特許第6206836号(P6206836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206836
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】仕口部材 及び 梁連結方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20170925BHJP
   E04B 1/21 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   E04B1/58 508A
   E04B1/21 B
   E04B1/58 503E
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-91339(P2013-91339)
(22)【出願日】2013年4月24日
(65)【公開番号】特開2014-214460(P2014-214460A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】奥出 久人
(72)【発明者】
【氏名】前川 元伸
(72)【発明者】
【氏名】大野 正人
(72)【発明者】
【氏名】中野 達男
(72)【発明者】
【氏名】菅原 敏晃
【審査官】 富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−293192(JP,A)
【文献】 特開平06−173339(JP,A)
【文献】 特開2007−270455(JP,A)
【文献】 特開2007−247276(JP,A)
【文献】 特開2006−169837(JP,A)
【文献】 特開昭55−159039(JP,A)
【文献】 特開2009−197559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B1/00−1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で交差する交差軸芯に沿って配置される複数の梁の交差部において、前記各梁どうしを連結する仕口部本体を備えたプレキャスト製の仕口部材であって、
前記交差軸芯のうちの一つの軸芯に沿う梁が、前記仕口部本体に一体に設けてあり、
他の梁を連結する為の梁連結用鉄筋を貫通させる二以上の鉄筋貫通孔を、前記交差軸芯のうちの他の軸芯に沿う状態で前記仕口部本体に並設してあり、
前記仕口部本体のうち、連結対象の梁が位置する側の側部とは反対側の側部に、二つの前記鉄筋貫通孔に亘る凹入部が形成してある仕口部材。
【請求項2】
平面視で交差する交差軸芯のうちの一つの軸芯に沿った梁が一体的に設けられた仕口部本体を備えると共に他の梁を連結する為の梁連結用鉄筋を貫通させる二以上の鉄筋貫通孔が前記交差軸芯のうちの他の軸芯に沿う状態かつ前記仕口部本体を直線状に貫通する状態で前記仕口部本体に並設されたプレキャスト製の仕口部材を使用して複数の梁を連結する梁連結方法であって、
前記梁連結用鉄筋を、二つの前記鉄筋貫通孔にわたって折返し状態に設置自在な略「U」字形状に形成し、
前記仕口部本体と一体に設けられている梁が前記交差軸芯のうちの一つの軸芯に沿う状態となるように、前記仕口部材を設置し、
前記梁連結用鉄筋を、前記仕口部本体の一端側から他端側へ貫通させて、前記梁連結用鉄筋の折返し部を、前記仕口部本体における前記一端側の側部に当接させると共に、前記梁連結用鉄筋の両端部のそれぞれを前記仕口部本体における前記他端側の側部から前記他端側へ突出させ、
記両端部を、連結対象の梁の主鉄筋に連結し、
前記連結対象の梁と前記仕口部本体との対向面間に現場打ちコンクリートを打設して各梁どうしの一体化を図る梁連結方法。
【請求項3】
前記梁連結用鉄筋の端部と、前記連結対象の梁の主鉄筋との接合位置は、前記仕口部材の側面と、前記連結対象の梁の端面との対向面間において、前記連結対象の梁の端面側に近接させて設定する請求項に記載の梁連結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面視で交差する交差軸芯に沿って配置される複数の梁の交差部において、前記各梁どうしを連結する仕口部本体を備えたプレキャスト製の仕口部材、及び、その仕口部材を使用して複数の梁を連結する梁連結方法、等の仕口関係技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート建築物を構築するにあたっては、建築現場で型枠を作って、配筋やコンクリート打設を行う現場打ち工法の他に、例えば、工場等で、梁や柱や仕口部材等のコンクリート部材を製作して、それらを現場に搬入して組み立てるプレキャスト工法や、それらを組合せる工法等があり、これらは、現場状況に応じて好ましいものが選択されて実施されている。
