【実施例】
【0010】
図1は、本発明の第1の実施例に係るVCSELの概略平面図である。同図において、番号10は、1つのVCSELが形成されたチップを表している。チップ10は、複数のVCSELが形成されたウエハーから切断されるものである。チップ10は、半絶縁性の半導体基板を用いて構成され、半絶縁性の半導体基板上に積層された半導体層をエッチングすることにより溝12が形成され、溝12内には、発光部として機能する円柱状のメサMが形成されている。メサMは、後に詳細に説明するように、半絶縁性の半導体基板に積層されたn型のコンタクト層、コンタクト層上に形成されたn型の下部半導体多層膜反射鏡、活性領域およびp型の上部半導体多層膜反射鏡を含んでいる。
【0011】
溝12は、メサMとメサMの側面の一部から延在するコンタクト層40を除き、半絶縁性の半導体基板を露出させるように形成され、溝12は、樹脂等の絶縁材料70によって充填される。メサMの頂部には、環状のp側電極20が形成され、p側電極20の中央の開口が光出射口20Aを規定する。p側電極20に接続される引き出し用の金属配線22は、絶縁材料70の表面を延在し、p側の電極パッド30に接続される。また、メサMの側面から延在するコンタクト層40を露出させるコンタクトホールが絶縁材料70に形成され、そのコンタクトホール内にコンタクト層40と接続するn側電極50が形成される。引き出し用の金属配線52は、コンタクトホールの側面を介してn側電極50に接続される。さらに引き出し用の金属配線52は、絶縁材料70の表面を延在し、n側の電極パッド60に接続される。
【0012】
図1(B)は、コンタクト層40を拡大した平面図である。同図に示すように、メサMの側面からは、コンタクト層40が距離Dで延在している。コンタクト層40は、n側電極50と下部半導体多層膜反射鏡間の導電経路を提供する。従って、距離Dは小さいことが望ましいが、他方、n側電極50とコンタクト層40との接触面積を十分に確保できる程度でなければならない。
【0013】
コンタクト層40下側の半円状の実線Q1は、メサMの側面とほぼ同一の側面を構成する。上側の半円状の破線Q2は、メサMの側面(外形)を表しており、従って、コンタクト層40は、メサMの側面Q2から側方へ延在する延在領域42を含んでいる。延在領域42は、メサMの径とほぼ等しい幅を有し、その端部44で幅が幾分広くなっている。端部44に示された破線46は、n側電極50との接触領域または絶縁材料70に形成されたコンタクトホールを表している。図示する例では、メサMの側面の曲率に応じてn側電極50が円弧状に形成され、それ故、端部44が円弧状に加工されている。上記したように、メサMを形成するときの最初のエッチングでは、基板上の全体のコンタクト層40が残存され、2回目のエッチングでは、
図1(B)に示すようなコンタクト層40が残存されように半絶縁性の基板が露出される。こうして、2段階のエッチングにより、メサM、コンタクト層40を含む溝12が形成される。
【0014】
次に、本実施例のVCSELの詳細な構成を
図2を参照して説明する。
図2(A)、(B)、(C)は、
図1のA−A線、B−B線およびC−C線断面図である。
図2(B)に示すように、本実施例のVCSELは、半絶縁性(真性)のGaAs半導体基板100上に、n型のコンタクト層40、コンタクト層40上に形成された高屈折率材料の半導体層と低屈折率材料の半導体層を交互に重ねたn型の下部分布ブラック型反射鏡(Distributed Bragg Reflector:以下、DBRという)102、下部DBR102上に形成された850nm帯の光を発光する活性領域104、活性領域104上に形成された高屈折率材料の半導体層と低屈折率材料の半導体層を交互に重ねたp型の上部DBR106を含んで構成される。
【0015】
