(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
p型半導体層又はn型半導体層である第一の半導体層と、前記第一の半導体層とは異なる型のn型半導体層又はp型半導体層である第二の半導体層と、前記第一の半導体層及び前記第二の半導体層の間に、シアノエチル基含有有機化合物及びPVDFからなる群より選択される少なくとも1種の有機化合物からなる接合界面層と、を一対の電極間に備え、
前記シアノエチル基含有有機化合物は、シアノエチルサッカロース、シアノエチルセルロース、シアノエチルヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルデンプン、シアノエチルヒドロキシプロピルデンプン、及びシアノエチルグリシドールプルランからなる群より選択される少なくとも一種である、
太陽電池。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
【0036】
本実施形態の半導体膜形成用塗布液は、無機半導体粒子及び比誘電率が2以上の化合物、又は、無機半導体粒子及び該無機半導体粒子に対して還元力のある化合物を含む。
【0037】
(無機半導体粒子)
無機半導体粒子とは、無機物からなる、特定の条件で電流を流す半導体粒子である。無機半導体粒子は、p型半導体粒子及びn型半導体粒子に大別される。ここで、p型とは半導体中における電荷の移動の担い手が正孔の場合である。n型とは、半導体中における電荷の移動の担い手が伝導電子の場合である。これら正孔及び伝導電子をまとめてキャリアという。無機半導体粒子としては、シリコン粒子、化合物半導体粒子、金属酸化物粒子等が好ましい。キャリア移動とコストの観点からシリコン粒子がより好ましい。
【0038】
シリコン粒子としては、p型、n型及びi型のシリコンの粒子が挙げられる。
【0039】
化合物半導体粒子に用いられる化合物としては、シリコンゲルマニウム化合物、CIS系化合物、CIGS系化合物、CZTS系化合物、CGS系化合物、CdTe化合物、InP化合物、GaAs化合物、GaSb化合物、GaP化合物、InSb化合物、InAs化合物、ZnTe化合物、ZnSe化合物、FeS化合物、CuS化合物、硫化スズ、硫化アンチモン等が挙げられる。CIS系化合物とは、Cu、In及びS、又はCu、In、S及びSeからなる化合物のことであり、両化合物が併用される態様も含まれる。CIGS系化合物とは、Cu、In、Ga及びS、又はCu、In、Ga、S及びSeからなる化合物のことであり、両化合物が併用される態様も含まれる。CZTS系化合物とはCu、Zn、Sn及びS、又はCu、Zn、Sn、S及びSeからなる化合物のことであり、両化合物が併用される態様も含まれる。CGS系化合物とは、Cu、Ga及びS、又はCu、Ga、S及びSeからなる化合物のことであり、両化合物が併用される態様も含まれる。なお、化合物半導体粒子に用いられるこれらの化合物は、二種以上を併用してもよい。
【0040】
金属酸化物粒子に用いられる酸化物としては、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化銀、酸化銅、酸化チタン(ルチル、アナターゼ)、酸化亜鉛、酸化銀等の金属酸化物が挙げられる。金属酸化物粒子に用いられるこれらの酸化物は、二種以上を併用してもよい。
【0041】
無機半導体粒子は結晶性が高く、高純度であることが好ましい。粒子の結晶性は、化合物半導体粒子及び金属酸化物粒子の場合はX線解析による半値幅から判断することができ、シリコン粒子の場合は抵抗率から判断することができる。無機半導体粒子の純度は、99.99質量%以上が好ましく、99.999質量%以上がより好ましい。
【0042】
シリコン粒子について詳細に説明する。シリコン粒子の製造方法としては、特に限定はなく、例えば、パルス圧力付加オリフィス噴射法を利用した高結晶性半導体マイクロ粒子製造装置を用いた方法、多結晶又は単結晶のシリコンインゴット若しくはウエハを粉砕する方法等によって製造できる。また、ウエハ作製時の切屑なども、シリコン粒子として使用できる。p型シリコン粒子としては、例えば、ホウ素、ガリウム等を添加物としてドープしたシリコン粒子が使用される。n型シリコン粒子としては、リン、窒素、砒素等を添加物としてドープしたシリコン粒子が使用される。シリコン粒子に含まれるこれらの添加物濃度は、10
12atom/cm
3以上が好ましく、10
13atom/cm
3以上がより好ましい。また、同添加物濃度は、10
21atom/cm
3以下が好ましく、10
20atom/cm
3以下がより好ましい。シリコン粒子の抵抗率は、半導体中における電荷の移動及び空乏層の広がりの観点から、0.0001Ωcm以上が好ましく、0.001Ωcm以上がより好ましい。また、同抵抗率は、1000Ωcm以下が好ましく、100Ωcm以下がより好ましい。
【0043】
インゴット又はウエハを粉砕する方法としては、乾式粉砕でも湿式粉砕でもよく、双方の方法を用いてもよい。乾式粉砕には、ハンマークラッシャ等が利用できる。湿式粉砕には、ボールミル、遊星ボールミル、ビーズミル、ホモジナイザー等が利用できる。湿式粉砕時の溶媒としては、後述する比誘電率が2以上の化合物、無機半導体粒子に対して還元力のある化合物、及び分散剤が挙げられる。
【0044】
シリコン粒子の平均粒子径は、粒子間の接触抵抗の低減の観点から、400μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましく、70μm以下が極めて好ましい。また、粒子と電極との接触抵抗の低減及び拡散長の観点から、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましい。
【0045】
なお、シリコン粒子、化合物半導体粒子、金属酸化物粒子等の無機半導体粒子の直径(粒径)は、以下の方法により測定される。
シリコン粒子に関しては、顕微鏡を使った画像処理方法により測定される。
シリコン粒子以外の粒子に関しては、該粒子を分散させた溶液を調製し、動的光散乱法を用いて測定される。
【0046】
化合物半導体粒子について詳細に説明する。化合物半導体粒子の製造方法としては、特に限定はなく、例えば気相法、液相法等によって製造できる。得られた粒子の粉砕方法としては、乾式粉砕、湿式粉砕のどちらかもしくは両方の方法を併用することができる。乾式粉砕には、ハンマークラッシャ等が利用できる。湿式粉砕には、ボールミル、ビーズミル、ホモジナイザー等が利用できる。湿式粉砕時の溶媒としては、後述する比誘電率が2以上の化合物、無機半導体粒子に対して還元力のある化合物、及び分散剤を用いることができる。
【0047】
化合物半導体粒子の平均粒子径は、粒子間の接触抵抗の低減の観点から、50μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。また、粒子と電極との接触抵抗の低減及び拡散長の観点から、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.2μm以上がさらに好ましい。
【0048】
化合物半導体粒子のX線解析による半値幅は、キャリアの移動が良好となる観点から、2度以下が好ましく、1度以下がより好ましい。
【0049】
金属酸化物粒子について詳細に説明する。金属酸化物粒子の製造方法としては、特に限定はなく、例えばゾルゲル法等によって製造できる。
【0050】
金属酸化物粒子の平均粒子径としては、粒子間の接触抵抗の低減と拡散長の観点から、0.001μm以上が好ましく、0.005μm以上がより好ましく、0.01μm以上がさらに好ましく、0.05μm以上が極めて好ましい。また、同様の観点から、同平均粒子径は、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。
【0051】
金属酸化物粒子のX線解析による半値幅は、キャリアの移動が良好となる観点から、2度以下が好ましく、1度以下がより好ましい。
【0052】
半導体膜形成用塗布液に含まれる無機半導体粒子の含有量は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、1.5質量%以上がさらに好ましい。また、無機半導体粒子の分散性の観点から、同含有量は、70質量%以下が好ましく、50質量%がより好ましく、40質量%がさらに好ましい。
【0053】
(比誘電率が2以上の化合物)
比誘電率とは、測定周波数を1kHz、測定温度を23℃とし、インピーダンス法で測定した値をいう。比誘電率の好ましい範囲としては、光電変換効率の観点から2以上であり、5以上が好ましく、10以上がより好ましい。また、比誘電率は、同様の観点から5000以下が好ましく、1500以下がより好ましく、200以下がさらに好ましい。
なお、光電変換効率ηは下記式より求めることができる。
η=(太陽電池の出力)/100×100
太陽電池の出力=短絡電流密度×開放電圧×FF=Vmax・Imax
(Imaxとは、太陽電池の出力が最大となるときの電流であり、Vmaxとは、太陽電池の出力が最大となるときの電圧である。)
【0054】
比誘電率が2以上の化合物としては、有機系化合物と無機系化合物に大別される。
有機系化合物としては、一般的な樹脂として、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、アクリル樹脂、アセチルセルローズ、アニリン樹脂、ABS樹脂、エボナイト、塩化ビニル樹脂、アクリルニトリル樹脂、アニリンホルムアルデヒド樹脂、アミノアルキル樹脂、ウレタン、AS樹脂、エポキシ樹脂、ビニルブチラール樹脂、3フッ化エチレン樹脂、シリコン樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレンブタジェンゴム、シリコンゴム、酢酸セルローズ、スチレン樹脂、デキストリン、ナイロン、軟質ビニルブチラール樹脂、フッ素樹脂、フルフラル樹脂、ポリアミド、ポリエステル樹脂、ポリカーポネート樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリアセタール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリサルファイドポリマー、ポリエチレン等が挙げられる。また、アセトン、メチルアルコール、イソブチルアルコール、エチルアルコール、アニリン、イソブチルメチルケトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、クレゾールグリコール、ジアレルフタレート、デキストリン、ピラノール、フェノール、ベークライトワニス、ホルマリン、チオグリセロール、クロロピレン、コハク酸、コハク酸ニトリル、ニトロセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、プルラン、グルシドールプルラン、ポリビニルアルコール、シュクロース、ソルビトール、シアノ基含有有機化合物等が挙げられる。
なお、シアノ基含有有機化合物とは、シアノ基が1つ以上含まれる化合物のことである。シアノ基含有有機化合物は、より好ましくはシアノエチル基含有有機化合物である。シアノ基含有有機化合物の具体例としては、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルサッカロース(シアノエチルスクロース)、シアノエチルセルロース、シアノエチルヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルデンプン、シアノエチルヒドロキシプロピルデンプン、シアノエチルグリシドールプルラン、シアノエチルソルビトール等が挙げられる。
【0055】
