(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206782
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】人工涙液の組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/353 20060101AFI20170925BHJP
A61P 27/04 20060101ALI20170925BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20170925BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20170925BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
A61K31/353
A61P27/04
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/36
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-92439(P2016-92439)
(22)【出願日】2016年5月2日
(65)【公開番号】特開2016-210773(P2016-210773A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2016年5月9日
(31)【優先権主張番号】104113817
(32)【優先日】2015年4月30日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】516131658
【氏名又は名称】國家衛生研究院
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】林峯輝
(72)【発明者】
【氏名】方旭偉
(72)【発明者】
【氏名】曽靖▲リ▼
(72)【発明者】
【氏名】洪雅容
【審査官】
小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−256519(JP,A)
【文献】
Graefe’s Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology,2015年 3月,Vol.253,No.3,p425−430
【文献】
Current Eye Research,2014年,Vol.39,No.9,p871−878
【文献】
Journal of Ocular Pharmacology and Therapeutics,2013年,Vol.29,No.7,p681−687
【文献】
Cornea,2012年,Vol.31,No.11,p1235−1239
【文献】
Cornea,2011年,Vol.30,No.12,p1465−1472
【文献】
Molecular Vision,2011年,Vol.17,p533−542
【文献】
なみだロートドライアイ,2013年 9月 4日,[online],[平成29年1月26日検索],インターネット,URL,https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/medley-medicine/otcpdf/K00370265028_20130904.pdf
【文献】
ロート製薬の目薬,2009年 3月,[online],[平成29年1月26日検索],インターネット,URL,https://prw.kyodonews.jp/prwfile/release/M000357/200903021456/attach/Roho-Eyedrops%20History.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/353
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗炎症と抗酸化の効果を有する物質と、液体の粘性を向上できる物質と、人工涙液とを含むことを特徴とする中度眼球乾燥症の治療のための人工涙液の組成物であって、前記抗炎症と抗酸化の効果を有する物質として没食子酸エピガロカテキン(EGCG)を濃度1μg/mlから200μg/mlまでの範囲で含み、前記液体の粘性を向上できる物質としてヒアルロン酸(HA)を、人工涙液として塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及びリン酸二水素ナトリウムを、含むことを特徴とする人工涙液の組成物。
【請求項2】
前記没食子酸エピガロカテキン(EGCG)は、緑茶におけるカテキンの成分であることを特徴とする請求項1に記載の人工涙液の組成物。
【請求項3】
