(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206894
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】腹腔シミュレータ
(51)【国際特許分類】
G09B 23/28 20060101AFI20170925BHJP
G09B 9/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
G09B23/28
G09B9/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-511386(P2016-511386)
(86)(22)【出願日】2015年3月30日
(86)【国際出願番号】JP2015001843
(87)【国際公開番号】WO2015151504
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2017年5月18日
(31)【優先権主張番号】特願2014-72651(P2014-72651)
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】709002772
【氏名又は名称】株式会社ファソテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000822
【氏名又は名称】特許業務法人グローバル知財
(72)【発明者】
【氏名】安楽 武志
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 欣一
【審査官】
鈴木 崇雅
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−113056(JP,A)
【文献】
特表2013−544373(JP,A)
【文献】
特開2013−235040(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3184695(JP,U)
【文献】
特開2013−109030(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3177527(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3162161(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0041005(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/28
G09B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹腔鏡下手技を習得するための腹腔シミュレータにおいて、
人体形状を模擬した骨盤部と、左右横腹部を有する背中部と、腹腔鏡手技下で用いられる手術器具を挿通し得る複数のポートが設けられた腹部と、から少なくとも構成され、腹腔空間および骨盤を模擬するケーシングと、
少なくとも1つの生体質感臓器モデルと、
前記背中部もしくは骨盤部に取付けられる把持部であって、前記腹腔空間内に前記生体質感臓器モデルを固定、載置もしくは挟持するモデル把持部を備え、
前記生体質感臓器モデルが膀胱モデルの場合には、
前記モデル把持部は、前記骨盤部のケーシングの内壁に当接する帯状部材であり、前記膀胱モデルを腹腔空間から出し入れでき、
前記膀胱モデルには、尿道管と縫合接続する孔が周縁に複数設けられており、
前記帯状部材の端部には、前記膀胱モデルと係合し得る係合部があり、該係合部は多角形の形状であり、
前記膀胱モデルと前記係合部との係合位置を変化させることにより、前記孔を交換でき、
前記生体質感臓器モデルが膀胱モデル以外の場合には、
前記モデル把持部が、前記背中部のケーシングの内壁に設けられた背骨を模擬した隆起物に対してスライド自在であり、
前記生体質感臓器モデルを載置もしくは挟持し得る
ことを特徴とする腹腔シミュレータ。
【請求項2】
前記骨盤部、前記背中部、もしくは、前記左右横腹部のケーシングの内壁に、棒状部材が設けられ、該棒状部材の端部に前記生体質感臓器モデルが固着あるいは係合されることを特徴とする請求項1に記載の腹腔シミュレータ。
【請求項3】
前記ケーシングの内壁に生体臓器画像がマッピングされることを特徴とする請求項1又は2に記載の腹腔シミュレータ。
【請求項4】
前記生体質感臓器モデルは、臓器内部の三次元構造を再現したものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の腹腔シミュレータ。
