(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光拡散剤を含有するポリカーボネート樹脂ペレットと蓄光性蛍光体を、オイルの共存下において混練し、235〜250℃で押出成形してペレット状のポリカーボネート樹脂コンパウンドを得る工程(A)、及び該工程(A)で得られた前記ポリカーボネート樹脂コンパウンドを235〜260℃で押出成形、もしくは240〜280℃で射出成形する工程(B)を含むことを特徴とする請求項1に記載のランプカバーの製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄光材料を含有する素材によって蛍光ランプを保護するものとして、例えば、透明なシート材の表面に蓄光材料を含有する蓄光インクを塗布して蓄光層を形成し、該シートを蛍光ランプに取り付けて使用する蓄光シート(特許文献1)、長残光性発光物質を含有するポリ塩化ビニル樹脂等製であって、蛍光ランプ等の被覆用熱収縮性チューブ(特許文献2)、蓄光材料を含む合成樹脂製であって、蛍光管からの照射光を調光するための蛍光管カバー(特許文献3)、蓄光剤と光拡散剤を添加した光拡散性ポリカーボネート樹脂に更に特定構造のシリコーン化合物を添加して難燃性を付与した光拡散板(特許文献4)等が提案されている。
【0003】
しかし、特許文献1に記載の蓄光シートは、透明樹脂シートの上に蓄光インクを塗布して蓄光層を形成するものであり、シートとインクとの相性はもとより、蓄光層の剥離強度の検討等、解決すべき点が多々あり、屋外の使用に耐え得るものとするには、未だ十分な技術とは言えない。また、特許文献2に記載の熱収縮性チューブでは、熱による劣化のため長期間の使用が困難である。
【0004】
これに対して、特許文献3に記載の蛍光管カバーのように、蓄光材料を含有する合成樹脂を所望の形状に成形する方法によれば、大量生産が可能であるため生産コストの低減が期待される。
また、点灯している蛍光ランプの管表面を覆ってこれを保護するための蛍光管カバーとしては、機械的強度や耐熱性に加えて、光透過性ができるだけ良好であること等の諸特性に優れていることが要求されるが、特許文献3,4に記載のポリカーボネート樹脂は、これらの諸特性を満足するため、蛍光管カバーの成形用素材として推奨される。
【0005】
ところで、特許文献3,4にはポリカーボネート樹脂(以下、PC樹脂という)を使用した蛍光管カバーの具体的な製造方法についての記載はないが、本発明者らが確認したところによると、PC樹脂と、該樹脂に例えば蓄光性蛍光体等を混合し、該混合物をそのまま押出成形機、射出成形機等により蛍光ランプカバーを成形した場合、成形体全体が不均一に黒化したり黒ずんだ色合いを呈し、光透過率が大きく低下するという弊害があった。
【0006】
なお、ポリアセタール樹脂(I)と、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a−1)と共役ジエン化合物系重合体ブロック(b−1)を有する付加重合系ブロック(イ)とポリカーボネート系重合体ブロック(ロ)を有するブロック共重合体(II)とを含む樹脂組成物に、パラフィン系オイルを配合させて、耐衝撃性、柔軟性、成形加工性を向上させる技術(特許文献5)も提案されているが、該文献には蓄光剤や光拡散剤を添加する旨の記載はなく、故に、上記の弊害はもとより、弊害を排除する手法についての示唆は一切ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の弊害を排除するためになされたもので、機械的強度及び耐熱性に優れ、黒化や黒ずみ等の不具合がなく、光透過性が極めて良好であって、蛍光ランプやLEDランプの光源を覆う管球として、あるいは光源を覆っている一般の管球の外表面に装着するカバーとして使用した際に、照度の低下が抑制されると共に、該ランプの発光が停止した後も自ら残光による発光を持続し得るランプカバーの提供、及び該ランプカバーの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上記課題を解決するため、蓄光性蛍光体を含有するPC樹脂を成形用原料とするランプカバーの製造プロセスに関して検討を重ねた結果、単にPC樹脂と所定量の蓄光性蛍光体との混合物を成形機中で溶融して押出成形、もしくは射出成形するのではなく、別途、所定量の光拡散剤を含有するPC樹脂ペレットを調製しておき、該ペレットと蓄光性蛍光体とをオイル中で混合したところ、該ペレットと蓄光性蛍光体粒子との粒界にオイルが介在して、該ペレット表面全体に蓄光性蛍光体粒子がムラなく付着することを先ず見出し、この状態のものを再度ペレット状に成形したものであれば、押出成形機又は射出成型機によって、黒化や黒ずみ等のない乳白色の体色を有し、光透過率の高いランプカバー等が得られることを次に見出し、本発明を提案するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のランプカバーは、照明ランプの光源又は管球外表面に装着するランプカバーであって、蓄光性蛍光体と光拡散剤を含むポリカーボネート樹脂成形体からなり、前記ランプに厚さ0.8mmの前記ランプカバーを使用した時の照度の低下率が、該ランプカバーを使用していない時の20%以下であることを特徴とする。
このとき、前記成形体中にはさらに紫外線吸収剤が含まれていてもよく、また該成形体の表面及び/又は裏面が粗面化されていてもよい。
上記した本発明の蛍光ランプカバーは、光拡散剤を含有するポリカーボネート樹脂ペレットと蓄光性蛍光体を、オイルの共存下において混練し、該混練物を235〜250℃で押出成形してペレット状のポリカーボネート樹脂コンパウンドを得る工程(A)、及び該工程(A)で得られた前記ポリカーボネート樹脂コンパウンドを235〜260℃で押出成形、もしくは240〜280℃で射出成形する工程(B)を含むことを特徴とする方法により製造される。
上記のオイルは、光拡散剤含有ポリカーボネート樹脂ペレットと蓄光性蛍光体との混練時、あるいは該混練物の押出によるペレット化の際に、ある程度の量(好ましくは、混練工程と押出工程とに渡って90%以上)が蒸散するものであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のランプカバーは、照明ランプの光源自体、すなわち照明ランプの管球自体として使用するもの、又は菅球の外表面に装着して使用するものであって、管球外表面に装着する場合には、着脱自在に装着することもできる。
また、本発明のランプカバーは、耐衝撃性に優れるPC樹脂の成形体であるため、地震の際の衝撃、あるいは物が当たった時の衝撃等による破損を防止することはもとより、照明ランプの構成材が仮に破損しても、これらの破損片の飛散を防止することができる。
しかも、該成形体には蓄光性蛍光体が含有されているので、電源の突然の遮断によって照明ランプが消灯した際にも、蓄光性蛍光体の残光により一定の時間その周辺の照明を確保することができる。
【0012】
さらに、本発明の製造方法によって得られるランプカバーには、成形加工された成形体に黒化や黒ずみ等が認めらないため、光線透過率が高く、従って照明ランプに使用した際の照度の低下が少なく、しかもランプカバー中に光拡散剤が含まれているので、ランプカバー内部での光の散乱により、蛍光ランプ、及び蓄光性蛍光体からの発光が均一となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のランプカバーは、紫外線又は可視光線を吸収すると長残光性の蛍光を発する蓄積性蛍光体(すなわち蓄光性蛍光体、以下“蓄積性蛍光体”とも記す)と光拡散剤を含有するPC樹脂からなり、これを、蛍光ランプやLEDランプの光源自体の管球としての形状、あるいはこれら照明ランプの管球外表面に着脱可能に装着して該管球外表面を覆い得るような形状に成形加工してなる。
