(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、オイルパームの成木は単一の幹からなり、高さ10〜20m以上に達する。葉は羽状で長さ3〜5m程度、若木で年間に約30枚、樹齢10年以上の木では約20枚が新しく生えている。花は3枚の花弁と3枚のがく(萼)からなり、個々には小さいが密集した集団を形成し、受粉してから果実が成熟するまでは約6ヶ月を要している。果実は油分の多い多肉質の果肉(中果皮)と、同じく油分に富んだ1つの種子からなり、果実の重さは1房あたり40〜50kg程度になる。
【0003】
19世紀後半から東南アジアのプランテーションで栽培されるようになり、オイルパームから採れる植物性油脂のヤシ油(palm oil)は、大豆や菜種等他の植物性油脂よりも生産性が高く、安価であることから、マーガリン、揚げ物用の油等の食用に使用されている。また、石鹸、化粧品等にも多用されている。近年、ヤシ油(palm oil)は、マレーシやインドネシア等の東南アジアから日本への輸出される量も増大している。したがって、オイルパームといえば、果肉と種子から取れる油脂の意味と、油椰子の幹自体を指す場合もある。
【0004】
学術的にはオイルパームは、ヤシ科アブラヤシ属に分類される植物の総称で、西アフリカを原産とするギニアアブラヤシ(Elaeis guineensis)と、中南米原産のアメリカアブラヤシ(Elaeis oleifera)の2種類が有名であり、栽培品種の中にはギニアアブラヤシとアメリカアブラヤシの交配品種も存在する。特に、植物性油脂の原料となる椰子の一種であるアブラヤシ(油椰子)を「オイルパーム」と呼ぶ場合もある。
即ち、オイルパームは、果肉と種子から油脂が取れ、単位面積当たり得られる油脂の量は、他の植物の群を抜いていることから、商業作物としてマレーシア等の東南アジア諸国を中心に大規模なプランテーション農業が行われているので、油脂の方を「オイルパーム」と呼ぶ方が著名になりつつあるかもしれない。
しかし、本発明においては、果肉と種子から取れる油脂のオイルパームを意味するものではなく、油椰子の幹自体または植物の個体全体をオイルパームと呼ぶこととする。
【0005】
このオイルパームを扱った特許出願には、特許文献1(空果房を扱った発明)に掲載のものがある。特許文献1では、オイルパームを利用した建築材料の製造方法を開示している。具体的には、パーム繊維を洗滌した後乾燥油が95%になるように乾燥する段階と、前記乾燥したパーム繊維を1〜1.5cm単位で破送・切断してパーム繊維チップを製造する段階と、前記乾燥したパーム繊維を200メッシュの粒経で粉碎する段階と、竹を200メッシュの粒経で粉碎する段階と、前記パーム繊維チップ、前記パーム繊維粉末、前記竹粉末、バイオセラミック粉末を1:1:1:1の比率で混合して主原料を製造する段階と、石炭の炭化物から200メッシュの粒経を有するフライアッシュを抽出する段階と、火炎防止剤と耐熱性樹脂である硬化用難燃樹脂を1:1の比率で混合・溶融してバインダーを製造する段階と、前記製造されたバインダー20〜30重量%、前記混合した主原料50〜60重量%、フライアッシュ20〜25重量%の粉末を混合して高液状で練る段階と、前記ねりを150〜200℃の温度を発散する成型部間を通過させて1次で焼く段階と、前記焼かれた成型物を多数の上部ローラー群と下部ローラー群が後側に行くほどその間隔が徐徐に細くなるように配置された圧延部の間を通過させて徐徐に薄い厚さで圧延する段階と、前記成型物を多数の上部ローラー群と下部ローラー群からなった冷却部を通過させながら0〜4℃で冷凍させる段階と、切断シリンダーによって昇降する刃により前記成型物を一定な長さ単位で切断する段階との工程から成り立っている。
【0006】