本発明の主な対象となるプレキャスト工法は、理想的な養生環境でコンクリート部材を形成できるから、品質の安定性を確保し易かったり、施工が天候に左右され難かったり、工期短縮を図り易かったりする利点がある。
また、プレキャスト工法の実施においては、製作したコンクリート部材を現場まで運搬する必要があるから、トラック等に積載して運搬する際の運搬効率がわるいと、輸送費がかさむ関係で施工費全体が高価になるという虞がある。
従来、この種の仕口関係技術では、仕口部材として、柱の頭部に設置されて柱の一部となる仕口部本体が設けられ、仕口部本体の側面から四方に突出して梁の一部となる突部がそれぞれ仕口部本体と一体に設けられ、連結対象の梁の主筋と連結される連結用鉄筋の端部が、突部の先端面から突出する状態で埋設してあるものがあった(例えば、特許文献1参照)。
また、別の従来例としては、上述の仕口部本体から突部と連結用鉄筋とを取り去り、連結用鉄筋を後から挿通できるようにした鉄筋挿通孔を、仕口部本体の対応個所に設けて仕口部材が構成されたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−6034号公報(図1
【特許文献2】特開平2−101237号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の仕口関係技術の内、先に説明した仕口部材によれば、平面形状が十文字形状であり、トラック等に載せて運搬する際、その形状が複雑であるが故に、多数の仕口部材を、隙間無く効率よく積載することが困難となり、一度に多くの仕口部材を運搬できないから運搬効率が低くなり、建設費が高価になりやすい問題点がある。
また、上述した仕口関係技術の内、後に説明した仕口部材によれば、仕口部材が直方体であるため、荷台上に多数の仕口部材を詰めた状態に積載でき、運搬効率が低くなる問題は解消されるものの、現場においては、側面の四方に、それぞれ梁部材を連結する必要があり、その連結施工に手間がかかり、結果的に建設費が高価になりやすい問題点がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、仕口部材の運搬効率の向上と、梁との連結施工の手間の削減とを共に叶え、建物建設コストの低減化を図れる仕口関係技術を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、平面視で交差する交差軸芯に沿って配置される複数の梁の交差部において、前記各梁どうしを連結する仕口部本体を備えたプレキャスト製の仕口部材であって、前記交差軸芯のうちの一つの軸芯に沿う梁が、前記仕口部本体に一体に設けてあり、他の梁を連結する為の梁連結用鉄筋を貫通させる二以上の鉄筋貫通孔を、前記交差軸芯のうちの他の軸芯に沿う状態で前記仕口部本体に並設してあり、前記仕口部本体のうち、連結対象の梁が位置する側の側部とは反対側の側部に、二つの前記鉄筋貫通孔に亘る凹入部が形成してあるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、仕口部本体には、交差軸芯の内の一つの軸芯に沿う梁が一体に設けてあるから、交差軸芯の内の他の軸芯方向への突出量が少なく、シンプルな外形とすることができる。よって、仕口部材のハンドリング性が向上すると共に、荷台上に仕口部材を積載する際、無駄な空間ができないように、各仕口部材どうしを梁幅方向に詰めて並列させることができ、トラック一台当たりの積載量を増加させて、多数の仕口部材を一度に搬送することができるようになる。よって、仕口部材の運搬効率を良好に保つことができるようになる。
また、仕口部材本体には、交差軸芯の内の一つの軸芯に沿う梁が一体に設けられているから、施工現場においては、他の軸芯に沿う梁のみを連結すればよく、従来のように、四方に梁を連結するのに比べて連結手間を減らすことができ、施工効率の向上を図ることができる。
