(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206761
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】振り出しキャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 47/04 20060101AFI20170925BHJP
B65D 83/06 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
B65D47/04 100
B65D83/06 E
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-205237(P2013-205237)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-67342(P2015-67342A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(72)【発明者】
【氏名】早川 茂
【審査官】
種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−104348(JP,A)
【文献】
特開平08−169460(JP,A)
【文献】
実開平01−110145(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/04
B65D 83/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容した容器本体(19)の口筒部(20)に密に組付けられ、前記内容物を振り出す振り出し口(7)を頂板(4)に開設した有頂筒状のキャップ本体(2)と、該キャップ本体(2)を上から覆って組付いた閉姿勢状態で、前記振り出し口(7)を密閉する機能部(15)を有する蓋体(10)とを備え、前記振り出し口(7)を、前記頂板(4)に貫通形成された貫通穴(8)と、該貫通穴(8)から上方に拡径する開口テーパー面(9)で構成し、前記振り出し口(7)を密閉する機能部(15)を、前記貫通穴(8)に侵入する挿入片(16)と、該挿入片(16)を囲んで設けられ、前記開口テーパー面(9)の傾斜した表面に下端縁を全周に亘って密接させるシール筒片(17)で構成したことを特徴とする振り出しキャップ。
【請求項2】
密閉する機能部(15)の挿入片(16)とシール筒片(17)を円筒片状に構成すると共に、同軸心状に配置した請求項1に記載の振り出しキャップ。
【請求項3】
振り出し口(7)と、該振り出し口(7)を密閉する機能部(15)との組合わせ物を、複数設けた請求項1または2に記載の振り出しキャップ。
【請求項4】
キャップ本体(2)に蓋体(10)をヒンジ(18)により回動開閉可能に結合した請求項1〜3の何れか1項に記載の振り出しキャップ。
【請求項5】
ヒンジ(18)の反対側に位置するキャップ本体(2)の上端部と、同じくヒンジ(18)の反対側に位置する蓋体(10)の端部のそれぞれに、乗り越え係止により前記蓋体(10)の閉姿勢を保持する係止機能部(K)を設けた請求項4に記載の振り出しキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒状あるいは顆粒状の内容物を収容した容器本体の口筒部に装着される振り出しキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の振り出しキャップの従来技術として、例えば特許文献1に示されているものがある。この従来技術の振り出しキャップ100は、
図4の簡略構成図に示すように、容器本体119の口筒部120に組付く組付き筒103を有し、この組付き筒103の上端に連設した頂板104に振り出し口107を開設したキャップ本体102と、このキャップ本体102にヒンジ118により開閉回動可能に結合され、閉姿勢でキャップ本体102を上方から覆う、周壁111と頂壁114からなる薄皿状の蓋体110とを有している。蓋体110の頂壁114の下面には、蓋体110の閉姿勢状態で、振り出し口107内に侵入する挿入片116が垂下状に設けられている。