特許第6206824号(P6206824)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6206824
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】フラット研削砥石の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24D 18/00 20060101AFI20170925BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20170925BHJP
   B24D 5/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   B24D18/00
   B24D3/00 340
   B24D3/00 310F
   B24D5/00 P
   B24D3/00 320B
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-203046(P2016-203046)
(22)【出願日】2016年9月27日
【審査請求日】2017年2月8日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509153364
【氏名又は名称】伊藤 幸男
(72)【発明者】
【氏名】松原 守
(72)【発明者】
【氏名】武田 幸久
(72)【発明者】
【氏名】子安 玲
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 光希
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幸男
【審査官】 中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−045576(JP,A)
【文献】 実開平03−100068(JP,U)
【文献】 実開平02−104969(JP,U)
【文献】 特開平10−193269(JP,A)
【文献】 特開2007−061943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/00−3/34
B24D 5/00−5/16
B24D 18/00
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台金の外周面に網目シート一層又は多層に巻付けられており、上記網目シートの外周面に台金の軸芯方向に格子状の隙間一定の間隔で間欠的に設けられるようにダイヤ,CBN電着砥粒又はWA、GC砥粒等の砥粒を固着させたフラット研削砥石の製造方法であって
台金の外周に一層又は多層に網目シートを巻き付ける巻付工程と、全て電気絶縁質からなる治具の円形基板に直立させた中心軸に台金を嵌合する装着工程と、上記台金外周で網目シートの外周面を上記円形基板の外周上面に相互に格子状の僅かな隙間を残して等間隔で環状に直立させた棒材当接する当接工程と、上記円形基板に直立させた電気絶縁質の中心軸に保持円板をこの中心孔に嵌合するとともに該保持円板の外周縁面に開けた多数の係合孔に上記棒材の上端(自由端)を係合、中心軸の上端螺子部にナットを螺合して締結するセットアップ工程と、上記網目シートの外周面に棒材が存在しない隙間に砥粒を固着する砥粒固着工程と、ナットの緩めで保持円板を開放して台金の外周網目シートに砥粒を固着して形成したフラット研削砥石を治具から離脱する離脱工程と、からなることを特徴とするフラット研削砥石の製造方法。
【請求項2】
網目シート円板状に成型された網目円板は、一層又は多層に積層された円板積層体であり、上記円板積層体の外周面に当該円板積層体の軸芯方向に格子状の隙間一定の間隔で間欠的に設けられるようにダイヤ,CBN電着砥粒又はWA、GC砥粒等の砥粒を固着させたフラット研削砥石の製造方法であって、
