(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材層の少なくとも片面に、スチレン系エラストマを主成分とする粘着層を有する積層フィルムであって、前記スチレン系エラストマの1Hz、30〜60℃での剪断貯蔵弾性率G’と損失正接tanδが下記式(1)および(2)を満足することを特徴とする積層フィルム。
0.8×106≦G’(Pa)≦1.8×106 ・・・(1)
0.05≦tanδ≦0.10 ・・・(2)
【背景技術】
【0002】
合成樹脂、金属、ガラスなどの各種素材からなる製品には、加工工程、輸送工程、保管中に生じるキズや汚れを防止するため、表面を保護する材料を貼って取り扱うことが多々ある。表面を保護する代表的な材料が保護フィルムであり、一般に、支持基材上に、粘着層が形成された積層フィルムを用い、粘着層面を被着体に貼着させて支持基材で被覆することにより表面を保護するものである。
【0003】
近年、液晶ディスプレイやタッチパネルデバイスの普及が進んでいるが、これらは合成樹脂からなる多数の光学シートなどの部材から構成されている。かかる光学シートは、光学的な歪みなどの欠点を極力低減させる必要があることから、欠点の原因となり得るキズや汚れを防止するため、保護フィルムとして積層フィルムが多用されている。
【0004】
保護フィルムとして用いられる積層フィルムへの要求特性としては、温度、湿度などの環境変化や小さな応力を受けた程度では被着体から容易に剥離しないこと、被着体から剥離した際に被着体に粘着剤及び粘着剤成分が残らないことなどが挙げられる。
【0005】
上記光学シートのなかでも、例えば拡散板やプリズムシート、さらにはプリズムシートの背面に形成される様々な形状を有する拡散面のように表面に凹凸を有する部材では、積層フィルムを貼り合わせた直後は、凹凸部への粘着層の追従が不十分で、所望の粘着力が得られず、剥離してしまう場合がある。このような課題に対して、粘着層を柔らかくする方法や粘着付与剤を用いて粘着力を高くする方法などが知られている(例えば、特許文献1〜3)。
【0006】
しかしながら、被着体の凹凸部が柔軟な場合には、特許文献1、2のように粘着層の柔らかさを調整するだけでは、十分な接触面積が得られにくく、粘着力が不足する場合があった。また、粘着層を極端に柔らかくして十分な接触面積が得られたとしても、経時で接触面積が大きくなりやすく、その結果、過度な粘着力上昇により剥離が困難になったり、剥離後の被着体に糊残りを生じたりする場合があった。
【0007】
また、特許文献3では、粘着層中の粘着付与剤の配合量を調整することで粘着力を制御する方法が示されている。多量の粘着付与剤を添加することで、貼り合わせの直後で接触面積が小さい場合でも十分な粘着力を発現することができるが、経時や高温、高圧力下での保管時に粘着付与剤が粘着層表面にブリードアウトして被着体を汚染したり、粘着力が上昇して被着体からの剥離が困難になったりする場合があった。
【0008】
特許文献4では、光学用プリズムシートのプリズム面を保護する積層フィルムが提案されている。しかしながら、この提案では粘着層の剪断貯蔵弾性率にのみ着目しているため、被着体の形状や表面特性が異なる場合にいずれの被着体に対しても安定して適性な粘着力を得ることができず、特に種々の表面形態を有する光学用プリズムシートの背面に対して粘着力が過剰で、かつ経時変動するという問題が生じる場合があった。
【0009】
特許文献5、6も光学用プリズムシートのプリズム面を保護する積層フィルムに関する提案である。この提案では、ブロック共重合体のブロック構造を制御することで特性制御を行っており、さらに粘着層の損失正接tanδピーク温度範囲や70℃での剪断貯蔵弾性率の値に着目しているが、光学用プリズムシートの背面の形状や特性は様々であり、特定温度の特性だけで多様な被着体への保護フィルムとして広く適用することは困難であり、かつプリズムシートの背面に対しては粘着力が過剰であった。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の積層フィルムは、基材層の少なくとも片面に、スチレン系エラストマを主成分とする粘着層を有する積層フィルムであることが好ましい。スチレン系エラストマとしては、スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体(SIS)、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SBS)などのスチレン・共役ジエン系共重合体およびそれらの水添物(例えば水添スチレン・ブタジエン共重合体(HSBR)やスチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体(SEBS))や、スチレン・イソブチレン系共重合体(例えば、スチレン・イソブチレン・スチレントリブロック共重合体(SIBS)やスチレン・イソブチレンジブロック共重合体(SIB)またはこれらの混合物)などを挙げることができる。