(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上電極に対向する下電極に基板を載置し、前記基板上の液滴に前記上電極及び前記下電極が対向する方向の交流電界を印加して前記液滴を振動させる電界撹拌装置において、
前記下電極又は前記上電極を昇降させる昇降機構と、
前記上電極の下部に検出領域を有する頂点検出手段と、
前記液滴の頂点が前記検出領域に達したか否かを判別する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記液滴の頂点が前記検出領域に達しない場合には、前記下電極を上昇させるよう前記昇降機構を制御し、前記液滴の頂点が前記検出領域に達した場合には、前記下電極の高さ位置を維持するよう前記昇降機構を制御する、
又は、
前記液滴の頂点が前記検出領域に達しない場合には、前記上電極を下降させるよう前記昇降機構を制御し、前記液滴の頂点が前記検出領域に達した場合には、前記上電極の高さ位置を維持するよう前記昇降機構を制御する
ことを特徴とする電界撹拌装置。
前記制御手段は、前記交流電界の周波数と、前記下電極及び前記上電極の電極間距離と、が予め最適化された撹拌条件テーブルを参照した上で、前記液滴の頂点が前記検出領域に達したか否かを判別し、前記昇降機構を制御することを特徴とする請求項1に記載の電界撹拌装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の電界撹拌装置では、撹拌強度が様々な要因(液滴の粘度、液滴量、表面張力、周囲温度、撥水円の描き方等)で変化することが考慮されておらず、最適な撹拌条件を得ることが難しかった。そして、目視により撹拌強度を調節するほかなく、誤差や手間が生じ、免疫染色時間の短縮が困難であるという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑み、免疫染色時間を短縮できる電界撹拌装置及び電界撹拌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の態様は、上電極に対向する下電極に基板を載置し、前記基板上の液滴に前記上電極及び前記下電極が対向する方向の交流電界を印加して前記液滴を振動させる電界撹拌装置において、前記下電極
又は前記上電極を昇降させる昇降機構と、前記上電極の下部に検出領域を有する頂点検出手段と、前記液滴の頂点が前記検出領域に達したか否かを判別するする制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記液滴の頂点が前記検出領域に達しない場合には、前記下電極を上昇させるよう前記昇降機構を制御し、前記液滴の頂点が前記検出領域に達した場合には、前記下電極の高さ位置を維持するよう前記昇降機構を制御する、又は、前記液滴の頂点が前記検出領域に達しない場合には、前記上電極を下降させるよう前記昇降機構を制御し、前記液滴の頂点が前記検出領域に達した場合には、前記上電極の高さ位置を維持するよう前記昇降機構を制御することを特徴とする電界撹拌装置にある。
かかる態様では、液滴の頂点が検出領域に達するまで、下電極を上昇させ、又は、前記上電極を下降させることができ、クーロン力の作用によって液滴の振幅を大きくすることができる。そして、液滴の頂点が検出領域に達したとき、下電極の高さ位置、又は前記上電極の高さ位置を維持することができ、これにより、液滴が上電極に接触せず、かつ振幅の大きい最適な撹拌条件を正確かつ容易に得ることができる。よって、撹拌効率を向上させて免疫染色時間を短縮できる。
【0009】
ここで、前記制御手段は、前記交流電界の周波数と、前記下電極及び前記上電極の電極間距離と、が予め最適化された撹拌条件テーブルを参照した上で、前記液滴の頂点が前記検出領域に達したか否かを判別し、前記昇降機構を制御することが好ましい。これによれば、予め最適化された周波数及び電極間距離に基づいて、電界撹拌を行うことができる。このとき、液滴の頂点が検出領域に達していない場合には、液滴の頂点が検出領域に達するまで、下電極を上昇させ、又は上電極を下降させ、クーロン力の作用によって液滴の振幅を大きくし、撹拌条件をさらに最適化させることができる。よって、より最適な撹拌条件を正確かつ容易に得て、撹拌効率を向上させて免疫染色時間をより短縮できる。
【0010】
