(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のフロントアンダーランプロテクタでは、トラック(車両)のシャシフレーム(車体フレーム)の前端と、エネルギ吸収部材の前端とが車両の前後方向において略同じ位置に配置されるので、車両と他の車両(相手車両)とが衝突した際、エネルギ吸収部材を十分に変形させる前に相手車両の前端部が車両の車体フレームに衝突する可能性がある。相手車両の前端部と車両の車体フレームとが衝突すると、車両の後方への相手車両の移動が車体フレームによって制限されるので、車体フレームに衝突した後はエネルギ吸収部材を変形させることが難しく、エネルギ吸収部材のエネルギ吸収性能を十分に発揮できないおそれがある。
【0005】
また、上記不具合を回避するために、車体フレームの前端よりも前方へエネルギ吸収部材を突出させると、エネルギ吸収部材が車両の前方へ突出して、エネルギ吸収部材によって車両の全長を延長してしまう可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、車両の全長の延長を抑えることができ、且つ他の車両との衝突時にエネルギ吸収性能を効果的に発揮することが可能な車両の衝突エネルギ吸収装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の車両の衝突エネルギ吸収装置は、アンダーランプロテクタバーとエネルギ吸収体と衝突判定手段と移動手段と制御手段とを備える。
【0008】
アンダーランプロテクタバーは、車両の車体フレームに対して固定的に支持されて車体フレームの前端部又は後端部の下方で車幅方向に延びる。エネルギ吸収体は、車幅方向に延びる回転軸を中心としてアンダーランプロテクタバーに対して回転自在に支持されて車幅方向に延び、アンダーランプロテクタバーの上方の収納位置と、アンダーランプロテクタバーの前方又は後方の使用位置との間を回転軸を中心として傾動可能である。使用位置のエネルギ吸収体の後面又は前面は、アンダーランプロテクタバーの前面又は後面と近接し若しくは接触する。衝突判定手段は、車両と他の車両との衝突の可能性が高い衝突発生前状態であるか否かを判定する。移動手段は、エネルギ吸収体を収納位置に保持する非作動状態と、エネルギ吸収体を収納位置から使用位置へ傾動させる作動状態とに設定可能であり、通常時は非作動状態を維持する。制御手段は、衝突発生前状態であると衝突判定手段が判定したとき、非作動状態の移動手段を作動状態に設定する。
【0009】
上記構成では、衝突判定手段が衝突発生前状態であると判定したとき、制御手段が非作動状態の移動手段を作動状態に設定し、移動手段がエネルギ吸収体を収納位置から使用位置へ傾動させる。使用位置ではエネルギ吸収体の後面又は前面がアンダーランプロテクタバーの前面又は後面と近接し若しくは接触しているので、使用位置のエネルギ吸収体に他の車両からの荷重が入力すると、車両の後方又は前方へのエネルギ吸収体の移動がアンダーランプロテクタバーに規制され、エネルギ吸収体が変形して衝突エネルギを吸収する。
【0010】
また、収納位置はアンダーランプロテクタバーの上方であり、使用位置はアンダーランプロテクタバーの前方又は後方である。すなわち、収納位置では、エネルギ吸収体が使用位置よりも後方又は前方に配置されるので、使用位置に比べて車両の前方又は後方へのエネルギ吸収体の突出を抑えることができる。また、使用位置では、エネルギ吸収体が収納位置よりも前方又は後方に配置されるので、エネルギ吸収体を車両の前方又は後方へ突出させることができ、突出させた分だけ他の車両がエネルギ吸収体に衝突し易くなり、衝突エネルギを効果的に吸収することができる。このため、例えば、収納位置のエネルギ吸収体を車両の前端又は後端の近傍に配置して、通常時の車両の前端又は後端から前方又は後方へのエネルギ吸収体の突出を抑えつつ、衝突発生前状態になったときにエネルギ吸収体を使用位置に傾動させて車両の前端又は後端から前方又は後方へ突出させて衝突エネルギを吸収することができる。従って、車両の全長の延長を抑えることができ、且つ他の車両との衝突時にエネルギ吸収性能を効果的に発揮することができる。
