(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記演算部は、生産される前記混合物の種類を変更する際に、前記移送装置廻り配管または前記タンク上流配管に残存する前記原料である残存原料を廃棄するための廃棄コスト、生産される前記混合物の種類の変更に伴う配管の洗浄コスト、及び前記終了時刻に起因して発生する作業員のコストを、前記付帯コストとして演算するコスト演算部を有することを特徴とする請求項1に記載の生産計画作成装置。
前記第1の混合物の生産終了後、前記第2の混合物の生産開始前に、前記移送装置廻り配管または前記タンク上流配管に残存し、前記第2の混合物の生産に使用されない前記残存原料の残存量を算出する残存量算出部を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の生産計画作成装置。
前記生産計画作成部は、複数の前記パターンのうち、前記移送装置廻り配管に残存する前記原料である残存原料の残存量及び前記タンク上流配管に残存する前記原料である残存原料の残存量の合計が最も少ない混合物の組合わせ及び生産順序のパターンを選択して前記生産計画を作成することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の生産計画作成装置。
前記最終原料設定部は、前記第1の混合物の前記レシピ情報と、前記第2の混合物の前記レシピ情報とに、同一種類の前記原料が存在しない場合に、前記第1の混合物に含まれる前記原料のうち混合量が最も多いものを前記最終原料として設定することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の生産計画作成装置。
前記最終原料設定部は、前記混合物に含まれる前記原料のうち、前記タンク上流配管に残存する前記原料である残存原料の残存量が最少となる前記原料を前記最終原料として設定することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の生産計画作成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記の従来技術では、生産予定日に使用可能な調合槽を選択するように、暫定計画を作成しているが、複数のタンクやポンプに接続された共用配管に残存する原料について考慮されていなかった。例えば、次に生産される製品で使用しない原料(廃棄原料)が共有配管に残存する場合には、次の製品を生産する前に、残存する原料を共有配管から除去し、供給配管内を洗浄する必要があった。そこで、本発明は、混合プラント内で生じる廃棄原料を抑制することが可能な生産計画作成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の生産計画作成装置は、複数の原料を混合して複数種類の混合物をそれぞれ生産する混合プラントにおける生産計画を作成する生産計画作成装置である。
混合プラントは、複数の原料を別々に貯留する複数の原料タンクと、原料タンクに貯留された原料を移送する1又は複数の移送ユニットを有する複数の移送装置と、移送装置によって移送された複数種類の原料が供給されて混合される複数の混合物タンクと、移送装置に接続された移送装置廻り配管と、移送装置廻り配管から分岐され混合物タンクに接続されたタンク上流配管と、を備えるものである。
【0006】
生産計画作成装置は、混合物に含まれる原料の種類及び当該原料の種類ごとの混合量を示すレシピ情報を記憶するレシピ情報記憶部と、移送ユニットの移送能力を示す機器情報を記憶する機器情報記憶部と、生産予定日において混合される混合物の種類ごとの生産量及び各混合物を生産する際に使用される移送装置を示す生産要求情報を記憶する生産要求情報記憶部と、生産要求情報に基づいて、移送ユニットを使用して生産される混合物の組合わせ及び生産順序を複数パターン分設定する生産パターン設定部と、生産パターン設定部で設定された複数パターンの混合物の組合わせ及び生産順序に従って混合物を生産した場合の生産予定日における生産に伴う付帯コストを演算してシミュレーションを実行する演算部と、演算部による演算結果に基づいて、混合物の組合わせ及び生産順序を複数パターンの中から選択し、生産計画として移送ユニットにおける原料の移送開始時間を設定する生産計画作成部とを備える。
生産パターン設定部は、生産予定の複数の混合物を移送ユニットに割り付けて、移送ユニットを使用して生産される混合物の組合せを設定する。
【0007】
演算部は、混合物を生産する際に、複数の原料のうち最後に移送される原料である最終原料を設定する最終原料設定部と、機器情報及び生産要求情報に基づいて、混合物の生産の終了時刻を算出する終了時間算出部と、を有する。
【0008】
最終原料設定部は、移送ユニットを使用して生産される混合物である第1の混合物のレシピ情報と、第1の混合物を生産する際に使用する同一の前記移送ユニットにおいて、第1の混合物の次に生産される混合物である第2の混合物のレシピ情報とを比較して、第1の混合物を生産する際に最後に移送される最終原料を設定する。
最終原料設定部は、第1の混合物のレシピ情報と、第2の混合物のレシピ情報とに、同一種類の原料が存在する場合に、当該同一種類の原料を最終原料として設定する。
【0009】
このような生産計画作成装置では、生産パターン設定部を備えているので、生産予定日において混合される混合物の種類ごとの生産量及び各混合物を生産する際に使用される移送装置を示す生産要求情報に基づいて、移送装置に含まれる移送ユニットを使用して生産される混合物の組合わせ及び生産順序を複数パターン分設定することができる。生産計画作成装置の演算部では、生産パターン設定部で設定された複数パターンの混合物の組合わせ及び生産順序に従って混合物を生産した場合の生産予定日における生産に伴う付帯コストを演算することができる。生産計画作成装置の生産計画作成部では、演算部による演算結果に基づいて、複数パターンの中から、混合物の組合わせ及び生産順序を選択し、生産計画として移送ユニットにおける原料の移送開始時間を設定する。
