(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206793
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】加熱炉の発熱体取り付け構造
(51)【国際特許分類】
F27D 11/02 20060101AFI20170925BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
F27D11/02 A
F27D1/00 R
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-79554(P2013-79554)
(22)【出願日】2013年4月5日
(65)【公開番号】特開2014-202427(P2014-202427A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219750
【氏名又は名称】東海高熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100098682
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 賢次
(72)【発明者】
【氏名】浅野 英明
【審査官】
田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】
実開平03−047650(JP,U)
【文献】
特開2011−021763(JP,A)
【文献】
実開昭60−118492(JP,U)
【文献】
特開昭59−161672(JP,A)
【文献】
特表平08−506929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 11/00−11/12
F27D 1/00− 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉の炉壁に設けた貫通穴に発熱体の端部を挿通させて炉壁に発熱体を取り付ける構造において、
複数の層からなる炉壁の貫通穴のうち最外層の貫通穴は他の層の貫通穴より大きく形成されており、貫通穴に挿通された発熱体の端部と他の層の貫通穴との間隙にセラミック繊維ウール材が充填され、
最外層の貫通穴の径より小さく他の層の貫通穴の径より大きい外径を有する環状のセラミック繊維成形ボードが炉壁の最外層側から発熱体の端部に被嵌するよう装着され、セラミック繊維成形ボードと最外層の貫通穴との間隙にセラミック繊維ウール材が充填されてなり、
加熱炉の操業時、炉壁の熱膨張による歪みに起因して発熱体が貫通穴の中心部からずれた場合でも、環状のセラミック繊維成形ボードが他の層の貫通穴を塞ぐよう、発熱体の端部の直径、セラミック繊維成形ボードの外径、セラミック繊維ウール材を充填する前記間隙の寸法との関係が規定されている
ことを特徴とする加熱炉の発熱体取り付け構造。
【請求項2】
加熱炉の炉壁に設けた貫通穴に発熱体の端部を挿通させて炉壁に発熱体を取り付ける構造において、
複数の層からなる炉壁の最外層には他の層と同じ径の貫通穴に連続して炉の外側に開口する座繰り穴が形成されており、貫通穴に挿通された発熱体の端部と他の層の貫通穴との間隙にセラミック繊維ウール材が充填され、
最外層の座繰り穴の径より小さく他の層の貫通穴の径より大きい外径を有する環状のセラミック繊維成形ボードが炉壁の最外層側から発熱体の端部に被嵌するよう装着され、セラミック繊維成形ボードと最外層の座繰り穴との間隙にセラミック繊維ウール材が充填されてなり、
加熱炉の操業時、炉壁の熱膨張による歪みに起因して発熱体が貫通穴の中心部からずれた場合でも、環状のセラミック繊維成形ボードが他の層の貫通穴を塞ぐよう、発熱体の端部の直径、セラミック繊維成形ボードの外径、セラミック繊維ウール材を充填する前記間隙の寸法との関係が規定されている
ことを特徴とする加熱炉の発熱体取り付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱炉の発熱体取り付け構造、詳しくは、炉壁に設けた貫通穴の中心部に挿通させて取り付けられた発熱体に位置ずれが生じた場合にも熱放散を遮断することができる加熱炉の発熱体取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック製品や電子部品の加熱、焼成は、通常、電気加熱方式による抵抗加熱炉を用いて行われている。発熱体としてはセラミック系の炭化けい素質発熱体が多用され、これらの発熱体は、例えば、加熱炉の長手方向に直交するよう加熱炉の上下に水平に装着され、炉内に装入された被加熱物を上下から加熱するようになっている。
【0003】
加熱炉に対する発熱体の装着は、
図4に示すように、炉体側面の炉壁5に、炉壁5に挿通する発熱体1の端部3の直径の1.3〜1.5倍程度の径を有する貫通穴9を設け、貫通穴9に発熱体1の端部3を挿通し、発熱体1の端部3と貫通穴9との間隙11にセラミック繊維ウール材13を充填して、発熱体1を貫通穴9の中心部に位置させるよう装着することにより行われる。炉壁5は、例えば、炉内部から耐火層6、断熱保温層7、保温層8からなる複数の層から構成されている。発熱体1は、炉内に位置する発熱部2、非発熱質の端部3、その外側に電極へ導かれるメタリコン部4から構成され、発熱部2、端部3は同径に形成されている。
