【文献】
A. ALIZADEH et al.,Infrared p-i-n photodiodes based on InAs quantum dots grown on 20nm patterned GaAs,APPLIED PHYSICS LETTERS,2009年 4月23日,Vol. 94,No.16,pp.163112-1-3
【文献】
Eui-Tae KIM et al.,Tailoring mid- and long-wavelength dual response of InAs quantum-dot infrared photodetectors using InxGa1-xAs capping layers,The Journal of Vacuum Science and Technology B,Vol.20, No.3,pp. 1188-1191
【背景技術】
【0002】
フォトダイオードは、例えば光通信において伝送信号の受信に使用されている。光通信の通信容量は、年々増加の一途をたどっており、伝送容量を増大させる必要がある。例えばボーレートを高めて大容量光通信を実現することが考えられているが、この場合、通信装置等に用いるデバイスは、一般的に処理速度が高速になるほどS/N比が劣化することが問題となる。
光通信の伝送容量を増大させるためには、信号の高速処理、即ち高い周波数による動作でも良好なS/N比で変換出力が得られるフォトダイオードが必要になり、このようなものを用いることによって信頼性の高い長距離通信が可能になる。また、中継基地数を低減することも可能になることから、設備コストなどを抑制することもできる。
【0003】
このように通信容量を増大させるとき、受信系の性能を向上させることが通信システム全体にとって重要なことから、高速の受信動作に対応可能な高速フォトダイオードが要求されている。
高速フォトダイオードには、大きく分けてPIN型を中心とする非電流増倍型フォトダイオードと、アバランシェフォトダイオード(以下、APDと記載する)を中心とする電流増倍型フォトダイオードがあり、伝送距離や使用用途などに応じて使い分けが行われている。
非電流増倍型フォトダイオードは、上記のようにPIN型が一般的であり、高周波帯域の信号変換を可能としているが、出力信号のレベルが小さい(例えば、非特許文献1参照)。
電流増倍型フォトダイオードは、例えばアバランシェ増倍層を備えて、外部から高バイアス電圧が印加されることによって大きな出力信号レベルが得られるように構成されている(例えば、非特許文献2および非特許文献3参照)。
【0004】
図1は、従来の電流増倍型フォトダイオードの構成を示す説明図である。
図1(a)はPIN型APDの積層構造を示し、
図1(b)はSAM型APDの積層構造を示している。
図1(a)のPIN型APDは、例えば、S.I.InPからなる基板101、N+InPからなるN+コンタクト層102、N+コンタクト層102に接続された電極103、アンドープで形成された光吸収・増倍層104、P+キャップ層105およびP+コンタクト層106、P+コンタクト層106に接続された電極107によって構成されており、上記の順で積層されている。
図1(b)のSAM型APDは、基板101、N+コンタクト層102、電極103、アンドープで形成された光吸収層110、N型の半導体化合物からなる電界緩和層111、アンドープで形成された増倍層112、P+キャップ層105、P+コンタクト層106、電極107によって構成されており、上記の順で積層されている。
【0005】
光通信は近赤外域を使用しており、このような領域用のAPDは、光吸収層に可視光域用のAPDに比べてバンドギャップの小さな半導体化合物を用いる必要がある。このような半導体化合物からなる光吸収層を
図1(a)のPIN型構造に備えた場合、当該PIN型APDに高バイアス電圧を印加すると、10〜20[V]程度のバイアス電圧によってトンネル電流が流れてブレークダウンが発生し、高電圧の出力信号を得ることが難しくなる。そのため、APDには
図1(b)に示したSAM型構造が一般的に用いられている。
【0006】
