(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206698
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】電力増幅器
(51)【国際特許分類】
H03F 1/02 20060101AFI20170925BHJP
H03F 3/24 20060101ALI20170925BHJP
H03F 3/68 20060101ALI20170925BHJP
H04B 1/04 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
H03F1/02
H03F3/24
H03F3/68 Z
H04B1/04 B
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-277202(P2012-277202)
(22)【出願日】2012年12月19日
(65)【公開番号】特開2014-121071(P2014-121071A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】春名 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 善伸
【審査官】
及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2005/0093633(US,A1)
【文献】
特開2001−156560(JP,A)
【文献】
米国特許第05541554(US,A)
【文献】
特開2002−185270(JP,A)
【文献】
特開2012−129844(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/068809(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00−3/72
H04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と、
出力端子と、
前記入力端子と前記出力端子の間に接続された第1の増幅器と、
前記入力端子と前記第1の増幅器の入力の間に存在する第1の接続点と、
前記出力端子と前記第1の増幅器の出力の間に存在する第2の接続点と、
前記第1の接続点と前記第2の接続点の間に接続された第2の増幅器と、
前記第2の増幅器の出力と前記第2の接続点の間に直列に接続された第1及び第2のキャパシタと、
前記第1のキャパシタと前記第2のキャパシタの間に存在する第3の接続点と、
前記第3の接続点とグラウンドの間に接続されたインダクタと、
前記第3の接続点とグラウンドの間において前記インダクタに直列に接続されたスイッチとを備え、
前記入力端子から前記第1の増幅器を介して前記出力端子に至る経路において、前記第2の接続点はインピーダンスが最も低くなる点であり、
前記スイッチは、前記第2の増幅器がONする時にOFFし、前記第1の増幅器がONする時にONすることを特徴とする電力増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末等の無線機器に用いられる電力増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
電力増幅器は、全電力レベルにおいて電力負荷効率を上げるために、出力電力レベルに応じて2つ以上の電力増幅経路を切替える機能を有する。そして、各経路の接続部分にシリーズ型高周波スイッチを挿入して、各経路のトランジスタ同士のアイソレーションを確保し、OFF時のトランジスタに不要な電圧振幅を与えないようにしている。
【0003】
また、出力側にシャント型高周波スイッチを挿入し、高周波スイッチがON状態になることで理想的な短絡状態を実現し、高周波スイッチが挿入された経路のインピーダンスを制御する電力増幅器もある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−185270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
出力側にシリーズ型の高周波スイッチを挿入した電力増幅器では、高周波スイッチ自体の損失が電力負荷効率の低下に直結する。このため、高周波スイッチの損失が大きいSiなどのデバイスでは、シリーズ型の高周波スイッチを挿入することが困難である。また、高周波スイッチの損失を小さくするために、スイッチサイズを大きくする必要があり、小型化が困難になる。
【0006】
また、シャント型高周波スイッチだけを挿入した電力増幅器では、高周波スイッチがONした時、高周波スイッチに流れる直流電流を遮断する必要がある。そして、シャント型高周波スイッチで短絡したところへ電力増幅器の送信周波数帯域の高周波信号が漏れ込まないような整合回路を構成することが必要であるため、シャント型高周波スイッチ回路が挿入された経路上の整合回路に制約が出る場合がある。
