(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
各種電子機器において、小型で且つ軽量で柔軟性に富むアクチュエータの必要性が高まっており、この要求に対して、高分子伸縮式の高分子アクチュエータ素子が期待されている。高分子アクチュエータ素子には、電解質として水を用いているものがあり、この水を用いた高分子アクチュエータ素子は、水分が蒸発すると動作しなくなるため、高分子アクチュエータ素子の全体を包み込むように被覆した封止構造をとる必要があった。また、電解質として有機溶媒やイオン液体など水以外のものを用いる高分子アクチュエータ素子であっても、結露や過湿などによる悪影響を避けるため、同様な封止構造を必要とする場合があった。
【0003】
このような封止構造をとった封止高分子アクチュエータとして、特許文献1では、
図14に示す高分子アクチュエータ900が提案されている。
図14は、従来例の高分子アクチュエータ900の構造を説明した断面図である。
図15は、従来例の高分子アクチュエータ900の製造方法を説明する断面図である。
【0004】
図14に示す従来例の高分子アクチュエータ900は、アクチュエータ本体915と、アクチュエータ本体915を挟んで配設された電極925a及び電極925bと、電極925a及び電極925bの外側に配設された金属層944と、電極925a及び電極925bに電圧を印加する導電線942と、それら全体を包むように被覆する封止フィルム930と、を備えて構成されている。そして、封止フィルム930は、外気を遮断する性能をもっている。これにより、アクチュエータ本体915、電極925a及び電極925bが外部と遮断されているので、高分子アクチュエータ900を、水中、溶媒中、空気中等の各種雰囲気中で長期間にわたって特性を良好に維持しながら安定して動作させることができるとしている。更に、封止フィルム930がアクチュエータ全体(アクチュエータ本体915、電極925a及び電極925b)を保護するものとして作用しているとしている。
【0005】
また、特許文献1の従来例では、高分子アクチュエータ900は、次の手順で作製することができるとしている。先ず、
図15の(B1)に示すように、封止フィルム930(高分子フィルム)上に電極925aと別の封止フィルム930上に電極925bを形成する。次に、
図15の(B2)に示すように、上記の積層体の電極925a及び電極925bに導電線942を配置して、導電性接着剤943を用いて固定する。なお、導電線942は、電気絶縁性の熱可塑性樹脂からなる高分子被膜949によって被覆されている。次に、
図15の(B3)に示すように、アクチュエータ本体915を挟んで、
図15の(B2)に示す一方の積層体の電極925aと他方の積層体の電極925bをアクチュエータ本体915に対向させて配置する。次に、
図15の(B4)では図示していないが、封止フィルム(高分子フィルム)930を外側として、アクチュエータ本体915の対向する面に、積層体の電極925a及び電極925bを加熱圧着する。その後、加熱圧着体を40℃、90%の雰囲気中に1時間放置し、加湿する。最後に、
図15の(B5)では図示していないが、一対の積層体の封止フィルム(高分子フィルム)930同士を加熱圧着して封止を行う。この時、一対の導電線942は封止フィルム(高分子フィルム)の外部に取り出される。このようにして、
図14に示す高分子アクチュエータ900が完成する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
[第1実施形態]
先ず、封止高分子アクチュエータF11について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係わる封止高分子アクチュエータF11の製造方法を説明する構成図であって、封止高分子アクチュエータF11の斜視図である。
図2は、本発明の第1実施形態の封止高分子アクチュエータF11を説明する構成図であって、
図1に示すZ1側から見た上面図である。
図3は、本発明の第1実施形態の封止高分子アクチュエータF11を説明する構成図であって、
図2に示すIII−III線における断面図である。
図4は、本発明の第1実施形態の封止高分子アクチュエータF11を説明する構成図であって、
図2に示すIV−IV線における断面図である。
【0017】
