(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インバータと、前記インバータに並列に接続された複数の二次電池と、前記複数の二次電池の充放電を制御する充放電制御装置とを具備する複数の蓄電システムに対して充放電を指令する充放電指令装置であって、
前記充放電制御装置は、
前記二次電池それぞれの充電率を取得する充電率取得部と、
前記充電率取得部が取得したすべての二次電池の充電率が所定の充電率範囲以内であるか否かを判定する充電率判定部と、
前記充電率取得部が取得したすべての二次電池の充電率が所定の充電率範囲以内であると判定された場合、充放電指令が示す電流で前記二次電池に充放電を行わせるよう前記インバータを制御する指令追従制御部と、
前記充電率取得部が取得した二次電池の充電率の中に、前記充電率範囲外のものがあると判定された場合、前記二次電池に所定の電圧で充放電を行わせるよう前記インバータを制御する定電圧制御部と、
を具備し、
前記充放電指令装置は、
前記蓄電システムの各々の充放電測定値を取得する充放電測定値取得部と、
前記充放電測定値と充放電指令値との差分を算出する差分算出部と、
前記充放電測定値と充放電指令値との差分の大きさが所定の閾値以下の蓄電システムの充放電指令値に対して蓄電システム全体の充放電測定値と充放電指令値との差分を減少させる補正を行う補正部と、
を具備する充放電指令装置。
インバータ、前記インバータに並列に接続された複数の二次電池、及び、前記複数の二次電池の充放電を制御する充放電制御装置を具備する蓄電システムと、複数の前記蓄電システムに対して充放電を指令する充放電指令装置とを具備し、
前記充放電制御装置は、
前記二次電池それぞれの充電率を取得する充電率取得部と、
前記充電率取得部が取得したすべての二次電池の充電率が所定の充電率範囲以内であるか否かを判定する充電率判定部と、
前記充電率取得部が取得したすべての二次電池の充電率が所定の充電率範囲以内であると判定された場合、充放電指令が示す電流で前記二次電池に充放電を行わせるよう前記インバータを制御する指令追従制御部と、
前記充電率取得部が取得した二次電池の充電率の中に、前記充電率範囲外のものがあると判定された場合、前記二次電池に所定の電圧で充放電を行わせるよう前記インバータを制御する定電圧制御部と、
を具備し、
前記充放電指令装置は、
前記蓄電システムの各々の充放電測定値を取得する充放電測定値取得部と、
前記充放電測定値と充放電指令値との差分を算出する差分算出部と、
前記充放電測定値と充放電指令値との差分の大きさが所定の閾値以下の蓄電システムの充放電指令値に対して蓄電システム全体の充放電測定値と充放電指令値との差分を減少させる補正を行う補正部と、
を具備するシステム。
インバータ、前記インバータに並列に接続された複数の二次電池、及び、前記複数の二次電池の充放電を制御する充放電制御装置を具備する蓄電システムと、複数の前記蓄電システムに対して充放電を指令する充放電指令装置とを具備するシステムが行う処理方法であって、
前記充放電制御装置が、
前記二次電池それぞれの充電率を取得し、
取得したすべての二次電池の充電率が所定の充電率範囲以内であるか否かを判定し、
取得したすべての二次電池の充電率が所定の充電率範囲以内であると判定された場合、充放電指令が示す電流で前記二次電池に充放電を行わせるよう前記インバータを制御し、
取得した二次電池の充電率の中に、前記充電率範囲外のものがあると判定された場合、前記二次電池に所定の電圧で充放電を行わせるよう前記インバータを制御し、
前記充放電指令装置が、
前記蓄電システムの各々の充放電測定値を取得し、
前記充放電測定値と充放電指令値との差分を算出し、
前記充放電測定値と充放電指令値との差分の大きさが所定の閾値以下の蓄電システムの充放電指令値に対して蓄電システム全体の充放電測定値と充放電指令値との差分を減少させる補正を行う、
処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本発明の一実施形態における蓄電設備が用いられる電力系統の例を示す説明図である。同図において、電力系統9には、蓄電設備1の他に発電所911や、大規模自然エネルギー発電設備912や、負荷921が接続されている。
【0019】
発電所911は、例えば石炭発電、石油発電またはLNG発電など、燃料エネルギーを利用して発電を行う発電設備である。