SAM型構造は、光吸収層110と増倍層112を分離し、また、これらの層間に電界緩和層111を備えていることから、PIN型構造に比べてN+コンタクト層102とP+キャップ層105との間の領域、即ちI層が厚くなる傾向がある。そのため、光電変換によって生じた各キャリアの移動時間が長くなり、良好な高周波特性を得ることが難しくなる。例えば、非特許文献2のAPDは最大帯域が23[GHz]程度であり、非特許文献3のAPDは28[GHz]が最大帯域であることが開示されており、このように電流増倍型フォトダイオードは30[GHz]以上の帯域において良好な出力動作(信号出力)を行うことが困難になる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
(実施例)
図2は、この発明の実施例による量子ドット型高速フォトダイオードの概略構成を示す説明図である。この図は、量子ドット型高速フォトダイオードであるフォトダイオード1の積層構造を示す概略断面図である。フォトダイオード1は、例えば、S.I.InPからなる基板11、N+InPからなるN+コンタクト層12、量子ドット層からなる光吸収層13、P+キャップ層14、P+コンタクト層15の順に積層されている。
N+コンタクト層12には電極15が接続配置され、P+コンタクト層14には電極17が接続配置されている。即ち、電極15はカソード電極、電極17はアノード電極となる。
また、フォトダイオード1は、基板11の表面側、即ち上記の各半導体層を積層させた側から光を入射し、当該入射光が光吸収層13へ到達するように構成されている。
また、フォトダイオード1は、基板11の裏面側から入射した光が光吸収層13へ到達するように構成してもよい。
また、フォトダイオード1は、当該フォトダイオード1の外観において図示されない側方端面から入射した光が光吸収層13へ到達するように構成してもよい。
【0018】
フォトダイオード1は、高速応答が可能なPIN構造を有しており、また、例えば約1.3〜1.6[μm]の光波長に適合するように構成されている。即ち、光通信に用いる近赤外線を受光し、当該近赤外線を用いて伝送される通信信号の光電変換を行う構成を有している。
N+コンタクト層12は、InAlGaAsよりも大きなバンドギャップを有する半導体化合物からなり、例えばInAlAsによって形成されている。
光吸収層13は、例えば0.1[μm]以上であり、また1[μm]以下の層厚を有している。このような層厚を有することにより、入射した光エネルギを十分に吸収するとともにキャリアの移動距離を抑えることができ、30[GHz]以上の高周波光信号に対応可能となる。
この実施例による光吸収層13は、第1から第mの量子ドット層を積層したもので、例えば3〜300層の量子ドット層によって光吸収層13が形成されている。この量子ドット層には、量子ドット21が3〜6モノレイヤの範囲内で吸着している。
P+キャップ層14ならびにP+コンタクト層15は、InAlGaAsよりも大きなバンドギャップを有する半導体化合物からなり、例えばInAlAsによって形成されている。
【0019】
量子ドット21は、例えばInAs系の材料からなり、高さ(量子ドット層の積層方向の高さ)が2〜10[nm]、直径(積層方向に直交する方向の径)が20〜50[nm]程度の大きさを有している。また、量子ドット21は、1×10
10〜1×10
11[個/cm
2]の密度で各量子ドット層内に配されている。この量子ドット21は、上記のような半導体ナノ結晶であり、光が照射されることによって電子やホール(正孔)、即ちキャリアを三次元的に閉じ込めるものである。このように量子ドットに電子を閉じ込めるとき、電子が有する量子力学的な波としての性質を用いることにより、これまで吸収することができなかった帯域の光スペクトルをも吸収することができ、またさらに熱として失われるエネルギを低減することも可能になる。
【0020】
前述の量子ドット層を構成し、複数の量子ドット21を含有するように形成された歪緩和層22は、例えば、InGaAlAs、InGaAs、InAlGaAsなど(InAlGaAs系)の材料によって形成され、2〜40[nm]の層厚を有している。
量子ドット21の大きさや量子ドット層における密度を前述の数値のようにして構成し、また歪緩和層22を前述のような層厚として構成することにより、近赤外光の波長に対応し、なおかつ高速(高周波)の光信号に対応することが可能になる。
なお、量子ドット21および歪緩和層22は、上記の半導体化合物に限定されず、前述のような量子ドットサイズ、量子ドットの配置密度、量子ドット層の層厚などをとることが可能なものであれば、他の材料によって形成したものでもよい。