本発明の第1実施形態の封止高分子アクチュエータF11は、
図1及び
図2に示すような外観を呈し、
図3に示すように、一対の電極層12間の電圧に応じて変形する高分子アクチュエータ素子13と、高分子アクチュエータ素子13を全体的に包み込むように被覆する封止部材15と、を備えて構成される。また、本発明の第1実施形態では、封止部材15として、高分子アクチュエータ素子13の外側に形成された封止樹脂層J5と、封止樹脂層J5の外側に形成された酸化シリコン膜のシリカ層S5と、で構成している。他に、封止高分子アクチュエータF11には、
図3及び
図4に示すように、一対の電極層12のそれぞれと電気的に接続された一対の端子部材19と、高分子アクチュエータ素子13と併設された接続部材17と、を有している。
【0018】
先ず、封止高分子アクチュエータF11の高分子アクチュエータ素子13は、
図3に示すように、電解質層11と、電解質層11の厚さ方向の両面に設けられた一対の電極層12と、を備えて構成される。そして、一対の電極層12のそれぞれと電気的に接続した一対の端子部材19から電力を供給すると、一対の電極層12間の電圧に応じて、この高分子アクチュエータ素子13が変形するようになっている。
【0019】
ここで、本発明の第1実施形態の封止高分子アクチュエータF11に用いた高分子アクチュエータ素子13について、その動作原理を簡単に説明する。
図5は、高分子アクチュエータ素子13の動作原理について説明した模式図であって、
図5(a)は、本発明の第1実施形態の電解質層11と一対の電極層12におけるイオンを模式化した図であり、
図5(b)は、本発明の第1実施形態の電極層12に電圧が印加された状態を示している。
【0020】
図5(a)に示すように、高分子アクチュエータ素子13は、対向配置された一対の電極層12と、一対の電極層12との間に設けられた電解質層11と、を有し、それぞれの層の中には、陽イオンCAと陰イオンANが分散されている。そして、
図5(b)に示すように、一対の電極層12間に電圧が印加されると、一対の電極層12間に挟まれている電解質層11内に電界が発生して、一方の電極層12A(12)に陽イオンCAが移動するとともに、他方の電極層12B(12)に陰イオンANが移動する。このため、一方側を支持して支点PP(支持部分)とすると、高分子アクチュエータ素子13への電界の方向に応じて、高分子アクチュエータ素子13の他方側が大きく変位する。そして、この高分子アクチュエータ素子13の他方側を作用点LP(作用部分)とすると、各種アクチュエータとして利用することができる。なお、高分子アクチュエータ素子13への電界の方向を変えることで、高分子アクチュエータ素子13の作用方向を変えることができるし、高分子アクチュエータ素子13への電圧の強さを変えることで、電圧に応じて変形する変形量を変えることもできる。
【0021】
次に、上述した高分子アクチュエータ素子13について詳しく説明する。電解質層11は、ベースとなるポリマー(樹脂材料)にイオン液体を混合したゲル状のフィルムであり、
図3に示すように、一対の電極層12に挟まれている。電解質層11の作製は、イオン液体及び樹脂材料(ポリマー)を溶媒に溶かしてキャスト液を作製し、型枠にキャスト液をキャスティングした後、真空乾燥して溶媒を蒸発させることにより行われる。また、電解質層11のポリマー(樹脂材料)の材質として、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリメチルメタクリレート(PMMA)等を用いることができる。
【0022】
一対の電極層12は、電解質層11と同じベースとなるポリマー(樹脂材料)及びイオン液体と、導電性フィラーを有して構成され、ポリマー(樹脂材料)及びイオン液体中に導電性フィラーを混合してゲル状としたものである。一対の電極層12の導電性フィラーとしては、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、金粒子、白金粒子、ニッケル粒子等を用いることができる。以上のように構成された電解質層11及び一対の電極層12を用いると、低い電圧で大きな変位が得られるようになる。
【0023】
次に、封止高分子アクチュエータF11の封止部材15について説明をする。
図6は、本発明の第1実施形態に係わる封止高分子アクチュエータF11において使用する封止樹脂の化学構造式である。