また、前記頂点検出手段は、前記上電極に固定された発光器及び受光器からなるエリアセンサーであることが好ましい。これによれば、下電極や上電極の昇降に伴う振動がエリアセンサーに伝達するのを抑制し、検出安定性を向上させることができる。よって、最適な撹拌条件をさらに正確かつ容易に得て、撹拌効率を向上させて免疫染色時間をさらに短縮できる。
【0011】
また、前記電界撹拌装置は、前記上電極を水平移動させるスライド部材を備えることが好ましい。これによれば、下電極の対向空間を一部開放させ、基板を正確かつ容易に載置できる。よって、全体として免疫染色時間を短縮できる。
【0012】
また、本発明の他の態様は、上電極に対向する下電極に基板を載置し、前記基板上の液滴に前記上電極と前記下電極が対向する方向の交流電界を印加して前記液滴を振動させる電界撹拌方法において、前記上電極の下部に検出領域を有する頂点検出手段からの情報に基づいて、前記液滴を振動させながら最適な撹拌条件テーブルを得る最適化工程と、前記最適化工程で得られた前記最適な撹拌条件テーブルに基づいて、振動する前記液滴の頂点が前記検出領域に達したことが検出されるまで前記下電極を上昇又は前記上電極を下降させ、撹拌を行う本撹拌工程と、を有することを特徴とする電界撹拌方法にある。
かかる態様では、予め最適化された周波数及び電極間距離に基づいて電界撹拌を行うことができる。このとき、液滴の頂点が検出領域に達していない場合には、液滴の頂点が検出領域に達するまで、下電極を上昇させ、又は前記上電極を下降させ、クーロン力の作用によって液滴の振幅を大きくし、撹拌条件をさらに最適化させることができる。よって、最適な撹拌条件を正確かつ容易に得て、撹拌効率を向上させて免疫染色時間をより短縮できる。
【0013】
また、前記最適化工程は、前記液滴の頂点が前記検出領域に達するまで、前記交流電界の周波数を所定範囲で掃引し、前記下電極を上昇させ又は前記上電極を下降させる工程と、前記液滴の頂点が前記検出領域に達したとき、前記交流電界の周波数と、前記下電極及び前記上電極の電極間距離と、を最適な撹拌条件テーブルとして記憶する工程と、を有することが好ましい。これによれば、最適な撹拌条件テーブルを正確かつ容易に得ることができる。よって、撹拌効率を向上させて免疫染色時間をより短縮できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1(a)〜(b)は、本実施形態に係る電界撹拌装置(以下、単に電界撹拌装置とも称する)の構成を示す模式図である。このうち、
図1(a)は正面図を示し、
図1(b)は
図1(a)におけるX方向から見た側面図を示す。
【0016】
図示するように、電界撹拌装置1は、基板Wが載置される下電極10と、基板Wを介して下電極10に対向する上電極20と、高圧アンプ等を含んで構成される電源装置30とを具備している。下電極10及び上電極20は酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性材料からなり、電源装置30に電気的に接続されている。
【0017】
上電極20はスライド部材21に接続されている。スライド部材21は、略L字状を有しており、一端側が上電極20の上部中央にネジ固定され、他端側が装置本体に接続されている。スライド部材21は、例えば装置本体に設けられたガイドレール等に沿って、水平方向にスライド可能に構成されており、これにより、下電極10の対向空間を一部開放させ、基板Wを正確かつ容易に載置できるようになっている。本実施形態では、上電極20は、下電極10の短手方向(
図1(a)での紙面に向かって裏表方向、すなわち
図1(b)での左右方向)にスライド可能となっている。
【0018】
下電極10は、重力方向(
図1(a)〜(b)での上下方向)に昇降可能な昇降機構11に接続されている。これにより、下電極10及び上電極20の電極間距離が調節可能となる。昇降機構11は、例えば下電極10の下部に突設する昇降ピンである。尚、本明細書において、電極間距離は、基板Wを介して対向する下電極10及び上電極20の距離である。
【0019】
下電極10の下方には、昇降機構11を介して支持台12が設けられている。支持台12には水準器13が設けられ、下電極10及び上電極20の水平状態が確認できるようになっている。水準器13は、例えば透明容器に気泡を充填した気泡水準器である。
【0020】