【0007】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は2つの電力増幅経路のアイソレーション機能を確保しながら、回路損失を低減することができる電力増幅器を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電力増幅器は、入力端子と、出力端子と、前記入力端子と前記出力端子の間に接続された第1の増幅器と、前記入力端子と前記第1の増幅器の入力の間に存在する第1の接続点と、前記出力端子と前記第1の増幅器の出力の間に存在する第2の接続点と、前記第1の接続点と前記第2の接続点の間に前記第1の増幅器に対して並列に接続された第2の増幅器と、前記第2の増幅器の出力と前記第2の接続点の間に存在する第3の接続点と、前記第3の接続点とグラウンドの間に接続された第1のキャパシタと、前記第3の接続点とグラウンドの間において前記第1のキャパシタに直列に接続されたスイッチとを備え、前記入力端子から前記第1の増幅器を介して前記出力端子に至る経路において、前記第2の接続点はインピーダンスが最も低くなる点であり、前記スイッチは、前記第2の増幅器がONする時にOFFし、前記第1の増幅器がONする時にONすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、2つの電力増幅経路のアイソレーション機能を確保しながら、回路損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る電力増幅器を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態2に係る電力増幅器を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態3に係る電力増幅器を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態4に係る電力増幅器を示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態5に係る電力増幅器を示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態6に係る電力増幅器を示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態7に係る電力増幅器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る電力増幅器について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0012】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る電力増幅器を示す図である。増幅器A1,A2が入力端子INと出力端子OUTの間に直列に接続されている。接続点P1が入力端子INと増幅器A1の入力の間に存在する。接続点P2が出力端子OUTと増幅器A2の出力の間に存在する。入力端子INから増幅器A1,A2を介して出力端子OUTに至る経路において、接続点P2はインピーダンスが最も低くなる点(例えば増幅器A2のコレクタ端又はドレイン端)である。
【0013】
増幅器A3が接続点P1と接続点P2の間において増幅器A1,A2に対して並列に接続されている。増幅器A3の出力電力は増幅器A1,A2の出力電力より小さい。接続点P3が増幅器A3の出力と接続点P2の間に存在する。キャパシタC1が接続点P3とグラウンドの間に接続されている。スイッチSWが接続点P3とグラウンドの間においてキャパシタC1に直列に接続されている。
【0014】
キャパシタC1とスイッチSWはシャント型高周波スイッチ回路を構成する。スイッチSWは、増幅器A3がONする時にOFFし、増幅器A1,A2がONする時にONする。こうしてスイッチSWは、出力電力レベルに応じて増幅器A1,A2の経路と増幅器A3の経路を切替える。
【0015】
キャパシタC1の容量値は、送信周波数帯域に対して十分大きく、かつスイッチSWがONしたときのインピーダンスがスミスチャート上の反射係数として−90度から90度の間になるように設定する。これにより、スイッチSWがONしたとき、シャント型高周波スイッチ回路より先の回路をオープンに見せることができる。
【0016】
高周波スイッチSWをシャント型で挿入することで、シリーズ型で挿入した場合よりも回路損失を低減することができる。さらに、増幅器A3の経路を増幅器A1,A2の経路でインピーダンスが最も低いところに挿入することで、高周波スイッチがONしたとき、キャパシタC1が見えることによって低インピーダンスになっても、電力増幅器の送信周波数帯域の高周波信号がシャント型高周波スイッチ回路へ漏れ込み難くなり、回路全体の損失が低下する。キャパシタC1によりグラウンドへ流れる直流電流を遮ることができる。キャパシタC1の容量値を送信周波数帯域に対して十分大きくすることでシャント型高周波スイッチ回路でもシリーズ型高周波スイッチと同程度のアイソレーションを確保することができる。
【0017】
実施の形態2.
図2は本発明の実施の形態2に係る電力増幅器を示す図である。インダクタLが増幅器A3の出力と増幅器A1,A2の経路(接続点P2)の間に接続されている。この直列インダクタLによって、増幅器A1,A2の経路から見たときのシャント型高周波スイッチ回路のキャパシタC1の容量値をさらに大きく見せることができ、シャント型高周波スイッチ回路のQ値を上げることができる。これにより、実際に使うキャパシタC1の容量値を下げることができ、レイアウトの小型化が可能になる。また、Q値を上げることで、シャント型高周波スイッチ回路より先の回路をよりオープンに見せることができ、各経路のアイソレーションを向上させることができる。
【0018】
実施の形態3.