従って、仕口部材の運搬効率の向上と、梁の連結手間の低減による施工効率の向上とを共に叶え、その結果、建物建設コストの低減化を図れるようになる。
更には、前記他の軸芯に沿う梁を連結する為の鉄筋貫通孔を設けてあるから、梁との連結の際、梁を所定位置に配置した状態で、鉄筋貫通孔に連結用鉄筋を挿通して梁の主筋側に突き当たるように移動させ、それら鉄筋どうしを接合することができ、重量物である梁をわざわざ水平移動させて鉄筋接合を行うのに比べて施工手間を省け、更に、施工効率の向上を図ることができる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、平面視で交差する交差軸芯のうちの一つの軸芯に沿った梁が一体的に設けられた仕口部本体を備えると共に他の梁を連結する為の梁連結用鉄筋を貫通させる二以上の鉄筋貫通孔が前記交差軸芯のうちの他の軸芯に沿う状態かつ前記仕口部本体を直線状に貫通する状態で前記仕口部本体に並設されたプレキャスト製の仕口部材を使用して複数の梁を連結する梁連結方法であって、前記梁連結用鉄筋を、二つの前記鉄筋貫通孔にわたって折返し状態に設置自在な略「U」字形状に形成し、前記仕口部本体と一体に設けられている梁が前記交差軸芯のうちの一つの軸芯に沿う状態となるように、前記仕口部材を設置し、前記梁連結用鉄筋を、前記仕口部本体の一端側から他端側へ貫通させて、前記梁連結用鉄筋の折返し部を、前記仕口部本体における前記一端側の側部に当接させると共に、前記梁連結用鉄筋の両端部のそれぞれを前記仕口部本体における前記他端側の側部から前記他端側へ突出させ、記両端部を、連結対象の梁の主鉄筋に連結し、前記連結対象の梁と前記仕口部本体との対向面間に現場打ちコンクリートを打設して各梁どうしの一体化を図るところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、鉄筋貫通孔内で梁連結用鉄筋を長手方向に沿ってスライドさせることができるから、梁との連結の際、梁を所定位置に配置した状態で、梁連結用鉄筋を、梁の主筋側に突き当たるようにスライド移動させ、それら鉄筋どうしを接合することができる。よって、重量物である梁をわざわざ水平移動させて鉄筋接合を行うのに比べて施工手間を省け、施工効率の向上を図ることができる。
また、極力、高価な機械式継手を使用しなくても、圧接等の安価な連結手段を採用することができ、機械式継手を使用するのに比べて経済性の向上を図れる。
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
また、本発明の第の特徴構成によれば、鉄筋貫通孔の片方の端部側のみに梁を連結する際に、両端側に梁を連結する場合と同様の部材構成のまま梁の連結作業を実施することができる。
従って、仕口部材としての汎用性が向上し、梁連結工程全体とした経済性の向上を図ることができる。
【0014】
本発明の第の特徴構成は、前記梁連結用鉄筋の端部と、前記連結対象の梁の主鉄筋との接合位置は、前記仕口部材の側面と、前記連結対象の梁の端面との対向面間において、前記連結対象の梁の端面側に近接させて設定するところにある。
【0015】
仕口部材の側面と連結対象の梁の端面との対向面間においては、梁への応力は仕口部材側に近接する個所に梁の大きな内部応力が作用し易いが、本発明の第の特徴構成によれば、その大きな内部応力が作用し易い部分を避けて、梁連結用鉄筋と、連結対象の梁の主鉄筋との接合位置を設定してあることで、接合位置に大きな応力が作用するのを緩和でき、梁全体とした強度低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】仕口部材の設置状況を示す分解斜視図
図2】仕口部材の設置平面図
図3】仕口部材の設置状況を示す他の軸芯方向視における説明図
図4図2のIV−IVの矢視図
図5】梁連結状況を示す一つの軸芯方向視における説明図
図6】梁連結状況を示す一つの軸芯方向視における説明図
図7図2のVII−VIIの矢視図
図8】別実施形態の梁連結状況を示す分解斜視図
図9】別実施形態の仕口部材を示す他の軸芯方向視における説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
〔第1実施形態〕