このような下電極10、上電極20及び電源装置30を具備する電界撹拌装置1では、制御手段からの制御信号に基づき、電源装置30から下電極10及び上電極20に所定の交流電圧が印加される。そうすると、交流電界が発生し、クーロン力の作用によって基板W上の液滴Sが上下方向に振動する。
【0021】
また、電界撹拌装置1では、制御信号に基づき昇降機構11が制御され、下電極10及び上電極20の電極間距離が調整されることとなる。下電極10が上昇(下降)すると、下電極10と上電極20との距離である電極間距離が大きく(小さく)なり、基板W上の液滴Sに作用するクーロン力が大きく(小さく)なる。その結果、液滴Sの振幅が大きく(小さく)なる。尚、本明細書において、振幅は、上下振動する液滴頂点の最高点の高さ位置と、液滴頂点の最下点の高さ位置との差である。
【0022】
一般に、液滴の振幅が大きいほど撹拌効率は向上する。一方、液滴Sの頂点が上電極20に接触すると、上電極20が濡れて液滴Sが振動し難くなる。従って、免疫染色時間を短縮するには、液滴Sの頂点が上電極20に接触しない範囲で、液滴Sを大きく振幅させる必要がある。一方、撹拌強度は、液滴の粘度、液滴量、表面張力、周囲温度、撥水円の描き方等の様々な要因で変化する。
【0023】
そこで、電界撹拌装置1は、上電極20の下部に検出領域を有し、液滴Sの頂点が検出領域に達したことを検出する頂点検出手段を備えている。これにより、液滴Sが上電極20に接触する可能性があるか否かを正確に判断できるようになる。本実施形態において、頂点検出手段は、例えば上電極20の長手方向の端部一対に設けられた発光器22及び受光器23からなるエリアセンサー24である。
【0024】
図2は、エリアセンサー24の構成例を示す拡大図である。図に示すように、エリアセンサー24の発光器22及び受光器23は、それぞれスペーサー25を介して上電極20に固定されている。発光器22は、上電極20から例えば2.8mm下方に検出領域Rが位置するように調節され、この発光器22に対向して、光を検出する素子である受光器23がアレイ状に配列されている。
【0025】
このようなエリアセンサー24の検出原理を、
図3(a)〜(b)を参照しつつ説明する。同図は、基板W上の液滴Sに交流電界が印加された段階を示す。同図中、二点鎖線はエリアセンサーの検出領域を示し、破線は液滴Sの外形形状を示す。下電極10及び上電極20は、電極間距離dを介して対向して配置されている。
【0026】
図3(a)に示すように、液滴Sが振動しても、その頂点がエリアセンサー24の検出領域Rに達しない限り受光器23で検知される受光量は変化しない。すなわち、発光器22の出力値aと受光器23の入力値bとの関係はa=bとなる。
【0027】
一方、
図3(b)に示すように、電極間距離dが小さくなり、クーロン力の作用によって液滴Sの振幅が大きくなると、液滴Sの頂点がエリアセンサー24の検出領域Rに達する。そうすると、発光器22から出力される光が液滴Sに遮られ、受光器23で検知される受光量が変化する。すなわち、発光器22の出力値aと受光器23の入力値bとの関係が、a≠bとなる。
【0028】
このような検出情報は制御手段に送られる。かくして、液滴Sがエリアセンサー24の検出領域Rに達するまでは電極間距離dを小さくし、撹拌効果を向上させる。一方、液滴Sの頂点がエリアセンサー24の検出領域Rに達したときは、液滴Sが上電極20に接触する可能性がある。このため、エリアセンサー24の検出領域Rとしては、液滴Sが上電極20に接触しない領域が設定される。
【0029】
次に、電界撹拌装置1の動作について
図4を参照しつつ説明する。電界撹拌装置1は、最適な撹拌条件を検出する制御手段40を具備している。制御手段40は、公知の構成からなるマイクロコンピューターを中心に構成されており、各部は具体的にはマイクロコンピューターによるプログラムの実行によって実現される。この制御手段40は、各部の動作を制御するCPU41と、各部での検出結果等が記憶されるRAM42とを備えている。
【0030】
RAM42には、予め、液滴量に応じたベースとなる撹拌条件テーブルが格納されている。一方、撹拌強度は様々な要因(液滴の粘度、液滴量、表面張力、周囲温度、撥水円の描き方等)で変化するため、撹拌条件テーブルを最適化させる必要がある。そこで、本実施形態の制御手段40では、液滴Sを振動させながら撹拌条件テーブルを最適させる最適化制御を行う。
