特許第6206729号(P6206729)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206729
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】薄膜の転写方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20170925BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20170925BHJP
   H01L 51/40 20060101ALI20170925BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20170925BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H01L21/02 B
   H01L21/02 C
   H01L21/30 502D
   H01L29/28 390
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 250E
   H01L29/28 310E
【請求項の数】19
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2014-512797(P2014-512797)
(86)(22)【出願日】2012年5月23日
(65)【公表番号】特表2014-525134(P2014-525134A)
(43)【公表日】2014年9月25日
(86)【国際出願番号】SG2012000182
(87)【国際公開番号】WO2012161660
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2015年5月19日
(31)【優先権主張番号】61/489,021
(32)【優先日】2011年5月23日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513095351
【氏名又は名称】ナショナル ユニバーシティ オブ シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】チュア,レイ−レイ
(72)【発明者】
【氏名】ホー,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】プング,ルイ−チー
(72)【発明者】
【氏名】カム,フォン,ユ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ジエ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ロク−ユエン
(72)【発明者】
【氏名】ツオ,ジン−メイ
(72)【発明者】
【氏名】ロー,キアン,ピン
(72)【発明者】
【氏名】リム,ゲオク−キエン
【審査官】 ▲高▼須 甲斐
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0048625(US,A1)
【文献】 特開2011−006265(JP,A)
【文献】 特開2011−105590(JP,A)
【文献】 特開2010−062527(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0021708(US,A1)
【文献】 特表2006−512744(JP,A)
【文献】 特開2006−049800(JP,A)
【文献】 特開2010−062526(JP,A)
【文献】 Xiaogan Liang,Graphene Transistors Fabricated via Transfer-Printing In Device Active-Areas on Large Wafer,NANO LETTERS,2007年11月14日,2007, Vol.7, No.12,pp.3840-3844,URL,http://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/nl072566s
【文献】 Matthew J.Allen,Soft Transfer Printing of Chemically Converted Graphene,ADVANCED MATERIALS,2009年 5月25日,Volume 21, Issue 20,pp.2098-2102,URL,http://yylab.seas.ucla.edu/papers/soft%20transfer.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/027
H01L 51/05
H01L 51/30
H01L 51/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板から第2基板へと薄膜を転写する方法であって、下記工程:
(a)転写構造を供給する工程であって、前記転写構造が支持層及び膜接触層を含み、前記支持層がエラストマーを含む、前記工程;
(b)第1基板表面上に備えられた薄膜を供給する工程;
(c)前記転写構造の前記膜接触層を前記薄膜と接触させる工程;
(d)前記第1基板を除去して、前記膜接触層と接触する前記薄膜を有する転写構造を得る工程であって、前記接触がファンデルワールス相互作用によるものである、前記工程
(e)工程(d)と工程(f)の間であって前記薄膜を前記膜接触層と接触させている間、前記膜接触層上に接触している前記薄膜を前記支持層で支持する工程;
(f)工程(e)の後に、前記転写構造と第2基板表面を接触させる工程;
(g)前記膜接触層を除去する工程;ならびに
(h)工程(g)の後に、前記第2基板表面上に接触された前記薄膜を得る工程;
を含む前記方法。
【請求項2】
前記薄膜が、1以上の膜であり、各膜が原子層、分子層、又はイオン層の厚みを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記支持層が、前記膜接触層の除去の前又は除去の間に剥離される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記薄膜が、グラフェン、窒化ホウ素(BN)、二硫化モリブデン(MoS)、モリブデン−硫黄−ヨウ素(MoSI)、テルル化モリブデン(V)(MoTe)、テルル化ニオブ(IV)(NbTe)、セレン化ニッケル(NiSe)、二硫化タングステン(WS)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、ガリウムヒ素(GaAs)、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)、銅インジウムガリウムヒ素、イットリウムバリウム酸化銅、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、テルル化カドミウム(CdTe)、ガリウムインジウムリン(GaInP)、アルミナ(Al)、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記薄膜がパターン化されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記エラストマーが、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリウレタン、ブタジエン−アクリロニトリルコポリマー、パーフルオロアルコキシポリマー、ポリエチレン、ポリ(エチルアクリレート)、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロペン(polychloropene)、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記支持層がパターン化されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記支持層が100μm〜10mmの厚みを有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記膜接触層がポリマーを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマーが、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリジメチルシロキサン、ポリイソブチレン、ジビニルシロキサン−ビス−ベンゾシクロブテン樹脂、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリアクリル酸、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、ポリイミド、テトラフルオロエチレン及び2,2−ビストリフルオロメチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソールのコポリマー、フッ素化メタクリレートポリマー、フルオロアクリレートポリマー、パーフルオロ(1−ブテニルビニルエーテル)ホモコポリマー、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記膜接触層が10〜5000nmの厚みを有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記薄膜が、エレクトロスピニング、スピンコーティング、プレーティング、化学溶液堆積、化学気相成長、プラズマ化学気相成長、原子層堆積、加熱蒸着、電子ビーム蒸着、分子線エピタキシー、スパッタリング、パルスレーザー堆積、陰極アーク堆積、電子流体力学的堆積、インクジェットプリント、エアゾール噴霧、浸漬塗布、ドロップキャスティング、物理気相成長、真空昇華、ドクターブレード及びこれらの組み合わせによって第1基板表面上に供給される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2基板がリジッド基板又はフレキシブル基板である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2基板がパターン化されている、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
工程(b)の供給の前又は後に、前記薄膜をパターン化する工程をさらに含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
工程(f)の接触が、前記転写構造に対して0.01〜8barの圧力を印加することを含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記第2基板が薄膜デバイスに含まれる、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記薄膜が前記膜接触層に接触する間、前記膜接触層上の前記薄膜を前記支持層が支持することが、前記薄膜の伸展または変形を予防することを含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記薄膜が前記膜接触層に接触する間、前記膜接触層上の前記薄膜を前記支持層が支持することが、工程(d)の後で工程(f)の前の間、前記支持層を利用することにより前記薄膜への機械的損傷を予防することを含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜の転写方法に関する。具体的には、前記方法は、1つの基板から別の基板に薄膜を転写する方法である。