特に有機系化合物の場合、極性の高い原子又は官能基を含む有機系化合物が誘電率が大きく好ましい。極性の指標となる双極子モーメントは結合モーメントの和で推測できる。比誘電率が2以上の有機系化合物としては、結合モーメントが1.4D(D=3.33564×10
−30Cm)以上の置換基を有している化合物が好ましい。結合モーメントが1.4D以上である置換基としては、OH、CF、CCl、C=O、N=O、CN等がある。これらの置換基を有する比誘電率が2以上の有機系化合物としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、グリセリン、チオグリセロール、シアノ基含有有機化合物等が挙げられる。
【0056】
無機系化合物としては、ケイ酸カルシウム、ガラス、酸化アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、セレン、チタン酸バリウム、ビスマスシリケート、ニオブ酸鉛、二酸化チタン、尿素、ベークライト、パイレックス(登録商標)、ワセリン、雲母、塩化銅、酸化銅、硫酸銅、酸化鉄、塩素酸カリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化銀、臭化カリウム、フッ化リチウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、フッ化カルシウム、硫化亜鉛、NaI、NaF、NaClO
3、NaSO
4等が挙げられる。
【0057】
無機系化合物としては、上記のほかに、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウムストロンチウム等の複合酸化物、又は、これらの複合酸化物を主成分とし、さらにBaサイトにマグネシウムを、Tiサイトにスズ及び/又はジルコニウムを置換したペロブスカイト型複合酸化物等も使用できる。さらにペロブスカイト型複合酸化物に、微量添加物を1種又は2種以上加えたものも使用できる。
【0058】
微量添加物としては、タングステン、タンタル、ニオブ、鉄、銅、マグネシウム、ビスマス、イットリウム、モリブデン、バナジウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マンガン、ニッケル、亜鉛、カルシウム、ストロンチウム、ケイ素、錫、セレン、ネオジウム、エルベニウム、ツリウム、ホフニウム、プラセオジウム、プロメチウム、サマリウム、ユウロビウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、リチウム、スカンジウム、バリウム、ランタン、アクチニウム、セリウム、ルテニウム、オスシウム、コバルト、パラジウム、銀、カドニウム、ホウ素、ガリウム、ゲルマニウム、リン、ヒ素、アンチモン、フッ素、テルル、ルテチウム、イッテルビウム等が挙げられる。
【0059】
微量添加物としては、上記のほかに、イミダゾリウム、ピリジウム、ピロロリジニウム、ホスホニウム、アンモニウム、スルフォニウム等をカチオンとするイオン性液体等がある。
【0060】
半導体膜形成用塗布液における比誘電率が2以上の化合物の含有量は、該塗布液の安定性と光電変換特性の観点から0.5質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。また、同様の観点から、同含有量は、90質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0061】
(無機半導体粒子に対して還元力のある化合物)
無機半導体粒子に対して還元力のある化合物とは、無機半導体粒子と混合した際に、該粒子表面を還元する化合物である。
無機半導体粒子に対して還元力のある化合物としては、3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオール、1,3−ビス(アリロキシ)−2−プロパノール、2,3−ジヒドロキシベンズアルデヒド、カテコール、ジペンタエリスリトール、アリトール、タリトール、イジトール、グリセロールエトキシレート、1,4−ジチオエリスリトール、1,4−ジスルファニル−2,3−ブタンジオール、マルトトリオース、グリコール酸、乳酸、ポリカーボネートジオール、ポリエステルポリオール、グリセルアルデヒド、グリコールアルデヒド、インベルトース、m−エリトリトール、アルキレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ポリアルキレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、エトキシエタノール、ブタンジオール、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、オクタンジオール、ドデカンジオール、グリセリン、グリセルアルデヒド、3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオール、チオグリセロール、1,5−ペンタンジオール、1,12−ドデカン二酸、ピロカテコール、3−メトキシカテコール、1,2,3−ブタンチオール等;エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール等のアルコール類;ヘキシルアミン、ヘブチンアミン、オクチルアミン、ウンデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ナフチルアミン、トルイジン等のアミン系材料、が挙げられる。上記化合物の中でも、特にグリセリン及びチオグリセロールが好ましい。
【0062】
半導体膜形成用塗布液における、無機半導体粒子に対して還元力のある化合物の含有量は、該塗布液の安定性と光電変換特性の観点から0.5質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。また、同様の観点から、同含有量は、90質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0063】
半導体膜形成用塗布液が、無機半導体粒子に対して還元力のある化合物と上述の比誘電率が2以上の化合物の両方を含む場合、塗布液の安定性と光電変換特性の観点から、両者の合計含有量は、0.5質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。また、同様の観点から、同含有量は、90質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。なお、本実施形態においては、比誘電率が2以上であり、かつ無機半導体粒子に対して還元力がある化合物が特に好ましい化合物である。このような化合物としては、グリセリン及びチオグリセロールが挙げられる。
【0064】
(分散剤)
半導体膜形成用塗布液の粘度の調整等の観点から、半導体膜形成用塗布液は分散剤を含んでいてもよい。
【0065】
分散剤の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;セロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン(デカリン)、テトラリン等の炭化水素類;水などが挙げられる。
【0066】
半導体膜形成用塗布液に含まれる分散剤の含有量としては、粘度を調整して半導体膜形成用塗布液を扱い易くする観点から、1質量%以上が好ましく、また、98.5質量%以下であることが好ましい。
【0067】
比誘電率が2以上の化合物又は無機半導体粒子に対して還元力のある化合物が液体である場合は、それ自身が分散剤としても機能する。この場合、さらに分散剤を加えなくても、粘度を調整することが可能である。
【0068】
(界面活性剤)
半導体膜形成用塗布液に、分散安定性の向上の目的で界面活性剤を加えてもよい。界面活性剤の添加量は、分散安定性の観点から0.0001質量%以上が好ましく、また、10質量%以下が好ましい。
【0069】
界面活性剤としては、特に限定はなく、例えばアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤等を使用することができる。
【0070】
上述の界面活性剤としては、例えば、
ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシノニルフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールエーテル硫酸塩、スルホン酸基又は硫酸エステル基と重合性の不飽和二重結合とを分子中に有するいわゆる反応性界面活性剤等の、アニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、これら「ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレン脂肪酸エステル」の分子中に重合性の不飽和二重結合を有する反応性ノニオン性界面活性剤等の、ノニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;(変性)ポリビニルアルコール;直鎖アルキルチオール類;などが挙げられる。
【0071】
(半導体膜)
本実施形態の半導体膜とは、無機半導体粒子及び比誘電率が2以上の化合物又は無機半導体粒子に対して還元力のある化合物を含む半導体膜である。本実施形態の半導体膜としては、p型半導体膜、n型半導体膜、並びに一つの膜の中にp型及びn型の両特性を有する半導体膜が挙げられる。
半導体膜は、前記半導体膜形成用塗布液から形成されることが好ましい。
【0072】
半導体膜中の無機半導体粒子の含有量は、太陽電池としたときの光電変換特性の観点から20質量%以上が好ましく、50質量%がより好ましい。また、同様の観点から、同含有量は99.5質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましい。
【0073】
半導体膜中の比誘電率が2以上の化合物、又は無機半導体粒子に対して還元力のある化合物の含有量は、光電変換特性の観点から0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。また、同様の観点から、同含有量は80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。また、半導体膜が、比誘電率が2以上の化合物と無機半導体粒子に対して還元力のある化合物との両方を含む場合には、半導体膜中の両者の合計含有量は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。また、同合計含有量は、80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。また、半導体膜の膜厚は、光電変換特性の観点から0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。また、同様の観点から、同膜厚は、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましい。半導体膜の膜厚は断面SEMや断面TEM観察で測定される。
【0074】
半導体膜中の比誘電率が2以上の化合物、又は無機半導体粒子に対して還元力のある化合物は、無機半導体粒子のバインダーとして機能することが考えられる。このような化合物は、比誘電率が2以上あり、かつ無機半導体粒子に対して還元力がある化合物であることが好ましい。
【0075】
半導体膜中に含まれる無機半導体粒子としては、上記に挙げたp型半導体粒子の二種以上を併用してもよく、n型半導体粒子の二種以上を併用してもよく、p型半導体粒子とn型半導体粒子の両方を併用してもよい。
【0076】