網目シートを円板状に切断成型した網目円板を積層して円板積層体とする積層工程と、全て電気絶縁質からなる治具の円形基板に直立させた中心軸に上記円板積層体を嵌合する装着工程と、上記円板積層体の外周面を上記円形基板の外周上面に相互に格子状の僅かな隙間を残して等間隔に環状に直立させた棒材で当接する当接工程と、上記円形基板に直立させた電気絶縁質の中心軸に保持円板の中心孔を嵌合するとともに該保持円板の外周縁面に開けた多数の係合孔に上記棒材の上端(自由端)を係合、中心軸の上端螺子部にナットを螺合して締結するセットアップ工程と、上記円板積層体の外周面に棒材が存在しない隙間に砥粒を固着する砥粒固着工程と、ナットの緩めで保持円板を開放して円板積層体の外周に砥粒を固着して形成したフラット研削砥石を治具から離脱する離脱工程と、からなることを特徴とするフラット研削砥石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網目シート又は網目円板は、鉄系金属,非鉄,石油系繊維,植物系繊維,炭素繊維,セルロースナノファイバー,不織布等の網目シートを台金に一層又は多層に巻付けて成型するか、網目円板を一層又は複数枚積層して成型された砥石円板となし、上記外周に砥粒を固着したフラット研削砥石であり、且つこの製造方法に係り、特に、各種砥粒を砥石外周面に格子状の隙間を合理的手段により形成させたフラット研削砥石とこの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金網体や繊維布や不織布他の網目シートを円板に形状し、この外周面に電着他の公知の固着手段により各種砥粒を固着させた研削砥石が提供されている。一枚構成の研削砥石による薄板切断用から、複数枚を積層して幅広な研削砥石としてワークの平面研削を行うフラット砥石。更に、金網体や繊維布や不織布他のシートをカップ状体とし、この先端円周に固着させた砥粒により板材の穴明け研削砥石として提供されている。上記各砥石は、金網体や繊維布や不織布他のシートを基体(骨組体)としているから、金網体や繊維布を構成する網目穴を介し、クーラント液(冷却液)を砥石内に介して砥粒まで供給できるメリットがある。
【0003】
以下、上記金網体や繊維布や不織布他のシート体による研削砥石が多数提供されているが、その一つの公知例を説明する。
研削工具において、砥粒の保持力を高め、耐用寿命を増大し、且つ切削屑の排除を良好にし、高精度の加工を高速度に行えるよう改良したものがある。より具体的には、炭素、ガラス、セラミックス、熱硬化性樹脂、金属等の繊維を、織、編、もしくは不織により多層に多孔質に形成したチューブ1に、多孔質の穴の中から表面にかけて砥粒2を固着する。固着は電気メッキ、無電解メッキとか、PVD、CVDの気相メッキ、レーザー溶着による。この砥粒2を固着したチューブ1より成る研削部材をシャンク3に固定して取付け、シャンク3には中心軸に冷却液の供給孔3aとチューブ1の嵌合部分に開口3bが形成され、多孔質チューブの穴1aから冷却液の噴出ができるようにして成るものでがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開平5−208371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特開平5−208371号公報における研削工具は、炭素、ガラス、セラミックス、熱硬化性樹脂、金属等の繊維を、織、編、もしくは不織により多層に多孔質に形成したチューブ1に、多孔質の穴の中から表面にかけて砥粒2を固着する。これにより、砥粒2を固着したチューブ1より成る研削部材をシャンク3に固定して取付け、シャンク3には中心軸に冷却液の供給孔3aとチューブ1の嵌合部分に開口3bが形成され、多孔質チューブの穴1aから冷却液の噴出ができる。然し乍ら、砥石外周面は多孔質の穴の中から表面にかけて砥粒2が固着されているから狭い隙間の穴となり、短期間の間に穴の目詰まりを起こしてしまい、初期の冷却液の噴出が維持できなくなると言う、問題点が指摘される。
【0007】
また、ねじ棒(先端を砥石の台金の様に外径を太くした棒状体)の先端に、ナイロン樹脂を嵌め込みこのナイロン樹脂の外周に多孔質の砥粒を焼結固着させたステック状砥石が提供されている。このような砥石のねじ棒の中心孔から冷却液を供給しても、短期間の間に穴の目詰まりを起こしてしまい、初期の冷却液の噴出が維持できなくなると言う、問題点が指摘される。
【0008】
本願発明者は、上記の如く多孔質の環状砥石等々が持つ問題点に鑑みてなされた。即ち、網目シート又は網目円板は、鉄系金属,非鉄,石油系繊維,植物系繊維,炭素繊維,セルロースナノファイバー,不織布等の網目シートを台金に一層又は多層に巻付けて成型するか、網目円板を複数枚積層して成型された砥石円板に対して、上記砥石外周に砥粒を固着したフラット研削砥石としたものであり、且つこの製造方法に係り、特に、冷却液の噴出が安定して長期間維持できるように、砥粒を外周周辺に格子状の隙間を合理的手段により形成して固着する砥粒固着したフラット研削砥石とこの製造方法を研究開発した。
