特許第6206746号(P6206746)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6206746新規な分岐オリゴアリールシラン及びその調製法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206746
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】新規な分岐オリゴアリールシラン及びその調製法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/08 20060101AFI20170925BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20170925BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170925BHJP
【FI】
   C07F7/08 WCSP
   C07F7/10 V
   C07F7/10 T
   !C07B61/00 300
【請求項の数】20
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-518298(P2016-518298)
(86)(22)【出願日】2013年6月25日
(65)【公表番号】特表2016-524624(P2016-524624A)
(43)【公表日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】RU2013000540
(87)【国際公開番号】WO2014196891
(87)【国際公開日】20141211
【審査請求日】2016年6月22日
(31)【優先権主張番号】2013126222
(32)【優先日】2013年6月7日
(33)【優先権主張国】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】515325944
【氏名又は名称】オブシェストヴォ ス オグラニチェンノイ オトヴェトストヴェンノスチユ “リュミネスツェントヌィエ インノヴァツィオンヌィエ テフノロギー”
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ポノマレンコ,セルゲイ アナトリエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ボルシチェフ,オレグ ヴァレンティノヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】スリン,ニコライ ミハイロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】スコロテツキー,マクシム セルゲーヴィチ
【審査官】 小川 由美
(56)【参考文献】
【文献】 ロシア国特許出願公開第02396290(RU,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0131670(US,A1)
【文献】 特開2006−028175(JP,A)
【文献】 特表2010−527995(JP,A)
【文献】 特開2009−179627(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/010012(WO,A1)
【文献】 特開2004−273981(JP,A)
【文献】 特開2006−328066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の新規な分岐オリゴアリールシラン:
【化1】

であって、
式中、Rは:直鎖又は分岐C‐C20アルキル基;少なくとも1つの酸素原子により中断された直鎖又は分岐C‐C20アルキル基;少なくとも1つの硫黄原子により中断された直鎖又は分岐C‐C20アルキル基;少なくとも1つのケイ素原子により分離した分岐C‐C20アルキル基;C‐C20アルケニル基:の群のうちの置換基を表し、
Arは:一般式(II‐a)の置換又は非置換チエニル‐2,5‐ジイル、
【化2】

一般式(II‐b)の置換又は非置換フェニル‐1,4‐ジイル、
【化3】

一般式(II‐c)の置換又は非置換1,3‐オキサゾール‐2,5‐ジイル、
【化4】

一般式(II‐d)の置換フルオレン‐4,4’‐ジイル、
【化5】

一般式(II‐e)の置換シクロペンタジチオフェン‐2,7‐ジイル
【化6】

の群から選択される同一の、又は異なるアリーレン又はヘテロアリーレン基を表し、
式中、R、R、R、R、Rは互いに独立してH、又はRについて上述した群のうちの置換基を表し;R、R、R、RはRについて上述した群のうちの置換基を表し、
QはArについて上述した群のうちの基を表し、
XはArについて上述した群、及び/又は:一般式(II‐f)の2,1,3‐ベンゾチアジアゾール‐4,7‐ジイル、
【化7】

式(II‐g)のアントラセン‐9,10‐ジイル、
【化8】

一般式(II‐h)の1,3,4‐オキサジアゾール‐2,5‐ジイル、
【化9】

一般式(II‐i)の1‐フェニル‐2‐ピラゾリン‐3,5‐ジイル、
【化10】

一般式(II‐j)のペリレン‐3,10‐ジイル、
【化11】

の群のうちの基から選択される少なくとも1つの基を表し、
nは2〜4の群のうちの整数を表し、
mは1〜3の群のうちの整数を表し、
kは1〜3の群のうちの整数を表すことを特徴とする分岐オリゴアリールシラン。
【請求項2】
Arは式(II‐a)の多数のから選択されるチエニル‐2,5‐ジイルを表すことを特徴とする請求項1に記載の新規な分岐オリゴアリールシラン。
【請求項3】
Arは式(II‐b)の多数のから選択されるフェニル‐1,4‐ジイルを表すことを特徴とする請求項1に記載の新規な分岐オリゴアリールシラン。
【請求項4】
Qが式(II‐a)の多数のから選択されるチエニル‐2,5‐ジイルを表し、mは1に等しく、kは1に等しい条件下で、Xは置換フルオレン‐4,4’‐ジイル(II‐d)を表すことを特徴とする請求項1に記載の新規な分岐オリゴアリールシラン。
【請求項5】
Qが式(II‐b)の多数のから選択されるフェニル‐1,4‐ジイルを表し、mは3に等しく、kは1に等しい条件下で、Xはフェニル‐1,4‐ジイル(II‐b)及び1,3‐オキサゾール‐2,5‐ジイル(II‐c)を表すことを特徴とする請求項1に記載の新規な分岐オリゴアリールシラン。
【請求項6】
nは2に等しいことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の新規な分岐オリゴアリールシラン。
【請求項7】
nは3に等しいことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の新規な分岐オリゴアリールシラン。
【請求項8】
発光量子収率は50%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の新規な分岐オリゴアリールシラン。
【請求項9】
分子内エネルギー伝達効率は70%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の新規な分岐オリゴアリールシラン。
【請求項10】
200℃以上の温度に至っても熱安定的であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の新規な分岐オリゴアリールシラン。
【請求項11】
一般式(III)の化合物:
【化12】

