(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206784
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】ピンチグリップ式ボトル型容器の成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 49/42 20060101AFI20170925BHJP
B29C 49/48 20060101ALI20170925BHJP
B29C 49/54 20060101ALI20170925BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
B29C49/42
B29C49/48
B29C49/54
B29C49/06
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-141812(P2016-141812)
(22)【出願日】2016年7月19日
(62)【分割の表示】特願2011-285952(P2011-285952)の分割
【原出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2016-182832(P2016-182832A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2016年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(74)【代理人】
【識別番号】100165607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100196690
【弁理士】
【氏名又は名称】森合 透
(72)【発明者】
【氏名】松尾 宣典
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】上杉 大輔
【審査官】
大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−153366(JP,A)
【文献】
実開昭58−065208(JP,U)
【文献】
特開2004−276602(JP,A)
【文献】
特開2003−103612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00 − 49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトル型容器(1)の胴部(4)の両側壁部分(5)に、左右一対の把持用凹部(12)を対向させて陥没形成し、該両把持用凹部(12)と、該両把持用凹部(12)間の後壁部分(6)とでグリップ部(G)を形成し、前記把持用凹部(12)の少なくとも底壁(12a)を含めた凹部面を、多数の小穴部(12c)が位置する粗面化凹部面(12b)とした合成樹脂製ピンチグリップ式ボトル容器の成形方法であって、
ブロー成形金型(30)が一対の割金型と底金型で構成され、該割金型の略中央高さ位置に設けられた凹部(11)成形用の成形型面部分には、ブロー成形金型(30)が形成するキャビティー内に出入り可能な把持用凹部(12)成形用の一対の可動入れ子(32)が配置され、前記可動入れ子(32)は、その成形型面である入れ子型面(33)を、多数の小突起(36)が位置する粗面化処理面(35)としたものである、2軸延伸ブロー成形金型装置を用い、
プリフォーム(20)のボトル型容器(1)への2軸延伸ブロー成形動作の途中の時点で、前記可動入れ子(32)を前進させ、その粗面化処理面(35)を前記プリフォーム(20)に接触させながら該プリフォーム(20)の対向する部分を把持用凹部(12)に延伸変形させる工程、及び
前記可動入れ子(32)の前進動作が停止した後、ブロー圧により把持用凹部(12)の壁面が、該可動入れ子(32)の粗面化処理面(35)に押し付けられることにより、把持用凹部(12)の壁面を粗面化凹部面(12d)に成形する工程、
を有するピンチグリップ式ボトル型容器の成形方法。
【請求項2】
粗面化凹部面(12b)を、底壁(12a)の底面全域と、該底壁(12a)の底面に連続した周壁(12d)の周面に形成した容器を成形する請求項1に記載のピンチグリップ式ボトル型容器の成形方法。