図1図2図4は、本発明の仕口関係技術を使用して形成された建物架構を示すもので、主としてプレキャスト部材を用いて構成されている。
建物架構は、柱1と、柱1の上端に設置された仕口部本体2と、隣接する仕口部本体2にわたる梁3とを備えて構成してある。
【0019】
柱1は、その上端部に主鉄筋1Aが突出する状態に立設されている(図1図3参照)。
【0020】
梁3は、平面視において各柱1上で交差する二つの交差軸芯Kに沿ってそれぞれ配置されている。
当該実施形態においては、交差軸芯Kは、一つの軸芯K1と、他の軸芯K2とが平面視において直交(又は、ほぼ直交)する配置を例に挙げて説明する。
【0021】
一つの軸芯K1に沿って設けられている各梁3Aは、対応する仕口部本体2と一体のプレキャスト部材として構成してあり(図4参照)、当該実施形態においては、前記プレキ
ャスト部材の二つを長手方向に連設して、それらを貫通する状態に設けられたPC鋼線4を緊張させて圧着することで連結されている。
また、他の軸芯K2に沿って設けられている各梁3Bは、その長手方向における中間部がプレキャスト製梁中間部材3Baで構成してあり、両端部は、現場打ちコンクリート部3Bbによって構成されている(図1図6参照)。
【0022】
ここでは、便宜上、一つの軸芯K1にそって設けられた前記プレキャスト部材のそれぞれを、「仕口部材S」という。
つまり、仕口部材Sは、一つの軸芯K1に沿う一つ(又は二つ)の梁3Aと、仕口部本体2とを備えたプレキャスト部材として構成してあり、具体例としては、図1〜4に示すように、仕口部本体2と梁3Aaとで構成された仕口部材S1と、梁3Abと仕口部本体2と梁3Acとで構成された仕口部材S2とを例に挙げて説明している。
梁3Aaと梁3Abとによって1スパンの両端支持梁が構成され、梁3Acは片持ち梁として構成されている。
【0023】
仕口部本体2は、柱1の平面形状と同じ平面形状の直方体として形成してあり、上下軸芯に沿う状態に設けられた複数の鉄筋貫通孔5と、前記他の軸芯K2に沿う状態に設けられた複数の鉄筋貫通孔6とがそれぞれ備えられている。また、前記PC鋼線4の設置孔hも備えられている(図4参照)。
【0024】
鉄筋貫通孔5は、柱1の各主鉄筋1Aに対応させて形成してあり、柱1の上に仕口部材Sを設置するのに、仕口部材Sを水平姿勢で下げ降ろすに伴って、主鉄筋1Aが、鉄筋貫通孔5の下端部から進入して貫通するように構成されている(図3参照)。
主鉄筋1Aが挿通された後、鉄筋貫通孔5の内空部にモルタルが充填されて一体化が図られる。
【0025】
鉄筋貫通孔6は、梁3Bの主鉄筋7に対応させて形成してあり、図1図5に示すように、梁中間部材3Baの端部から突出している主鉄筋7Aと連結するための梁連結用鉄筋7Bを挿通自在に形成されている。
鉄筋貫通孔6に梁連結用鉄筋7Bを挿通すると共に、その端部を、梁中間部材3Baの主鉄筋7に連結し、梁中間部材3Baの端部と仕口部本体2との対向面間に現場打ちコンクリートを打設することで、一体の梁3Bを形成することができる。
鉄筋貫通孔6に挿通された梁連結用鉄筋7Bが、梁中間部材3Baの主鉄筋7に連結された後、鉄筋貫通孔6の内空部にモルタルが充填されて一体化が図られる。
【0026】
次に、各梁や仕口部材の連結手順について説明する。
[1] 所定の平面位置に立設された柱1の上に、仕口部材Sを設置して固定する(図3参照)。
この場合、図に示すように、仕口部材Sの長手方向が前記一つの軸芯K1に沿う姿勢にしながら、柱1の主鉄筋1Aの直上に鉄筋貫通孔5が位置する状態に仕口部材Sを配置し、そのままに下降させることで、主鉄筋1Aがガイドとなって仕口部材Sを柱1と同一軸芯上に設置することができる。
尚、柱1の主鉄筋1Aは、柱1上に仕口部材Sを設置した状態で、その先端部が仕口部材Sの上面より突出しているように長さ設定してあり、図には示さないが、その突出部に、その上に設置する柱1の下端部が連結されるように構成されている。
【0027】
[2] 両仕口部材Sをそれぞれの対象位置に設置した後、長手方向に隣接する仕口部材SにわたってPC鋼線4を挿通させ、引張力を作用させた状態で定着させることで、隣接する仕口部材Sどうしが連結され、一体の梁3Aが構成される(図4参照)。
【0028】