式中、Yはホウ酸もしくはそのエステルの残基、Br、又はIを表し、
R、Ar、Q、n、kは上述の値を有する:
は、鈴木カップリング反応の条件下で一般式(IV)
A‐X‐A (IV)
の試薬と反応し、
式中、Yがホウ酸もしくはそのエステルの残基を表す場合、AはBrもしくはIを表し、又は、YがBrもしくはIを表す場合、Aはホウ酸もしくはそのエステルを表し;
X及びmは上述の値を有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の新規な分岐オリゴアリールシランの調製法。
【請求項12】
ボロン酸エステルは:一般式(V‐a)の4,4,5,5‐テトラメチル‐1,3,2‐ジオキサボロラン、
【化13】

一般式(V‐b)の1,3,2‐ジオキサボロラン、
【化14】

一般式(V‐c)の1,2,3‐ジオキサボリナン、
【化15】

及び一般式(V‐d)の5,5‐ジメチル‐1,2,3‐ジオキサボリナン
【化16】

の群から選択されるエステルであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
式(IV)の化合物中のAはBrを表すことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
Qが式(II‐a)に対応する多数のから選択されるチエニル‐2,5‐ジイルを表し、mは1に等しく、kは1に等しい条件下で、Xは置換フルオレン‐4,4’‐ジイル(II‐d)を表すことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
Qが式(II‐c)に対応する多数のから選択されるフェニル‐1,4‐ジイルを表し、mは3に等しく、kは1に等しい条件下で、Xはフェニル‐1,4‐ジイル(II‐b)及び1,3‐オキサゾール‐2,5‐ジイル(II‐c)を表すことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
成分の反応は温度20〜200℃で行うことを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
成分の反応は、トルエン、テトラヒドロフラン、エタノール、ジオキサン、ジメチルホルムアミド又はこれらの混合物の群から選択される有機溶媒の媒体中で行うことを特徴とする請求項11〜15いずれかに記載の方法。
【請求項18】
得られた新規な分岐オリゴアリールシランは、50%以上の発光量子収率を示すことを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
得られた新規な分岐オリゴアリールシランは、70%以上の分子内エネルギー伝達効率を示すことを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
得られた新規な分岐オリゴアリールシランは、200℃以上の温度に至っても熱安定的であることを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機ケイ素化合物の化学技術分野に関するものであり、発光特性を有する新規な機能性材料を調製するための工業的応用を見出すことができるものである。特に、本発明は、新規な分枝オリゴアリールシランに関する。
【0002】
本発明の範囲内の新規な分岐オリゴアリールシランとしては、本発明者らは高機能性で空間的に超分岐した完全非環式分子であるオリゴアリールシラン類を意味し、ここでは2つのSi原子が中心オリゴアリール断片に結合し、Si原子の各々は、より大きいバンドギャップを有する他の3つのオリゴアリール断片と結合している(図1)。本発明の範囲内のアリールシランとしてとしては、本発明者らは直接Si‐アリール又はSi‐ヘテロアリール結合を含む化合物を意味している。
【0003】
直鎖又は分枝アリールシランは公知であり、主鎖中に、又は側鎖置換基としてアリールシラン断片を有するその直鎖又は分岐ポリマーをベースとしている。従来のポリアリールシラン類とは対照的に、新規な分岐オリゴアリールシラン類は、個別の化合物である。このことは、低分子量化合物に利用可能な高純度の単離を可能にしている。このことは有機光工学及び電子工学への応用にとって特に重要である。このような分子の特定の3D構造は、光学的および電気的特性を調整できる組み合わせで良好な安定性及びフィルム形成能などの多数の価値ある特性を分子に付与している。
【背景技術】
【0004】
本発明に記載された分岐オリゴアリールシランは、発光特性を示す芳香族デンドリマーに近い分子構造を有する。有機発光デンドリマー及びそれをベースとする誘導体は例えば、(特許文献1)、2004年、(特許文献2)、2003年、及び(特許文献3)、2004年、で公知である。適用されるデンドリマーはヘテロアリール断片のみならず有機ケイ素断片を含む場合もある。しかし、デンドリマーの合成はかなり時間がかかり、プロセスも費用がかかる。
【0005】
請求の分岐オリゴアリールシランに類似した分子構造は、下記構造式:
【0006】
【化1】