【請求項5】
前記生体質感臓器モデルは、縮膨張が可能でありモデルサイズが変化する手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の腹腔シミュレータ。
【請求項6】
前記生体質感臓器モデルは、モデル表面あるいはモデル周辺に血管を模擬するチューブが設けられ、該チューブが破断した場合に、液体が流出する手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の腹腔シミュレータ。
【請求項7】
前記腹部のケーシングを交換することにより、前記ポートの数および配置を変更できることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の腹腔シミュレータ。
【請求項8】
前記係合部がN角形(Nは3以上)とした場合に、前記膀胱モデルの前記孔はN個であり、それぞれの孔がN角形の各頂点位置に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の腹腔シミュレータ。
【請求項9】
尿道管を把持する尿道管把持部が設けられ、該尿道管把持部を装置本体に挿入した場合に、前記尿道管の先端部と前記膀胱モデルの前記孔が当接するように、前記膀胱モデルおよび前記帯状部材を固定し得るガイドが設けられたことを特徴とする請求項1又は8に記載の腹腔シミュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹腔鏡下手術のトレーニングや学習用の腹腔シミュレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、米国インテュイティヴ・サージカル社が開発したマスタースレイブ型内視鏡下手術用の医療用ロボット、DA VINCHI(登録商標)が知られている。かかる医療用ロボットの操作スキルを向上すべく、従来から、腹腔および骨盤を模擬した装置が存在する。このような装置のケーシングには、上記の医療用ロボットの鉗子や器具を挿入するポートが設けられており、ケーシング内に収納された膀胱部などの腹腔内蔵に対して、腹腔鏡下手技のトレーニングを行う。
【0003】
既に、切開や皮膚縫合といった、医療現場における手技について、感覚的に実際の手技に近似した研修を通して、臨床経験が無い場合でも、高度な手技の習得を可能にする経皮手技シミュレータが知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に開示された経皮手技シミュレータは、凸状で曲面部を有する本体と、気管(人体臓器代替物)を載置する載置部と、気管の一部を覆うように皮膚(人体皮膚代替物)を本体に固定する皮膚固定部と、載置部を曲面部の面直方向に進退させる載置部変位機構とを有する。この経皮手技シミュレータを用いることで、臓器を皮膚が覆っている人体の構成と同様に、気管を皮膚が覆っている構成が実現される。また曲面部が人体表面の代替物となる。代替物の表面及び内部の形状や構成、硬さや質感などを人に近似させることにより、実際の手技と同様のシミュレーションを行える。
【0004】
また、ユーザの視野から実質的に隠された臓器モデルを配置するための疑似体腔を形成したポータブル手術用訓練デバイスが知られている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2に開示されたポータブル手術用訓練デバイスでは、ベースと上カバーがレッグを介して間隔をもって配置され、疑似体腔を形成し、人体組織に模した取り外し自在の挿入体材料を備える。
しかしながら、例えば、膀胱部と尿道管の縫合を訓練する手技シミュレータとしては、骨盤構造や尿道管や膀胱をリアルに再現しているとは言い難く、また、繰り返しトレーニングするための人体組織に模した挿入体材料の交換時の位置合わせの手間を改善できるものではないといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−085512号公報
【特許文献2】特表2013−544373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した医療用ロボットを用いて腹腔鏡下手技のトレーニングを行う場合、複数の鉗子や手術器具を複数のポートから一度に挿入する。一度挿入すると、鉗子や手術器具の抜き差しには時間を要するため、ケーシング内に収納された膀胱部などの腹腔内蔵の取り換えは容易ではないといった問題がある。