【0010】
同一の移送ユニットを使用して生産される複数の混合物のうち、先に混合される混合物を第1の混合物とし、この第1の混合物の次に混合される混合物を第2の混合物とする。生産計画作成装置の最終原料設定部では、第1の混合物のレシピ情報と第2の混合物のレシピ情報とを比較して、第1の混合物を生産する際に最後に移送される最終原料を設定することができる。これにより、同一の移送ユニットを使用して生産される前後の混合物(第1の混合物、第2の混合物)を比較して、複数パターンの中から生産順序を選択することができるので、混合プラント内で生じる廃棄原料を抑制することができる。
【0011】
また、生産計画作成装置の演算部では、終了時間算出部を備えているので、機器情報及び生産計画情報に基づいて、混合物の生産の終了時刻を算出することができる。これにより、終了時刻を参照して、作業員の人件費の増加分を把握することができる。生産計画作成装置では、人件費の増加を抑制することが可能な生産計画を作成することができる。
【0012】
また、演算部は、生産される混合物の種類を変更する際に、移送装置廻り配管またはタンク上流配管に残存する原料である残存原料を廃棄するための廃棄コスト、生産される混合物の種類の変更に伴う配管の洗浄コスト、及び終了時刻に起因して発生する作業員のコストを、付帯コストとして演算するコスト演算部を有する構成でもよい。コスト演算部によれば、付帯コストとして、混合物の種類の変更に伴う残存原料を廃棄するための廃棄コストを演算することができる。また、コスト演算部では、付帯コストとして、混合物の種類の変更に伴って実施される配管の洗浄コストを演算することができる。また、コスト演算部では、付帯コストとして、混合物の生産の終了時刻に起因して発生する作業員のコストを演算することができる。これらにより、付帯コストを把握して、付帯コストの増加を抑制することが可能な生産計画を作成することができる。
【0013】
生産計画作成装置は、生産される前記混合物の種類を変更する際に、移送装置廻り配管またはタンク上流配管に残存する残存原料の残存量を記憶する残存量記憶部を備え、コスト演算部は、残存量記憶部に記憶された残存原料の残存量に基づいて、廃棄コストを演算してもよい。この生産計画作成装置では、残存量記憶部を備えているので、事前に演算された残存量を記憶させておき、この記憶された残存量に基づいて、混合物の種類の変更に伴う廃棄コストを演算することができる。
【0014】
生産計画作成装置は、第1の混合物の生産終了後、第2の混合物の生産開始前に、移送装置廻り配管またはタンク上流配管に残存し、第2の混合物の生産に使用されない前記残存原料の残存量を算出する残存量算出部を備える構成でもよい。これにより、残存量を算出して、第2の混合物の生産開始前に、移送装置廻り配管または上流配管に残存する残存原料の残存量を把握することができる。
【0015】
生産計画作成部は、複数の前記パターンのうち、移送装置廻り配管に残存する原料である残存原料の残存量及びタンク上流配管に残存する原料である残存原料の残存量の合計が最も少ない混合物の組合わせ及び生産順序のパターンを選択して生産計画を作成してもよい。これにより、残存量を最少とすることができるので、混合物の種類の変更に伴って発生する廃棄コスト及び洗浄コストを最少とする生産計画を作成することができる。
【0016】
最終原料設定部は、第1の混合物のレシピ情報と、第2の混合物のレシピ情報とに、同一種類の原料が存在する場合に、当該同一種類の原料を前記最終原料として設定することができる。第1の混合物を生産する際に、第2の混合物で使用される原料を最終原料に設定することができるので、第1の混合物の原料を無駄にしない生産計画を作成することができる。その結果、廃棄される原料を削減することができる。
【0017】
最終原料設定部は、第1の混合物のレシピ情報と、第2の混合物のレシピ情報とに、同一種類の原料が存在しない場合に、第1の混合物に含まれる原料のうち混合量が最も多いものを最終原料として設定してもよい。この場合には、配管内に原料が残存したとしても、第1の混合物に含まれる原料のうち、多い方の原料が残存することになるので、少ない方の原料が残存する場合と比較して、第1の混合物の品質の影響(低下)を抑制することができる。例えば、配管内に残存した原料が、第1の混合物に含まれなかったと想定すると、同量の原料が不足した場合には、含有される割合の高い方の原料が不足した方が、含有される割合が低い方の原料が不足するよりも、品質への影響が少ない。
【0018】
最終原料設定部は、混合物に含まれる原料のうち、タンク上流配管に残存する原料である残存原料の残存量が最少となる原料を最終原料として設定してもよい。例えば、タンク上流配管を洗浄するための洗浄コストと、移送装置廻り配管を洗浄するための洗浄コストとを比較して、タンク上流配管を洗浄するための洗浄コストが高い場合には、タンク上流配管に残存する原料である残存原料の残存量を最少とした方が、洗浄コストを削減することができる。また、このように、洗浄コストを削減できるような最終原料を設定することも可能であるので、原料を流す順番の選択肢を増やすことができる。
【0019】