前記ヒアルロン酸(HA)の使用濃度は、0.01vol%から0.3vol%までの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の人工涙液の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保湿効果且つ抗炎症と抗酸化の効果を有する人工涙液の組成物に関するものであり、その組成物は、目玉表面の炎症である中度の眼球乾燥症の治療に用いられる。
【背景技術】
【0002】
目は、人間に対して魂の窓であり、現代人は、目を大事にしてなく、且つ空調の環境に長時間に滞在し、テレビやコンピュータを長時間に使用し、コンタクトレンズを長時間に装着することから、目が疲れやすいことで病気を発生してしまう。眼球乾燥症は、よく発生される病の一つである。
【0003】
眼球乾燥症による症状は、三つに分けている。それは、軽度、中度および重度である。
【0004】
眼球乾燥症の治療は、症状の程度に基づいて異なる治療が行われる。現在の治療方式は、下記の三つである。
1.軽度:目の渋さを緩和するために人工涙液をよく使用され、たまにはペーストの目薬によって治療を行う場合もある。
2.中度:目玉の表面に炎症の発生に伴う発生するから、抗炎症の目薬と合わせて人工類液を使用することにより治療を行い、侵入式の手術(例えば、涙小点閉鎖手術)も行われることにより、涙の流失を減少し、目の渋さを緩和する効果に達成できる。
3.重度:瞼縁の縫合手術又は唾液腺移植手術などの手術しか行われなく、目が渋くなくて緩和の作用に達成する。
【0005】
更に、正常状態で人間の眼部を蛍光の染めにより、目玉表面には澄みで異物がなく、一方、眼球乾燥症の患者は、目玉表面の炎症によって角膜の細胞を損傷するため、蛍光の染めで染め剤が損傷した細胞に進入して、混沌やスポットが目玉表面に発生されてしまう場合がある。
【0006】
市販の人工類液の成分は、表1に示される。
【0007】
【表1】
【0008】
没食子酸エピガロカテキン(Epigallocatechin gallate, EGCG)は、緑茶においてカテキンをもっとも多いの成分であり、それの抗炎症および抗酸化の効果が証明され、且つ幾つの炎症因子を抑制する効果を有している(Megan E. Cavet,et al., Molecular VisionBiology and Genetics in Vision Research, 2011 February, 17:533−543)。
【0009】
ヒアルロン酸(Hyaluronic acid, HA)は、天然のバイオ材料である細胞外の物質であり、研究によって傷口の回復や炎症に対しても重要な役割を示している(MInoue and C Katakami, Investigative Ophthalmology & Visual Science, 1993 June, 34(7):2313−2315)。そして、目の渋いに対する治療にもよく使用され、その原因は、ヒアルロン酸が液体の粘りさを向上することにより、液体が目玉表面に滞在の時間を伸びることができるためである(Papa V, Aragona P, Russo S, et al. Ophthalmologica 2001;215:124-7、Stern ME, Beuerman RW, Fox RI, et al. Cornea 1998;17:584-9.、Mengher LS, Pandher KS, Bron AJ., et al. Br J Ophthalmol 1986;70:422-7)。ヒアルロン酸が含まれる市販の人工涙液が表2に示される。
【0010】
【表2】
【0011】
市販の人工涙液は、前記表1と表2に示されるが、それは塩類の水溶液であり、炎症を治療するレシピが含まれていないため、その効果は、目の渋さを緩和するだけである。更に、市販の一部の人工涙液には、防腐剤が含まれているため、眼球乾燥症の症状がひどくなる可能性がある(Ankita S. Bhavsar, et al., Oman J Ophthalmol. 2011 May−Aug; 4(2): 50-56)。
【0012】
中度の眼球乾燥症を治療する方式は、患者に抗炎症効果を有する目薬や人工涙液を与え、又は配合に使用されることもある。しかし、現代人は生活の忙しいため、一つの目薬を使用したら、他の一つの目薬の使用を忘れてしまうことがあり、ひいては治療の時間や効果に悪影響を与える。更に。ペーストの目薬を使用すると、患者の視線が不明になる恐れがあるので、その動きに対して非常に不便である。
【0013】