【背景技術】
【0002】
グラフェン及び、ホウケイ酸(BN)等のその他の層をなす材料は、互いに結合した原子又はイオンの二次元シートを含み、前記シートの有効厚さが原子又は分子厚さ(通常2nm未満)のオーダーであり、これはマイクロメートルから最大センチメートルに及ぶオーダーの横方向の寸法よりもはるかに小さいものである。これら及び薄Si層、InGaAs、銅−インジウム−ガリウム−ヒ素層等のその他の材料は、電子デバイス、電子光学デバイス、光学センサデバイス及びサーマルデバイスにおける導体、半導体又は絶縁体として、機械強度及び強靭性利用のため、保存のため、又はセンサを包含する表面改質のための多くの潜在用途を有している。
【0003】
しかしながら、これらの多数の実際的応用の開発のための主な処理課題として、転写膜の特性を損なわずに製造するための信頼できる、堅牢で適当な方法で、これらの膜のパターン化及び成長基板から標的基板への転写のための適当な方法がないことが挙げられる。これは、薄膜は単一又は数種の原子シート形態であることが多く、従って非常に脆弱であることから、特にやりがいがある。
【0004】
X.S.Liら(非特許文献1及び2を参照)は、銅(Cu)成長基板をエッチングにより除去して(etched away)、エッチング溶液中に浮遊しているグラフェンと接触する標的基板上にグラフェンを剥離する1つの方法を記載している。この方法は、標的基板への転写シートのレジスタに対して何らの可能性も与えない。また、標的基板がエッチング溶液に適合しない可能性があり、さらには汚染源となり得ることから、適用が大きく制限される。
【0005】
X.Liangら(非特許文献3を参照)は、シリコンで作られたハードスタンプと共にグラフェンシートに対して室温での接着剤として作用し、HOPG結晶から多層グラフェンシートを抽出して、別の熱硬化性接着剤層又は疎水性酸化ケイ素表面上に成膜する、樹脂材料系の熱剥離型(TR)接着剤層の使用を記載している。グラフェンをシリコンスタンプに付着するために接着剤層を使用することから、標的基板へのグラフェンの転写は、剥離温度における標的vsTR接着剤の相対的接着強度に大きく依存している。また、これは、典型的には標的基板又は高表面エネルギ基板(疎水性酸化ケイ素表面等)上に接着剤層が存在していることを必要とする。これは、標的表面が一般的には接着剤層又は強固な接着面を有していない可能性があることから、特に電子工学、半導体及び絶縁体への適用について、この方法の適用可能性を大きく制限している。さらに、接着剤層はグラフェンに対して構造的な損傷を引き起こす可能性があり、転写された二次元(2−d)層材料の表面を著しく汚染する可能性がある。同様の方法がBae S.ら(非特許文献4及び5を参照)によって開示されており、これもまた支持体及び転写材料として熱剥離型テープを採用しており、当該プロセスはロール・ツー・ロール方式により実施される。
【0006】
L.Songら(非特許文献6を参照)は、パターン化グラフェン膜への接着層としての金の使用、及び基板から金/グラフェン複合膜をリフトオフするために金膜に接着する感圧接着剤としての熱剥離型(TR)テープの使用を記載している。その後、このアッセンブリを所望の標的基板上に接触させ、TRテープの剥離温度まで加熱して、標的基板上に金/グラフェン複合膜を剥離する。その後、標準的なヨウ化カリウムエッチング液によって金を除去する。このアプローチは、標的基板及びグラフェン間の強固な接着に依存してグラフェンに対するTRテープとの競合を成功させるものであり、所望の標的基板に接着剤層又は高エネルギ表面が存在していることを必要とする。さらに、金(又はその他の金属)をグラフェンを転写するための接着層として使用することは、金(又はその他の金属)エッチング液を許容することができない基板との普遍的な不適合性を生じる。
【0007】
同様に、S.Unarunotaiら(非特許文献7及び8を参照)は、感圧性ポリイミドテープにグラフェンを接着するためにグラフェン上の接着層として金及びその他の金属膜を使用することを記載している。その後、この全アッセンブリを基板から剥がし、標的基板上に置く。ポリイミドテープは、その後酸素プラズマ中でエッチングにより除去され(etched off)、金膜は金エッチング液中でエッチングにより除去される。そのようなピーリング方法は、ラマン分光法における欠陥バンドの強度から明らかにされるように、グラフェン膜の著しい変形及び破損を引き起こすであろう。
【0008】
J.D.Caldwellら(非特許文献9)もまた、熱剥離型テープを用いてSiCからグラフェン膜を剥脱することによる関連する競合接着アプローチを採用している。この転写方法は、熱剥離型テープとの共形接触が乏しいことから、SiC表面上に小さいグラフェン部分を後に残す。この方法の改良についても記載されており(非特許文献10を参照)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)層が、熱剥離型テープ及びグラフェンの間に導入されている。しかしながら、この方法においても、依然として、熱剥離型テープよりむしろ標的基板へのグラフェンの強固な接着を達成することに依存している。
【0009】
M.J.Allenら(非特許文献11を参照)は、酸化グラフェンシートを獲得するため、それぞれ第1基板上に成膜され、第2基板へと転写するためのポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)スタンプ及び数層グラフェン(FLG)の使用を記載している。そのような直接的な物理的剥脱を介する転写膜の品質は劣っており、信頼できないことがこの報告にある光学画像から明らかである。この方法の2つの主な問題は、(i)PDMSスタンプがグラフェンシートに対して高い親和性を有していないこと、及び(ii)グラフェン及び標的間の接着が十分でない場合、PDMSスタンプに接着するグラフェンシートが標的基板に転写されない可能性があることである。
【0010】
X.S.Liら(非特許文献12を参照)、X.S.Liら(非特許文献1を参照)及びA.Reinaら(非特許文献13及び14を参照)は、成長基板がエッチングにより除去される際にグラフェンシートに対して「キャリア」フィルムとしてはたらくポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)のポリマー膜を使用した。その後、PMMA/グラフェン複合膜を標的基板上に置き、PMMAをアセトンに溶解してグラフェン膜を転写した。このアプローチの主な不利益は、「キャリア」フィルムが脆弱であり、グラフェンシートの微小クラッキング及び機械的損傷を生じるワーピング、伸展又は屈曲及びシワを生じる傾向があることである。さらに、キャリアフィルムの形成の間に凍結される固有応力も、転写の間にグラフェン膜を損傷(破損)する膜の変形(ワーピング)を引き起こし、その品質を低下し、適用を制限している。また、そのような方法では、下部のパターンを標的基板上にパターン化することができない。パターン化された膜が望ましい場合、これらは、別々に規定される必要があり、キャリアフィルム法は標的基板上での正確なパターン化について何らの可能性も与えない。
【0011】
上記方法は、スタンプ又はキャリアシートとしてのグラフェンシートに接着した第1接着層を有することに依存して、第2接着層の使用を介する等してさらに強固に標的表面を接着可能とすることによって標的基板への転写を達成することが明らかである。これは、基板の特性に対して厳しい要求を課すものである。さらに、接着剤の使用は、電子工学及び半導体における多くの適用と適合しない可能性があり、さらに、この方法では基板のパターン化ができない。
【0012】
現在の技術水準における方法は、典型的には、キャリアフィルムのワーピング、伸展又は屈曲によって転写の間の負荷/歪みにより薄膜シートを損傷し、また、転写グラフェン又は薄膜シートを損傷することなく過酷なクリーニングプロセスに供することができないことから、一般的には除去できない接着(接着剤)層による汚染を許してしまう。さらに、一部の転写方法は、最初の接着層を除去するための最終的な化学エッチングの使用及び/又はクリーニング工程を必要とし、数多くの基板及び製造プロセスとの普遍的な適合性をさらに制限している。また、熱剥離型テープの使用も、付着した薄膜の伸展変形及び破損を必然的に招き、標的基板上へのパターン化膜の正確な配置と本質的に適合しない。加えて、これらの転写プロセスのいずれも、二次元薄膜の同時パターン化はできない。
【0013】
従って、1つの基板からもう一方へと薄膜を転写するための改良されたプロセスが必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Science 2009, 324:1312
【非特許文献2】ECS Transactions, 2009, 19:41
【非特許文献3】X. Liangら(Nano Lett. 2007, 7:3840)
【非特許文献4】Nature Nanotech, 2010, 5:574;
【非特許文献5】ACS Nano, 2011, 6:2096
【非特許文献6】ACS Nano 2009, 3:1353
【非特許文献7】Appl. Phys. Lett. 2009, 95:202101;
【非特許文献8】ACS Nano, 2010, 4:5591
【非特許文献9】ACS Nano, 2010, 4:1108
【非特許文献10】Carbon Nanotubes, Graphene, and Associated Devices Iii, Vol. 7761 (Eds: D. Pribat, Y. H. Lee, M. Razeghi)Spie-Int Soc Optical Engineering, Bellingham 2010
【非特許文献11】Adv. Mater. 2009, 21:2098
【非特許文献12】Nano Lett. 2009, 9:435
【非特許文献13】The Journal of Physical Chemistry C, 2008, 112:17741
【非特許文献14】Nano Letters, 2009, 9:30
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、先行技術における少なくとも1つの課題に取り組み、成長基板から標的基板へと薄膜を転写する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の態様によれば、第1基板から第2基板へと薄膜を転写する方法が提供され、前記方法は、
(a)転写構造、及び第1基板表面上に備えられた薄膜を供給する工程であって、前記転写構造が支持層及び膜接触層を含み、前記転写構造が前記薄膜と接触する前記工程;
(b)前記第1基板を除去して、膜接触層と接触する薄膜を有する転写構造を得る工程;
(c)前記工程(b)で得られた転写構造と第2基板表面を接触させる工程;ならびに