この特許文献1では、パーム繊維を主原料として利用することにより人体に無害であるだけではなく、パーム繊維を1〜1.5cmで切断したものをパーム繊維粉末とともに使用するので、パーム繊維が周辺の他の内容物との仮橋役を成して堅固な建築材料となり、竹とバイオセラミックにより抗菌及び脱臭機能を具現化することができる。また、カビが発生しないで、遠赤外線、陰イオンの発生が期待できる。そして、不燃性廃材をリサイクルすることができ、製作コストが安くなる。更に、全ての組成物から有毒性ガスが発生しないので建築材料として安全性が高いとされている。
【0007】
また、特許文献2(空果房を扱った発明)では、板状体または成型体は、油ヤシの空果房を解繊して得た油ヤシ繊維にゴム状弾性を示す樹脂を付着し、圧縮成型することにより得られた板状体または成型体である。
したがって、オイルパームの空果房を解繊して得た油ヤシ繊維は、例えば、ココヤシ繊維等の他のヤシ繊維に比して、繊維表面にパームオイルが付着しているために繊維の撥水性が優れていると共に、繊維中に含まれるセルロース及びリグニンの量が相対的に多いので、耐水性に優れる。加えて、油ヤシ繊維は、ココヤシ繊維等の他のヤシ繊維に比して、繊維強度が大であると共に、繊維径が大きく、かつ、繊維長が長いので、寸法安定性が優れている。また、油ヤシ繊維は、その表面の凹凸が大きいと共に屈曲の強度が大きくて繊維同士のからみあいが大きいから、このことによっても寸法安定性が高められる。そのため、この板状体または成型体は、吸水、吸湿時における寸法安定性が優れている。
そして、油ヤシ繊維表面の凹凸が大きいので、ゴム状弾性を示す樹脂が油ヤシ繊維の表面の空隙に侵入して固化又は硬化し、これが釘または楔のように作用して、所謂、アンカー効果を発揮するから、油ヤシ繊維はゴム状弾性を示す樹脂により強く結合する。このことも吸水、吸湿時における寸法安定性の向上に寄与していると考えられる。
【0008】
油ヤシ繊維は、例えば、ココヤシ繊維等の他のヤシ繊維に比して、繊維の剛性及び強度が大であると共に、繊維径が大きく、かつ、繊維長が長いので、弾性回復性に優れている。また、油ヤシ繊維は、繊維の屈曲の強度が大きくて繊維同士のからみあいが大きいので、弾性回復性が高められる。そして、ゴム状弾性を示す樹脂は弾性回復性が高い。そのため、油ヤシ繊維がゴム状弾性を示す樹脂により連結されている板状体または成型体は、優れた弾性回復性を示し、歩行感及びクッション性が良く、しかも、遮音性が良い。
この板状体または成型体では、油ヤシ繊維を使用するから、他の種類のヤシ繊維に比して解繊等に要する労力が少なく、そのため、製造コスト及びエネルギーが節減でき、製品が安価となる。例えば、ココヤシ繊維では、ヤシ殻を軟化させるために長期間水中に浸漬し、その後に機械的に繊維状に解繊するために長期間多大のエネルギーを必要とする。これに対してオイルパームは、もともと繊維状のままで集合体となっている空果房を解繊するから、水中浸漬の必要はなく、解繊のために要するエネルギーも非常に少なくて済む。また、油ヤシ繊維はココヤシ繊維に比して発塵性が少なく、その取り扱いにおいて作業環境の悪化が避けられる。
更に、油ヤシ繊維の繊維間に大きな隙間が形成されるので、噴霧または浸漬によりゴム状弾性を示す樹脂を供給したときには、樹脂が上記隙間を介して全繊維に均等に付着し、強度分布が均一になるという板状態が得られる。
【0009】
そして、特許文献3(オイルパーム幹の発明)では、接着剤で貼り合わされた複数の単板の表面に露出している繊維に接着剤を浸透させた合板の技術を開示している。
特許文献3に係るパーム合板は、樹脂接着剤で貼り合わされた複数の単板を備え、複数の単板のうちの最も外側の少なくとも1枚の単板は、パーム単板であり、パーム単板の表面に露出しているパーム繊維に樹脂接着剤を浸透させたものである。これにより、品質が比較的良好な樹木の単板をフェイスとバックとして使用せずに、安価な廃棄材のヤシの幹から製造可能なパーム単板を使用して表面を樹脂接着剤で処理することで、低コストで合板を製造する。
また、特許文献3のパーム合板は、複数の単板を全てパーム単板とし、安価な廃棄材のヤシの幹から製造可能なパーム単板のみを使用し、互いを樹脂接着剤で接着してもよい。このときのパーム繊維に浸透させてある樹脂接着剤は、複数の単板を貼り合わせる樹脂接着剤と同系のものである。樹脂接着剤が同系であるため、安価に合板を製造することができる。なお、ここで、同系とは、同一の樹脂接着剤、配合(例えば、配合比率)を変えたものを含む。