【0021】
次に、動作について説明する。
図3〜
図5は、
図2に示したフォトダイオードの動作を示す説明図である。これらの図は、
図2の構造を有するフォトダイオード1の試作品について測定した各特性を示したものである。ここで測定に用いたフォトダイオード1は、量子ドット21をInAsによって形成し、また、歪緩和層22をInAlGaAsによって形成して、単一の量子ドット層の厚さを20[nm]として形成したものである。また、このフォトダイオード1の光吸収層13は、20層の上記量子ドット層を積層させたもので、400[nm]の厚さを有している。
【0022】
図3は、横軸が入射光の波長、縦軸が受光感度を表しており、分光感度特性を示したグラフである。なお、この特性測定は、測定対象デバイス(フォトダイオード)の表面から近赤外線を入射して行ったものであり、また5[V]以下の低バイアス電圧を印加した状態で観測されたものである。
図中、曲線a3は、一般的な光吸収材であるInGaAsについて、厚さを240オングストロームと設定して求めた計算値である。
特性曲線a1は、上記の量子ドット層によって形成された光吸収層13を有するフォトダイオード1の受光感度を示したもので、特性曲線a2は、一般的なInGaAsによって形成された光吸収層を有するフォトダイオードの受光感度を示しており、いずれも同一厚さの光吸収層を有している。
特性曲線a1と特性曲線a2とを比較すると、光吸収層の厚さが同一である場合、いずれの波長においても量子ドット層を有するもののほうが高感度であることが分かる。
【0023】
図4は、測定対象デバイス(フォトダイオード1)の端面から近赤外線を入射させたときの受光感度を示したもので、縦軸は受光感度、横軸は入射光の波長を表している。なお、
図3に示した特性と同様に、5[V]以下の低バイアス電圧を印加した状態で観測されたものである。
図中、実線で示した特性曲線b1は、前述の量子ドットを備えたフォトダイオード1の分光感度特性を表している。また、破線で示した特性曲線b2は、当該デバイスにおいて表面反射が生じない場合の分光感動を推定した値を表したものである。
量子ドット層を有するフォトダイオード1は、例えば30[%]の表面反射が生じる場合でも、波長が1550[nm]の近赤外光を入射したときに受光感度0.3[A/W]を有することが分かる。この入射状況においてフォトダイオード1に反射防止膜を備えた場合には、上記の受光感度が0.4[A/W]へ向上する。なお、上記波長の近赤外光は、高周波の光信号とされている帯域に含まれるものである。
【0024】
ここで例示した特性は、当該デバイスと近赤外光を伝導する光ファイバとの光結合効率を考慮していないものであり、この測定を行った際の上記部分における実際の光結合効率は10[%]程度である。このような光結合効率は、例えばリッジ構造を設けるなど、当該光結合効率を向上させる一般的な手段を用いることによって50[%]以上に高めることが可能である。このことから、上記の光結合効率を高める手段を備えることによって、量子ドットを備えるフォトダイオード1の受光感度は、相当高いものになることが推測される。具体的には、上記のような手段を備えることによって、例えば光結合効率が20〜30[%]向上すると仮定したとき、フォトダイオード1の受光感度を1[A/W]程度にすることが可能になり、また、このときの量子効率は概ね80[%]になると推測される。
【0025】
図5は、量子ドットを備えた、即ち量子ドット型高速フォトダイオードに逆バイアス電圧を印加したときの受光感度特性を表したもので、縦軸は電流増倍率M、横軸は逆バイアス電圧を表している。特性曲線C1〜C3は、量子ドット型フォトダイオードである第1測定対象デバイス〜第3測定対象デバイスの受光感度特性を表したものである。
上記の各特性曲線C1〜C3から、第1〜第3測定対象デバイスは、いずれも大きな逆バイアス電圧が印加されたときには電流増倍効果(アバランシェ増倍効果)が生じている。
具体的には、上記の各受光感度特性から、逆バイアス電圧値が低いときの感度相対値を1とした場合、27〜28[V]の逆バイアス電圧を印加したときには、測定対象デバイスの受光感度が2〜12倍程度に増倍されることが分かる。
【0026】
フォトダイオードの3dBカットオフ周波数は、当該デバイスが有するCR時定数と、キャリアが光吸収層の中を移動する時間によって定められる。