これらの中でも、水添スチレン・ブタジエン共重合体(HSBR)、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体(SEBS)、スチレン・イソブチレン系共重合体を好ましく用いることができる。なお、本発明で‘主成分’とするとは、粘着層の50質量%以上を占めることを意味しており、より好ましくは粘着層の70質量%以上を占める成分である。また、上記スチレン系エラストマは複数を混合して用いてもよく、その混合物の総和が粘着層の50質量%以上を占めていればよい。
【0017】
本発明で用いるスチレン系エラストマは、その重量平均分子量が、50,000〜400,000であることが好ましい。より好ましくは、50,000〜200,000である。上述の重量平均分子量の範囲内にあることが、粘着層として求められる凝集力とフィルムへの加工性を両立する観点で好ましい。
【0018】
また、本発明で用いるスチレン系エラストマはスチレン成分からなるハードセグメントとオレフィン成分からなるソフトセグメントのブロック共重合体であることが好ましいが、ハードセグメントとソフトセグメントの共重合比率はスチレン相が30〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは40〜60質量%、さらに好ましくは50〜60質量%である。また、ハードセグメントだけでなく、ソフトセグメントにも0.1〜30質量%の割合でスチレンモノマーを共重合することが好ましい態様である。ソフトセグメントにスチレン成分を含むことで、初期粘着力や粘着昂進挙動を制御できる場合がある。
【0019】
本発明の積層フィルムの粘着層中のスチレン系エラストマは、光学用プリズムシートの保護、特に様々な組成、構造からなる光学用プリズムシートの背面への粘着、剥離が好ましい粘着力範囲で制御可能となるという観点から、1Hzで測定した30〜60℃での剪断貯蔵弾性率G’(以下、単に「G’」と表記することもある)および損失正接tanδが各々式(1)および(2)を満足することが好ましい。
0.8×10
6≦G’(Pa)≦1.8×10
6 ・・・(1)
0.05≦tanδ≦0.10 ・・・(2)
ここで、30〜60℃での剪断貯蔵弾性率G’が式(1)を満たすとは、30〜60℃での剪断貯蔵弾性率G’の最大値および最小値がともに式(1)を満たすことをいう。また、30〜60℃での損失正接tanδが式(2)を満たすとは、30〜60℃での損失正接tanδの最大値および最小値がともに式(2)を満たすことをいう。
【0020】
剪断貯蔵弾性率G’が0.8×10
6Pa未満となると、粘着層が柔らかくなりすぎるため過粘着となり、被着体によっては剥離が困難となる場合がある。また、G’が1.8×10
6Paを超えると、被着体によっては粘着力が発現せずに積層フィルムが被着体表面で浮いた状態になってしまう場合がある。剪断貯蔵弾性率G’はより好ましくは、0.8×10
6〜1.6×10
6Paであり、0.8×10
6〜1.5×10
6Paであればさらに好ましく、0.8×10
6〜1.3×10
6Paであれば特に好ましい。
【0021】
また、損失正接tanδが0.05未満となると、被着体によっては粘着力が小さくなりすぎて保管中にデラミする場合がある。一方、tanδが0.10を超えると、被着体によっては初期粘着力が高くなりすぎる場合がある。損失正接tanδは0.06〜0.10であればより好ましい。
【0022】
本発明の積層フィルムの粘着層中のスチレン系エラストマは被着体依存の低減、経時による粘着力変化の低減の観点から、1Hz、30〜60℃の温度範囲での剪断損失弾性率G”(以下、単に「G”」と表記することもある)が式(3)を満足することが好ましい。
【0023】
0.08×10
6≦G”(Pa)≦0.13×10
6 ・・・(3)
ここで、30〜60℃での剪断損失弾性率G”が式(3)を満たすとは、30〜60℃での剪断損失弾性率G”の最大値および最小値がともに式(3)を満たすことをいう。
【0024】
G”が0.08×10
6Pa未満だと、被着体に粘着せず、すぐに剥離してしまう場合がある。また、G”が0.13×10
6Paを超えると被着体依存性や粘着力の経時変化が大きくなる場合がある。G”は0.09×10
6〜0.12×10
6Paであればより好ましい。