ここで、半導体膜中における、無機半導体粒子に対して還元力のある化合物の含有量には、還元力のある化合物が無機半導体粒子を還元した結果、還元力のある化合物が酸化された状態のものの量も含まれる。
【0077】
具体的に、無機半導体粒子に対して還元力のある化合物として、グリセリンを例にとり説明する。下記式(1)に示すグリセリンとシリコン粒子とを混合し、薄膜を作製すると、シリコン粒子の表面は還元され、一部がSi−H結合になる。一方、グリセリンは酸化され、下記式(2)〜(13)に記載の化合物が生成すると推測される。
【0080】
このことは、半導体膜のIRスペクトルから確認できる。半導体膜形成用塗布液ではC=O結合の伸縮振動のピークは見られないが、加熱工程を経て半導体膜を成膜すると、C=O結合の伸縮振動のピークが見られるようになる。ただし、すべてのグリセリンが酸化されるわけではなく、酸化されていないグリセリンも残っている。
【0081】
グリセリンの酸化率は下記の一般式(I)から求めることができる。
グリセリンの酸化率=αCO/(αCO+αOH)・・・(I)
式(I)中、αOHはグリセリンの3350cm
−1付近のOH結合由来のピーク強度を示し、αCOはグリセリンが酸化されてできる化合物の2350cm
−1付近のCO結合由来のピーク強度を示す。
【0082】
グリセリンの酸化率は、無機半導体粒子の表面の酸化した層を除去する観点から、0.09以上が好ましく、また1未満が好ましい。前記範囲は、シリコン粒子が化合物半導体粒子の場合も同様である。また、前記範囲は、シリコン粒子が金属酸化物の場合も同様である。
【0083】
また、シリコン粒子の表面が還元され、一部がSi−H結合になることも、半導体膜のIRスペクトルから確認できる。シリコン粒子の還元率は、下記(II)から求めることができる。
シリコン粒子の還元率=βSiH/(βSiH+βSiOSi)・・・(II)
式(II)中、βSiHは2100cm
−1付近のSiH結合由来のピーク強度を示し、βSiOSiは1100cm
−1付近のSiOSi結合由来のピーク強度を示す。
【0084】
シリコン粒子の還元率は、シリコン粒子の表面の酸化した層を除去する観点から0.01以上が好ましく、また0.5以下が好ましい。
【0085】
したがって、一実施形態において、比誘電率が2以上の化合物、又は無機半導体粒子に対して還元力のある化合物としてグリセリンを使用して製造した半導体膜中には、グリセリンとグリセリンの酸化物が存在している。この場合、グリセリンの半導体膜中の含有量は、グリセリンとグリセリンが酸化されたものの合計量とする。
【0086】
なお、一般に無機半導体粒子に対して還元力のある化合物の酸化率は、下記一般式(III)で求めることができる。
無機半導体粒子に対して還元力のある化合物の酸化率=α’Y/(α’X+α’Y)・・・(III)
式(III)中、α’Xは該化合物の酸化反応で反応する官能基由来のピーク強度を示し、α’Yは該化合物が酸化されてできる官能基由来のピーク強度を示す。
【0087】
(半導体膜の製造方法)
本実施形態は、上記の半導体膜形成用塗布液を電極が形成された基板に塗布し塗布膜を得る工程、を含む、半導体膜の製造方法を提供する。なお、上記の半導体膜形成用塗布液が分散剤を含む場合、本実施形態の半導体膜の製造方法は、該塗布液を電極が形成された基板に塗布し塗布膜を得る工程と、該塗布膜を20〜500℃で加熱する工程、を含むことが好ましい。すなわち、本実施形態の半導体膜は、半導体膜形成用塗布液から、粘度を制御するために加えた分散剤を除去することが好ましい。ここで、前記の通り分散剤は、比誘電率が2以上の化合物とは異なるものである。
【0088】
半導体膜を作製するために、半導体膜形成用塗布液を塗布する基板としては、ガラス基板;PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルスルフォン)、PI(ポリイミド)、PP(ポリプロピレン)、アクリル樹脂等のプラスチック基板;アルミ基板、ステンレス(SUS)基板等の金属基板;紙基板等のあらゆる基板が挙げられる。
【0089】
半導体膜形成用塗布液の塗布方法としては、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、浸漬法、スプレー法等の塗布方法;フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷等の印刷法を用いることができる。
【0090】
半導体膜形成用塗布液を用いた半導体膜の製造方法において、塗布液が分散剤を含む場合は、塗布液を20〜500℃で加熱する工程によって、分散剤の除去と無機半導体粒子同士の融着を促進させることができる。加熱温度としては分散剤の除去と作業効率から、40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。また、同様の観点から、同加熱温度は400℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。加熱工程は分散剤が除去できればいいので、分散剤の沸点が低い場合には、加熱温度を低く設定することができる。この場合、基板は耐熱性を必要としないので、基板の材料は広範囲の樹脂材料から選択することが可能となる。例えば、樹脂材料として、アクリル樹脂、PP、PET、PC等の汎用樹脂が使用できるため、低コストで太陽電池を製造することができる。なお、分散剤を用いない場合には、加熱工程はなくても構わない。
【0091】
(半導体素子)
本実施形態の半導体素子とは、半導体層、又は半導体膜からなる層、又は半導体層及び半導体膜からなる層、を備える素子である。具体例としては、発光ダイオード、半導体レーザー、フォトダイオード又は太陽電池のことを示す。本実施形態の半導体素子は、後述する接合界面層等を備える。前記半導体素子は、太陽電池であることが好ましい。以下、太陽電池を例にとり、本実施形態の説明を行う。
【0092】
(太陽電池)
本発明の太陽電池とは、半導体層若しくは半導体膜からなる層、又は半導体層及び半導体膜からなる層と、電極と、基板と、を備え、光によって発電するものである。太陽電池を構成する半導体はp−p接合型及びn−n接合型であっても良いが、好ましくはp−n接合型である。
本実施形態の太陽電池の構成について説明する。太陽電池は、p型半導体層又は本実施形態のp型半導体膜からなる層、及びn型半導体層又は本実施形態のn型半導体膜からなる層を構成要素として備える、pn接合型半導体層を有するものが一般的である。
【0093】
p型半導体膜からなる層は、上述の半導体膜形成用塗布液から形成されるものであり、シリコン粒子及び化合物半導体粒子のうちの少なくとも一種を含むことが好ましく、シリコン粒子を含むことがより好ましい。n型半導体膜からなる層は、上述の半導体膜形成用塗布液から形成されるものであり、シリコン粒子及び金属酸化物粒子のうちの少なくとも一種を含むことが好ましい。p型とは半導体中における電荷の移動の担い手が正孔の場合である。n型とは、半導体中における電荷の移動の担い手が伝導電子の場合である。電荷の移動の担い手が正孔又は伝導電子であることで、半導体層は見かけ上プラス又はマイナスの電荷を有する。
【0094】
前記無機半導体粒子は、電子及びホールを効率よく電極に取り出す上で、電極と接触していることが好ましい。すなわち、電極と隣接する本実施形態の半導体膜からなる層に含まれる無機半導体粒子が電極と接触することにより、無機半導体粒子により電極が被覆されていることが好ましい。ただし、無機半導体粒子により電極の全面が被覆されていなくても構わない。なお、発電効率の観点から、無機半導体粒子は電極の30%以上を被覆していることが好ましく、50%以上を被覆していることがより好ましい。接触の程度、すなわち被覆の程度は、例えば、光学顕微鏡や電子顕微鏡により観察及び評価することができる。
【0095】
本実施形態の太陽電池の電極間の厚みは、使用する半導体によって決まる。電極間の厚みを1000μm以下と薄くすることで、柔軟性があり、ある程度の変形にも耐えうる太陽電池が得られる。
特に、無機半導体粒子を用いた場合は、曲げた時の応力に対して、粒子間で応力を緩和できる。よって、柔軟性を持つ太陽電池を作製する場合は無機半導体粒子を用いることが好ましい。
本実施形態の太陽電池は、柔軟性を有することが好ましく、フレキシブル性太陽電池であることが好ましい。フレキシブル性太陽電池とは、下記工程(a)〜(d)後にも発電が可能な太陽電池のことをいう。
(a)水平な台の上に太陽電池を置く。
(b)太陽電池の半分の面積を押さえ、台と太陽電池のなす角が45度になるまで曲げる。その後、元の状態に戻す。
(c)前記(b)の工程を5回繰り返す。
(d)太陽電池が発電するか確認する。
本発明のフレキシブル性太陽電池は、製造時にロール状に巻き取ることができるため、製造スピードを向上し低コスト化が可能となる。
また、本実施形態の電極基板は、柔軟性を有することが好ましく、フレキシブル性電極基板であることが好ましい。電極基板とは、電極、半導体層及び接合界面層を備える基板、又は、電極及び半導体膜からなる層を備える基板のことをさす。なお、接合界面層の詳細に関しては、後述する。
フレキシブル性電極基板とは、下記工程(a)〜(e)後にも発電が可能な電極基板のことをいう。
(a)水平な台の上に電極基板を置く。
(b)電極基板の半分の面積を押さえ、台と電極基板のなす角が45度になるまで曲げる。その後、元の状態に戻す。
(c)前記(b)の工程を5回繰り返す。
(d)電極基板に半導体層又は半導体膜を貼りあわせて太陽電池を作製する。
(e)太陽電池が発電するか確認する。
特に接合界面層が有機系化合物の場合、半導体層が、接合界面層で覆われるため、無機半導体粒子の剥離や割れが抑制される。また、電極基板に半導体膜からなる層が含まれることで、無機半導体粒子の剥離や割れが抑制されるため好ましい。
太陽電池の具体例として、本実施形態の太陽電池の例を
図1〜8に、一般的なpn接合の太陽電池の例を
図9に示す。
【0096】
例1として、
図1に示す太陽電池100は、基板110の上に、陽極層120、本実施形態の半導体膜からなる層130、n型半導体層140、及び陰極層150を備える。各層をさらに細分化し複数層を設けることも可能である。例えば、層140と層150との間に電子取り出し層(図示せず)を設けることもできる。また、層130と層120の間にホール取出し層(図示せず)を設けることもできる。また、層130と層140との間に、本実施形態の半導体膜からなる層とは別に、光吸収層(図示せず)を設けることもできる。また、層130と層140は互いに混ざったバルクへテロ構造となってもよい。層120又は層150のどちらか一方が透明であることが好ましい。また、基板110は層150側にあってもよく、層120側及び層150側の両方にあってもよい。例1の態様は、すなわち本実施形態の半導体膜からなる層と、該半導体膜と反対の電荷をもつ他の半導体層と、を備える太陽電池である。
【0097】
なお、本実施形態において、「半導体層」は「半導体膜(からなる層)」とは異なるものである。半導体膜は上述のとおり無機半導体粒子及び比誘電率が2以上の化合物又は無機半導体粒子に対して還元力のある化合物を含む半導体膜である。一方、半導体層は、シリコンウエハ、無機半導体の層、又は有機半導体の層などの半導体で形成される。すなわち、半導体層は、シリコンインゴットをスライスカットすることで得られるシリコンウエハ、そのシリコンウエハを研磨して得られるシリコンウエハ、基板の上に蒸着法、CVD法、スパッタ法等の真空装置を用いて無機半導体材料から形成された無機半導体の層、又は塗布法若しくは蒸着法等を用いて有機半導体材料から形成された有機半導体の層などをいう。
【0098】