【請求項3】
ボトル型容器(1)の中心軸(O)を通り、前後方向に延びる仮想的な横軸中心線(TCL)に対する両把持用凹部(12)の前後両側の周壁(12d)の傾斜角度(α)を共に略直角とした容器を成形する請求項1又は2に記載のピンチグリップ式ボトル型容器の成形方法。
【請求項4】
ボトル型容器(1)の中心軸(O)を通り、前後方向に延びる仮想的な横軸中心線(TCL)を挟んで対向配置される両把持用凹部(12)の底壁(12a)間の対向幅寸法である最深部幅(Wd)が、0mmよりも大きく、且つネック部(2b)の外径寸法(φ)以下である容器を成形する請求項1から3の何れか一項に記載のピンチグリップ式ボトル型容器の成形方法。
【請求項5】
可動入れ子が、粗面化処理面(35)を、シボ加工を使用して成形した可動入れ子である請求項1から4の何れか一項に記載のピンチグリップ式ボトル型容器の成形方法。
【請求項6】
可動入れ子が、粗面化処理面(35)の各小突起(36)の突出端部を、角取りして円滑な曲面とした可動入れ子である請求項1から5の何れか一項に記載のピンチグリップ式ボトル型容器の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリップ部付き大型合成樹脂製ボトル型容器の内、胴部の両側壁部分に把持用凹部を対向形成することにより、グリップ部を一体形成したピンチグリップ式ボトル型容器
の成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グリップ部付き大型合成樹脂製ボトル型容器の従来技術として、例えば特許文献1には、胴部3の両側に、指先を挿入できる程度の2つの把持用凹部6を形成し、この両把持用凹部6の間に設けられた後側部分で構成されたグリップ部を一体に形成したハンディボトル1に関する発明が記載されている。
【0003】
このハンディボトル1では、親指を胴部3に形成された一方の把持用凹部6に、他の指を他方の把持用凹部6にそれぞれ侵入させて挟持することにより、ハンディボトル1を把持して持ち運ぶことができるようになっている。
【0004】
特許文献1に記載された発明は、ハンディボトル1を成形するブロー成形金型21の、成形型面が平滑な可動入子22により把持用凹部6を成形する技術を開示するもので、可動入子22をブロー成形金型21内で、プリフォーム20の中心軸よりプリフォーム20の中心径の1/2の2.0ないし2.6倍位置に予め待機させてブロー成形し、このブロー成形の進行途中に可動入子22を、把持用凹部6の最深部7位置まで作動させ、これにより把持用凹部6の最深部7が肉厚となり、この把持用凹部6の両脇部が薄肉となる傾向を改善するものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−103612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された従来技術は、可動入子の成形型面が平滑であるので、成形される把持用凹部の表面
は平滑であり、このため把持用凹部に侵入させた指先が保持用凹部の表面に対して滑り易く、グリップ状態が不安定となり易い、と云う問題があった。
【0007】
また、可動入子により押し込まれて把持用凹部に成形されるプリフォーム部分、特に最深部に成形される部分は、成形金型の一部である可動入子との接触により、その延伸変形が停止した状態となることには変りがなく、このため把持用凹部の最深部が肉厚となり、この把持用凹部の両脇部が薄肉となる傾向の改善程度が十分には得られない、と云う問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、把持用凹部の表面に対する指先の滑り易さを解消することを技術的課題とし、もって把持用凹部が形成するグリップ部によるグリップ状態を安定したものとする、ことを目的とするものである。
【0009】
また、可動入
れ子に接触するプリフォーム部分の延伸変形停止程度を小さくすることを技術的課題とし、もって把持用凹部の最深部の肉薄化と、その両脇部である周壁の肉厚化を得る、ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の手段の内、ボトル型容器の成形方法の主たる構成は、
