(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置10を示す模式図である。
画像形成装置10は、インクジェット方式のもので、画像形成装置本体12内には、記録媒体搬送系14と印字部16とが設けられている。
【0019】
記録媒体搬送系14は、記録媒体を多数積層して収容する記録媒体収容部18を有する。この記録媒体収容部18に収容された最上位の記録媒体はピックアップロール20により送り出される。ピックアップロール20により送り出された記録媒体は、複数の搬送ロール22により搬送ベルト24へと搬送される。この搬送ベルト24の上方に印字部16が配置されている。この印字部16により印字された記録媒体は、剥離部26により剥離され、さらに複数の搬送ロール22により排出部28へ排出される。
【0020】
印字部16は、例えば4つの印字ヘッド30〜36を有する。4つの印字ヘッド30〜36は、それぞれシアン用、マゼンダ用、イエロー用、ブラック用のもので、これらが順次並べられており、各色の液滴(インク)を吐出する。各印字ヘッド30〜36は、制御信号に応じて液滴を記録媒体に吐出することにより画像を形成するようにしてある。また、それぞれの吐出口に対応して図示しない駆動素子が設けられている。駆動素子は、例えば、ピエゾ素子等の圧電素子や抵抗等の発熱素子であり、この駆動素子が画像信号又は非画像信号に応じて駆動し、インクに物理的な圧力又は泡による圧力などを与えて吐出口からインクを吐出させる。
【0021】
ここで、印字ヘッド30〜36は、駆動素子を制御することにより、例えば、大滴、中滴、小滴などのように、着弾する液滴の大きさが異なる複数種類の液滴を打ち分けできるよう構成されている。なお、本実施形態では、大滴、中滴、小滴の3種類の液滴を例に説明するが、着弾する液滴の大きさが異なる複数種類であればよく、3種類には限定しない。
【0022】
また、印字ヘッド30〜36による液滴(インク)の吐出に際しては、後述する情報処理部50による制御によって、いずれの印字ヘッドによりいずれのタイミングでいずれの大きさのインクを吐出するかが、入力画像データから生成された後述する網点画像データに基づいて決定され、画像が形成される。
【0023】
また、画像形成装置本体12の上部には、ユーザインタフェース装置40が設けられている。このユーザインタフェース装置40は、画像形成装置10を操作する上での情報を表示すると共に、操作情報を受け付けるようになっている。
【0024】
情報処理部50は、画像処理の実施及び画像形成の制御を行なう機能を有する。以下、情報処理部50の構成について説明する。
【0025】
図2は、情報処理部50のハードウェア構成を示すブロック図である。
情報処理部50は、
図2に示されるように、CPU52、メモリ54、ハードディスクドライブ(HDD)等の記憶装置56、他の機器等との間でデータの送信及び受信を行う通信インタフェース(IF)58、ユーザインタフェース装置40を制御するユーザインタフェース制御部60を有する。これらの構成要素は、制御バス62を介して互いに接続されている。
【0026】
CPU52は、メモリ54または記憶装置56に格納されたプログラムに基づいて所定の処理を実行して、画像形成装置10の動作を制御する。なお、本実施形態では、CPU52は、メモリ54または記憶装置56内に格納されたプログラムを読み出して実行するものとして説明したが、当該プログラムをCD−ROM等の記憶媒体に格納してCPU52に提供したり、通信IF58を介してCPU52に提供したりすることも可能である。
【0027】
メモリ54または記憶装置56には、例えば、画像形成装置10に入力された画像データ(入力画像)、入力画像について網点画像データを生成するために用いる閾値マトリクスのデータなどが記憶される。
【0028】
図3は、上記のプログラムが実行されることにより実現される情報処理部50の機能構成を示すブロック図である。なお、