大規模自然エネルギー発電設備912は、例えば太陽光発電、太陽熱発電または風力発電など、自然エネルギーを利用して発電を行う発電設備である。大規模自然エネルギー発電設備912の発電量は日射量や風力などの影響を受けて変動する。
負荷921は、例えば工場施設、商業施設または住宅など、電力を消費する設備である。
【0020】
蓄電設備1は大規模自然エネルギー発電設備912の出力変動を平滑化する。ここで、大規模自然エネルギー発電設備912の出力変動に対応するために、発電所911の出力を調整することも考えられる。しかしながら、一般に、火力発電設備等の発電量を変化させるのには時間を要し、大規模自然エネルギー発電設備912の出力変動に対応し切れない可能性がある。そこで、蓄電設備1が発電所911の余剰電力を蓄電し、電力不足時に放電することで、電力の平滑化を行う。
【0021】
蓄電設備1には、複数の蓄電システム10と充放電指令装置20とが含まれている。蓄電システム10の各々が、充放電指令装置20からの充放電指令に従って充放電を行うことで、電力の平滑化を行う。充放電指令装置20は、例えばコンピュータがプログラムを実行することで実現される。
【0022】
なお、電力系統9に接続されている大規模自然エネルギー発電設備912や、負荷921の数は1つ以上であればよい。また、電力系統9に接続されている発電所911の数は0以上であればよい。すなわち、電力系統9に発電所911が接続されていない構成であってもよい。また、蓄電設備1に含まれる蓄電システムの数は、複数であればよい。
【0023】
図2は、蓄電システム10の装置構成を示す概略構成図である。蓄電システム10は、二次電池11と、インバータ12と、充放電制御装置13とを具備する。
蓄電システム10の具備するインバータ12の数は複数であればよい。また、二次電池11の数については、並列に接続された複数の二次電池11が、インバータ12の各々に接続されていればよい。
図2に示すように、直列接続された二次電池11が並列接続されて、インバータ12に接続されていてもよい。
【0024】
二次電池11は、インバータ12に並列に接続され(二次電池11同士が並列接続されてインバータ12に接続され)、インバータ12の制御に従って充放電を行う。
インバータ12は、電力系統9と二次電池11との間に設けられ、電力系統9側の交流電流と二次電池11側の直流電流との交流/直流変換(AC(Alternating Current)/DC(Direct Current)変換)を行う。また、インバータ12は、充放電制御装置13の制御に従って、二次電池11に充放電を行わせる。インバータ12が二次電池11に行わせる充放電には、充放電制御装置13からの指令に従う指令追従モードと、定電圧で充電または放電を行う定電圧(Constant Voltage;CV)モードとがある。
【0025】
充放電制御装置13は、充放電指令装置20(
図1)からの指令に基づいて、インバータ12の各々に対して二次電池11の充放電の指令を出力する。充放電制御装置13は、例えばコンピュータがプログラムを実行することで実現される。
図3は、充放電制御装置13の機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、充放電制御装置13は、通信部131と、充放電切替判定部132と、充電率判定部133と、指令追従制御部134と、定電圧制御部135と、レート制御部136と、レートリミッタ記憶部137とを具備する。
【0026】
通信部131は、他機器と通信を行う。特に、通信部131は、充放電指令装置20(
図1)から充放電指令(例えば、蓄電システム10の出力電力の指令、または、蓄電システム10の出力電流の指令)を受信する。また、通信部131は、二次電池11の各々からSOC(state Of Charge、充電率)等の電池状態情報を受信する。通信部131は、充電率取得部の一例に該当する。また、通信部131は、インバータ12に対して二次電池11の充放電指令を送信する。
【0027】
充放電切替判定部132は、二次電池11に対する充放電指令が充電から放電へ、または放電から充電へ切り替わったか否かを判定する。
具体的には、充放電切替判定部132は、まず、通信部131が充放電指令装置20から受信した充放電指令を取得し、当該充放電指令が充電指令か放電指令かを判定する。充放電切替判定部132は、充電指令または放電指令の判定結果を示す情報と指令値とを充電率判定部133へ出力する。