この挿入片116は、湿気などにより内容物が振り出し口107に付着して塞ぐ、所謂「目詰まり」を防止するものとして機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−029475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1に記載された従来技術にあっては、確かに振り出し口107の「目詰まり」を防止することはできるのであるが、挿入片116は振り出し口107をシールするものではないので、閉姿勢状態でキャップ本体102と蓋体110の間に内容物が漏れ出し、この漏れ出した内容物が振り出しキャップ100を汚すばかりでなく、蓋体110を開姿勢にした際に、漏れ出た内容物が周囲を汚す、と云う問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、蓋体により振り出し口を密閉することを技術的課題とし、もって内容物による汚れを発生させない振り出しキャップの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の手段の主たる構成は、
内容物を収容した容器本体の口筒部に密に組付けられ、内容物を振り出す振り出し口を頂板に開設した有頂筒状のキャップ本体と、このキャップ本体を上から覆って組付いた閉姿勢状態で、キャップ本体の振り出し口を密閉する機能部を有する蓋体とを備えていること、
キャップ本体の振り出し口を、頂板に貫通形成された貫通穴と、この貫通穴から上方に拡径する開口テーパー面で構成すること、
振り出し口を密閉する機能部を、貫通穴に侵入する挿入片と、この挿入片を囲んで設けられ、振り出し口の開口テーパー面
の傾斜した表面に下端縁を全周に亘って密接させるシール筒片で構成すること、
にある。
【0007】
振り出しキャップの閉姿勢状態では、キャップ本体の振り出し口の貫通穴に、蓋体の密閉する機能部の挿入片が侵入するので、例え貫通穴の穴面に内容物が湿気などにより付着固化しようとしても、この付着固化しようとする内容物は、蓋体の開閉動作の度に侵入した挿入片により押出されて除去される。
【0008】
また、振り出しキャップの閉姿勢状態では、キャップ本体の振り出し口の開口テーパー面に、蓋体の密閉する機能部のシール筒片が、その下端縁を
傾斜した表面の全周に亘って密接させているので、振り出し口の貫通穴は密閉状態となる。このシール筒片の開口テーパー面への密接は、開口テーパー面の傾斜した表面に対するシール筒片の上方からの当接であるので、シール筒片は無理のない弾性変形により、適正な密接状態となる。
【0009】
本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、密閉する機能部の挿入片とシール筒片を円筒片状に構成すると共に、同軸心状に配置したことを、加えたものである。
【0010】
密閉する機能部の挿入片とシール筒片を円筒片状に構成すると共に、同軸心状に配置したものにあっては、挿入片を中空とすることによる成形材料の省資源化を得ることができ、また開口テーパー面
の傾斜した表面に密接し易いシール筒片の構成を簡単に得ることができる。
【0011】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、振り出し口と、この振り出し口を密閉する機能部との組合わせ物を、複数設けたことを、加えたものである。
【0012】
振り出し口と、この振り出し口を密閉する機能部との組合わせ物を、複数設けたものにあっては、複数の振り出し口が分散した状態で配置されることになるので、内容物を広い範囲に略均等に散布することができる。
【0013】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、キャップ本体に蓋体をヒンジにより回動開閉可能に結合したことを、加えたものである。
【0014】
キャップ本体に蓋体をヒンジにより回動開閉可能に結合したものにあっては、キャップ本体に対する蓋体の結合位置関係が一定しているので、振り出し口と密閉する機能部との組合わせが一定し、これにより密閉する機能部による振り出し口の密閉シールが安定的に達成される。特に、振り出し口と密閉する機能部との組合わせが複数設けられている場合には、各振り出し口と密閉する機能部とを、安定して確実に一対一の関係で対向させることができる。
【0015】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、キャップ本体に蓋体をヒンジにより回動開閉可能に結合した構成を加えたものに対して、ヒンジの反対側に位置するキャップ本体の上端部と、同じくヒンジの反対側に位置する蓋体の端部のそれぞれに、乗り越え係止により蓋体の閉姿勢を保持する係止機能部を設けたことを、加えたものである。