(d)前記膜接触層を除去し、これによって第2基板表面上に薄膜を転写する工程
を含む。
【0017】
薄膜は、本発明の目的に応じた任意の適当な薄膜であればよい。例えば、薄膜は、グラフェン、窒化ホウ素(BN)、二硫化モリブデン(MoS)、モリブデン−硫黄−ヨウ素(MoSI)、テルル化モリブデン(V)(MoTe)、テルル化ニオブ(IV)(NbTe)、セレン化ニッケル(NiSe)、二硫化タングステン(WS)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、ガリウムヒ素(GaAs)、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)、銅インジウムガリウムヒ素(CIGS)、イットリウムバリウム酸化銅(YBCO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、テルル化カドミウム(CdTe)、ガリウムインジウムリン(GaInP)、アルミナ(Al)、又はこれらの組み合わせから選択されてもよいが、これらに限定されない。
【0018】
特定の態様によれば、薄膜は、原子層又は分子層の厚みを有する膜であればよい。具体的には、薄膜は、グラフェン膜であってもよい。
【0019】
薄膜は、任意の適当な方法によって第1基板表面上に供給されればよい。例えば、薄膜は、エレクトロスピニング、スピンコーティング、プレーティング、化学溶液堆積、化学気相成長、プラズマ化学気相成長、原子層堆積、加熱蒸着、電子ビーム蒸着、分子線エピタキシー、スパッタリング、パルスレーザー堆積、陰極アーク堆積、電子流体力学的堆積、インクジェットプリント、エアゾール噴霧、浸漬塗布、ドロップキャスティング、物理気相成長、真空昇華、ドクターブレード又はこれらの組み合わせによって第1基板表面上に供給されてもよいが、これらに限定されない。
【0020】
薄膜は、パターン化されていてもよく、又はパターン化されていなくてもよい。特定の態様によれば、本発明の方法は、工程(a)の供給の前又は後に薄膜をパターン化してパターン化された薄膜を得る工程をさらに含んでいてもよい。
【0021】
転写構造に含まれる支持層は、第1基板から第2基板表面へと薄膜を転写する間、薄膜と膜接触層とを接触させながら、薄膜に対して適切な支持を供給する任意の適当な支持層であればよい。従って、支持層は、薄膜に対して必要な支持を供給する任意の適当な材料であればよい。特定の態様によれば、支持層はエラストマーを含んでもよい。例えば、エラストマーは、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリウレタン、ブタジエン−アクリロニトリルコポリマー、パーフルオロアルコキシポリマー、ポリエチレン、ポリ(エチルアクリレート)、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロペン(polychloropene)、又はこれらの組み合わせから選択されてもよいが、これらに限定されない。
【0022】
支持層は、適当な厚みであればよい。具体的には、支持層は100μm〜10mmの厚みを有していてもよい。
【0023】
転写構造に含まれる膜接触層は、本発明の目的に応じた任意の適当な材料であればよい。特定の態様によれば、膜接触層はポリマーを含んでもよい。例えば、ポリマーは、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリジメチルシロキサン、ポリイソブチレン、ジビニルシロキサン−ビス−ベンゾシクロブテン樹脂、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリアクリル酸、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、ポリイミド、テトラフルオロエチレン及び2,2−ビストリフルオロメチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソールのコポリマー、フッ素化メタクリレートポリマー、フルオロアクリレートポリマー、パーフルオロ(1−ブテニルビニルエーテル)ホモコポリマー、又はこれらの組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。
【0024】
特定の態様によれば、工程(b)における薄膜と膜接触層との接触は、ファンデルワールス相互作用によるものであってもよい。従って、膜接触層は好ましくは適当な厚みを有する。例えば、膜接触層は、約10〜5000nmの厚みを有していてもよい。
【0025】
第1基板は、任意の適当な基板であればよい。具体的には、第1基板は、薄膜が適用され得る任意の適当な基板であればよい。
【0026】
第2基板は、任意の適当な基板であればよい。具体的には、第2基板は薄膜デバイスに含まれてもよい。薄膜デバイスは、任意の適当なデバイスであればよい。例えば、薄膜デバイスは、電子デバイス、電気光学デバイス、光センサデバイス、又はサーマルデバイスであってもよい。具体的には、薄膜デバイスは、薄膜トランジスタ、太陽電池、発光ダイオード、ソーラーセル、又はバイオセンサであってもよいが、これらに限定されない。
【0027】
第2基板は、リジッド基板又はフレキシブル基板であってもよい。第2基板はパターン化されていてもよく、又はパターン化されていなくてもよい。
【0028】
特定の態様によれば、工程(c)における接触は、転写構造に対して0.01〜8barの圧力を印加することを含んでもよい。
【0029】
特定の態様によれば、転写構造の支持層は、工程(d)における除去の前又は除去の間に剥離されてもよい。
【0030】
第2の態様によれば、本発明は、上記方法によって基板表面上に転写された薄膜を有する基板を含むデバイスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明を完全に理解し、容易に実施するため、非限定的な例として単なる例示的な実施態様が記載され、当該記載は添付の説明図を参照する。
図1(A)】図1(A)は、本発明による薄膜を転写する一般的な方法を示すフローチャートである。
図1(B)】図1(B)は、本発明の特定の実施態様の概略図である。
図2(A)】本発明の1つの実施態様による転写構造の概略図である。
図2(B)】本発明の1つの実施態様による薄膜と接触している転写構造の概略図である。
図3図3は、300nmのSiO基板に転写されたグラフェン膜の基板の種々の位置におけるラマン分光法を示す。
図4図4は、300nmのSiO基板上に転写されたグラフェン膜の光学画像である。
図5図5は、300nm(zスケールは30nm)のSiO基板上の残留物のないグラフェン膜の原子間力顕微鏡法を示す。
図6図6は、12×12mmのホウケイ酸ガラス基板上に転写されたグラフェン膜(3.5×3.5平方mm、輪郭は黒色線で示される)の写真を示す。
図7図7は、直径1インチのサファイア上に転写されたグラフェン膜(15×16mm矩形、輪郭は黒色線で示される)の写真を示す。
図8図8は、12×12mmのPET基板上に転写されたグラフェン膜(10.5×10.5平方mm)の写真を示す。
図9図9は、PBTTT(zスケール20nm)上に転写されたグラフェン膜の原子間力顕微鏡法を示す。
図10図10は、PEDT:PSSH(zスケール30nm)上に転写されたグラフェン膜の原子間力顕微鏡法を示す。
図11図11は、spectrosil上のグラフェン/PMMA交互積層膜の膜紫外可視分光法を示し、(a)は転写された単層グラフェンを表し、(b)は(a)上の別のグラフェン/PMMAの成膜を表し、(c)は(b)上の別の成膜を表す。
図12図12は、300nmのSiO基板上に堆積された2つのシャドー蒸着された4−in−1ポイントAuバー電極上に転写されたグラフェン膜の写真を示す。
図13図13は、径解像度500μmによる2×2インチのパターン化されたSU−8テンプレートの写真を示す。
図14図14は、300nmのSiO基板上のピラー径解像度500μmによるパターン化されたPDMS支持層の写真を示す。
図15図15は、単一のゲート掃引で得られた転写グラフェン電界効果トランジスタの転写曲線を示す。
図16図16は、Siゲート上の300nmのSiOゲート誘電体上のフォトリソグラフィにより規定される交互嵌合されたAu/Crソース−ドレイン電極上に転写されたグラフェン膜の写真を示す。
図17図17は、シャドー蒸着されたボトムAu電極(A)及びシャドー蒸着されたトップAu電極(B)上の50nmのBCB膜上に転写されたグラフェン膜の写真を示す。(C)は、デバイスの光学画像を示し、点線は転写されたグラフェンによって覆われる境界を規定する。
図18図18は、ガラス基板上の8つのフォトリソグラフィによって規定されるバーAu/Crソース−ドレイン電極上にスピンコートされた150nmPS/40nmPBTTT膜上に転写されたグラフェン膜の写真を示す。矩形パラメーターの拡大部分は、下部のPS/PBTTT/ボトムAu/Cr電極を横切って転写されたグラフェンの明確な端部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
例示的な実施態様は、最初に成膜される基板から標的基板へと薄膜を転写する簡便な方法を提供することを目的とする。標的基板は薄膜デバイスに含まれていてもよい。本発明の方法は、薄膜を転写するための信頼できる、堅牢で大規模に実現可能な方法を提供する。具体的には、本発明の方法は、接着層を使用しない。それゆえに、本発明の方法は、1つの基板から別の基板へと薄膜を転写するために接着層の競合に依存し得る薄膜を転写する方法において、そのような接着層の使用と関連する問題を回避する。また、本発明の方法は薄膜のパターン化を可能とする。
【0033】
第1の態様によれば、第1基板から第2基板へと薄膜を転写する方法が提供され、前記方法は、
(a)転写構造、及び第1基板表面上に備えられた薄膜を供給する工程であって、前記転写構造が支持層及び膜接触層を含み、前記転写構造が前記薄膜と接触する前記工程;
(b)前記第1基板を除去して、膜接触層と接触する薄膜を有する転写構造を得る工程;
(c)前記工程(b)で得られた転写構造と第2基板表面を接触させる工程;ならびに
(d)前記膜接触層を除去する工程、
を含む。
【0034】
1つの基板から別の基板へと薄膜を転写するための方法100は、通常、図1(A)に示される工程を含む。これらの各工程について、以下に詳述する。
【0035】
工程102は、第1基板表面上に薄膜を適用することを含む。本発明の目的のため、薄膜は、原子層、分子層、又はイオン層の厚みを有する膜を包含する。また、本発明による薄膜は、1つの原子、分子又はイオンの厚みを有する各膜を含む複数の積層膜を包含する。
【0036】
特定の実施態様によれば、第1基板表面上の薄膜の厚みは、0.1〜100nm、0.5〜80nm、1〜70nm、2〜60nm、3〜50nm、4〜40nm、5〜30nm、6〜20nm、7〜10nmであってもよい。具体的には、第1基板表面上の薄膜の厚みは0.1〜1nmであってもよい。
【0037】