図7は、本発明の第1実施形態に係わる封止高分子アクチュエータにおいて使用するポリシラザン及び酸化シリコンの化学構造式である。
【0024】
封止部材15は、前述したように、高分子アクチュエータ素子13の外側に形成された封止樹脂層J5と、封止樹脂層J5の外側に形成された酸化シリコン膜のシリカ層S5と、で構成している(
図3を参照)。また、封止部材15には、一対の端子部材19を露出するための貫通孔15hが厚み方向(
図3に示すZ方向)にそれぞれ設けられている。
【0025】
封止部材15の封止樹脂層J5は、
図6に例示するようなパラキシリレン系ポリマーを用いており、
図3に示すように、高分子アクチュエータ素子13と一対の端子部材19と接続部材17とを全体的に包み込むように、高分子アクチュエータ素子13に密着して被覆している。また、封止樹脂層J5の厚みが約10μmと非常に薄いのにも関わらず、水分を透過しない優れたバリア性能を有している。また、封止樹脂層J5の厚みが約10μmと非常に薄いので、高分子アクチュエータ素子13の変形に対して悪影響を及ぼさない効果を奏する。また、封止樹脂層J5は、一対の電極層12の表面の凹凸を埋めて平坦化する機能を有しており、封止樹脂層J5の外側に形成されるシリカ層S5に対して、一対の電極層12の表面の凹凸によるシリカ層S5への悪影響を低減して、シリカ層S5を均一に成膜させる効果も奏する。
【0026】
封止部材15の酸化シリコン膜のシリカ層S5は、
図7(b)に例示するような骨格を有した構造をしており、封止樹脂層J5を全体的に包み込むようにして外側に形成されている。このシリカ層S5は、無機膜なので、一般に用いられている合成樹脂膜と比較して、水分を透過しないより優れたバリア性能を有している。従って、この封止部材15により、高分子アクチュエータ素子13に対する水分の侵入或いは放出を防ぐことができ、高分子アクチュエータ素子13の封止を確実に行うことができる。
【0027】
次に、封止高分子アクチュエータF11の一対の端子部材19は、導電性の金属材からなり、矩形の形状をしており、
図3に示すように、その一端側が高分子アクチュエータ素子13の一対の電極層12と当接して配設され、
図4に示すように、その他端側が接続部材17の厚さ方向の両面と接するように配置されている。また、一対の端子部材19は、その他端側で、封止部材15の貫通孔15hの部分で露出しており、この露出したパッド電極部19pから、高分子アクチュエータ素子13に電圧を付与することができる。
【0028】
最後に、封止高分子アクチュエータF11の接続部材17は、ポリエチレンテレフタレート(PET、Polyethylene terephthalate)等の合成樹脂を用い、シート状の形状をしており、
図3に示すように、高分子アクチュエータ素子13の側端面に当接して併設されるとともに、
図4に示すように、一対の端子部材19に挟持された位置に配設されている。この接続部材17が設けられたことで、封止高分子アクチュエータF11のこの部分を支持部分とすることができ、この部分の封止部材15の変形を防止し、封止部材15の耐性を向上させることができる。また、接続部材17に対応する部分にパッド電極部19pを設けることで、高分子アクチュエータ素子13から距離を離して、外部との接続部を設けることができる。これらのことにより、封止部材15の封止効果を向上させることができる。
【0029】
以上のように、本発明の第1実施形態に係わる封止高分子アクチュエータF11は、高分子アクチュエータ素子13と一対の端子部材19と接続部材17とを封止部材15で被覆し、封止部材15の貫通孔15hにおけるパッド電極部19pから、高分子アクチュエータ素子13の一対の電極層12間に電圧を印加することができる。これにより、封止高分子アクチュエータF11は、貫通孔15h以外の部分が封止部材15によって外部と遮断されて封止されているので、シンプルな形状でありながら、高分子アクチュエータ素子13に対する水分の侵入或いは放出を防ぐことができ、高分子アクチュエータ素子13の封止を確実に行うことができる。更に、封止部材15として、優れたバリア性能を有している封止樹脂層J5とシリカ層S5を用いて構成しているので、高分子アクチュエータ素子13に対する水分の侵入或いは放出をより防ぐことができる。
【0030】
次に、封止高分子アクチュエータF11の製造方法P101について説明する。