コンタクト層40は、GaAs基板に格子整合可能な半導体材料から構成され、好ましくはGaAsから構成される。コンタクト層40は、n側電極50と下部DBR102との間の電気的な通路を提供するものであるから電気的抵抗が小さいことが望ましい。従って、コンタクト層40は、不純物濃度が比較的高い層であることが望ましく、n側電極50とオーミック接続されることが望ましい。n型不純物であるシリコンをドーピングした後のキャリア濃度は、例えば、1〜5×10
19cm
-3であり、下部DBR102を構成する層よりも不純物濃度が高くされる。また、コンタクト層40の膜厚は、比較的厚いことが望ましく、下部DBR102を構成する層の膜厚よりも厚い。
【0016】
下部DBR102は、例えば、Al
0.9Ga
0.1As層とAl
0.3Ga
0.7As層とのペアの複数層積層体であり、各層の厚さはλ/4n
r(但し、λは発振波長、n
rは媒質の屈折率)であり、これらを40ペアで積層している。n型不純物であるシリコンをドーピングした後のキャリア濃度は、例えば、3×10
18cm
-3である。
【0017】
活性領域104は、例えばアンドープのAl
0.6Ga
0.4As層から成る下部スペーサ層と、アンドープAl
0.11Ga
0.89As量子井戸層およびアンドープのAl
0.3Ga
0.7As障壁層からなる量子井戸構造と、量子井戸構造上に形成されるアンドープのAl
0.6Ga
0.4As層から成る上部スペーサ層とから構成される。
【0018】
上部DBR106は、例えば、Al
0.9Ga
0.1As層とAl
0.3Ga
0.7As層とのペアの複数層積層体であり、各層の厚さはλ/4n
rであり、これらを24ペアで積層している。p型不純物であるカーボンをドーピングした後のキャリア濃度は、例えば、3×10
18cm
-3である。
【0019】
上部DBR106の一部の低屈折率材料がAlAsまたはAlGaAs(例えば、Al
0.98Ga
0.02As)に置換される。酸化工程において、メサ内のAlAs層またはAlGaAs層が選択的に酸化され、電流狭窄層108が形成される。電流狭窄層108は、電気的に高抵抗または絶縁領域の酸化領域108Aと当該酸化領域108Aによって囲まれた非酸化領域108Bとを有し、これにより、p側電極20から注入されたキャリアが非酸化領域108B内で横方向に閉じ込められる。非酸化領域(酸化アパーチャ)108Bの径を適宜選択することで、基本横モードまたは高次横モードの制御が可能である。電流狭窄層108は、活性領域104の直上に形成してもよいが、その場合、電流狭窄層による光閉じ込め効果が大きくなり発光スペクトルが広がってしまうので、活性領域104と電流狭窄層108との間にDBRを構成する層を少なくとも1層介在させることが好ましい。
【0020】
また、素子の直列抵抗を下げるために、上部DBR106および/または下部DBR102中には、Al
0.9Ga
0.1As層とAl
0.3Ga
0.7As層との間に、その中間のアルミニウム混晶比を有する中間(グレーデッド)層を設けるようにしてもよい。
【0021】
基板上に形成された溝12は、例えばポリイミドやBCB(ベンゾシクロブテン)などの絶縁材料70によって充填される。好ましくは、絶縁材料70の表面72は、
図2(B)に示すように上部DBR106の表面とほぼ同一であることが望ましい。例えば、液状の絶縁材料70をウエハー上にスピンコートし、その後、硬化した絶縁材料70をCMP等により平坦化処理するようにしてもよい。
【0022】
絶縁材料70には、
図2(A)、(C)に示すようにコンタクト層40を露出させるためのコンタクトホール74が形成される。n側電極50は、例えばAuやGe/Auから構成され、コンタクトホール74を介してコンタクト層40に接続される。引き出し用の金属配線52およびn側の電極パッド60は、絶縁材料70の表面72上に形成される。引き出し用の金属配線52およびn側の電極パッド60は、n側電極50と同時に形成することができる。
【0023】