また、膀胱部と尿道管の縫合を訓練する装置において、骨盤構造や尿道管や膀胱をリアルに再現でき、繰り返しトレーニングするための人体組織に模した挿入体材料の交換時の位置合わせの手間を改善するものが要望されている。
【0007】
かかる状況に鑑みて、本発明は、腹腔鏡下手技のトレーニングを行う手技シミュレータにおいて、繰り返しトレーニングするための生体質感臓器モデルの交換時の位置合わせが簡便に行える腹腔シミュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明の腹腔シミュレータは、膀腹腔鏡下手技を習得するための腹腔シミュレータにおいて、ケーシングと、少なくとも1つの生体質感臓器モデルと、モデル把持部とから構成される。
ケーシングは、人体形状を模擬した骨盤部と、左右横腹部を有する背中部と、腹腔鏡手技下で用いられる手術器具を挿通し得る複数のポートが設けられた腹部と、から少なくとも構成され、腹腔空間および骨盤を模擬する。
モデル把持部は、背中部もしくは骨盤部に取付けられる把持部であって、腹腔空間内に生体質感臓器モデルを固定、載置もしくは挟持する。
生体質感臓器モデルは、実際の質感に近似した軟質性素材を用いてリアル感を向上させ、実践的な手技習得を図るものである。X線CTやMRI(Magnetic Resonance Imaging)などの医療診断装置から得られたDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)データを用い、3次元形状データを製作し、それをもとにして3次元造形モデルを作製するものであり、人体の各部位(骨・臓器など)の質感(可視化・感触・硬さ・柔らかさなど)を持った3次元の生体臓器の造形物である。生体質感臓器モデルの作製方法としては、例えば、国際公開パンフレット(WO2012/132463)に記載されている。
【0009】
本発明の腹腔シミュレータにおけるモデル把持部は、背中部のケーシングの内壁に設けられた背骨を模擬した隆起物に対してスライド自在であり、生体質感臓器モデルを載置する載置手段を有する。腹腔シミュレータを使用する際は、背中部のケーシングを下にし、腹部のケーシングを上にする。背中部のケーシングの内壁には、背骨を模擬した隆起物が設けられているので、背骨に沿ってスライドできるように、モデル把持部の底面に背骨と嵌合する凹みを設ける。そして、モデル把持部の上面は、生体質感臓器モデルを載置できるようにプレート状にする。或は、モデル把持部の上面に生体質感臓器モデルを安定して載置できるように凹みを設ける。
【0010】
本発明の腹腔シミュレータにおけるモデル把持部は、背中部のケーシングの内壁に設けられた背骨を模擬した隆起物に対してスライド自在であり、生体質感臓器モデルを挟持する挟持手段を有する。挟持手段によって生体質感臓器モデルを挟持され、腹腔空間に配置される。
【0011】
本発明の腹腔シミュレータにおけるモデル把持部は、骨盤部、背中部、もしくは、左右横腹部のケーシングの内壁に、取付けられる棒状部材であり、この棒状部材の端部に生体質感臓器モデルが固着あるいは係合される。ここで、棒状部材は、螺合や係合によって、ケーシングの内壁に取付けられる。棒状部材の端部を生体質感臓器モデルに突き刺すことにより、生体質感臓器モデルを固着することができる。或は、棒状部材の端部にフックがあり、そのフックと生体質感臓器モデルが係合することでもよい。
【0012】
本発明の腹腔シミュレータにおけるモデル把持部は、骨盤部のケーシングの内壁に当接する帯状部材であり、生体質感臓器モデルである膀胱モデルを腹腔空間から出し入れし得る。
膀胱モデルとそれに接続される尿道管は、実際の質感に近似した軟質性素材を用いてリアル感を向上させ、実践的な手技習得を図る。腹腔および骨盤を模擬するケーシングにより、狭い空間内での鉗子などの手術器具の操作トレーニングが可能である。また、ケーシングの内部形状は骨盤のみならず恥骨も模擬することにより、より実践的な手技習得が可能である。
【0013】
鉗子や手術器具を複数のポートから一度に挿入すると、鉗子や手術器具の抜き差しに時間を要する。このため、帯状部材を出し入れすることにより、これらの鉗子や手術器具を挿し込んだまま、膀胱モデルを交換する。なお、帯状部材は、安定してケーシングの内壁に当接できるものであれば、棒状部材であっても構わない。
【0014】
本発明の腹腔シミュレータにおいて、ケーシングの内壁に生体臓器画像がマッピングされることが好ましい。ケーシングの内壁に生体臓器画像がマッピングされることで、ポートから監視用カメラを挿入した際に、より臨場感のある映像で訓練することができる。
【0015】