ボトル型容器の胴部の両側壁部分に、左右一対の把持用凹部を対向させて陥没形成し、この両把持用凹部と、両把持用凹部間の後壁部分とでグリップ部を形成し、把持用凹部の少なくとも底壁を含めた凹部面を、多数の小穴部が位置する粗面化凹部面とした合成樹脂製ピンチグリップ式ボトル型容器の成形方法であること、
ブロー成形金型が一対の割金型と底金型で構成され、この割金型の略中央高さ位置に設けられた凹部成形用の成形型面部分には、ブロー成形金型が形成するキャビティー内に出入り可能な把持用凹部成形用の一対の可動入れ子が配置される2軸延伸ブロー成形金型装置を用いること、
この可動入れ子は、その成形型面である入れ子型面を、多数の小突起が位置する粗面化処理面としたものであること、
プリフォームのボトル型容器への
2軸延伸ブロー成形動作の途中の時点で、可動入れ子を前進させ、
その粗面化処理面をプリフォームに接触させながらプリフォームの対向する部分を把持用凹部に延伸変形させる工程を有すること、
可動入れ子の前進動作が停止した後、ブロー圧により把持用凹部の壁面が、可動入れ子の粗面化処理面に押し付けられることにより、把持用凹部の壁面を粗面化凹部面に成形する工程を有すること、
にある。
【0011】
可動入れ子の成形型面である入れ子型面が粗面化処理面となっているので、延伸変形中のプリフォームに対して、可動入れ子を前進させて把持用凹部を延伸成形する際に、可動入れ子は粗面化処理面でプリフォームに接触することになる。この粗面化処理面は多数の小突起で構成されているので、把持用凹部に延伸変形されるプリフォーム部分は、この多数の小突起の突出端に接触する状態、すなわち多数の小突起の突出端に略点接触状態で接触することになる。このため、把持用凹部に延伸変形されるプリフォーム部分は、可動入れ子との間に大きな摩擦抵抗を生じることなく、把持用凹部に延伸成形されることになる。
また、把持用凹部の底壁を含めた凹部面は、ボトル型容器の把持時に、把持用凹部に侵入した指先が接触する部分であるが、この凹部面が多数の小穴部が位置する粗面化凹部面となっているので、その表面が滑り難い状態となっており、このため把持用凹部に侵入した指先は、滑ることなくグリップ部に把持力を安定的に作用させることができる。
【0012】
本発明のボトル型容器の
成形方法の他の構成は、上記したボトル型容器の
成形方法の主たる構成に、粗面化凹部面を、底壁の底面全域と、この底壁の底面に連続した周壁の周面に形成した
ボトル型容器を成形すること、を加えたものである。
【0013】
粗面化凹部面を、底壁の底面全域と、この底壁の底面に連続した周壁の周面に形成した
ボトル型容器にあっては、把持用凹部に指先を侵入させてグリップ部を把持した際に、把持したボトル型容器の姿勢がどのようになっても、指先は把持用凹部の粗面化凹部面に、滑ることなく安定して押圧接触することになる。
本発明のボトル型容器の成形方法の他の構成は、上記したボトル型容器の成形方法の主たる構成に、ボトル型容器の中心軸を通り、前後方向に延びる仮想的な横軸中心線に対する両把持用凹部の前後両側の周壁の傾斜角度を共に略直角としたボトル容器を成形すること、を加えたものである。
ボトル型容器の中心軸を通り、前後方向に延びる仮想的な横軸中心線に対する両把持用凹部の前後両側の周壁の傾斜角度を共に略直角としたボトル型容器にあっては、ボトル型容器を後方から把持して一方の把持用凹部に親指を位置させ、他方の把持用凹部内に他の指を位置させてグリップ部を把持すると、各指の腹が把持用凹部のうち後方に位置する周壁に当接する際に、各指の腹と周壁との間の滑りが大幅に抑制され、この間に大きな掛止効果が発生するようになるため、滑り難く持ち易いグリップ部とすることができる。よって、比較的手の平が小さな使用者でもこのボトル型容器を使用した注出操作を安定させることが可能となる。
また、把持用凹部の略直角に形成された周壁は、胴部に作用する力に対して補強凹リブとして機能を発揮し、胴部の歪み変形の発生や、把持用凹部のバックリング現象の発生を抑制する。
本発明のボトル型容器の成形方法の他の構成は、上記したボトル型容器の成形方法の主たる構成に、ボトル型容器の中心軸を通り、前後方向に延びる仮想的な横軸中心線を挟んで対向配置される両把持用凹部の底壁間の対向幅寸法である最深部幅を、0mmよりも大きく、且つネック部の外径寸法以下としたこと、を加えたものである。