【0028】
また、充放電切替判定部132は、充電指令または放電指令の判定結果を記憶しておき、前回の判定結果と今回の判定結果とを比較することで、二次電池11に対する充放電指令が充電から放電へ、または放電から充電へ切り替わったか否かを判定する。充放電切替判定部132は、二次電池11に対する充放電指令が充電から放電へ、または放電から充電へ切り替わったか否かの判定結果をレート制御部136へ出力する。
【0029】
充電率判定部133は、通信部131が取得(受信)した全ての二次電池11の充電率が所定の充電率範囲以内であるか否かを判定する。具体的には、充電率判定部133は、以下の閾値を予め記憶しており、通信部131が取得した二次電池11の各々の充電率と閾値とを比較する。
A:充電率上限値
B:充電モード切替閾値
C:放電モード切替閾値
D:充電率下限値
充電率判定部133は、充電指令または放電指令の区別を示す情報と指令値とを、判定結果に基づいて指令追従制御部134または定電圧制御部135へ出力する。
【0030】
指令追従制御部134は、通信部131が取得(受信)した全ての二次電池11の充電率が所定の充電率範囲以内であると充電率判定部133が判定した場合、充放電指令装置20からの充放電指令が示す電流を二次電池11から出力させるようインバータ12を制御する。
【0031】
より具体的には、充電率判定部133は、充電時において全ての二次電池11の充電率が充電モード切替閾値B未満であると判定した場合、充電指令を示す情報と指令値とを指令追従制御部134へ出力する。また、充電率判定部133は、放電時において全ての二次電池11の充電率が放電モード切替閾値Cより大きいと判定した場合、放電指令を示す情報と指令値とを指令追従制御部134へ出力する。
【0032】
そして、指令追従制御部134は、充電指令または放電指令の区別を示す情報と指令値とを充電率判定部133から取得した場合、得られた指令値(充放電指令装置20からの充放電指令値)に従ってインバータ12の各々に対する充放電指令(例えば、インバータ12からの出力電力の指令)を生成する。そして、指令追従制御部134は、生成した充放電指令を、通信部131を介して各インバータ12へ送信することで、インバータ12を制御する。
【0033】
定電圧制御部135は、通信部131が取得した二次電池11の充電率の中に、所定の充電率範囲を超えるものがあると充電率判定部133が判定した場合、二次電池11に所定の電圧をかけるよう前記インバータ12を制御する。
より具体的には、充電率判定部133は、充電時において充電率が充電モード切替閾値B以上の二次電池11ありと判定した場合、原則的には、充電指令を示す情報と指令値とを定電圧制御部135へ出力する。また、充電率判定部133は、放電時において充電率が充電モード切替閾値C以下の二次電池11ありと判定した場合、原則的には、放電指令を示す情報と指令値とを定電圧制御部135へ出力する。
【0034】
そして、定電圧制御部135は、充電指令示す情報を充電率判定部133から取得した場合、予め設定されている充電電圧値にて二次電池11に定電圧充電を行わせる指令を、通信部131を介してインバータ12の各々へ送信する。また、定電圧制御部135は、放電指令示す情報を充電率判定部133から取得した場合、予め設定されている放電電圧値にて二次電池11に定電圧放電を行わせる指令を、通信部131を介してインバータ12の各々へ送信する。
【0035】
レート制御部136は、充放電指令が充電から放電へ、または、放電から充電へ切り替わったと充放電切替判定部132が判定した場合、充放電電流の変化率が、予め定められた変化率の範囲内になるように、インバータ12による二次電池11の充放電を制御する。
具体的には、レート制御部136は、指令追従制御部134または定電圧制御部135から出力される充放電指令値を記憶しておく。そして、レート制御部136は、指令追従制御部134または定電圧制御部135から出力された今回の充放電指令値から前回の充放電指令値(例えば電力指令値)を減算して充放電指令値の変化量を算出する。そして、レート制御部136は、算出した変化量と、予め設定されている変化量の許容範囲とを比較し、変化量が許容値上限よりも大きいと判定した場合は、許容値上限に制限する。同様に、変化量が許容値下限(許容下限値<0)よりも小さいと判定した場合、レート制御部136は、許容値下限に制限する。
【0036】
