特許第6206841号(P6206841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206841
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】構造物の支持構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/32 20060101AFI20170925BHJP
   E02D 27/12 20060101ALI20170925BHJP
   E02D 17/08 20060101ALI20170925BHJP
   E02D 5/20 20060101ALI20170925BHJP
   E04B 1/32 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   E02D27/32 Z
   E02D27/12 Z
   E02D17/08 Z
   E02D5/20
   E04B1/32 101D
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-134177(P2013-134177)
(22)【出願日】2013年6月26日
(65)【公開番号】特開2015-10327(P2015-10327A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】▲蔦▼壁 潤一郎
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−246346(JP,A)
【文献】 特開平06−248653(JP,A)
【文献】 特開2002−047657(JP,A)
【文献】 特開平11−286953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00〜 27/52
E02D 17/00〜 17/20
E02D 5/00〜 5/20
E04B 1/00〜 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長期鉛直荷重と長期水平荷重を基礎部に作用させる構造物の支持構造であって、
前記基礎部の側方の地盤を受け止める土留め部を、前記基礎部が前記土留め部の上下中間部と水平方向で隣り合う状態、かつ、前記基礎部と一体化する状態に設け、この土留め部の背面地盤に前記長期水平荷重を負担させる構造にしてある構造物の支持構造。
【請求項2】
前記土留め部が、前記基礎部の施工に用いられる土留め壁から構成してある請求項1に記載の構造物の支持構造。
【請求項3】
前記土留め部が、山の傾斜面を切り崩す状態で設置してある請求項1または2に記載の構造物の支持構造。
【請求項4】
前記構造物が、前記基礎部を両端部に備えたアーチ状の屋根構造物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造物の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台風や地震などに伴って短期的に作用する短期荷重ではなく、構造物の自重や積雪などに伴って長期的に作用する長期荷重、具体的には、長期鉛直荷重と長期水平荷重を基礎部に作用させる構造物の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
このような基礎部を備えた構造物の支持構造としては、従来、基礎部の施工に用いられる土留め壁に対してコンクリート製の基礎部を一体的に設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、山の傾斜面を切り崩す状態で設置した土留め壁に対してコンクリート製の基礎部を一体的に設けたものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−31678号公報
【特許文献2】特開平6−248653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1および2に記載の従来技術では、荷重を支持する基礎部に対して、基本的には、長期鉛直荷重しか作用しない構成である。すなわち、基礎部の真上に構造物が位置する構成であるため、その基礎部に対しては、主として長期鉛直荷重しか作用せず、長期水平荷重はほとんど作用しない構成、言い換えると、長期水平荷重に関して特別な考慮が払われていない構成である。