【0025】
本発明において、粘着層の主成分であるスチレン系エラストマの剪断貯蔵弾性率G’、剪断損失弾性率G”および損失正接tanδを上記した好ましい範囲内に制御する方法は、スチレン系エラストマを構成するスチレン成分からなるハードセグメントとオレフィン成分からなるソフトセグメントのブロック長、比率、さらにはソフトセグメント中のスチレン成分量などで制御することが可能であり、さらには異なる粘弾性特性を有する複数のスチレン系エラストマを混合することで調整することもできる。
【0026】
本発明において、粘着層の主成分であるスチレン系エラストマの剪断貯蔵弾性率G’、剪断損失弾性率G”は実施例に記載の方法で算出することができる。
【0027】
本発明の積層フィルムの粘着層は、前記スチレン系エラストマ以外に、タッキファイヤ、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、軟化剤などを含んでもよい。
【0028】
本発明で粘着層に用いるタッキファイヤとしては、脂肪族系共重合体、芳香族系共重合体、脂肪族・芳香族系共重合体系や脂環式共重合体系などの石油樹脂、クマロン−インデン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、重合ロジンなどのロジン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂およびこれらの水添物などの変性樹脂などを挙げることができる。また、これらタッキファイヤは複数種を併用してもよい。タッキファイヤは粘着特性を制御する観点で、粘着層中に0.01〜20質量%含むことが好ましく、糊残りなどの観点からは0.1〜10質量%がより好ましい。
【0029】
本発明で粘着層に用いるブロッキング防止剤としては、スチレン系エラストマをチップ化した際に、チップ同士が粘着、ブロッキングすることを防止するためにチップ表面に付着させるもので、例えばステアリン酸カルシウムやベヘン酸マグネシウムと言った飽和脂肪酸金属塩やエチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドといった飽和脂肪酸脂肪族ビスアミドや飽和脂肪酸芳香族ビスアミドなどの脂肪酸アミド化合物を挙げることができる。中でも粘着層全体を100質量%として脂肪酸アミド化合物を0.01〜10質量%含むことは、粘着力制御の観点や経時での粘着力変化を抑制する観点から好ましいことである。脂肪酸アミド化合物の含有量としては0.1〜5質量%であればより好ましく、0.2〜3質量%であれば特に好ましい。なお、これらブロッキング防止剤を通常通りブロッキング防止目的にチップ表面に付着させただけでは、0.5質量%を超えるような量を含むことは困難な場合があるため、スチレン系エラストマと所定量のブロッキング防止剤を溶融混練することが好ましい。
【0030】
本発明で粘着層に用いる酸化防止剤としては、フェノール系、リン酸系などの酸化防止剤を好ましく用いることができ、ポリオレフィン樹脂に一般的に用いられているペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名 IRGANOX1010(BASF製))やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名IRGAFOS168(BASF製))を問題なく用いることができる。
【0031】
本発明の積層フィルムは、光学用プリズムシートの保護、特に様々な組成、構造からなる光学用プリズムシートの背面への粘着、剥離が好ましい粘着力範囲で制御可能となるという観点から、粘着層面の平均表面粗さRaが0.10〜1.00μmであることが好ましい。
【0032】
平均表面粗さRaが0.10μm未満だと、被着体依存性が大きくなる場合や、粘着力の経時変化が大きくなる場合がある。また1.00μmを超えると被着体と接触しにくく、十分な粘着力を確保できない場合がある。平均表面粗さは0.20〜0.80μmであればより好まく、0.30〜0.70μmが特に好ましい。
【0033】
平均表面粗さRaを制御する方法としては、基材層に粗面効果のある材料を使用し、その上の粘着層に基材層の凹凸形状を反映させる方法や基材層の粘着層と反対側の面の凹凸形状を粘着層に転写させる方法、基材層の粘着層と反対側の面に凹凸層を設けてその形状を粘着層に転写させる方法、粗面効果のある粘着層材料を使用する方法等が挙げられる。
【0034】