図3に示される構成の一部又は全ては、ASIC,FPGAなどのハードウェアにより実現されてもよい。
【0029】
画像形成装置10には、例えば0〜255の階調値で表された画像データが入力される。本実施形態では、画像形成装置10に対し、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色で構成されるカラー画像が入力される。なお、入力画像として、モノクロ画像が入力されてもよい。またRGB色空間で表現された画像データが入力されてもよい。なお、RGB値で表される画像データが入力された場合には、例えば、後述する階調補正部70による補正処理の前に、RGB色空間で表現された画像データをYMCK色空間で表された画像データに変換する色変換処理を行うよう構成する。
【0030】
階調補正部70は、画像形成装置10が受付けた入力画像の階調値を補正する補正処理を行う。本実施形態では、トーン再現曲線(TRC;Tone Reproduction Curve)を用いる階調補正を色成分ごとに行う。
【0031】
TRCは、画像形成装置10が有する階調再現性を表し、画像形成装置10に対する入力濃度値Cinと、入力濃度値に基づいて画像形成装置10がプリントする出力画像の濃度値である出力濃度値Doutとの関係を示す曲線である。TRCは非線形であるので、TRCを用いる階調補正は非線形処理となる。
【0032】
例えば、非線形処理前のデータと非線形処理後のデータとを対応付けたLUTを補正係数として色成分ごとに予め作成し、非線形処理前のデータをLUT変換することにより、非線形処理後のデータを取得することにより階調補正を実現する。このように階調補正を行うことにより、入力濃度値Cinに対する出力濃度値Doutが線形となるようにする。
【0033】
なお、本実施形態では、階調補正部70による補正として、トーン再現曲線を用いる補正を例に説明するが、これ以外の非線形処理であってもかまわない。
【0034】
網点画像データ生成部72は、階調補正部70により補正された入力画像に対し、スクリーン処理を行い、着弾する液滴の大きさが異なる複数種類の液滴により画像を形成するための網点画像データを色成分ごとに生成する。網点画像データを構成する各値は、着弾する液滴の大きさが異なる複数種類の液滴のいずれかと対応付けられた値により表される。例えば、大滴を吐出することを示す値として3、中滴を吐出することを示す値として2、小滴を吐出することを示す値として1、吐出しないことを示す値として0を用いた網点画像データが生成される。
【0035】
具体的には、例えば、階調補正部70により補正された入力画像の階調値と、予め記憶された閾値マトリクスで示される閾値とを比較し、階調値が閾値を超えるか否かを判定する。ここで、比較対象となる閾値マトリクスは、予め定められた大きさのマトリクスとして構成されており、液滴の種類ごとに設けられている。入力画像の階調値は、液滴の種類ごとに設けられた各閾値マトリクスの閾値とそれぞれ比較される。大滴、中滴、小滴の3種類を吐出して画像形成する場合、大滴用の閾値マトリクス、中滴用の閾値マトリクス及び小滴用の閾値マトリクスとそれぞれ比較することとなる。
【0036】
閾値マトリクスで示された閾値を超える場合には、当該液滴を吐出するものとして判定され、閾値マトリクスで示された閾値を超えない場合には、当該液滴を吐出しないものとして判定される。ただし、各閾値マトリクスとの比較の結果、複数種の液滴について吐出するものとして判定された場合には、一番大きい液滴での吐出を行うものとする。例えば、ある画素の形成について小滴及び中滴を吐出するよう、閾値マトリクスとの比較から判定された場合、中滴を吐出するものとする。このようにして、大滴により画素を形成するのか、中滴により画素を形成するのか、小滴により画素を形成するのか、それとも吐出はしないのかを判定し、判定結果に対応する数値(ここでは、0〜3)により構成される網点画像データを生成する。以上の処理を入力画像の色成分ごとに行なう。