【0031】
図5(a)〜(d)に示すように、液滴Sの振幅は、液滴量や電極間距離によって所定の周波数で最大値をとる。すなわち、液適量や電極間距離によって、液滴Sの振幅の最大値を与える最適な周波数がある。このような最適な周波数をはじめとする最適な撹拌条件が、最適化制御によって検出される。
【0032】
最適化制御では、CPU41は、周波数を所定範囲で掃引するように電源装置30を制御し、周波数の掃引が終わったとき、下電極10を上昇させるように昇降機構11を制御する。この制御を、液滴Sの頂点がエリアセンサー24によって検出されるまで繰り返す。そして、CPU41は、液滴Sの頂点がエリアセンサー24によって検出されたとき、電極間距離や周波数といった撹拌条件をRAM42に記憶させる。このとき記憶された撹拌条件は、電極間距離dが最も大きい、すなわち振幅が最も大きい最適な撹拌条件である。
【0033】
最適化制御で得られる撹拌条件により、上記撹拌条件テーブルが最適化される。これにより、次回以降、最適化された撹拌条件に基づいて電界撹拌を開始でき、免疫染色時間を短縮できるようになる。
【0034】
ここで、CPU41は、上記最適化制御で得られた撹拌条件テーブルを参照し、液滴Sを撹拌する本撹拌制御を行う。本撹拌制御について、
図6(a)〜(d)を参照しつつ説明する。同図は、基板W上に液滴量(150μm、200μm、400μm及び600μm)が滴下された状態を示す。図中、各液滴について、下電極10を基準として、エリアセンサー24の検出領域Rの高さxと、上下振動する液滴の最高点の頂点高さyとが示されている。
【0035】
液滴量が150μmである
図6(a)を例にとると、電極間距離dは6mmである。また、
図2に示すように、エリアセンサー24の検出領域Rは、上電極20から2.8mm下方であるため、検出領域Rの高さxは、下電極10を基準として3.2mmである。一方、上下振動する液滴の最高点の頂点高さyは、下電極10を基準として3.5mmである。このとき、上下に振動する液滴について、検出領域Rの高さxと液滴の最高点の頂点高さyとは、x<yの関係となる。これは、最適化制御で得られた撹拌条件で液滴Sを振動させたとき、液滴Sの頂点が検出領域Rに達し、エリアセンサー24の値が液滴の撹拌と同期して変わることを意味する。この場合、最適な撹拌条件がされていると装置が認識し、撹拌がそのまま進められる。
【0036】
一方、様々な要因で撹拌強度が変わるため、最適化制御で得られた撹拌条件で撹拌しても、エリアセンサー24の値が液滴Sの撹拌と同期して変わらない場合もある。この場合、CPU41は、下電極10を例えば0.1mmずつ上昇させるように昇降機構11を制御する。これにより、液滴Sに作用するクーロン力が大きくなり、液滴Sの振幅が大きくなる。その後、エリアセンサー24からの情報を監視しながら下電極10を上昇させる制御を繰り返し、エリアセンサー24によって液滴Sが検出されたら、そのときの撹拌条件により撹拌条件テーブルを最適化し、かかる撹拌条件で電界撹拌を行う。
【0037】
尚、
図6(b)〜(d)に示す他の液滴量(200μm、400μm及び600μm)についても、
図6(a)に示す液滴量が150μmである場合と同様に、検出領域Rの高さxと液滴の最高点の頂点高さyとは、x<yの関係となる。最適化制御で得られた撹拌条件で液滴Sを振動させ、エリアセンサー24の値が液滴の撹拌と同期して変わる場合、最適な撹拌条件がされていると装置が認識し、撹拌がそのまま進められる。
【0038】
そして、エリアセンサー24の値が液滴Sの撹拌と同期して変わらない場合には、エリアセンサー24により液滴が検出されるまで、下電極10を上昇させる。エリアセンサー24によって液滴Sが検出されたら、そのときの撹拌条件を最適な撹拌条件として記憶し、撹拌条件テーブルを最適化する。
【0039】
以上説明した制御手段40を備えることにより、昇降機構11や電源装置30の自動化が可能になる。よって、最適な撹拌条件をより正確かつ容易に得て、撹拌効率を向上させて免疫染色時間をより短縮できる。
【0040】
次に、制御手段40により行われる本実施形態の電界撹拌方法を説明する。まず、電界撹拌方法を実施するに当たり、以下のような準備工程を行う。すなわち、