【0007】
【化2】
【0008】
を有するオリゴアリールシランA(非特許文献1)及びB(非特許文献2)を有し、これらは一般式(A‐1)及び(B‐1)で表すことも可能である:
【0009】
【化3】
【0010】
【化4】
【0011】
構造A及びBでは、2つのケイ素原子は中心オリゴアリール断片に結合し、ケイ素原子の各々は3つのアリール(フェニル)断片に結合している。オリゴアリールシランA及びBとは対照的に、本発明の範囲内で、本発明者らは、各ケイ素原子に結合した3つのオリゴアリール断片があるために特定の光学特性を有するオリゴアリールシランを請求している。更に、公知の類似体と対照的に、請求の化合物はオリゴアリールシランの溶解度を有意に改善する末端基Rを含む。
【0012】
請求の新規な分岐オリゴアリールシランに最も近い構造の類似体は下記一般式(特許文献4)の分枝オリゴアリールシランである:
【0013】
【化5】
【0014】
中心オリゴアリール断片から離れているこのようなオリゴアリールシランは、各々ケイ素原子に結合した2つの他のオリゴアリール断片Arを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許第1027398号
【特許文献2】米国特許第6558818号
【特許文献3】米国特許第6720093号
【特許文献4】ロシア特許第2396290号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Adv.Funct.Mater.2005年、15.1799‐1805
【非特許文献2】Organic Electronics 8(2007年)349‐356
【非特許文献3】Organometallics、2007年、26、5165‐5173
【非特許文献4】Chem.Mater.2009年、21、447‐455
【非特許文献5】Suzuki, Chem. Rev. 1995年、V.95. P.2457‐2483
【非特許文献6】S. Gronowitz,A.‐B.‐Hornfeldt, Thiophenes, Elsevier Academic press, 2004年、pp.755
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
公知のオリゴアリールシランとは対照的に、本発明者らが入念に作成した化学構造体には、2つのケイ素原子に結合した中心オリゴアリール断片が含まれ、そのケイ素原子の各々は他の3つのオリゴアリール断片に結合している。ケイ素原子に結合したオリゴアリール断片の数の増加はこのような系の光学特性にかなり影響を与える。特にそれは上記化合物のモル吸光係数を増加させ、結果として、その化合物をベースとする機能性材料の吸光能が改善される。
【課題を解決するための手段】
【0018】
特許請求する発明の目的は、有機電子工学及び光工学用の発光材料として使用できるため多くの特性を有する新規な分岐オリゴアリールシランを合成することである。
【0019】
達成された技術的な結果は以下の通りである:高モル吸光係数、高発光効率、分子の一方の断片から他方への効率的な分子内エネルギー伝達、及び高熱安定性。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は新規な分岐オリゴアリールシランの図式表現である。
図2図2は一般式(III)の化合物の図式表現である。
図3図3は新規な分岐オリゴアリールシランI‐1の構造式(実施例4)の図式表現である。
図4図4は希釈THF(テトラヒドロフラン)溶液中の新規な分岐オリゴアリールシランI‐1の吸収(a)及び発光(b)スペクトルである。
図5図5は純粋な化合物I‐1のGPC曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.上述した効果は一般式(I)の新規な分岐オリゴアリールシランが得られることによって判断され、
【0022】
【化6】
【0023】
式中、Rは:直鎖又は分岐C‐C20アルキル基;少なくとも1つの酸素原子により他の基から分離した1つの基である直鎖又は分岐C‐C20アルキル基;少なくとも1つの硫黄原子により他の基から分離した1つの基である直鎖又は分岐C‐C20アルキル基;少なくとも1つのケイ素原子により他の基から分離した1つの基である分岐C‐C20アルキル基;C‐C20アルケニル基:の群のうちの置換基であり、
【0024】
Arは:一般式(II‐a)の置換又は非置換チエニル‐2,5‐ジイル、
【0025】
【化7】
【0026】
一般式(II‐b)の置換又は非置換フェニル‐1,4‐ジイル、
【0027】
【化8】
【0028】
一般式(II‐c)の置換又は非置換1,3‐オキサゾール‐2,5‐ジイル、
【0029】
【化9】
【0030】
一般式(II‐d)の置換フルオレン‐4,4’‐ジイル、
【0031】
【化10】
【0032】
一般式(II‐e)の置換シクロペンタジチオフェン‐2,7‐ジイル
【0033】
【化11】
【0034】
の群から選択される同一の、又は異なるアリーレン又はヘテロアリーレン基を表し、