具体的には、p型半導体層は、例えば、単結晶又は多結晶のシリコンウエハ、アモルファスシリコン膜、CIGS系、CZTS系等の化合物半導体層、シリコン粒子、酸化銅(I)等の金属酸化物粒子からなる層、CIGS系、CZTS系等の化合物半導体粒子からなる層、p型有機半導体からなる層が挙げられる。p型有機半導体としては、ペンタセン、6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン等のペンタセン誘導体、テトラセン、2−ヘキシルテトラセン等のテトラセン誘導体、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(NPD)、N,N’−ジフェニル−N、N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)、1,3,5−トリス(3−メチルジフェニルアミノ)ベンゼン(m−MTDATA)等の芳香族アミン系材料が挙げられる。また、その他にも、p型有機半導体としては、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)等のフタロシアニン系錯体、ポリフィリン系化合物、ペリレン系誘導体、イミダゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体等が挙げられる。さらに、p型有機半導体としては、チオフェンの誘導体、ポリフェニルビニレン(PPV)の誘導体等が挙げられる。チオフェンの誘導体として、具体的には、P3HT(Poly(3−hexylthiophene−2,5−diyl))、P3OT(Poly(3−octylthiophene−2,5−diyl))、P3DDT(Poly(3−dodecylthiophene−2,5−diyl))等が挙げられる。p型半導体層として、キャリア移動とコストの観点から単結晶又は多結晶のシリコンウエハが好ましい。
【0099】
n型半導体層は、例えば、単結晶又は多結晶のシリコンウエハ、アモルファスシリコン膜、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物からなる層、シリコン粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子等の金属酸化物粒子からなる層、n型有機半導体からなる層が挙げられる。n型有機半導体としては、フッ素化アセン系化合物、フラーレン、60PCBM([6,6]−PhenylC61butyric acid methyl ester)、70PCBM([6,6]−PhenylC71butyric acid methyl ester)等のフラーレン系化合物、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体等が挙げられる。n型半導体層として、キャリア移動とコストの観点から単結晶又は多結晶のシリコンウエハや金属酸化物、金属酸化物粒子からなる層が好ましい。
【0100】
p型半導体層又はn型半導体層がシリコンウエハの場合、その厚みは50μm以上が好ましい。また、同厚みは、1000μm以下が好ましく、700μm以下がより好ましく、300μm以下がさらに好ましい。アモルファスシリコン膜の場合は、その厚みは0.1μm以上が好ましく、また100μm以下が好ましい。化合物半導体層の場合、その厚みは0.5μm以上が好ましく、また10μm以下が好ましい。シリコン粒子を固めた膜の場合、その厚みは0.5μm以上が好ましい。また、同厚みは、500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましい。化合物半導体粒子を固めた膜の場合、その厚みは0.5μm以上が好ましく、また10μm以下が好ましい。有機半導体からなる膜の場合、その厚みは10nm以上が好ましく、また10μm以下が好ましい。また、複数の無機半導体粒子から形成される半導体層を採用する場合、すなわち、複数の無機半導体粒子から膜状の半導体層を形成する場合、その厚みは、光吸収能力とキャリア輸送の関係から、0.01μm以上が好ましく、また300μm以下が好ましい。
半導体層の膜厚はvertscan2.0(株式会社菱化システム製)や断面TEM観察で測定される。
【0101】
なお、n型半導体層が酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物又は金属酸化物粒子からなる層の場合、リーク防止とキャリア輸送の関係から、その厚みは0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましい。また、同様の観点から、同厚みは、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
【0102】
なお、複数の無機半導体粒子から膜状の半導体層を形成する方法としては、例えば、複数の材料を共蒸着させ、電極付きの基板に堆積する方法、複数の材料を含む一つの塗工液を準備し、その塗工液を用いて種々の印刷法で半導体層を作製する方法などが挙げられる。
【0103】
例2として、
図2に示す太陽電池200は、基板210の上に、陽極層220、p型半導体層230、本実施形態の半導体膜からなる層240、及び陰極層250を備える。各層をさらに細分化し複数層を設けることも可能である。例えば、層230と層220との間にホール取り出し層(図示せず)を設けることもできる。また、層240と層250の間に電子取出し層(図示せず)を設けることもできる。また、層230と層240との間に、本実施形態の半導体膜からなる層とは別に、光吸収層(図示せず)を設けることもできる。また、層230と層240は互いに混ざったバルクへテロ構造となってもよい。層220又は層250のどちらか一方が透明であることが好ましい。また、基板210は層250側にあってもよく、層220側及び層250側の両方にあってもよい。
【0104】
例3として、
図3に示す太陽電池300は、基板310の上に、陽極層320、本実施形態のp型半導体膜からなる層330、本実施形態のn型半導体膜からなる層340、及び陰極層350を備える。各層をさらに細分化し複数層を設けることも可能である。例えば、層330と層320との間にホール取り出し層(図示せず)を設けることもできる。また、層340と層350の間に電子取出し層(図示せず)を設けることもできる。また、層330と層340との間に、本実施形態の半導体膜からなる層とは別に、光吸収層(図示せず)を設けることもできる。また、層330と層340は互いに混ざったバルクへテロ構造となってもよい。層320又は層350のどちらか一方が透明であることが好ましい。また、基板310は層350側にあってもよく、層320側及び層350側の両方にあってもよい。例3の態様は、すなわち本実施形態の半導体膜からなる層と、該半導体膜と反対の電荷をもつ他の半導体膜と、を備える太陽電池である。
【0105】
例4として、
図4に示す太陽電池400は、基板410の上に、陽極層420、本実施形態のp型半導体膜からなる層430、比誘電率が2以上の化合物を含む接合界面層440、本実施形態のn型半導体膜からなる層450、及び陰極層460を備える。各層をさらに細分化し複数層を設けることも可能である。例えば、層430と層420との間にホール取り出し層(図示せず)を設けることもできる。また、層450と層460の間に電子取出し層(図示せず)を設けることもできる。層420又は層460のどちらか一方が透明であることが好ましい。また、基板410は層460側にあってもよく、層420側及び層460側の両方にあってもよい。例4の態様は、すなわち本実施形態の半導体膜からなる層と、該半導体膜と反対の電荷をもつ他の半導体膜からなる層と、本実施形態の半導体膜からなる層及び他の半導体膜からなる層の間に比誘電率が2以上の化合物を含む接合界面層と、を備える太陽電池である。
【0106】
例5として、
図5に示す太陽電池500は、基板510の上に、陽極層520、p型半導体粒子531とn型半導体粒子532と比誘電率が2以上の化合物とを含む本実施形態の半導体膜からなる層530、及び陰極層540を備える。なお、基板510は層540側にあってもよく、層520側と層540側の両方にあってもよい。層520又は層540のどちらか一方が透明であることが好ましい。また、層530と層540との間に電子取り出し層(図示せず)を設けることもできる。層530と層520の間にホール取出し層(図示せず)を設けることもできる。ここで、p型半導体粒子及びn型半導体粒子の平均粒子径は、光吸収能力とキャリア輸送の観点から、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。また、同様の観点から、同平均粒子径は、200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。また、層530の厚みは高い光電変換効率を発現する上で、100nm以上が好ましく、500nm以上がより好ましい。また、同様の観点から、同厚みは、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましい。層530は、p型半導体粒子とn型半導体粒子を同一層内に含み、それらが接触することで、1層でP/N接合を実現している例である。
【0107】
例6として、
図6に示す太陽電池600は、基板610の上に、陽極層620、p型半導体層630、比誘電率が2以上の化合物を含む接合界面層640、n型半導体層650、及び陰極層660を備える。なお、基板610は層660側にあってもよく、層620側と層660側の両方にあってもよい。層620又は層660のどちらか一方が透明であることが好ましい。また、層650と層660との間に電子取り出し層(図示せず)を設けることもできる。層630と層620の間にホール取出し層(図示せず)を設けることもできる。
【0108】
なお、例6の態様は、第一の半導体層と、第二の半導体層と、第一の半導体層及び第二の半導体層の間に比誘電率が2以上の化合物を含む接合界面層と、を備える太陽電池である。上記のとおり、第一の半導体層がp型半導体層であり、第二の半導体層がn型半導体層である太陽電池とすることができる。なお、半導体層のうち少なくとも一方の半導体層が、酸化チタン層、シリコンウエハ又は化合物半導体層であることが好ましい。
【0109】
例7として、
図7に示す太陽電池700は、基板710の上に、陽極層720、本実施形態の半導体膜からなる層730、比誘電率が2以上の化合物を含む接合界面層740、n型半導体層750、及び陰極層760を備える。なお、基板710は層760側にあってもよく、層720側と層760側の両方にあってもよい。層720又は層760のどちらか一方が透明であることが好ましい。また、層750と層760との間に電子取り出し層(図示せず)を設けることもできる。層730と層720の間にホール取出し層(図示せず)を設けることもできる。層730は、p型半導体膜からなる層であることが好ましい。
【0110】
例8として、
図8に示す太陽電池800は、基板810の上に、陽極層820、p型半導体層830、比誘電率が2以上の化合物を含む接合界面層840、本実施形態の半導体膜からなる層850、及び陰極層860を備える。なお、基板810は層860側にあってもよく、層820側と層860側の両方にあってもよい。層820又は層860のどちらか一方が透明であることが好ましい。また、層850と層860との間に電子取り出し層(図示せず)を設けることもできる。層830と層820の間にホール取出し層(図示せず)を設けることもできる。層850は、n型半導体膜からなる層であることが好ましい。
【0111】
なお、例7及び8の態様は、本実施形態の半導体膜からなる層と、半導体層と、半導体膜からなる層及び半導体層の間に比誘電率が2以上の化合物を含む接合界面層と、を備える太陽電池である。上記のとおり、半導体膜からなる層がp型半導体膜からなる層であり半導体層がn型半導体層である、又は、半導体膜からなる層がn型半導体膜からなる層であり半導体層がp型半導体層である太陽電池とすることができる。