【0015】
図1に示す本発明のランプカバーは、直管型蛍光ランプの管球外表面に使用されるものであり、
図1(a)は斜視図、
図1(b)は同図のA−A線断面矢視図である。
図1に示すランプカバー1は、中空の概略円筒形状であって、その周面の1か所で長手方向の軸に平行にカットして開口部2を形成した、概略C字状断面形状とするとともに、該カット部の両先端をそれぞれ開口部2から内側に折り曲げて折曲部3、3を形成した構造を有する。
【0016】
本例のランプカバー1を天井等に設置された蛍光ランプ4に装着するには、直管型蛍光ランプ4の下側から開口部2が蛍光ランプ4と対面する方向に向け、開口部2をその長手方向に直行する方向に軽く広げた状態で蛍光ランプ4に押し込んでランプカバー1の内周面を蛍光ランプ4の外周面に嵌合させることにより、ランプカバー1を蛍光ランプ4に固定する。この時、使用するランプカバー1の内側径rと蛍光ランプ4の管球の外径との選択によって、蛍光ランプ4とランプカバー1の密着度合を調整すればよい。
【0017】
図1(c)は直管型蛍光ランプに、
図1(a)に示すランプカバー1を装着した状態を説明する断面図であり、ランプ取付器具6に取り付けられている蛍光ランプ4の管球の周囲はランプカバー1の開口部2(蛍光ランプ4の管球の上方部)を除いてランプカバー1で覆われ、その折曲部3とランプカバー1の開口部2を外側に広げた際の復元力によってランプカバー1は蛍光ランプ4に嵌合、保持される。
【0018】
図2は本発明のランプカバーの別の実施例であって、丸型蛍光ランプ用のランプカバーを模式的に示しており、
図2(a)は該ランプカバー11の斜視図、
図2(b)は該ランプカバー11を装着した丸型蛍光ランプ14を下側からみた平面図であり、
図2(c)は同図のB−B線断面矢視図である。
【0019】
本例のランプカバー11は、
図1に示すランプカバー1と同様に、C字状断面を有する中空の円筒が丸型蛍光ランプの丸型形状に合わせて環状に曲げられた概略環状中空円筒状を呈し、
図2(a)に示すように、この環状中空円筒の周面の一か所で、該周面に垂直にカットされた形状とされて、丸型の蛍光ランプ14への装着脱時の作業性の向上を図っている。
【0020】
ランプ取付器具16に取り付けられている蛍光ランプ14にランプカバー11を装着するには、蛍光ランプ14の直下からランプカバー11の開口部12を広げた状態で開口部12から蛍光ランプ14に押し込むことによって、ランプカバー11はその屈曲部13と、開口部12を広げた際の復元力によって蛍光ランプ14に保持される。
なお、本例のランプカバー11は、
図2(b)に示すように、概略環状中空円筒の周面の一か所でカットされた箇所が、蛍光ランプ14の非発光部であるコネクター部15の位置と合致するようにして装着させる。
【0021】
本発明のランプカバーの原料であるPC樹脂は、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、芳香族−脂肪族ポリカーボネートのいずれも用いることができ、中でも光拡散性に優れる点で、芳香族ジヒドロキシ化合物をホスゲン又は炭酸のジエステルと反応させて得られる熱可塑性芳香族ポリカーボネートをはじめとする、芳香族系のポリカーボネートが推奨される。
【0022】
上記PC樹脂に含有させる蓄積性蛍光体は、例えばSrAl
2O
4:Eu,Dy等の希土類元素で付活されたアルカリ土類金属のアルミン酸塩系蛍光体、(Sr,Mg)Si
2O