第1基板表面上に適用される薄膜は、任意の適当な薄膜であればよい。例えば、薄膜は、グラフェン、窒化ホウ素(BN)、二硫化モリブデン(MoS)、モリブデン−硫黄−ヨウ素(MoSI)、テルル化モリブデン(V)(MoTe)、テルル化ニオブ(IV)(NbTe)、セレン化ニッケル(NiSe)、二硫化タングステン(WS)、又はこれらの組み合わせから選択されてもよいが、これらに限定されない。また、薄膜は、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、ガリウムヒ素(GaAs)、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)、銅インジウムガリウムヒ素(CIGS)、イットリウムバリウム酸化銅(YBCO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、テルル化カドミウム(CdTe)、ガリウムインジウムリン(GaInP)、アルミナ(Al)、又はこれらの組み合わせ等の金属材料、共有結合材料又はイオン性材料の超薄膜であってもよい。具体的には、薄膜はグラフェン膜であってもよい。
【0038】
第1基板は、任意の適当な基板であればよい。例えば、第1基板は、薄膜が成膜され、又は成長される任意の適当な基板であればよい。第1基板の選択は、成膜されるか、又は成長される薄膜により異なってもよい。第1基板は、金属箔、支持基板上の金属薄膜、半導体基板又はイオン性基板であってもよい。第1基板は、ガリウムヒ素(GaAs)、サファイア、石英、ガラス、酸化マグネシウム(MgO)、ランタンアルミネート(LaAlO)、ネオジウム(III)ガレート(NdGaOs)、又は酸化ジルコニウムであってもよいが、これらに限定されない。例えば、薄膜がグラフェンである場合、第1基板は、銅、ニッケル、ルテニウム、パラジウム、プラチナ、インジウム、ホウケイ酸、コバルト、又は炭化ケイ素(SiC)であってもよいがこれらに限定されない。薄膜が窒化アルミニウム(AlN)である場合、第1基板はシリコン(Si)であってもよい。薄膜が二硫化モリブデン(MoS)である場合、第1基板はセレン化インジウム(II)(InSe)であってもよい。薄膜が窒化ガリウム(GaN)である場合、第1基板は炭化シリコン(SiC)であってもよい。薄膜がガリウムヒ素(GaAs)である場合、第1基板はc−サファイアであってもよい。具体的には、当業者であれば、転写される薄膜に応じて第1基板としてどの基板を使用するかを理解することができるであろう。
【0039】
薄膜は、任意の適当な方法によって第1基板表面上に適用され得る。例えば、薄膜は、エレクトロスピニング、スピンコーティング、プレーティング、化学溶液堆積、化学気相成長、プラズマ化学気相成長、原子層堆積、加熱蒸着、電子ビーム蒸着、分子線エピタキシー、スパッタリング、パルスレーザー堆積、陰極アーク堆積、電子流体力学的堆積、インクジェットプリント、エアゾール噴霧、浸漬塗布、ドロップキャスティング、物理気相成長、真空昇華、ドクターブレード又はこれらの組み合わせにより第1基板表面上に適用されてもよいが、これらに限定されない。
【0040】
一旦薄膜が第1基板表面上に適用されると、薄膜は転写構造と接触する。従って、工程104は、転写構造及び第1基板表面上に備えられた薄膜を供給することを含み、前記転写構造は薄膜と接触する。工程104は、転写構造と第1基板表面上に適用された薄膜とを共形接触させることを含む。具体的には、工程104は、転写構造及び薄膜の表面を分離する気体又はその他の空隙がないように、分子長スケールでの転写構造及び第1基板表上の薄膜の物理的な接触を含んでもよい。
【0041】
転写構造は、膜接触層及び支持層を含む。図2(A)は、本発明の特定の実施態様による転写構造200を示す。具体的には、転写構造200は、膜接触層202及び支持層204を含む。転写構造200、膜接触層202及び支持層204について、以下に詳述する。
【0042】
工程106は、第1基板を除去することを含む。工程106の除去は、エッチング溶液槽において第1基板を溶解することを含んでもよい。本発明の目的のため、任意の適当な溶媒をエッチング溶液槽に使用してもよい。具体的には、エッチング溶液槽に含まれる溶媒は、第1基板に基づいて選択され得る。エッチング溶液槽にどの溶媒を選択するかは当業者に自明であろう。エッチング溶液槽としての使用に適当な溶媒の例は、CRC Handbook of Metal Etchant, Perrin Walker and William H Tan,1991 (CRC Press,Boca Raton Florida,USA)において見出されるであろう。エッチング溶液槽は、水性溶媒又は有機溶媒を含んでもよい。例えば、エッチング溶液槽は、硝酸(HNO)、塩化第二鉄(FeCl)、硝酸鉄(III)(FeNO)、塩酸による塩化鉄、過硫酸アンモニウム[(NH]、又はこれらの組み合わせを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0043】
一旦、第1基板が(例えば溶解又はエッチングによる除外により)除去されると、薄膜が浮遊しなくなる。代わりに、薄膜が転写構造の膜接触層と接触する。そのようにして、図2(B)に示されるように、膜接触層112と接触した薄膜を有する転写構造が得られる。
【0044】
膜接触層112と接触した薄膜を有する転写構造は、その後、工程108により第2基板表面と接触する。工程108は、転写構造を第2基板表面の(with)膜接触層112と接触する薄膜と共形接触することを含んでもよい。具体的には、工程108は、第2基板表面上の正確な所望の位置で、膜接触層112と接触した薄膜を有する転写構造を共形接触することを含んでもよい。
【0045】
第2基板は、任意の適当な基板であればよい。第2基板は、標的基板であってもよい。具体的には、第2基板は、薄膜が最終的に転写される基板であってもよい。第2基板は、無機膜、ポリマー膜、金属膜又は半導体膜を含む任意の基板であってもよい。第2基板は、パターン化されていなくてもよく、又はパターン化されていてもよい。従って、第2基板は、薄膜の転写が望まれる、予めパターン化されたトポグラフィック要素、構造要素又は電気素子を含んでもよい。第2基板は、プラスチック箔、金属箔、シリコン、無機半導体ウェーハ、酸化ケイ素、フューズドシリカ、ガラス、酸化アルミニウム、酸化インジウム−スズであってもよい。第2基板は、酸化物材料又は硫化物材料であってもよい。第2基板は、共有結合固体又はイオン性固体であってもよい。例えば、薄膜デバイスは、薄膜トランジスタ、太陽電池、コンデンサ、発光ダイオード、又はバイオセンサであってもよい。第2基板は、ガラス、シリコン、若しくはその他の酸化物基板等のリジッド基板、又はプラスチック箔若しくは金属箔等のフレキシブル基板であってもよい。
【0046】
例えば、第2基板は薄膜デバイスに含まれてもよい。薄膜デバイスは、薄膜を必要とする任意のデバイスであればよい。例えば、薄膜デバイスは、電子デバイス、電気光学デバイス、光センサデバイス、コンデンサデバイス、エネルギ貯蔵デバイス又はサーマルデバイスであってもよいが、これらに限定されない。
【0047】
工程108の接触に先立って、薄膜が転写される第2基板表面をクリーニングしてもよい。任意の適当なクリーニング方法を使用することができる。具体的には、第2基板表面は、化学的汚染物質及び粒子状汚染物質を含まないものである。
【0048】
工程108の接触の間、転写構造112及び第2基板表面間の共形接触を確実にするために、小さい圧力が印加されてもよい。例えば、工程108の接触は、転写構造112に対して0.01〜8barの圧力を印加することを含んでもよい。具体的には、工程108は0.05〜7bar、0.1〜6bar、0.5〜5bar、1〜4bar、1.5〜3bar、2〜2.5barの圧力を印加することを含んでもよい。より具体的には、工程108において印加される圧力は、0.01〜1bar又は0.01〜0.1barであってもよい。また、転写構造112及び第2基板間の共形接触を確実にするために、真空を適用してもよい。また、適当な時間に亘って緩やかな加熱を適用してもよい。加熱は、任意の適当な温度であればよい。例えば、加熱は、40〜120℃、50〜100℃、75〜90℃、80〜85℃の温度であってもよい。加熱は、5分〜12時間、10分〜10時間、30分〜8時間、1〜5時間、2〜4時間に亘って実施されてもよい。転写構造112及び第2基板の間に共形接触が存在するか否かを確認するため、外観検査又は光学検査を行ってもよい。例えば、転写構造112が第2基板と共形接触している場合、境界面の反射率は最小になる。
【0049】
一旦転写構造112が第2基板表面と接触すれば、工程110において膜接触層を除去するために転写構造112及び第2基板を溶媒中に置いてもよい。例えば、工程110の除去は、溶媒中で膜接触層を溶解することを含んでもよい。工程110の除去に使用される溶媒は、本発明の目的のための任意の適当な溶媒であればよい。例えば、工程110の除去に使用される溶媒は、膜接触層に基づいてもよい。工程110において膜接触層を除去するためにどの溶媒を選択するかは、当業者に自明であろう。例えば、工程110の除去に使用される溶媒は、水性溶媒又は有機溶媒を含んでもよい。適当な溶媒の例として、炭化水素溶媒、フッ化炭素溶媒、塩素化溶媒、非塩素化溶媒、アルコール溶媒、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
工程110は、適当な時間に亘ってある温度で溶媒を加熱することを含んでもよい。加熱は、任意の適当な温度であればよい。例えば、加熱は、40〜120℃、50〜100℃、75〜90℃、80〜85℃の温度であってもよい。加熱は、10秒〜1時間、10秒〜30分、30秒〜15分、1〜10分に亘って行われてもよい。
【0051】
一つの実施態様によれば、工程110の間、膜接触層は溶媒に溶解され、従って、転写構造112の膜接触層と接触する薄膜は基板表面上に剥離されて第2基板上に適用された薄膜116を提供する。そのようにして、転写構造の支持層も別々に剥離される。
【0052】
代替的な実施態様によれば、工程110の除去に先立って転写構造112から支持層を剥がしてもよい。支持層を剥がす場合、膜接触層と接触する薄膜は、基板表面上に剥離される。その後、膜接触層は工程110により除去され、表面上に薄膜を有する第2基板が得られる。この代替的な実施態様について、膜接触層は、薄膜に支持を提供することが可能な適当な厚みであればよいことが当業者に自明であろう。
【0053】
第1基板から第2基板へと転写された薄膜は、パターン化されていてもよく、又はパターン化されていなくてもよい。薄膜がパターン化されていない場合には、方法100は、薄膜をパターン化する工程をさらに含んでもよい。具体的には、方法100は、工程104の供給の前又は後に薄膜をパターン化する追加工程を含んでもよい。任意の適当なパターン化方法を薄膜のパターン化に使用することができる。例えば、薄膜は、エッチング、光学深紫外線リソグラフィー、X線リソグラフィー又は電子線リソグラフィー等のリソグラフィーによってパターン化されてもよい。
【0054】
特定の実施態様によれば、薄膜は、工程104の供給の前にパターン化される。従って、方法100は、工程102を適用した後にパターン化工程を含む。第1基板表面上に適用された薄膜のパターン化のため、任意の適当なパターン化方法を使用することができる。例えば、転写構造の適用前に薄膜が第1基板表面上にある間に、標準的なフォトリソグラフィ法によって薄膜をパターン化することができる。