生産パターン設定部は、生産予定日において移送ユニットを使用して生産される混合物の全ての組合わせ及び全ての生産順序のパターンを設定し、演算部は、生産パターン設定部によって設定された全てのパターンについて付帯コストを演算し、生産計画作成部は、全てのパターンのうち最も付帯コストが低い混合物の組合わせ及び生産順序を選択する構成でもよい。これより、最も付帯コストが低い生産順序を選択することができるので、付帯コストを最小限に抑えることが可能な生産計画を作成することができる。そのため、複数の原料を移送する際の移送ユニットへの割当て(移送ユニットと混合物の組合わせ)及び生産順序を最適化することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、混合プラントでの原料の廃棄量を削減することが可能な生産計画を作成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る生産計画作成装置の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本発明の実施形態に係る生産計画装置は、多品種の製品を製造可能な混合プラントにおける生産計画を作成するものである。以下、潤滑油混合プラントにおける生産計画を作成する生産計画装置について説明する。
【0023】
(潤滑油混合プラント)
図1を参照して潤滑油混合プラントについて説明する。
図1は潤滑油混合プラントの概略構成図である。
図1に示す潤滑油混合プラント1は原料である基油を貯留する複数の原料タンク2、原料タンク2に貯留された基油を移送する複数の移送装置3、移送装置3によって移送された複数の原料が供給されて混合される複数の製品タンク(混合物タンク)4を備えている。また、これらの原料タンク2、移送装置3及び製品タンク4は、配管Lによって接続されている。
【0024】
(原料タンク)
複数の原料タンク2は、基油を油種ごとに貯留するものであり、1基の原料タンク2は1種類の基油を貯留している。潤滑油混合プラント1は、同じ油種の基油を貯留する原料タンク2を複数備えている。潤滑油混合プラント1では、例えば22基の原料タンク2を備え、10種類の基油を貯留している。原料タンク2には、機器を識別するために機器番号が設定されている。原料タンク2の機器番号としては、「T−101」、「T−102」などが設定されている。
図1では、複数の原料タンク2のうち、2基のみ図示している。原料タンク2は、原料移送配管L1によって、複数の移送装置3に適宜接続されている。
【0025】
(移送装置)
潤滑油混合プラント1では、例えば3つの移送装置3を備えている。移送装置3には、機器を識別するための機器番号が設定されている。移送装置3の機器番号としては、「ML−1」、「ML−2」、「ML−3」などが設定されている。
【0026】
移送装置3は、基油を移送する基油移送ポンプ(移送ユニット)5を備えている。移送装置3は、複数の基油移送ポンプ5を備えるものでもよく、1基のみの基油移送ポンプ5を備えるものでもよい。基油移送ポンプ5には、機器を識別するための機器番号が設定されている。基油移送ポンプ5の機器番号としては、「Pu−11」、「Pu−12」、「Pu−21」、「Pu−22」、「Pu−31」などが設定されている。
【0027】
潤滑油混合プラント1では、移送装置3(ML−1)は、2基の基油移送ポンプ5(Pu−11、Pu−12)を備えている。移送装置3(ML−2)は、2基の基油移送ポンプ5(Pu−21、Pu−22)を備えている。移送装置3(ML−3)は、1基の基油移送ポンプ5(Pu−31)を備えている。
【0028】
(製品タンク)
複数の製品タンク4は、製品である潤滑油を油種ごとに貯留するものであり、1基の製品タンク4は1種類の潤滑油を貯留している。また、製品タンク4である貯留槽としては、容量が比較的大きいタンクや、貯留可能な容量が比較的小さいベッセルなどがある。製品タンク4には、機器を識別するために機器番号が設定されている。製品タンク4の機器番号としては、「T−301」、「T−302」、「VE−601」、「VE−602」などが設定されている。製品タンク4は、タンク上流配管L3によって、複数の移送装置3に適宜接続されている。
【0029】
(ポンプ廻り配管の接続関係)
次に
図2を参照して、ポンプ廻り配管(移送装置廻り配管)L2の接続関係について説明する。基油移送ポンプ5の入口側の配管L2には、複数の原料移送配管L1が接続されている。例えば、原料移送配管L1は、原料タンク2に接続されている。配管L2は、油種が異なる複数の基油が流れる競合配管として機能する。なお、油種が異なる複数の基油は、同時に流れるわけではなく、順番に流れることになる。例えば、1番目の油種である基油Aが流れた後に、2番目の油種である基油Bが流れることになる。
【0030】
基油移送ポンプ5の出口側のポンプ廻り配管L2には、複数のタンク上流配管L3が接続されている。ポンプ廻り配管L2は、油種が異なる複数の基油が流れる競合配管として機能する。タンク上流配管L3は、ポンプ廻り配管L2から複数に分岐されて複数の製品タンク4に各々接続されている。
【0031】
(スロップタンク)
潤滑油混合プラント1は、配管L2,L3内に残留した基油を廃棄する際に利用されるスロップタンク6を備えている。スロップタンク6は、スロップ配管L11,L12を介して各配管に接続されている。
【0032】
(添加剤注入設備)
潤滑油混合プラント1には、潤滑油に添加される添加剤を注入するための添加剤注入設備7が設けられている。添加剤注入設備7は、添加剤を貯留する複数の添加剤槽8,9、添加剤を移送する添加剤移送ポンプ10を有する。また、これらの添加剤槽8,9及び添加剤移送ポンプ10は、添加剤移送配管L15によって接続され、この添加剤移送配管L15は、基油移送ポンプ5の下流側の配管に接続されている。
【0033】
(生産計画作成装置)
次に生産計画作成装置20について説明する。
図3は生産計画作成装置の概略図である。生産計画作成装置20は、各種データを入力するための入力部21、入力されたデータに基づいて生産計画を作成する電子制御ユニット22、電子制御ユニット22による処理結果を出力する出力部23を備えている。
【0034】
入力部21は、操作者(ユーザ)によって操作される入力手段(例えば、キーボードなど)や、各種記録媒体との接続を可能とする接続部を有するものである。
【0035】
出力部23は、電子制御ユニット22によって作成されたスケジュールを出力するものであり、画像表示装置や印字装置を有するものである。