【0011】
また、上記衝突エネルギ吸収装置は、リンク部材を備えてもよく、上記アンダーランプロテクタバーは、略平面状の前面又は後面を有してもよい。リンク部材は、回転軸を中心としてアンダーランプロテクタバーに対して回転自在に連結される一端部と、エネルギ吸収体に連結される他端部とを有し、回転軸を中心としてエネルギ吸収体をアンダーランプロテクタバーに対して回転自在に支持する。エネルギ吸収体に連結されるリンク部材の他端部は、エネルギ吸収体が収納位置に配置された状態で、回転軸に連結されるリンク部材の一端部よりも後上方又は前上方に位置する。
【0012】
上記構成では、アンダーランプロテクタバーが略平面状の前面又は後面を有するので、例えば、アンダーランプロテクタバーの前面又は後面が湾曲している場合に比べて、使用位置のエネルギ吸収体を後方又は前方から確実に支持することができる。
【0013】
また、リンク部材の一端部が回転軸を中心としてアンダーランプロテクタバーに対して回転自在に連結され、且つエネルギ吸収体が収納位置に配置された状態でリンク部材の他端部が一端部よりも後上方又は前上方に位置するので、エネルギ吸収体を収納位置から使用位置へ傾動させる際、リンク部材の他端部は、前上方又は後上方へ向かって傾動した後、前下方又は後下方へ傾動する。このため、エネルギ吸収体を収納位置から前上方又は後上方へ傾動させて、エネルギ吸収体をアンダーランプロテクタバー側から上方へ離間させることができるので、エネルギ吸収体を傾動させる際にエネルギ吸収体とアンダーランプロテクタバーとが干渉し難くなる。従って、アンダーランプロテクタバーの前上方又は後上方の角部を削ることなく、又は該角部の削りを最小限に抑えてアンダーランプロテクタバーを形成することができ、アンダーランプロテクタバーの略平面状の前面又は後面を上側(アンダーランプロテクタバーの上面側)へ広く確保することができるので、他の車両との衝突時に、アンダーランプロテクタバーの上下方向の厚さを最大限に活用して使用位置のエネルギ吸収体を後方又は前方から確実に支持することができる。
【0014】
また、リンク部材を複数設けて平行リンクを構成した場合には、エネルギ吸収体の前面又は後面を車両の前方又は後方に向けたままエネルギ吸収体を収納位置から使用位置へ傾動させることができる。このため、エネルギ吸収体が使用位置に到達する直前に車両と他の車両とが衝突した場合であっても、衝突エネルギがエネルギ吸収体の前面又は後面から入力するので、エネルギ吸収体によって衝突エネルギを好適に吸収することができるとともに、平行リンクによってエネルギ吸収体を使用位置へ確実に傾動させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エネルギ吸収性能を効果的に発揮することができ、且つ車両の全長の延長を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、FRは車両の前方を、UPは上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示す。また、
図4において、一点鎖線CL1及びCL2は回転軸を示す。また、以下の説明において、左右方向は車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る車両の衝突エネルギ吸収装置10を備えるトラック(車両)1は、キャブ2が概ねエンジン3の上方に配置されるキャブオーバー型のトラック1であって、車体フレーム4と、車体フレーム4の前端を前方から覆うバンパーカバー5とを有する。車体フレーム4は、車幅方向両側でトラック1の前後に亘って延びる左右1対のサイドフレーム6と、車幅方向に沿って延びて左右のサイドフレーム6を連結する複数のクロスフレーム(図示省略)とを有する。