一方、充放電指令が充電から放電へ、または、放電から充電へ切り替わっていないと充放電切替判定部132が判定した場合、レート制御部136は、指令追従制御部134または定電圧制御部135からの指令値を、そのまま通信部131へ出力する。
従って、指令追従制御部134は、充放電切替判定部132によって充放電指令が切り替わっていないと判定された場合、充放電指令が示す電流を二次電池11から出力させるようインバータ12を制御する。
【0037】
レート制御部136は、充放電電流の変化率を制限することで、インバータ12の停止を防止する。ここで、インバータ12には、系統異常検知システムが設けられており、系統異常を検知するとインバータ12の出力を一時的に(例えば5秒間)停止させる。また、蓄電システム10の規模が大きいことから、蓄電システム10の出力変動が電力系統9の電圧へ与える影響は大きい。そのため、充放電制御装置13がインバータ12へ送信する充放電指令が、大規模自然エネルギー発電設備912(
図1)の出力急変などの影響で充電から放電、または、放電から充電へ切り替わる際、系統異常検知システムが動作する可能性がある。系統異常検知システムが動作してインバータ12からの出力が停止されると、電力系統9の電力変動への対応(平滑化)が遅れてしまう。
【0038】
そこで、充放電指令装置20からの指令にレート制御部136がレートリミッタをかけ、蓄電システム10の出力電力の急変を抑制する。これにより、系統電圧の急変を回避することができ、系統異常検知システムの動作によるインバータ12の出力停止を回避し得る。なお、レートリミッタの単位はワット/秒などとなる。
また、レート制御部136は、充放電の切替時以外は指令値に制限を設けず、通信部131を介してそのままインバータ12へ送信する。これにより、蓄電システム10は、大規模自然エネルギー発電設備912の出力変動など、電力系統9における電力需給の変動に迅速に対応することができる。
【0039】
レートリミッタ記憶部137は、電力系統9に接続される各機器の状態と、レートリミッタの要否および必要な場合はレートリミッタ値とを対応付けて予め記憶している。
レートリミッタ記憶部137の記憶するデータは例えばシミュレーションにて算出される。具体的には、電力潮流計算(シミュレーション)により、インバータ12の系統異常検知システムが動作する系統条件、および、系統異常検知システムの動作を回避するためのレートリミッタ設定値を算出しておく。
【0040】
ここでいう系統条件とは、例えば、発電所911の発電量や、負荷921としての工場の電力消費量などである。また、ここでいう電力潮流計算とは、発電機母線や、送電線や、負荷母線における電圧や電流の振幅および位相や、有効電力や無効電力を求める計算である。電力潮流計算は、例えば電力系統の運用計画等を目的に行われる。
【0041】
図4は、充放電指令装置20の機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、充放電指令装置20は、通信部201と、充放電指令生成部202と、差分算出部203と、差分判定部204と、補正部205とを具備する。
充放電指令装置20は、蓄電システム10の各々に対して充放電を指令する。
通信部201は、他機器と通信を行う。特に、通信部201は、蓄電システム10の各々から、当該蓄電システム10の充放電測定値を取得(受信)する。通信部201は、充放電測定値取得部の一例に該当する。
【0042】
充放電指令生成部202は、蓄電システム10の各々に対する充放電指令(例えば電力指令、または、電流指令)を生成する。例えば、充放電指令生成部202は、自動生成した運転計画またはオペレータによる入力を受けた運転計画に基づいて、蓄電システム10の各々に対する充放電指令を算出する。
差分算出部203は、蓄電システム10毎に、通信部201が受信した充放電測定値と充放電指令生成部202が生成した充放電指令値との差分を算出する。
差分判定部204は、蓄電システム10毎に、差分算出部203が算出した差分と所定の閾値とを比較し、差分の大きさが閾値以下の蓄電システム10を検出する。差分判定部204が検出する蓄電システム10は、指令値への追従が良好な蓄電システム10と考えられる。
【0043】
補正部205は、充放電測定値と充放電指令値との差分の大きさが所定の閾値以下の蓄電システム10の充放電指令値に対して蓄電システム全体の充放電測定値と充放電指令値との差分を減少させる補正を行う。
