特許第6206697号(P6206697)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206697
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】電磁開閉器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/08 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   H01H50/08 Z
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-262703(P2012-262703)
(22)【出願日】2012年11月30日
(65)【公開番号】特開2014-110096(P2014-110096A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161562
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 朗
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 優
(72)【発明者】
【氏名】鹿志村 修
(72)【発明者】
【氏名】高谷 幸悦
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/128038(WO,A1)
【文献】 特表2008−525950(JP,A)
【文献】 特開平3−117318(JP,A)
【文献】 特開2004−186052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点収納ケース内に所定間隔を保って固定配置された直流電流路に介挿される一対の固定接触子と、
該一対の固定接触子に対して接離可能に配設され、且つ接触スプリングで支持された可動接触子と、
該可動接触子を可動させる電磁石ユニットと、
前記可動接触子の可動状態を磁気的変化として検出する可動状態検出部と、
該可動状態検出の検出結果に基づいて可動接触子の可動状態が正常であるか否かを判定する可動状態判定部とを備え、
前記可動状態検出部は、前記可動接触子を可動させる可動鉄心に配置した永久磁石と、該永久磁石からの磁束の変化を検出する磁気センサとで構成され、
前記可動状態判定部は、前記可動接触子が前記固定接触子に接触している投入状態から釈放開始したときに、釈放開始時点から前記磁気センサの出力電圧が最小値となるまでの経過時間を測定し、経過時間が閾値以上であるときに正常と判断し、閾値未満であるときに異常と判断する
ことを特徴とする電磁開閉器。
【請求項2】
接点収納ケース内に所定間隔を保って固定配置された直流電流路に介挿される一対の固定接触子と、
該一対の固定接触子に対して接離可能に配設され、且つ接触スプリングで支持された可動接触子と、
該可動接触子を可動させる電磁石ユニットと、
前記可動接触子の可動状態を磁気的変化として検出する可動状態検出部と、
該可動状態検出の検出結果に基づいて可動接触子の可動状態が正常であるか否かを判定する可動状態判定部とを備え、
前記可動状態検出部は、前記電磁石ユニットの磁気ヨークの磁束による誘導電圧を検出するサーチコイルで構成され、
前記可動状態判定部は、前記可動接触子が前記固定接触子に接触している投入状態から釈放開始したときに、釈放開始時点から前記サーチコイルの誘導電圧がピーク値となるまでの経過時間を測定し、経過時間が閾値以上であるときに正常と判断し、閾値未満であるときに異常と判断する
ことを特徴とする電磁開閉器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電流路に介挿された可動接触子及び一対の固定接触子を備えた電磁開閉器に関し、可動接触子の可動状態が正常であるか否かを容易に検出できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁継電器や電磁接触器などの電磁開閉器では、封止容器内に、所定間隔を保って一対の固定接触子を配置すると共に、一対の固定接触子に対して可動接触子を接離可能に配置するようにしている。
このような電磁開閉器では、信頼性を確保するためには可動接触子の可動状態が正常であるか否かを検出する必要がある。