【0035】
式中、R、R、R、R、Rは互いに独立してH、又はRについて上述した群のうちの置換基を表し;R、R、R、RはRについて上述した群のうちの置換基を表し、
QはArについて上述した群のうちの基を表し、
XはArについて上述した群、及び/又は:一般式(II‐f)の2,1,3‐ベンゾチアジアゾール‐4,7‐ジイル、
【0036】
【化12】
【0037】
式(II‐g)のアントラセン‐9,10‐ジイル、
【0038】
【化13】
【0039】
一般式(II‐h)の1,3,4‐オキサジアゾール‐2,5‐ジイル、
【0040】
【化14】
【0041】
一般式(II‐i)の1‐フェニル‐2‐ピラゾリン‐3,5‐ジイル、
【0042】
【化15】
【0043】
一般式(II‐j)のペリレン‐3,10‐ジイル、
【0044】
【化16】
【0045】
の群のうちの基から選択される少なくとも1つの基を表し、
nは2〜4の整数を表し、
mは1〜3の整数を表し、
kは1〜3の整数を表す。
【0046】
一方、断片X(Qは分子の内部部分であり、この断片の長さはm及びkの数字により決まり;分子の外部部分は、分子の内部及び外部部分間、ならびに分子の外部部分を構成する別々の断片間の接合不連続部の位置であるケイ素原子に結合した6つのオリゴアリール断片Ar‐Rから成る(非特許文献3)。一方、分子の内部部分にあるオリゴアリール断片の接合部の長さは、分子の外部部分にあるどのオリゴアリール断片の接合部の長さよりも長い。このことにより、分子の外部部分から内部部分へのエネルギー伝達が効率的になる(非特許文献4)。このような効率的なエネルギー伝達を実現するには、分子の外側部分のオリゴアリールシラン断片の吸収スペクトルと、内部オリゴアリールシラン断片の発光スペクトルとが良好に一致することが必要である。
【0047】
式(II‐a)〜(II‐j)中の記号*(アスタリスク)で記された位置は、構造断片(II‐a)〜(II‐j)が直鎖共役オリゴマー鎖Ar(又はXもしくはQ)、又は分岐の位置にあるケイ素原子に結合した鎖端Ar(又はQ)、又は末端置換基Rに結合した鎖端Arの形態で互いに結合している分子の位置である。
【0048】
新規な分枝オリゴアリールシランの図式表現を図1に示す。ここでは着色した楕円形は分子の内部部分を表し、着色していない楕円形は外部発光団を表す。Rの好ましい例としては直鎖又は分岐C‐C20アルキル基、例えばメチル、エチル、n‐プロピル、イソ‐プロピル、n‐ブチル、t‐ブチル、イソ − ブチル、sec‐ブチル、n‐ペンチル、1‐メチルブチル、2‐メチルブチル、3‐メチルブチル、1‐エチルプロピル、1,1‐ジメチルプロピル、2,2‐ジメチルプロピル、n‐ヘキシル、n‐ヘプチル、n‐オクチル、2‐エチルヘキシル、n‐ノニル、n‐デシル、n‐ウンデシル、n‐ドデシルが挙げられる。Rの最も好ましい例としては以下が挙げられる:メチル、エチル、n‐ヘキシル、2‐エチルヘキシル。
【0049】
Arの好ましい例としては以下が挙げられる:一般式(II‐a)の非置換チエニル‐2,5‐ジイル、式中、R=R=Hである;一般式(II‐a)の置換チエニル‐2,5‐ジイル、式中、R=H、特に3‐メチルチエニル‐2,5‐ジイル、3‐エチルチエニル‐2,5‐ジイル、3‐プロピルチエニル‐2,5‐ジイル、3‐ブチルチエニル‐2,5‐ジイル、3‐ペンチルチエニル‐2,5‐ジイル、3‐ヘキシルチエニル‐2,5‐ジイル、3‐(2‐エチルヘキシル)チエニル‐2,5‐ジイルである;一般式(II‐b)の非置換フェニル‐1,4‐ジイル、式中、R=R=Hである;一般式(II‐b)の置換フェニル‐1,4‐ジイル、式中、R=H、特に(2,5‐ジメチル)フェニル‐1,4‐ジイル、(2,5‐ジエチル)フェニル‐1,4‐ジイル、(2,5‐ジプロピル)フェニル‐1,4‐ジイル、(2,5‐ジブチル)フェニル‐1,4‐ジイル、(2,5‐ジペンチル)フェニル‐1,4‐ジイル、(2,5‐ジヘキシル)フェニル‐1,4‐ジイル、2,5‐ビス(2‐エチルヘキシル)フェニル‐1,4‐ジイル、(2,5‐ジメトキシ)フェニル‐1,4‐ジイル、(2,5‐ジエトキシ)フェニル‐1,4‐ジイル、(2,5‐ジプロポキシ)フェニル‐1,4‐ジイル、(2,5‐ジイソプロポキシ)フェニル‐1,4‐ジイル、(2,5‐ジブトキシ)フェニル‐1,4‐ジイル、(2,5‐ジペンチルオキシ)フェニル‐1,4‐ジイル、(2,5‐ジヘキシルオキシ)フェニル‐1,4‐ジイル、2,5‐ビス(2‐エチルヘキシルオキシ)フェニル‐1,4‐ジイルである。Arの好ましい例としては以下が挙げられる:チエニル‐2,5‐ジイル、フェニル‐1,4‐ジイル及び(2,5‐ジメチル)フェニル‐1,4‐ジイル。
【0050】
本発明の文脈では、Arは、上述の群から選択される同一の、又は異なるArのn個の断片の任意の組み合わせを意味する。このような組み合わせの好ましい値は、2及び5位で互いに結合しているn個の同一の非置換チエニル‐2,5‐ジイル断片であり、例えば2,2’‐ビチエニル‐2,5’‐ジイル(II‐a‐1)、2,2’:5’,2”‐テルチエニル‐2,5”‐ジイル(II‐a‐2)が挙げられる:
【0051】
【化17】
【0052】
このような組み合わせの他の好ましい値は、全体の数がnに等しくなるような一連の、1又は4位で互いに結合した異なる非置換又は2,5‐置換フェニル断片、及び異なる非置換1,3‐オキサゾール‐2,5‐ジイル断片であり、例えばn=2の場合は式(II‐1)、n=3の場合は式(II‐2)〜(II‐4)のいずれかが挙げられる:
【0053】
【化18】
【0054】
本発明の文脈では、Qは、上述の群から選択される同一の、又は異なるQのk個の断片の任意の組み合わせを意味する。この組み合わせの好ましい値は、非置換チエニル‐2,5‐ジイル(II‐a‐3)、非置換フェニル‐1,4‐ジイル(II‐b‐1)、2及び5位で互いに結合しているk個の同一の非置換チエニル‐2,5‐ジイル断片であり、例えば2,2’‐ビチエニル‐2,5’‐ジイル(II‐a‐1)、2,2’:5’,2”‐テルチエニル‐2,5”‐ジイル(II‐a‐2)が挙げられる:
【0055】
【化19】
【0056】
本発明の文脈では、Xは、上述の群から選択される同一の、又は異なるXのm個の断片の任意の組み合わせを意味する。このような断片の好ましい値は、非置換フェニル‐1,4‐ジイル(II‐b‐1)、非置換1,3‐オキサゾール‐2,5‐ジイル、非置換チエニル‐2,5‐ジイル(II‐a‐3)、アントラセン‐9,10‐ジイル(II‐e)、1,3,4‐オキサジアゾール‐2,5‐ジイル(II‐f)、2,1,3‐ベンゾチアジアゾール‐4,7‐ジイルである。
【0057】
本発明の文脈では、X(Qは、上述の群から選択される同一の、又は異なるXのm個の断片、及び同一の、又は異なるQのk個の断片の任意の組み合わせを意味する。これら断片の組み合わせの好ましい例としては:2,1,3‐ベンゾチアジアゾール‐4,7‐ジイルビス(チエン‐2,5‐ジイル)(II‐5)、2,1,3‐ベンゾチオジアゾール‐4,7‐ジイルビス(2,2’‐ビチエン‐5’,5‐ジイル)(II‐6)、アントラセン‐9,10‐ジイルビス(フェニレン‐1,4‐ジイル)(II‐7)、アントラセン‐9,10‐ジイルビス(チエン‐2,5‐ジイル)(II‐8)、2,2 ’‐[1,4‐フェニレン]ビス(1,3‐オキサゾール‐2,5‐ジイル‐フェニレン‐4,1‐ジイル)(II‐9)、置換フルオレン‐4,4’‐ジイルビス(チエン‐2,5‐ジイル)(II‐10)が挙げられる:
【0058】
【化20】
【0059】
記号*(アスタリスク)が付いた式(II‐a‐1)〜(II‐a‐3)及び(II‐1)〜(II‐9)で記された位置は、構造断片(II‐a)〜(II‐h)が直鎖共役オリゴマー鎖Ar、X、Q、又は分岐の位置にあるケイ素原子に結合した鎖端ArもしくはX(Q、又は末端置換基R及びRの形態で互いに結合している分子内での位置である。
【0060】
R、Ar、Ar、Q、Q、X、Xについて記述された値は特別な例であり、それらの間にあるAr、Q、Xの値についてn、m、kのすべての可能な組み合わせを制限するものではない。
【0061】
特に、式(I)では、Arは式(II‐a)の多数の化合物から選択されるチエニル‐2,5‐ジイルを表し、それにより一般式は以下の構造を有し、:
【0062】
【化21】
【0063】
式中、X、Q、R、R、R、n、m、kは上述の値を有する。
【0064】
特に、式(I)では、Arは式(II‐b)の多数の化合物から選択されるフェニル‐1,4‐ジイルを表し、それにより一般式は以下の構造を有し、:
【0065】
【化22】
【0066】
式中、X、Q、R、R、R、n、m、kは上述の値を有する。
【0067】
特に、式(I)では、Xは置換フルオレン‐4,4’‐ジイル(II‐d)を表し、Qは式(II‐a)の多数の化合物から選択されるチエニル‐2,5‐ジイルを表し、mは1に等しく、kは1に等しく、それにより一般式は以下の構造を有し、:
【0068】
【化23】
【0069】
式中、Ar、R、R、R及びnは上述の値を有する。
【0070】
この場合、例えば、Ar=非置換チエニル‐2,5‐ジイルの場合、R=C13、R=R=C1021、n=2であり、新規な分岐オリゴアリールシラン(図3)は式(I‐1)で表される:
【0071】
【化24】
【0072】
特に、式(I)では、Xはフェニル‐1,4’‐ジイル(II‐d)及び1,3‐オキサゾール‐2,5‐ジイル(II‐c)を表し、Qは式(II‐b)の多数の化合物から選択されるフェニル‐1,4‐ジイルを表し、mは3に等しく、kは1に等しく、それにより一般式は以下の構造を有し、:
【0073】
【化25】
【0074】
式中、Ar、R、R、R、R及びnは上述の値を有する。
【0075】
特に、式(I)では、nは2に等しく、それにより一般式は以下の構造を有し、:
【0076】
【化26】
【0077】
式中、R、Ar、X、Q、k及びmは上述の値を有する。
【0078】
特に、式(I)では、nは3に等しく、それにより一般式は以下の構造を有し、:
【0079】
【化27】