【0019】
図2〜
図4に示すように、車両の衝突エネルギ吸収装置10は、フロントアンダーランプロテクタバー(アンダーランプロテクタバー)11(以下、FUPバーと称する)と、エネルギ吸収体12と、左右1対の平行リンク機構13と、左右1対のモータ(移動手段)14と、前方ミリ波レーダ15と、前方撮影用カメラ16と、コントロールユニット17(以下、ECU(Electric Control Unit)と称する)とを備える。なお、車両の衝突エネルギ吸収装置10の左右1対の平行リンク機構13と、左右1対のモータ14とは、トラック1の左右に対称的に設けられて、ほぼ同様の構成を有するため、以下では左側について説明し、右側の説明を省略する。
【0020】
FUPバー11は、略平面状の前面23を有する矩形筒状の棒状体であって、車幅方向両端が閉止され、左右1対のフロントアンダーランプロテクタブラケット18(以下、FUPブラケットと称する)を介して左右のサイドフレーム6に固定されてトラック1の前端下部で左右に亘って延びる。左右のFUPブラケット18は、左右のサイドフレーム6の前端部に固定される側板部19と、側板部19の前端縁から連続して車幅方向外側へ延びる前板部20とをそれぞれ有する。左右のFUPブラケット18のそれぞれは、側板部19の車幅方向内側面の上端部が左右のサイドフレーム6の車幅方向外側面に密接する状態で、左右のサイドフレーム6にボルト(図示省略)等によって固定されて下方へ延びる。左右のFUPブラケット18のそれぞれの前板部20の前面の下端部には、FUPバー11の後面が溶接やボルト(図示省略)等によって固定される。FUPバー11が左右のサイドフレーム6の前端部の下方で車幅方向に延び、FUPバー11の前面23がトラック1の前後方向において左右のサイドフレーム6の前端と略同じ位置に配置される。FUPバー11は、トラック1と、トラック1よりも車高が低い乗用車等の他の車両(図示省略)とが衝突した際に、FUPバー11よりも後方への上記他の車両の移動を規制し、トラック1の車体フレーム4の下方への上記他の車両の潜り込みを防止するとともに、上記他の車両の前端部に衝突して上記他の車両が備える衝突エネルギ吸収機能を発揮させることができる。
【0021】
エネルギ吸収体12は、車幅方向に延びるハニカム構造体であって、金属薄板によって形成されて上下及び左右が区画される矩形筒状体の枠部21と、金属薄板によって形成されて枠部21の内側で前後方向に延びる複数の隔壁22とを有し、枠部21と複数の隔壁22とによって枠部21の内側に複数の空間が区画形成される(
図4参照)。エネルギ吸収体12は、前後方向、左右方向、及び上下方向の長さがFUPバー11の各長さと略同じ長さに形成される。エネルギ吸収体12は、後述する平行リンク機構13を介してFUPバー11に回転自在に連結され、FUPバー11の上面33に載置されてFUPバー11の前面23よりも前方へ突出しない収納位置と、FUPバー11の前方に配置されてエネルギ吸収体12の後面24がFUPバー11の前面23に接触する使用位置との間を傾動可能である。なお、本実施形態では、枠部21及び複数の隔壁22を金属薄板によって形成したが、これに限定されるものではなく、枠部21や複数の隔壁22をCFRP(炭素繊維強化プラスチック)等によって形成してもよい。また、使用位置のエネルギ吸収体12の後面24は、FUPバー11の前面23に接触しなくてもよく、FUPバー11の前面23に近接していてもよい。
【0022】
図3及び