このためには、例えば主接点端子近傍の底面側に補助接点を配置し、駆動軸が移動し、プッシャを介して可動補助接点端子を動かして接点の投入を行うようにした電磁開閉器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7944333号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来例にあっては、主接点端子の近傍の底面に補助接点を配置し、この補助接点が可動接点を可動させる駆動軸によってプッシャを介して押圧されるか否かで可動接触子の可動状態を判断するようにしているが、補助接点を主接点端子と同様に封止容器内に配置するので、補助接点信号を外部に取り出す場合に、ガス気密処理を必要とし、構造が複雑となる。
また、主接点固定端子部の近傍に補助接点が配置されており、主接点との絶縁をとるために接点の大きさ、接点数、接点構成が限られ、遮断限界値が小さく接点寿命が短いという未解決の課題もある。
【0005】
さらに、補助接点が片持ちバネ構造で剛性が弱くギャップ寸法のバラツキが大きく、ミラーコンタクトをとることが難しいという未解決の課題がある。
そこで、本発明は上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、可動接触子の可動状態を接点を使用することなく磁気的に検出することによりガス気密処理を行うことなく可動状態を容易に判断できるようにした電磁開閉器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る電磁開閉装置の第1の態様は、接点収納ケース内に所定間隔を保って固定配置された直流電流路に介挿される一対の固定接触子と、該一対の固定接触子に対して接離可能に配設され、且つ接触スプリングで支持された可動接触子と、該可動接触子を可動させる電磁石ユニットと、前記可動接触子の可動状態を磁気的変化として検出する可動状態検出部と、該可動状態検出の検出結果に基づいて可動接触子の可動状態が正常であるか否かを判定する可動状態判定部とを備え、前記可動状態検出部は、前記可動接触子を可動させる可動鉄心に配置した永久磁石と、該永久磁石からの磁束の変化を検出する磁気センサとで構成され、前記可動状態判定部は、前記可動接触子が前記固定接触子に接触している投入状態から釈放開始したときに、釈放開始時点から前記磁気センサの出力電圧が最小値となるまでの経過時間を測定し、経過時間が閾値以上であるときに正常と判断し、閾値未満であるときに異常と判断する。
【0007】
また、本発明に係る電磁開閉器の第2の態様は、接点収納ケース内に所定間隔を保って固定配置された直流電流路に介挿される一対の固定接触子と、該一対の固定接触子に対して接離可能に配設され、且つ接触スプリングで支持された可動接触子と、該可動接触子を可動させる電磁石ユニットと、前記可動接触子の可動状態を磁気的変化として検出する可動状態検出部と、該可動状態検出の検出結果に基づいて可動接触子の可動状態が正常であるか否かを判定する可動状態判定部とを備え、前記可動状態検出部は、前記電磁石ユニットの磁気ヨークの磁束による誘導電圧を検出するサーチコイルで構成され、前記可動状態判定部は、前記可動接触子が前記固定接触子に接触している投入状態から釈放開始したときに、釈放開始時点から前記サーチコイルの誘導電圧がピーク値となるまでの経過時間を測定し、経過時間が閾値以上であるときに正常と判断し、閾値未満であるときに異常と判断する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一対の固定接触子に接離する可動接触子の可動状態を可動状態検出部で磁気的に検出し、この可動状態検出部で検出した信号に基づいて可動状態判定部で可動接触子の可動状態を正確に判断することができる。
このため、可動接触子を収納する接点収納ケースの外側で可動接触子の可動状態を検出することができ、接点収納ケースがガス封止されている場合でも貸す封止処理を行うことなく可動状態を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明を電磁接触器に適用した場合の第1の実施形態を示す釈放状態の断面図である。
図2】第1実施形態の釈放開始時のタイムチャートであって、(a)は磁気センサの検出電圧変化を示す図、(b)は可動鉄心の移動量を示す図である。
図3】電磁接触器の完全投入状態を示す断面図である。
図4】電磁接触器の不完全開放状態を示す図である。