【0004】
上記の構成において、発熱体1の端部3と貫通穴9との間隙11に充填されるセラミック繊維ウール材13は、操業時、加熱炉の炉壁からの熱放散を防ぐことを目的とするものであるが、セラミック繊維ウール材の充填量を多くすると、操業時に熱膨張に起因する歪により炉壁の断熱材や発熱体が破損するおそれがあり、セラミック繊維ウール材の充填量が少ないと、炉壁からの熱放散が多くなって省エネルギー効果が得られず、また発熱体に接続している電極部材が過熱して破損するおそれもある。
【0005】
しかしながら、セラミック繊維ウール材の適正な充填を行っても、操業時、炉壁の断熱構造である断熱保温層7、保温層8に熱膨張による歪みが生じ、この歪みに起因して発熱体1が例えば
図5に示すように貫通穴9の中心部からずれて隙間14が生じ、隙間14からの熱放散が大きくなるという難点がある。発熱体を炉壁の貫通穴と接触させないように保持する構造も提案されているが、この難点の解決に直接関係するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平7−41399号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】角健蔵、中川邦好著 「非金属発熱体」(改訂版)平成2年4月10日改訂版発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解消するために、加熱炉の炉壁への発熱体の取り付け方式について試験、検討を行った結果としてなされたものであり、その目的は、炉壁に設けた貫通穴の中心部に挿通させて取り付けられた発熱体について、操業時に炉壁の断熱構造に熱膨張による歪みが生じ、この歪みに起因して発熱体が貫通穴の中心部からずれて、炉壁の貫通穴に挿通されている発熱体の端部と貫通穴との間に隙間が生じた場合でも、隙間からの熱放散を防止することができる加熱炉の発熱体取り付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための請求項1による加熱炉の発熱体取り付け構造は、加熱炉の炉壁に設けた貫通穴に発熱体の端部を挿通させて炉壁に発熱体を取り付ける構造において、複数の層からなる炉壁の貫通穴のうち最外層の貫通穴は他の層の貫通穴より大きく形成されており、貫通穴に挿通された発熱体の端部と他の層の貫通穴との間隙にセラミック繊維ウール材が充填され、最外層の貫通穴の径より小さく他の層の貫通穴の径より大きい外径を有する環状のセラミック繊維成形ボードが炉壁の最外層側から発熱体の端部に被嵌するよう装着され、セラミック繊維成形ボードと最外層の貫通穴との間隙にセラミック繊維ウール材が充填されてな
り、加熱炉の操業時、炉壁の熱膨張による歪みに起因して発熱体が貫通穴の中心部からずれた場合でも、環状のセラミック繊維成形ボードが他の層の貫通穴を塞ぐよう、発熱体の端部の直径、セラミック繊維成形ボードの外径、セラミック繊維ウール材を充填する前記間隙の寸法との関係が規定されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2による加熱炉の発熱体取り付け構造は、加熱炉の炉壁に設けた貫通穴に発熱体の端部を挿通させて炉壁に発熱体を取り付ける構造において、複数の層からなる炉壁の最外層には他の層と同じ径の貫通穴に連続して炉の外側に開口する座繰り穴が形成されており、貫通穴に挿通された発熱体の端部と他の層の貫通穴との間隙にセラミック繊維ウール材が充填され、最外層の座繰り穴の径より小さく他の層の貫通穴の径より大きい外径を有する環状のセラミック繊維成形ボードが炉壁の最外層側から発熱体の端部に被嵌するよう装着され、セラミック繊維成形ボードと最外層の座繰り穴との間隙にセラミック繊維ウール材が充填されてな
り、加熱炉の操業時、炉壁の熱膨張による歪みに起因して発熱体が貫通穴の中心部からずれた場合でも、環状のセラミック繊維成形ボードが他の層の貫通穴を塞ぐよう、発熱体の端部の直径、セラミック繊維成形ボードの外径、セラミック繊維ウール材を充填する前記間隙の寸法との関係が規定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、炉壁に設けた貫通穴の中心部に挿通させて取り付けられた発熱体について、操業時に炉壁の断熱構造に熱膨張による歪みが生じ、この歪みに起因して発熱体が貫通穴の中心部からずれて炉壁の貫通穴に挿通されている発熱体の端部と貫通穴との間に隙間が生じた場合でも、隙間からの熱放散を防止することができる加熱炉の発熱体取り付け構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による加熱炉の発熱体取り付け構造の一実施例の要部を示す断面図である。
【
図2】本発明による加熱炉の発熱体取り付け構造の他の実施例の要部を示す断面図である。
【
図3】