本発明の腹腔シミュレータにおいて、生体質感臓器モデルは、臓器内部の三次元構造を再現したものであることが好ましい。臓器内部の三次元構造を再現することにより、手技の訓練で切除操作の際に、リアリティのある訓練を行うことが可能になる。
【0016】
本発明の腹腔シミュレータにおいて、生体質感臓器モデルは、縮膨張が可能でありモデルサイズが変化する手段を備えたことが好ましい。生体質感臓器モデルのモデルサイズが変化することで、腸や胃など動きがあるモデルに対する手技を訓練することができる。
【0017】
本発明の腹腔シミュレータにおいて、モデル表面あるいはモデル周辺に血管を模擬するチューブが設けられ、該チューブが破断した場合に、液体が流出する手段を備えたことが好ましい。手術中に出血が生じるケースを模擬し、その場合の対処方法を訓練することができる。
【0018】
本発明の腹腔シミュレータは、腹部のケーシングを交換することにより、ポートの数および配置を変更できる。ポート数およびポート配置を変更できることで、鉗子などの手術器具の差し込み位置の自由度を増やすことが可能になり、様々な手技の縫合トレーニングを行うことができる。
【0019】
本発明の腹腔シミュレータは、膀腹腔鏡下手技を習得するための腹腔シミュレータにおいて、ケーシングと、少なくとも1つの生体質感臓器モデルと、モデル把持部とから構成される。
ケーシングは、人体形状を模擬した骨盤部と、腹腔鏡手技下で用いられる手術器具を挿通し得る複数のポートが設けられた腹部と、から少なくとも構成され、腹腔空間および骨盤を模擬する。
モデル把持部は、骨盤部に取付けられる把持部であって、腹腔空間内に生体質感臓器モデルを固定、載置もしくは挟持する。ここで、モデル把持部は、骨盤部のケーシングの内壁に当接する帯状部材であり、生体質感臓器モデルである膀胱モデルを腹腔空間から出し入れできる。
【0020】
本発明の腹腔シミュレータにおける膀胱モデルには、尿道管と縫合接続する孔が周縁に複数設けられており、帯状部材の端部には、膀胱モデルと係合し得る係合部がある。この係合部は多角形の形状であり、膀胱モデルと係合部との係合位置を変化させることにより、尿道管と縫合接続する孔を交換できる。係合部の形状と、膀胱モデルの内壁の形状を合せることにより、膀胱モデルは係合部に簡便に係合させることができる。また、膀胱モデルが係合部と係合する位置を変えることにより、かつ、尿道管の先端をカットして新しい尿道管を使用することにより、以前の縫合トレーニングによる縫合後の影響なく、膀胱モデルと尿道管の縫合トレーニングが行える。
ここで、尿道管の長さは、ユーザの好みで長さをカットして調整できるよう、はさみやカッターで長さを加工調整できる軟質性素材を用いる。
【0021】
また、本発明の腹腔シミュレータにおいて、係合部がN角形(Nは3以上)とした場合に、膀胱モデルの孔はN個であり、それぞれの孔がN角形の各頂点位置に設けられたことが好ましい。係合部をN角形にし、膀胱モデルの孔がN角形の各頂点位置に存在させることにより、膀胱と尿道管の先端の縫合トレーニングの繰り返しの度毎に、膀胱モデルと係合部の取付け位置を変えることができ、その結果、縫合後が無い状態で縫合トレーニングが行える。
【0022】
また、本発明の腹腔シミュレータ装置において、尿道管を把持する尿道管把持部が設けられ、尿道管把持部を装置本体に挿入した場合に、尿道管の先端部と膀胱モデルの孔が当接するように、膀胱モデルおよび帯状部材を固定し得るガイドが設けられたことが好ましい。
ここで、ガイドとは、腹腔シミュレータのケーシングの内壁に設けられた凹部であり、帯状部材はかかる凹部に嵌合し、固定される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の腹腔シミュレータによれば、繰り返しトレーニングするための生体質感臓器モデルの交換時の位置合わせが簡便に行えるといった効果がある。また、膀胱モデルと尿道管の縫合を訓練において、繰り返しトレーニングするための膀胱モデルに模した挿入体材料の交換時の位置合わせが簡便に行えるといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】実施例1の腹腔シミュレータの外観図(開口部側)
【
図3】実施例1の腹腔シミュレータのカバー取り外し後の外観図
【
図4】実施例1の腹腔シミュレータのカバーの外観図
【
図13】実施例2の腹腔シミュレータのカバーの外観図
【
図18】実施例3の腹腔シミュレータの分解説明図(1)
【
図19】実施例3の腹腔シミュレータの分解説明図(2)
【
図23】実施例4の腹腔シミュレータの横隔膜側の開口部の説明図
【
図24】実施例4の腹腔シミュレータの骨盤側の開口部の説明図