メサMの頂部には、例えば、AuまたはTi/Auなどから構成された環状のp側電極20が形成され、p側電極20は、上部DBR106に電気的に接続される。好ましくは上部DBR106の最上層に不純物濃度が高いp型のGaAsコンタクト層を形成することでp側電極110とのオーミック接続を得ることができる。引き出し用の金属配線22およびp側の電極パッド60は、絶縁材料70の表面72上に形成される。引き出し用の金属配線22およびp側の電極パッド60は、p側電極20と同時に形成することができる。
【0024】
なお、
図1、
図2に示す構成は、本発明の実施例の主要な構成を例示するものである。従って、例えば、光出射口20Aが露出されているが、光出射口20Aは、発振波長に対して透明な誘電体材料からなる保護膜によって覆われるようにしてもよい。また、メサMの底部、側面および頂部の周縁を覆うシリコン酸化物やシリコン窒化物等SiONやSiN等の層間絶縁膜が形成されるものであってもよい。
【0025】
次に、本実施例のVCSELの変調特性と低消費電力の関係について説明する。VCSELの変調特性は、次式に示されるような電気による帯域制限f1と光による帯域制限f2の積で決定される。ここで、Cは容量、Rは抵抗、Iは駆動電流(バイアス電流)、I
thは抵抗、σ
g/σ
nは微分利得を表す。
【数1】
【0026】
VCSELの低消費電力化を達成するためには駆動電流Iを低減すればよいが、駆動電流Iを低減するだけではf2が小さくなるため、変調特性が劣化してしまう。そこで、容量Cを低減することができればf1が改善され、全体として変調特性を劣化させることなく駆動電流Iを低減させることができる。
【0027】
VCSELの容量成分は、大きくVCSELのメサ内部とメサ外部とに分けることができる。メサ内部の代表的な容量成分は、下部DBR102と上部DBR106との間に存在する電流狭窄層(酸化層)である。他方、メサ外部では、引き出し用の金属配線や電極パッドが絶縁膜上に形成され、その絶縁膜の膜厚によって寄生容量が決まる。
【0028】
図3は、基板の表面側にp側の電極パッドとn側の電極パッドを形成する従来のVCSELの概略断面図である。比較を容易にするため、対応する構成には本実施例と同一の参照番号を用いている。従来のVCSELでは、半絶縁性の基板100上にn型のコンタクト層40が形成され、コンタクト層40が溝12の底部を構成する。そして、溝12内に絶縁材料70が充填され、絶縁材料70の表面に引き出し用の金属配線22、32、p側の電極パッド30およびn側の電極パッド60が形成される。つまり、引き出し用の金属配線22、32、p側の電極パッド30およびn側の電極パッド60の下方にはコンタクト層40が存在するため、そこに寄生容量が発生し、この寄生容量によって帯域制限f1が低減されてしまう。絶縁材料70の膜厚が厚くなれば寄生容量を小さくできるが、絶縁材料70の膜厚は、メサMの高さすなわちメサMの光学特性に依存するため、膜厚をむやみに大きくすることはできない。
【0029】
これに対し、本実施例のVCSELでは、コンタクト層40がメサMから距離Dで延在するだけであり、それ以外の溝12の底部は半絶縁性の半導体基板によって構成される。つまり、引き出し用の金属配線22、52、p側の電極パッド30およびn側の電極パッド60の直下あるいは下方の半導体基板100との間には、コンタクト層40を含む導電領域が存在しない。このため、金属配線22、52および電極パッド30、60の寄生容量を実質的になくすかあるいは大幅に削減することができる。従って、本実施例のVCSELでは、電気による帯域制限f1を増加させることができ、その結果、全体として変調特性を劣化させることなく駆動電流Iを低減して低消費電力化を図ることができる。
【0030】
なお、上記実施例では、溝12がチップ10の外周に沿うような矩形状に形成されたが、溝12は必ずしも矩形状に限らず、その他の形状、例えば円形状、楕円状であってもよい。また、上記実施例では、コンタクト層40の平面形状を