7:Eu,Dy等の希土類元素で付活されたアルカリ土類金属の珪塩酸系蛍光体、ZnS:Cu等の銅付活アルカリ土類金属の硫化物系蛍光体をはじめとして、従来から知られている、紫外線や短波長の可視光線を吸収すると長残光性の発光を呈する蓄光性蛍光体や、紫外線や可視光線を吸収すると燐光を発する有機燐光体がある。
【0023】
また、上記の蓄光性蛍光体と共にPC樹脂に含有させる光拡散剤は、光源からの光や、ランプカバー中に共存する蓄光性蛍光体からの発光の拡散性をより向上させ、ランプカバーを経由して放射される発光光を均一化するために含有させる。
ランプカバー中に添加される光拡散剤としては、例えば、PC樹脂の光拡散剤として公知の炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、ガラス微粒子等の低屈折率無機微粒子や、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂、シリコン架橋粒子、ポリスチレン樹脂、アクリル−スチレン系共重合微粒子等の有機系微粒子、及びこれらの複合物が用いられる。
【0024】
なお、本発明のランプカバーにおいては、その他の添加物として、紫外線による黄変や劣化抑制のための紫外線吸収剤、成形体の色調を白色或いは青白色に変えるための蛍光増白剤、あるいは難燃剤等を適宜配合しても良い。
【0025】
本発明のランプカバー中の蓄積性蛍光体の含有量が少なすぎるとランプカバーの残光強度が十分に得られず、逆に多すぎると成形性や成形体の機械的強度が低下する上、蓄積性蛍光体の残光強度は増加するものの光源からの発光光の透過率をより低下させる。
そのため、本発明のランプカバー中に添加される蓄積性蛍光体の量は、PC樹脂の量に対して1〜50重量%とするのが好ましく、3〜30重量%とするのがより好ましい。
【0026】
また、本発明のランプカバー中の光拡散剤の含有量は、少なすぎると光拡散効果が得られず、逆に多すぎると蓄積性蛍光体の含有量を増やした場合と同様に、成形性や成形体の機械的強度が低下する上、光源からの発光光の透過率をより低下させる。
したがって、光拡散剤の量は、PC樹脂の量に対して0.05〜15重量%とするのが好ましく、0.1〜10重量%とするのがより好ましい。
また、本発明のランプカバー中に紫外線吸収剤を含有させる場合の含有量は、PC樹脂の量に対して0.01〜5重量%とするのが好ましい。
【0027】
本発明のランプカバーは、光透過性の良好なPC樹脂からなり、しかもPC樹脂ペレットの製造時やランプカバーの成形時に生じやすい黒化や黒ずみ等が起こらないため、光源の管球として使用した際や、通常の管球の外表面に装着して使用した際に、光源からの光量の減少が少なく照度の低下が抑制される上、光源からの光により蓄積性蛍光体が励起されて生じる若干の発光も加わる。
【0028】
本発明のランプカバーにおいては、PC樹脂中に含まれる蓄光性蛍光体、光拡散剤、及びその他の添加物質の各含有量を上記した範囲内において調整することにより、ランプカバーを使用したことによる照明ランプの照度低下の度合や、ランプ消灯時のカバーの残光強度が適宜調整される。
本発明のランプカバーが使用されている場合と使用されていない場合のそれぞれについて、点灯している照明ランプから一定距離離れた同一平面上における照度を比較すると、例えば肉厚が0.8mmの本発明のランプカバーの照度は、該ランプカバーが使用されていない場合の照度の80%以上であって、本発明のランプカバーを使用したことによる照度の低下率は20%以下である。
【0029】
ランプカバーの厚みが減少するとともに光源からの透過光量は増加し、前記のランプカバーで覆われた時の照度(I)と該カバーで覆われていない時の照度(I
0)との比(I/I