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例1】
【0026】
図1〜
図12を参照して、実施例1の腹腔シミュレータを説明する。
図1に示すように、腹腔シミュレータ1は、腹腔鏡下手技における腹腔および骨盤を模擬したケーシング2を備え、
図2に示す膀胱モデル10と尿道管4の縫合を訓練する装置である。腹腔および骨盤を模擬したケーシング2は、腹腔部位の下部領域を模擬しており、
図2に示すように腹腔空間の横隔膜側が開口している。
【0027】
図3に示すように、腹腔シミュレータ1からカバー3を取り外し可能である。カバー3は、
図4に示すように、複数の貫通孔が設けられており(図では5個の孔)、これらの貫通孔にポート部材5が取付けられる。ポート部材5にはポート孔6があり、ポート孔6を介して鉗子や手術器具が腹腔空間内部に挿入できる。
また、
図2および
図3に示すように、腹腔シミュレータ1の内部には、膀胱モデル10が着脱自在に設置されている。膀胱モデル10には帯状部材11が設けられ、
図5に示すように、帯状部材11を用いて、腹腔シミュレータ1内部の腹腔空間から膀胱モデル10を取出すことができる。
【0028】
膀胱モデル10と帯状部材11について、
図6〜
図8を参照しながら説明する。
図6に示すように、膀胱モデル10の下を支持する支持部14から帯状部材11が延設されている。帯状部材11は、腹腔シミュレータ1の内壁に沿うように緩やかに湾曲しており、先端部にはフック部13が設けられている。フック部13によって、
図3に示すように、腹腔シミュレータ1のケーシング2のエッジと帯状部材11が係合する。
膀胱モデル10は、
図7に示すように、5つの孔(12a〜12e)が周縁に設けられている。
図8に示すように、帯状部材11には、フック部13と反対の端部に係合部15が形成されている。係合部15は5角形の形状を呈しており、この係合部15に膀胱モデル10が被さっている。膀胱モデル10は、合成ゴムなどの柔軟性樹脂から成り伸縮性および弾力性を備えている。5角形の頂点の位置に、膀胱モデル10の5つの孔(12a〜12e)が配置されるように、膀胱モデル10の内壁は係合部と同じ形状にする。
【0029】
次に、
図9〜
図11を参照して、腹腔シミュレータ1のケーシング2に尿道管を取付けるやり方を説明する。尿道管を模擬する尿道管部材21は、合成ゴムなどの柔軟性樹脂から成り、伸縮性および弾力性を備えている。
図9および
図10に示すように、この尿道管部材21を、硬質性樹脂から成る尿道管把持部20の中を挿通させる。尿道管把持部20には長手方向に切り込み部20aが複数形成されている。
図11に示すように、尿道管把持部20をケーシング2の尿道管の孔4に挿し込むと、切り込み部20aの働きによって、尿道管の孔4に尿道管把持部20、すなわち、尿道管部材21が固定される。
【0030】
図12は、腹腔シミュレータの使用イメージを示している。5個のポート部材5がカバー3に配置されており、2個の鉗子31が差し込まれ、2個の鉗子ハンドル30によって腹腔鏡下の手術器具を操作しているイメージが示されている。
【実施例2】
【0031】
実施例2の腹腔シミュレータのカバーについて、
図13〜
図15を参照して説明する。
実施例2の腹腔シミュレータのカバーは、実施例1の腹腔シミュレータのカバーと異なり、
図13および
図14に示すように、ポート部材7の大きさが小さく、配置個数が多くなっている。ポート孔8がカバー全域に配置されており、
図15に示すように鉗子31の差し込み位置の自由度を向上できる。
【実施例3】
【0032】
実施例3の腹腔シミュレータについて、
図16〜
図20を参照して説明する。
図17(1)は腹腔シミュレータの正面図、(2)は背面図、(3)は左側面を示す図、(4)は右側面を示す図である。実施例3の腹腔シミュレータは、
図16及び
図17に示す通り、ケーシングの形状が人の腹部から骨盤にかけての形状と似通っている。また、ケーシング自体が透光性を有する素材から成り、ケーシング内部のスペースである腹腔空間の様子を観察できる。腹腔シミュレータ40のケーシングは、腹部41のケーシング部材と骨盤部42のケーシング部材と背中部43のケーシング部材と後述する蓋部44から成る。腹部41には多数のポート孔45が形成されている。任意の位置のポート孔45を介して、鉗子や手術器具を腹腔空間内部に挿入できる。背中部43の左右横腹部には、肋骨43の模擬構造が設けられている。また、骨盤部42のケーシング部材には尿道管の孔48が設けられている。
【0033】
図18及び