図1(B)に示すような形状にしたが、平面形状は任意である。要は、コンタクト層40の平面形状は、引き出し用の金属配線22、32、p側の電極パッド30およびn側の電極パッド60の下方にコンタクト層が存在せず、構造上の寄生容量を発生させなければよい。
【0031】
次に、本発明の第2の実施例に係るVCSELの断面図を
図4に示す。第2の実施例に係るVCSELは、第1の実施例のVCSELと同様の構成を有するが、メサMが2段階のエッチングにより構成され、その結果、コンタクト層40Aの延在領域42Aの膜厚が第1の実施例のときの延在領域42の膜厚よりも厚く形成される。これにより、コンタクト層40の抵抗を減少させることができるので、変調特性のさらなる改善をすることができる。
【0032】
次に、本発明の第3の実施例に係るVCSELの断面図を
図5に示す。第3の実施例に係るVCSELは、第1の実施例のように絶縁材料70による溝12の充填を行わずに、p側の電極パッド30およびn側の電極パッド60が溝12の底部にそれぞれ形成される。第3の実施例では、溝12を含む基板全面にSiONまたはSiN等の層間絶縁膜110が形成され、次に、層間絶縁膜110には、メサMの頂部の上部DBR106を露出させるコンタクトホール112と、コンタクト層40を露出させるコンタクトホール114が形成される。コンタクトホール112を介して環状のp側電極20が形成される。引き出し用の金属配線22およびp側の電極パッド30は、メサMの底部の層間絶縁膜110上に形成される。また、n側電極50は、コンタクトホール114を介してコンタクト層40に接続される。引き出し用の金属配線52およびn側の電極パッド60は、メサMの底部の層間絶縁膜110上に形成される。
【0033】
第3の実施例によれば、金属配線22、52、p側の電極パッド30およびn側の電極パッド60の直下または下方には、層間絶縁膜110および半絶縁正の半導体基板100が存在するだけであり、構造上の寄生容量が実質的になくなるか大幅に削除することができる。それ故、第1の実施例と同様に、変調特性を改善することができるとともに、低消費電力化を図ることができる。
【0034】
次に、本発明の第4の実施例について説明する。
図6は、第4の実施例に係るVCSELアレイの平面図である。同図に示すVCSELアレイのチップ10Aは、第1の実施例のときと同様に半絶縁性の半導体基板に到達する深さの溝12が形成される。溝12内に複数のメサM1〜M4が形成され、各メサから延在するコンタクト層はエッチングによりそれぞれ分離されている。つまり、金属配線52は、コンタクト層40を介して対応するメサの下部DBR102に電気的に接続され、隣接するメサの下部DBR102とは電気的に絶縁されている。
【0035】
このように本実施例のVCSELアレイによれば、各メサの寄生容量が低減されるだけでなく、n側のコンタクト層40が各メサ毎に分離されているため、VCSELを高周波駆動した際の電気的なクロストークを抑制することができる。なお、上記のアレイは、複数のメサが一次元に配列されるものであるが、複数のメサが二次元に配列されるものであってもよい。例えば、円周方向の複数のコアを有するマルチコアファイバに光結合されるVCSELアレイであれば、複数のメサは、基板上に円周方向に配列される。
【0036】
次に、本発明の実施例に係るVCSELの製造方法について説明する。有機金属気相成長法(MOCVD法)により、
図7(A)に示すように半絶縁性のGaAs半導体基板上に、GaAsコンタクト層40、下部DBR102、活性領域104および上部DBR106が順次積層される。次に、
図7(B)に示すように、上部DBR106上にエッチングマスクK1を形成し、当該エッチングマスクK1を用いて半導体層を異方性ドライエッチングすることにより溝12内に円柱状のメサMが形成される。エッチングマスクK1は、例えば窒化シリコン膜から構成され、エッチャントには例えば塩素系のガスが用いられる。メサMを形成するエッチングは、コンタクト層40が露出するようにエッチングの深さが制御される。