図7(a)〜(c)に示すように、基板W(武藤化学株式会社製「New SilaneII」厚さ1.0mm)上に、テンプレートを用い、直径12mm又は直径20mmの撥水円を描く。直径12mmの場合は150μL又は200μL、直径20mmの場合は400μL又は600μLの試薬を滴下する。
【0041】
滴下スポットは、例えば基板W1枚当たり1又は2箇所である。滴下スポットは、エリアセンサーの検出領域に応じて適宜変更が可能である。試薬を滴下した後、上電極を水平方向に移動させ、下電極に基板Wをセットする。
【0042】
基板Wは、単数でも複数でもよく、例えば
図8(a)に示すように、5枚の基板Wを一列に下電極10に載置することができる。
図8(b)に示すように、5枚ずつ二列に基板Wを載置してもよい。この場合、複数の基板W上の液滴のうち、いずれかの基板W上の液滴Sの頂点が検出領域Rに達したとき、エリアセンサー24により検出される。本実施形態の電界撹拌方法では、複数の基板Wを下電極10に裁置する場合においても、最適化撹拌条件において効率よく安定して撹拌が行われる。尚、基板Wの数や配置は、エリアセンサーの検出領域や液滴スポット数に応じて適宜変更が可能である。
【0043】
以上のような準備工程の後、本撹拌工程を行う。
図9は、本実施形態の電界撹拌方法を示すフローチャート図である。図に示すように、本実施形態の電界撹拌方法では、ステップS1で基板W上の液滴量を検知して、ステップS2で撹拌条件を選択する。かかる撹拌条件は、上記最適化制御によって最適化される撹拌条件テーブルを参照して得ることができる。
【0044】
ステップS3で、下電極10及び上電極20に所定の交流電圧を印加する準備が整ったことを検知する。ここでは、スライドする上電極20が下電極10の対向位置にあることや、電極間距離dが所定距離であること等を検知する。
【0045】
次いで、ステップS4で、ステップS2において選択された撹拌条件に基づき、下電極10及び上電極20に交流電圧を印加する。これにより、基板W上の液滴Sに交流電界が印加され、クーロン力の作用によって液滴Sが上下に振動する。
【0046】
ステップS5で、液滴Sの頂点がエリアセンサー24により検出されたか否かを判別する。ステップS5において液滴Sの頂点が検知されないと判別されたとき(ステップS5;No)は、ステップS6に進み、電極間距離dが限界値L未満であるか否かを判別する。
【0047】
限界値Lは、制御上、正常に動作している限りは取り得ない値であって、電界撹拌装置1の故障を推察できる値である。従って、ステップS6において電極間距離dが限界値L未満であると判別されたとき(ステップS6;Yes)は、ステップS7で警告ランプを点灯し、ユーザに故障を知らせた後、フローを終了する。
【0048】
一方、ステップS6において電極間距離dが限界値L以上であると判別されたとき(ステップS6;No)は、ステップS8に進み下電極10を上昇させる。これにより、クーロン力の作用によって液滴Sの振幅が大きくなる。その後、ステップS5に戻る。
【0049】
以降、ステップS5〜ステップS8を繰り返す。ステップS5において液滴Sの頂点が検知されたと判別されたとき(ステップS5;Yes)は、ステップS9に進み、この時点での電極間距離d及び周波数を最適な撹拌条件として記憶し、ステップS2における撹拌条件を最適化させる。次いで、ステップS10に進み、ステップS9において得られた最適な撹拌条件を用いて撹拌を継続し、その後にフローを終了する。
【0050】
(他の実施形態)
以上、本実施形態に係る電界撹拌装置及び電界撹拌方法について説明したが、本発明はかかる実施形態に制限されない。例えば、頂点検出手段はエリアセンサーに限られず、画像処理手段等であってもよい。また、最適化制御は、所定の電極間距離ごとに周波数を掃引する制御に限られず、所定の周波数ごとに電極間距離を掃引する制御としてもよい。
【0051】
尚、昇降機構として、上電極を昇降させる構成を採用し、又は上記実施形態に組み合わせて構成してもよい。ただし、上記実施形態のように下電極を昇降させる構成によれば、下電極の昇降に伴う振動がエリアセンサーに伝達するのを抑制でき、上電極に固定されたセンサーの検出安定性の点で有利となる。
【0052】
また、液滴の振幅を調節するためのパラメーターとして、電極間距離の他に、下電極10及び上電極20に印加する交流電圧の大きさがある。よって、電圧装置が所定範囲で交流電圧を変化可能に構成される場合には、交流電圧の大きさによっても、液滴Sの振幅を調節するように構成してもよい。