具体的には、補正部205は、差分算出部203が算出した蓄電システム10毎の差分を合計して補正目標値とする。そして、補正部205は、得られた補正目標値を、差分判定部204が検出した蓄電システム10に分配する。
【0044】
補正部205が補正目標値を蓄電システム10に分配する方法として、様々な方法を用いることができる。例えば、蓄電システム10に優先順位が付されており、補正部205が、優先順位の高い蓄電システム10から順に補正目標値を分配するようにしてもよい。あるいは、補正部205が、蓄電システム10毎の充放電可能残量を取得し、充放電可能残量の割合に応じて補正目標値を分配するようにしてもよい。
なお、補正によるオーバーシュートを避けるため、補正部205が、蓄電システム10毎の差分の合計に0.9を乗算するなど、補正目標値の大きさを小さめに設定するようにしてもよい。
【0045】
次に、
図5〜
図8を参照して、充放電制御装置13が行う充放電モードの切替について説明する。
図5は、二次電池11の起電力と内部抵抗との等価回路を示す説明図である。同図において、E11はセル電圧を示し、E21は、セル開放電圧を示す。また、R11は内部抵抗を示し、E22は、内部抵抗による電圧降下を示す。I11は、セル電流を示す。
【0046】
セル電圧E11は、セル開放電圧E21と電圧降下E22の重ね合わせ(充電時は合計、放電時は差分)となる。例えば、蓄電システム10の停止時において、セル開放電圧=セル電圧=3.5ボルト(V)であり、充電時において、セル開放電圧=3.5ボルト、セル電圧=4ボルトの場合、電圧降下は0.5ボルトとなる。
【0047】
ここで、蓄電システム10が
図5で示すような二次電池11を複数備え、それら複数の二次電池11を充電する場合において、複数のうち2つの二次電池11それぞれの充電状況について説明する。説明を分かり易くするため、以下の説明では、2つの二次電池11のセル電圧が同じであるとする。また、2つの二次電池11の充電率(電池開放電圧)が初期状態において同じであり、電池セルの劣化状況(内部抵抗)が異なるものとして以下説明する。
このように、2つの二次電池のセル電圧E11が同じであり、セル開放電圧E21が同じ(従って、電圧降下が同じ)場合、上記2つの二次電池11が並列に接続されて上記のようにセル電圧が同じであるとすると、内部抵抗R11が小さい電池セルを有する二次電池11に電流が多く流れる。
例えば、2つのうち一方の二次電池11のセル電圧E11が4.0ボルトで、セル開放電圧E21が3.5ボルトの場合、電圧降下E22は0.5ボルトとなる。当該一方の二次電池11の内部抵抗が10ミリオーム(mΩ)の場合、セル電流I11は50アンペア(A)になる。これに対し、2つのうち他方の二次電池11の電圧降下E22が上記と同じく0.5ボルトであり、内部抵抗が5ミリオームである場合、当該他方の二次電池11のセル電流I11は100アンペアになる。
【0048】
指令追従モードでは、上記のようなセル電流の違いにより、内部抵抗が小さい電池に電流が多く流れて充電が進む。
これに対して、後述するように、定電圧モードでは、内部抵抗が大きい電池に電流が多く流れて充電が進む。従って、並列に接続された二次電池11を備える蓄電システム10が指令追従モードから定電圧モードに切り替えることで、内部抵抗が小さい電池セルを有する二次電池11の充電が進む状態から、内部抵抗が大きい電池セルを有する二次電池の充電が進む状態へと切り替えることができる。このような切替の処理を行うことにより、蓄電システム10は、内部抵抗が小さい電池セルを有する二次電池11と内部抵抗が大きい電池セルを有する二次電池11との充電率のばらつきを低減させることができる。
【0049】
次に、2つの二次電池11内部電池セルの劣化状態(内部抵抗)が同じ状況であり、これらの電池セルの充電率が異なることによりセル開放電圧が異なる状況である場合を想定して各二次電池11の充電状況を、以下、説明する。
このような状況においては、セル電圧E11および内部抵抗R11が同じで、セル開放電圧E21が異なるため、セル開放電圧の小さい電池に電流が多く流れる。
例えば、2つのうち一方の二次電池11のセル電圧E11が4.0ボルトで、セル開放電圧E21が3.5ボルトの場合、電圧降下E22は0.5ボルトとなる。当該一方の二次電池11の内部抵抗R11が10ミリオームである場合、セル電流I11は、50アンペアとなる。