【0112】
例9として、
図9に示す太陽電池900は、一般的なpn接合の太陽電池の一例である。基板910の上に、陽極層920、p型半導体層930、n型半導体層940、及び陰極層950を備える。なお、基板910は層950側にあってもよく、層920側と層950側の両方にあってもよい。層920又は層950のどちらか一方が透明であることが好ましい。
【0113】
本実施形態の太陽電池の構成は、上記の
図1〜8及び
図9に示した構造を2つ以上直列に積み上げたタンデム構造であってもよい。
【0114】
上記の基板としては、ガラス基板、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)等プラスチックの基板、アルミ基板、ステンレス(SUS)基板、紙基板などの通常用いられるあらゆる基板が使用できる。
【0115】
陰極(層)としては、アルミニウム、SUS、金、銀、ITO(酸化インジウムスズ)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛等の通常使用される金属又は金属酸化物が使用できる。また、導電性高分子、グラフェン等も使用できる。
【0116】
陽極(層)としては、アルミニウム、SUS、金、銀、ITO(酸化インジウムスズ)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛等の通常使用される金属又は金属酸化物が使用できる。また、導電性高分子、グラフェン等も使用できる。
【0117】
なお、基板、陰極層及び陽極層の厚さは特に制限されないが、それぞれ0.1mm〜100mm、0.01μm〜1000μm及び0.01μm〜1000μm程度とすることができる。
【0118】
(接合界面層)
半導体層の接合界面に比誘電率が2以上の化合物からなる接合界面層を設けることで、発電効率に優れる太陽電池が簡便に作製できる。特に、p型半導体層とn型半導体層の接合界面、p型半導体膜とn型半導体層の接合界面、p型半導体層とn型半導体膜の接合界面、p型半導体膜とn型半導体膜の接合界面に、比誘電率が2以上の化合物からなる接合界面層を設けることが好ましい。
比誘電率2以上の化合物としては前述したものがあげられる。さらに接合界面層は有機化合物からなることが柔軟性、成膜性等の観点から好ましい。前記有機化合物は、置換基として、OH、CF、CCl、C=O、N=O、CN等を有することが好ましい。具体的な前記有機化合物は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、グリセリン、チオグリセロール、シアノ基含有有機化合物であることが好ましい。シアノ基含有有機化合物とは、シアノ基が1つ以上含まれる化合物のことである。シアノ基含有有機化合物は、より好ましくはシアノエチル基含有有機化合物である。シアノ基含有有機化合物の具体例としては、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルサッカロース(シアノエチルスクロース)、シアノエチルセルロース、シアノエチルヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルデンプン、シアノエチルヒドロキシプロピルデンプン、シアノエチルグリシドールプルラン、シアノエチルソルビトール等が挙げられる。
接合界面層の比誘電率の好ましい範囲としては、光電変換効率の観点から2以上であり、5以上が好ましく、10以上がより好ましい。また、前記比誘電率は、同様の観点から5000以下が好ましく、1500以下がより好ましく、200以下がさらに好ましい。
【0119】
接合界面層における比誘電率が2以上の化合物の含有量は、光電変換効率の観点から、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上が極めて好ましい。一方、同含有量の上限は、太陽電池特性を向上させるという観点から、100質量%、すなわち接合界面層が比誘電率が2以上の化合物から構成されるものであることが好ましい。前記接合界面層は太陽電池の性能の観点から、空気を含まず充填されていることが好ましい。前記接合界面層は、特性を損なわない範囲で、バインダー成分として一般汎用性樹脂、さらに界面活性剤、分散剤等を含んでも構わない。
【0120】
接合界面層は、p型半導体層とn型半導体層との接合界面の全面に導入されなくても構わない。発電効率の観点から、前記の全接合界面の30%以上を被覆していることが好ましく、50%以上を被覆していることがより好ましく、100%被覆していることがさらに好ましい。
なお、接合界面層の平均厚みは、発電効率とキャリアの移動の観点から、1nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、30nm以上がさらに好ましく、50nm以上が極めて好ましい。また、同様の観点から、同厚みは、500μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましく、10μm以下が極めて好ましく、5μm以下が最も好ましい。本接合界面層はトンネリングによる電流が流れにくい30nm以上の厚みでも高い光電変換特性を有することが特徴である。接合界面層の膜厚は、vertscan2.0(株式会社菱化システム製)や断面TEM観察により測定される。
【0121】
なお、接合界面層は、半導体層に光を吸収させる観点から、ある程度透明であることが好ましい。接合界面層の透過率は、550nmの波長の光に対して35%以上であることが好ましく、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。透過率は分光光度計で測定することができる。透過率の上限は特に限定されないが、100%以下である。透過率は、分光光度計を用いて測定することができる。測定基材は石英ガラスや樹脂基板を用いることができる。
【0122】
接合界面層の抵抗率は高い方が好ましい。これにより、リーク電流の防止に寄与することができると推測される。なお、このような観点から、抵抗率は、10Ωcm以上が好ましく、100Ωcm以上がより好ましく、1000Ωcm以上がさらに好ましく、10000Ωcm以上が極めて好ましく、1000000Ωcm以上が最も好ましい。抵抗率の上限は特に限定されないが、1×10
19Ωcm以下であることが好ましい。
本実施形態における抵抗率は、電気の通し易さの尺度であり、単位体積当たりの抵抗率のことである。この値は物質固有の値であり、物質の断面積Wに一定電流Iを流し、距離Lだけ離れた電極間の電位差Vを測ることにより求められる。
抵抗率=(V/I)×(W/L)
【0123】
接合界面層は、低コスト化が可能なことから印刷法を用いて作製することが効果的である。この際、柔軟性を有する前記フレキシブル性電極基板であることが好ましい。これにより、接合界面層を備えた電極基板をロール状に巻き取ることができるため、製造スピードを向上することができる。
【0124】
(太陽電池の製造方法)
本実施形態の太陽電池の製造方法は、例えば、電極を備える基板上に、半導体膜形成用塗布液を塗布して半導体膜を形成し、半導体膜付き基板を得る工程と、電極を備える基板に半導体層を形成し、半導体層付き基板を得る工程と、これらの基板を、半導体膜と半導体層とが対向するようにして貼り合わせる工程と、を備える。このとき、半導体層付き基板に代えて、他の半導体膜付き基板を用いてもよい。なお、本実施形態の製造方法においては、半導体膜又は半導体層上に、さらに比誘電率が2以上の化合物を含む層を設ける工程を備えていてもよい。
【0125】
(接合界面層を有する太陽電池の製造方法)
接合界面層を有する太陽電池の製造方法の例を示す。本実施形態の製造方法は、電極の上に、p型半導体層又はn型半導体層、及び比誘電率が2以上の化合物を含む層をこの順に有する積層体を得る工程と、当該積層体の比誘電率が2以上の化合物を含む層に他のp型半導体層又は他のn型半導体層を貼り合わせる工程と、を備える。具体的には、例えば、電極の上にp型半導体層を形成した後、比誘電率が2以上の化合物を含む塗布液を塗布する(比誘電率が2以上の化合物を含む層を形成する)工程1、電極の上にn型半導体層を形成する工程2、工程1と工程2で得られた積層物同士を貼り合わせる工程3を経ることで太陽電池を得ることができる。この製造方法では、p型半導体層とn型半導体層を入れ替えても構わない。また、電極の一方が透明であることが好ましい。この例においては、塗布液は工程1でのみ塗工されているが、工程2でn型半導体層に塗工してもよく、工程1及び工程2の両方で塗工しても構わない。すなわち、塗布液は、p型半導体層、n型半導体層のどちらに塗工してもよく、双方に塗工しても構わない。また、工程1及び工程2の後に、塗布液を乾燥する工程を追加してもよい。というのも、比誘電率が2以上の化合物を含む層が、比誘電率が2以上の化合物を含有する塗布液から揮発成分を除去して得られるものであってもよいためである。
【0126】
なお、本実施形態においては、p型半導体層の上に比誘電率が2以上の化合物を含む塗布液を塗布した後、その上にn型半導体層を形成し、さらにその上に電極を形成して、太陽電池を作製してもよい。この場合においても、p型半導体層とn型半導体層を入れ替えてもよい。また、塗布液を塗布した後、あるいはn型半導体層を形成した後に乾燥する工程を追加してもよい。
【0127】
本実施形態の太陽電池は、また、p型半導体層又はn型半導体層の上に比誘電率が2以上の化合物を含む層を形成して積層体を得る工程を備える方法によっても製造することができる。この方法は、該工程と、さらに透明電極の上に他のp型半導体層又は他のn型半導体層を設けて他の積層体を得る工程と、積層体と他の積層体とを、比誘電率が2以上の化合物を含む層と他のp型半導体層又は他のn型半導体層とが対向するようにして貼り合わせる工程と、を備えることができる。
【0128】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0129】
以下、具体的な実施例により、本発明をより詳細に説明する。
[評価方法]
以下、特に断りのない場合は、25℃、湿度45%の条件で評価を行った。
(1)平均粒子径
シリコン粒子に関しては、顕微鏡により100個の粒子を無作為に選択し、画像解析を用いて円相当径で評価した粒子直径の算術平均値を平均粒子径とした。顕微鏡としてキーエンス社製のデジタルマイクロスコープを用いた。
シリコン粒子以外の粒子に関しては、該粒子を分散させた溶液を調製し、動的光散乱法を用いて測定した。測定装置は大塚電子株式会社製の「ELSZ−2」を用いて計測した。
【0130】
(2)I−V特性の評価
コンピューター(システムハウス・サンライズ社製 太陽電池IV測定ソフト)で制御した直流電圧・電流源(6241A、ADCMT社製)、並びに簡易型ソーラーシミュレーター(三永電機製作所製 XES−40S1)を用いて光起電力特性の測定をし、I−V特性の評価を行った。光量(AM1.5G、100mW/cm
2)の検定には、BS−500Si系フォトダイオード検出器(結晶Si太陽電池用、分光計器(株)社製、二次基準太陽電池)を用いた。
測定は、太陽電池を固定した状態で行った。測定試料の具体的な準備方法を、
図13を用いて説明する。先ず、絶縁処理材をコートした金属製治具5の上に太陽電池4を置く。その上に、厚さ2mmのシリコンゴム3、厚さ3mmの石英板2、絶縁処理材をコートした金属製治具1(中心に光10を透過させるための光透過孔が設けられている)の順で重ね、金属製治具1及び5同士の4隅をネジ9で固定した。
本評価では、I−V特性並びにImax及びVmaxを求めた。なお、Imaxとは、太陽電池の出力が最大となるときの電流であり、Vmaxとは、太陽電池の出力が最大となるときの電圧である。