0)は、カバーの厚み減少に伴って当然に増加し、ランプカバーで覆ったことによる光源からの透過光量の減少度合は低下するが、ランプカバーの機械的強度が低下するため光源の保護の観点からは好ましくなく、反対にランプカバーの厚みが増すに伴って前記比(I/I
0)がり小となって、光源からの透過光量が減少する。
そのため、特に限定はされないが、使用環境に応じてランプカバーの厚みは実用的な観点からおよそ0.5〜3mmとされる。
【0030】
また本発明のランプカバーは、含有する蓄積性蛍光体の種類にもよるが、蓄積性蛍光体の選択により、例えば、蛍光ランプに装着し点灯してから所定時間点灯を継続後、消灯して数十分後、あるいは数時間後に、ある程度高い発光輝度(残光輝度)を維持することができる。
【0031】
本発明のランプカバーを製造するには、先ず、PC樹脂の粉末と光拡散剤とをブレンドした後、公知の方法、例えば押出機等を用いて熔融混練し、押出成形して、光拡散剤含有のPC樹脂ペレットを調製する。
なお、紫外線吸収剤、難燃剤、蛍光増白剤等、その他の各種添加剤を含有させる場合には、上記ペレット調製時に、光拡散剤と共に、これらの添加剤をも混合すればよい。
【0032】
次に、このようにして得られた光拡散剤含有PC樹脂ペレットに所定量の蓄光性蛍光体と共に、例えば飽和炭化水素油、不飽和炭化水素油、中級〜高級脂肪酸等の植物油、動物油、鉱物油の1種または複数種からなるオイルを加えてこれらを混合した後、押出機等により、シリンダー温度235〜250℃で溶融混練し、押出成形して、ペレット状のPC樹脂コンパウンドを製造する。この時、押出機のスクリュー回転数は一般的な押出成形時よりも高速回転とするのが好ましい。
このときの回転速度は、光拡散剤と他の添加剤を含有するPC樹脂ペレット(以下、光拡散剤含有PC樹脂ペレット)と蓄光性蛍光体との混練とペレットの再溶融状態を良好にするためと、この混練・再溶融(以下、単に「混練」と記すこともある)時に共存させるオイルの大部分を蒸散させるために、15〜35rpm程度とすることが好ましい。これより速いと上記PCペレットと蓄光性蛍光体との混練はもとより、オイルの蒸散が所望程度まで進まず、これより遅くても、これらの作用が飽和するのみならず、再ペレット化工程に時間がかかり過ぎて、製造コストが多大となる。
【0033】
本発明における上記オイルの使用量は、光拡散剤を含有するPC樹脂ペレット1個毎の全表面を覆う程度であることが望ましく、一般には、該ペレットの量(重量)に対し0.1〜5重量%とすることが適している。これより少ないと、該ペレットの全表面に蓄光性蛍光体粒子がムラなく均一に付着し難くなり、これより多いと、ペレットがシリンダー内で空転を起こし樹脂を送り込むことができなかったり、該ペレットと蓄光性蛍光体の混練途上ないし該混練物の押出によるペレット化の途上でオイルが十分に蒸散せず、ペレットはもとより該ペレットを原料とする成形体にベタ付き感が残ってしまうことがある。
【0034】
上記のようにして得られる光拡散剤、及び蓄積性蛍光体を必須成分として含むペレット状PCコンパウンドを成形用原料とし、235〜260℃で、押出成形を行いもしくは240〜280℃射出成形して本発明のランプカバーを得る。
【0035】
本発明においては、光拡散剤含有のPC樹脂ペレットと蓄光性蛍光体との粒界面にオイルを介在させることによって、該PC樹脂ペレット塊の1つ1つに蓄光性蛍光体粒子が均等に付着し、また共存するオイルにより潤滑性が向上するため、混練後再ペレット化する際の成形機内での摩擦や熱劣化の影響を受け難く、しかも光拡散剤は再ペレット化前のPC樹脂ペレット中に予め含まれていることから、再ペレット化して得られるペレット状蓄光性蛍光体含有PC樹脂コンパウンド、及びこのPC樹脂コンパウンドの成形加工品である本発明のランプカバーには黒化や、黒ずみ、あるいは飴色等の着色が認められず、光透過性の低下が抑制される。
【実施例】
【0036】