【0036】
電子制御ユニット22は、演算処理を行うCPU、記憶部となるROM及びRAM、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などにより構成されている。電子制御ユニット22の記憶部は、機器情報記憶部25、レシピ情報記憶部26、生産要求情報記憶部27を有する。電子制御ユニット22では、記憶部に記憶されたプログラムを実行することで、生産パターン設定部29、演算部30、生産計画作成部31が構築される。
【0037】
(機器情報記憶部)
機器情報記憶部25は、潤滑油混合プラント1の各種機器に関する情報を記憶する。
図4は、機器情報の一例を示す図である。
図4では、基油移送ポンプ5及び添加剤移送ポンプ10の「機器番号」、「ポンプ能力」、「用途」、「移送装置」について例示している。「ポンプ能力」とは、ポンプによる移送能力であり、単位時間当たりの流量を示している。「用途」は、ポンプで移送される流体などを示している。「移送装置」は、基油移送ポンプ5がどの移送装置3に含まれるかを示している。例えば、Pu−11である基油移送ポンプ5は、ポンプ能力が50KL/Hであり、用途は基油移送用であり、ML−1である移送装置3に含まれている。
【0038】
機器情報記憶部25には、その他の機器情報として、原料タンク2に関する機器情報、製品タンク4に関する機器情報、配管に関する機器情報が記憶されている。原料タンク2に関する機器情報として、「機器番号」、「貯留されている基油の種類」、「貯蔵量」、「配管の接続関係」に関する情報がある。製品タンク4に関する機器情報として、「機器番号」、「貯留される潤滑油の種類」、「貯蔵量」、「配管の接続関係」に関する情報がある。配管に関する機器情報として、「機器番号」、「内部流体の種類」、「滞留量」、「機器の接続関係」に関する情報がある。「滞留量」は、バルブ間の配管の長さ、配管の仕様(口径)から算出される。
【0039】
(レシピ情報記憶部)
レシピ情報記憶部26は、潤滑油混合プラント1で生産される潤滑油に関する情報を記憶する。
図5では、潤滑油の「製品番号(製品名)」、「混合される基油の種類」、「基油の混合量」、「添加剤の種類」、「添加剤の添加量」について例示している。「製品番号」は、製品を識別するための番号である。製品番号の他に、製品名などを記憶してもよい。
【0040】
図5の表では、最上段の項目に潤滑油の「製品番号」が示され、最も左側の項目に「基油の種類」または「添加剤の種類」が示されている。表中の該当する欄には、「混合量」または「添加量」が示されている。例えば、製品番号1の潤滑油の場合には、基油Aの混合量は30KL、基油Bの混合量は50KL、添加剤Aの添加量は10KLである。
【0041】
(生産要求情報記憶部)
生産要求情報記憶部27は、計画期間における各生産予定日に生産される製品名(製品の種類)及び生産量に関する情報(生産要求情報)を記憶する。
図6では、生産要求情報である週次計画を示している。週次計画では、「製品番号」、「製品名」、「製品タンク」、「生産量」、「移送装置」が示されている。「製品タンク」は、生産された製品が貯留される製品タンク4を示している。「移送装置」は、その製品を生産する際に使用される移送装置3を示している。
【0042】
例えば、製品番号1の潤滑油の「製品名」は製品AAであり、製品が貯留されるタンクはT−301であり、生産量は30KLであり、生産する際に使用される移送装置3はML−1である。この場合、使用される移送装置3はML−1であることは示されているが、複数の基油移送ポンプ5のうち何れを使用するのかは設定されていない。
【0043】
(生産パターン設定部)
生産パターン設定部29は、生産要求情報に基づいて、基油移送ポンプ5を使用して生産される製品の組合わせ及び生産順序を複数パターン分設定するものである。
図7では、ML−1の移送装置3における全ての製品の組合わせ及び生産順序を示している。
【0044】
図6に示された週次計画では、ML−1の移送装置3を使用する製品として、「製品番号1の製品AA」、「製品番号2の製品BB」、「製品番号6の製品FF」が示されている。生産パターン設定部29は、これらの製品AA、製品BB、製品FFを、基油移送ポンプ5(Pu−11、Pu−12)に割当て、生産順序の全てのパターン(ケース1〜ケース24)を列挙する。
【0045】
図7では、製品AAを「1」、製品BBを「2」、製品FFを「6」として示している。また、生産順序を「→」で示している。例えば、ケース1では、Pu−11を用いて製品AAを生産し、Pu−12を用いて製品BBを生産した後に、製品FFを生産することを示している。ケース12では、Pu−11を用いて製品BBを生産した後に、製品AAを生産し、Pu−12を用いて製品FFを生産することを示している。ケース20では、Pu−11は使用せず、Pu−12を用いて、製品AA、製品FF、製品BBの順に生産することを示している。
【0046】
(演算部)
演算部30は生産パターン設定部29で設定された複数パターンの製品の組合わせ及び生産順序に従って製品を生産した場合について、生産予定日における生産に伴う付帯コストを演算してシミュレーションを実行する。生産に伴う付帯コストとは、製品の種類の変更に伴い発生するコストであり、配管洗浄を行うためのコスト、配管内に残留する滞留油の廃棄コスト、作業時間の超過に伴う作業員の残業代などを含む。演算部30は、最終原料設定部33、残存量算出部34、終了時間算出部35及びコスト演算部36を有する。
【0047】
(最終原料設定部)
最終原料設定部33は、製品を生産する際に、複数の原料のうち最後に移送される原料である最終原料であるエンド油を設定する。同一の基油移送ポンプ5を用いて生産される複数の製品のうち、先に生産される製品を第1の製品(第1の混合物)とし、第1の製品の後に生産される製品を第2の製品(第2の混合物)とした場合に、最終原料設定部33は、第1の製品のレシピ情報と、第2の製品のレシピ情報とを比較してエンド油を設定する。