ボトル型容器の中心軸を通り、前後方向に延びる仮想的な横軸中心線を挟んで対向配置される両把持用凹部の底壁間の対向幅寸法である最深部幅を、0mmよりも大きく、且つネック部の外径寸法以下としたボトル型容器にあっては、グリップ部を握り易くすることができ、また両把持用凹部内への各指先の侵入量を大きくすることが可能となるため、より深い握りを達成することができる。また、この際、把持用凹部に侵入した指先の腹は、把持用凹部の粗面化凹部面に、確実に滑り難い状態で押圧接触する。よって、これまで以上に安定して持ち易い、ピンチグリップ式ボトル型容器とすることができる。
【0016】
本発明のボトル型容器
の成形
方法の他の構成は、上記した
ボトル型容器の成形方法の主たる構成に、
可動入れ子が、粗面化処理面を、シボ加工を使用して成形した
可動入れ子であること、を加えたものである。
【0017】
粗面化処理面を、シボ加工を使用して成形した
可動入れ子にあっては、多数の小突起により形成される粗面化処理面の成形が簡単に達成できる。
【0018】
また、本発明のボトル型容器
の成形
方法の他の構成は、上記した
ボトル型容器の成形方法の主たる構成に、
可動入れ子が、粗面化処理面の各小突起の突出端部を、角取りして円滑な曲面とした
可動入れ子であること、を加えたものである。
【0019】
粗面化処理面の各小突起の突出端部を、角取りして円滑な曲面とした
可動入れ子にあっては、小突起の形状に関わりなく、プリフォーム部分と小突起の接触抵抗を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明におけるボトル型容器の成形方法の主たる構成においては、把持用凹部に延伸変形されるプリフォーム部分は、可動入れ子との間に大きな摩擦抵抗を生じることなく、把持用凹部に延伸成形されることになるので、把持用凹部を充分に延伸変形させて成形することができ、これにより把持用凹部全域を肉厚の不均一が小さい状態で成形することができる。
また、本発明
によって成形されるボトル型容
器は、把持用凹部に侵入した指先が、滑ることなくグリップ部に把持力を安定的に作用させることができるので、ボトル型容器のグリップ部を把持しての取扱いが安定して円滑に得ることができる。
【0021】
粗面化凹部面を、底壁の底面全域と、この底壁の底面に連続した周壁の周面に形成した
ボトル型容器にあっては、把持用凹部に指先を侵入させてグリップ部を把持した際に、把持したボトル型容器の姿勢がどのようになっても、指先は把持用凹部の粗面化凹部面に、滑ることなく押圧接触することになるので、ボトル型容器の安定した円滑な取扱いを確実に得ることができる。
ボトル型容器の中心軸を通り、前後方向に延びる仮想的な横軸中心線に対する両把持用凹部の前後両側の周壁の傾斜角度を共に略直角としたボトル型容器にあっては、ボトル型容器を後方から把持して一方の把持用凹部に親指を位置させ、他方の把持用凹部内に他の指を位置させてグリップ部を把持すると、各指の腹が把持用凹部のうち後方に位置する周壁に当接する際に、各指の腹と周壁との間の滑りが大幅に抑制され、この間に大きな掛止効果が発生するようになるため、滑り難く持ち易いグリップ部とすることができる。よって、比較的手の平が小さな使用者でもこのボトル型容器を使用した注出操作を安定させることが可能となる。
また、把持用凹部の略直角に形成された周壁は、胴部に作用する力に対して補強凹リブとして機能を発揮し、胴部の歪み変形の発生や、把持用凹部のバックリング現象の発生を抑制する。
ボトル型容器の中心軸を通り、前後方向に延びる仮想的な横軸中心線を挟んで対向配置される両把持用凹部の底壁間の対向幅寸法である最深部幅を、0mmよりも大きく、且つネック部の外径寸法以下としたボトル型容器にあっては、グリップ部を握り易くすることができ、また両把持用凹部内への各指先の侵入量を大きくすることが可能となるため、より深い握りを達成することができる。また、この際、把持用凹部に侵入した指先の腹は、把持用凹部の粗面化凹部面に、確実に滑り難い状態で押圧接触する。よって、これまで以上に安定して持ち易い、ピンチグリップ式ボトル型容器とすることができる。
【0023】
可動入れ子が、粗面化処理面を、シボ加工を使用して成形した
可動入れ子であることにあっては、多数の小突起により形成される粗面化処理面の成形が簡単に達成できるので、その実施が容易である。
【0024】