【0080】
式中、R、Ar、X、Q、k及びmは上述の値を有する。
【0081】
請求の新規な分岐オリゴアリールシランは、効率的な発光を示す同一の、又は異なるアリール又はヘテロアリールシラン基を含む。このことは、それらの希釈溶液の吸収及び発光スペクトルによって説明することができる(例えば、図4参照)。スペクトルのデータから分かるように、請求した新規な分岐オリゴアリールシランは、2つの特徴的な最大値を有する広い吸収スペクトル、高い発光量子収率、及び効率的な分子内エネルギー伝達を示す。本発明における高い量子収率とは、希釈溶液中での50%以上、好ましくは70%を超える発光量子収率を意味する。効率的な分子内エネルギー伝達とは70%以上、好ましくは90%以上の効率を意味する。記述されたデータは、請求の分岐オリゴアリールシランのいくつかの例を提示しているだけであり、その潜在的特性を何ら制限するものではない。
【0082】
請求のオリゴアリールシランの特徴は、アルゴン雰囲気下で化合物を加熱している間に1%重量減少する温度として本発明の範囲内で定義された高い熱安定性である。別の特定の例では、この温度は200℃以上、好ましくは400℃以上である。
【0083】
溶液はまた、一般式(I)の新規な分岐オリゴアリールシランの入念な合成法により提供される。この方法は以下のように簡潔に説明できる。一般式(III)の化合物:
【0084】
【化28】
【0085】
式中、Yはホウ酸もしくはそのエステルの残基、Br、又はIを表し、
R、Ar、Q、n、kは上述の値を有する:
は、鈴木条件下で一般式(IV)
A‐Xm‐A (IV)
の試薬と反応し、
式中、Yがホウ酸もしくはそのエステルの残基を表す場合、AはBrもしくはIを表し、又は、YがBrもしくはIを表す場合、Aはホウ酸もしくはそのエステルを表す。
X、mは上述の値を有する。
【0086】
本発明者らは、鈴木反応で、周期表のVIII亜群の金属を含む塩基及び触媒の存在下でのアリール又はヘテロアリールハロゲン化物とアリール又はヘテロアリール有機ホウ素化合物との反応(非特許文献5)を理解している。この反応で利用できる塩基であればどのようなものでも使用可能であることは周知であり、水酸化物、例えば、NaOH、KOH、LiOH、Ba(OH), Ca(OH);アルコキシド、例えば、NaOEt、KOEt、LiOEt、NaOMe、KOMe、LiOMe;カルボン酸のアルカリ金属塩、例えば炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩、クエン酸塩、アセチルアセトネート、ナトリウム、カリウム又はリチウムのグリシン酸塩、例えばCsCO、TlCO;リン酸塩、例えばナトリウム、カリウム又はリチウムのリン酸塩などが挙げられる。好ましい塩基は炭酸ナトリウムである。塩基は、トルエン、ジオキサン、エタノール、ジメチルホルムアミド又はそれらの混合物などの有機溶媒中の水溶液又は懸濁液の形態で使用する。水系溶液が好ましい。また、周期表の第VIII亜群の金属を含有する化合物であればいかなるものでもスズキ反応において触媒として使用することができる。好ましい金属はPd、Ni及びPtである。最も好ましい金属はPdである。単数又は複数の触媒は、0.01モル%〜10モル%の範囲の量で使用することが好ましい。触媒の最も好ましい量は低モル質量の試薬のモル量に対して0.5モル%〜5モル%である。最も利用されている触媒は、第VIII亜群金属の錯体である。特に、空気条件下で安定的なパラジウム(0)錯体や、有機金属化合物(アルキルリチウム又は有機マグネシウム化合物)又はホスフィンにより反応容器中で直接パラジウム(0)に還元されるパラジウム錯体、例えば、トリフェニルホスフィン又は他のホスフィンとのパラジウム(II)錯体などが挙げられる。例えば、PdCl(PPh、PdBr(PPh、Pd(OAc)又はトリフェニルホスフィンとのこれらの混合物。追加されたホスフィンを含む、又は含まない市販のPd(PPhを使用することが好ましい。ホスフィンとして、PPh、PEtPh、PMePh、PEtPh、PEtを使用することが好ましい。トリフェニルホスフィンが最も好ましい。
【0087】
製造工程の一般式は以下のように表される:
【0088】
【化29】
【0089】
式中、A、X、Y、Q、Ar、R、n、m及びkは上記の値を有する。
【0090】
特に、式(III)の化合物でのYは、一般式(V)
【0091】
【化30】
【0092】
のボロン酸‐4,4,5,5‐テトラメチル‐1,3,2‐ジオキサボロランの環状エステルの残基を表し、この例では、分岐オリゴアリールシランは下記一般スキームに従って得られ:
【0093】
【化31】
【0094】
式中、A、X、Q、Ar、R、n、m及びkは上記の値を有する。
【0095】
特に、式(IV)の化合物では、AはBrを表し、それにより分岐オリゴアリールシランは下記一般スキームに従って得られ:
【0096】
【化32】
【0097】
式中、X、Y、Q、Ar、R、R、n、m及びkは上記の値を有する。
【0098】