更に、市販の人工涙液や点眼液は目玉表面に点眼した5分間ほど、目玉表面の蒸発や鼻涙管の溢れによって大部分の目薬が目玉表面に残していない。医者は、目の病を治療する目薬を患者に与える時、1日3〜4回、一つを使用したら、5分間後、他の一つを使用することを告知している。しかし、上述のように、生活の忙しいため、二つ以上の目薬を使用する場合、複数回で目薬の使用のは、使用者に対して非常に不便であるため、定時、定量の使用を忘れてしまい、ひいては治療の効果と時間に悪影響に与える恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明者は、前記従来技術に存在する欠点に鑑み、前記欠点を解決するために、治療時間を短縮して、保湿効果を有し、且つ抗炎症と抗酸化の効果を有する人工涙液の組成物を提供することにより、目薬の使用回数を減少するとともに、治療を有効に行うことができる。
【0015】
本発明の目的は、目玉表面に炎症がある中度眼球乾燥症を治療するために、保湿効果且つ抗炎症と抗酸化の効果を有する人工涙液の組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明は、抗炎症と抗酸化の効果を有する物質、例えば没食子酸エピガロカテキン(EGCG)と、液体の粘りさを向上できる物質、例えばヒアルロン酸(HA)と、人工涙液とを含むことを特徴とする人工涙液の組成物を提供する。
【0017】
本発明のほかの目的は、目玉表面に炎症がある中度眼球乾燥症の治療時間を短縮するとともに、目薬の使用回数を減少するために、目玉表面に長時間に滞在可能の人工涙液の組成物を提供する。
【0018】
上述の目的を達成するために、本発明は、液体の粘りさを向上できる物質、例えばヒアルロン酸(HA)を人工涙液に添加することにより、前記液体が目玉表面に滞在する時間を伸びることにより、目薬の目玉表面の表面に滞在する時間を延長し、ひいては目玉表面に炎症がある中度眼球乾燥症の治療時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】本発明に係わる人工涙液の組成物が細胞の活性に対する影響を示す図面である。
【
図1B】本発明に係わる人工涙液の組成物が細胞の毒性に対する影響を示す図面である。
【
図2】本発明に係わる人工涙液の組成物が炎症因子に対する影響を示す図面である。
【
図3】本発明に係わる人工涙液の組成物を利用して動物に対して中度の眼球乾燥症への治療後において、涙腺分泌テスト(Schirmer test)の結果を示す図面である。
【
図4】本発明に係わる人工涙液の組成物を利用して動物に対して中度の眼球乾燥症への治療後において、炎症因子の変化を示す図面である。
【
図5】本発明に係わる人工涙液の組成物を利用して動物に対して中度の眼球乾燥症への治療後において、目玉表面の蛍光染め結果を示す図面である。
【
図6】本発明に係わる人工涙液の組成物を利用して動物に対して中度の眼球乾燥症への治療後において、角膜の上皮細胞と角膜の厚さの変化を示す図面である。
【
図7】ヒアルロン酸(HA)を人工涙液の組成物に添加して動物の目玉に滞在する時間の比較結果を示す図面であり、本図面は、カラーで表示する必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係わる人工涙液の組成物を更に明白するために、実施例と合わせて添付図面によって詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
本実施例には、抗炎症と抗酸化の効果を有する物質と液体の粘りさを向上できる物質を含む組成物を提供する。この組成物により、人間の角膜の上皮細胞(Human Corneal Epithelial Cells, HCEC)に対して悪影響を与えるか、前記人間の角膜の上皮細胞(HCEC)に対して傷害を与えるか、及び前記人間の角膜の上皮細胞(HCEC)に対して炎症反応を低減するかについて実験を行う。
【0022】
本実施例において、抗炎症と抗酸化の効果を有する前記物質は、没食子酸エピガロカテキン(EGCG)であり、液体の粘りさを向上できる前記物質は、ヒアルロン酸(HA)である。
【0023】
前記没食子酸エピガロカテキン(EGCG)の使用濃度は、約10μg/mlから200μg/mlまでの範囲であり、前記ヒアルロン酸(HA)の使用濃度は、約0.01vol%から0.3vol%までの範囲である。
【0024】
「細胞の活性実験」
本実験には、まず人間の角膜の上皮細胞(HCEC)を24時間に培養し、次に濃度500ng/mlであるリポ多糖(Lipopolysaccharide, LPS)を利用して前記人間の角膜の上皮細胞(HCEC)を3時間誘発することにより、前記人間の角膜の上皮細胞(HCEC)に炎症反応を起こらせ、そして、前記没食子酸エピガロカテキン(EGCG)と前記ヒアルロン酸(HA)との組成物を添加して3日間培養し、合わせて5日間に細胞の活性実験を行う。1日目と3日目の細胞を採集し、従来技術であるWST−8を利用して酵素結合免疫吸着測定法(Enzyme−Linked Immunosorbent Assay, ELISA)によって波長450nmでの相対吸光度を測定することにより、細胞の活性を測定する。
【0025】
その結果について、