可動入れ子が、粗面化処理面の各小突起の突出端部を、角取りして円滑な曲面とした
可動入れ子であることにあっては、小突起の形状に関わりなく、プリフォーム部分と小突起の接触抵抗を小さくすることができるので、把持用凹部全域を確実にかつ円滑に延伸変形させて成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の
実施により成形されるボトル型容器の一実施例を示す正面図である。
【
図4】
図2中のIV−IV線に沿った、平断面図である。
【
図5】
図4中のV−V線に沿った、要部縦断後面図である。
【
図6】把持用凹部の粗面化凹部面の、部分拡大断面図である。
【
図7】本発明
において使用する可動入れ子を有するブロー成形金型装置の縦断説明図である。
【
図8】
図7に示した可動入れ子の粗面化処理面の、拡大断面図である。
【
図9】可動入れ子の粗面化処理面の、動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を実施例に沿って図面を参照しながら説明する。
図1〜
図6は本発明の
実施により成形されるピンチグリップ式ボトル型容器の一実施例を示すものであり、
図1は正面図、
図2は側面図、
図3は背面図、
図4は
図2中のIV−IV線に沿った平断面、
図5は
図4中のV−V線に沿った要部縦断面図、
図6は把持用凹部の粗面化凹部面の拡大断面図である。
なお、以下の説明においては、ボトル型容器1の正面と背面との間に沿う方向を前後方向、両側面間に沿う方向を左右方向、口筒部と底部との間に沿う方向を上下方向とする。
【0027】
このボトル型容器1は、合成樹脂製の2軸延伸ブロー成形品であり、全高さが337mm、最大径が126mm、内容量は2.7リットルのものであり、下端に座機能を発揮する底部8を連設した、有底筒状の胴部4の上端に、上方に縮径したテーパ−筒状の肩部3及びネックリング2aを介して、外周面に螺条を刻設した円筒状の口筒部2を連設した構造となっている。
【0028】
肩部3の形状は上部が円錐台状であり、その下部は多角錐台状である。この下部の多角錐台状部分は、同じ形状および大きさの8つ平坦なパネル3pを周方向に沿って並列に設けており、隣接するパネル3pの間には、角壁構造の稜線3rが設けられている。
【0029】
個々のパネル3pは、ボトル型容器1内が減圧状態となった際に、陥没変形して減圧吸収機能を発揮し、稜線3rは、減圧時あるいは指先等の当接による外からの力の作用に対して補強リブとしての作用を発揮して、減圧時における個々のパネル3pの陥没変形を許容しながら、多角錐台状部分全体での歪み、すなわち外観を損なうような陥没変形を抑制する機能を発揮する。
【0030】
胴部4の左右方向の両側の側壁部分5の前後方向の中心部からやや後方の位置に凹部11が陥没形成されており、この凹部11の略中央部には、凹部11をさらに陥没させて形成した把持用凹部12が設けられている。
【0031】
肩部3と胴部4との境界部分及び胴部4と底部8との境界部分には、補強用のリブとしての機能を発揮する周リブ7が形成されている。そして、上側の周リブ7と下側の周リブ7との間の胴部4の前壁部分4Aは、ラベル等を貼り付けることが可能な、凹凸のない円滑面(
図1参照)となっている。
【0032】
図2及
図5に示すように、把持用凹部12は、最深部である陥没底面を形成する底壁12aと、この底壁12aを囲む周壁12dを有して形成されている。この底壁12aと周壁12dとで構成される把持凹部12の凹部面は、多数の小穴部12c(
図6参照)が位置する粗面化凹部面12bに形成されている。
【0033】
図4において、ボトル型容器1の中心軸Oを通り、前後方向に延びる仮想的な線を横軸中心線TCLとする。このとき、前後
両側の周壁12dの傾斜角度、すなわち横軸中心線TCLに対する前後
両側の周壁12dの傾斜角度αは、
共に略直角に設定されている。ここで傾斜角度αが略直角とは、より好ましい傾斜角度αは90度であり、製造誤差を含めて85度〜95度の範囲を含むことを意味する。
【0034】
また、両把持用凹部12の底壁12a間の対向幅寸法である最深部幅Wdは、0mmよりも大きく、且つネックリング2aの下側に位置するネック部2bの外径寸法φ以下に設定されている。この本実施例では、ネック部2bの外径寸法φが35mm