図5】可動状態判定装置の可動状態判定処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2の実施形態を示す電磁開閉器の釈放状態の断面図である。
図7】第2実施経緯多の釈放開始時のタイムチャートであって、(a)は磁気センサの検出電圧変化を示す図、(b)は可動鉄心の移動量を示す図である。
図8】第2の実施形態における完全投入状態を示す断面図である。
図9】第2の実施形態における不完全開放状態を示す断面図である。
図10】第2実施形態における可動状態判定装置の可動状態判定処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を伴って説明する。
図1は本発明を電磁開閉器としての電磁接触器に適用した場合の第1の実施形態を示す断面図である。この図1において、電磁接触器は、接点機構を配置した接点装置2と、この接点装置2を駆動する電磁石装置としての電磁石ユニット3とが電磁石ユニット3を下側として直列に配置している。
【0011】
接点装置2は、接点収納ケース4を有する、この接点収納ケース4は、セラミックス、合成樹脂等で形成される下端を開放した桶状体4aとその開放端面に密着固定された金属製の接合部材4bとで構成されている。そして、接合部材4bが電磁石ユニット3の上部磁気ヨーク22の上面にロウ付け、溶接等によって気密状態で固定されている。
桶状体4aの上面には、長手方向に所定間隔を保って断面円形の貫通孔5a,5bが設けられ、これら貫通孔5a,5b内に例えば銅製の一対の固定接触子6a,6bが挿通されてロウ付け等によって固定されている。
【0012】
また、接点装置2は、固定接触子6a,6bの下端面に比較的狭い所定のギャップを隔てて可動接触子11が接離可能に対向配置されている。そして、可動接触子11は接触子ホルダ13に接触スプリング14によって上方に付勢されて装着されている。接触子ホルダ13は、後述する電磁石ユニット3の可動鉄心25に連結されて上下方向に駆動される。
【0013】
電磁石ユニット3は、側面から見てU字形状の磁気ヨーク21を有し、この磁気ヨーク21の底板部21aの中央部に下端を開放した円筒部21bが形成されている。この磁気ヨーク21の上面側が上部磁気ヨーク22によって連接されている。
磁気ヨーク21の円筒部21bの外周面には励磁コイル23を巻装したコイルホルダ24が装着され、円筒部21bの内周面には可動鉄心25を摺動可能に内装した有底円筒状のキャップ26が配設されている。また、キャップ26の上端側には可動鉄心25に対向して固定鉄心27が配置されている。
【0014】
可動鉄心25には、中心部に連結軸28が嵌合され、この連結軸28の頭部が固定鉄心27の中心開口、上部磁気ヨーク22に形成された貫通孔29を通じて上方に延長され、接触子ホルダ13に連結されている。
また、可動鉄心25の連結軸28の周囲にスプリング挿通孔30が形成され、このスプリング挿通孔30と固定鉄心27との間に可動鉄心を下方に付勢する復帰スプリング31が装着されている。
【0015】
そして、桶状体4a及び接合部材4bで構成される接点収納ケース4、上部磁気ヨーク22及びキャップ26で構成される密封空間内に水素ガス、窒素ガス、水素及び窒素の混合ガス、空気、SF等のアーク消弧ガスが封入されている。
また、可動鉄心25の底部には永久磁石32が埋め込まれ、この永久磁石32にキャップ26の底部を介して対向する位置に磁気センサ33が配置されている。これら永久磁石32磁束の変化を検出し、磁束の変化量を表す電圧信号を出力する。
【0016】
ここで、磁気センサ33から出力される電圧信号Vsの変化は、図2(a)に示すようになる。
すなわち、電磁石ユニット3の励磁コイル23に通電して、図3に示すように、固定鉄心27に可動鉄心25を復帰スプリング31を抗して吸引して可動接触子11が固定接触子6a及び6bに接触スプリング14の所定の接触圧で接触している投入状態(閉極状態)にあるものとする。この投入状態から電磁石ユニット3の励磁コイル23の通電を遮断して、図1に示す釈放状態に移行する場合の磁気センサ33の電圧変化は、図2(a)に示すようになる。
【0017】