【0055】
他の特定の実施態様によれば、薄膜は工程104の供給後にパターン化されてもよい。この場合、支持層は、エッチング等のパターン化から薄膜の接触領域を保護するエッチングマスクとして作用し得る。このようにして、薄膜のパターンは、支持層の接触領域に対して自己整列され得る。工程104の供給後の薄膜のパターン化9方法の例を、図1(B)のc)及びd)に示す。図1(B)において、薄膜は「2D層材料」と表示され、膜接触層202は「S層」と表示され、支持層204は「E層」と表示される。図1(B)のc)において、転写構造の支持層がパターン化される。そのようにして、第1基板表面上に適用された薄膜と共形接触する転写構造及び薄膜を、マスク層として支持層を使用して酸素プラズマによるエッチングに供する。このようにして、露光された膜接触層及び薄膜は、酸素プラズマによってエッチングされて図1(B)のd)に示されるようなパターン化された薄膜を形成する。酸素プラズマ以外のその他のパターン化方法もまた薄膜のパターン化に使用され得ることは、当業者に自明であろう。
【0056】
特定の実施態様によれば、第1基板から第2基板へと薄膜を転写する方法が図1(B)に示される。具体的には、銅基板表面上に適用された2次元薄グラフェン膜を有する第1銅基板がa)において供給される。グラフェン膜は、化学気相成長等の任意の適切な方法によって銅基板表面上に成膜され得る。S層として示される膜接触層は、b)においてグラフェン膜上にエレクトロスピン(electro−spun)される。その後、E層として示される支持層は、c)に示されるように膜接触層と共形接触される。支持層は、c)に示されるようにパターン化される。その後、膜接触層及びグラフェン膜を酸素プラズマに暴露することによって、グラフェン膜をパターン化に供する。酸素プラズマにおける膜接触層及びグラフェン膜のエッチングの間、支持層はエッチャントマスク(etchant mask)としてはたらく。一旦グラフェン膜がパターン化されれば、d)に示されるように適切なエッチング溶液槽に銅基板を溶解する。一旦銅基板が溶解されれば、グラフェン膜は支持層及び膜接触層と共角接触し、それによって膜接触層及び支持層を含む転写構造上に転写される。グラフェン膜は浮遊しておらず、代わりに、e)に示されるように膜接触層を介して支持層上に支持される。その後、膜接触層及び支持層と接触するグラフェン膜を、第2標的基板の清浄な表面と共形接触させ、f)に示されるような第2標的基板上の所望の位置に配向する。第2標的基板表面を予めクリーニングし、化学汚染物質及び粒状汚染物質がないようにする。グラフェン膜と第2標的基板表面との接触の間、共形接触が達成されることを確実にするため、約0.1barの小さい圧力を印加する。その後、グラフェン膜を第2標的基板表面に転写するため、全アッセンブリを適切な剥離溶媒中に置く。剥離溶媒は膜接触層を溶解し、従って、第2標的基板表面上にグラフェン膜を剥離する。そのようにして、支持層も剥離される。第2標的基板の支持体上の転写グラフェン膜をg)に示す。
【0057】
1つの基板から別の基板へと薄膜を転写する本発明の方法は、薄膜の剥がれ、屈曲、伸展、又はワーピングを必要としないことが理解できる。従って、薄膜は、転写の間に変形又は破損することがない。転写薄膜の完全性は、ラマン分光法、顕微鏡法及び電界効果移動度の計測によって測定され得る。本発明の方法は堅牢であり、大規模なパターン化及び汚染物質のない方式において容易に1つの基板から別の基板へと薄膜を転写するために要され得る。
【0058】
さらに、本発明の方法は、接着剤の使用を必要としない。具体的には、膜接触層は接着層ではなく、従って、本方法は、接着層を転写により除去する(transferring off)前に第1接着層に薄膜を付着することを必要としない。本発明の方法が接着剤を使用しないことから、本方法は、清潔であり、薄膜の損傷を予防する。具体的には、本発明の方法は、競合接着による薄膜の転写と関連する問題、汚染、転写の間の薄膜の機械的健全性の喪失、及び基板の不適合を回避する。
【0059】
上述のように、本発明の方法のいずれの工程も、薄膜の損傷及び破損を導く、剥がれ、浮き又は薄膜のワーピング、伸展若しくは屈曲を生じ得るその他の変形を含まない。従って、本発明の方法は、単層及び多層の薄膜を包含する、高品質の薄膜を用いた転写のための再現可能且つ多用途な方法を提供する。
【0060】
また、本発明の方法は、薄膜の転写の間の伸展、屈曲及びワーピング等の負荷及び歪みに影響されやすいキャリアフィルムの使用を必要としない。また、第2基板上に薄膜を剥離するための化学エッチングも必要ではない。従って、本発明の方法は、金属箔、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート及びポリスチレン等のプラスチック、ガラス、シリコン、酸化ケイ素、無機酸化物、半導体表面、ウェーハー、又は予めパターン化された形状を有していない基板を包含する全てのタイプの基板に対して薄膜を転写するために使用され得る。
【0061】
また、本発明の方法は、第2基板上に求められる層数によって必要とされる回数に亘って前記方法を繰り返すことにより、第2基板上に薄膜を繰り返し成膜化するために適用されてもよい。
【0062】
また、方法100により基板表面上に転写された薄膜を有する基板を含むデバイスが提供される。このデバイスは、任意の適当なデバイスであればよい。例えば、デバイスは、電子デバイス、電気光学デバイス、光センサデバイス、コンデンサデバイス、エネルギ貯蔵フィルムデバイス又はサーマルデバイスであってもよい。例えば、デバイスは、薄膜トランジスタ、発光ダイオード、太陽電池、極薄コンデンサ、又はバイオセンサであってもよい。
【0063】
転写構造200
図2(A)に示される転写構造200の構成成分について、詳述する。上述のように、転写構造200は、膜接触層202及び支持層204を含む。
【0064】
膜接触層202
転写構造200が、方法100の工程104に従って転写構造及び薄膜を供給するために第1基板表面上に適用された薄膜と接触する場合、転写構造200の膜接触層202は、薄膜と共形接触してもよい。
【0065】
膜接触層は202、任意の適当な材料であればよい。具体的には、本発明による膜接触層202は、工程106の第1基板の溶解の間、薄膜に適切に支持することが可能な任意の層であればよい。膜接触層202は、支持層204及び第2基板の間の共形接触を調整し得る。また、膜接触層202を除去して剥離することにより第2基板表面上に薄膜を転写する。例えば、膜接触層202は、溶解して第2基板表面上に薄膜を剥離する。
【0066】
膜接触層202は、第1基板、第2基板及び薄膜を除去するためのエッチング溶液槽中の溶媒と親和性の任意の適当な材料であれば良い。膜接触層202は、後の除去工程の間、完全に又はほぼ完全に除去され得るようなものであればよく、それによって第2基板表面上に薄膜を転写する。後の除去工程は、膜接触層202の溶解を含んでもよい。
【0067】
特定の実施態様によれば、膜接触層202は、工程104の供給の間、膜接触層と薄膜が接触する際に薄膜とファンデルワールス結合を形成する。転写構造200の膜接触層202及び薄膜間に形成されたファンデルワールス結合は、工程106の除去の間、転写構造200から薄膜が引き離されないように、十分な接着を提供し得る。
【0068】
膜接触層202は、高分子材料又は樹脂材料を含んでもよい。高分子材料は、非晶性ポリマーであってもよい。膜接触層202は、ポリマー又は樹脂を含んでもよい。例えば、膜接触層202は、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリイソブチレン(PIB)、又はジビニルシロキサン−ビス−ベンゾシクロブテン(DVS−BCB)樹脂であってもよいが、これらに限定されない。そのようなポリマーは、トルエン、キシレン、クロロホルム、アセトン、シクロヘキサン、ヘキサン、メシチレン及びn−デカン等の一般的な有機溶媒において良好な溶解性を有し得る。さらに、そのようなポリマーは、工程106の第1基板の除去に使用され得る水性エッチング溶媒、及び有機溶媒に不溶性の場合がある第2基板に親和性である場合がある。
【0069】
膜接触層202は、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(スチレンスルホネート)、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、又はポリ(アリルアミン塩酸塩)等の高分子電解質であってもよい。そのような高分子電解質は、膜接触層202を除去するための工程110に使用される非水性溶解槽、及び水と親和性の第2基板に適し得る。
【0070】
膜接触層202は、ポリイミド、エポキシ又はノボラック型レジスト(SU−8等)のフォトレジスト材料であってもよい。
【0071】
膜接触層202は、フルオロカーボン系ポリマーであってもよい。フルオロカーボン系ポリマーは、フッ素化溶媒中に溶解し、従って、工程106の第1基板の溶解のためのエッチング溶液槽として使用される水性溶媒又は有機溶媒の両方に適合し得る。そのようなフルオロカーボン系ポリマーは、一般に、第2基板として使用される材料にも適合し、薄膜に対して不活性な場合がある。フルオロカーボン系ポリマーは、テトラフルオロエチレン及び2,2−ビストリフルオロメチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソールのコポリマー(例えば、Teflon AF2400、AF1601、AF1300)、テトラフルオロエチレン及び2,2,4−トリフルオロ−5−トリフルオロメトキシル−1,3−ジオキソールのコポリマー(例えば、Hyflon AD)、フッ素化メタクリレートポリマー、フルオロアクリレートポリマー(例えば、Certonal FC732(Acota)、FluoroPel PFC 500及び600シリーズ(Cytonix)、FluorArcylシリーズ(Cytonix)、Certonal FC722 (Acota)及びCertonal FC746(Acota))、パーフルオロ(1−ブテニルビニルエーテル)ホモコポリマー(例えば、Cytop type A、type M及びtype S)、パーフルオロ(ジオキソラン)のコポリマー、パーフルオロ(ジオキソラン)及びパーフルオロビニルエーテルのコポリマー、又はこれらの組み合わせのいずれか1つであってもよいが、これらに限定されない。
【0072】
フルオロカーボン系ポリマーは、ほとんどの第2基板、及び、第2基板上に存在し得るパターンと適合する、パーフルオロヘキサン(Fluorinert FC−72、3M)、パーフルオロ(ジメチルシクロブタン)(KCD 9445、Du Pont)及びパーフルオロ(メチルシクロペンタン)(Flutec PP1C、Rhone−Poulenc)等のパーフルオロアルカン;パーフルオロ(2−ブチル−テトラヒドロフラン)(Fluorinert FC−75、3M)等のパーフルオロエーテル;パーフルオロ−n−トリブチルアミン (Fluorinert FC−43、3M)等のパーフルオロアミン;又は酸化及び重合されたプロペン,1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ(Galden HT200、Ausimont)及び酸化及び重合されたプロペン,1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ(Galden HT135、Ausimont)、又はハロカーボン等のパーフルオロポリエーテル等のフルオロカーボン溶媒に溶解され得る。