、最深部幅Wdが16mmで形成しているが、これらの寸法はこれに限られるものではない。なお、ネック部2bの外径寸法φは、プリフォーム20(
図7参照)を2軸延伸ブロー成形した前後において、径寸法が変化しない不動の寸法であり、最深部幅Wdはこの不動のネック部2bの外径寸法φを基準に設定している。
【0035】
本発明では、左右の両把持用凹部12と、この両把持用凹部12の間に胴部4の後方部分を平断面にて半円状に形成された後壁部分6とを含む領域がグリップ部Gである。
【0036】
そして、上記のように、最深部幅Wdをネック部2bの外径寸法φ以下とすることにより、グリップ部Gを握り易くすることができ、また両把持用凹部12内への各指先の侵入量を大きくすることが可能となるため、より深い握りを達成することができる。また、この際、把持用凹部12に侵入した指先
の腹は、把持用凹部12の粗面化凹部面12bに、確実に滑り難い状態で押圧接触する。よって、これまで以上に安定して持ち易い、ピンチグリップ式ボトル容器とすることができる。
【0037】
上記のような両把持用凹部12の形成は、プリフォーム20を2軸延伸ブロー成形する際に同時行われるが、例えば
図4に示すように、可動入れ子32を横軸中心線TCLに対して垂直方向となる左右方向から互いに接近する方向に前進させ、その後に元の位置に後退させるという工程を採用することにより形成することが可能である。
【0038】
本発明のボトル型容器1では、後方から把持して一方の把持用凹部12内に親指を位置させ、他方の把持用凹部12内に他の指を位置させてグリップ部Gを把持すると、各指の腹が把持用凹部12のうち後方に位置する周壁12dに当接することになるが、上記のように凹部面が粗面化凹部面12bに形成されていると共に、横軸中心線TCLに対する周壁12dの傾斜角度αを略直角に設定することにより、各指の腹と周壁12dとの間の滑り
が大幅に抑制され、この間に大きな掛止効果が発生するよう
になるため、滑り難く持ち易いグリップ部Gとすることができる。よって、比較的手の平が小さな使用者でもこのボトル型容器1を使用した注出操作を安定させることが可能となる。
【0039】
また、把持用凹部12の略直角に形成された周壁12dは、胴部4に作用する力に対して補強凹リブとして機能を発揮し、胴部4の歪み変形の発生や、把持用凹部12のバックリング現象の発生を抑制する。
【0040】
さらに、把持用凹部12には2つの補強リブ13(
図2および
図5参照)が、アーチ状に横断して(
図4参照)設けられている。この補強リブ13は把持用凹部12の機械的強度を高める機能を発揮するものであるが、この2つの補強リブ13により、把持用凹部12内を上下に3つの区分に、略等分に区画し、この区画により、把持用凹部12内の各区分のいずれかに、一本の指の指先を安定して位置させることができる。
なお、把持用凹部12に配設する補強リブ13の個数は上記実施例(2つ)に限定されるものではなく、1つ或いは3つ等、ボトル型容器1の大きさや把持用凹部12の形状等に応じてその個数を設定することができる。
【0041】
また、グリップ部Gの周方向に沿った周長は、一方の把持用凹部12内に親指を位置させ、他方の把持用凹部12内に他の指を位置させた状態で、グリップ部Gを把持できるようにする必要があることから、平均的な手の平の寸法に合わせて略一定した値に設定している。
【0042】
このボトル型容器1では、グリップ部Gを把持した状態において、手の平が半円状の後壁部分6にフィットするため、グリップ部Gの持ち易さを向上させることができ、ボトル型容器1を安定的に支持することが可能となる
。
【0043】
図7は、本発明のピンチグリップ式ボトル型容器を成形する、2軸延伸ブロー成形金型装置の一実施例を示す、延伸成形動作直前における半縦断した簡略図で、ブロー成形金型30は、一対の割金型と一つの底金型で構成され、一対の割金型の略中央高さ位置に設けられた凹部11成形用の成形型面部分には、ブロー成形金型30が形成するキャビティー内に出入り可能に可動入れ子32が配置されている。
【0044】
可動入れ子32は、ボトル型容器1の把持用凹部12を成形する金型部分であるが、この可動入れ子32の把持用凹部12を成形する突出側の端部部分の表面は、丸みを帯びた円滑面となっており、そして成形型面として機能する可動入れ子32の突出端部の表面は、