量子ドット層からなる光吸収層を有するデバイスは、一般的なInGaAs等の半導体化合物からなる光吸収層を備えたデバイスと同様なCR時定数を有している。また、キャリアの移動時間についても同様であると推測される。
上記のことから、量子ドット層を有するデバイス、即ち、量子ドット型高速フォトダイオードの3dBカットオフ周波数は、InGaAs等からなる光吸収層を備えたフォトダイオードと同程度であると考えられる。具体的には、例えば、PN接合面の面積が113[μm
2](φ12μm)、光吸収層の厚さが0.4[μm]の量子ドット型高速フォトダイオードにおいては、50[GHz]以上の3dBカットオフ周波数を有することになる。
【0027】
前述の各測定結果等から、
(1)3dBカットオフ周波数は、50[GHz]以上、
(2)低バイアス時の感度は、入射光の波長が1550[nm]のとき、0.8[A/W]以上、
(3)高バイアス時の感度は、入射光の波長が1550[nm]のとき、増倍率(2〜5)×0.8[A/W] =1.6〜4[A/W]以上、
の量子ドット型高速フォトダイオードを作成することが可能である。
【0028】
図6は、
図2のフォトダイオードに流れる暗電流を示す説明図である。この図は、
図2のフォトダイオード1に逆バイアス電圧を印加したときに流れる暗電流を示したもので、縦軸は暗電流値、横軸は逆バイアス電圧値を表している。また、図中、特性曲線D1はフォトダイオード1に生じる暗電流を表し、特性曲線D2はフォトダイオード1に逆バイアス電圧を印加したときに生じる光電流を表している。なお、縦軸は対数表示によって電流値を示している。
フォトダイオード1は、特性曲線D1が示すように低い逆バイアス電圧が印加されたときには10[pA]程度の暗電流が流れ、高い逆バイアス電圧が印加されたとき、例えば27[V]の逆バイアス電圧が印加されたときには1[μA]程度の暗電流が流れる。このようにいずれの逆バイアス電圧においても発生する暗電流は比較的小さい。
【0029】
上記の暗電流に対して、フォトダイオード1の光電流は、特性曲線D2が示すように低い逆バイアス電圧を印加したときには、当該バイアス電圧値によらず概ね一定の値となり、あるバイアス電圧値を超えると増大する。
図6に例示した特性では、低バイアス時には光電流は10[μA]程度で概略一定になっており、逆バイアス電圧が20[V]以上の高バイアスになると光電流が増大する。即ち、フォトダイオード1は、印加される逆バイアス電圧が所定電圧上になると光電流増倍現象(アバランシェ現象)が生じる。
このように暗電流が小さく、なおかつ暗電流値と光電流値の差が大きいことから、量子ドット層を光吸収層13として備えたフォトダイオード1は、S/N比が良好であることが分かる。また、フォトダイオード1は、印加する逆バイアス電圧の大きさにより、電流非増倍型として使用することも、電流増倍型として使用することも可能なことを特性曲線D2が示している。なお、電流増倍型としてフォトダイオード1を用いる場合は、アバランシェ現象が生じる20[V]から当該フォトダイオード1の最大定格値までの範囲内に含まれる逆バイアス電圧を印加する。
【0030】
図7は、
図2のフォトダイオードに逆バイアス電圧を印加したときの内部状態を示す説明図である。
図7(a),(b)はフォトダイオード1に逆バイアス電圧を印加したときの当該ダイオード内部のエネルギバンド構造を模式的に表したものである。なお、
図7に示したP型半導体層は、
図2のP+キャップ層14およびP+コンタクト層15に相当し、
図7のN型半導体層は、
図2のN+コンタクト層12に相当する。
【0031】
図7(a)は、
図2に示した電極16と電極17との間に低い逆バイアス電圧(例えば20[V]未満)を印加したときに生じるキャリア(例えば電子)の移動を示している。ここでフォトダイオード1には低い逆バイアス電圧が印加されていることから、エネルギバンドの傾斜は比較的緩やかになっている。
このような状態で、当該フォトダイオード1に近赤外光等が入射されて光吸収層13へ到達すると、この光エネルギによって価電子帯から励起子(例えば電子e2)が励起する。
光吸収層13即ち量子ドット層において励起した例えば電子e2は、価電子帯の上限を超えて禁制帯あるいは伝導帯をN型半導体層へ向かって移動する。