特に、式(IV)の化合物では、Qが式(II‐a)の多数の化合物から選択されるチエニル‐2,5‐ジイルを表し、mは1に等しく、kは1に等しい条件下で、Xは置換フルオレン‐4,4’‐ジイル(II‐d)を表し、それにより分岐オリゴアリールシランは以下の一般スキームに従って得られ:
【0099】
【化33】
【0100】
式中、A、Y、Ar、R、R、R及びnは上記の値を有する。
【0101】
特に、式(IV)の化合物では、Qが式(II‐b)の多数の化合物から選択されるフェニル‐1,4‐ジイルを表し、mは3に等しく、kは1に等しい条件下で、Xはフェニル‐1,4‐ジイル(II‐b)及び1,3‐オキサゾール‐2,5‐ジイル(II‐c)を表し、それにより分岐オリゴアリールシランは以下の一般スキームに従って得られ:
【0102】
【化34】
【0103】
式中、A、Y、Ar、R、R、R、R及びnは上記の値を有する。
【0104】
上述の反応は有機溶媒、又は反応種と相互作用しない溶媒混合液中で行ってもよい。例えば、反応は、多数のエーテル:テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールのジメチルエーテル、エチレングリコールのジエチルエーテル、エチレングリコールのジメチルエーテル;あるいは、多数の芳香族化合物:ベンゼン、トルエン、キシレン、又は多数のアルカン:ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、又は多数のアルコール:メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、又は配列非プロトン性極性溶媒:ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドから選択される有機溶媒の媒体中で行うことが可能である。2種以上の溶媒の混合液を用いてもよい。最も好ましい溶媒は、トルエン、テトラヒドロフラン、エタノール、ジメチルホルムアミド又はこれらの混合物である。これらの例では、初期成分は+20℃〜+200℃の範囲の温度において、初期成分の官能基間の化学量論的モル比で、又はそれらの1種類の過剰量で反応し得る。反応は、好ましくは+40℃〜+150℃の範囲の温度で行われることが好ましい。反応に最も好ましい温度領域は、+60℃〜+120℃である。
【0105】
反応終了後、生成物は公知の方法に従って単離する。例えば、水及び有機溶媒を添加する。有機相を分離し、pHが中性となるまで水で洗浄し、溶媒を蒸発させた後、乾燥させる。有機溶媒として、水系溶媒に非混和性であるか、混和性が限定的であるものであればいかなるものでも使用可能であり、それは例えば、多数のエーテル:ジエチルエーテル、メチルtertブチルエーテル、多数の芳香族化合物:ベンゼン、トルエン、キシレン、又は多数の有機塩素化合物:ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼンから選択される。更に、分離には有機溶媒混合液を使用してもよい。生成物の単離は有機溶媒を使用せずに、例えば反応混合物からの溶媒の蒸発、濾過による水層からの生成物の単離、遠心分離、又は他の公知の方法を介して行ってもよい。
【0106】
粗生成物の精製は、任意の公知の方法、例えば、吸着又は排除分取クロマトグラフィー法、再結晶化、分別沈殿もしくは分別溶解、又は任意のこれらの組み合わせにより行う。
【0107】
合成した化合物の純度及び分子構造は、クロマトグラフィー分析、分光分析、質量分光分析、元素分析などの当業者に公知の物理的及び化学的分析データの組み合わせによって確認する。新規な分岐オリゴアリールシランの最も好ましい純度及び分子構造確認手段はH、13C及び29SiのNMRスペクトル、ならびにGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)である。新規な分岐オリゴアリールシランのGPC曲線は狭い単分散分子量分布に相当する(例えば、図5参照)。
【0108】
本発明は以下の実施例により説明できる。市販の試薬及び溶媒を使用する。初期試薬5‐ヘキシル‐2,2’‐ビチオフェンを公知の方法に従って調製した(非特許文献6)。他の初期化合物は以下の実施例に従って調製した。反応はすべて、アルゴン雰囲気下、無水溶媒中で行った。
【0109】
(開始試薬の合成)
【実施例1】
【0110】
チエニルトリメトキシシラン(VI)の合成
【0111】
【化35】
【0112】
2.5Mのn‐ブチルリチウムを含む0℃の27.73ml(0.069mol)のヘキサン溶液中に、7.00g(0.083mol)のチオフェンを滴下した。得られたチオフェンのリチウム誘導体を、40ml(0.166mmol)のテトラエトキシシランを含む0℃の40mlのTHF溶液に添加した。減圧蒸留(T=120℃/10mbar)の後、7.07g(理論上34%)の化合物VIを得た。H NMR(CDCl):1.27(t,9H,J=6.7Hz),3.90(q,6H,J=6.7Hz),7.23(dd,1H,J=3.7Hz,J=4.9Hz),7.50(d,1H,J=3.7Hz),7.67(d,1H,J=4.9Hz)。