図8は、本発明の第1実施形態における封止高分子アクチュエータF11の製造方法P101を説明する断面工程図であって、
図8(a)は、配設工程PS1の途中を示し、
図8(b)は、配設工程PS1の終了後を示し、
図8(c)は、樹脂層形成工程P12の終了後を示し、
図8(d)は、被覆工程P13の終了後を示し、
図8(e)は、紫外線照射工程P14の終了後を示し、
図8(f)は、孔加工工程P15の終了後を示し、
図8(g)は、切断工程PV6の終了後を示している。
【0031】
本発明の第1実施形態に係わる封止高分子アクチュエータF11の製造方法P101は、先ず、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、各部材を配設する配設工程PS1を行う。この配設工程PS1は、図示していないキャリアフィルム上に、
図8(a)に示すように、一方の端子部材19(19A)、高分子アクチュエータ素子13、接続部材17及び支持体SPを載置する。そして、
図8(b)に示すように、一方の端子部材19(19A)と他方の端子部材19(19B)とで高分子アクチュエータ素子13及び接続部材17を挟持するように、他方の端子部材19(19B)を配設する。その際に、電気的接続を確実にするためと支持体SPを把持して移動できるために、高分子アクチュエータ素子13の電極層12と一対の端子部材19と、を導電性接着剤で接着させおく。なお、
図1に示す支持体SPは、紙面手前に向けて断面部がくるように配設されているが、説明をし易くするため、
図8に示す支持体SPは、端子部材19が敷設された長手方向と同じ方向に延出して示している。
【0032】
次に、封止部材15を形成する工程を行う。
【0033】
先ず、
図8(c)に示すように、高分子アクチュエータ素子13に封止樹脂層J5を形成する樹脂層形成工程P12を行う。この樹脂層形成工程P12は、先ず、高分子アクチュエータ素子13、接続部材17及び支持体SPの試料を真空にした蒸着室にセットする。次に、
図6に例示するようなパラキシリレン系ポリマーとなる原料ダイマー粉末が加熱されて熱分解されたモノマーガスを蒸着室に導入する。そして、この反応性に富んだモノマーガスは、蒸着室中の常温の試料に接した表面で重合し、高分子のパラキシリレン系ポリマーとなり、封止樹脂層J5が形成される。このような封止樹脂層J5の形成は、常温で行なわれ、成膜時の温度上昇は数度にとどまり、封止樹脂層J5での内部応力を低く抑えることができる。しかも、蒸着室中に導入したモノマーガスが物体表面で重合して連続膜を形成するので、極薄ながら物体表面に均一な皮膜を得ることができる。
【0034】
次に、
図8(d)に示すように、封止樹脂層J5の外側に、
図7(a)に示すポリシラザン(ペルヒドロポリシラザン)(
図8(d)では、PHPSで示している)を塗布する被覆工程P13を行う。この被覆工程P13は、封止樹脂層J5が形成された試料を液状のポリシラザンが満たされた容器にディッピングした後、引き上げて、所望の膜厚になるまで試料を回転している。
【0035】
最後に、
図8(e)に示すように、ポリシラザンに紫外線を照射する紫外線照射工程P14を行う。この紫外線照射工程P14は、封止樹脂層J5にポリシラザンが被覆された試料に、エキシマランプを用いて、波長が172nmの紫外線を照射する。これにより、
図7(a)に示すポリシラザンが、
図7(b)に示す酸化シリコン膜となり、封止部材15であるシリカ層S5が形成される。これにより、高温を用いてポリシラザンを硬化する場合や高価な真空装置を用いて酸化シリコン膜を成膜する場合と比較して、容易に酸化シリコン膜を作製することができる。
【0036】
以上により、封止部材15が形成されるが、本発明の第1実施形態に係わる封止高分子アクチュエータF11の製造方法P101では、高分子アクチュエータ素子13に封止部材15である封止樹脂層J5と酸化シリコン膜のシリカ層S5を形成する工程を有しているので、高分子アクチュエータ素子13を封止性能の良い封止部材15で容易に封止することができる。
【0037】
次に、