図1Aに示すように、対照組は、リポ多糖(Lipopolysaccharide, LPS)による炎症反応を誘発していない前記人間の角膜の上皮細胞(HCEC)であり、実験組は、前記没食子酸エピガロカテキン(EGCG)と前記ヒアルロン酸(HA)との組成物を添加したものであり、
図1Aからわかるように、1日目での実験組と対照組との相対吸光度には、明らかに差異を存在していなく、3日目での実験組と対照組との相対吸光度にも、明らかに差異を存在していないため、この組成物は、細胞の活性に対して悪影響を与えないことを確認した。
【0026】
「細胞の毒性実験」
本実験には、まず人間の角膜の上皮細胞(HCEC)を24時間に培養し、次に濃度500ng/mlであるリポ多糖(Lipopolysaccharide, LPS)を利用して前記人間の角膜の上皮細胞(HCEC)を3時間誘発することにより、前記人間の角膜の上皮細胞(HCEC)に炎症反応を起こらせ、そして、前記没食子酸エピガロカテキン(EGCG)と前記ヒアルロン酸(HA)との組成物を添加して3日間培養し、合わせて5日間に細胞の毒性実験を行う。1日目と3日目の細胞を採集し、従来技術であるLDHを利用して酵素結合免疫吸着測定法(Enzyme−Linked Immunosorbent Assay, ELISA)によって波長490nmでの相対吸光度を測定することにより、細胞の毒性を測定する。
【0027】
その結果について、
図1Bに示すように、細胞分解組(Total lysis)は、陰性の対照組(negative control)であり、対照組は、リポ多糖(Lipopolysaccharide, LPS)による炎症反応を誘発していない前記人間の角膜の上皮細胞(HCEC)であり、実験組は、前記没食子酸エピガロカテキン(EGCG)と前記ヒアルロン酸(HA)との組成物を添加したものであり、
図1Bからわかるように、1日目での実験組と対照組との相対吸光度には、明らかに差異を存在していなく、3日目での実験組と対照組との相対吸光度にも、明らかに差異を存在していないため、この組成物は、細胞に傷害を与えないことを確認した。
【0028】
「炎症因子の遺伝子表現実験」
本実験には、まず人間の角膜の上皮細胞(HCEC)を48時間に培養し、次に濃度500ng/mlであるリポ多糖(Lipopolysaccharide, LPS)を利用して前記人間の角膜の上皮細胞(HCEC)を3時間誘発することにより、前記人間の角膜の上皮細胞(HCEC)に炎症反応を起こらせ、そして、前記没食子酸エピガロカテキン(EGCG)と前記ヒアルロン酸(HA)との組成物を添加して2時間培養し、合わせて3日間に炎症因子の遺伝子表現実験を行う。3日目の細胞を採集し、TrizolReagent(登録商標)によって細胞のRNAを採取し、次にABiによる生産のHigh−Capacity cDNA Reverse Transcription KitsによってリアルタイムPCR(RT−PCR)を行うことにより、相補的DNA(cDNA)を発生し、そして、ABiによる生産のTagManRFast Universal Master Mix(2X)によって炎症因子(IL−1β、IL−6、IL−8及びTNF−α)に対して定量的リアルタイムPCR(Quantitative Real−Time PCR, Q−PCR)を行うことにより、炎症因子(IL−1β、IL−6、IL−8及びTNF−α)の遺伝子表現を測定する。
【0029】
その結果について、
図2に示すように、対照組は、リポ多糖(Lipopolysaccharide, LPS)による炎症反応を誘発していない前記人間の角膜の上皮細胞(HCEC)であり、ヒアルロン酸(HA)のみ組はヒアルロン酸(HA)のみを添加するものであり、実験組は、前記没食子酸エピガロカテキン(EGCG)と前記ヒアルロン酸(HA)との組成物を添加したものであり、
図2からわかるように、実験組における4種の炎症因子の相対転写率(relation transcription ratio)は、他の二つ組より低いため、炎症因子が低減する傾向があることを示し、一方、前記ヒアルロン酸(HA)のみ組における4種の炎症因子の相対転写率は、他の二つ組より高いため、前記ヒアルロン酸(HA)が炎症因子の低減に役に立たないことを示し、従って、前記没食子酸エピガロカテキン(EGCG)は炎症反応の抑制効果があることを証明した。
【0030】
前記実施例におけるWST−8、LDH、RT−PCR及びQ−PCRは、実験方式であって従来技術であり、更に、TrizolReagent(登録商標)によって細胞のRNAを採取することも従来技術であるため、ここでその詳細な説明を省略する。
【実施例2】
【0031】
本実験は、前記没食子酸エピガロカテキン(EGCG)と前記ヒアルロン酸(HA)を混合した組成物が目玉表面の生理特性(例えばPH値、浸透圧及ぶ粘性)の同一性について、実験を行う。
【0032】
本実験においては、PH値測定装置(EUTECH INSTRUMENTS社製、番号pH510)、微浸透圧装置(Advanced Instruments社製、番号3320)、及び微型コンピュータプログラムレオメーター