仮に、これら特許文献1および2に記載の従来技術によって、基礎部に作用する長期水平荷重を確実に受け止めて支持しようとすると、基礎部そのものを長期水平荷重に耐え得るように大型化する必要がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目したもので、その目的は、基礎部そのものを大型化することなく、比較的小さな基礎部によって、それに作用する長期水平荷重を確実に受け止めて支持することのできる構造物の支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明による構造物の支持構造は、長期鉛直荷重と長期水平荷重を基礎部に作用させる構造物の支持構造であって、
その特徴構成は、前記基礎部の側方の地盤を受け止める土留め部を、前記基礎部が前記土留め部の上下中間部と水平方向で隣り合う状態、かつ、前記基礎部と一体化する状態に設け、この土留め部の背面地盤に前記長期水平荷重を負担させる構造にしてある点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、構造物からの荷重を受け止めて支持する基礎部に対して、その基礎部の側方の地盤を受け止める土留め部を一体化する状態に設け、この土留め部の背面地盤に長期水平荷重を負担させる構造にしてあるので、基礎部に作用する長期水平荷重に対しては、主として土留め部の背面地盤の土圧が受働土圧として作用し、長期水平荷重に対抗して受け止めることになる。
したがって、基礎部そのものを大型化することなく、比較的小さな基礎部によって、その基礎部に作用する長期水平荷重を確実に受け止めて支持することができ、特に、土留め部の背面地盤が固い岩盤であれば、その効果は非常に顕著となる。
【0008】
本発明による構造物の支持構造の更なる特徴構成は、前記土留め部が、前記基礎部の施工に用いられる土留め壁から構成してある点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、基礎部の施工に必要な土留め壁をそのまま土留め部として有効に活用することができ、土留め壁による土留め部の兼用化によって施工費用の低減化と工期の短縮化を図ることができる。
【0010】
本発明による構造物の支持構造の更なる特徴構成は、前記土留め部が、山の傾斜面を切り崩す状態で設置してある点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、土留め部が山の傾斜面を切り崩す状態で設置してあるので、その土留め部の背面地盤の土圧は、土留め部が平坦な地面に設置してある場合に比べて大きくなり、土留め部の背面地盤の土圧をより効果的に利用することができる。
したがって、基礎部の大型化をより一層抑制して、基礎部に作用する長期水平荷重を確実に受け止めて支持することができる。
【0012】
本発明による構造物の支持構造の更なる特徴構成は、前記構造物が、前記基礎部を両端部に備えたアーチ状の屋根構造物である点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、対象とする構造物がアーチ状の屋根構造物であるが故に、その両端部に備えられた基礎部には、比較的大きな長期水平荷重が作用することになるが、上述したように、土留め部の背面地盤の土圧を有効に利用して長期水平荷重を確実に受け止めて支持することができる。
その結果、アーチ状の屋根構造物からの長期鉛直荷重と長期水平荷重を確実に受け止め支持して、アーチ状の屋根構造物を長期間にわたって支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】構造物の支持構造の全体を示す概略断面図
図2】構造物の支持構造の要部を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による構造物の支持構造の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明の対象となる構造物は、例えば、図1に示すように、アーチ状の屋根構造物1であり、鋼管などのパイプ材を主要材料として構成されている。このようなアーチ状の屋根構造物1が、互いに平行に(図1の紙面に平行する方向に)複数基設置され、必要に応じて日除けや雨除け用の天幕が張られ、雨天用の広場や運動場などとして使用される。
各アーチ状の屋根構造物1の両端部には、当該屋根構造物1からの荷重を受け止めて支持するための基礎部2が備えられているが、構造物がアーチ状であるが故に、その基礎部2には、図2に示すように、当該屋根構造物1の自重や積雪などに伴って長期的に作用する長期鉛直荷重Vと長期水平荷重Hが作用する。
【0016】
その長期鉛直荷重Vと長期水平荷重Hを受け止めて支持する基礎部2は、例えば、現場打ちによる鉄筋コンクリート製であって、平面視で矩形に形成され、当該基礎部2の側方において、山Mの傾斜面Maの上側方には、土留め部としての上方土留め壁3が設けられ、下側方には、下方土留め壁4が設けられ、図示はしないが、横側方には、それぞれ横側方土留め壁が設けられている。