一方、2つのうち他方の二次電池11のセル電圧E11が4.0ボルトで、セル開放電圧E21が3.9ボルトの場合、電圧降下E22は0.1ボルトとなる。当該他方の二次電池11の内部抵抗R11が10ミリオームである場合、セル電流I11は、10アンペアとなる。
このように、二次電池11の内部抵抗が同じ場合においては、定電圧モードの充電により、充電率の小さい電池セル(セル開放電圧の小さい電池セル)を有する二次電池11に対して、充電率の大きい電池セル(セル開放電圧の大きい電池セル)を有する二次電池11よりも多くの電流が流れ、充電率の差が小さくなる。従って、蓄電システム10が定電圧モードで充電を行うことで、電池間の充電率のばらつきを低減させることができる。
【0050】
図6は、指令追従モード(充放電指令装置20からの充放電指令に従うモード)で充電する場合に二次電池11に流れる電流の例を示す説明図である。同図の例では、内部抵抗の大きい二次電池11aと、内部抵抗の小さい二次電池11bとが示されている。
一般には、抵抗が小さいほど電流が流れやすく、指令追従モードにおいても、抵抗の小さい列(二次電池11bを含む列)の電流が大きくなる。仮に、満充電まで指令追従モードを継続した場合、抵抗の小さい列が先に満充電となり、他の列は満充電に至らないまま充電が中止される。
図6の例では、二次電池11bを含む列の充電率が上限90パーセント(%)に達したのに対し、二次電池11aのみの列の充電率は85パーセントに留まっている。
このように、充電率にばらつきが生じる結果、充電や放電を充分に行うことができず、電力系統9の電力変動に十分対応できない可能性がある。
【0051】
図7は、指令追従モードから定電圧モード(インバータ12の直流電圧を一定にするモード)に切り替えて充電する場合に二次電池11に流れる電流の例を示す説明図である。
図6の場合と同様、
図7の例では、内部抵抗の大きい二次電池11aと、内部抵抗の小さい二次電池11bとが示されている。
一般に、充電率(SOC)が大きいほどセル開放電圧が高くなる関係にある。指令追従モードから定電圧モードに切り替えた場合、抵抗の小さい列(二次電池11bを含む列)は、指令追従モードで電流が大きく充電率が高くなっており(
図7の例では88パーセント)、セル開放電圧が高い。その結果、抵抗の小さい列に流れる電流は小さくなり、充電の進行が遅くなる。
一方、抵抗の小さい列(二次電池11bを含む列)は、指令追従モードで電流が小さく充電率が低くなっており(
図7の例では86パーセント)、セル開放電圧が低い。その結果、抵抗の大きい列に流れる電流は大きくなり、充電の進行が速くなる。
【0052】
このように、指令追従モードから定電圧モードに切り替えることで、充電率の低い二次電池11に流れる電流が大きくなり、充電率のばらつきが低減される。特に、内部抵抗の小さいセル(
図7の例では二次電池11b)に流れる電流を小さくして当該セルの充電率が上限に到達するのを遅らせることができる。これにより、内部抵抗の小さいセルの充電率が上限に達したときに、内部抵抗の大きいセル(
図7の例では二次電池11a)の充電率も上限に近付けることができる。
【0053】
図8は、充放電制御装置13が充放電のモードを選択する処理手順の例を示す説明図である。
ステップS111において、充放電切替判定部132は、充放電指令装置20から運転指令を受けているか否かを判定する。運転指令を受けていると判定した場合(ステップS111:Yes)、ステップS112へ進む。一方、運転指令を受けていないと判定した場合(ステップS111:No)、運転モードとして、蓄電システムの停止を選択する(ステップS151)。蓄電システムの停止を選択した場合、充放電制御装置13は、インバータ12を停止させる。これにより、蓄電システム10は充放電を停止し、電力を入出力しなくなる。
【0054】
ステップS112において、充放電切替判定部132は、充放電指令装置20から充電指令を受けているか否かを判定する。充電指令を受けていると判定した場合(ステップS112:Yes)、ステップS113へ進む。一方、充電指令を受けていない(放電指令を受けている)と判定した場合(ステップS112:No)、ステップS131へ進む。
【0055】
ステップS113において、充電率判定部133は、全ての二次電池11の充電率が充電率上限値A未満か否かを判定する。全ての二次電池11の充電率が充電率上限値A未満であると判定した場合(ステップS113:Yes)、ステップS114へ進む。一方、充電率が充電率上限値A以上の二次電池11ありと判定した場合(ステップS113:No)、運転モードとして、蓄電システムの停止を選択する(ステップS151)。