[3] 梁中間部材3Baを、図5に示すように、前記他の軸芯K2に沿わせて所定位置に配置すると共に、仕口部本体2の鉄筋貫通孔6に梁連結用鉄筋7Bを挿通し、その挿通先端部を、梁中間部材3Baの主鉄筋7Aに圧接によって接合する。梁連結用鉄筋7Bの挿通基端部は、機械式継手mを用いて対応する梁中間部材3Baの主鉄筋7Aと連結する。
因みに、梁連結用鉄筋7Bと梁中間部材3Baの主鉄筋7Aとの接合位置J(圧接位置や機械式継手m設置位置)は、仕口部本体2の側面と、梁中間部材3Baの端面との対向面間において、梁中間部材3Baの端面側に近接させて設定してあり、応力分布の大きい個所を避けて鉄筋接合を行ってある。
【0029】
[4] 図6に示すように、仕口部本体2と梁中間部材3Baとの対向面間の外周に型枠8を設置して、内空部にコンクリートを打設し、仕口部本体2と梁中間部材3Baと一体となった前記現場打ちコンクリート部3Bbを形成する(図7参照)。
【0030】
当該実施形態の仕口関係技術によれば、仕口部材S1も、仕口部材S2も、部材単体の時点では何れのものに関しても、その幅方向への突出の無いシンプルな長尺形状であるから、ハンドリング性が良好で、且つ、運搬にあたっては、荷台上に無駄な空間ができないように、各仕口部材Sどうしを梁幅方向に詰めて積載することができ、運搬効率も良好なものとなる。
また、梁3の現場組立は、仕口材本体2に対して、他の軸芯K2に沿う梁3Bのみの連結を実施すれば済むから、四方に梁を連結するのに比べて施工効率の向上を図ることができる。
更には、鉄筋の連結においては、高価な機械式継手を極力少なくすることができ、材料コストの低減を図ることができるから、上述の運搬効率や施工効率の向上と合わせて、建物建設工事全般を通じた経済性の向上を図ることができる。
【0031】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0032】
〈1〉 前記仕口部材Sは、仕口部本体2に一体に備えた梁3(前記交差軸芯Kの内の一つの軸芯K1に沿った梁3)が一つに限るものではなく、仕口部本体2と、仕口部本体2を挟んだ両側にそれぞれ梁3(前記交差軸芯Kの内の一つの軸芯K1に沿った梁3)を備えていてもよい。
また、仕口部本体2に備えた梁3は、設置した状態で水平となるものに限らず、例えば、図9に示すように、長手方向に沿って傾斜する状態に形成してあってもよい。更には、屈曲部を備えた構造であってもよい。この実施形態の場合は、例えば、階段やスロープ等の部分の梁として適している。
【0033】
〈2〉 前記交差軸芯Kは、平面視で直交する二つの軸芯K1,K2に限るものではなく、90度以外の角度で交差するものであってもよい。更には、二つの軸芯に限らず、三つ以上の軸芯であってもよい。
また、前記他の軸芯K2に沿って配置される梁3Bは、仕口部本体2を挟んだ両側に設けられるものに限らず、図8に示すように、何れか一方のみに設けられるものであってもよい。
この実施形態の場合、梁連結用鉄筋7Bは、直線状ではなく、図に示すように、仕口部本体2に並設された二つの鉄筋貫通孔6にわたって折返し状態に設置自在な略「U」字形状に形成したものを使用することができる。前記梁連結用鉄筋7Bの両端部を、二つの鉄筋貫通孔6の一端側から他端側へ貫通させ、二つの鉄筋貫通孔6の他端側に配置する梁3Bと接合することで、仕口部本体2の構造を変更せずに、一方のみの梁3Bを連結する構造に適用させることができる。
【0034】
〈3〉 前記梁連結用鉄筋7Bと、対応する梁3Bの主鉄筋7Aとの接合は、圧接に限るものではなく、例えば、機械式継手を使用したり、他の公知の接合手段を用いるものであってもよい。
また、梁連結用鉄筋7Bは、梁3Bと別体のものに限らず、例えば、鉄筋貫通孔6の両端側に配置する梁3Bの何れか一方の梁3Bと一体に形成してあってもよい。即ち、何れか一方の梁3Bの主鉄筋7Aを、梁連結用鉄筋7Bに相当する長さ分を更に延長して、梁連結用鉄筋7Bとして使用できるように構成するものであってもよい。
【0035】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
2 仕口部本体
3 梁
3A 梁
3B 梁
6 鉄筋貫通孔
7 主鉄筋
7A 主鉄筋
7B 梁連結用鉄筋
J 接合位置
K 交差軸芯
K1 一つの軸芯
K2 他の軸芯
S 仕口部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9