【実施例2】
【0113】
(2‐チエニル)[トリス(5’‐ヘキシル‐2,2’‐ビチエニル‐5‐イル)]シラン(VII)の合成
【0114】
【化36】
【0115】
2.5Mのn‐ブチルリチウムを含む5.28ml(13mmol)のヘキサン溶液を、3.3g(13.2mmol)の5‐ヘキシル‐2,2’‐ビチオフェンを含む−78℃の60mlのTHF溶液に添加した。その後、1.03g(0.42mmol)の化合物VIを添加した。冷却下で反応混合物を30分間混合した際、反応収率は55%であった(GPCによる測定)。カラムクロマトグラフィーによる標準的な単離法及び精製の後、クロマトグラフィーによる純粋な生成物収率は1.59g(理論上44%)であった。H NMR(250MHz,DMSO中のδ,TMS/ppm):0.89(t,9H,J=6.7Hz),1.25‐1.45(重複シグナル,18H),1.66(m,6H,M=5,J=6.7Hz),2.77(t,6H,J=7.3Hz),6.69(dd,3H,J=3.7Hz,J=1.2Hz),7.03(d,3H,J=3.7Hz),7.23(d,3H,J=3.7Hz),7.29(dd,1H,J=3.7Hz,J=4.3Hz),7.33(d,3H,J=3.7Hz),7.51(d,1H,J=3.7Hz),7.90(d,1H,J=4.3Hz)。
【実施例3】
【0116】
トリス(5’‐ヘキシル‐2,2’‐ビチエン‐5‐イル)[5’‐4,4,5,5‐テトラメチル‐1,3,2‐ジオキシボラン‐2‐イル)‐2,2’‐ビチエン‐5‐イル]シラン(III‐1)の合成
【0117】
【化37】
【0118】
温度を−80℃未満で維持しながら、1.6MのBuLiを含む1.1ml(1.7mmol)のヘキサン溶液を、1.5g(1.7mmol)の化合物VIIを含む40mlのTHF溶液に滴下した。その後、0.36ml(1.7mmol)の2‐イソプロポキシ‐4,4,5,5‐テトラメチル‐1,3,2‐ジオキサボロランを添加した。温度を室温まで高め、200mlの蒸留水、300mlのジエチルエーテル及び2mlの1NのHCl水溶液を添加した。生成物の標準的な単離の後、クロマトグラフィーにより得た純粋な生成物の収率は1.70g(理論上97%)であった。H NMR(DMSO‐CCl中のδ、TMS/ppm):0.89(9H,t,J=6.7Hz),1.23‐1.41(30H,重複ピーク),1.65(6H,m,M=5,J=7.3),2.77(6H,t,J=7.3Hz),6.69(3H,d,J=3.7Hz),7.05(3H,d,J=3.7Hz),7.22(3H,d,J=3.7Hz),7.33(3H,d,J=3.7Hz),7.56(1H,d,J=3.7Hz),7.67(1H,t,J=3.7Hz)。
【0119】
(新規な分岐オリゴアリールシランの合成)
【0120】
分岐オリゴアリールシラン合成の一般的方法:0.45mmolの化合物IV、周期表VIII亜群の金属を含む0.05mmolの触媒、及び3.0mmolの塩基を、1.0mmolの化合物IIIを含むトルエン溶液に添加する。混合液を80℃〜120℃で数時間撹拌する。反応終了後、公知の方法に従って生成物を単離する。シリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより生成物を精製する。
【実施例4】
【0121】
新規な分岐オリゴアリールシラン(I‐1)の合成
【0122】
【化38】
【0123】
一般的合成法に従って、1.62gの化合物III‐1、0.45gの4,4’‐ジブロモ‐9,9‐ジデシルフルオレン、0.095gの触媒Pd(PPh、2MのNaCOを含む3mlの水溶液、及び40mlのトルエンから、分岐オリゴアリールシランI‐1を調製した。単離及び精製後、0.549g(理論上35%)の純粋な分岐オリゴアリールシラン(I‐1)を得た。H NMR(DMSO‐CCl中のδ,TMS/ppm):0,51‐0.61(重複シグナル,4H),0.78(t,6H,J=6.7Hz),0.89(18H,t,J=6.7Hz),0.96‐1.15(重複シグナル,28H),1.23‐1.41(36H、重複ピーク),1.65(12H,m,M=5,J=7.3),1.96‐2.03 (重複シグナル,4H),2.77(12H,t,J=7.3Hz),6.69(6H,d,J=3.7Hz),7.05(6H,d,J=3.7Hz),7.25(6H,d,J=3.7Hz),7.39(6H,d,J=3.7Hz),7.47(d,2H,J=3,7Hz),7.58(4H,s),7.64(2H,d,J=7.9Hz),7.73(2H,d,J=7.9Hz)。
【実施例5】
【0124】
新規な分岐オリゴアリールシラン(I‐2〜I‐12)の合成
【0125】
一般的方法に従って、表1に記載の条件下で、初期試薬から新規な分岐オリゴアリールシランI‐2〜I‐12の合成を行った。実施例4と同様に、触媒としてPd(PPhを使用し、塩基として2MのNaCO水溶液を使用した。
【0126】
【表1】



図1
図2
図3
図4
図5