図4に示すように、平行リンク機構13は、軸部25と、プーリ26と、第1アーム(リンク部材)27と、支持部材28と、第2アーム(リンク部材)29とを有する。軸部25は、断面円形状の棒状体であって、FUPバー11の側面部に溶接等によって固定されて、FUPバー11の側面部から車幅方向外側へ突出する。プーリ26は、軸部25が挿通する貫通孔(図示省略)を有し、該貫通孔に軸部25を挿通させた状態で軸部25に対して回転自在に支持される。プーリ26は、車幅方向内側のアーム支持部31と、車幅方向外側に配置されてアーム支持部31よりも大きな外径のベルト保持部32とを有し、ベルト保持部32に掛け渡される環状のベルト30を介して後述するモータ14に連結される。第1アーム27は、一側から他側へ延びて他側で車幅方向内側へ曲折する略L字状の棒状体であって、一側の一端部38がプーリ26のアーム支持部31に固定され、他側の他端部39がエネルギ吸収体12の車幅方向外側面の後下端部の貫通孔(図示省略)に挿入されて回転自在に連結される。すなわち、第1アーム27の一端部38がプーリ26に固定されることにより、エネルギ吸収体12(第1アーム27の他端部39が連結される箇所)が回転軸CL1(
図4参照)を中心としてFUPバー11に回転自在に支持される。支持部材28は、上下方向に延びる板状体であって、下端部がプーリ26よりも車幅方向外側へ突出する軸部25の端部に溶接やボルト等(図示省略)によって固定され、上端部がFUPバー11の上面33よりも上方に配置される。第2アーム29は、クランク状に形成される棒状体であって、一端部40が支持部材28の上端部に回転自在に支持され、他端部41がエネルギ吸収体12の車幅方向外側面の後上端部の貫通孔(図示省略)に挿入されて回転自在に連結される。エネルギ吸収体12が収納位置に配置された状態では、第1アーム27が側面視で軸部25側から斜め後上方へ延び、第1アーム27の他端部39が一端部27よりも後上方に位置する。また、第2アーム29が側面視で支持部材28側から斜め後上方へ延び、第2アーム29の他端部41が一端部40よりも後上方に位置する。なお、エネルギ吸収体12がFUPバー11に対して平行リンク機構によって回転自在に支持されるので、回転軸はCL1に限られず、エネルギ吸収体12の任意の箇所に応じた回転軸が存在する。例えば、エネルギ吸収体12のうちの第2アーム29の他端部41が連結される箇所に対しての回転軸はCL2(
図4参照)である。
【0023】
バンパーカバー5は、エネルギ吸収体12が収納位置から使用位置へ傾動する際にエネルギ吸収体12と干渉しないように、下端縁から上方へ凹む切欠部(図示省略)を有する。該切欠部は、エネルギ吸収体12の傾動を許容する。
【0024】
モータ14は、車幅方向に延びる出力軸(図示省略)を有し、FUPバー11の後面の車幅方向外端部に固定され、モータ14の出力軸がベルト30を介してプーリ26に連結される。モータ14は、通電されないで停止している非作動状態でエネルギ吸収体12を収納位置に保持し、通電されて駆動する作動状態でベルト30及び平行リンク機構13を介してエネルギ吸収体12を収納位置から使用位置へ傾動させる。なお、モータ14は、通常時は非作動状態を維持する。
【0025】
前方ミリ波レーダ15は、キャブ2の前面部の車幅方向略中央部に配置され、ミリ波帯域の連続した電磁波である送信波を、キャブ2の前面部から前方へ向かって所定角度の範囲内に所定時間ごとに繰り返し発射し、トラック1の前方に存在する物体(他の車両等)からの反射波である受信波を受信する。前方ミリ波レーダ15は、前方ミリ波レーダ15が配置されるキャブ2の前面部から上記物体までの距離と仰俯角と前後方向を基準にする方位角とを逐次検出し、検出した情報を含む信号をECU17へ出力する。
【0026】
前方撮影用カメラ16は、キャブ2のフロントウインドウ7の上端縁の車幅方向略中央部の近傍に配置され、トラック1の前方の所定角度の範囲内の動画像を逐次撮像し、撮像した動画像を構成する静止画像をデジタル変換し、動画像の情報としてECU17へ出力する。
【0027】