【0009】
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載のフラット研削砥石の製造方法は、台金の外周面に網目シートが一層又は多層に巻付けられており、上記網目シートの外周面に台金の軸芯方向に格子状の隙間が一定の間隔で間欠的に設けられるようにダイヤ,CBN電着砥粒又はWA、GC砥粒等の砥粒を固着させたフラット研削砥石の製造方法であって、台金の外周に一層又は多層に網目シートを巻き付ける巻付工程と、全て電気絶縁質からなる治具の円形基板に直立させた中心軸に台金を嵌合する装着工程と、上記台金外周で網目シートの外周面を上記円形基板の外周上面に相互に格子状の僅かな隙間を残して等間隔で環状に直立させた棒材当接する当接工程と、上記円形基板に直立させた電気絶縁質の中心軸に保持円板をこの中心孔に嵌合するとともに該保持円板の外周縁面に開けた多数の係合孔に上記棒材の上端(自由端)を係合、中心軸の上端螺子部にナットを螺合して締結するセットアップ工程と、上記網目シートの外周面に棒材が存在しない隙間に砥粒を固着する砥粒固着工程と、ナットの緩めで保持円板を開放して台金の外周網目シートに砥粒を固着して形成したフラット研削砥石を治具から離脱する離脱工程と、からなることを特徴とする。
【0014】
請求項2記載のフラット研削砥石の製造方法は、網目シートが円板状に成型された網目円板は、一層又は多層に積層された円板積層体であり、上記円板積層体の外周面に当該円板積層体の軸芯方向に格子状の隙間が一定の間隔で間欠的に設けられるようにダイヤ,CBN電着砥粒又はWA、GC砥粒等の砥粒を固着させたフラット研削砥石の製造方法であって、網目シートを円板状に切断成型した網目円板を積層して円板積層体とする積層工程と、全て電気絶縁質からなる治具の円形基板に直立させた中心軸に上記円板積層体を嵌合する装着工程と、上記円板積層体の外周面を上記円形基板の外周上面に相互に格子状の僅かな隙間を残して等間隔に環状に直立させた棒材で当接する当接工程と、上記円形基板に直立させた電気絶縁質の中心軸に保持円板の中心孔を嵌合するとともに該保持円板の外周縁面に開けた多数の係合孔に上記棒材の上端(自由端)を係合、中心軸の上端螺子部にナットを螺合して締結するセットアップ工程と、上記円板積層体の外周面に棒材が存在しない隙間に砥粒を固着する砥粒固着工程と、ナットの緩めで保持円板を開放して円板積層体の外周に砥粒を固着して形成したフラット研削砥石を治具から離脱する離脱工程と、からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載のフラット研削砥石の製造方法によると、台金の外周に一層又は多層に網目シートを巻き付けたフラット研削砥石の製作は、上記網目シートが複数の棒材間に隙間を開けて当接するから、網目シートの外周面には確実且つ正確な格子状の隙間を形成しつつこの隙間だけに砥粒電着又は溶着できる。これにより、従来のように絶縁体で電着等の不要箇所をマスク掛けとその除去作業が無くなる。即ち、治具は離型剤が不要で、電着後にフラット研削砥石が治具から分離しやすく砥石の製造時間が短縮されるとともに、治具が繰返し使用できるから、低廉化が可能の他、網目シートの加工が容易となり、砥石製作の簡易化に寄与する。
【0019】
上記請求項2のフラット研削砥石の製造方法によると、網目シートを円板状に成型して網目円板とし、これを一層又は多層に積層された円板積層体による方法であるから、上記円板積層体の外周面には複数の棒材間に隙間を開けて当接するから、網目シートの外周面には確実且つ正確な格子状の隙間を形成しつつこの隙間だけに砥粒電着又は溶着(総称して固着と言う)できる。これにより、従来のように絶縁体で電着の不要箇所をマスク掛けとその除去作業が無くなる。即ち、治具は離型剤が不要で、電着後にフラット研削砥石が治具から分離しやすく砥石の製造時間が短縮されるとともに、治具が繰返し使用できるから低廉化が可能の他、網目シートから円板積層体への加工が容易となり、砥石製作の簡易化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】 本発明の第1及び第2実施の形態を示し、各フラット研削砥石の製造斜視図である。
図2】 本発明の各フラット研削砥石の治具の側面図である。
図3】 本発明の第3実施の形態を示し、フラット研削砥石の製造工程図である。