【0037】
ここで、閾値マトリクスに含まれる閾値は、複数種類の液滴のうちの一種類の液滴又二以上の種類の液滴の組み合わせに対して割り当てられた、入力濃度値に対する液滴の使用範囲に対応している。
【0038】
例えば、0〜255の範囲のうちいずれかの階調値で入力画像の階調値が表される場合において、0〜127で表される入力濃度値が小滴だけの使用範囲として割り当てられており(つまり、入力濃度値が0〜127の場合、小滴だけで当該画素を形成する)、127〜191で表される入力濃度値が小滴及び中滴の使用範囲として割り当てられており(つまり、入力濃度値が127〜191の場合、小滴及び中滴で当該画素を形成する)、191〜255で表される入力濃度値が中滴及び大滴の使用範囲として割り当てられているものとする(つまり、入力濃度値が191〜255の場合、中滴及び大滴で当該画素を形成する)と仮定する。
【0039】
この場合、小滴用閾値マトリクスには0〜127の値のいずれかが閾値として用いられており、中滴用閾値マトリクスには127〜191の値のいずれかが閾値として用いられており、大滴用閾値マトリクスには191〜255の値のいずれかが閾値として用いられて閾値マトリクスが構成されている。
【0040】
以下、小滴だけが使用される入力濃度値の範囲を小滴エリア、小滴及び中滴が使用される入力濃度値の範囲を小中滴エリア、中滴及び大滴が使用される入力濃度値の範囲を中大滴エリアということがある。なお、小滴エリアでは入力濃度値の小滴エリア内の下限から上限への推移に対し小滴の出力は小滴0%の出力濃度値から小滴100%の出力濃度値へと推移する。また、小中滴エリアでは入力濃度値の小中滴エリア内の下限から上限への推移に対し小滴の出力は小滴100%の出力濃度値から小滴0%の出力濃度値へと推移し、中滴の出力は中滴0%の出力濃度値から中滴100%の出力濃度値へと推移する。また、中大滴エリアでは入力濃度値の中大滴エリア内の下限から上限への推移に対し中滴の出力は中滴100%の出力濃度値から中滴0%の出力濃度値へと推移し、大滴の出力は大滴0%の出力濃度値から大滴100%の出力濃度値へと推移する。
【0041】
このように網点画像データ生成部72は、複数種類の液滴のうちの一種類の液滴又は複数種類の液滴のうちの二以上の種類の液滴の組み合わせに対して割り当てられた、入力濃度値に対する液滴の使用範囲に従って画像を形成するための網点画像データを生成する。ここで、網点画像データ生成部72は、後述するように、入力濃度値の変化に対する出力濃度値の変化が滑らかになるように調整された液滴の使用範囲に従って網点画像データを生成する。
【0042】
画像形成制御部74は、網点画像データ生成部72により生成された色成分ごとの網点画像データに従って印字ヘッド30〜36によるインク吐出を行って画像を形成するよう画像形成処理を制御する。
【0043】
以上説明したように、情報処理部50は、入力画像に対し、階調補正処理及び網点画像データ生成処理を行う画像処理装置としての機能を有している。
【0044】
次に、各種類のインクの吐出の出力特性及びこれら各種類のインクを使用範囲に応じて使い分ける際の出力特性について説明する。
【0045】
図4は、小滴、中滴、大滴の3種類のインクを例に、入力濃度値Cinに対する出力濃度値Doutを表したグラフであり、
図4(a)は小滴の出力特性の一例を示し、
図4(b)は中滴の出力特性の一例を示し、
図4(c)は大滴の出力特性の一例を示している。
【0046】
ここでは、本実施形態における使用範囲の割り当てに対する比較例として、最大濃度比に応じた使用範囲の割り当てを行った場合の出力特性について説明する。最大濃度比による使用範囲の割り当てでは、各種類のインクにおける最大濃度の比に従って、インクの使用範囲が決定される。例えば、小滴の入力濃度値100%に対する小滴の出力濃度値をIs、中滴の入力濃度値100%に対する中滴の出力濃度値をIm、大滴の入力濃度値100%に対する大滴の出力濃度値をIlとした場合、最大濃度比による使用範囲の決定では、小滴エリアと小中滴エリアの境界X1をIs/Il×100(%)とし、小中滴エリアと中大滴エリアとの境界X2をIm/Il×100(%)とする。