本発明の積層フィルムは、引張弾性率が200〜10,000MPaであることが好ましい。引張弾性率が200MPa未満の場合には積層フィルムが容易に変形してしまい、しわや破れの原因となりやすい場合がある。また引張弾性率が10,000MPaより大きい場合にはフィルムが硬すぎるため被着体に追従せず、良好な粘着力を得られない場合がある。 本発明の積層フィルムは前記粘着層を基材層の少なくとも片面に有するが、本発明では基材層にポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。基材層に含まれるポリオレフィン樹脂は特に限定されないが、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体(ランダム共重合体および/またはブロック共重合体)、プロピレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン・メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン・n−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテンー1などを挙げることができる。また、ポリオレフィン樹脂を複数混合して基材層としてもよい。なお、前記α−オレフィンとしては、プロピレンやエチレンと共重合可能であれば特に限定されず、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ペンテン、1−ヘプテンを挙げることができる。
【0035】
上記したポリオレフィンのなかでも、高剛性を有する観点、また上記した粘着層の平均表面粗さRaを好ましい範囲に制御する観点から、アイソタクチックポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体(ランダム共重合体および/またはブロック共重合体)、プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等のプロピレン系材料がより好ましい。
【0036】
さらに、基材層には酸化防止剤やブロッキング防止剤などを含んでもよく、また、基材層の粘着層を有する面とは反対面に離型層を有してもよい。この離型層には基材層に用いるポリオレフィン樹脂に離型剤として、たとえばフッ素系樹脂や無機粒子などの滑剤を添加して、粘着層と接触してフィルムロールに巻き取った後、巻き返す際の展開力を調整することができる。
【0037】
また、本発明の積層フィルムの基材層には、粘着層に用いているスチレン系エラストマをはじめとする、粘着層を構成する各成分が少量含まれることは、粘着層と基材層の親和性を向上し、粘着層と基材層界面の接着力を高める観点から好ましいことである。また、基材層に接着層成分を含ませる方法として、本積層フィルムを回収、再原料化した回収原料を添加して使用して方法を採用することは樹脂のリサイクルや生産コスト低減の観点から好ましい手法である。
【0038】
本発明の積層フィルムの粘着層の厚みは1〜10μmであることが好ましい。さらに好ましくは2〜8μmである。粘着層が1μmより薄いと粘着力が低すぎて保護の役割を果たせない場合がある。また、逆に粘着層が10μmより厚いと、粘着力が高くなりすぎて剥離しづらくなる場合がある。
【0039】
本発明の積層フィルムの基材層の厚みは20〜100μmであることが好ましく、25〜80μmであればより好ましい。被着体を保護した状態で保管する際の耐傷付き性と保管効率を両立させる観点からは30〜60μmであれば特に好ましい。
【0040】
以下に本発明の積層フィルムを製造する方法の一例を記載する。ただし、本発明の積層フィルムの製造方法はこれに限定されるものではない。
【0041】
本発明で粘着層の主成分となるスチレン系エラストマとして、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)を用いる場合、クレイトンポリマーやJSR株式会社、旭化成ケミカルズ株式会社が市販している、クレイトンGポリマー、ダイナロン、タフテックなどから適宜エラストマを選択し、粘弾性特性を満足するように混合して用いることができる。また、たとえば、特開2014−148638号公報や特開2011−57992号公報に記載のエラストマの重合方法を参考にして、粘弾性特性を調整したSEBSを重合し準備してもよい。
【0042】
粘着層の構成成分のスチレン系エラストマ88質量部にブロッキング防止剤としてエチレンビスステアリン酸アミド2質量部、タッキファイヤとして、三井化学株式会社製のFTR6125を5質量部、荒川化学工業株式会社製アルコンP100を5質量部で混合して溶融押出機に供給する。また、基材層としてポリプロピレン樹脂を溶融押出機に供給する。なお、基材層の粘着層側と反対側に離型層を設けても構わない。