図2に示すように、ECU17は、記憶部34とCPU(Central Processing Unit)35とを有する。記憶部34は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などによって構成される。ROMには、CPU35が各種処理を実行するための各種プログラムや各種データが記憶されている。RAMには、前方ミリ波レーダ15や前方撮影用カメラ16等の各種検出データを記憶するデータ記憶領域が予め設定されている。また、RAMは、上記各種検出データの一時記憶領域以外にも、ROMから読み出されたプログラムの展開領域、CPU35の演算結果の一時記憶領域等として機能する。データ記憶領域は、記憶可能なデータ数の上限(上限データ数)が予め設定された領域であり、記憶されているデータ数が上限データ数に達すると、ECU17は、新規の検出結果を記憶する際に、既に記憶されている検出結果のうち最初に記憶された最も古いものを削除し、新規の検出結果を記憶させる。なお、記憶部34に記憶される種々のデータは、実験やシミュレーションなどによって得られた測定値や理論値に基づいて設定される。また、これらのデータは、各プログラムに含まれた状態で記憶されてもよい。
【0028】
CPU35は、記憶部34に記憶される各種プログラムを実行することにより、衝突判定部(衝突判定手段)36、及び制御部(制御手段)37として機能する。
【0029】
衝突判定部36は、前方ミリ波レーダ15からの情報や前方撮影用カメラ16が撮像した動画像の情報に基づいて、トラック1と他の車両を含む対象物との相対距離及び相対速度等を算出し、トラック1と他の車両とが衝突する可能性が高い衝突発生前状態であるか否かを判定する。例えば、トラック1と他の車両との相対距離が所定の閾値を下回った場合、トラック1が他の車両に接近する相対速度が所定の閾値を上回った場合、又はトラック1と他の車両との相対距離を相対速度で除することによって求められる衝突余裕時間TTC(Time To Collision)の値が所定の閾値以下である場合に、衝突判定部36は、トラック1と他の車両とが衝突する可能性が高い衝突発生前状態であると判定する。なお、衝突判定部36は、前方ミリ波レーダ15及び前方撮影用カメラ16以外の他のセンサ等の情報を用いて、衝突発生前状態であるか否かを判定してもよい。
【0030】
制御部37は、衝突判定部36が衝突発生前状態であると判定したとき、非作動状態のモータ14を作動状態に設定する。モータ14が作動状態に設定されると、モータ14が駆動されるとともに、ベルト30を介してプーリ26が連動して回転し、第1アーム27の他端部39側が前上方へ傾動する。第1アーム27の他端部39側が前上方へ傾動すると、エネルギ吸収体12は、第1アーム27及び第2アーム29に支持されながら収納位置から前上方へ傾動し、その後、前下方へ傾動して使用位置に配置される。
【0031】
使用位置のエネルギ吸収体12が前方から他の車両に押圧されると、エネルギ吸収体12は、後方への移動がFUPバー11によって規制されて潰れ変形を起こし、この潰れ変形によって、エネルギ吸収体12に入力する衝突エネルギが吸収される。
【0032】
上記のように構成された車両の衝突エネルギ吸収装置10では、収納位置のエネルギ吸収体12がFUPバー11の上面33に載置されてFUPバー11の前面23よりも前方へ突出しないので、通常時のトラック1の全長を延長しない。
【0033】
また、トラック1の前後方向において、FUPバー11の前面23が左右のサイドフレーム6(車体フレーム4)の前端と略同じ位置であり、使用位置のエネルギ吸収体12がFUPバー11の前方に配置されるので、使用位置のエネルギ吸収体12は、車体フレーム4よりも前方に配置される。エネルギ吸収体12が車体フレーム4よりも前方に突出する分だけ、他の車両が車体フレーム4よりも先にエネルギ吸収体12に衝突し易いので、他の車両との衝突時にエネルギ吸収体12によって衝突エネルギを効果的に吸収することができる。
【0034】
従って、本実施形態によれば、トラック1の全長の延長を抑えることができ、且つ他の車両との衝突時にエネルギ吸収性能を効果的に発揮することができる。
【0035】
また、FUPバー11は、矩形筒状の棒状体であり、平面状の前面23を有するので、例えば、FUPバーの前面が湾曲している場合に比べて、使用位置のエネルギ吸収体12を後方から確実に支持することができる。