というプログラムレオメーター(粘性の測定)が使用されている。
【0033】
その結果について、下記の表3に示される。前記没食子酸エピガロカテキン(EGCG)と前記ヒアルロン酸(HA)との組成物は、その涙液特性が目玉表面の正常な生理性質に類似している。
【0034】
【0035】
前記実施例におけるPH値測定装置、微浸透圧装置及びプログラムレオメーターは、実験装置であって従来技術であるため、ここでその詳細な説明を省略する。
【実施例3】
【0036】
本実験は、抗炎症と抗酸化の効果を有する物質と、液体の粘りさを向上できる物質と、人工涙液とを構成し、即ち本発明に係わる人工涙液の組成物を提供し、そして、この人工涙液の組成物によって眼球乾燥症の治療効果について実験を行う。
【0037】
本実験において、抗炎症と抗酸化の効果を有する前記物質は、前記没食子酸エピガロカテキン(EGCG)であり、液体の粘りさを向上できる前記物質は、前記ヒアルロン酸(HA)である。
【0038】
前記没食子酸エピガロカテキン(EGCG)の使用濃度は、1μg/mlから200μg/mlまでの範囲であり、前記ヒアルロン酸(HA)は、市販の人工涙液に含まれるヒアルロン酸(HA)の使用濃度と等しく、その使用濃度は、0.01vol%から0.3vol%までの範囲である。本実施例に使用される人工涙液には、前記ヒアルロン酸(HA)と防腐剤が含まれていなく、その成分は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及びリン酸二水素ナトリウムなどが含まれる。
【0039】
「涙腺分泌テストの実験」
本実験は、塩化ベンザルコニウム(Benzalkonium Chloride,BAC)を動物の目(前記動物は大ウサギである)に1日3回で滴下し、合わせて3週間に実験を行う。こうすると、前記大ウサギの目には、炎症によって中度の眼球乾燥症の症状を発生し、次に、人工涙液、ヒアルロン酸(HA)及び没食子酸エピガロカテキン(EGCG)などの異なる組成物によって治療を行い、治療過程は、1日2回で、合わせて2週間に治療を行う。
【0040】
前記涙腺分泌テストの実験は、現在臨床上の眼球乾燥症患者に対する涙液量の測定方式であり、それは紙を下瞼の下方に設置して、毛細現象によって涙液量を観測する方法である。
【0041】
結果について、
図3に示すように、対照組は、眼球乾燥症の誘発ないものであり、眼球乾燥症組は、塩化ベンザルコニウム(BAC)によって中度の眼球乾燥症を誘発したものであり、治療組1は、前記人工涙液によって治療を行ったものであり、治療組2は、前記ヒアルロン酸(HA)を添加した前記人工涙液によって治療を行ったものであり、治療組3は、前記没食子酸エピガロカテキン(EGCG)を添加した前記人工涙液によって治療を行ったものであり、治療組4は、本発明の人工涙液によって治療を行ったものである。
図3からわかるように、本発明の前記人工涙液によって治療した後、前記治療組4の涙液量が正常値に戻ってきた。
【0042】
「炎症因子の遺伝子表現実験」
本実験は、まず塩化ベンザルコニウム(BAC)を1日3回で大ウサギの目に滴下し、合わせて3週間を行うことにより、前記大ウサギの目に炎症を誘発して中度の眼球乾燥症を発生させる。次に、人工涙液、ヒアルロン酸(HA)および没食子酸エピガロカテキン(EGCG)などの異なる組成物を利用して治療を行い、治療過程は1日2回で、合わせて2週間に治療を行う。さらに、大ウサギの角膜のタンパク質を採集して酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって炎症因子(IL−1β、IL−6、IL−8及びTNF−α)の遺伝子表現を測定する。そして、前記人工涙液、ヒアルロン酸(HA)および没食子酸エピガロカテキン(EGCG)などの異なる組成物を使用する治療によって炎症因子が低減するか否かについて観察する。
【0043】
結果について、
図4に示すように、対照組は、眼球乾燥症の誘発ないものであり、眼球乾燥症組は、塩化ベンザルコニウム(BAC)によって中度の眼球乾燥症を誘発したものであり、治療組1は、前記人工涙液によって治療を行ったものであり、治療組2は、前記ヒアルロン酸(HA)を添加した前記人工涙液によって治療を行ったものであり、治療組3は、前記没食子酸エピガロカテキン(EGCG)を添加した前記人工涙液によって治療を行ったものであり、治療組4は、本発明の人工涙液によって治療を行ったものである。
図4からわかるように、本発明の人工涙液で治療した治療組4及び前記没食子酸エピガロカテキン(EGCG)を添加した前記人工涙液によって治療した治療組3は、治療後の前記炎症因子(IL−1β、IL−6、IL−8及びTNF−α)が明らかに低減して対照組の濃度にほぼ等しく、一方、前記人工涙液によって治療した治療組1及び前記ヒアルロン酸(HA)を添加した前記人工涙液によって治療した治療組2は、治療後の前記炎症因子(IL−1β、IL−6、IL−8及びTNF−α)の濃度低減が明らかに表現されていないため、前記没食子酸エピガロカテキン(EGCG)は、各炎症因子(IL−1β、IL−6、IL−8及びTNF−α)の遺伝子表現に対して低減する効果を有することを示している。