【0073】
また、フルオロカーボン系ポリマー及びそれらの溶媒は、低い固有の表面張力を有し、薄膜の濡れに大いに役立つ。また、フルオロカーボン溶媒は、第2基板上に存在し得る、非フルオロポリマー膜、有機半導体、印刷された金属ナノインク、スピンオンガラス材料及びフォトレジスト材料(ポリイミド、ポリエーテル、ノボラック等)を膨潤しない。
【0074】
特定の実施態様によれば、フルオロカーボン系ポリマーは、工程110において膜接触層202が除去された後にも薄膜に付着したままである場合があり、これにより薄膜上に自己組織化単分子膜(self−assembly monolayer)を形成する。
【0075】
反応性ポリマーは、膜接触層202として使用するには適していない場合がある。これは、これらのポリマーが酸基又はラジカル発生基を含む可能性があり、工程110において膜接触層202が除去された後でも薄膜に付着したままである場合があり、薄膜を汚染するためである。
【0076】
特定の実施態様によれば、薄膜がグラフェンの場合、膜接触層202は、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイソブチレン、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ジビニルシロキサン−ビス−ベンゾシクロブテン樹脂、又はポリジメチルシロキサンであってもよいが、これらに限定されない。工程110の除去のための種々の膜接触層202に使用され得る適当な溶媒を、下表1に示す。
表1:種々の膜接触層を溶解するための適当な溶媒
【0077】
【表1】
【0078】
膜接触層202は、任意の適当な厚みのものであれば良い。例えば、膜接触層202は、約10〜5000nmの厚みを有していてもよい。具体的には、膜接触層202の厚みは、約50〜4500nm、100〜4000nm、150〜3500nm、200〜3000nm、300〜2500nm、400〜2000nm、500〜1500nm、600〜1000nm、700〜900nm、750〜800nmであってもよい。より具体的には、膜接触層202の厚みは、10〜1000nmであってもよい。膜接触層202が適当な厚みを有することにより、膜接触層202内での残留内部応力が低減される。厚みが5000nmを超えると、膜接触層202内に応力が蓄積する場合があり、ワーピング又は薄膜及び支持層204との共形接触の喪失を引き起こす可能性がある。
【0079】
膜接触層202の厚みは、現在の技術水準の方法において薄膜の転写に使用されるキャリアフィルムの厚みよりもはるかに薄い。具体的には、現在の技術水準の方法において使用されるキャリアフィルムの厚みは、約200,000nmの場合がある。
【0080】
支持層204
支持層204は、転写プロセスの間に薄膜を受け取る膜接触層202を支持する。具体的には、支持層204は、薄膜を膜接触層202に接触させながら第1基板表面から第2基板表面へと薄膜を転写する間に、微小クラッキング及び機械的損傷を生じ得る薄膜の偶発的な伸展又は変形を予防する。例えば、支持層204は、半硬質支持層であってもよい。支持層204は、第2基板上に存在し得る局所的な形状(topographic feature)を包含する、第1基板及び第2基板に発生し得る小さな湾曲又は粗さを適合させることによって、薄膜との共形接触を提供し得る。また、支持層204は、第2基板上に随意に薄膜を設置及び配向するため、予め存在する第2基板の形状への薄膜の正確なレジストを可能とし得る。
【0081】
支持層204は、任意の適当な材料であればよい。支持層204は、薄膜に対して必要な支持を供給する任意の適当な材料であればよい。具体的には、支持層は、エラストマーを含んでもよい。具体的には、エラストマーは、架橋ポリマーであってもよい。具体的には、支持層204は、比較的低いヤング率及び比較的大きな破壊歪みを呈し得る材料を含んでもよい。支持層204のヤング率は、膜接触層202及び薄膜との共形接触の間に存在する圧力によって決定されてもよい。例えば、支持層204のヤング率は、100kPa〜100MPaであってもよい。具体的には、支持層204のヤング率は、300kPa〜10MPa、500kPa〜5MPa、1〜3MPaであってもよい。
【0082】
例えば、エラストマーは、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリウレタン、ブタジエン−アクリロニトリルコポリマー、パーフルオロアルコキシポリマー、ポリエチレン、ポリ(エチルアクリレート)、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロペン(polychloropene)、又はこれらの組み合わせから選択されてもよいが、これらに限定されない。具体的には、エラストマーは、ポリ(ヒドロメチルシロキサン)によって架橋されたポリ(ジメチルシロキサン)、架橋ポリウレタン、ポリ(ビニルクロリド)により架橋されたブタジエンアクリロニトリルコポリマー、架橋パーフルオロアルコキシポリマー、又はこれらの組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。
【0083】
支持層204は、パターン化されてもよく、又はパターン化されなくてもよい。支持層204がパターン化されない場合、支持層204は、第1基板のサイズよりも小さい起伏形状を有していない、均一なものであればよい。従って、支持層204は、その全体に亘って薄膜との共形接触を与える。支持層204がパターン化される場合、支持層204は突出領域のみに亘って共形接触を与える。支持層204は、任意の適当な方法によってパターン化され得る。例えば、支持層204は、エッチング又はフォトリソグラフィによって規定される型に投入することによりパターン化されてもよい。
【0084】
支持層204は、任意の適当な厚みであればよい。例えば、支持層は、100μm〜10mmの厚みを有していてもよい。具体的には、支持層204の厚みは、約200〜9000μm、300〜8000μm、400〜7000μm、500〜6000μ、600〜5000μm、700〜4000μm、800〜3000μm、900〜2000μm、950〜1000μmであってもよい。より具体的には、支持層204の厚みは、1〜10mmであってもよい。支持層204が適切な厚みを有することにより、所望の動作圧において正常な共形接触が達成され得る。具体的には、方法100の工程104において第1基板上の薄膜と共形接触を達成し、その後、方法100の間に工程108において第2基板と共形接触を達成するため、動作圧は0.01〜8barの間であってもよい。
【0085】
支持層204の機械的剛性が高められてもよい。例えば、支持層204の機械的剛性は、膜接触層202と接触する支持体204表面の反対の支持層204の表面を裏打ちすることによって高めてもよい。支持層204の表面は、金属シート又は堅いプラスチックシートにより裏打ちされてもよい。しかしながら、工程108の間、支持層204と第1基板上の薄膜、及び第2基板表面との共形接触の形成ができなくなるため、支持層204は堅くしすぎてはならない。
【0086】
支持層204は、任意の適当な方法によって構成されてもよい。例えば、支持層204は、コンベヤベルト又は薄膜のロール・ツー・ロール転写用ドラム上に構成されてもよい。また、支持層204は、フレキソ印刷(flexographic painting)に似た形態に構成されてもよい。
【0087】
転写構造200の製造方法
転写構造200の製造の任意の適当な方法を、本発明の目的に使用することができる。1つの実施態様によれば、転写構造200は、工程104の接触に先立って予め組み立てられてもよい。具体的には、転写構造200は、膜接触層202及び支持層204を組み立てることを含んでもよい。膜接触層202及び支持層204は上述の通りであってもよい。
【0088】
膜接触層202及び支持層204を、任意の適当な方法によって接合してもよい。例えば、膜接触層202を支持層204上にスピンコートしてもよい。また、エレクトロスピニング、プレーティング、化学溶液堆積、化学気相成長、プラズマ化学気相成長、原子層堆積、加熱蒸着、電子ビーム蒸着、分子線エピタキシー、スパッタリング、パルスレーザー堆積、陰極アーク堆積、電子流体力学的堆積、インクジェットプリント、エアゾール噴霧、浸漬塗布、ドロップキャスティング、物理気相成長、真空昇華、ドクターブレード又はこれらの組み合わせ等のその他の任意の適当な方法を使用してもよいが、これらに限定されない。
【0089】
他の実施態様によれば、転写構造200は、工程102の適用の後に第1基板上に形成される。具体的には、一旦薄膜が工程102により第1基板表面上に適用されると、膜接触層202が薄膜上に適用される。膜接触層202を適用する任意の適当な方法を本発明の目的に使用することができる。例えば、膜接触層202を薄膜上にスピンコートしてもよい。その他の適切な方法としては、エレクトロスピニング、プレーティング、化学溶液堆積、化学気相成長、プラズマ化学気相成長、原子層堆積、加熱蒸着、電子ビーム蒸着、分子線エピタキシー、スパッタリング、パルスレーザー堆積、陰極アーク堆積、電子流体力学的堆積、インクジェットプリント、エアゾール噴霧、浸漬塗布、ドロップキャスティング、物理気相成長、真空昇華、ドクターブレード及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一旦膜接触層202が適用されると、支持層204を膜接触層202と共形接触させる。
【0090】
本発明について一般的に記載したが、実施例として提供され限定を意図するものではない以下の実施例を参照することにより、本発明はさらに容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0091】
実施例1
フルオロカーボン溶液 酸化及び重合されたプロペン,1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ(propene,1,1,2,3,3,3−hexafluoro,oxidised,polymerised)(GaldenHT200、Ausimont)に、30mg/mLの濃度まで溶解されたポリ[4,5−ジフルオロ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)−1,3−ジオキソール−co−テトラフルオロエチレン](テフロン AF2400、DuPont Fluoroproducts)の膜接触層を、25×25mmの大きさの銅(Cu)箔上に成長させたグラフェンシートに成膜して200nmの被覆層を形成し、90℃で短時間アニールして過剰な溶媒を除去した。
【0092】