図4】 本発明の第3実施の形態を示し、フラット研削砥石のフローチャート図である。
図5】 本発明の第4実施の形態を示し、フラット研削砥石のフローチャート図である。
図6】 本発明の第3と第4実施のフラット研削砥石の砥粒の電着工程図である。
図7】 本発明のフラット研削砥石による冷却液の噴射作用図である。
図8】 フラット研削砥石の砥粒の電着作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1図8により、本発明のフラット研削砥石とこの製造方法を順次に説明する。
【実施例】
【0023】
先ず、図1において、本発明の第1実施及び第2実施の形態の各フラット研削砥石10,20の構成と製作手順を説明する。先ず、網目シート2を台金1の外周面1Aに巻付けたフラット研削砥石10は、網目シート2を台金1の外周面1Aに一層又は多層に巻付けられる。そして、上記網目シート2の外周面2Aには、台金1の軸芯方向Oに格子状の隙間Xを一定の間隔で間欠的にダイヤ,CBN電着砥粒又はWA、GC砥粒等4を電着又は溶着(総称して固着と言う)させた構成である。
【0024】
また、フラット研削砥石20の構成は、網目シート2を円板状に成型された網目円板20Aとした砥石円板20Bは、一層又は多層に積層された円板積層体20Cであり、上記円板積層体の外周面20Dにこの軸芯方向Oに格子状の隙間Xを一定の間隔で間欠的にダイヤ,CBN電着砥粒又はWA、GC砥粒等4を電着又は溶着(総称して固着と言う)させた構成である。また、上記一層又は多層に積層された円板積層体20Cは、両端面を把持するフランジ5,6により、1つのフラット研削砥石20として形成されている。
【0025】
尚、上記研削砥石10,20において、網目シート2又は網目円板20Aは、繊維で織られたもので、繊維の素材は、鉄系金属,非鉄,石油系繊維,植物系繊維,炭素繊維,セルロースナノファイバー,不織布等の何れか又は混合から成る繊維を織った網又は不織の網目のシートである。そして、導電繊維の網には、超砥粒を電着し固定する。絶縁体繊維の網は、超砥粒を溶着、蒸着し固定する。電着ユニットとなる治具30(図2に後記する)は、網目シート2又は網目円板20A以外を絶縁体(プラスチック、陶器、磁器)にするとマスクが不必要になる。
【0026】
上記本発明の第1実施の形態となる各フラット研削砥石10によると、網目シート2を台金1の外周面1Aに外周巻付けたフラット研削砥石10は、網目シート2を台金1の外周面1Aに一層又は多層に巻付けられる。そして、上記網目シート2の外周面2Aには、台金1の軸芯方向Oに格子状の隙間Xを一定の間隔で間欠的にダイヤ,CBN電着砥粒又はWA、GC砥粒等4を電着又は溶着させている。これにより、従来の網目砥石と比べて、必要にして最少限の網目シート2と、必要にして最少限の砥粒4となり、低コスト化が図られる。更に、図7に示すように、工具ホルダHに取付けられたフラット研削砥石10又は20内の研削液Cは、外周面2A、20Dが格子状の間欠的な砥粒4の無い隙間Xの領域から外部へ浸透する。これで、フラット研削砥石10内の研削液Cは、外部加工点に円滑に長期間に渡り目詰まりすることなく安定して供給され、研削液Cの不足による研削焼けを大幅に防止出来る。
【0027】
また、上記本発明の第2実施の形態となる各フラット研削砥石20によると、フラット研削砥石は網目シート2を円板状に成型された網目円板となる砥石円板は、一層又は多層に積層された円板積層体20Cであり、上記円板積層体の外周面に台金の軸芯方向に格子状の隙間Xを一定の間隔での間欠的にダイヤ,CBN電着砥粒又はWA、GC砥粒等を電着又は溶着させたから、従来の網目砥石と比べて、台金不要となって砥石の軽量化が図られる。更に、必要にして最少限の網目シートと必要にして最少限の砥粒となり、低コスト化が図られる。更に、図8に示すように、フラット研削砥石20内の研削液Cは、円板積層体の外周面20Dが格子状の間欠的な砥粒の無い隙間Xの領域から外部へ浸透する。これで、フラット研削砥石20内の研削液Cは、外部加工点に円滑に長期間に渡り目詰まりすることなく安定して供給され、研削液Cの不足による研削焼けを大幅に防止出来る。
【0028】
次に、図2図4図6で、上記フラット研削砥石10の製造方法を説明する。