以下の実施例及び比較例において使用した原材料は以下のとおりである。
(a)ポリカーボネート樹脂:ビスフェノールAとホスゲンから合成された芳香族ポリカーボネート樹脂(分子量27000〜28000、融点240℃、MVR7cm
3/min.) 100重量部
(b)蓄積性蛍光体:Sr4Al
14O25:Eu,Dy 7.5重量部
(c)光拡散剤:炭酸カルシウム 1.5重量部
(d)紫外線吸収剤:ベンゾフェノン系 1重量部
(e)難燃剤:リン系難燃剤 3.5重量部
(f)オイル:飽和炭化水素油・植物油・高級脂肪酸の配合油(山陽化工社製“SANYO SPREDER N−22”)
光拡散剤含有PC樹脂ペレットの量に対し0.5重量部
【0037】
〔実施例1〕
上記(a)、(c)、(d)、及び(e)の各原材料を混合した後、押出成形機を用いて混練し、押出成形して、光拡散剤を含有する実施例1のPC樹脂ペレットを製造した。
次に、実施例1のPC樹脂ペレットと、上記原料(b)、及び(f)をタンブラーに投入して混合した後、押出成形機により、250℃、スクリュー回転数(25rpm)で混練し、押出成形して実施例1の蓄積性蛍光体含有ペレット状PC樹脂コンパウンドを製造した。
得られた蓄積性蛍光体含有ペレット状PC樹脂コンパウンドは、全量が乳白色を呈し、表面が滑らかでベタ付き感がなく従って混練時や再ペレット化の際に大部分のオイルが蒸散していることが判る。
このペレット状樹脂コンパウンドを押出形成機により、260℃、スクリュー回転数(12rpm)で混練し、押出成形し、肉厚0.8mmの、
図1に示す形状の実施例1のランプカバーを製造した。
【0038】
〔実施例2〕
上記実施例1で得た蓄積性蛍光体含有ペレット状PC樹脂コンパウンドを使用し、射出成型機により、肉厚0.8mmの、
図2に示す形状の実施例2のランプカバーを製造した。
【0039】
〔比較例1〕
上記(a)、(b)、(c)、(d)、及び(e)の各原材料をブレンダーで混合した後、押出成形機により、250℃、スクリュー回転数(25rpm)で混練し、押出成形して、蓄積性蛍光体含有ペレット状PC樹脂コンパウンドを製造した。
得られた蓄積性蛍光体含有ペレット状PC樹脂コンパウンドは、表面滑らかでベタ付き感はないが、下記するように、ペレット全体で黒化が認められた。
この蓄積性蛍光体含有ペレット状PC樹脂コンパウンドを、押出成形機を用い、実施例1と同じ条件で、押出成形して、肉厚0.8mmの、
図1に示す形状の比較例1のランプカバーを製造した。
【0040】
〔比較例2〕
上記(a)、(b)、(d)、(e)、及び(f)の各原材料を用いる以外は比較例1と同様(但し、(f)の量は、(a)、(b)、(d)、(e)の合量に対して0.5重量%)にして、比較例2の蓄積性蛍光体含有ペレット状PC樹脂コンパウンドを製造した。
得られた蓄積性蛍光体含有ペレット状PC樹脂コンパウンドは、ペレット全体が表面ベタ付き感があることに加え、比較例1の場合と同様に、ペレット全体に渡って黒化が認められた。
このペレット状PC樹脂コンパウンドを用い、実施例と同じ条件で、押出成形して、肉厚0.8mmの、
図1に示す形状の比較例2のランプカバーを製造した。
【0041】
〔比較例3〕
上記原料(f)を使用しない以外は実施例1と同様にして、蓄積性蛍光体含有ペレット状PC樹脂コンパウンドを製造した。
得られた蓄積性蛍光体含有ペレット状PC樹脂コンパウンドは、比較例1の場合と同様に、ベタ付き感はないが、下記するようにペレット全体に渡って黒ずみや色むらが認められた。
このペレット状PC樹脂コンパウンドを用い、実施例1と同じ条件で、肉厚0.8mmの、
図1に示す形状の比較例3のランプカバーを製造した。
【0042】
〔比較例4〕
上記原料(a)〜(f)の各原料を実施例1のカバー成形機に用いた押出成形機により混練し、押出形成する以外は実施例1と同様(但し、(f)の量は、比較例2と同様)にして、肉厚0.8mmの、