【0048】
最終原料設定部33は、第1の製品のレシピ情報と、第2の製品のレシピ情報とに同一の基油が存在する場合には、同一の基油を、第1の製品のエンド油として設定する。最終原料設定部33は、第1の製品のレシピ情報と、第2の製品のレシピ情報とに同一の基油が存在しない場合には、第1の製品のレシピ情報を参照して最も混合量が多い基油を第1の製品のエンド油として設定する。
【0049】
また、最終原料設定部33は、タンク上流配管L3またはポンプ廻り配管L2に残存原料が滞留して、残存原料を廃棄する必要がある場合には、タンク上流配管L3の残存原料を廃棄しないで済むようにエンド油を設定する。タンク上流配管L3内の残存原料を廃棄するための作業時間と、ポンプ廻り配管L2の残存原料を廃棄するための作業時間を比較すると、ポンプ廻り配管L2の残存原料を廃棄するための作業時間の方が短いため、タンク上流配管L3の残存原料を廃棄しないようにする。
【0050】
(残存量算出部)
残存量算出部34は、生産される製品の種類を変更する際に、ポンプ廻り配管L2またはタンク上流配管L3に滞留する原料である残存原料の滞留量を算出する。ポンプ廻り配管L2とは、基油移送ポンプ5の上流側及び下流側に接続された配管であり、上流側の配管のうち基油移送ポンプ5に最も近いバルブV1から、下流側の配管のうち基油移送ポンプ5に最も近いバルブV2までの区間である。タンク上流配管L3とは、基油移送ポンプ5の下流側の配管のうち基油移送ポンプ5に最も近いバルブV2から、製品タンク4の上流側の配管のうち、製品タンク4に最も近いバルブV3までの区間である。
【0051】
残存量算出部34は、機器情報、製品のレシピ情報、及び製品の生産順序に基づいて、ポンプ廻り配管L2に残留する残留原料の滞留量(ポンプ端切油)、又はタンク上流配管L3に残留する残留原料の滞留量(ブレンド配管端切油)を演算する。残存量算出部34は、製品のレシピ情報及び製品の生産順序に基づいて、配管内に滞留する残留原料の油種を判定する。残存量算出部34は、機器情報に基づいて滞留量を演算する。滞留量は、配管の長さ及び口径から算出できるので、算出した値を記憶して利用することができる。生産計画作成装置20は、ポンプ廻り配管L2に残留する残留原料の滞留量又はタンク上流配管L3に残留する残留原料の滞留量を記憶する滞留量記憶部(残存量記憶部)を備えていてもよい。事前に滞留量を演算しておき、この値を滞留量記憶部に記憶させておくことができ、滞留量記憶部に記憶された滞留量を用いて、付帯コストを算出することができる。
【0052】
(終了時間算出部)
終了時間算出部35は、機器情報及び生産要求情報に基づいて、製品の生産の終了時刻を算出する。終了時間算出部35は、生産量をポンプ能力の値で除算することで、基油の移送時間を算出することができる。移送開始時間に移送時間を加算することで、移送終了時刻を算出し、生産の終了時刻を得る。
【0053】
(コスト演算部)
コスト演算部36は、残存原料を廃棄するための廃棄コスト、生産される製品の種類の変更に伴う配管の洗浄コスト、及び生産の終了時刻に起因して発生する作業員のコストを、付帯コストとして演算する。コスト演算部36は、残留原料の滞留量に基づいて廃棄コストを算出する。コスト演算部36は、製品の種類の変更に伴い残留原料が発生する場合に、配管洗浄が必要であると判定し、洗浄コストを算出する。コスト演算部36は、生産の終了時刻が作業員の通常時(定時)の作業終了時刻を超えると判定した場合に、作業員の残業代を算出する。これらのコストは、事前に算出可能であるので、事前に算出した値を記憶して利用することができる。
【0054】
(生産計画作成部)
生産計画作成部31は、生産計画として、各基油移送ポンプ5における基油の移送開始時刻を設定する。生産計画作成部31は、演算部30による演算結果に基づいて、製品の組合わせ及び生産順序を複数パターンの中から選択し、生産計画を作成する。生産計画作成部31は、付帯コストが最小となる生産パターン(製品の組合わせ及び生産順序)を選択して、生産計画を設定する。
【0055】
図8は、生産計画であるガントチャートの一例を示す図である。
図8では、各生産予定日(1日目、2日目、…、)について、各移送装置3の基油移送ポンプ5ごとに作業の開始時刻及び終了時刻が示されている。作業としては、ポンプ廻り配管L2の洗浄作業、タンク上流配管L3の洗浄作業、原料の移送作業などがある。
【0056】
図9は、生産計画の一例を示す図である。
図9の表では、上段の項目に「製品番号」、「製品名」、「割当てポンプ」、「移送順序」、「移送開始時刻」が記載されている。例えば、製品番号1の製品AAは、Pu−11の基油移送ポンプ5を用いて生産され、生産する際には、基油Aを移送した後に、基油Bを移送する。製品AAを生産する際において、基油の移送を開始する時刻は10:00であることが示されている。
【0057】
(動作の説明)
次に、生産計画作成装置20の動作について説明する。
まず、生産計画の作成に必要な各種データを、入力部21を用いて入力する。操作者は、例えば、機器情報、レシピ情報、生産要求情報を入力する。入力された機器情報は、機器情報記憶部25に記憶され、レシピ情報はレシピ情報記憶部26に記憶され、生産要求情報は生産要求情報記憶部27に記憶される。機器情報及びレシピ情報は、一度記憶すればよく、機器の変更や、レシピの変更に応じて適宜修正される。生産要求情報は、生産計画を作成する際に、その都度入力される。
【0058】
図10は生産計画の作成手順を示すフローチャートである。まず、ステップS1では、計画期間の各生産予定日の各移送装置について製品を割り当てる。生産パターン設定部29は、生産要求情報記憶部27に記憶されている生産要求情報(