【0043】
粘着層と基材層の構成成分を各々溶融押出機から押出を行う。この時、粘着層の樹脂温度は190〜240℃となるように制御することが好ましい。190℃未満の樹脂温度では、溶融粘度が高すぎるため、樹脂混練が不十分になり、フィルム特性にムラを生じる場合がある。また、樹脂温度が240℃を超えると、エラストマの熱劣化が起こり、粘着剥離時に糊残りが発生しやすくなる場合がある。樹脂温度は好ましくは200〜230℃である。そして、粘着層と基材層をTダイ内部で積層一体化し、共押出を行う。そして金属冷却ロールで冷却固化し、フィルム状に成形を行い、ロール状に巻き取ることで積層フィルムを得ることができる。
【0044】
さらに、ロール状に巻き取った中間製品は、次工程の保護対象である光学シート幅に合わせて、スリットを行う。この際、スリット前に室温で24〜36時間放置することはフィルム中の残留ひずみを開放し、フィルム特性を安定させる観点で好ましいことである。
【0045】
本発明の積層フィルムを保護フィルムとして用いる場合、本発明の積層フィルムが保護する被着体は液晶ディスプレイやタッチパネルデバイスを構成する光学用プリズムシートの背面であることが好ましい。光学用プリズムシートとは、たとえば二軸配向したポリエステルフィルムを基材として、各種光学特性を付与するために、UV硬化樹脂を基材表面に塗工し、プリズム状に金型賦型しながらUV硬化された光学機能表面を有するシートである。この光学用プリズムシートの背面は、光学シートの機能統合を目的に、光拡散機能を付与されていることがある。
【0046】
本発明の積層フィルムを保護フィルムとして用いる場合、本発明の積層フィルムは、光学用プリズムシート表面の中でも特にプリズムシートの背面を保護するのに特に適した積層フィルムであり、さらに前記背面がエステル系樹脂あるいはアクリル系樹脂で構成されているプリズムシートの背面の保護に好適に用いることができる。ここで、プリズムシートの背面がエステル系樹脂あるいはアクリル系樹脂で構成されているとは、プリズムシートの背面にエステル系樹脂あるいはアクリル系樹脂を含むことをいう。また、前記背面を構成している組成の判別は、FT−IR ATR法により判断することが可能である。
【0047】
例えば、光学用プリズムシートの背面は、エステル系樹脂の場合、ポリエステル樹脂中に平均粒子径が好ましくは0.1〜20μm、より好ましくは1〜10μmの無機粒子あるいは有機粒子を好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%添加した層をプリズムを後加工で形成する面とは反対の面に積層し、溶融製膜、二軸延伸を行うことで得られる。また、プリズムシートの基材となる二軸配向ポリエステルフィルムの製造工程において、プリズムを形成する面とは反対面にポリエステル樹脂が分散した水溶液に透明ビーズ粒子を分散させて、コーティングを行い、少なくとも一軸に延伸し熱処理で固化する、所謂インラインコーティング法により機能層を形成することができる。
【0048】
さらに、プリズムシートの背面がアクリル系樹脂で構成される場合、例えば、前記の通り、アクリル樹脂をプリズム面とは反対面にダイコーターなどで塗工し、光拡散層を金型賦型しながらUV硬化させて形成することで得ることができる。
【0049】
上記したプリズムシートの背面は、被着面の濡れ張力(表面自由エネルギー)が25mN/m以上であることが好ましい。濡れ張力が25mN/m未満の場合、本発明の積層フィルムを密着させることが困難な場合がある。また、上限は実質的には60mN/m程度である。被着面の濡れ張力は、被着面の素材や製造方法等によって調整することができる。
【0050】
本発明の積層フィルムが保護する前記光学用プリズムシートの背面は平均表面粗さRaが0.01〜1μmであることが適性な粘着力に制御されやすいため好ましい。より好ましくは、0.05〜0.8μmである。また、十点平均粗さRzは粘着層厚みよりも小さいことが好ましい。Rzが粘着層厚みよりも大きい場合、突起が粘着層に100%食い込んでも、粘着層全面が被着体に接触することができなくなるため、適切な粘着力を得ることが困難になる場合がある。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、特性は以下の方法により測定、評価を行った。
【0052】
(1)粘弾性(剪断貯蔵弾性率、剪断損失弾性率、損失正接)