すなわち、例えば、可動接触子11が固定接触子6a及び6bに接触スプリング14の所定接触圧で接触している投入状態では、可動鉄心25の移動量は、図2(b)に示すように、可動鉄心25の上端が固定鉄心27の下端に接触して一番移動量が大きい状態にある。この状態で、例えば時点t1で電磁石ユニット3の励磁コイル23の通電を遮断し、励磁コイル23で発生する磁束を減少させると、これに応じて固定鉄心27の吸引力が低下することにより、可動鉄心25が復帰スプリング31の弾性力によって下方に移動し、可動接触子11の接点部と固定接触子6a及び6bとの接点部とに溶着がない場合には、図2(b)で実線図示のように、可動鉄心25がその底面がキャップ26の底面に接触する位置まで下降し、キャップ26の底面に接触した状態で安定する。
【0018】
しかしながら、投入状態で、可動接触子11と固定接触子6a及び6bの少なくとも一方との間に溶着が発生していると、可動接触子11は固定接触子6a又は6bから離間しない状態となる。このため、図2(b)で破線図示のように、可動鉄心25は接触スプリング14の圧縮状態が解除される位置までは下降するが、それ以上の下降は阻止される。
このため、磁気センサ33で検出される磁束変化に応じた検出電圧Vsは、図2(a)に示すように、可動接触子11と固定接触子6a及び6bとの間に溶着が発生していない場合には、図2(a)で実線図示のように釈放開始時点t1から減少傾向を継続し、時点t3で急激に所定量増加し、その後安定することが確認された。
【0019】
これに対して、可動接触子11と固定接触子6a及び6bの少なくとも一方との間に溶着が発生している場合には、図2(a)で破線図示のように、正常な場合の時点t3よりも早い時点t2で磁気センサ33の検出電圧が所定量増加し、その後安定することが確認された。
したがって、釈放開始時点t1から磁気センサ33の検出電圧の減少状態から増加状態に反転する時点までの時間を計測し、時点t2と時点t3との間に正常判定閾値を設定することにより、動作状態が正常であるか否かを判定すること可能となる。
【0020】
このため、磁気センサ33から出力される電圧信号を、図1に示すように、可動状態判定部としての可動状態判定装置34に入力する。この可動状態判定装置34は例えばマイクロコンピュータ等の演算処理回路を含んで構成され、図5に示す作動判定処理を実行する。
この可動状態判定処理は、電磁石ユニット3の励磁コイル23を通電して可動接触子11が固定接触子6a及び6bに接触している投入状態にある状態で、励磁コイル23を非励磁状態として釈放状態に移行する際に所定時間(例えば10msec)毎のタイマ割込処理として実行される。この可動状態判定処理は、先ず、ステップS1で現在の磁気センサ33の出力電圧V(n)を読込み、次いで、ステップS2に移行して、RAM等のメモリ部に記憶されている前回の出力電圧V(n-1)を読み出して、前回の出力電圧V(n-1)から現在の出力電圧V(n)を減算して電圧変化量ΔVを算出してからステップS3に移行する。
【0021】
このステップS3では、電圧変化量ΔVが正であるか否かを判定し、ΔV>0であるときには磁気センサ33の出力電圧が減少中であると判断してステップS4に移行し、可動鉄心25の移動時間を表す変数Nを“1”だけインクリメントしてからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
一方、前記ステップS3の判定結果がΔV≦0であるときには磁気センサ33の出力電圧Vsが変化ないか又は上昇しているものと判断してステップS5に移行し、前回の電圧変化量ΔVが正であって減少傾向を継続しているか否かを判定する。
【0022】
この判定結果が前回の電圧変化量ΔVがΔV≦0であるときには可動鉄心25が上昇していないものと判断してステップS6に移行し、変数Nを“0”にクリアしてからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
しかしながら、ステップS5の判定結果がΔV<0であるときには電圧減少傾向が継続しているものと判断してステップS7に移行し、検出電圧の最小値を検出したか否かを判定し、最小値を検出していないときにはそのままタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰し、最小値を検出したときにはステップS8に移行する。
【0023】
このステップS8では、変数Nを読込み、この変数Nが予め設定された正常判定閾値Nth以上であるか否かを判定し、N≧Nthであるときには、可動鉄心25の移動量が正常であると判断してステップS9に移行する。
このステップS9では可動鉄心25の移動量が正常であることを表す正常検出信号Snを外部の監視部に出力してからステップS11に移行する。