【0036】
また、第1アーム27の一端部27がFUPバー11に対して回転自在に連結され、且つエネルギ吸収体12が収納位置に配置された状態で第1アーム27の他端部39が一端部27よりも後上方に位置するので、エネルギ吸収体12を収納位置から使用位置へ傾動させる際、第1アーム27の他端部39は、前上方へ向かって傾動した後、前下方へ傾動する。このため、エネルギ吸収体12を収納位置から前上方へ傾動させて、エネルギ吸収体12をFUPバー11側から上方へ離間させることができるので、エネルギ吸収体12を傾動させる際にエネルギ吸収体12とFUPバー11とが干渉し難い。
【0037】
また、FUPバー11が矩形筒状の棒状体であるので、例えば、FUPバー11の前上方の角部を削った場合に比べてFUPバー11の前面23を上側(FUPバー11の上面33側)へ広く確保することができ、他の車両との衝突時に、FUPバー11の上下方向の厚さを最大限に活用して使用位置のエネルギ吸収体12を後方から確実に支持することができる。
【0038】
また、平行リンク機構13を備えるので、エネルギ吸収体12の前面をトラック1の前方に向けたままエネルギ吸収体12を収納位置から使用位置へ傾動させることができる。このため、エネルギ吸収体12が使用位置に到達する直前にトラック1と他の車両とが衝突した場合であっても、衝突エネルギがエネルギ吸収体12の前面から入力するので、エネルギ吸収体12によって衝突エネルギを好適に吸収することができるとともに、平行リンク機構13によってエネルギ吸収体12を使用位置へ確実に傾動させることができる。
【0039】
なお、本実施形態では、モータ14によってエネルギ吸収体12を収納位置から使用位置へ傾動させたが、これに限定されるものではなく、トラック等のエアタンクに充填されるエアを動力として用いて、アクチュエーター等を作動させてエネルギ吸収体12を収納位置から使用位置へ傾動させてもよい。
【0040】
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。第2実施形態の車両の衝突エネルギ吸収装置50は、制御部37がモータ14に替えてソレノイド55を制御し、バネによる付勢力によってエネルギ吸収体12を収納位置から使用位置へ傾動させる点が第1実施形態と異なる。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0041】
図5及び
図6に示すように、FUPバー11とエネルギ吸収体12とは、3つのバネ付きヒンジ(移動手段)51(
図5には中央部と左側のバネ付きヒンジ51を示す)によって回転自在に連結される。すなわち、エネルギ吸収体12は、バネ付きヒンジ51の回転軸を中心としてFUPバー11に回転自在に支持される。バネ付きヒンジ51は、エネルギ吸収体12を収納位置から使用位置(
図6中に2点鎖線で示す位置)へ向かって付勢する。収納位置のエネルギ吸収体12は、FUPブラケット18に固定されるソレノイド(移動手段)55によって、バネ付きヒンジ51の付勢力に抗した状態で収納位置に保持され、使用位置への傾動が規制される。
【0042】
バネ付きヒンジ51は、FUPバー11に固定される一側の固定部51aと、エネルギ吸収体12に固定される他側の固定部51bとを有する。一側の固定部51aは、FUPバー11の前面23の上端縁にボルト等によって固定される。他側の固定部51bは、収納位置のエネルギ吸収体12の枠部21の下板部52に上側からボルト等によって固定される。収納位置のエネルギ吸収体12の枠部21の上板部53の前端縁部には、磁石54が固定されて車幅方向に沿って延びる。使用位置では、エネルギ吸収体12の磁石54は、FUPバー11の前面23に吸着する。
【0043】