実施例および比較例に示すスチレン系エラストマを厚み2mmに溶融成形し、TAインスツルメント社製レオメーターAR2000exを用いて、マイナス50℃からプラス150℃の温度範囲を、昇温速度3℃/分で昇温しながら、周波数1Hz、ひずみ0.01%で動的剪断変形させながら剪断貯蔵弾性率G’および剪断損失弾性率G”を20秒間隔のサンプリングレートで測定した。またG’とG”から損失正接tanδ(=G”/G’)を算出した。なお、2種類以上のスチレン系エラストマを使用する場合は、各スチレン系エラストマを所定の混合比で配合し、東洋精機製作所製ラボプラストミル100MR3を用いて、温度200℃、回転数20rpmで10分間混練した後、厚さ2mmに溶融成形したものを用いて、上記と同様にして算出した。
【0053】
(2)初期粘着力
温度23℃、相対湿度50%の条件下で24時間調温調湿した積層フィルムと表1に示す各種被着体のプリズムシートの背面について、ロールプレス機(安田精機製作所製特殊圧着ローラ(硬度A80、自重2kg))を用いて貼合圧力0.35MPa、貼合速度3m/分で貼合した。その後、温度23℃、相対湿度50%で24時間保管した後、粘着力評価を行った。
【0054】
粘着力は、引張試験機(オリエンテック製万能試験機テンシロン)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°で粘着力を測定した。測定は5回行い、平均値を初期粘着力とした。
【0055】
(3)経時粘着力
温度23℃、相対湿度50%の条件下で24時間調温調湿した積層フィルムと表1の各種被着体のプリズム面の背面について、ロールプレス機(安田精機製作所製特殊圧着ローラ(硬度A80、自重2kg))を用いて貼合圧力0.35MPa、貼合速度3m/分で貼合した。その後、60℃に温度制御した熱風オーブン内で72時間保管し、さらに温度23℃、相対湿度50%で24時間保管した後、粘着力評価を行った。
【0056】
粘着力は、引張試験機(オリエンテック製万能試験機テンシロン)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°で粘着力を測定した。測定は3回行い、平均値を経時粘着力とした。
【0057】
(4)表面粗さ
積層フィルムの粘着層面の平均表面粗さRaおよびプリズムシートの背面の平均表面粗さRa、十点平均粗さRzは、(株)小坂研究所製の高精度微細形状測定器(SURFCORDER ET4000A)を用い、JIS B0601−1994に準拠し、フィルム横方向に2mm、長手方向(マシン方向)に10μm間隔で21回測定し3次元解析を行い、平均表面粗さRa、十点平均粗さRzを求めて評価した。なお、触針先端半径2.0μmのダイヤモンド針を使用、測定力100μN、カットオフ0.8mmで測定した。
【0058】
(5)被着体の素材
(株)パーキンエルマー製のFrontier FT−IRを用い、UATR IRユニットを使用して、媒質結晶をダイヤモンド/ZnSeとして、減衰全反射法(ATR法)によってプリズムシートの背面のスペクトル測定し、背面の素材を確認した。分光器の分解能は1cm
−1、スペクトルの積算回数は4回として測定した。
【0059】
(6)被着体の濡れ張力
接触角計(協和界面化学製CA−D型)を使用して、水、エチレングリコ−ル、ホルムアミド、及びヨウ化メチレンの4種類の液体の、プリズムシートの背面に対する静的接触角を求めた。それぞれの液体について得られた接触角と測定液の表面張力の各成分を下式にそれぞれ代入し、γ
L、γ
+、及びγ
− を算出し、濡れ張力(表面自由エネルギー)γを求めた。
(γ
L γ
jL)
1/2 +2(γ
+γ
j−)
1/2 +2(γ
j+γ
−)
1/2
=(1+cosθ)[γ
jL +2(γ
j+ γ
j−)
1/2]/2
ただし、γ=γ
L+2(γ
+γ
−)
1/2γ
j=γ
jL+2(γ
j+γ
j− )
1/2
ここで、γ、γ
L、γ
+、γ
−は、それぞれ、フィルム表面の濡れ張力(表面自由エネルギー)、長距離間力項、ルイス酸パラメーター、ルイス塩基パラメーターを、γ
j、γ
jL、γ
j+、γ
j−は、それぞれ、用いた測定液の濡れ張力(表面自由エネルギー)、長距離間力項、ルイス酸パラメーター、ルイス塩基パラメーターを表す。ここで用いた各液体の表面張力は、Oss(“Fundamentals of Adhesion”, L.H.Lee(Ed.),p153,Plenum ess,New York(1991))によって提案された表1の値を用いた。
【0060】
(実施例1)
スチレン系エラストマとして、旭化成ケミカルズ株式会社製エラストマS1606(スチレン50質量%)を90質量部に三井化学株式会社製FTR6125を5質量部、荒川化学工業株式会社製アルコンP100を5質量部の比率でドライブレンドして粘着層樹脂組成物とした。
【0061】