図19は、本腹腔シミュレータの分解説明図を示している。本腹腔シミュレータは、腹部41と骨盤部42と背中部43と蓋部44から成る。蓋部44は、横隔膜を模擬し、腹腔シミュレータの開口部を閉じるための部材である。
図19に示すように、背中部43の内壁に設けられた背骨46の隆起物に嵌合するモデル把持部50が、腹腔空間内部に設けられ、上面のプレート状の箇所に、生体質感臓器モデルを載置することができる。また、モデル把持部50は、骨盤部42の側に延接された凹部51に膀胱モデルを収納することができる。
図20(1)(2)に示すように、プレート状部分は腹腔空間の1/2の領域まで広がっているが、更に広がってもよい。また、プレート状の部分の一部に凹み部があり、凹み部に、生体質感臓器モデルを配置してもよい。
【実施例4】
【0034】
実施例4の腹腔シミュレータについて、
図21〜
図24を参照して説明する。
図22(1)は腹腔シミュレータの正面図、(2)は背面図、(3)は左側面を示す図、(4)は右側面を示す図である。実施例4の腹腔シミュレータは、実施例3の腹腔シミュレータと異なり、ケーシング内部が分らないように、不透明の素材によってケーシングが設けられている。
実施例4の腹腔シミュレータは、実施例3の腹腔シミュレータと同様、
図21及び
図22に示す通り、ケーシングの形状が人の腹部から骨盤にかけての形状と似通っている。また、ケーシング自体が不透明の素材から構成されるため、ケーシング内部のスペースである腹腔空間の様子は観察できない。実際の腹腔鏡下手技と同様に、腹腔空間をカメラレンズを介して観察することになる。腹腔シミュレータ60のケーシングは、腹部41のケーシング部材と骨盤部42のケーシング部材と背中部43のケーシング部材と後述する蓋部44から成る。腹部41には多数のポート孔45が形成されている。任意の位置のポート孔45を介して、カメラレンズを腹腔空間内部に挿入する。骨盤部42のケーシング部材には、尿道管の孔48が設けられている。
【0035】
図23(1)は、蓋部44を正面に見た図であり、
図23(2)は、蓋部44を取り外した際の腹腔シミュレータの様子である。蓋部44は横隔膜を模擬した部位49がある。蓋部44が取外し自在になっており、蓋部44を外して、腹腔シミュレータの内部の腹腔空間に、生体質感臓器モデル(図示せず)を取り換え配置する。モデル把持部(図示せず)毎、取り換えることも可能である。
図24(1)は骨盤部42を正面に見た図であり、
図24(2)は、骨盤部42を取り外した際の腹腔シミュレータの様子である。骨盤部42の中央には、尿道管の孔48が設けられており、腹腔空間まで貫通している。なお、骨盤部42も蓋部44と同様に取外し可能であり、骨盤部42を外して、腹腔シミュレータの内部の腹腔空間に、生体質感臓器モデル(図示せず)を取り換え配置する。モデル把持部(図示せず)毎、取り換えることができる。
【実施例5】
【0036】
実施例5の腹腔シミュレータについて、
図25の分解図を参照して説明する。実施例5の腹腔シミュレータは、
図18で示した腹腔シミュレータの分解構造とは異なり、
図25に示すように、腹部71のケーシング部材と骨盤部72のケーシング部材と複数の部材に分割される背中部のケーシング部材とから成る。背中部のケーシング部材は、左右一対の横腹部(73,74)ケーシング部材と背骨部76のケーシング部材から成る。分解した際の部材の数量は増加するが、収納スペースがコンパクトになる利点がある。
腹部71には多数のポート孔75が形成され、任意の位置のポート孔75を介して、鉗子や手術器具を腹腔空間内部に挿入できる。骨盤部72ケーシング部材、左右一対の横腹部(73,74)ケーシング部材、背骨部76のケーシング部材のそれぞれの内壁には、骨盤、肋骨、背骨のリアリティのある形状が設けられている。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、腹腔鏡下手術のトレーニングや学習用のシミュレータとして有用であり、特に、膀胱モデルと尿道管の縫合を訓練する装置として利用が期待できる。
【符号の説明】
【0038】
1,40,60 腹腔シミュレータ
2 ケーシング
3,3a カバー
4,48 尿道管の孔
5,7 ポート部材
6,8,45,75 ポート孔
10 膀胱モデル
11 帯状部材
12a〜12e 孔
13 フック部
14 支持部
15 係合部
20 尿道管把持部
20a 切り込み部
21 尿道管部材
30 鉗子ハンドル
31 鉗子
41,71 腹部
42,72 骨盤部
43,73,74 背中部
44 蓋部
46,76 背骨
47 肋骨
49 横隔膜を模擬した部位
50 モデル把持部
51 凹部