先す、フラット研削砥石10の外周面となる台金1の軸芯方向Oに格子状の隙間Xを一定の間隔で間欠的に砥粒等4を電着又は溶着させるのに使用される治具30は、図2に示すように電気絶縁質の絶縁体(プラスチック、陶器、磁器)からなり、ベースとなる円形基板41とこれに直立させた中心軸42、上記円形基板の外周上面には、棒材(ピン)43を等間隔で環状に直立させる係合孔44が開けられている。上記中心軸42はねじ棒であり、これに網目シート2を巻付けた台金1を嵌入される。上記円形基板の外周上面の棒材(ピン)43により、外周網目シート2を外側から保持する。更に、中心軸42のねじ棒に電気絶縁質の保持円板(押さえプレート)45を嵌め込み、中心軸42の上端螺子部42Aにナット46を螺合させてフラット研削砥石10を治具30内にセットアップする機能を備えている。
【0029】
続いて、図1図3図6により、第3実施の形態となるフラット研削砥石10の製造方法を説明する。先ず、図1のように、台金1の外周1Aに一層又は所定外径の多層に網目シート2を巻き付ける巻付工程(a)を行う。次に、図3(a)のように、電気絶縁質の治具40となる円形基板41に直立させた中心軸42に台金を嵌合する装着工程(b)を行う。図3(b)のように、上記台金外周1Aで網目シート2の外周面2Aを上記円形基板41の外周上面に相互に格子状の僅かな隙間Xを残して等間隔で環状に直立させる棒材(ピン)43により順次当接する当接工程(c)を行う。
【0030】
続いて、図3(c)のように、上記円形基板41に直立させた中心軸42に電気絶縁質の保持円板45をこの中心孔45Aを嵌合するとともに該保持円板の外周縁面に開けた多数の係合孔hに上記棒材43の上端(自由端)を係合させ、中心軸42の上端螺子部42Aにナット46を螺合して締結するセットアップ工程(d)を行う。次に、図6に示すように、上記網目シート2の外周面2Aに棒材43が存在しない隙間Xに砥粒4を電着又は溶着させる砥粒固着工程(e)を行う。即ち、電着法(電解法又は科学メッキ法)は、図6(e)に見るように、電気分解容器50に治具30と砥粒4とを入れて電気分解し、図6(g)に見るように、外部に露出した網目シート2の外周面2Aのみが、格子状にダイヤ,CBN等を電着して電着超砥粒4を形成する。即ち、図8に示すように、電着法(電解法)によると、網目シート2の外周面2A又は円板積層体20Cの外周面20Dに絶縁質の棒材43を当接していると、プラス電極Pの砥粒4がマイナス電極U側の外周面2A又は円板積層体20Cに電解液Eを介して電流が流れて棒材43が存在しない隙間Xに砥粒4を電着させる。
【0031】
最後に、図3(d)において、逆操作を行う。即ち、ナット46の緩めで保持円板45を開放して台金1の外周網目シート2に砥粒4を固着して形成したフラット研削砥石10を、円形基板41と棒材43から離脱させる離脱工程(f)を行う。以上の工程により、図6(g)のように、フラット研削砥石10が製造される。
【0032】
続いて、図1図5図6により、第4実施の形態となるフラット研削砥石20の製造方法を説明する。先ず、図1のように、網目シート2を円板状に成型された網目円板20Aとした砥石円板20Bは、一層又は多層に積層された円板積層体20Cであり、上記円板積層体の外周面20Dにこの軸芯方向Oに格子状の隙間Xを一定の間隔で間欠的にダイヤ,CBN電着砥粒又はWA、GC砥粒等4を電着又は溶着(総称して固着と言う)させた構成である。また、上記一層の網目円板20Aだけで両端面をフランジ5,6により把持するタイプと、フラット研削砥石21を多層に積層された円板積層体20Cの両端面を把持するフランジ5,6により、1つのフラット研削砥石20として形成されている。即ち、図1図5の工程図に示すように、網目シート2を円板状に成型された網目円板20A又は砥石円板20Bとする網目円板の形成工程(1)を行う。
【0033】
次に、砥石円板20Bを一層又は多層に積層する円板積層体20Cの積層工程(2)を行う。続いて、図2のように、電気絶縁質の治具40となる円形基板41に直立させた中心軸42に網目円板20A又は円板積層体20Cを嵌合する装着工程(3)を行う。次に、図3(c)と同様に、図6の円板積層体20Cに見るように、外周面20Dを上記円形基板41の外周上面に相互に格子状の僅かな隙間Xを残して等間隔で環状に直立させる棒材(ピン)43により順次当接する当接工程(4)を行う。続いて、図3(c)と同様に、上記円形基板41に直立させた中心軸42に電気絶縁質の保持円板45をこの中心孔45Aを嵌合するとともに該保持円板の外周縁面に開けた多数の係合孔hに上記棒材43の上端(自由端)を係合させ、中心軸42の上端螺子部42Aにナット46を螺合して締結するセットアップ工程(5)を行う。次に、図6に示すように、上記外周面20Dに棒材43が存在しない隙間Xに砥粒4を電着又は溶着させる砥粒固着工程(6)を行う。