【0016】
乗り越え係止により蓋体の閉姿勢を保持する係止機能部を設けたものにあっては、一定した力でキャップ本体に対して蓋体を閉姿勢に押さえ付けることになり、この押さえ付け力により密閉する機能部のシール筒片は、その下端縁を振り出し口の開口テーパー面に密に弾接させることになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明における振出キャップの主たる構成においては、振り出し口の貫通穴に付着固化しようとする内容物を、密閉する機能部の挿入片が確実に押出して除去するので、振り出し口が内容物の付着により塞がれることがなく、これにより安定して確実な内容物の振り出し動作を得ることができる。
【0018】
また、キャップ本体の振り出し口は、蓋体の密閉する機能部のシール筒片により、適正に密閉されることになると共に、内容物の保管状態で、容器が転倒しても、内容物が漏れ出ることがなく、内容物を安定して収容保持することができる。
【0019】
密閉する機能部の挿入片とシール筒片を円筒片状に構成すると共に、同軸心状に配置したものにあっては、この種の振り出しキャップを安価にかつ簡単に得ることができる。
【0020】
振り出し口と、この振り出し口を密閉する機能部との組合わせ物を、複数設けたものにあっては、複数の振り出し口が分散した状態で配置されることになるので、内容物を広い範囲に略均等に散布することができ、これにより略一定量の内容物を広い範囲に効率よく振り出すことができる。
【0021】
キャップ本体に蓋体をヒンジにより回動開閉可能に結合したものにあっては、振り出し口と密閉する機能部とを、確実に一対一の関係で対向させることができるので、密閉する機能部による振り出し口の安定した密閉動作を得ることができる。
【0022】
乗り越え係止により蓋体の閉姿勢を保持する係止機能部を設けたものにあっては、係止機能部の押さえ付け力により、密閉する機能部のシール筒片による振り出し口の強固で確実な密閉を達成維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態例の、閉姿勢状態の全体縦断側面図である。
【
図2】
図1に示した実施形態例の、振り出し口と密閉する機能部との組合わせの要部拡大縦断面図である。
【
図3】
図1に示した実施形態例の、開姿勢状態の全体平面図である。
【
図4】従来技術の説明に供する、閉姿勢状態の全体縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態例を、
図1〜
図3を参照しながら説明する。
なお、本実施形態例では、
図1に示した閉姿勢状態で、キャップ本体2に対して蓋体10が位置する側を上方とし、その反対側(
図1における下側)を下方とする。また、ヒンジ18が位置する側を後方とし、その反対側(
図1における左側)を前方とする。
【0025】
図1に示すように、振り出しキャップ1は、粉状あるいは顆粒状の内容物を収容する容器本体19に装着されるもので、容器本体19の口筒部20に密に組付けられるキャップ本体2と、このキャップ本体2に設けられた振り出し口7を開閉する蓋体10とから構成されていて、例えばポリプロピレン等の可撓性合成樹脂で成形されている。
【0026】
キャップ本体2は、容器本体19の口筒部20に外嵌して螺合結合する組付き筒3の上端に頂板4を連設した有頂円筒形状をしており、頂板4に複数(図示実施例の場合、4個、
図3参照)の振り出し口7を開設している。頂板4の周端部である組付き筒3との連設部分には、嵌合段部5が組付き筒3側から立上がり状に形成されており、この嵌合段部5の前側部分には、キャップ本体2に対する蓋体10の閉姿勢を保持する係止機能部Kの係止凹部6が形成されている。
【0027】
キャップ本体2の頂板4に開設された振り出し口7(
図2参照)は、頂板4を上下に貫通する丸穴状の貫通穴8と、この貫通穴8から上方に拡径する円錐面状のテーパー面で構成される開口テーパー面9とで構成されている。この振り出し口7の貫通穴8は、容器本体19に収容された内容物の振り出しに適した口径に設定されている。また、振り出し口7の開口テーパー面9の傾斜テーパー角度は、特に特定されるものではないが、密閉する機能部15のシール筒片17との関係を考慮すると、10°〜50°程度の範囲が適していると思われる。
【0028】