【0044】
「目玉の蛍光染め実験(Fluorescein Staining)」
本実験は、まず塩化ベンザルコニウム(BAC)を1日3回で大ウサギの目に滴下し、合発生させる。次に、本発明の前記人工涙液によって治療を行い、治療過程は、1日2回でわせて3週間を行うことにより、前記大ウサギの目に炎症を誘発して中度の眼球乾燥症を合わせて2週間に治療を行う。そして、大ウサギの目に対して目玉の蛍光染め実験を行う。
【0045】
その結果について、
図5に示すように、対照組は、眼球乾燥症の誘発ないものであり、眼球乾燥症組は、前記塩化ベンザルコニウム(BAC)によって中度の眼球乾燥症を誘発したものであり、治療組は、本発明の前記人工涙液によって治療を行ったものである。
図5からわかるように、本発明の前記人工涙液によって治療した治療組は、治療後の目が澄みに回復し、混沌やスポットが発生される状況がない。
【0046】
「角膜の上皮細胞の薄切り染め実験」
本実験は、まず塩化ベンザルコニウム(BAC)を1日3回で大ウサギの目に滴下し、合わせて3週間を行うことにより、前記大ウサギの目に炎症を誘発して中度の眼球乾燥症を発生させる。次に、本発明の前記人工涙液によって治療を行い、治療過程は、1日2回で合わせて2週間に治療を行う。まず、動物の角膜における上皮細胞を薄切りして、次にヘマトキシリンエオジン染色(即ちHE染め)によって、10倍の顕微鏡で観察する。
【0047】
中度の眼球乾燥症の大ウサギは、角膜の上皮細胞に炎症があるので、もっとも3〜5層の上皮細胞層の配列厚さが1〜3層になり、角膜の全体厚さも薄くなり、その結果は、
図6に示すように、対照組は、眼球乾燥症の誘発ないものであり、眼球乾燥症組は、前記塩化ベンザルコニウム(BAC)によって中度の眼球乾燥症を誘発したものであり、治療組は、本発明の前記人工涙液によって治療を行ったものである。
図6からわかるように、本発明の前記人工涙液によって治療した治療組は、治療後の上皮細胞の配列厚さが正常の厚さに戻ってきた。角膜の全体厚さも正常の厚さに戻ってきた。
【0048】
「人工涙液の目玉表面滞在時間実験」
本実験は、前記没食子酸エピガロカテキン(EGCG)のみ添加された人工涙液と本発明の前記人工涙液を同時に動物(本実験において、動物は小ネズミである)の目に滴下した後の15分間後、非侵入式の3D活体分子映像システム(Xenoge社製)によって小ネズミの目玉表面における人工涙液の滞在時間を観察する。
【0049】
その結果は、
図7に示すように、A組は、前記没食子酸エピガロカテキン(EGCG)のみ添加された人工涙液を使用したものであり、B組は、本発明の前記人工涙液(即ちヒアルロン酸(HA)を含む)を使用したものである。
図7からわかるように、本発明の人工涙液を有するB組(即ちヒアルロン酸(HA)を含む)は、目玉表面に滴下した後の15分間にも残留があることに対して、前記没食子酸エピガロカテキン(EGCG)のみ添加された人工涙液を使用したA組は、目薬の残留現象を観察できない。従って、本発明の人工涙液を有するB組(即ちヒアルロン酸(HA)を含む)には、前記ヒアルロン酸(HA)を添加してから液体(即ち、本発明に係わる人工涙液の組成物)の粘りさを向上することができ、目玉表面における前記液体の滞在時間を伸びていくことができるので、目薬の使用回数を減少すると共に、目玉表面に炎症がある中度の眼球乾燥症に対する治療過程を有効に短縮することができる。
【0050】
前述の実施例における涙腺分泌テスト実験、ELISA、目玉の蛍光染め及びヘマトキシリンエオジン染色は、実験方式であって従来技術であり、更に、非侵入式の3D活体分子映像システムも従来の装置であるため、ここでその詳細な説明を省略する。
【0051】
上述の説明は、本発明の好適な実施例に対する具体的な説明であるが、これらの実施例は本発明における特許請求の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨に基づいてこれらの実施例の効果と等しい変形や変更することができ、これらの変形や変更が本発明における特許請求の範囲に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0052】
1 人工涙液の治療組
2 ヒアルロン酸(HA)を添加した人工涙液の治療組
3 没食子酸エピガロカテキン(EGCG)を添加した人工涙液の治療組
4 本発明に係わる人工涙液の組成物の治療組
A 没食子酸エピガロカテキン(EGCG)のみ添加した人工涙液の組
B 本発明に係わる人工涙液の組成物(即ちヒアルロン酸(HA)を含む)の組