そして、I−V特性のグラフから短絡電流密度、開放電圧、FF及び光電変換効率を算出した。なお、短絡電流密度(Isc)は電圧が0の時の電流密度であり、開放電圧(Voc)は電流が0の時の電圧である。
FFは下記式より求めることができる。
FF=(Vmax・Imax)/(Voc・Isc)
光電変換効率ηは下記式より求めることができる。
η=(太陽電池の出力)/100×100
太陽電池の出力=短絡電流密度×開放電圧×FF=Vmax・Imax
【0131】
(3)比誘電率
比誘電率は、測定周波数を1kHz、測定温度を23℃とし、インピーダンス法で測定した値をいう。具体的には、LCRメーター(Agilent製4284AのPRESISIONLCRメーター)を用いて、下記式より求めることができる。
サンプルの誘電率=(電極間距離×静電容量)/(電極の面積×真空の誘電率)
(ただし、真空の誘電率は8.854×10
−12(F/m)である。)
サンプルが液体の場合、誘電率は、液体測定用の治具(Agilent製16452ALIQUID TEST FIXTURE)を用いて、液体に電極を挿入し測定する。
サンプルが固体の場合、誘電率は、膜測定用の治具(Agilent製16451B DIELECTRIC TEST FIXTURE)を用いて、電極板上に膜を作製し、片方の電極で挟んで測定する。
(4)透過率
UV−2500PC(株式会社島津製作所社製)を用いて、550nmの波長の光に対する透過率の評価を行った。サンプルの透過率は下記式より求めた。
サンプルの透過率(%)=A/B×100
A=(基板/電極/半導体層又は半導体膜からなる層/サンプル、を備えた積層体の透過率)
B=(基板/電極/半導体層又は半導体膜からなる層、を備えた積層体の透過率)
(5)抵抗率
抵抗率は電気の通し易さの尺度であり、単位体積当たりの抵抗率のことである。この値は物質固有の値であり、物質の断面積Wに一定電流Iを流し、距離Lだけ離れた電極間の電位差Vを測ることにより求められる。
抵抗率=(V/I)×(W/L)
抵抗率はロレスタ(三菱化学アナリテック)を用いて測定した。
(6)フレキシブル性評価
i)電極基板
(a)水平な台の上に電極基板を置く。
(b)電極基板の半分の面積を押さえ、台と電極基板のなす角が45度になるまで曲げる。その後、元の状態に戻す。
(c)前記(b)の工程を5回繰り返す。
(d)電極基板に半導体層又は半導体膜を貼りあわせて太陽電池を作製する。
(e)太陽電池が発電するかI−V特性の評価で確認する。発電が確認された場合、フレキシブル性が「有」と評価する。
ii)太陽電池
(a)水平な台の上に太陽電池を置く。
(b)太陽電池の半分の面積を押さえ、台と太陽電池のなす角が45度になるまで曲げる。その後、元の状態に戻す。
(c)前記(b)の工程を5回繰り返す。
(d)太陽電池が発電するかI−V特性の評価で確認する。発電が確認された場合、フレキシブル性が「有」と評価する。
(7)膜厚
半導体層と接合界面層の膜厚は、vertscan2.0(株式会社菱化システム製)で測定した。測定用の半導体層又は接合界面層は、素子作製時と同じ条件で基板に塗工し作製した。これらの層について任意に5か所の膜厚を測定し、その平均を計算し、平均膜厚とした。
半導体膜の膜厚は、卓上走査顕微鏡CarryScopeJCM5100(JEOL社製)を用いて断面SEMで測定した。半導体膜は、半導体素子の断面を測定した。断面SEM測定は2か所行い、1か所につき等間隔で5点膜厚を測定した。合計10点の膜厚を測定し、その平均値を、平均膜厚とした。
太陽電池を作製後の半導体層、接合界面層、半導体膜の膜厚は、断面TEM観察で測定した。測定は、FIB法により、太陽電池の断面を切断した後に行った。
FIB法では、30〜40kVで加速したGaイオンを0.01〜0.1μmに集束し、太陽電池断面をスキャンさせながらスパッタリングした。前記スパッタリング最表面の保護膜としてはカーボン膜又はタングステン膜を蒸着した。また、断面TEM観察は2か所行い、1か所につき等間隔で5点膜厚を測定した。合計10点の膜厚の平均値を計算し、平均膜厚とした。前記断面TEM観察により得られた平均膜厚は、上記の膜厚測定の結果とほぼ同等の値になることを確認した。
【0132】
[実施例1]
(1)シリコン粒子含有半導体膜形成用塗布液の調製
抵抗率1Ωcmのp型シリコン結晶ウエハを、ボールミル法によってメタノール存在下で粉砕した。粉砕後に大過剰のメタノールを加え、目開きが37μmのナイロンメッシュと目開きが100μmのナイロンメッシュとを用いてフィルタリングすることにより、粒径が37μm以上のシリコン粒子を分別した。さらに、メタノール洗浄を繰り返すことにより、粒径が37〜100μmのシリコン粒子を得た。得られたシリコン粒子の平均粒子径は55μmであった。
【0133】
これらのシリコン粒子を真空乾燥後に秤量し、3倍質量のグリセリン/エタノール混合溶媒(質量比1/4)を加えて振とうし、グリセリン/エタノール混合溶媒にシリコン粒子が分散された半導体膜形成用塗布液を調製した。半導体膜形成用塗布液の組成はシリコン粒子が25質量%、グリセリンが15質量%、エタノールが60質量%であった。
【0134】
(2)製膜
上記の半導体膜形成用塗布液を、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)の透明電極付きガラス基板上にドロップキャストし、これをホットプレート上で120℃で加熱することで、エタノールを除去した。エタノールを除去した後、さらに150℃で3分間加熱して、半導体膜付き基板を作製した。半導体膜の組成は、シリコン粒子が95質量%、グリセリンとグリセリンが酸化された化合物の合計が5質量%であった。グリセリンの比誘電率は48であった。半導体膜の膜厚は250μmであった。
【0135】
[実施例2]
(1)CIGS粒子含有半導体膜形成用塗布液の調製
CIGS粒子粉末(高純度化学社製、組成:Cu(In
0.8Ga
0.2)S
2)を、1−チオグリセロール/エタノール混合溶媒(質量比1/4)に添加し5質量%の溶液を作製した。この溶液にジルコニアボールを加え、超音波処理を行った後、10時間攪拌振とうした。攪拌振とう後、ジルコニアボールを取り出した。CIGS粒子の粒子径は0.5〜2.0μmであり、平均粒子径は0.8μmであった。半導体膜形成用塗布液の組成は、CIGS粒子が5質量%、1−チオグリセロールが19質量%、エタノールが76質量%であった。
【0136】
(2)製膜
実施例1と同様の条件で、半導体膜付き基板を作製した。半導体膜の組成は、CIGS粒子が90質量%、1−チオグリセロールと1−チオグリセロールが酸化された化合物の合計が10質量%であった。半導体膜の膜厚は20μmであった。1−チオグリセロールの比誘電率は132であった。
【0137】
[実施例3]
(1)CIGS粒子含有半導体膜形成用塗布液の調製
1−チオグリセロール/エタノール混合溶媒(質量比1/4)を、グリセリン/エタノール混合溶媒(質量比1/4)とした以外は実施例2と同様の条件で塗布液を調整した。CIGS粒子の粒子径は0.5〜2.0μmであり、平均粒子径は0.8μmであった。半導体膜形成用塗布液の組成はCIGS粒子が5質量%、グリセリンが19質量%、エタノールが76質量%であった。
【0138】
(2)製膜
実施例1と同様の条件で、半導体膜付き基板を作製した。半導体膜の組成は、CIGS粒子が90質量%、グリセリンとグリセリンが酸化された化合物の合計が10質量%であった。半導体膜の膜厚は20μmであった。
【0139】
[比較例1]
(1)シリコン粒子含有半導体膜形成用塗布液の調製
メタノールをトルエンとした以外は実施例1と同様の条件でシリコン粒子を得た。得られたシリコン粒子の平均粒子径は、55μmであった。前記シリコン粒子を真空乾燥後に秤量し、3倍質量のトルエンを加えて振とうし、トルエン中にシリコン粒子が分散された半導体膜形成用塗布液を調製した。前記半導体膜形成用塗布液の組成はシリコン粒子が25質量%、トルエンが75質量%であった。
【0140】
(2)製膜
実施例1と同様の条件で、半導体層付き基板を作製した。半導体層の組成は、シリコン粒子100%であった。半導体層の膜厚は250μmであった。
【0141】
[比較例2]
(1)CIGS粒子含有半導体膜形成用塗布液の調製
1−チオグリセロール/エタノール混合溶媒(質量比1/4)をエタノールとした以外は、実施例2と同様の条件でCIGS粒子を得た。CIGS粒子の粒子径は0.5〜2.0μmであり、平均粒子径は0.8μmであった。半導体膜形成用塗布液の組成はCIGS粒子が5質量%、エタノールが95質量%であった。
【0142】
(2)製膜
実施例1と同様の条件で、半導体層付き基板を作製した。半導体層の組成はCIGS粒子100質量%であった。半導体層の膜厚は20μmであった。
【0143】
[太陽電池特性評価1]
上記実施例及び比較例で得られたp型半導体膜付き基板、酸化チタンからなるn型半導体層、並びに透明電極としてIZOを備える基板を用いて太陽電池を作製した。n型半導体層は、平均粒子径20nmの酸化チタン粒子(アナターゼタイプ、固形分5質量%)を含む水/2ブトキシエタノール混合溶剤を用いて透明電極の上にスピンコート法にて作製した。なお、スピンコート後、120℃、60分間乾燥した後に得られたn型半導体層の厚みは500nmであった。p型半導体膜付き基板とn型半導体膜付き基板を貼り合せて太陽電池とした。
太陽電池の構造として、実施例1〜3は
図1に類似の構造である。比較例1及び2は、概ね
図9に類似の構造である。
上記太陽電池のI−V特性の評価は、太陽電池に光量が3sunであたるように調整し測定した。また、それぞれの電極と導電テープを、銀ペーストを用いて接合させ、陽極と陰極とした。I−V測定時の端子は導電テープからとった。結果を表1に示す。
【0144】
シリコン粒子及びグリセリンを含む、実施例1の半導体膜を有する太陽電池は、光電変換効率が1.09%であった。シリコン粒子のみからなる、比較例1の半導体層を有する太陽電池は、光電変換効率が0.035%であった。比較例1及び実施例1の太陽電池のI−V曲線を、それぞれ
図10(A)及び(B)に示す。
【0145】
CIGS粒子及び1−チオグリセロールを含む、実施例2の半導体膜を有する太陽電池は、光電変換効率が0.005%であった。CIGS粒子及びグリセリンを含む、実施例3の半導体膜を有する太陽電池は、光電変換効率が0.001%であった。CIGS粒子のみからなる、比較例2の半導体層を有する太陽電池は、発電しなかった。比較例2の太陽電池のI−V曲線と、実施例2及び実施例3の半導体膜を有する太陽電池のI−V曲線を、それぞれ
図11(A)、(B)及び(C)に示す。
【0146】
【表1】
【0147】
[実施例4]
(1)シリコンウエハを用いたヘテロ接合太陽電池の作製
ITO付きPETフィルム(アルドリッチ社製、シート抵抗60Ω/□)に、平均粒子径20nmの酸化チタン粒子(ルチルタイプ、固形分12質量%)からなる酸化チタン層をスピンコート法にて作製した。なお、スピンコート後、120℃、10分間乾燥した後の酸化チタン層の厚みは300nmであった。さらにその酸化チタン層の上にシアノエチルサッカロースを2−メトキシエタノールで希釈し、20質量%に調整した液をブレードコートで塗工し、これを120℃で1分間乾燥した。シアノエチルサッカロースの層の厚みは600nmであった。前記シアノエチルサッカロースの層の上に、厚みが500μm、抵抗率3Ωcmのp型シリコン結晶ウエハを貼りあわせて、太陽電池を作製した。シアノエチルサッカロースの比誘電率は25であった。
【0148】
[実施例5]
(1)シリコンウエハを用いたヘテロ接合太陽電池の作製
厚みが500μm、抵抗率3Ωcmのp型シリコン結晶ウエハに以下のフッ酸処理を行った以外は、実施例4と同様の条件で太陽電池を作製した。