図6の週次計画)を参照して、製品を各移送装置3(ML−1、ML−2、ML−3)に割り当てる。例えば、「製品AA」、「製品BB」及び「製品FF」をML−1に割当て、「製品CC」、「製品DD」及び「製品EE」をML−2に割当て、「製品GG」、「製品HH」、「製品KK」及び「製品MM」をML−3に割り当てる。
【0059】
次にステップS2では、生産予定日について、各基油移送ポンプ5における製品の組合わせ及び生産順序を列挙する。生産パターン設定部29は、ステップS1で設定された製品の割当てに従って、各基油移送ポンプ5で移送されて生産される製品の組合わせ及び生産順序の全ての生産パターンを設定する。
【0060】
図7に示されるように、例えば、ML−1に割当てられた製品AA(製品番号1)、製品BB(製品番号2)及び製品FF(製品番号6)について、Pu−11に割り当てられる製品の組合わせ、Pu−12に割り当てられる製品の組合わせ、Pu−11における生産順序、Pu−12における生産順序の全ての生産パターンを列挙する。
【0061】
(シミュレーションの実行)
次にステップS3では、ステップS2で設定された全ての生産パターン(製品の組合わせ及び生産順序)について、シミュレーションを実行する。
【0062】
(エンド油の設定)
ステップS3では、
図11に示すフローチャートに従って、エンド油(最終原料)を設定する。
【0063】
エンド油を設定する処理のステップS11では、次の製品に同一の基油が存在するか否かを判定する。最終原料設定部33は、前後の製品のレシピ情報を参照して、先に生産される第1の製品のレシピ情報と次に生産される第2の製品のレシピ情報とを比較して、同一の基油が存在するか否かを判定する。同一の基油が存在する場合には、ステップS12に進み、同一の基油をエンド油として設定する。同一の基油が存在しない場合には、ステップS13に進み混合量の多い基油をエンド油として設定する。
【0064】
例えば、
図7に示すケース11の場合については、Pu−11において、先に製品番号1の製品が生産され、次に製品番号2の製品が生産されるので、
図5に示すレシピ情報を参照して、同一の基油が存在するか否か判定する。この場合には、製品番号1では基油A及び基油Bが存在し、製品番号2では基油A及び基油Cが存在するので、ステップS12に進み、同一の基油Aが製品番号1を生産する際のエンド油として設定する。
【0065】
例えば、
図7のケース7の場合については、Pu−11において、先に製品番号2の製品が生産され、次に製品番号6の製品が生産されるので、
図5に示すレシピ情報を参照して、同一の基油が存在するか否かを判定する。この場合には、製品番号2では基油A及び基油Cが存在し、製品番号6では基油B及び基油Dが存在するので、同一の基油が存在しないと判定して、ステップS13に進み、製品番号2において混合量が多い基油Cをエンド油として設定する。
【0066】
(タンク上流配管における滞留量の算出)
次にステップS3では、
図12に示すフローチャートに従って、タンク上流配管L3に残留する残存原料の滞留量を算出する。
【0067】
タンク上流配管L3における滞留量を算出する処理のステップS21では、生産予定日の前日の最終製品のエンド油と同一の基油が、生産予定日において最初に生産される製品に存在するか否かを判定する。残存量算出部34は、生産予定日の最初の製品のレシピ情報を参照して、前日の最終製品のエンド油と同一の基油が、生産予定日において最初に生産される製品のレシピ情報に存在するか否かを判定する。同一の基油が存在する場合には、ステップS23に進み、同一の基油が存在しない場合には、ステップS22に進む。
【0068】
例えば、前日の最終製品のエンド油が基油Cであり、生産予定日において最初に生産される製品が製品番号1である場合には、製品番号1には、基油A及び基油Bが存在し、基油Cが存在しないので、この場合には、ステップS22に進み、タンク上流配管L3における滞留量に500Lを加算する。なお、この500Lは機器情報に基づいて、事前に算出され記憶された値である。
【0069】
ステップS22のあと、ステップS23に進み、次の製品(第2の製品)に、先の製品(第1の製品)のエンド油と同一の基油が存在するか否かを判定する。同一の基油が存在する場合には、ここでの処理を終了し、同一の基油が存在しない場合には、ステップS24に進む。
【0070】
ステップS24では、次の製品(第2の製品)の基油の種類数×500Lをタンク上流配管L3における滞留量に加算する。
【0071】
例えば、
図7のケース7の場合には、Pu−11において、先に製品番号2の製品が生産され、次に製品番号6の製品が生産される。
図5に示すレシピ情報を参照して、同一の基油が存在するか否かを判定する。この場合には、製品番号2では基油A及び基油Cが存在し、製品番号6では基油B及び基油Dが存在するので、同一の基油が存在しないと判定して、ステップS24に進み、製品番号6の基油の種類数(2種類:基油B、基油D)×500L(=2×500L)をタンク上流配管L3における滞留量に加算する。すなわち、ステップS21において、同一の基油が存在すると判定されている場合には、滞留量は1000Lとなり、ステップS21において、同一の基油が存在しないと判定されている場合には、滞留量は1500Lとなる。
【0072】
(ポンプ廻り配管における滞留量の算出)
次にステップS3では、
図13に示すフローチャートに従って、ポンプ廻り配管L2に残留する残留原料の滞留量を算出する。
【0073】
ポンプ廻り配管L2における滞留量を算出する処理のステップS31では、ポンプ廻り配管L2に滞留する基油と同一の基油が次の製品に存在するか否かを判定する。残存量算出部34は、レシピ情報を参照して、ポンプ廻り配管L2に滞留する基油と同一の基油が次の製品に存在する場合には、ステップS32に進み、同一の基油が次の製品に存在しない場合には、ステップS33に進む。
【0074】
ステップS32では、ポンプ廻り配管L2における滞留量無し(次の製品で使用可能)と設定し、ステップS33では、ポンプ廻り配管L2における滞留量を500Lに設定する。