【0037】
次に、メサM内のAlAs層の酸化が行われる。例えば、ウエハーを350℃の水蒸気に約20分間接触させて、いわゆるウェット酸化を実施する。この酸化工程によりメサ側面からAlAs層が酸化されてAl
2O
3の酸化領域108Aと非酸化領域108Bとが形成される。このとき、GaAsコンタクト層40が露出されるが、コンタクト層40にはAlが含まれていないのでほとんど酸化されない。
【0038】
次に、エッチングマスクK1を除去し、
図7(C)に示すように、メサMとその側面から延在するコンタクト層40を覆うようなエッチングマスクK2が形成され、当該エッチングマスクK2を用いてコンタクト層40の異方性ドライエッチングが行われる。好ましくはエッチングマスクK2として、例えばレジスト、エッチャントとして塩素系のガスを用いる。レジストを用いた場合、レジストが後退してサイドエッチングが進行する。コンタクト層40の側面Q1は、元のメサと段差がない構造にするが、そのためにはサイドエッチングが進行して元のメサと重なるようにする。メサと重なるまではレジストの後退によってサイドエッチングが進行するが、メサと重なると元のメサとまとめてエッチングされるため段差のない側面Q1が得られる。こうして、エッチングマスクK2で覆われていない領域のコンタクト層40が除去され、半絶縁性の基板100が露出される。
【0039】
次に、
図8(D)に示すように、溝12が絶縁材料70によって埋め込まれる。絶縁材料70は、例えば、樹脂は、ポリイミドやベンゾシクロブテン(BCB)が用いら得る。また、絶縁材料70の平坦化処理を行い、絶縁材料70の表面と上部DBR106の表面との間に段差が生じないようにしてもよい。
【0040】
次に、公知のフォトリソ工程を用い、
図8(E)に示すように、絶縁材料70にコンタクト層40の接触領域46を露出させるためのコンタクトホール74が形成される。そして、メサMの頂部にはp側電極20が形成される。p側電極20の形成と同時に引き出し用の金属配線22およびp側の電極パッド30が形成されるようにしてもよい。また、コンタクトホール74内にn側電極50が形成される。n側電極50の形成と同時に引き出し用の金属配線52およびn側の電極パッド60が形成されるようにしてもよい。
【0041】
次に、第2の実施例に係るVCSELの製造工程を
図9に示す。
図9(A)に示すようなエッチングマスクK1を用いて異方性ドライエッチングが行われ、メサ前駆体Maが形成される。このエッチングにより、コンタクト層40が露出される。次に、エッチングマスクK1を除去した後、
図9(B)に示すようなエッチングマスクK2を用いて異方性ドライエッチングが行われ、メサ前駆体Maの一部が除去される。このエッチングは、少なくともAlAs層が露出される深さであればよい。次に、エッチングマスクK2を除去した後、酸化処理が行われ、メサMのAlAs層が選択酸化され電流狭窄層108が形成される。次に、
図9(C)に示すようなエッチングマスクK3が形成され、コンタクト層40がパターンニングされ、半絶縁性の半導体基板が露出される。以後の工程は、第1の実施例のVCSELと同様である。
【0042】
上記実施例では、典型的な形状としてメサを円柱状としたが、これに限らずメサは楕円状であってもよい。さらにVCSELを構成する半導体材料は、GaAs/AlGaAs系のみならず、発振波長等に応じて、III−V族の化合物半導体を適宜選択することができる。
【0043】
次に、本実施例のVCSELを利用した面発光型半導体レーザ装置、情報処理装置および光伝送装置について図面を参照して説明する。
図10(A)は、VCSELと光学部材を実装(パッケージ)した面発光型半導体レーザ装置の構成を示す断面図である。面発光型半導体レーザ装置300は、VCSELが形成されたチップ310を、導電性接着剤320を介して円盤状の金属ステム330上に固定する。導電性のリード340、342は、ステム330に形成された貫通孔(図示省略)内に挿入され、一方のリード340は、VCSELのn側電極に電気的に接続され、他方のリード342は、p側電極に電気的に接続される。