【0034】
即ち、上記フラット研削砥石10の製造方法と同様に、電着法(電解法又は科学メッキ法)は、図6(e)に見るように、電気分解容器50に治具30と砥粒4と電解液Eを入れて電気分解し、図6(g)に見るように、外部に露出した外周面20Dのみが、格子状にダイヤ,CBN等を電着して電着超砥粒4を形成する。最後に、図3(d)と同様に、逆操作を行う。即ち、ナット46の緩めで保持円板45を開放して円板積層体20Cの外周面20Dに砥粒4を固着して形成したフラット研削砥石20を、円形基板41と棒材43から離脱させる離脱工程(7)を行う。以上の工程により、図6(g)のように、フラット研削砥石20が製造される。
【0035】
本発明の第3と第4実施の形態となるフラット研削砥石10、20の製造方法によると、以下の作用と効果を呈する。
フラット研削砥石10の製造方法によると、台金の外周に一層又は多層に網目シートを巻き付けたフラット研削砥石の製作は、網目シートの外周面に確実且つ正確な格子状の隙間を形成しつつ砥粒を電着又は溶着させられる。これにより、砥石の製造時間が短縮されるとともに低廉化が可能の他、網目シートの加工が容易となり、砥石製作の簡易化に寄与する。更に、フラット研削砥石10の格子状の僅かな隙間Xからのクーラント液Cの噴出効率が高められ、これによる切粉の排出効率は、従来の砥石と比較して飛躍的に向上するメリットが得られる。
【0036】
更に、フラット研削砥石20の製造方法によると、網目シートを円板状に成型して網目円板とし、これを一層又は多層に積層された円板積層体による方法であるから、円板積層体の外周面に確実且つ正確な格子状の隙間を形成しつつ砥粒を電着又は溶着させられる。これにより、砥石の製造時間が短縮されるとともに低廉化が可能の他、網目シートから円板積層体への加工が容易となり、砥石製作の簡易化に寄与する。更に、フラット研削砥石10の格子状の僅かな隙間Xからのクーラント液Cの噴出効率が高められ、これによる切粉の排出効率は、従来の砥石と比較して飛躍的に向上するメリットが得られる。
【0037】
更に、第3と第4実施の形態となるフラット研削砥石10、20の効果を追記すれば、▲1▼砥石の回転中心から砥石の外周加工点に研削液が供給され、研削焼けを大幅に抑制する。▲2▼ノイズレスにより、内径研削、R凹部の研削、細溝研削に対して、研削液が確実に供給できる。▲3▼砥石の気泡に研削液が詰まらないから砥石の切れ味(研削効率)の長寿命化が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、上記フラット研削砥石とこの製造方法に限定されず、丸鋸やシリコンウエハーを切断するダイシングソー及び穴開け用のカップ砥石等の広範囲にわたる実施形態にも適用される。
【符号の説明】
【0039】
1 台金
1A 外周面
2 網目シート
2A 外周面
4 砥粒等
5,6 フランジ
10,20 フラット研削砥石
20A 網目円板
20B 砥石円板
20C 円板積層体
20D 外周面
30 治具
41 円形基板
42 中心軸
42A 螺子部
43 棒材(ピン)
45 保持円板(押さえプレート)
46 ナット
50 電気分解容器
C 研削液
O 軸芯方向
E 電解液
X 格子状の隙間0
(a) 巻付工程
(b) 装着工程
(c) 当接工程
(d) セットアップ工程
(e) 砥粒固着工程
(f) 離脱工程
(1) 形成工程
(2) 積層工程
(3) 装着工程
(4) 当接工程
(5) セットアップ工程
(6) 砥粒固着工程
(7) 離脱工程
【要約】
【課題】網目シートを台金に一層又は多層に巻付けて成型するか、網目円板を複数枚積層して成型された砥石円板の外周に砥粒を固着したフラット研削砥石と、この製造方法に係り、特に、砥粒を外周周辺に格子状の隙間を合理的手段により形成して固着する新規技術を図った。
【解決手段】 台金1の外周面1Aに網目シート2を一層又は多層に巻付けられており、上記網目シートの外周面2Aに台金の軸芯方向Oに格子状の隙間Xを一定の間隔で間欠的にダイヤ,CBN電着砥粒又はWA、GC砥粒等を電着又は溶着(総称して固着と言う)させたフラット研削砥石10である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8