「フッ酸処理」:前記p型シリコン結晶ウエハを、アセトン洗浄で表面の汚れを除いた後、5%フッ酸溶液に5分間浸漬し超純水で洗浄した。その後、メタノールで洗浄した。洗浄後、ウエハを室温、真空下で1時間乾燥した。
【0149】
[実施例6]
(1)シリコンウエハを用いたヘテロ接合太陽電池の作製
抵抗率3Ωcmのp型シリコン結晶ウエハを、抵抗率0.02Ωcmのp型シリコン結晶ウエハとした以外は、実施例5と同様の条件で太陽電池を作製した。
【0150】
[実施例7]
(1)シリコンウエハを用いたヘテロ接合太陽電池の作製
抵抗率3Ωcmのp型シリコン結晶ウエハを、抵抗率23Ωcmのp型シリコン結晶ウエハをとした以外は、実施例5と同様の条件で太陽電池を作製した。
【0151】
[実施例8]
(1)シリコンウエハを用いたヘテロ接合太陽電池の作製
ITO付きPETフィルム(アルドリッチ社製、シート抵抗60Ω/□)に平均粒子径6nmの酸化チタン粒子(アナターゼタイプ、テイカ社製、TKS201、固形分33質量%)からなる酸化チタン層をスピンコート法にて作製した。なお、スピンコート後、120℃、10分間乾燥した後の酸化チタン層の厚みは2000nmであった。さらにその酸化チタン層の上にシアノエチルサッカロースを2−メトキシエタノールで希釈し、20質量%に調整した液をブレードコートで塗工し、これを120℃で1分間乾燥した。シアノエチルサッカロースの層の厚みは600nmであった。一方、厚みが500μm、抵抗率3Ωcmのp型シリコン結晶ウエハに対し、前記フッ酸処理を行った。シリコン結晶ウエハとシアノエチルサッカロースをコートした酸化チタン膜を貼りあわせて、太陽電池を作製した。
【0152】
[比較例3]
(1)シリコンウエハを用いたヘテロ接合太陽電池の作製
ITO付きPETフィルム(アルドリッチ社製、シート抵抗60Ω/□)に平均粒子径20nmの酸化チタン粒子(ルチルタイプ、固形分12質量%)の薄膜をスピンコート法にて作製した。なお、スピンコート後、120℃、10分間乾燥した後の薄膜の厚みは300nmであった。一方、膜厚500μm、抵抗率0.02Ωcmのp型シリコン結晶ウエハに対し、前記フッ酸処理を行った。シリコン結晶ウエハと酸化チタン膜を貼りあわせて、太陽電池を作製した。
【0153】
[太陽電池特性評価2]
実施例4〜8と比較例3の太陽電池を評価した。実施例4〜8のセル構造は
図6に類似の構造である。比較例3のセル構造は概ね
図9に類似の構造である。上記太陽電池のI−V特性の評価は、太陽電池に光量が1sunであたるように調整し測定した。また、実施例、比較例ともにシリコン側の電極にはインジウムとガリウム合金ペーストを用いて、導電テープとシリコンを接合させた。また、酸化チタン側はITO電極と導電テープを、銀ペーストを用いて接合させた。I−V測定時の端子は導電テープからとった。その結果を表2及び3に示す。
【0154】
表2及び3に示すようにシアノ基含有有機化合物をpn界面に導入した系は短絡電流密度及び開放電圧が向上し、変換効率が高くなることがわかった。さらにシリコンの抵抗率と酸化チタンの種類を変えることで5%以上の変換効率を示した。
【0155】
【表2】
【0156】
【表3】
【0157】
[実施例9]
(1)シリコン粒子含有半導体膜形成用塗布液の調製
抵抗率1Ωcmのp型シリコン結晶ウエハを、ボールミル法によってメタノール存在下で粉砕した。粉砕後に大過剰のメタノールを加え、目開きが37μmのナイロンメッシュでフィルタリングすることにより、粒径が37μm以下のシリコン粒子を分別した。さらに、メタノール溶媒でデカンテーションすることにより、粒径が10〜37μmのシリコン粒子を得た。得られたシリコン粒子の平均粒子径は20μmであった。
【0158】
これらのシリコン粒子を真空乾燥後に秤量し、3倍質量のグリセリン/エタノール混合溶媒(質量比1/4)を加えて振とうし、グリセリン/エタノール混合溶媒にシリコン粒子が分散された半導体膜形成用塗布液を調製した。半導体膜形成用塗布液の組成はシリコン粒子が25質量%、グリセリンが15質量%、エタノールが60質量%であった。
【0159】
(2)製膜
上記の半導体膜形成用塗布液をフッ素ドープ酸化スズ(FTO)の透明電極付きガラス基板上にドロップキャストし、これをホットプレート上で120℃で加熱することで、エタノールを除去した。エタノールを除去した後、さらに150℃で3分間加熱して、半導体膜付き基板を作製した。半導体膜の組成は、シリコン粒子が95質量%、グリセリンとグリセリンが酸化された化合物の合計が5質量%であった。膜厚は250μmであった。
【0160】
(3)太陽電池作製
透明電極としてIZOを備える基板、上記p型半導体膜付き基板、酸化チタンからなるn型半導体層を貼りあわせて太陽電池を作製した。n型半導体層は、平均粒子径6nmの酸化チタン粒子(アナターゼタイプ、テイカ社製、TKS201、固形分33質量%)を用いてスピンコート法にて作製した。なお、スピンコート後、120℃、10分間乾燥した後に得られたn型半導体層の厚みは500nmであった。
【0161】
[実施例10]
(1)シリコン粒子含有半導体膜形成用塗布液の調製
抵抗率1Ωcmのp型シリコン結晶ウエハを、ボールミル法によってメタノール存在下で粉砕した。粉砕後に大過剰のメタノールを加え、目開きが37μmのナイロンメッシュと目開きが100μmのナイロンメッシュとを用いてフィルタリングすることにより、粒径が37〜100μmのシリコン粒子を得た。得られたシリコン粒子の平均粒子径は55μmであった。
【0162】
これらのシリコン粒子を真空乾燥後に秤量し、3倍質量のグリセリン/エタノール混合溶媒(質量比1/4)を加えて振とうし、グリセリン/エタノール混合溶媒にシリコン粒子が分散された半導体膜形成用塗布液を調製した。半導体膜形成用塗布液の組成はシリコン粒子が25質量%、グリセリンが15質量%、エタノールが60質量%であった。
【0163】
(2)製膜
実施例9と同様の条件で、半導体膜を作製した。半導体膜の組成は、シリコン粒子が95質量%、グリセリンとグリセリンが酸化された化合物の合計が5質量%であった。膜厚は300μmであった。
【0164】
(3)太陽電池作製
上記p型半導体膜付き基板、酸化亜鉛からなるn型半導体層、透明電極としてIZOを備える基板を用いて太陽電池を作製した。n型半導体層は、平均粒子径35nmの酸化亜鉛粒子(固形分40質量%、アルドリッチ社製)を含むブチルアセテート溶剤を用いて、スピンコート法にて作製した。なお、スピンコート後、120℃、60分間乾燥した後に得られたn型半導体層の厚みは600nmであった。
【0165】
[実施例11]
(1)シリコン粒子含有半導体膜形成用塗布液の調製
抵抗率3Ωcmのp型シリコン結晶ウエハを、ボールミル法によってメタノール存在下で粉砕した。粉砕後に大過剰のエタノールを加え、目開きが32μmのナイロンメッシュと57μmのナイロンメッシュでフィルタリングすることにより、粒径が32μm以上57μm以下のシリコン粒子を分別した。得られたシリコン粒子の平均粒子径は43μmであった。
【0166】
これらのシリコン粒子を真空乾燥後に秤量し、3倍質量のグリセリン/エタノール混合溶媒(質量比1/4)を加えて振とうし、グリセリン/エタノール混合溶媒にシリコン粒子が分散された半導体膜形成用塗布液を調製した。半導体膜形成用塗布液の組成はシリコン粒子が25質量%、グリセリンが15質量%、エタノールが60質量%であった。
【0167】
(2)製膜
基板をSUS304とした以外は実施例9と同様の方法で、半導体膜付き基板を作製した。半導体膜の組成は、シリコン粒子が95質量%、グリセリンとグリセリンが酸化された化合物の合計が5質量%であった。膜厚は250μmであった。
【0168】
(3)太陽電池作製
上記p型半導体膜付き基板、酸化チタンからなるn型半導体層、透明電極としてITOを備えるPETフィルム(アルドリッチ社製、シート抵抗60Ω/□)を用いて太陽電池を作製した。
n型半導体層は、平均粒子径6nmの酸化チタン粒子(アナターゼタイプ、テイカ社製、TKS201、固形分33質量%)を含む水分散液を用いてスピンコート法にて作製した。なお、スピンコート後、120℃、10分間乾燥した後に得られたn型半導体層の厚みは600nmであった。
【0169】
[実施例12]
(1)シリコン粒子含有半導体膜形成用塗布液の調製
実施例11と同様の条件でシリコン粒子を得た。得られたシリコン粒子の平均粒子径は43μmであった。
【0170】
上記シリコン粒子を真空乾燥後に秤量し、グリセリン/エタノール混合溶媒(質量比1/3)ならびにシアノエチルポリビニルアルコールの2−メトキシエタノール溶液を加えて振とうした。その結果、シアノエチルポリビニルアルコールが溶解したグリセリン/エタノール/2−メトキシエタノール混合溶液にシリコン粒子が分散された半導体膜形成用塗布液を調製した。半導体膜形成用塗布液の組成はシリコン粒子が20質量%、シアノエチルポリビニルアルコールが4質量%、グリセリンが19質量%、エタノールが57質量%であった。
【0171】
(2)製膜
実施例11と同様の方法で、半導体膜付き基板を作製した。半導体膜の組成は、シリコン粒子が80質量%、シアノエチルポリビニルアルコールが16質量%、グリセリンとグリセリンが酸化された化合物の合計が4質量%であった。シアノエチルポリビニルアルコールの比誘電率は15であった。半導体膜の膜厚は250μmであった。
【0172】
(3)太陽電池作製
透明電極としてITOを備えるPETフィルム(アルドリッチ社製、シート抵抗60Ω/□)を用い、その上に酸化チタンからなるn型半導体層を作製した。n型半導体層は、平均粒子径6nmの酸化チタン粒子(アナターゼタイプ、テイカ社製、TKS201、固形分33質量%)を含む水分散液を用いて、スピンコート法にて作製した。なお、スピンコート後、120℃、10分間乾燥した後に得られる薄膜の厚みは600nmであった。さらにその酸化チタン層の上に、シアノエチルサッカロースを2−メトキシエタノールで希釈し、20質量%に調整した液を用いてブレードコートで塗工し、これを120℃で1分間乾燥した。シアノエチルサッカロースの厚みは600nmであった。これを、上記p型半導体膜付き基板と貼りあわせて、太陽電池を作製した。
【0173】
[太陽電池特性評価3]
実施例9〜12の太陽電池のI−V特性の評価を行った。太陽電池の電極は、それぞれの電極と導電テープを、銀ペーストを用いて接合させ、陽極と陰極とした。I−V測定時の端子は導電テープからとった。上記太陽電池のI−V特性の評価は、太陽電池に光量が3sunであたるように調整し測定した。実施例9〜11のセル構造は
図1に類似の構造である。実施例12のセル構造は、
図7に類似の構造である。その結果を表4及び5に示す。
【0174】
表4及び5に示すように、グリセリンを含有するp型半導体膜を導入することで性能が向上し、シアノ基含有有機化合物をpn界面に導入した太陽電池はさらに性能が向上することが確認された。実施例12の光照射前と照射後のI−V特性を
図12に示す((A)が光照射前、(B)が光照射後)。
【0175】
【表4】
【0176】
【表5】
【0177】
[実施例13]
(1)シリコンウエハを用いたヘテロ接合太陽電池の作製
ITO付きPETフィルム(アルドリッチ社製、シート抵抗60Ω/□)上に、平均粒子径6nmの酸化チタン粒子を含む水分散液(アナターゼタイプ、テイカ社製、TKS201、固形分33質量%)を用いて、酸化チタン層をスピンコート法にて作製した。なお、スピンコート後、120℃、10分間乾燥した後の酸化チタン層の厚みは1500nmであった。さらにその酸化チタン層の上にポリフッ化ビニリデン(PVDF)をN−メチルピロリドン(NMP)で希釈し、0.1質量%に調整した液を用いてスピンコート法にて薄膜を作製し、これを120℃で1分間乾燥した。PVDFの層の厚みは50nmであった。一方、500μm厚み、抵抗率3Ωcmのp型シリコン結晶ウエハに対し、前記フッ酸処理を行った。シリコン結晶ウエハとPVDFをコートした酸化チタン膜を貼りあわせて、太陽電池を作製した。PVDFの比誘電率は8であった。