【0075】
(生産終了時刻の算出)
また、ステップ3では、生産予定日における生産終了時刻の算出を行う。終了時間算出部35は、各製品の生産時間を算出して、各基油移送ポンプ5における生産終了時刻を算出する。同一の基油移送ポンプ5を用いて複数の製品を生産する場合には、それぞれの生産時間を加算する。また、油種変更に伴い、配管の洗浄作業が発生する場合には、配管の洗浄作業の作業時間を加算する。
【0076】
(生産時間の算出例1)
製品番号1の製品を、Pu−11を使用して生産する場合の生産時間の算出について説明する。製品番号1の製品では、
図5に示すように、基油Aを30KL、基油Bを50KL、添加剤Aを10KL混合する。Pu−11のポンプ能力は、
図4に示すように、50KL/Hであり、添加剤Aを移送するPu−91のポンプ能力は4KL/Hである。また、この製品を生産する場合には、添加剤希釈槽の洗浄作業として、0.2時間分の作業が発生する。
【0077】
この場合には、基油の移送には、1.6時間(=80KL/50KL)かかり、添加剤の移送には、2.5時間(=10KL/4KL)かかる。基油の移送と添加剤の移送は同時に行われ、基油の移送時間と添加剤の移送時間のうち長い方の時間が生産時間の算出に採用される。このときの生産時間は、添加剤の移送時間(2.5時間)に、添加剤希釈槽の洗浄作業時間(0.2時間)が加算されて、2.7時間となる。
【0078】
(生産時間の算出例2)
製品番号2の製品を、Pu−11を使用して生産する場合の生産時間の算出について説明する。製品番号2の製品では、
図5に示すように、基油Aを30KL、基油Cを50KL、添加剤Bを10KL混合する。
図4に示すように、添加剤Bを移送するPu−92のポンプ能力は10KL/Hである。
【0079】
この場合には、基油の移送には、1.6時間(=80KL/50KL)かかり、添加剤の移送には、1.0時間(=10KL/10KL)かかる。このときの生産時間は、基油の移送時間(1.6時間)に添加剤希釈槽の洗浄作業時間(0.2時間)が加算されて、1.8時間となる。
【0080】
(生産時間の算出例3)
製品番号3の製品を、Pu−11を使用して生産する場合の生産時間の算出について説明する。製品番号3の製品では、
図5に示すように、基油Aを30KL、基油Bを50KL、添加剤Aを5KL、添加剤Bを5KL混合する。
【0081】
この場合には、基油の移送時間には、1.6時間(=80KL/50KL)かかり、添加剤の移送には、1.75時間(=(5KL/4KL)+(5KL/10KL))かかる。このときの生産時間は、添加剤の移送時間(1.75時間)に添加剤希釈槽の洗浄作業時間(0.2時間)が加算されて、1.95時間となる。
【0082】
(付帯コストの算出)
また、ステップS3では、付帯コスト(配管洗浄のコスト、滞留油の廃棄コスト、作業員の残業代)の算出を行う。コスト演算部36は、配管の洗浄作業が必要であるか否かを判定し、配管の洗浄作業が必要である場合には、配管洗浄のコストを付帯コストに加算する。配管の洗浄作業が必要なケース、配管の洗浄作業が必要ではないケースについては後述する。
【0083】
また、コスト演算部36は、滞留油の廃棄が必要であるか否かを判定し、滞留油の廃棄が必要である場合には、滞留油の廃棄コストを付帯コストに加算する。滞留油の廃棄が必要なケース、滞留油の廃棄が必要ではないケースについては後述する。
【0084】
また、コスト演算部36は、作業員の残業代が発生するか否かを判定し、残業代が発生する場合には、残業代を付帯コストに加算する。コスト演算部36は、生産終了時刻が、作業員の通常の作業終了時間を超える場合には、残業代を算出して付帯コストに加算する。コスト演算部36は、生産パターン設定部29で設定された全ての生産パターンについて、それぞれ付帯コストを設定する。
【0085】
ステップS3の終了後、ステップS4を実行する。ステップS4では、付帯コストが最小となる製品の組合わせ及び生産順序を選択して、当該移送装置3における生産計画を作成する。生産計画作成部31は、全ての生産パターン(ケース1〜ケース24)の中から最も付帯コストが低い生産パターンを選択する。生産計画作成部31は、選択した生産パターンに基づいて、当該移送装置3における製品の生産開始時刻、基油の移送順序を設定する。
【0086】
次に、ステップS5では、生産予定日において、全ての移送装置3について生産計画を作成したか否かを判定する。複数の移送装置3のうち、ML−1、ML−2、ML−3の全てについて、生産計画を作成したら、ステップS5に進み、生産計画を作成していない移送装置3が残っている場合には、ステップS2〜ステップS4を実行して生産計画を順次作成する。
【0087】
次に、ステップS6では、計画期間における全ての生産予定日について生産計画を作成したか否かを判定する。計画期間内の複数の生産予定日のうち、全てについて生産計画を作成したら、処理を終了し、生産計画を作成していない生産予定日が残っている場合には、ステップS2〜ステップS5を実行して残りの生産予定日について生産計画を順次作成する。
【0088】
(滞留油が発生しない事例)
次に、滞留油が発生するか否かの判定について説明する。
タンク上流配管L3には基油Aが残存し、ポンプ廻り配管L2には基油Aが残存した状態において、次に生産される製品で基油Aを使用する場合について説明する。この場合には、タンク上流配管L3及びポンプ廻り配管L2に基油Aが存在し、その基油Aを次の製品で使用することができるので、タンク上流配管L3における滞留油及びポンプ廻り配管L2における滞留油は、発生しないと設定する。このとき、滞留油の廃棄は不要であり、配管の洗浄作業は発生しない。
【0089】
(ポンプ廻り配管に滞留油が発生する事例)