蓋体10は、キャップ本体2の嵌合段部5に外嵌する短円筒片状の周壁11の上端に、平板状の頂壁14を連設した伏せた薄皿状の有頂短筒形状をしていて、周壁11の前側の外周面下端には指掛け片13が突設されており、この指掛け片13を設けた周壁11部分の内周面部分には、キャップ本体2の係合凹部6と組合わさって、蓋体10を閉姿勢に保持する係止機能部Kを構成する係止突片12が設けられている。また、周壁11の後側の外周面下端は、ヒンジ18によりキャップ本体2の組付き筒3の後側の外周面上端に連結されている。このヒンジ18は、スナップヒンジ等の反転して姿勢を自己保持する機能を発揮するものとするのが好ましい。さらに、蓋体10の頂壁14の下面には、閉姿勢で振り出し口7に上方から一対一で対向して、振り出し口7と同数(
図3参照)の密閉する機能部15が垂下状に設けられている。
【0029】
蓋体10に設けられた密閉する機能部15(
図2参照)は、蓋体10の閉姿勢状態で、振り出し口7の貫通穴8に侵入する挿入片16(図示実施例の場合、貫通穴8の下端開口位置まで侵入している)と、振り出し口7の開口テーパー面9
の傾斜した表面にその下端縁を密接させるシール筒片17とから構成されている。挿入片16とシール筒片17は、共に円筒状に構成されていると共に、同軸心状に配置されている。挿入片16が円筒状となっているのは、中空の円筒状とすることにより、挿入片16の付着内容物に対する押出し除去作用を低下させることなく、消費合成樹脂材料量を少なくすることができるからである。シール筒片17は、振り出し口7の密閉を達成・維持する主体部分であり、下端縁部を全周に亘って容易に弾性変形して、開口テーパー面9
の傾斜した表面に密に弾接し易いように、やや肉薄に構成されている。
【0030】
次に、振り出しキャップ1の動作を説明する。
振り出しキャップ1を装着した容器本体19からの内容物の振り出しは、蓋体10の指掛け片13に指先を引っ掛けて、係止凹部6と係止突片12からなる係止機能部Kの係止力に逆らって、蓋体10を強引に回動開放して、振り出し口7を開放する。この蓋体10の開放姿勢状態で、容器本体19を倒立状にして内容物を振り出し散布する。内容物の振り出し散布が終わったならば、容器本体19を正立状態に戻してから、蓋体10を閉姿勢に回動させ、係止凹部6と係止突片12を乗り越え係止させて、蓋体10を閉姿勢状態にして、保管状態にする。この際、湿気により内容物の一部が貫通穴8に付着しても、挿入片16の貫通穴8に対する挿入により、付着した内容物が押出されて除去されるので、貫通穴8に内容物が付着して、「目詰まり」を生じることはない。
【0031】
振り出しキャップ1を装着した容器本体19の保管時には、容器本体19の唯一の開口部分である振り出し口7が、密閉する機能部15により確実にかつ強固に密閉されているので、容器本体19内に外部から湿気が侵入する虞はなく、内容物を安全に収納保持することになる。この際、振り出し口7の貫通穴8を密閉している密閉する機能部15のシール筒片17は、係止凹部6と係止突片12とからなる係止機能部Kの係止力である蓋体10の閉姿勢保持力により、開口テーパー面9に押付けられている。このため、シール筒片17の下端縁部は、全周に亘って開口テーパー面9
の傾斜した表面に密に弾接させられることになり、これにより容器本体19の密閉状態は安定して強固に維持することになると共に、保管状態時に振り出し口7から内容物が漏れ出るのを確実に防止する。
【0032】
以上、実施形態例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施形態例に限定されるものではない。例えば、一つの振り出し口7と密閉する機能部15との組合わせ物を、振り出しキャップ1の中央に位置させ、蓋体10をキャップ本体2に対して螺合により着脱させる構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の振り出しキャップは、キャップ本体に開設された振り出し口に対する内容物の付着固化を確実に防止すると共に、振り出し口の密閉を安定して強固に達成維持することができるので、振り出しキャップとして広い分野での適用が可能とすることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 ;振り出しキャップ
2 ;キャップ本体
3 ;組付き筒
4 ;頂板
5 ;嵌合段部
6 ;係止凹部
7 ;振り出し口
8 ;貫通穴
9 ;開口テーパー面
10;蓋体
11;周壁
12;係止突片
13;指掛け片
14;頂壁
15;密閉する機能部
16;挿入片
17;シール筒片
18;ヒンジ
19;容器本体
20;口筒部
K ;係止機能部