【0024】
一方、前記ステップS8の判定結果が、N<Nthであるときには、可動鉄心25の移動量が足りない不完全開放状態であると判断してステップS10に移行し、異常検出信号Sanを外部の監視部に出力してからステップS11に移行する。
ステップS11では、変数Nを“0”にクリアしてからタイマ割込処理を終了し、所定のメインプログラムに復帰する。
【0025】
次に、上記第1の実施形態の動作を説明する。
今、固定接触子6aが直流電源(図示せず)に接続され、固定接触子6bが負荷に接続されているものとし、電磁石ユニット3の励磁コイル23が非励磁状態にあるものとする。この状態では、固定鉄心27を通る磁路が形成されていないので、固定鉄心27に吸引力が発生せず、可動鉄心25は復帰スプリング31によって下方に付勢されて可動鉄心25の底部がキャップ26の底部に当接している。
【0026】
この状態で、図1に示すように、可動接触子11が固定接触子6a及び6bの下面から下方に所定ギャップ分離間しており、接点装置2が釈放状態となっている。
この釈放状態では、可動鉄心25が磁気センサ33に一番近づいているので、永久磁石32からの大きな漏れ磁束が磁気センサ33に供給される。このため、磁気センサ33から図2(a)に示すように、大きなレベルの電圧信号が出力されている。
【0027】
しかしながら、動作状態判別装置34では、釈放状態では、前述した図5の可動状態判定処理を実行せず、可動状態判定処理は停止されている。
この釈放状態から電磁石ユニット3の励磁コイル23に通電すると、これによって、図3及び図4に示すように、固定鉄心27から可動鉄心25を経て円筒部21bを介して磁気ヨーク21の底面板部21a、側面板部を通じ上部磁気ヨーク22を通じて固定鉄心27に戻る磁路が形成される。これにより、固定鉄心27に可動鉄心25が復帰スプリング31に抗して吸引されて可動鉄心25が上昇する。
【0028】
これにより、可動接触子11が固定接触子6a及び6bに接触し、こらに接触スプリング14を圧縮しながら可動鉄心25が上昇し、可動鉄心25の上端か固定鉄心27の下端に当接することにより、可動鉄心25の上昇が停止されて、投入状態となる。
この投入状態において、図2(a)及び(b)の時点t1で、電磁石ユニット3の励磁コイル23への通電を遮断して釈放状態に移行させると、可動状態判定装置34で、図5に示す可動状態判定処理が実行開始される。
【0029】
このとき、可動鉄心25は、固定鉄心27の吸引力が低下することにより、復帰スプリング31の弾性力によって下降を開始する。このように可動鉄心25が下降を開始し、励磁コイル23による磁束が減少することにより、磁気センサ33に達する漏れ磁束が減少し、これに応じて磁気センサ33の検出電圧は図2(a)に示すように徐々に減少する。
このため、可動状態判定装置34では、図5の可動状態判定処理を実行しているので、ステップS2で算出される電圧変化量ΔVが減少を表す負となり、ステップS3からステップS4に移行して、変数Nが“1”だけインクリメントされる。
【0030】
その後、可動鉄心25の下降が継続されるので、磁気センサ33の出力電圧は図2(a)に示すように比較的緩やかに減少を継続する。このため、タイマ割込処理が実行される毎に変数Nが“1”ずつインクリメントされる。
その後、時点t2で接触スプリング14の接触圧が開放され、可動接触子11と固定接触子6a及び6b間に溶着がない場合には、可動接触子11が下降を開始し、これに応じて可動鉄心25も下降を継続する。このため、図5の可動状態判定処理では、変数Nのインクリメントが継続される。
【0031】
この間、磁気センサ33の検出電圧も減少傾向を継続し、時点t3で可動鉄心25の底面がキャップ26の底面に当接すると可動鉄心25の下降が停止される。このように可動鉄心25の下降が停止されると、磁気センサ33で検出される検出電圧が所定量急激に増加し、その後安定する。
この状態では、変数Nが正常判定閾値Nthを超える状態となっている。
このように、磁気センサ33の検出電圧Vsが増加傾向に反転すると、図5の可動状態判定処理で、ステップS3からステップS5に移行し、前回ΔV>0であったので、ステップS7に移行し、最小値が検出されたので、ステップS8に移行する。
【0032】