タンク上流配管L3には基油Aが残存し、ポンプ廻り配管L2には基油Bが残存した状態において、次に生産される製品で基油Aを使用し、基油Bを使用しない場合について説明する。この場合には、ポンプ廻り配管L2に残存する基油Bを基油Aに置き換える必要がある。そのため、ポンプ廻り配管L2における滞留油は発生すると設定し、タンク上流配管L3における滞留油は発生しないと設定する。このとき、ポンプ廻り配管L2における滞留油の廃棄が必要であり、ポンプ廻り配管L2の洗浄作業が必要となる。
【0090】
(タンク上流配管に滞留油が発生する事例)
タンク上流配管L3には基油Bが残存し、ポンプ廻り配管L2には基油Aが残存した状態において、次に生産される製品で基油Aを使用し、基油Bを使用しない場合について説明する。この場合には、タンク上流配管L3に残存する基油Bを基油Aに置き換える必要がある。そのため、タンク上流配管L3における滞留油は発生すると設定し、ポンプ廻り配管L2における滞留油は発生しないと設定する。このとき、タンク上流配管L3における滞留油の廃棄が必要であり、タンク上流配管L3の洗浄作業が必要となる。
【0091】
(ポンプ廻り配管及びタンク上流配管に滞留油が発生する事例)
タンク上流配管L3には基油Bが残存し、ポンプ廻り配管L2には基油Bが残存した状態において、次に生産される製品で基油Aを使用し、基油Bを使用しない場合について説明する。この場合には、タンク上流配管L3及びポンプ廻り配管L2に残存する基油Bを基油Aに置き換える必要がある。そのため、タンク上流配管L3及びポンプ廻り配管L2に滞留油が発生すると設定する。このとき、タンク上流配管L3及びポンプ廻り配管L2における滞留油の廃棄が必要であり、タンク上流配管L3及びポンプ廻り配管L2の洗浄作業が必要となる。
【0092】
(滞留油で生産量をまかなえる事例)
タンク上流配管L3には500Lの基油Bが残存し、ポンプ廻り配管L2には500Lの基油Aが残存した状態において、次に生産される製品で、基油Aを3.5KL混合し、基油Bを3.5KL混合する場合について説明する。この場合には、タンク上流配管L3に残存する500Lの基油Bをそのまま使用することができ、ポンプ廻り配管L2に残存する500Lの基油Aを使用することができる。4.0KLの基油Aを更に移送すればよい。このとき、滞留油の廃棄は不要であり、配管の洗浄作業は発生しない。
【0093】
(滞留油が生産量に満たない事例)
タンク上流配管L3には500Lの基油Bが残存し、ポンプ廻り配管L2には500Lの基油Aが残存した状態において、次に生産される製品で、基油Aを3.5KL混合し、基油Bを0.4KL混合する場合について説明する。この場合には、タンク上流配管L3に残存する500Lの基油Bを廃棄し、ポンプ廻り配管L2に残存する500Lの基油Aを使用することができる。ここでは、タンク上流配管L3に残存する500Lの基油Bを廃棄した後、400Lの基油Bをポンプ廻り配管L2に導入した後、3.5KLの基油Aをポンプ廻り配管L2に導入して移送する。このとき、配管の洗浄作業は発生しない。
【0094】
このような生産計画作成装置20によれば、全ての生産パターンについて、シミュレーションを実行しているので、潤滑油混合プラント1で発生する残存原料の廃棄量を削減することができる。また、残存原料の廃棄量を減らすように基油の移送順序が設定されるので、配管の洗浄作業を削減し、洗浄作業に係るコストを抑えることができる。また、生産計画作成装置20では、生産時間を算出することができ、残業代を考慮して、生産計画を作成することができる。
【0095】
図14は、生産計画作成装置20によって作成された生産計画に基づく計算結果、及び実績データを示す表である。
図14中の実績データとは、従来通り、作業員の知識や経験に基づいて、作業員が手作業で生産計画を作成した場合のデータである。
図14中のスケジューラの計算結果とは、生産計画作成装置20によって生産計画を作成した場合のデータである。また、
図14中のポンプ端切とは、ポンプ廻り配管L2に残留する残留原料の滞留量であり、ブレンド端切とは、タンク上流配管L3に残留する残留原料の滞留量である。9日間の生産において、実績データでは、ポンプ廻り配管L2における滞留量は、16.5KLであり、タンク上流配管L3における滞留量は、5.6KLであり、滞留量の合計は22.1KLであった。一方、生産計画作成装置20によって作成された生産計画によれば、ポンプ廻り配管L2における滞留量は、12.5KLであり、タンク上流配管L3における滞留量は、3.5KLであり、滞留量の合計は16KLであった。9日間における生産計画では、滞留量6.1KL分削減することができた。生産計画作成装置20によれば、廃棄コスト及び洗浄コストを削減することができる。
【0096】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記のような種々の変形が可能である。上記実施形態では、潤滑油を生産する潤滑油混合プラント1について生産計画作成装置を適用しているが、その他の混合物を生産する混合プラントについて、生産計画作成装置を適用することができる。例えば、食品、飲料、塗料、薬品、化学品などを生産する工場における生産計画の作成に、本発明の生産計画作成装置を適用することができる。
【0097】
生産計画作成装置は、事前に計算された残存量を記憶する残存量記憶部を備える構成でもよく、残量量算出部によって残存量を算出してもよく、過去の実績に基づいて残存量を算出してもよい。
【0098】
また、生産計画作成装置は、付帯コストを計算するコスト演算部を備えていない構成でもよい。生産計画装置は、例えば、残存量に基づいて、最終原料を設定するだけでもよい。また、生産計画装置は、所定の判定閾値よりも少ない残存量となる生産順序を設定してもよい。また、生産パターン設定部は、生産予定日において移送ユニットを使用して生産される混合物の全ての組合わせ及び全ての生産順序のパターンを設定してもよく、予め決められた範囲内の数のパターンを設定するようにしてもよい。