【0047】
図5(a)は、
図4に示した出力特性を有する小滴、中滴、大滴について最大濃度比で使用範囲を割り当てた場合の全体の出力特性を示すグラフであり、
図5(b)は
図5(a)で示される出力特性に対しTRCによる階調補正を適用した場合の出力特性を示すグラフである。
【0048】
図5(a)で示される出力特性に示されるように、最大濃度比により各種のインクを使い分けた場合、入力濃度値0%における出力濃度値、入力濃度値X1における出力濃度値、入力濃度値X2における出力濃度値及び入力濃度値100%における出力濃度値が直線状に並ぶような出力特性が実現される。ここで、比較例としてあげた最大濃度比による使用範囲の割り当てでは、入力濃度値X1及びX2の前後で、出力特性のグラフの傾き(入力濃度値の予め定められた変化量に対する出力濃度値の変化量)が、急峻に変化する場合がある。以下、出力特性上において急峻な傾きの変化が生じる点を特異点と呼ぶ。なお、特異点は、入力濃度値の予め定められた変化量に対する出力濃度値の変化量が、予め定められた基準よりも大きく変化する点として定義されてもよい。
【0049】
このような特異点を有する出力特性に対しては、
図5(b)で示されるように、TRCによる階調補正を行っても特異点を除去することができず、特異点における階調飛びが発生することとなる。なお、TRCによる階調補正が特異点を除去できない理由としては、TRCによる階調補正ではロバスト性を考慮してスムージングをかけるよう補正係数を定めるため、補正対象の出力特性に対する完全な逆特性を実現することが難しいことなどに起因している。
【0050】
以上のように本実施形態の比較例として例に挙げた最大濃度比によるインクの使用範囲の割り当てなどでは、特異点を有することによる階調飛びが発生する可能性がある。
【0051】
これに対し、本実施形態では、上述の通り、入力濃度値の変化に対する出力濃度値の変化が滑らかになるように使用範囲を調整し、特異点による階調飛びの発生を低減する。
【0052】
以下、入力濃度値の変化に対する出力濃度値の変化が滑らかになるような使用範囲の調整についての一例を具体例に基づいて説明する。
図6は、入力濃度値の変化に対する出力濃度値の変化が滑らかになるような使用範囲の調整について説明する模式図である。
【0053】
まず、予め定められた仮の使用範囲に基づく各インクの出力特性を取得する。
図6に示す例では、仮の使用範囲として、小滴エリアを0〜33.3%とし、小中滴エリアを33.3〜66.6%とし、中大滴エリアを66.6〜100%とした場合の出力特性を示している。したがって、
図6で示した例では、小滴エリア、小中滴エリア、中大滴エリアの3つの使用範囲の境界は、33.3%及び66.6%である。ここで、仮の使用範囲に基づく各インクの出力特性では、使用範囲の境界部分において特異点が生じている可能性がある。
【0054】
次に、一方の仮の使用範囲と他方の仮の使用範囲との境界部分の一方の仮の使用範囲側における出力特性の傾き(入力濃度値の予め定められた変化量に対する出力濃度値の変化量)と、境界部分の他方の仮の使用範囲側における出力特性の傾きとの差が、小さくなる方向へ境界を変更することにより使用範囲の調整を行う。
【0055】
図6を例に説明すると、一方の仮の使用範囲である小滴エリアと他方の仮の使用範囲である小中滴エリアとの境界部分の小滴エリア側における出力特性の傾きと、小中滴エリア側における出力特性の傾きとの差が、小さくなる方向へ境界を変更することにより使用範囲の調整を行う。また、一方の仮の使用範囲である小中滴エリアと他方の仮の使用範囲である中大滴エリアとの境界部分の小中滴エリア側における出力特性の傾きと、中大滴エリア側における出力特性の傾きとの差が、小さくなる方向へ境界を変更することにより使用範囲の調整を行う。つまり、境界部分の前後の傾きが直線に近づくように調整を行う。