【0056】
ステップS114において、充電率判定部133は、全ての二次電池11の充電率が充電モード切替閾値B未満か否かを判定する。全ての二次電池11の充電率が充電モード切替閾値B未満であると判定した場合(ステップS114:Yes)、運転モードとして指令追従モードを選択する(ステップS115)。一方、充電率が充電モード切替閾値B以上の二次電池11ありと判定した場合(ステップS114:No)、ステップS121へ進む。
【0057】
ステップS121において、充電率判定部133は、定電圧モードにおける充電電力が充電指令値より大きいか否かを判定する。定電圧モードにおける充電電力が充電指令値より大きいと判定した場合(ステップS121:Yes)、運転モードとして指令追従モードを選択する(ステップS115)。この場合、定電圧モードに設定すると充電電力が充電指令値を超えてしまうからである。一方、定電圧モードにおける充電電力が充電指令値以下であると判定した場合(ステップS121:No)、運転モードとして定電圧モードを選択する。
【0058】
ステップS131において、充電率判定部133は、全ての二次電池11の充電率が充電率下限値Dより大きいか否かを判定する。全ての二次電池11の充電率が充電率下限値Dより大きいと判定した場合(ステップS131:Yes)、ステップS132へ進む。一方、充電率が充電率下限値D以下の二次電池11ありと判定した場合(ステップS131:No)、運転モードとして、蓄電システムの停止を選択する(ステップS151)。
【0059】
ステップS132において、充電率判定部133は、全ての二次電池11の充電率が放電モード切替閾値Cより大きいか否かを判定する。全ての二次電池11の充電率が放電モード切替閾値Cより大きいと判定した場合(ステップS132:Yes)、運転モードとして指令追従モードを選択する(ステップS133)。一方、充電率が放電モード切替閾値C以下の二次電池11ありと判定した場合(ステップS132:No)、ステップS141へ進む。
【0060】
ステップS141において、充電率判定部133は、定電圧モードにおける放電電力が放電指令値より大きいか否かを判定する。定電圧モードにおける放電電力が放電指令値より大きいと判定した場合(ステップS141:Yes)、運転モードとして指令追従モードを選択する(ステップS133)。この場合、定電圧モードに設定すると放電電力が放電指令値を超えてしまうからである。一方、定電圧モードにおける放電電力が放電指令値以下であると判定した場合(ステップS141:No)、運転モードとして定電圧モードを選択する。
【0061】
次に、
図9を参照して、充放電制御装置13が行う充放電へのレートリミッタ設定について説明する。
図9は、レート制御部136がレートリミッタの要否やレートリミッタ値の設定を行う処理手順の例を示す説明図である。レート制御部136は、充放電切替判定部132が充放電の切替を検出すると、同図の処理を行う。
【0062】
ステップS211において、通信部131は、電力系統9の状態情報を取得する。例えば、レート制御部136が、電力系統9の状態を、電力系統9を管理するEMS(Energy Management System、系統管理システム)へ通信部131を介して問合せることで、電力系統9の状態情報を取得する。ステップS211の後、ステップS212へ進む。
【0063】
ステップS212において、レート制御部136は、ステップS211で得られた状態情報に対応する情報を、レートリミッタ記憶部137から読み出し、レートリミッタの要否を判定する。レートリミッタが必要と判定した場合(ステップS212:Yes)、ステップS213へ進む。一方、レートリミッタが不要と判定した場合は、レートリミッタ不使用に設定する(ステップS215)。この場合、レート制御部136は、指令追従制御部134または定電圧制御部135から出力される充放電指令を、そのまま通信部131へ出力する。
【0064】
ステップS213において、レート制御部136は、ステップS212でレートリミッタ記憶部137から読み出したデータに基づいてリミッタレート(レートリミッタの設定値)を設定し、また、レートリミッタ使用に設定する(ステップS214)。この場合、レート制御部136は、所定時間(例えば5秒間)指令追従制御部134または定電圧制御部135から出力される充放電指令に対して、変化量の制限を行う。
