造を構成する材料については、第1微細凹凸構造と第2微細凹凸構造による階層構造を作製する工程により使い分けられる。
【0028】
なお、薄膜30の形成方法については、いわゆるナノ薄膜が形成できる手法であれば特に限定されず、例えば、真空状態で行う蒸着やスパッタリングなどのドライプロセス、コーターやスプレー、ディップなどにより塗布を行うウェットプロセスも適用することができる。
例えば、透明撥水体の表面が無機酸化物などで形成されている場合は、アルコキシシランなどの金属や半金属のアルコキシドを官能基として持つ試薬をウェットプロセスにより直接塗布することができる。また、防汚表面の反応性が低くウェットプロセスを適用できない場合は、スパッタや蒸着によって最表面にシリカなどの無機薄膜を形成すれば官能基の導入が容易になる。
かかる薄膜としては、炭素を主成分とする薄膜、パーフルオロアルキル基を含む薄膜、パーフルオロポリエーテルを含む薄膜などを例示できる。
【0029】
以上に説明した本発明の透明撥水体は、自動車の各部品に用いることができる。
例えば、自動車用グレージング材に用いることにより、雨の日もクリアな視界を確保できる。特にウィンドウシールドでは、ワイパーをほとんど作動させること無く走行することも可能になる。また、この他にもミラーやラジエーターフィン、エバポレーターなどに使用することで様々な効果を発現できると考えられる。
【0030】
本発明の透明撥水体の製造方法は、代表的には、第1微細凹凸構造をゾルゲルの自己組織化により形成し、その表面に第2微細凹凸構造を無機材料のナノロッド又は針状無機粒子により形成するものである。
特に限定されるものではないが、具体的には2つの製造方法を例示できる。
第1の方法としては、第1微細凹凸構造を上述のような相分離により形成し、得られた表面に対し、酸化亜鉛ナノロッドなどに代表されるC軸配向性の無機材料からなる第2微細凹凸構造を形成する。
更に、市販のフッ素系表面処理剤(例えば、フロロサーフFG5020)などを塗布して薄膜を形成してもよい。
薄膜形成には、真空製膜によるDLC処理を用いてもよい。また、DLC処理とフッ素系表面処理剤を併用することも可能である。
【0031】
第2の方法としては、第1微細凹凸構造と第2微細凹凸構造を同時に形成する方法がある。
これは、第1微細凹凸構造を形成する層分離可能なゾル液に予め無機針状粒子などを分散させておき、塗付後、乾燥と焼結を行なうことで、簡便に第1微細凹凸構造と大2B委細凹凸構造による階層構造を形成できる。
表面処理については、第1の方法と同様にフッ素系表面処理剤と真空製膜によるDLCコーティングなどが適用される。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0033】
(第1微細凹凸構造(表面A)の作製)
表1記載の組成によりゾルA及びゾルBを調製し、これを表1記載の割合で混合し、スピンコーター用いて塗布した。塗付サンプルを表1記載の湿度雰囲気下で乾燥させ、焼結させた。作製した凹凸の形状は表2に記載した。
なお、表1中「TEOS」はテトラエトキシシラン、「TPOT」はテトラプロポキシチタネート、「MTES」はメチルトリエトキシシランを示している。
また、表2中「SG1」、「SG2」、「SG3」はゾルゲル法により成形された第1微細凹凸構造(表面A)を示す。
【0034】
(第2微細凹凸構造(表面B)の作製)
テクノクリア(奥野製薬社製)を用いて、第2の微細凹凸構造を作製した。
テクノクリアは洗浄工程、触媒形成工程(Sn層、Ag層、Pd層の3工程)、ZnO形成工程の5段階の処理工程からなり、表3に示す濃度の溶液に調製し、その溶液に第1微細凹凸を形成した基材を任意の時間浸漬した。
第2の微細凹凸の形状は表4に記載した。また、第1の微細凹凸との組合せと評価結果は表5に記載する。
【0035】
なお、表3中、NR1〜NR4は、第2微細凹凸構造(表面B)のナノロッドを示す。R−V2濃度は還元剤であるジメチルアミンボランのモル濃度、M−V2濃度は硝酸亜鉛のモル濃度を示している。
また、テクノクリアZN−R−V2&ZN−M−V2は、ジメチルアミンボランのモル溶液と硝酸亜鉛溶液示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
(針状粒子を用いた階層構造の作製)
第1の微細凹凸構造を作製するゾルAに針状粒子を添加し、第1の微細凹凸と同様の方法にて作製することで、表面から針状粒子が露出した階層構造が得られる。詳細な作製条件は表6に記載した。
【0042】
(フッ素系表面コーティング)
フッ素系の表面コーティングには、フロロサーフFG5020(フロロテクノロジー社製)又はNOVEC1720(3M社製)を用い、第1の微細凹凸及び第2の微細凹凸を形成した基材を10分間浸漬させ、150℃、1hr加熱した。詳細な作製条件は表7に記載した。
【0043】
(DLCコーティング)
DLCコーティングは、成膜原料ガスにメタンを用い、成膜温度200℃以下、成膜速度500nm/hrのCVD法により、10nmのDLCを成膜した。
【0044】
【表6】
【0045】
【表7】
【0046】
<性能評価>
(耐摩耗性評価)
耐磨耗性については、トラバース試験機(HEIDON社製)を用いて、100gf/cm2の荷重で7000回摩耗し、静置接触角を測定し、接触角保持率が80%以上を〇、50%〜80%を△、50%未満を×とした。得られた結果を表5及び表7に併記する。
【0047】
(接触角測定)
接触角はDSA100(Kruss社製)を用いて測定し、θ/2近似にて静置接触角を導出した。得られた結果を表5及び表7に併記する。
【0048】
(透明性評価)
ヘイズメーター(村上色彩社製)により、サンプルのヘイズを測定した。ヘイズがH≦1%のときを◎、1<H≦3のときを○、3<H≦10のときを△、H>10のときを×とした。得られた結果を表5及び表7に併記する。
【0049】
以上、本発明を若干の実施形態及び実施例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
例えば、第2微細凹凸構造を非常に微細なカーボンナノチューブやカーボンナノホーンなどの強靱な炭素構造体で形成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の透明撥水体は、耐擦傷性撥水構造体、例えば、ディスプレイやウインドウパネルなどの自動車部品を提供するものである。
本発明の透明撥水体は、自動車のウィンドシールドなどに適用しても長期耐候性に優れ、長期間超撥水性を維持できる。
【符号の説明】
【0051】
1 透明撥水体
10 第1微細凹凸構造
10p 凸部
10r 凹部
20 第2微細凹凸構造
20p 凸部
20r 凹部
30 薄膜
40 基材