【0056】
具体的には、例えば、以下のようにして使用範囲の調整を行い、調整後の使用範囲の境界X1及びX2を求める。
【0057】
仮の使用範囲に基づく出力特性における各点(C1,D1),(C2,D2),(C3,D3),(C4,D4),(C5,D5),(C6,D6)に基づいて、以下の計算を行う。ここで、(C2,D2)及び(C5,D5)は、小滴エリアと小中滴エリアの境界部分の点、小中滴エリアと中大滴エリアの境界部分の点をそれぞれ表しており、ここではC2=33.3%、C5=66.6%である。また、(C1,D1)及び(C3,D3)は、小滴エリアと小中滴エリアの境界部分から入力濃度値の軸方向に予め定められた変化量だけ離れた点であり、C2−C1=C3−C2である。同様に、(C4,D4)及び(C6,D6)は、小中滴エリアと中大滴エリアの境界部分から入力濃度値の軸方向に予め定められた変化量だけ離れた点であり、C5−C4=C6−C5である。
【0058】
まず、小滴エリアと小中滴エリアとの境界部分の小滴エリア側における出力特性の傾きS_High、小中滴エリア側における出力特性の傾きM_Low、小中滴エリアと中大滴エリアとの境界部分の小中滴エリア側における出力特性の傾きM_High、中大滴エリア側における出力特性の傾きL_Lowを以下の式(1)〜(4)のようにそれぞれ求める。
【0059】
S_High=(D2−D1)/(C2−C1)・・・(1)
M_Low=(D3−D2)/(C3−C2)・・・(2)
M_High=(D5−D4)/(C5−C4)・・・(3)
L_Low=(D6−D5)/(C6−C5)・・・(4)
【0060】
次に、全エリアの基準値SVを以下の式(5)のように求める。
【0061】
SV=(S_High/M_Low)+1+(L_Low/M_High)・・・(5)
【0062】
ここで、(S_High/M_Low)及び(L_Low/M_High)は、それぞれ小中滴エリア側の傾きを基準として他エリア側の傾きがどれだけ差異があるのか(特異度合い)を示している。そして、基準値SVは、小中滴エリアにおける傾きの特異度合いを基準(=1)として、全エリアの特異度合いを示している。
【0063】
そして、次のように、小滴エリアの使用範囲幅を示す小滴エリア率、小中滴エリアの使用範囲幅を示す小中滴エリア率、中大滴エリアの使用範囲幅を示す中大滴エリア率をそれぞれ求める。
【0064】
小滴エリア率=(S_High/M_Low)/SV・・・(6)
中大滴エリア率=(L_Low/M_High)/SV・・・(7)
小中滴エリア率=1−小滴エリア率−中大滴エリア率・・・(8)
【0065】
最後に、調整後の使用範囲の境界X1(小滴エリアと小中滴エリアの境界)及びX2(小中滴エリアと中大滴エリアの境界)を以下のように求める。
【0066】
X1=小滴エリア率(%)・・・(9)
X2=1−中大滴エリア率(%)・・・(10)
【0067】
このように、仮の使用範囲における全エリアの特異度合いに対する当該境界部分の特異度合いに応じて、使用範囲の境界を入力濃度値の軸方向に移動させるよう調整し、入力濃度値の変化に対する出力濃度値の変化が滑らかになるようにする。
【0068】
図7は、小滴、中滴、大滴を使用する際の使用範囲の境界X1及びX2及び上述の計算例をY,M,C,Kの色成分ごとに示した表である。
図7(a)は最大濃度比に応じた使用範囲の割り当てを行った場合の境界X1及びX2を示し、
図7(b)は傾きS_High,M_Low,M_High,L_Lowについての算出例を示し、
図7(c)は基準値SV,小滴エリア率,中大滴エリア率,小中滴エリア率の算出例を示し、
図7(d)は調整後の使用範囲の境界X1及びX2を示している。
【0069】
また、
図8A〜
図8Dは、それぞれ、
図7(a)で示した最大濃度比に応じた使用範囲の割り当てを行った場合の出力特性と、