このステップS8では、変数Nを読込み、この変数Nが正常判定閾値Nth以上となっているので、ステップS9に移行して、正常検出信号Snを監視部に出力してから変数Nを“0”にクリアしてタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
ところが、可動接触子11が固定接触子6a及び6bの少なくとも一方に溶着している場合には、前述したように図2(a)及び(b)における時点t1で釈放状態に移行したときに、接触スプリング14の接触圧が開放された時点t2で、可動鉄心25の下降が停止されてしまう。
【0033】
このため、磁気センサ33では、図2(a)で破線図示のように、時点t2で検出電圧が所定値まで急増することなる。このため、図5の可動状態判定処理では、ステップS3からステップS5、S7を経てステップS8に移行し、変数Nが正常判定閾値Nthより小さくなるので、ステップS10に移行して、異常検出信号Sanを監視部に出力してからステップS11に移行して変数Nを“0”にクリアしてからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0034】
このように、投入状態から釈放状態に移行させたときに、可動状態判定装置34で図5に示す可動状態判定処理が実行されるので、磁気センサ33の検出電圧Vsに基づいて可動接触子11と固定接触子6a及び6bとの間に溶着が発生していない完全投入状態であるか可動接触子11と固定接触子6a及び6bの少なくとも一方とに溶着が発生した不完全開放状態となっているかを正確に判定することができる。
【0035】
可動鉄心25の動作状態を可動鉄心25に設けた永久磁石32と磁気センサ33とによって接点収納ケース4、上部磁気ヨーク22及びキャップ26で構成される封止容器の外側で磁気的に検出することができ、前述した従来例のように封止容器内に検出部を配置する必要がないので、封止処理を施す必要もなく、可動鉄心25の動作状態を容易に検出することができる。
【0036】
次に、本発明の第2の実施形態について図6図10を伴って説明する。
この第2の実施形態では、可動鉄心25の作動状態を永久磁石と磁気センサとによる検出部に代えて電磁石ユニット3の磁気経路の磁束から検出するようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、図6に示すように、電磁石ユニット3の磁路を形成する磁気ヨーク21にこれに流れる磁束を誘導電圧として検出するサーチコイル40a及び40bを配置するようにしたものである。
【0037】
このように磁気ヨーク21の左右の側板部にサーチコイル40a及び40bを装着することにより、このサーチコイル40a及び40bから前述した第1の実施形態と同様に、図7(a)に示すように、投入状態から釈放状態としたときに、サーチコイル40a及び40bに誘導される誘導電圧は、図8に示すように、可動接触子11及び固定接触子6a及び6b間に溶着がない完全投入状態では、釈放状態に復帰する際のピーク電圧Vp1が、図9に示すように可動接触子11と固定接触子6a及び6bの何れか一方との間に溶着が発生している不完全開放状態である場合のピーク電圧Vp2よりも高くなり、且つピーク電圧Vp1となる時間がピーク電圧V2となる時間よりも遅いことが確認された。
【0038】
このため、サーチコイル40a及び40bの誘導電圧のピーク電圧値が正常閾値Vpn異常であるか否かを判定するか、釈放開始状態からピーク電圧を検出するまでの時間が正常判断閾値Tth以上であるかを判定することにより、可動鉄心25の可動状態すなわち、可動接触子11の可動状態を判定することができる。
このため、本実施形態では、可動状態判定装置34にサーチコイル40a及び40bの誘導電圧Vi入力し、且つ可動状態判定処理が、図10に示すように、前述した第1の実施形態における図5の可動状態判定処理において、ステップS3の処理をサーチコイル40a及び40bの誘導電圧Viがピーク電圧Vipに達したか否かを判定するステップS21に変更し、このステップS21の判定結果がViがピーク電圧Vipに達していないときにはステップS4に移行して、変数Nを“1”だけインクリメントし、ピーク電圧Vipに達したときには、直接ステップS8に移行するように変更されている。
【0039】
この第2の実施形態でも、可動接触子11が固定接触子6a及び6bに接触している投入状態から釈放状態に移行したときに、可動状態判定装置34が作動状態となって、図10に示す可動状態判定処理を実行する。