図2の発熱体取り付け構造において、加熱炉の操業時、炉壁の断熱構造の熱膨張による歪みに起因して発熱体が貫通穴の中心部からずれて生じた発熱体と貫通穴との間の隙間がセラミック繊維成形ボードにより遮蔽される状態を示す断面図である。
【
図4】従来の加熱炉の発熱体取り付け構造の要部を示す断面図である。
【
図5】
図4の発熱体取り付け構造において、加熱炉の操業時、炉壁の断熱構造の熱膨張による歪みに起因して発熱体が貫通穴の中心部からずれて、発熱体と貫通穴との間に隙間が生じた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明においては、
図1に示すように、加熱炉の炉壁5に設けた貫通穴9に発熱体1の端部3を挿通させて炉壁5に発熱体1を取り付ける構造において、複数の層(
図1においては、耐火層6、断熱保温層7、保温層8から構成される)からなる炉壁5の貫通穴9のうち最外層(保温層8)の貫通穴は他の層(耐火層6、断熱保温層7)の貫通穴より大きく形成され、最外層(保温層8)の貫通穴の径より小さく他の層の貫通穴の径より大きい外径D2を有する環状のセラミック繊維成形ボード15が炉壁の最外層側から発熱体1の端部3に被嵌するよう装着されている。貫通穴9に挿通された発熱体1の端部3と他の層(耐火層6、断熱保温層7)の貫通穴との間隙11(寸法d)にセラミック繊維ウール材13が充填され、最外層(保温層8)の貫通穴とセラミック繊維成形ボード15との間隙12(寸法d)にもセラミック繊維ウール材13が充填されている。
【0015】
図2に示すように、複数の層からなる炉壁5の最外層(保温層8)には他の層(耐火層6、断熱保温層7)と同じ径の貫通穴に連続して炉の外側に開口する座繰り穴10が形成されており、貫通穴9に挿通された発熱体1の端部3と他の層(耐火層6、断熱保温層7)の貫通穴との間隙11(寸法d)にセラミック繊維ウール材13が充填され、最外層(保温層8)の座繰り穴10の径より小さく他の層の貫通穴の径より大きい外径D2を有する環状のセラミック繊維成形ボード15が炉壁5の最外層側から発熱体1の端部3に被嵌するよう装着され、最外層(保温層8)の座繰り穴10とセラミック繊維成形ボード15との間隙12(寸法d)にもセラミック繊維ウール材13が充填されてなる構成とすることもできる。
【0016】
例えば、
図2に示す構成において、加熱炉の操業時、熱膨張によって炉壁5の断熱構造(断熱保温層7、保温層8)に
図3に示すような歪みが生じ、この歪みに起因して発熱体1が貫通穴9の中心部からずれて発熱体1の端部3と貫通穴9との間に隙間14が生じた場合でも、隙間14はセラミック繊維成形ボード15により遮蔽されて熱放散を防止することができる。
【0017】
このために、加熱炉の操業時、炉壁の熱膨張による歪みに起因して発熱体1が貫通穴9の中心部からずれて発熱体1の端部3と貫通穴9との間に隙間14が生じた場合でも、環状のセラミック繊維成形ボード15が隙間14を塞ぐよう、発熱体1の端部3の直径(発熱体1の直径と同一)D1、セラミック繊維成形ボード15の外径D2、セラミック繊維ウール材13を充填する前記間隙の寸法dとの関係が規定されていることが必要である。
【0018】
図3に示すような態様においては、隙間14の寸法、最大2dよりセラミック繊維成形ボード15の発熱体1の端部3からの突出寸法((D2−D1)/2)が大きく形成される必要がある。すなわち、2d≦(D2−D1)/2の関係に規定される。このような関係を得るためには、発熱体1の端部3の径D1、セラミック繊維ウール材13を充填する間隙の寸法dは大きく変動しないから、セラミック繊維成形ボード15の外径D2を大きくすればよく、実用上は、セラミック繊維成形ボード15の外径D2を他の層(断熱保温層7)の貫通穴9径の2〜2.5倍に形成し、それに応じて最外層(保温層8)の貫通穴または座繰り穴の径を決定する。
【0019】
炉壁への発熱体の取り付け手順は以下のとおりである。
(1)発熱体1の端部3を炉壁5の貫通穴9に挿通する。
(2)発熱体1の端部3が貫通穴9の中央部に位置するように、発熱体の端部3と貫通穴9の間隙11にセラミック繊維ウール材13を充填する。
(3)環状のセラミック繊維成形ボード15を炉壁の最外層側から発熱体1の端部3に被嵌するよう装着し、セラミック繊維成形ボード15と最外層の貫通穴または座繰り穴との間隙にセラミック繊維ウール材を充填する。この場合、セラミック繊維成形ボード15の内径は発熱体1の端部3の径よりも小さく形成するのが好ましく、発熱体1の端部3をドリル代わりにして、セラミック繊維成形ボード15を発熱体の端部3に密に嵌合することができる。
(4)発熱体1のメタリコン部4と電極を結線する。結線後、発熱体を指で上下左右に押してみて、発熱体が楽に動くことを確認する。
【符号の説明】
【0020】
1 発熱体
2 発熱体の発熱部
3 発熱体の端部
4 メタリコン部
5 炉壁
6 耐火層
7 断熱保温層(炉壁の他の層)
8 保温層(炉壁の最外層)
9 貫通穴
10 座繰り穴
11 発熱体の端部と炉壁の他の層との間隙
12 セラミック繊維成形ボードと炉壁の最外層との間隙
13 セラミック繊維ウール材
14 隙間
15 セラミック繊維成形ボード
d 間隙11、12の寸法
D1 発熱体の直径
D2 セラミック繊維成形ボードの外径