これら上方土留め壁3、下方土留め壁4、および、横側方土留め壁は、基礎部2からの荷重が直接伝達されるように、基礎部2と一体化する状態に設けられ、必要な場合には、基礎部2の下方に基礎杭(図示せず)が配設されて埋設される。
【0017】
土留め部としての上方土留め壁3は、後述するように、基礎部2の施工に際して山Mの傾斜面Maを切り崩す状態で設置された土留め壁であって、その土留め壁3の上端部は、基礎部2の上面より上方、すなわち、山Mの傾斜面Maの上面とほぼ一致する高さに位置している。
そして、その上方土留め壁3は、アーチ状の屋根構造物1から基礎部2に作用する長期荷重のうち、特に長期水平荷重Hを受け止めて、その長期水平荷重Hを上方土留め壁3の背面地盤、つまり、上方土留め壁3のほぼ全面にわたって接触している背面地盤に負担させるように構成されている。
【0018】
つぎに、この支持構造の施工方法について説明する。
例えば、図1および図2に示すように、アーチ状の屋根構造物1の基礎部2を山Mの傾斜面Maに設置する場合であれば、上方土留め壁3を基礎部2の設置箇所の上方地盤中に構築するとともに、下方土留め壁4を設置箇所の下方地盤中に構築し、横側方土留め壁を横側方の地盤中に構築する。
各土留め壁3、4は、例えば、単軸オーガ掘削機により多数の穿孔部を形成し、必要に応じて穿孔部に鋼材や鋼管などを打ち込み、更に、ソイルセメントを流入して構築する他、鋼矢板などを打ち込んで構築するなど、種々の構成による土留め壁を採用することができる。
【0019】
このようにして土留め壁3、4を構築した後、土留め壁3、4の内側において、山Mの傾斜面Maを切り崩し、その地盤を所定の深さまで掘削し、必要な場合には、その掘削箇所に基礎杭を打ち込む。その後、掘削箇所に基礎部2用の鉄筋を配置し、土留め壁3、4を型枠としてコンクリートを打設して基礎部2を構築する。
それによって、基礎部2は、各土留め壁3、4と接触して基礎部2からの荷重が各土留め壁3、4に直接伝達されるように一体化した状態に設けられる。
なお、必要な場合には、土留め壁3、4や基礎杭に連結用の鉄筋を配設し、その連結用の鉄筋と基礎部2用の鉄筋とを互いに連結固定した状態で、土留め壁3、4を型枠としてコンクリートを打設し、基礎部2と土留め壁3、4および基礎杭とを一体的に連結した状態で構築することもできる。
そして、このようにして構築した各基礎部2に対して、例えば、ジョイント連結などによって、各アーチ状の屋根構造物1の端部を接続するのである。
【0020】
このような構成の基礎部2においては、アーチ状の屋根構造物1から作用する長期鉛直荷重Vと長期水平荷重Hを確実に受け止めて支持することができる。
特に、長期水平荷重Hに関しては、基礎部2に作用する長期水平荷重Hを当該基礎部2を介して上方土留め壁3の背面地盤が負担することになるので、基礎部2自体は比較的小さなものであっても、長期水平荷重Hを確実に受け止め支持することができる。
その他、例えば、台風に伴う風圧や地震などによりアーチ状の屋根構造物1が上方に持ち上げられて、基礎部2に長期水平荷重Hと逆方向への短期水平荷重が作用した場合には、下方土留め壁4の背面地盤がその荷重を負担し、横方向への短期水平荷重に対しては、横側方土留め壁の背面地盤が負担することになる。
なお、図中Sは、必要に応じて設置する階段あるいは観覧用の座席を示す。
【0021】
〔別実施形態〕
(1)先の実施形態では、構造物の一例としてアーチ状の屋根構造物1を示したが、例えば、斜め梁を備えた構造物のように、その基礎部2に対して長期鉛直荷重Vと長期水平荷重Hが作用する構造物であれば、種々の構造物の支持構造として適用することができる。
【0022】
(2)先の実施形態では、基礎部2を山Mの傾斜面Maに設置した例を示したが、基礎部2の設置箇所は、特に山Mの傾斜面Maに限るものではなく、平坦な地面に設置することも可能である。
また、基礎部2と一体的に設ける土留め部の一例として、基礎部2の施工に用いられる土留め壁3を示したが、特に基礎部2の施工に供する土留め壁に限らず、基礎部2に作用する長期水平荷重Hをその背面地盤により負担するために専用に設けた土留め部であってもよい。
更に、その土留め壁3に加えて、下方土留め壁4と横側土留め壁を設けた例を示したが、これら下方土留め壁4と横側土留め壁については必ずしも必要なものではなく、下方土留め壁4と横側土留め壁を設けずに実施することもできる。
【符号の説明】
【0023】
1 構造物の一例であるアーチ状の屋根構造物
2 基礎部
3 土留め部としての土留め壁
M 山
Ma 傾斜面
V 長期鉛直荷重
H 長期水平荷重
図1
図2