図7(d)で示した本実施形態における使用範囲の割り当てを行った場合の出力特性とを図示したグラフであり、
図8Aはイエロー(Y)についての出力特性を示し、
図8Bはマゼンタ(M)についての出力特性を示し、
図8Cはシアン(C)についての出力特性を示し、
図8Dはブラック(K)についての出力特性を示している。
【0070】
なお、
図8A〜
図8Dにおいて、実線で表された出力特性は最大濃度比に応じた使用範囲の割り当てを行った場合の出力特性を表し、破線で表された出力特性は本実施形態における使用範囲の割り当てを行った場合の出力特性を表している。また、X1'及びX2'はそれぞれ最大濃度比に応じた使用範囲の境界を示し、X1及びX2はそれぞれ本実施形態の調整後の使用範囲の境界を示している。
【0071】
図8A〜
図8Dからもわかるように、本実施形態における使用範囲の割り当てでは、特異点の特異度合い(境界前後での傾きの差異)が低減される。
【0072】
このようにして調整された使用範囲に応じた閾値マトリクスが、例えば記憶装置56又はメモリ54に記憶され、網点画像データ生成部72は、この記憶された閾値マトリクスを用いて網点画像データを生成する。
【0073】
以上、本発明の実施形態に係る画像形成装置10について説明したが、変形例として画像形成装置10が上述の使用範囲を算出する機能を有してもよい。
【0074】
図9は、本発明の実施形態の変形例に係る画像形成装置10において、プログラムが実行されることにより実現される情報処理部50の機能構成を示すブロック図である。なお、
図9に示される構成の一部又は全ては、ASIC,FPGAなどのハードウェアにより実現されてもよい。また、
図3に示した構成と実質的に同じ機能を有する構成については同一の符号を付している。
【0075】
図9に示されるように、変形例では、出力濃度値取得部76、使用範囲調整部78、出力特性予測部80及び補正係数設定部82が追加されている点で
図3に示した構成と異なる。
【0076】
出力濃度値取得部76は、入力濃度値に対するインクの予め定められた仮の使用範囲に基づいて、着弾するインクの大きさが異なる複数種類のインクによる出力を自装置により行った結果である入力濃度値ごとの出力濃度値を取得する。例えば、出力濃度値取得部76は、仮の使用範囲として、小滴エリアを0〜33.3%とし、小中滴エリアを33.3〜66.6%とし、中大滴エリアを66.6〜100%とした場合の自装置である画像形成装置10の出力特性を取得する。なお、出力濃度値取得部76は、画像形成装置10に設けられた図示しないスキャナなどの読取装置により自装置による出力結果を読み取って出力特性を取得してもよいし、他の読取装置による読取り結果を受信することにより出力特性を取得してもよい。
【0077】
使用範囲調整部78は、出力濃度値取得部76が取得した入力濃度値ごとの出力濃度値(出力特性)を用いて、入力濃度値の変化に対する出力濃度値の変化が滑らかになるようにインクの使用範囲を調整する。例えば、上述のように、使用範囲調整部78は、予め定められた一方の仮の使用範囲と予め定められた他方の仮の使用範囲との境界部分の一方の仮の使用範囲側における入力濃度値の予め定められた変化量に対する出力濃度値の変化量と、この境界部分の他方の仮の使用範囲側における入力濃度値の予め定められた変化量に対する出力濃度値の変化量との差が、変更前よりも小さくなる方向へ境界を変更することによりインクの使用範囲を調整する。
【0078】
なお、網点画像データ生成部72は、この使用範囲調整部78により調整された使用範囲に従って網点画像データを生成することとなる。例えば、網点画像データ生成部72は、使用範囲調整部78により調整された使用範囲に従った閾値マトリクスを用いて網点画像データを生成する。
【0079】