図8(f)に示すように、封止部材15に貫通孔15hを設ける孔加工工程P15を行う。孔加工工程P15では、パッド電極部19pに対応する封止部材15の位置に、型を用いて矩形状に切れ目を入れ、その部分の封止部材15を引き剥がしている。このようにして、貫通孔15hが設けられ、パッド電極部19pが外部にさらされる。これにより、パッド電極部19pから高分子アクチュエータ素子13の一対の電極層12間に電圧を印加するための貫通孔15hを容易に作製することができる。また、型を用いて切れ目を入れる加工の際に、接続部材17が加工圧の受け部になるので、孔明け加工をし易くできる。また、高分子アクチュエータ素子13に併設させた接続部材17の部分で、孔明け加工を行っているので、高分子アクチュエータ素子13への悪影響を低減することができる。
【0038】
最後に、
図8(g)に示すように、余分な支持体SPを切断する切断工程PV6を行う。切断工程PV6では、封止部材15からはみ出している部分の支持体SPを、型を用いて切断している。
【0039】
このようにして、本発明の第1実施形態の封止高分子アクチュエータF11を作製することができる。
【0040】
以上のように構成された本発明の第1実施形態に係わる封止高分子アクチュエータF11の製造方法P101における、効果について、以下に纏めて説明する。
【0041】
本発明の第1実施形態に係わる封止高分子アクチュエータF11の製造方法P101は、高分子アクチュエータ素子13に封止部材15である封止樹脂層J5と酸化シリコン膜のシリカ層S5を形成する工程を有しているので、高分子アクチュエータ素子13を封止性能の良い封止部材15で容易に封止することができる。特に、ポリシラザンに紫外線を照射して酸化シリコン膜の封止部材15が容易に得られるので、高温を用いてポリシラザンを硬化する場合や高価な真空装置を用いて酸化シリコン膜を成膜する場合と比較して、容易に酸化シリコン膜を作製することができる。これらのことにより、高分子アクチュエータ素子13の封止を確実にしかも容易に行うことができる。
【0042】
また、パッド電極部19pに対応する位置の封止部材15に貫通孔15hを設ける孔加工工程P15を有しているので、パッド電極部19pから高分子アクチュエータ素子13の一対の電極層12間に電圧を印加することができる。このことにより、シンプルな形状でありながら、高分子アクチュエータ素子13に対する水分の侵入或いは放出を防ぐことができる封止高分子アクチュエータF11を容易に作製することができる。更に、また、高分子アクチュエータ素子13に併設させた接続部材17の部分で、孔明け加工を行っているので、高分子アクチュエータ素子13への悪影響を低減することができる方法である。
【0043】
[第2実施形態]
先ず、封止高分子アクチュエータF21について説明する。
図9は、本発明の第2実施形態に係わる封止高分子アクチュエータF21の製造方法を説明する構成図であって、封止高分子アクチュエータF21の斜視図である。
図10は、本発明の第2実施形態の封止高分子アクチュエータF21を説明する構成図であって、
図9に示すZ1側から見た上面図である。
図11は、本発明の第2実施形態の封止高分子アクチュエータF21を説明する構成図であって、
図10に示すXI−XI線における断面図である。
図12は、本発明の第2実施形態の封止高分子アクチュエータF21を説明する構成図であって、
図10に示すXII−XII線における断面図である。また、第2実施形態の封止高分子アクチュエータF21は、第1実施形態に対し、封止樹脂層J5を設けていない構成が主に異なる。なお、第1実施形態と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0044】
本発明の第2実施形態の封止高分子アクチュエータF21は、
図9及び
図10に示すような外観を呈し、
図11に示すように、一対の電極層12間の電圧に応じて変形する高分子アクチュエータ素子13と、高分子アクチュエータ素子13を全体的に包み込むように被覆する封止部材25と、を備えて構成される。他に、封止高分子アクチュエータF21には、
図11及び
図12に示すように、一対の電極層12のそれぞれと電気的に接続された一対の端子部材29と、高分子アクチュエータ素子13と併設された接続部材27と、を有している。
【0045】
先ず、封止高分子アクチュエータF21の高分子アクチュエータ素子13は、第1実施形態と同様な高分子アクチュエータ素子を用いており、