図1に示す形状の比較例4のランプカバーを製造した。
【0043】
〔ランプカバーの評価〕
上記のようにして製造された実施例1、2、及び比較例1〜4について、(1)蓄積性蛍光体含有ペレット状PC樹脂コンパウンド(表1中、素材)の黒化の有無(度合)、(2)成形されたランプカバーの黒化の有無(度合)、(3)ランプカバーを蛍光ランプの管球外表面に装着した時の照度の低下率、及び(4)残光輝度を評価した。各評価項目の評価方法は以下のとおりである。
【0044】
(1)素材の黒化の有無(度合):目視観察し、黒化部分や全体的な黒ずみが明確に認められるものを×、全体的に僅かに黒ずみやや色むらが認められるものを△、きれいな乳白色のものを○とした。
(2)蛍光ランプカバー(成形品)の黒化の有無(度合):目視観察し、前記(1)と同様に評価した。
(3)蛍光ランプカバーによる照度低下率:照度計(FUYI社製、DEGITAL LUX METER LX−1010B)を用いて、点灯している蛍光ランプ(40W、直管形D65)から3m離れた平面上の照度[I
0]と、該ランプに各ランプカバーを装着した場合の前記平面上の照度[I]とをそれぞれ測定し、測定値を式{1−([I]/[I
0])}×100(%)に当て嵌め、求められる値を蛍光ランプカバーの照度低下率とした。
(4)蛍光ランプカバーの残光強度(残光輝度):ランプカバーを装着した蛍光ランプ(40W、直管形D65)を60分間継続点灯後、消灯し、消灯直後にランプカバーから3m離れた平面上の輝度輝度[I
P30]を輝度計(KONIKA MINOLTA社、LS−100)により測定した。
上記(1)〜(5)の評価結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示す結果から解るように、本発明による実施例1、2では、黒化や黒ずみ等がなく、均一な灰白色を呈し、光透過率の低下が少ないランプカバーが提供できる。
【0047】
これに対して、PC樹脂ペレットと蓄光蛍光体との混合時にオイルを共存させない比較例1、3や、オイルは共存させるが、光拡散剤を含有させない比較例2、あるいは全部の原料を一度に混練し押出成形する比較例4では、黒化、もしくは全体的に灰黒色がみられ、光透過率の低下が大きいランプカバーとなる。
【0048】
〔実施例3〕
上記の実施例及び比較例で使用した原材料の配合を、下記の通りとし、光拡散剤含有PC樹脂ペレットと蓄積性蛍光体との混練時のスクリュー回転数を35rpmとする以外は、実施例1,2と同様にして本発明のランプカバーを製造した。
得られたランプカバーにつき、実施例1,2で得られたものと同様の評価を行った結果、実施例1,2で得られたものと同様の性能を示していることを確認した。
(a)ポリカーボネート樹脂: 100重量部
(b)蓄積性蛍光体: 3重量部
(c)光拡散剤: 0.1重量部
(d)紫外線吸収剤: 1重量部
(e)難燃剤: 3.5重量部
(f)オイル: 光拡散剤含有ペレットの量に対し0.1重量部
【0049】
〔実施例4〕
上記の実施例及び比較例で使用した原材料の配合を、下記の通りとする以外は、実施例3と同様にして本発明のランプカバーを製造した。
得られたランプカバーにつき、実施例1,2,3で得られたものと同様の評価を行った結果、実施例1,2,で得られたものと同様の性能を示していることを確認した。但し、残光輝度は長時間(10時間程度)に渡って高い値を維持するものの、ランプ点灯時の照度低下率は20%をやや超える値を示した。
(a)ポリカーボネート樹脂: 100重量部
(b)蓄積性蛍光体: 30重量部
(c)光拡散剤: 10重量部
(d)紫外線吸収剤: 1重量部
(e)難燃剤: 3.5重量部
(f)オイル: 光拡散剤含有ペレットの量に対し5重量部