出力特性予測部80は、入力濃度値に対する液滴の予め定められた仮の使用範囲を使用範囲調整部78により調整された使用範囲に変更した場合の出力特性を予測する。例えば、出力特性予測部80は、出力濃度値取得部76が取得した予め定められた仮の使用範囲に基づく出力特性を用い、エリアごとの出力特性の始点又は終点を調整後の境界点へと入力濃度値の軸方向に移動させることにより、調整後の使用範囲における出力特性の予測値を得る。
【0080】
補正係数設定部82は、出力特性予測部80により予測された出力特性に基づいて、階調補正部70による補正の補正係数を設定する。補正係数設定部82は、例えば、出力特性予測部80により予測された出力特性の逆特性となるTRCに対応する補正係数を、階調補正部70が用いるLUTの補正係数として設定する。
【0081】
図10は、変形例における画像形成装置10の動作の一例を示すフローチャートである。
ステップ100(S100)において、画像形成装置10は、予め定められた仮の使用範囲に基づいて、入力濃度値が0から100%までのチャートを出力する。
【0082】
ステップ102(S102)において、出力濃度値取得部76がステップ100で出力されたチャートをスキャナなどにより読み取って測定した出力濃度値を取得する。
【0083】
ステップ104(S104)において、使用範囲調整部78が、出力濃度値取得部76が取得した入力濃度値ごとの出力濃度値を用いて、入力濃度値の変化に対する出力濃度値の変化が滑らかになるようにインクの使用範囲を調整する。また、調整した使用範囲に応じた閾値マトリクスを、網点画像データ生成部72により使用される閾値マトリクスとして設定する。
【0084】
ステップ106(S106)において、出力特性予測部80は、使用範囲調整部78により調整された使用範囲に変更後の出力特性を予測する。
【0085】
ステップ108(S108)において、補正係数設定部82は、出力特性予測部80により予測された出力特性に基づいて、階調補正部70による補正の補正係数を設定する。
【0086】
以上、
図10に示した動作では、1度のチャートの出力及び測定により、使用範囲の調整及び補正係数の設定がなされるが、ステップ104における使用範囲の調整後、ステップ106における出力特性の予測処理の代わりに、調整された使用範囲に基づいて再度チャートを出力及び測定し、得られた出力特性に基づいて補正係数を設定するよう構成してもよい。
【0087】
次に、画像形成装置10における画像形成動作について説明する。
図11は、画像形成装置10における画像形成動作の一例を示すフローチャートである。
【0088】
ステップ200(S200)において、画像形成装置10は、入力画像を受付ける。
【0089】
ステップ202(S202)において、階調補正部70は、入力画像の階調値を補正する補正処理として、TRCを用いる階調補正を色成分ごとに行う。
【0090】
ステップ204(S204)において、網点画像データ生成部72が、階調補正部70により補正された入力画像に対し、スクリーン処理を行い、着弾する液滴の大きさが異なる複数種類の液滴により画像を形成するための網点画像データを色成分ごとに生成する。
【0091】
ステップ206(S206)において、画像形成制御部74は、網点画像データ生成部72により生成された色成分ごとの網点画像データに従って画像を形成するよう制御する。
【0092】
ここで、ステップ202における階調補正では、
図12に示されるように、階調飛びの発生が低減されている。なお、
図12は、インクの使用範囲を、入力濃度値の変化に対する出力濃度値の変化が滑らかになるように調整した際のTRCを用いた階調補正について説明する模式図であり、
図12(a)は入力濃度値の変化に対する出力濃度値の変化が滑らかになるように使用範囲を調整した場合の出力特性を示し、
図12(b)は
図12(a)に対してTRCを用いた階調特性を行った場合の出力特性を示している。このように、入力濃度値の変化に対する出力濃度値の変化が滑らかになるように使用範囲を調整した場合には、特異点が消滅又は特異度合いが低減し、階調飛びの発生が低減される。