このため、可動接触子11が固定接触子6a,6bに対して溶着していない状態では、釈放開始時からのサーチコイル40a及び40bの誘導電圧Viが.ピーク値Vipに達する時間が遅くなって変数Nが正常判定閾値Nthより大きくなることにより、正常動作状態と判断して、正常動作信号Snを監視部に出力する。
【0040】
これに対して、可動接触子11が固定接触子6a,6bの少なくとも一方に溶着している不完全開放状態では、サーチコイル40a及び40bの誘導電圧Viがピーク電圧Vipに達するまでの時間が短く変数Nが正常判定閾値Nthより小さくなり、動作異常と判断して異常検出信号Sanを監視部に出力する。
このように、本願の第2の実施形態でも、サーチコイル40a及び40bによって磁気ヨーク21を通じてる磁束変化を電圧変化として検出することにより、可動鉄心25の可動状態を正確に判定することができる。
【0041】
この第2の実施形態でも前述した第1の実施形態と同様に、封止容器の外側で磁気的変化によって可動鉄心25すなわち可動接触子11の可動状態を容易かつ正確に判定することができる。
なお、上記第2の実施形態においては、釈放開始時点t1からピーク電圧Vipに達するまでの時間を計測して作動状態を判断する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、サーチコイル40a,40bで検出したピーク電圧Vipが正常閾値電圧Vipthより大きいか否かによって可動接触子11と固定接触子6a及び6bとの間の溶着の有無を判定するようにしてよい。
【0042】
また、上記第2の実施形態においては、磁気ヨーク21の全周にサーチコイル40a及び40bを巻装する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、磁気ヨーク21に切欠部を設けてこの切欠部にサーチコイルを巻装するようにしてもよい。
また、上記第1及び第2の実施形態においては、可動状態判定装置34から出力される正常検出信号Snと異常検出信号Sanとを監視部に送る場合について説明したが、これに限定されるものでてはなく、異常検出信号Sanを発光ダイオードの駆動回路に出力して異常状態を光によって報知することもでき、他の表示装置に供給するようにしてもよい。
【0043】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、接点収納ケース4を桶状体4a、接合部材4b及び金属筒体4cで構成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、金属製の桶状体の内側に絶縁筒体を配置するようにしてよく、任意の構成とすることができる。
さらに、上記実施形態においては、接点収納ケース4にガスを封入する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、遮断する電流値が少ない場合にはガスの封入を省略することができる。
【0044】
また、上記実施形態においては、可動接触子11が固定接触子6a及び6bに下側から対向する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、固定接触子6a及び6bの接点部を接点収納ケース4の下側に配置し、これら接点部に対して上側から可動接触子11を対向させるようにしてもよい。
さらに、電磁石ユニット3の構成も上記実施形態に限定されるものではなく、接触子ホルダ13を電磁力で可動させることができれば任意の構成を適用することができる。
さらに、上記実施形態においては、本発明を電磁接触器に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、電磁継電器や他の構成の電磁開閉器に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
2…接点装置、3…電磁石ユニット、4…接点収納ケース、4a…桶状体、4b…接合部材、4c…金属筒体、6a,6b…固定接触子、11…可動接触子、13…接触子ホルダ、14…接触スプリング、21…磁気ヨーク、22…上部磁気ヨーク、23…励磁コイル、24…コイルホルダ、25…可動鉄心、26…キャップ、27…固定鉄心、28…連結軸、31…復帰スプリング、32…永久磁石、33…磁気センサ、34…可動状態判定装置、40a,40b…サーチコイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10