図11に示すように、電解質層11と、電解質層11の厚さ方向の両面に設けられた一対の電極層12と、を備えて構成される。そして、一対の電極層12のそれぞれと電気的に接続した一対の端子部材29から電力を供給すると、一対の電極層12間の電圧に応じて、この高分子アクチュエータ素子13が変形するようになっている。
【0046】
次に、封止高分子アクチュエータF21の封止部材25は、第1実施形態と同様に、
図7(b)に例示するような骨格を有した酸化シリコン膜を用いており、高分子アクチュエータ素子13と一対の端子部材29の一部と接続部材27とを全体的に包み込むように、高分子アクチュエータ素子13に密着して被覆している。この封止部材25は、無機膜なので、一般に用いられている合成樹脂膜と比較して、水分を透過しないより優れたバリア性能を有している。従って、この封止部材25により、高分子アクチュエータ素子13に対する水分の侵入或いは放出を防ぐことができ、高分子アクチュエータ素子13の封止を確実に行うことができる。
【0047】
次に、封止高分子アクチュエータF21の一対の端子部材29は、導電性の金属材からなり、矩形の形状をしている。一方の端子部材29Aは、
図11に示すように、その一端側が高分子アクチュエータ素子13の一方の電極層12A(12)と当接して配設され、その他端側が封止部材25を貫通して外側に露出している。また、他方の端子部材29Bは、図示はしていないが、同様にして、その一端側が高分子アクチュエータ素子13の他方の電極層12B(12)と当接して配設され、その他端側が封止部材25を貫通して外側に露出している。この露出した他端側の端子部材29(29A、29B)から、高分子アクチュエータ素子13に電圧を付与することができる。
【0048】
最後に、封止高分子アクチュエータF21の接続部材27は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂を用い、シート状の形状をしており、
図11に示すように、高分子アクチュエータ素子13の側端面に当接して併設されるとともに、
図12に示すように、一対の端子部材29(29A、29B)の間に介在した位置に配設されている。この接続部材27が設けられたことで、封止高分子アクチュエータF21のこの部分を支持部分とすることができ、この部分の封止部材25の変形を防止し、封止部材25の耐性を向上させることができるので、封止部材25の封止効果を向上させることができる。
【0049】
以上のように、本発明の第2実施形態に係わる封止高分子アクチュエータF21は、高分子アクチュエータ素子13と一対の端子部材29(29A、29B)の一部と接続部材27とを封止部材25で被覆し、露出した一対の端子部材29(29A、29B)から、高分子アクチュエータ素子13の一対の電極層12(12A、12B)間に電圧を印加することができる。これにより、封止高分子アクチュエータF21は、封止部材25によって外部と遮断されて封止されているので、シンプルな形状でありながら、高分子アクチュエータ素子13に対する水分の侵入或いは放出を防ぐことができ、高分子アクチュエータ素子13の封止を確実に行うことができる。更に、封止部材25として、優れたバリア性能を有している酸化シリコン膜を用いて構成しているので、高分子アクチュエータ素子13に対する水分の侵入或いは放出をより防ぐことができる。
【0050】
次に、封止高分子アクチュエータF21の製造方法P102について説明する。
図13は、本発明の第2実施形態における封止高分子アクチュエータF21の製造方法P102を説明する断面工程図であって、
図13(a)は、配設工程PS1の途中を示し、
図13(b)は、配設工程PS1の終了後を示し、
図13(c)は、被覆工程P23の終了後を示し、
図13(d)は、紫外線照射工程P24の終了後を示し、
図13(e)は、切断工程PV6の終了後を示している。
【0051】
本発明の第2実施形態に係わる封止高分子アクチュエータF21の製造方法P102は、先ず、
図13(a)及び
図13(b)に示すように、各部材を配設する配設工程PS1を行う。この配設工程PS1は、図示していないキャリアフィルム上に、
図13(a)に示すように、一方の端子部材29A、高分子アクチュエータ素子13及び接続部材27を載置する。なお、一方の端子部材29Aには、その後の工程中で把持される支持部Spが設けられている。
【0052】
次に、配設工程PS1は、