【0044】
チップ310を含むステム330上に矩形状の中空のキャップ350が固定され、キャップ350の中央の開口352内に光学部材のボールレンズ360が固定されている。ボールレンズ360の光軸は、チップ310のほぼ中心と一致するように位置決めされる。リード340、342間に順方向の電圧が印加されると、チップ310から垂直方向にレーザ光が出射される。チップ310とボールレンズ360との距離は、チップ310からのレーザ光の広がり角θ内にボールレンズ360が含まれるように調整される。また、キャップ内に、VCSELの発光状態をモニターするための受光素子や温度センサを含ませるようにしてもよい。
【0045】
図10(B)は、他の面発光型半導体レーザ装置の構成を示す図であり、同図に示す面発光型半導体レーザ装置302は、ボールレンズ360を用いる代わりに、キャップ350の中央の開口352内に平板ガラス362を固定している。平板ガラス362の中心は、チップ310のほぼ中心と一致するように位置決めされる。チップ310と平板ガラス362との距離は、平板ガラス362の開口径がチップ310からのレーザ光の広がり角度θ以上になるように調整される。
【0046】
図11は、VCSELを情報処理装置の光源に適用した例を示す図である。情報処理装置370は、
図10(A)または
図10(B)のようにVCSELを実装した面発光型半導体レーザ装置300または302からのレーザ光を入射するコリメータレンズ372、一定の速度で回転し、コリメータレンズ372からの光線束を一定の広がり角で反射するポリゴンミラー374、ポリゴンミラー374からのレーザ光を入射し反射ミラー378を照射するfθレンズ376、ライン状の反射ミラー378、反射ミラー378からの反射光に基づき潜像を形成する感光体ドラム(記録媒体)380を備えている。このように、VCSELからのレーザ光を感光体ドラム上に集光する光学系と、集光されたレーザ光を光体ドラム上で走査する機構とを備えた複写機やプリンタなど、情報処理装置の光源として利用することができる。
【0047】
図12は、
図10(A)に示す面発光型半導体レーザ装置を光伝送装置に適用したときの構成を示す断面図である。光伝送装置400は、ステム330に固定された円筒状の筐体410、筐体410の端面に一体に形成されたスリーブ420、スリーブ420の開口422内に保持されるフェルール430、およびフェルール430によって保持される光ファイバ440を含んで構成される。ステム330の円周方向に形成されたフランジ332には、筐体410の端部が固定される。フェルール430は、スリーブ420の開口422に正確に位置決めされ、光ファイバ440の光軸がボールレンズ360の光軸に整合される。フェルール430の貫通孔432内に光ファイバ440の芯線が保持されている。
【0048】
チップ310の表面から出射されたレーザ光は、ボールレンズ360によって集光され、集光された光は、光ファイバ440の芯線に入射され、送信される。上記例ではボールレンズ360を用いているが、これ以外にも両凸レンズや平凸レンズ等の他のレンズを用いることができる。さらに、光伝送装置400は、リード340、342に電気信号を印加するための駆動回路を含むものであってもよい。さらに、光伝送装置400は、光ファイバ440を介して光信号を受信するための受信機能を含むものであってもよい。さらにボールレンズ等の光学部材を用いることなくVCSELと光ファイバとが直接光学的に結合されるものであってもよい。さらにマルチコアファイバを用いる場合には、それに対応したVCSELアレイが用いられる。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。