【0065】
以上のように、通信部131が取得したすべての二次電池11の充電率が所定の充電率範囲以内であると判定された場合、指令追従制御部134は、充放電指令が示す電流を二次電池11から出力させるようインバータ12を制御する。一方、通信部131が取得した二次電池の充電率の中に、所定の充電率範囲を超えるものがあると判定された場合、定電圧制御部135は、二次電池11に所定の電圧をかけるようインバータ12を制御する。
【0066】
これにより、
図5〜7を参照して説明したように、蓄電システム10では、二次電池11間の充電率のばらつきを低減させて充放電量を大きくすることができる。特に、大規模太陽光発電や大規模風力発電所に応じで二次電池11の個数が多い場合でも、蓄電システム10では、二次電池11間の充電率のばらつきを低減させて充放電量を大きくすることができる。この点において、蓄電システム10は、大規模太陽光発電や大規模風力発電所に対応可能である。
また、充放電制御装置13は、インバータ12に対して充放電を指令すればよく、個々の二次電池11の充放電を制御する必要はない。この点において、充放電制御装置13の負荷が小さい。
このように、蓄電システム10によれば、充放電制御装置13の負荷が比較的小さく、かつ、大規模太陽光発電や大規模風力発電所に対応可能である。
【0067】
また、充放電切替判定部132は、二次電池11に対する充放電指令が充電から放電へ、または放電から充電へ切り替わったか否かを判定する。そして、充放電指令装置20からの充放電指令が切り替わったと判定された場合、レート制御部136が、充放電電流の変化率が、予め定められた変化率の範囲内になるように、インバータ12による二次電池11の充放電を制御する。
一方、充放電指令が切り替わっていないと判定された場合、指令追従制御部134が、充放電指令が示す電流を二次電池11から出力させるようインバータ12を制御する。
【0068】
これにより、蓄電システム10の充放電の変動が系統電圧に与える影響によりインバータ12の系統異常検知システムが動作して出力を停止してしまうことを防止できる。
ここで、蓄電システム10の規模が大きい場合、蓄電システム10が入力または出力する電力の変動が系統電圧(電力系統9(
図1)の電圧)に与える影響が大きい。特に、蓄電システム10の充放電が切り替わる場合、電力の入力と出力とが切り替わるため、変動幅が大きくなる。例えば、充放電制御装置13がインバータ12へ送信する充放電指令が、大規模自然エネルギー発電設備912(
図1)の出力急変などの影響で充電から放電、または、放電から充電へ切り替わる際、系統異常検知システムが動作する可能性がある。系統異常検知システムが動作してインバータ12からの出力が停止されると、電力系統9の電力変動への対応(平滑化)が遅れてしまう。
【0069】
これに対し、充放電制御装置13が、充放電切替の際の電流変動を制限することで、系統異常検知システムの動作を防止し、もって、電力系統9の電力変動への対応(平滑化)の遅れを防止することができる。
また、充放電制御装置13は、インバータ12に対して充放電を指令すればよく、個々の二次電池11の充放電を制御する必要はない。この点において、充放電制御装置13の負荷が小さい。
このように、蓄電システム10によれば、充放電制御装置13の負荷が比較的小さく、かつ、大規模太陽光発電や大規模風力発電所に対応可能である。
【0070】
また、充放電指令装置20(
図1)において、差分算出部203は、蓄電システム10の各々の充放電測定値と充放電指令値との差分を算出する。そして、補正部205は、充放電測定値と充放電指令値との差分の大きさが所定の閾値以下の蓄電システム10の充放電指令値に対して蓄電システム全体の充放電測定値と充放電指令値との差分を減少させる補正を行う。
これにより、充放電指令装置20は、指令値への追従が良好と考えられる蓄電システム10を用いて、放電測定値と充放電指令値との差分を補正することができ、精度よく補正を行うことができる。
【0071】
なお、充放電制御装置13や充放電指令装置20の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0072】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。