図13(b)に示すように、他方の端子部材29Bを高分子アクチュエータ素子13の電極層12B側に配設する。その際に、電気的接続を確実にするためと端子部材29Aに設けられた支持部Spを把持して移動できるために、高分子アクチュエータ素子13の電極層12(12A、12B)と一対の端子部材29(29A、29B)と、を導電性接着剤で接着させおく。
【0053】
次に、封止部材25を形成する工程を行う。
【0054】
先ず、
図13(c)に示すように、高分子アクチュエータ素子13の外側に、
図7(a)に示すポリシラザン(ペルヒドロポリシラザン)を塗布する被覆工程P23を行う。この被覆工程P23は、高分子アクチュエータ素子13を液状のポリシラザンが満たされた容器にディッピングした後、引き上げて、所望の膜厚になるまで試料を回転している。
【0055】
次に、
図13(d)に示すように、ポリシラザンに紫外線を照射する紫外線照射工程P24を行う。この紫外線照射工程P24は、高分子アクチュエータ素子13にポリシラザンが被覆された試料に、エキシマランプを用いて、波長が172nmの紫外線を照射する。これにより、
図7(a)に示すポリシラザンが、
図7(b)に示す酸化シリコン膜となり、封止部材25が形成される。これにより、高分子アクチュエータ素子13を封止性能の良い封止部材25で容易に封止することができる。特に、ポリシラザンに紫外線を照射して酸化シリコン膜の封止部材25が容易に得られるので、高温を用いてポリシラザンを硬化する場合や高価な真空装置を用いて酸化シリコン膜を成膜する場合と比較して、容易に酸化シリコン膜を作製することができる。
【0056】
最後に、
図13(e)に示すように、余分な支持部Spを切断する切断工程PV6を行う。切断工程PV6では、型を用いて、支持部Spを切断している。
【0057】
このようにして、本発明の第2実施形態の封止高分子アクチュエータF21を作製することができる。
【0058】
以上のように構成された本発明の第2実施形態に係わる封止高分子アクチュエータF21の製造方法P102における、効果について、以下に纏めて説明する。
【0059】
本発明の第2実施形態に係わる封止高分子アクチュエータF21の製造方法P102は、高分子アクチュエータ素子13に酸化シリコン膜の封止部材25を形成する工程を有しているので、高分子アクチュエータ素子13を封止性能の良い封止部材25で容易に封止することができる。特に、ポリシラザンに紫外線を照射して酸化シリコン膜の封止部材25が容易に得られるので、高温を用いてポリシラザンを硬化する場合や高価な真空装置を用いて酸化シリコン膜を成膜する場合と比較して、容易に酸化シリコン膜を作製することができる。これらのことにより、高分子アクチュエータ素子13の封止を確実にしかも容易に行うことができる。
【0060】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0061】
<変形例1>
上記第1実施形態では、樹脂層形成工程P12及び被覆工程P13において、支持体SPを掴んで工程を行っていたが、端子部材19のパッド電極部19pに対応する位置を治具で掴み、工程を行うようにしても良い。これにより、治具で掴んだ部分には、封止樹脂層J5及びシリカ層S5が形成されず、治具から取り外した際には、この部分に開口部が自ずと形成される。このことにより、この開口部を貫通孔とし、貫通孔15hを設ける孔加工工程P15を省略することができるので、封止高分子アクチュエータF11の作製を容易にすることができる。
【0062】
<変形例2>
上記第1実施形態では、封止樹脂層J5として、パラキシリレン系ポリマーを蒸着により形成したが、封止樹脂層J5はポリマーフィルムにて形成されていても良い。この場合に、封止樹脂層J5と高分子アクチュエータ素子13の間に粘着剤を介していても良い。封止樹脂層J5として用いることができるポリマーフィルムとしては、透湿性の小さいポリマーが好ましく、さらに無機膜を蒸着して透湿性を抑えたフィルムを用いても良い。
【0063】
<変形例3>
上記第2実施形態の封止高分子アクチュエータF21の外側に、更に封止樹脂層を形成してもよい。
【0064】
<変形例4>
上記実施形態では、接続部材(17、27)を好適に用いたが、接続部材(17、27)を用いない構成でも良い。
【0065】
本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。