また、上記のように光エネルギが光吸収層13(量子ドット層)へ入射することにより、量子ドット領域から励起子(量子ドット21に蓄積されていた例えば電子e1)が励起する。このとき励起した電子e1は、N型半導体層へ向かって移動する。これら電子e1,e2などのキャリアが移動することにより、入射光に応じた電流、例えば光信号に応じて変化する信号電流がフォトダイオード1から出力される。なお、このとき量子ドット層においてアバランシェ現象は生じない。
【0032】
図7(b)は、
図2に示した電極16と電極17との間に高い逆バイアス電圧(例えば20[V]以上)を印加したときに生じるキャリア(例えば電子)の移動を示している。ここでフォトダイオード1には高い逆バイアス電圧が印加されていることから、
図7(b)に示したエネルギバンドの傾斜は
図7(a)に比べて急になっている。このように高い逆バイアス電圧が印加されている状態で、フォトダイオード1に近赤外光等が入射されると、この光エネルギによって価電子帯から励起子(例えば電子e2)が励起する。励起した電子e2は、N型半導体層へ向かって移動する。このとき、高いバイアス電圧が印加されていることから量子ドット層には相当な強さの電界が生じている。そのため、励起した電子e2は、移動するときに上記の電界作用によって加速され、また移動中に例えば量子ドット層を形成する半導体化合物の原子等と衝突を繰り返すことから、アバランシェ現象が発生する。
【0033】
また、前述のように光エネルギが光吸収層13へ入射すると、量子ドット層に存在する量子ドット領域から励起子(量子ドット21に蓄積されていた例えば電子e1)が励起する。このとき励起した電子e1は、N型半導体層へ向かって移動する。また、前述のように量子ドット層には相当な強さの電界が生じていることから、電子e1は当該電界の作用によって加速して半導体化合物の原子等との衝突を繰り返し、アバランシェ現象が発生する。
このように光エネルギによって励起した電子e1,e2が移動するときにアバランシェ増倍が生じてフォトダイオード1から大きな値の光電流が出力される。なお、このとき出力される電流は、例えばフォトダイオード1へ入射した光信号に応じて変化する信号電流である。
【0034】
前述のように量子ドット層によって形成された光吸収層13は、フォトダイオード1に印加される逆バイアス電圧が所定電圧以上になると、同一の層厚さであってもアバランシェ現象が発生し、また逆バイアス電圧が所定電圧未満のときにはアバランシェ現象を発生させずに非電流増倍型の光吸収(光電変換)を行う。即ち、フォトダイオード1は、印加する逆バイアス電圧を小さくした場合には非電流増倍型フォトダイオードとして動作し、逆バイアス電圧を大きくした場合には電流増倍型フォトダイオードとして動作するものであり、換言すると、印加される逆バイアス電圧の大きさによって感度を制御することが可能なものである。
【0035】
図8は、
図2のフォトダイオードを用いた光通信システムの概略構成図である。図示した光通信システムは、送信装置201、受信装置203、送信装置201と受信装置203とを接続する光ケーブル202によって構成されている。
送信装置201は、通信信号を例えばレーザダイオード(LD)等を用いて光信号へ変換して光ケーブル202へ送出する。光ケーブル202によって伝送された光信号が受信装置203へ到達すると、受信装置203に備えられたフォトダイオード1が光電変換を行い、このとき生成した電気信号に所定の処理を施す。
例えば、光ケーブル202等による伝送距離が遠距離になる場合や、送信装置201から送出される光信号の強度が十分ではない場合には、受信装置203においてフォトダイオード203の受光感度を高くしておき、確実に通信信号を受信する。なお、受信装置203に備えられているフォトダイオード1は、高速の光データ通信についても上記のように受光感度を高めて対応することができる。
【0036】
以上のように、この実施例によれば、高周波帯域の光信号の波長に対応する層厚の光吸収層13に量子ドット21を含めて構成したので、光吸収層13薄く形成した場合でも十分な大きさの光電流を出力することが可能になり、高周波の光通信においても大きな信号電流を出力することができる。
また、暗電流を抑制するとともに光電流を大きな値で出力することができるので、S/N比を良好なものにすることができる。
また、量子ドット21を有する光吸収層13は、印加される逆バイアス電圧の大きさに対応してアバランシェ現象が生じるので、フォトダイオード1の受光感度を必要に応じて変化させることができる。