ソレノイド55は、ソレノイド本体56とソレノイド本体56に移動自在に挿入されるプランジャ57とを有し、プランジャ57を前方へ向けた状態でFUPブラケット18の車幅方向外側面にボルト等によって固定される。ソレノイド55は、通電されない非作動状態で、内部の永久磁石(図示省略)によって、プランジャ57がソレノイド本体56から前方へ突出した状態を保つ。また、ソレノイド55が通電されて作動状態になると、プランジャ57がソレノイド本体56へ没入する方向(後方)へ移動する。
【0044】
収納位置のエネルギ吸収体12は、ソレノイド本体56から前方へ突出する非作動状態のソレノイド55のプランジャ57によって使用位置への傾動が規制される(
図6参照)。制御部37は、衝突判定部36が衝突発生前状態であると判定すると、非作動状態のソレノイド55を作動状態に設定する。ソレノイド55が作動状態に設定されると、ソレノイド55のプランジャ57がソレノイド本体56へ没入し、エネルギ吸収体12の傾動の規制が解除され、エネルギ吸収体12がバネ付きヒンジ51の付勢力によって収納位置から使用位置へ傾動する。エネルギ吸収体12が使用位置へ傾動すると、エネルギ吸収体12の磁石54がFUPバー11の前面23に吸着し、エネルギ吸収体12が使用位置(
図6において2点鎖線で示す位置)に保持される。
【0045】
使用位置のエネルギ吸収体12が前方から他の車両に押圧されると、エネルギ吸収体12は、後方への移動がFUPバー11によって規制されて潰れ変形を起こし、この潰れ変形によって、エネルギ吸収体12に入力する衝突エネルギが吸収される。
【0046】
上記のように構成された車両の衝突エネルギ吸収装置50では、エネルギ吸収体12がFUPバー11の前上端のバネ付きヒンジ51の回転軸を中心としてFUPバー11に回転自在に支持される。このように、FUPバー11とエネルギ吸収体12とをバネ付きヒンジ51で連結する簡易な構成で、エネルギ吸収体12の傾動時にエネルギ吸収体12とFUPバー11との干渉を確実に回避することができる。
【0047】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【0048】
例えば、
図7に示す車両の衝突エネルギ吸収装置60では、車幅方向に延びる回転軸を中心として一端部がFUPバー65に回転自在に支持され、他端部がエネルギ吸収体62に固定される第3アーム(リンク部材)61を有する。エネルギ吸収体62は、ハニカム構造体であり、収納位置に配置された状態で上下方向に貫通する複数の空間が内側に区画形成される。FUPバー65の前上方の角部は、エネルギ吸収体62の傾動時にエネルギ吸収体62に干渉しないように削られている。第3アーム61は、FUPバー65の内部に設けられるねじりばね等(図示省略)によって、収納位置のエネルギ吸収体62を使用位置へ付勢している。収納位置のエネルギ吸収体62は、ソレノイド(移動手段)64によって使用位置への傾動が規制されて収納位置に保持される。衝突判定部が衝突発生前状態であると判定すると、制御部が非作動状態のソレノイド64を作動状態に設定し、エネルギ吸収体62の傾動の規制が解除され、エネルギ吸収体62がねじりばね(移動手段)等の付勢力によって収納位置から使用位置へ傾動する。使用位置(
図7において2点鎖線で示す位置)では、FUPバー65の側面から車幅方向外側へ突出するストッパ63と第3アーム61とが当接し、ストッパ63が下方への第3アーム61の移動を規制する。
【0049】
また、上記実施形態では、車両の衝突エネルギ吸収装置10,50,60をトラック1の前方に配置されるフロントアンダーランプロテクタバー11,65側に適用したが、
図8に示すように、トラック1の後方(車体フレーム4の後部下方)に配置されるリアアンダーランプロテクタバー(アンダーランプロテクタバー)71側に適用することも可能である。
【0050】
また、上記実施形態では、エネルギ吸収体12,62をハニカム構造体としたが、これに限定されるものではなく、例えば、発泡ウレタン等の衝撃緩衝材が内部に充填された箱型のエネルギ吸収体であってもよい。