【0178】
[実施例14]
(1)シリコンウエハを用いたヘテロ接合太陽電池の作製
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)をN−メチルピロリドン(NMP)で希釈し、5質量%に調整した液を用いた以外は実施例13と同様に行った。PVDFの層の厚みは550nmであった。
【0179】
[太陽電池特性評価4]
実施例13及び14と比較例3の太陽電池を評価した。実施例13及び14のセル構造は
図6に類似の構造である。比較例3のセル構造は概ね
図9に類似の構造である。上記太陽電池のI−V特性の評価は、太陽電池に光量が1sunであたるように調整し測定した。シリコンウエハ側の電極にはインジウムとガリウム合金ペーストを用いて、導電テープとシリコンウエハを接合させた。また、酸化チタン層側はITO電極と導電テープを、銀ペーストを用いて接合させた。I−V測定時の端子は導電テープからとった。その結果を表6及び7に示す。
【0180】
【表6】
【0181】
【表7】
【0182】
表6及び7に示すように誘電率の高い材料をpn界面に導入した系は短絡電流及び開放電圧が向上し、変換効率が高くなることがわかった。
【0183】
[実施例15]
(1)シリコンウエハを用いたヘテロ接合太陽電池の作製
ITO付きPETフィルム(アルドリッチ社製、シート抵抗60Ω/□)上に、平均粒子径6nmの酸化チタン粒子を含む水分散液(アナターゼタイプ、テイカ社製、TKS201、固形分33質量%)を用いて、酸化チタン層をスピンコート法にて作製した。なお、スピンコート後、120℃、10分間乾燥した後の酸化チタン層の厚みは1500nmであった。さらにその酸化チタン層の上に、シアノエチルサッカロースを2−メトキシエタノールで希釈し、0.1質量%に調整した液を用いてスピンコート法で製膜し、これを120℃で1分間乾燥した。シアノエチルサッカロースの層の厚みは20nmであった。一方、500μm厚み、抵抗率3Ωcmのp型シリコン結晶ウエハをメタノールで洗浄した。洗浄後乾燥させたシリコン結晶ウエハとシアノエチルサッカロースをコートした酸化チタン膜を貼りあわせて、太陽電池を作製した。
【0184】
[実施例16]
(1)シリコンウエハを用いたヘテロ接合太陽電池の作製
シアノエチルサッカロースを2−メトキシエタノールで希釈し、1質量%に調整した液を用いた以外は実施例15と同様に行った。シアノエチルサッカロースの層の厚みは40nmであった。
【0185】
[実施例17]
(1)シリコンウエハを用いたヘテロ接合太陽電池の作製
シアノエチルサッカロースを2−メトキシエタノールで希釈し、5質量%に調整した液を用いた以外は実施例15と同様に行った。シアノエチルサッカロースの層の厚みは150nmであった。
【0186】
[実施例18]
(1)シリコンウエハを用いたヘテロ接合太陽電池の作製
シアノエチルサッカロースを2−メトキシエタノールで希釈し、20質量%に調整した液を用いた以外は実施例15と同様に行った。シアノエチルサッカロースの層の厚みは600nmであった。
【0187】
[実施例19]
(1)シリコンウエハを用いたヘテロ接合太陽電池の作製
シアノエチルサッカロースを2−メトキシエタノールで希釈し、40質量%に調整した液を用いた以外は実施例15と同様に行った。シアノエチルサッカロースの層の厚みは2100nmであった。
【0188】
[実施例20]
(1)シリコンウエハを用いたヘテロ接合太陽電池の作製
シアノエチルサッカロースを2−メトキシエタノールで希釈し、40質量%に調整した液を用いた以外は実施例15と同様に行った。シアノエチルサッカロースの層の厚みは5000nmであった。
【0189】
[比較例4]
(1)シリコンウエハを用いたヘテロ接合太陽電池の作製
ITO付きPETフィルム(アルドリッチ社製、シート抵抗60Ω/□)上に、平均粒子径6nmの酸化チタン粒子を含む水分散液(アナターゼタイプ、テイカ社製、TKS201、固形分33質量%)を用いて、薄膜をスピンコート法にて作製した。なお、スピンコート後、120℃、10分間乾燥した後の薄膜の厚みは1500nmであった。一方、500μm厚み、抵抗率3Ωcmのp型シリコン結晶ウエハをメタノールで洗浄した。洗浄後乾燥させたシリコン結晶ウエハと酸化チタン膜を貼りあわせて、太陽電池を作製した。
【0190】
[太陽電池特性評価5]
実施例15〜20と比較例4の太陽電池を評価した。実施例15〜20のセル構造は
図6に類似の構造である。上記太陽電池のI−V特性の評価は、太陽電池に光量が1sunであたるように調整し測定した。シリコンウエハ側の電極にはインジウムとガリウム合金ペーストを用いて、導電テープとシリコンウエハを接合させた。また、酸化チタン層側はITO電極と導電テープを、銀ペーストを用いて接合させた。I−V測定時の端子は導電テープからとった。その結果を表8及び9に示す。
【0191】
【表8】
【0192】
【表9】
【0193】
表8及び9に示すようにpn界面に導入したシアノ基含有有機化合物の厚さを変えたところ、少なくとも40nm以上の厚さにおいて短絡電流及び開放電圧が向上し、変換効率が高くなることがわかった。
【0194】
[接合界面層の透過率評価]
[実施例21]
ITO付きPETフィルム(アルドリッチ社製、シート抵抗60Ω/□)上に、平均粒子径6nmの酸化チタン粒子を含む水分散液(アナターゼタイプ、テイカ社製、TKS201、固形分33質量%)を用いて、酸化チタン層をスピンコート法にて作製した。なお、スピンコート後、120℃、10分間乾燥した後の酸化チタン層の厚みは1500nmであった。さらにその酸化チタン層の上にシアノエチルサッカロースを2−メトキシエタノールで希釈し、20質量%に調整した液を用いてスピンコート法で製膜し、これを120℃で1分間乾燥した。シアノエチルサッカロースの層の厚みは600nmであった。
前述の方法で測定したシアノエチルサッカロースの層の透過率は90%であった。
【0195】
[実施例22]
ITO付きPETフィルム(アルドリッチ社製、シート抵抗60Ω/□)上に、平均粒子径6nmの酸化チタン粒子を含む水分散液(アナターゼタイプ、テイカ社製、TKS201、固形分33質量%)を用いて、酸化チタン層をスピンコート法にて作製した。なお、スピンコート後、120℃、10分間乾燥した後の酸化チタン層の厚みは1500nmであった。さらにその酸化チタン層の上にポリフッ化ビニリデン(PVDF)をN−メチルピロリドン(NMP)で希釈し、5質量%に調整した液を用いてスピンコート法にて薄膜を作製し、これを120℃で1分間乾燥した。PVDFの層の厚みは550nmであった。
前述の方法で測定したPVDFの層の透過率は36%であった。
【0196】
実施例21及び22の透過率の結果をまとめて表10に示す。実施例21及び22ともに透過率が高いことがわかる。
【0197】
【表10】
【0198】
[接合界面層の抵抗率評価]
[実施例23]
実施例21に記載のシアノエチルサッカロースの層、即ち接合界面層の抵抗率を前記の方法で測定した。
[実施例24]
実施例22に記載のPVDFの層、即ち接合界面層の抵抗率を前記の方法で測定した。
【0199】
実施例23及び24の抵抗率の結果をまとめて表11に示す。実施例23及び24ともに抵抗率が高いことがわかる。
【0200】
【表11】
【0201】
[太陽電池のフレキシブル性評価]
[実施例25]
ITO付きPETフィルム(アルドリッチ社製、シート抵抗60Ω/□)上に、平均粒子径6nmの酸化チタン粒子を含む水分散液(アナターゼタイプ、テイカ社製、TKS201、固形分33質量%)を用いて、酸化チタン層をスピンコート法にて作製した。なお、スピンコート後、120℃、10分間乾燥した後の酸化チタン層の厚みは1500nmであった。さらにその酸化チタン層の上にポリフッ化ビニリデン(PVDF)をN−メチルピロリドン(NMP)で希釈し、5質量%に調整した液をスピンコート法にて薄膜を作製し、これを120℃で1分間乾燥した。PVDFの層の厚みは550nmであった。
PET基板、ITO、酸化チタン、PVDFが付いた電極基板と、メタノールで洗浄した抵抗率3Ωcmのp型シリコン結晶ウエハを用いて、フレキシブル性を評価した。
【0202】
[実施例26]
ITO付きPETフィルム(アルドリッチ社製、シート抵抗60Ω/□)上に、平均粒子径6nmの酸化チタン粒子を含む水分散液(アナターゼタイプ、テイカ社製、TKS201、固形分33質量%)を用いて、酸化チタン層をスピンコート法にて作製した。なお、スピンコート後、120℃、10分間乾燥した後の酸化チタン層の厚みは1500nmであった。さらにその酸化チタン層の上にシアノエチルサッカロースを2−メトキシエタノールで希釈し、20質量%に調整した液をスピンコート法で製膜し、これを120℃で1分間乾燥した。シアノエチルサッカロースの層の厚みは600nmであった。
PET基板、ITO、酸化チタン、シアノエチルサッカロースが付いた電極基板と、メタノールで洗浄した抵抗率3Ωcmのp型シリコン結晶ウエハを用いて、フレキシブル性を評価した。
【0203】
実施例25及び26のフレキシブル性評価の結果をまとめて表12に示す。実施例25及び26ともに、曲げても太陽電池として駆動することが確認された。
【0204】
【表12】
【0205】
[実施例27]
(1)シリコン粒子含有半導体膜形成用塗布液の調製
実施例11と同様の条件でシリコン粒子を得た。得られたシリコン粒子の平均粒子径は43μmであった。
上記シリコン粒子を真空乾燥後に秤量し、グリセリン/エタノール混合溶媒(質量比1/3)ならびにシアノエチルポリビニルアルコールの2−メトキシエタノール溶液を加えて振とうした。その結果、シアノエチルポリビニルアルコールが溶解したグリセリン/エタノール/2−メトキシエタノール混合溶液にシリコン粒子が分散された半導体膜形成用塗布液を調製した。半導体膜形成用塗布液の組成はシリコン粒子が20質量%、シアノエチルポリビニルアルコールが4質量%、グリセリンが19質量%、エタノールが57質量%であった。
【0206】
(2)製膜
上記の半導体膜形成用塗布液を10μm厚みのSUS304にドロップキャストし、これをホットプレート上で120℃で加熱することで、エタノールを除去した。エタノールを除去した後、さらに150℃で3分間加熱して、半導体膜付き基板を作製した。半導体膜の組成は、シリコン粒子が80質量%、シアノエチルポリビニルアルコールが16質量%、グリセリンとグリセリンが酸化された化合物の合計が4質量%であった。シアノエチルポリビニルアルコールの比誘電率は15であった。
【0207】
(3)太陽電池作製
透明電極としてITOを備えるPETフィルム(アルドリッチ社製、シート抵抗60Ω/□)を用い、その上に酸化チタンからなるn型半導体層を作製した。n型半導体層は、平均粒子径6nmの酸化チタン粒子(アナターゼタイプ、テイカ社製、TKS201、固形分33質量%)を含む水分散液を用いて、スピンコート法にて作製した。なお、スピンコート後、120℃、10分間乾燥した後に得られる酸化チタン層の厚みは600nmであった。さらにその酸化チタン層の上に、シアノエチルサッカロースを2−メトキシエタノールで希釈し、20質量%に調整した液を用いてブレードコートで塗工し、これを120℃で1分間乾燥した。シアノエチルサッカロースの層の厚みは600nmであった。これを、上記p型半導体膜付き基板と貼りあわせて、太陽電池を作製した。
【0208】
[太陽電池特性評価6]
上記太陽電池のフレキシブル性を評価した。実施例27は、曲げても太陽電池として駆動する(フレキシブル性が有る)ことが確認された。なお、光を当てて解放電圧を測定したところ、0.6Vの開放電圧を確認した。遮光時は0Vだった。