銅箔よりもわずかに小さい、パターン化された20mm(長さ)×20mm(幅)×3mm(高さ)のポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)支持層片を、膜接触層を介してグラフェンシートと共形接触させ、酸素プラズマチャンバーに移した。支持層で覆われていない膜接触層/グラフェン領域を酸素プラズマによるエッチング(110秒、200W、600mTorr)によって除去した。その後、硝酸(HNO)水溶液(20重量%、Merck)にセットアップを浸すことによって、全Cu層をエッチングにより除去し、グラフェンと接触している膜接触層を保持する支持層を剥離した。その後、この膜接触層及びグラフェンを有する支持層を水で洗浄してあらゆる金属エッチング残渣を除去した後乾燥した。
【0093】
その後、膜接触層及びグラフェンを有する支持層を、Si上の酸素プラズマで処理された30nmの厚みの二酸化ケイ素の第二基板と共形接触させた。その後、全アッセンブリを、パーフルオロ(2−ブチル−テトラヒドロフラン)溶液(Fluorinert FC−75、3M)に浸漬し、膜接触層の大部分を溶解し、膜接触層の単層を残した。その結果、グラフェンシートが標的二酸化ケイ素基板上に剥離され、支持層は除去された。その後、表面にグラフェン層が成膜された二酸化ケイ素基板を、パーフルオロ(ブチルテトラヒドロフラン)(Fluorinert FC−75、3M)溶液で洗浄し、膜接触層の残渣の大部分を除去し、90℃のホットプレート上で短時間アニーリングすることにより乾燥した。
【0094】
図3は、Renishaw In−Via Raman 2000を用いた様々な位置における二酸化ケイ素基板上に転写されたグラフェンシートのラマンスペクトルを示す。Gバンドに対するDバンドの強度比は非常に低く(約0.09)、これは化学気相成長によって初めに銅基板上に成膜されたグラフェンのものと類似する。これは、本実施例において使用された転写方法の高い完全性を立証している。
【0095】
図4は、転写されたグラフェンシートの光学画像を示す。転写されたグラフェンシートがいかなる微小クラック又は不備も有していないことがわかる。また、転写シート上にみられる膜接触層又は支持層の明らかな残渣がないことが、図5の原子間力顕微鏡法の結果からもわかる。
【0096】
実施例2
膜接触層を溶解するために使用される溶媒を、酸化及び重合されたプロペン,1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ(Galden HT−200、Ausimont)とする以外は、実施例1に記載の方法を繰り返した。
【0097】
実施例3
膜接触層を分子量10,000(Sigma Aldrich)を有する30nmの厚みのポリスチレンとする以外は、実施例1に記載の方法を繰り返した。FeCl(0.5M、Sigma−Aldrich)を第1基板を溶解するために使用した。その後、膜接触層及びグラフェンを有する支持層を、Si上の酸素プラズマ処理された300nmの厚みの二酸化ケイ素の第2基板と共形接触させた。その後、全アッセンブリをキシレン(Fisher Scientific)に浸漬して膜接触層を溶解した。その結果、グラフェン膜が標的二酸化ケイ素基板表面上に剥離され、支持層が除去された。その後、表面にグラフェン層が成膜された二酸化ケイ素基板をキシレンで洗浄し、膜接触層のあらゆる残渣を除去して、90℃のホットプレート上で短時間アニーリングすることにより乾燥した。
【0098】
実施例4
膜接触層を溶解する溶媒をトルエン(Fisher Scientific)とする以外は、実施例3に記載の方法を繰り返した。
【0099】
実施例5
膜接触層を溶解する溶媒をアセトン(JT Baker)とする以外は、実施例3に記載の方法を繰り返した。
【0100】
実施例6
膜接触層をジビニルシロキサン−ビス−ベンゾシクロブテン樹脂(CYCLOTENE XU 71918.30樹脂、Dow Chemical Company)とし、膜接触層を溶解する溶媒をメシチレン(Sigma−Aldrich)とする以外は、実施例3に記載の方法を繰り返した。
【0101】
実施例7
膜接触層を溶解する溶媒をヘキサン(Fischer Scientific)とする以外は、実施例6に記載の方法を繰り返した。
【0102】
実施例8
膜接触層をポリ(ジメチルシロキサン)樹脂(Sylgard 184シリコーンエラストマーベース、Dow Corning Corporation)とし、膜接触層を溶解する溶媒をヘキサン(Fischer Scientific)とする以外は、実施例3に記載の方法を繰り返した。
【0103】
実施例9a
ポリイソブテン(PIB)(製品コードP3846A−IB、Polymer Source, Inc.)を、60mg/mL PIBの濃度までn−デカン(HPLC、Sigma−Aldrich)に溶解し、銅(Cu)箔上に成長させたグラフェンシート上に成膜して1μmの膜接触層を形成した。膜接触層を100℃で5分間アニーリングして過剰量のn−デカンを除去した。グラフェン/Cuシートよりもわずかに小さいポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)を含む支持層を、PIB膜接触層を介してグラフェンシートと共形接触させた。全アッセンブリを下向きのPDMS支持層を含むペトリ皿上に置き、酸素プラズマチャンバー(600秒、600W、470mTorr)に移して下層グラフェン及びPDMS支持層によって覆われていない領域をエッチングにより除去した。
【0104】
その後、全CuシートをFeCl溶液(0.5M、Sigma−Aldrich)に浸すことにより、エッチングによって除外して、FeCl溶液中にフィルム接触層及び膜接触層と接触したグラフェンを有する支持層(PDMS/PIB/グラフェンアッセンブリ)を生じた。その後、PDMS/PIB/グラフェンアッセンブリを水で洗浄して銅残渣を除去して乾燥した。
【0105】
その後、PDMS/PIB/グラフェンアッセンブリを、Si上に酸素プラズマ処理された300nmの厚みの酸化ケイ素の第2基板と共形接触させた。その後、全アッセンブリをn−デカンに浸漬してPIB膜接触層を溶解した。そのようにして、標的酸化ケイ素基板上にグラフェンシートを剥離し、PDMS支持層を除去した。その後、必要に応じて、表面にグラフェンシートを有する標的酸化ケイ素基板をn−デカン溶液でさらに洗浄してPIB残渣を除去した。
【0106】
実施例9b
ポリイソブテン(PIB)(製品コードP3846A−IB、Polymer Source, Inc.)を、60mg/mL PIBの濃度までn−デカン(HPLC、Sigma−Aldrich)に溶解し、銅(Cu)箔上に成長させたグラフェンシート上に成膜して1μmの膜接触層を形成した。PIB/グラフェン/Cuアッセンブリを100℃で5分間アニーリングして過剰量のn−デカンを除去した。PIB/グラフェン/Cuシートよりもわずかに小さいポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)を含む支持層を、PIB膜接触層を介してグラフェンシートと共形接触させた。全アッセンブリを反転させて下向きのPDMS支持層を含むペトリ皿上に置き、酸素プラズマチャンバー(600秒、600W、470mTorr)に移して下層グラフェン及びPDMS支持層によって覆われていない領域をエッチングにより除去した。
【0107】
その後、全CuシートをFeCl溶液(0.5M、Sigma−Aldrich)に浸すことにより、エッチングによって除外して、FeCl溶液中にPDMS/PIB/グラフェンアッセンブリを生じた。その後、このPDMS/PIB/グラフェンアッセンブリを水で洗浄して銅残渣を除去して乾燥した。
【0108】
その後、PDMS/PIB/グラフェンアッセンブリを、Si上に酸素プラズマ処理された300nmの厚みの酸化ケイ素の第2基板と共形接触させた。その後、PDMSをPDMS/PIB/グラフェンアッセンブリから剥がした。その後、PIB/グラフェン/第2基板アッセンブリをn−デカンに浸漬してPIB膜接触層を溶解した。そのようにして、標的酸化ケイ素基板上にグラフェンシートを剥離した。その後、必要に応じて、表面にグラフェン層を有する標的酸化ケイ素基板をn−デカン溶液でさらに洗浄してPIB残渣を除去した。
【0109】
実施例10
膜接触層をポリイソブチレンポリマー膜(製品コードP8883A−IB,Polymer Source,Inc.)とする以外は、実施例9に記載の方法を繰り返した。さらに、グラフェンシートをn−デカン(HPLC、Sigma−Aldrich)中120mg/mLのPIBを用いて銅基板上にスピンコートし、850nmの厚さの膜を形成した。その後、PDMS支持層によって覆われていない銅基板上のPIB/グラフェン部分を酸素プラズマ(540秒、600W、470mTorr)によってエッチングした。
【0110】
実施例11
膜接触層を低分子量のポリイソブチレンポリマー膜(製品コードP4185−IB, Polymer Source, Inc.)とする以外は、実施例9の方法を繰り返した。さらに、グラフェンシートをn−デカン(HPLC、 Sigma−Aldrich)中250mg/mLのPIBを用いて銅基板上にスピンコートし、1350nmの厚さの膜を形成した。その後、PDMS支持層によって覆われていない銅基板上のPIB/グラフェン部分を酸素プラズマ(780秒、600W、470mTorr)によってエッチングした。
【0111】
実施例12
膜接触層を溶解する溶媒をトルエン(Fisher Scientific)とする以外は、実施例9、10及び11に記載の方法を繰り返した。
【0112】
実施例13
膜接触層を溶解する溶媒をメシチレン(Sigma−Aldrich)とする以外は、実施例9、10及び11に記載の方法を繰り返した。
【0113】
実施例14
膜接触層を溶解する溶媒をクロロベンゼン(Sigma−Aldrich)とする以外は、実施例9、10及び11に記載の方法を繰り返した。
【0114】
実施例15
膜接触層を溶解する溶媒をヘキサン(Fisher Scientific)とする以外は、実施例9、10及び11に記載の方法を繰り返した。
【0115】
実施例16
膜接触層を溶解する溶媒をスクアラン(Sigma−Aldrich)とする以外は、実施例9、10及び11に記載の方法を繰り返した。
【0116】
実施例17
銅基板を0.5M濾過FeCl(Sigma−Aldrich)によってエッチングする以外は、実施例1に記載の方法を繰り返した。
【0117】
実施例18
グラフェンを、種々の表面処理を経た酸化ケイ素基板上に転写する以外は、実施例1に記載の方法を繰り返した。各酸化ケイ素基板は、それぞれ、以下の表面処理を経た:ヘキサメチルジシラザン(HDMS)処理、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)処理及びトリクロロ(1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチル)シラン処理。
【0118】
これは、酸化物及びその他の硬質無機基板上にグラフェンを転写する方法の多用途性を立証している。
【0119】
実施例19
グラフェンを、種々の表面処理を経たホウケイ酸ガラス基板又はフューズドシリカ基板、及びサファイア基板上にそれぞれ転写する以外は、実施例1に記載の方法を繰り返した。各ホウケイ酸ガラス基板又はフューズドシリカ基板は、それぞれ以下の表面処理を経た:ヘキサメチルジシラザン(HDMS)処理、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)処理及びトリクロロ(1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチル)シラン処理。