図8に図示するように、多数の突出高さの略等しい小突起36を突出位置させて構成された粗面化処理面35となっている。なお、34は補強リブ13を成形する型溝である。
【0045】
粗面化処理面35は、可動入れ子32の突出側の端部部分の表面に、ブラスト加工、コロナ放電加工さらにはエジィング加工等のシボ加工を施すことにより成形する。
【0046】
この粗面化処理面35を構成する多数の小突起36は、少なくとの突出端部が角取りされて円滑な曲面となっており、これにより可動入れ子32が前進して把持用凹部12を延伸成形する際に、把持用凹部12に延伸成形される部分と各小突起36との間に発生する摩擦抵抗が、極力小さくなるようにしている。
【0047】
可動入れ子32は、プリフォーム20のボトル型容器1への延伸ブロー成形動作の途中の適当な時点で、
図7の実線図示位置から仮想線図示位置に前進することにより、対向するプリフォーム20部分を把持用凹部12に延伸変形させる。なお、可動入れ子32が対向するプリフォーム20部分を把持用凹部12に延伸変形させる時点においては、対向するプリフォーム20部分は、加熱された軟化状態にあることは云うまでもない。
【0048】
この可動入れ子32の前進動作時において、対向するプリフォーム20部分(例えば、底壁12aに成形される部分)は延伸変形中であるので、可動入れ子32の入れ子型面33に対しては張設された状態で接触(
図9の実線図示参照)し、そのまま可動入れ子32の前進動作に従って把持用凹部12に成形される。
【0049】
このように、把持用凹部12に成形されるプリフォーム20部分は、可動入れ子32の粗面化処理面35に対して張設状態で接触するので、その接触は各小突起36の突出端に対して点接触状態となり、このため把持用凹部12に成形されるプリフォーム20部分と可動入れ子32の入れ子型面33との間の接触抵抗はきわめて小さくなる。それゆえ、把持用凹部12に成形されるプリフォーム20部分は、可動入れ子32の前進動作に従って無理なく延伸変形して、把持用凹部12に延伸成形されることになる。
【0050】
この可動入れ子32の前進動作による把持用凹部12の延伸成形に際して、可動入れ子32の突出端面に対向した把持用凹部12部分、すなわち底壁12aは、可動入れ子32の前進動作に従って延伸変形するので、局部的に肉厚となることがなく、このことは底壁12aの延伸変形が、周壁12dの局部延伸の発生を抑制して、周壁12dの肉薄化を防止することになる。
【0051】
可動入れ子32の前進動作が停止した後は、ブロー圧により把持用凹部12の壁(例えば底壁12a)が粗面化処理面35に押し付けられ、この押し付けにより把持用凹部12の壁面(例えば底壁12aの表面)が、
図9の二点鎖線で示した状態に変形して、把持用凹部12の壁面に小突起36の突出端部が食い込んだ状態となって、この把持用凹部12の壁面を、
図6に示した粗面化凹部面12bに成形する。
【0052】
以上、実施形態例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではなく
、周壁12dに形成される粗面化凹部面12b部分は、前側の周壁12d部分には成形しないとかとすることは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の
方法により成形されるピンチグリップ式ボトル型容器は、胴部の両側壁部分に把持用凹部を形成してグリップ部を形成し、大型ボトル容器としての持ち易さを追求するボトル分野における用途展開をさらに広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 ;ボトル型容器
2 ;口筒部
2a ;ネックリング
2b ;ネック部
3 ;肩部
3p ;パネル
3r ;稜線
4 ;胴部
4A ;前壁部分
5 ;側壁部分
6 ;後壁部分
7 ;周リブ
8 ;底部
11 ;凹部
12 ;把持用凹部
12a;底壁
12b;粗面化凹部面
12c;小穴部
12d;周壁
13 ;補強リブ
20 ;プリフォーム
30 ;ブロー成形金型
31 ;成形型面
32 ;可動入れ子
33 ;入れ子型面
34 ;型溝
35 ;粗面化処理面
36 ;小突起
G ;グリップ部
TCL;横軸中心線
Wd ;最深部幅
α ;周壁の傾斜角度
φ ;ネック部の外径寸法
O ;ボトル型容器の中心軸