図3は本発明の実施の形態3に係る電力増幅器を示す図である。接続点P4が増幅器A3の出力と接続点P2の間に存在する。キャパシタC2が接続点P4とグラウンドの間に接続されている。その他の構成は実施の形態2と同様である。増幅器A1,A2と増幅器A3では、最適インピーダンスが異なるため、それらの経路を接続するとき、インピーダンス変換が必要となる。そこで、直列インダクタLとシャントキャパシタC2からなるLC回路を両経路の間に挿入することで、インピーダンスを変換できる。このようにインピーダンス変換を複数回行うことでインピーダンス変換損失を低減できるため、回路損失を更に低減できる。
【0019】
実施の形態4.
図4は本発明の実施の形態4に係る電力増幅器を示す図である。直列インダクタLとシャントキャパシタC2を増幅器A3の出力とシャント型高周波スイッチ回路の間に挿入している。このLC回路でもインピーダンスを変換できるため、実施の形態3と同様の効果を得ることができる。
【0020】
実施の形態5.
図5は本発明の実施の形態5に係る電力増幅器を示す図である。実施の形態1のキャパシタC1の代わりに、互いに並列に接続された複数のキャパシタC1a〜C1dを増幅器A3の周囲に配置している。これにより、増幅器A1,A2が増幅する高周波信号が増幅器A3へ漏れ込むのを抑制しつつ、増幅器A3が増幅する高周波信号が増幅器A1,A2の経路へ漏れ込むのも抑制することができる。この結果、増幅器A1,A2の経路と増幅器A3の経路のアイソレーションを向上させることができる。
【0021】
実施の形態6.
図6は本発明の実施の形態6に係る電力増幅器を示す図である。高周波信号のグラウンドは僅かなインダクタ成分によって理想的なグラウンドではなくなり、グラウンドを経由して高周波信号が伝搬を意図しない経路に回りこむ恐れがある。そこで、本実施の形態では、実施の形態5のシャント型高周波スイッチ回路のキャパシタC1a〜C1dのグラウンドと増幅器A3のグラウンドを共通にしている。これにより、グラウンドを経由し、他の経路へ高周波信号が回り込むことを抑制することができる。この結果、増幅器A1,A2の経路と増幅器A3の経路のアイソレーションを向上させることができる。
【0022】
実施の形態7.
図7は本発明の実施の形態7に係る電力増幅器を示す図である。実施の形態1とはスイッチ回路の構成が異なる。キャパシタC1,C2が増幅器A3の出力と接続点P2の間に直列に接続されている。接続点P3がキャパシタC1とキャパシタC2の間に存在する。インダクタLが接続点P3とグラウンドの間に接続されている。スイッチSWが接続点P3とグラウンドの間においてインダクタLに直列に接続されている。
【0023】
実施の形態1ではシャント型高周波スイッチ回路にキャパシタC1を用いているが、本実施の形態ではインダクタLを用い、各経路の接続部分に直列キャパシタC1,C2を設けている。これにより、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。ただし、シャント型高周波スイッチ回路がONしたときのインピーダンスが、スミスチャート上の反射係数として−90度から90度の間になるように、インダクタLと直列キャパシタC1,C2の値を設定する必要がある。
【0024】
なお、高周波スイッチSWとしてFET/HEMT、MEMS、ダイオードなどを用いることができる。また、電力増幅経路が2経路の場合について説明したが、3経路以上の形態にも本発明を同様に適用できる。また、経路分離の目的として高周波スイッチをシャント型で挿入しているため直流電流の経路としては分離されておらず、トランジスタ等のアクティブ素子と電源の間に直列キャパシタを設けない場合でも電源供給経路を分離しなくてよい。
【符号の説明】
【0025】
A1,A2,A3 増幅器、C1,C2,C1a〜C1d キャパシタ、IN 入力端子、L インダクタ、OUT 出力端子、P1,P2,P3,P4 接続点、SW スイッチ