【0120】
ホウケイ酸ガラス基板及びサファイア基板上に転写されたフィルムの写真を、図6及び図7にそれぞれ示す。これは、酸化物及びその他の硬質無機基板上にグラフェンを転写する方法の多用途性を立証している。
【0121】
実施例20
グラフェンをポリエチレンテトレフタレート(polyethylene tetrephthalate)(PET)フレキシブル基板上に転写する以外は、実施例1に記載の方法を繰り返した。この基板上に転写されたフィルムの写真を図8に示す。これは、本発明の方法がフレキシブル基板上にもグラフェンを転写するために使用され得ることを立証している。
【0122】
実施例21
グラフェンを絶縁ポリマー膜上に転写する以外は、実施例1に記載の方法を繰り返した。具体的には、グラフェンをポリ[4,5−ジフルオロ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)−1,3−ジオキソール−co−テトラフルオロエチレン](AF2400、DuPont Fluoroproducts)膜、パーフルオロ(1−ブテニルビニルエーテル)ホモシクロコポリマー(CYTOPタイプM、Asahi Glass)膜、ポリスチレン(PS)膜、ポリカーボネート(PC)膜及びポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)膜上に転写した。
【0123】
これは、本発明の方法が軟質ポリマー絶縁薄膜上にグラフェンを転写するためにも使用され得ることを立証している。
【0124】
実施例22
グラフェンを有機半導体共役ポリマー膜上に転写する以外は、実施例3及び9に記載の方法を繰り返した。具体的には、グラフェンを、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−alt−ベンゾチアジアゾール)(F8BT)、スーパーグリーン ポリ[2−メトキシ−45−(フェニル−4,8−ジメチルノナネアオキシ(dimethylnonaneaoxy))−1,4−フェニレンビニレン−co−ポリ[54フェニル−4,8−ジメチルノナネアオキシ]−1,4フェニレンビニレン]、ポリ(2−(3’,7’−ジメチルオクチルオキシ)−5−メトキシ−1,4−フェニレン−ビニレン)(OC1C10−PPV)、ポリジケトピロロピロール(PDPP)及びポリ(2,5−ビス(3−アルキル−チオフェン−2−イル)チエノ[3,2−b]チオフェン)(PBTTT)上に転写した。
【0125】
PBTTT薄膜上に転写された残渣を含まないグラフェンを示す原子間力顕微鏡法を図9に示す(zスケールは20nm)。転写後グラフェンを粒界によって確認した。
【0126】
これは、軟質ポリマー膜上にグラフェンを転写し、デバイスにおいて制御された位置でグラフェンシートを組み込むこの方法の多用途性を立証している。
【0127】
実施例23
グラフェンをポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレン−スルホン酸)膜に転写する以外は、実施例3及び9に記載の方法を繰り返した。別のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレン−スルホン酸)膜をグラフェン上に成膜した後、別のグラフェンをポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレン−スルホン酸)膜上に転写した。
【0128】
PEDT:PSSH薄膜上に転写された残渣を含まないグラフェンを示す原子間力顕微鏡法を図10に示す(zスケールは30nm)。転写後グラフェンを粒界によって確認した。
【0129】
これは、任意に第2の材料を挟持してグラフェンシートを繰り返し転写することによって多層複合材料を製造することの実現可能性を立証するものである。これらの構造は、スーパーコンデンサ及びその他の形態の畜エネルギ膜として有用な可能性がある。
【0130】
実施例24
第1グラフェン膜をポリカーボネート(PC)又はポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)膜に転写する以外は、実施例3に記載の方法を繰り返した。その後、別のPC膜又はPMMA膜を、転写されたグラフェン膜上にスピンした。その後、第2グラフェン膜を、第2のPC膜又はPMMA膜上に転写した。このプロセスを3グラフェン層まで繰り返した。
【0131】
これは、任意に第2の材料を挟持してグラフェン膜を繰り返し転写することによって多層複合材料を製造することの実現可能性を立証するものである。追加の各グラフェン層に関して光透過性の減少を伴う紫外可視分光法が図11に説明されている。UV吸収は550nmにおいて測定され、各グラフェン層はこの波長において約2%を吸光した。
【0132】
実施例25
グラフェンを、30nmの厚みの酸化ケイ素基板上に蒸着された250μmチャネル長及び4.8mmチャネル幅の4点プローブソース−ドレイン電極(7nm厚Cr/50nm Au)上に転写する以外は、実施例3に記載の方法を繰り返した。SiO基板上に蒸着されたパターン化Auソース−ドレイン電極上に転写されたグラフェンを示す写真を、図12に示す。
【0133】
実施例26
銅基板上のグラフェンをマイクロメートルからセンチメートルの種々の大きさとする以外は、実施例1、3及び9に記載の方法を繰り返した。
【0134】
実施例27
パターン化PDMS支持層を以下の通り製造した。PDMS支持層のマイクロモデリング用SU−8(MicroChem Corporation)テンプレートを最初に製造した。1mmの厚みのSU−8−2150(ネガ型感放射線レジスト、MicroChem Corporation)をキャスティングする前に、ガラス基板をヘキサメチルジシラザンを用いて処理した。その後、65℃で10分間に続き95℃で2時間のソフトベーキングでリフロー及び膜の乾燥を行って、均質なSU−8厚膜を得た。65℃で5分間に続く95℃で30分間の露光後ベーキングを行う前に10分間の緩和時間をおいて、膜ストレスを低減した。別の10分間の緩和時間の前に、120℃で4時間の最終ハードベークを行った。SU−8膜上に所望のプラスチックパターン化マスクを上に置き、365nmのUV光(3分、365nm、10cmの距離で39Wランプを操作)に露光して、SU−8現像液(1−メトキシ−2−プロピルアセテート、MicroChem Corporation)を用いてわずかに撹拌しながら現像することによって、SU−8型を形成した。図13に示されるように、その後、SU−8テンプレートをイソプロピルアルコールで洗浄しN噴霧乾燥した。PDMS支持層を作製するため、10:1w/w%のSylgard 184シリコンエラストマーベース及びSylgard 184シリコンエラストマー硬化剤(Dow Corning Sylgard 184シリコンエラストマー)を混合し、ワックスにより固定された(secured)レベルのペトリ皿中のオクタデシルトリクロロシラン(OTS)処理されたSU−8型に注ぎ込む前に、起泡が観察されなくなるまで減圧デシケーターにおいて10−2mbarで脱気した。その後、ペトリ皿を真空オーブンに移してさらに吸引し、75℃で一晩硬化して、可撓性を障害することなくPDMS支持層を硬化した。その後、成形PDMS支持層を伴うSU−8型を除去し、SU−8型を剥がすことによってパターン化支持層を分離した。できるだけPDMSを脱気して膜接触層との共角接触におかれた場合にアニーリング工程の間ガスを発生(out−gassing)しないように、ペトリ皿に残ったPDMSを次の使用まで真空下で保管した。
【0135】
実施例28
製造されたPDMS支持層を、径解像度が500μmの環状パターン化PDMS支持層とする以外は、実施例27に記載の方法を繰り返した。得られたパターン化支持層を図14に示す。
【0136】
実施例29
ボトムゲートとしてSiを有する300nm厚の酸化ケイ素基板上にグラフェンを転写し、40ミクロンのチャネル長を有するシャドウマスクを介して蒸着された7nm厚のCr及び50nm厚のAuのソース−ドレイン電極に接触させる以外は、実施例3に記載の方法を繰り返した。単一ゲート掃引から得られた典型的な転写曲線を図15に示す。それぞれ、190cm/Vs及び200cm/Vsのリニアホール及び電界効果移動度を得た。ゼロゲート電圧シフトを伴う転写曲線の高い移動度及び直線性は、電子級適用に適当な高性能の転写グラフェンを示している。また、転写曲線は、ヒステリシスを伴うことなく良好であり、トラッピングを伴わず、無視できる程度の接触抵抗を有する明確な電荷キャリア移動度を示している。ゲート閾値は、10V未満であり、不純物による二次的なドーピングがないことを示している。これは、本発明の方法により転写されたグラフェンが、汚れがなく電子回路への適用に好適であることを立証するものである。また、図16に示されるように、グラフェンをフォトリソグラフィによって規定されるCr/Auソースアレイに転写することもできる。これは、本発明の転写方法が、標的基板上の下部構造と適合することを立証するものである。
【0137】
実施例30
極薄コンデンサ
ボトムAu電極(7nm/50nm厚Cr/Au)を300nm厚のSiO/Si基板上にシャドー蒸着した。50nm厚のBCBポリマーゲート誘電体膜をメシチレン溶液からこの基質上にスピンコートした。図17に示されるように、その後、単層グラフェンを実施例3の方法を用いて転写しバリヤ層を形成した。その後、トップAu電極(7nm/50nm厚Cr/Au)をシャドー蒸着してダイオード構造を形成した。I〜Vを測定して、このポリマーゲート誘電体膜のゲート破壊強さを得た。
【0138】
これは、極薄ポリマー膜用バリア層としてのグラフェンの実現可能性を立証するものである。
【0139】
実施例31
薄膜トランジスタにおけるトップゲート電極
交互嵌合されたボトムAu−ソース−ドレイン電極(7nm/50nm厚Cr/Au)をガラス基板上にシャドー蒸着した。クロロベンゼン中10mg/mLのPBTTTをこの基板上にスピンコートし、40nm厚のPBTTT半導体高分子層を形成した。その後、ブチルアセテート中31mg/mLのPSを、このPBTTT半導体膜の上にスピンコートし、150nm厚のPSゲート誘電性ポリマー膜の被覆層を形成した。その後、単層グラフェンを実施例9に記載の方法を用いて転写し、図18に示されるようなグラフェンゲート電極を形成した。0から−30V及び0Vまで、その後0Vから30V及び0Vまでの完全なp型及びn型ゲート電圧掃引、さらに8Vのソース−ドレイン電圧を印加して電界効果転写曲線を得た。これは、トップゲート薄膜トランジスタ用のゲート電極としてのグラフェンの使用の実現可能性を立証するものである。
【0140】
上記は例示的な実施態様を説明するものであるが、本発明から逸脱することなく、設計、構築及び/又は操作の詳細において多くの変更を行ってもよいことが当業者によって理解されるであろう。
図1(A)】
図1(B)】
図2(A)】
図2(B)】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18