基材層にはメルトフロレイト(MFR、230℃、2.16kg)が4g/10分の市販のアイソタクチックポリプロピレン(ホモポリプロピレン)を用いた。
【0062】
圧縮比4.2,L/D=25の単軸スクリュー押出機を2台備えた2種2層Tダイ製膜機に上記粘着層樹脂組成物および基材層の樹脂を投入し、粘着層側を30℃に温度制御した金属冷却ロールに接するようにキャストを行い、冷却固化してフィルムを製膜し、粘着層厚み5μm、基材層厚み35μm、全体厚み40μmからなる積層フィルムを得た。
【0063】
(実施例2)
実施例1の粘着層組成を以下のように変更する以外は実施例1と同様に全体厚み40μmのフィルムを得た。
・旭化成ケミカルズ株式会社製エラストマS1606(スチレン50質量%):80質量部
・旭化成ケミカルズ株式会社製タフテックH1052(スチレン20質量%):10質量部
・三井化学株式会社製FTR6125:5質量部
・荒川化学工業株式会社製アルコンP100:5質量部。
【0064】
(実施例3)
実施例1の粘着層組成を以下のように変更する以外は実施例1と同様に全体厚み40μmのフィルムを得た。
・旭化成ケミカルズ株式会社製エラストマS1606:70質量部
・旭化成ケミカルズ株式会社製タフテックH1052:20質量部
・三井化学製株式会社FTR6125:5質量部
・荒川化学工業株式会社製アルコンP100:5質量部。
【0065】
(比較例1)
実施例1の粘着層組成を以下のように変更する以外は実施例1と同様に全体厚み40μmのフィルムを得た。
・旭化成ケミカルズ株式会社製タフテックH1052:90質量部
・三井化学株式会社製FTR6125:5質量部
・荒川化学工業株式会社製アルコンP100:5質量部。
【0066】
(比較例2)
実施例1の粘着層組成を以下のように変更する以外は実施例1と同様に全体厚み40μmのフィルムを得た。
・JSR株式会社製ダイナロン8300P(スチレン9質量%):90質量部
・三井化学株式会社製FTR6125:5質量部
・荒川化学工業株式会社製アルコンP100:5質量部。
【0067】
(実施例4)
実施例1の粘着層組成を以下のように変更する以外は実施例1と同様に全体厚み40μmのフィルムを得た。
・旭化成ケミカルズ株式会社製エラストマS1606:89.1質量部
・エチレンビスステアリン酸アミド(脂肪酸アミド化合物):0.9質量部
・三井化学株式会社製FTR6125:5質量部
・荒川化学工業株式会社製アルコンP100:5質量部。
【0068】
(実施例5)
実施例1の粘着層組成を以下のように変更する以外は実施例1と同様に全体厚み40μmのフィルムを得た。
・旭化成ケミカルズ株式会社製エラストマS1606:88.2質量部
・エルカ酸アミド(脂肪酸アミド化合物):1.8質量部
・三井化学株式会社製FTR6125:5質量部
・荒川化学工業株式会社製アルコンP100:5質量部。
【0069】
(実施例6)
実施例4の基材層をMFR(230℃、2.16kg)が8g/10分、エチレン含有量が10質量のプロピレン・エチレンブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)に変更する以外は実施例4と同様に全体厚み40μmのフィルムを得た。
【0070】
(比較例3)
実施例1の粘着層組成を以下のように変更する以外は実施例1と同様に全体厚み40μmのフィルムを得た。
・旭化成ケミカルズ株式会社製タフテックH1052:89.1質量部
・エチレンビスステアリン酸アミド:0.9質量部
・三井化学株式会社製FTR6125:5質量部
・荒川化学工業株式会社製アルコンP100:5質量部。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
【表5】
【0076】
本件発明の実施例では、特に初期粘着力の標準偏差が小さく、被着体依存性が小さい積層フィルムを得ることができた。さらに、本件発明の好ましい様態である脂肪酸アミド化合物を含有する実施例5、6では、経時での粘着力の被着体依存性が低減できていることが確認できた。また、粘着層の平均表面粗さRaを本件発明の特に好ましい範囲にした実施例7では、初期および経時の粘着力の被着体依存性が低減できていることが確認できた。一方、比較例では初期粘着力の被着体依存性が大きかった。
光学シート表面、特にプリズムシートの背面に対して、その形状、組成に依存せず、様々な被着体に対して適性な粘着力範囲で保護、保管を可能とする保護フィルムを提供する。基材層の少なくとも片面に、スチレン系エラストマを主成分とする粘着層を有する積層フィルムであって、前記エラストマの1Hz、30〜60℃の温度範囲で剪断貯蔵弾性率G’と損失正接tanδが特定範囲内であることを特徴とする積層フィルムである。