【0010】
そして、特許文献3のパーム合板は、パーム繊維に樹脂接着剤を浸透させる面を研磨した後に、パーム繊維に樹脂接着剤を浸透させ、合板表面から突出するパーム繊維を少なくし、パーム繊維に樹脂接着剤を浸透させるものである。この合板製造方法は、複数の単板を接着剤で貼り合わせる工程と、複数の単板の表面であり、露出している繊維に接着剤を浸透させる面を研磨する工程と、研磨した面に接着剤を塗布して繊維に接着剤を浸透させる工程と、接着剤を乾燥させる工程とを備え、これにより、品質が比較的良好な樹木の単板をフェイスとバックとして使用することなく、低いコストで合板を製造することができる。
このように、特許文献3によれば、品質が比較的良好な樹木の単板をフェイスとバックとして使用せずに、低いコストで製造が可能な合板及びパーム合板、合板製造方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、特許文献1及び特許文献2は、何れもオイルパームの果実の空果房を解繊して得た油ヤシ繊維の利用であり、直接的にオイルパームの幹を利用するものではない。しかし、オイルパームの幹は成木で20m以上となり、全体の90〜95%を占める容積率であることからその利用が望まれていた。
特に、マレーシア等の東南アジア等では、パームオイルの生産のためにオイルパームが栽培されているが、パームオイル採取後の空果房には繊維等が多く含まれていることから、その空果房は繊維ボード等種々の用途に活用されている。しかし、毎年伐採されているヤシの幹は有効に活用されておらず、廃棄処分されているのが現状である。
また、特許文献3には、最も外側の少なくとも1枚の単板がパーム単板を複数樹脂接着剤で貼り合わせる工程と、パーム単板の表面であり、露出しているパーム繊維に樹脂接着剤を浸透させる面を研磨する工程と、研磨した面に樹脂接着剤を塗布してパーム繊維に樹脂接着剤を浸透させる工程と、樹脂接着剤を乾燥させる工程とを備えた合板製造方法を開示している。しかし、オイルパームの単板に如何に樹脂接着剤を塗布するか、露出しているパーム繊維に樹脂接着剤を浸透させるかについては説明されておらず不明であり、具体的な合板の製造方法が不明である。少なくとも、オイルパームの単板を複数枚樹脂接着剤で貼り合わせるという樹脂接着剤の使用を前提としている。
【0013】
特許文献1及び特許文献2は、オイルパームの油ヤシ繊維の利用であり、また、特許文献3はオイルパームの単板を複数枚樹脂接着剤で貼り合わせた多層板であり、その用途が限られている。しかし、オイルパームの樹幹は比重が0.5前後(場所によって違いが存在する)であり、断熱効果があり、天然物として合成樹脂の発泡体と同様の機能も有している。
ところが、オイルパームの樹幹を切り出すと、表面から乾燥が行われ、柔細胞等がボロボロと剥がれ落ち、オイルパームの樹幹を直接使用することができない。勿論、粘性に富んだ合成樹脂を塗布し、剥がれ落ちを防止することができるが、廃棄する際には、合成樹脂との分離が不可能であるから、環境負荷が増大するという問題があった。
【0014】
そこで、本発明は、かかる不具合を解決すべくなされたものであって、オイルパームの樹幹を直接切り出して使用しても、オイルパーム材の表面を合成樹脂によるコーティング処理を行うことなく柔細胞の剥がれ落ちを防止でき、かつ、所望の全体比重の成型体とすることができる植物成型体及びその成型方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明にかかる植物成型体としてのオイルパーム成型体は、オイルパーム材を加熱圧縮及びその圧縮状態を維持しながら温度を降下させてなる固定化により圧縮変形が維持される圧密化した植物成型体において、前記オイルパーム材の圧縮方向の両面側の密度が前記オイルパーム材の圧縮方向の中心部の密度よりも高く、前記オイルパーム材に形成した表面及び/または裏面の凹部は、その位置で前記オイルパーム材と異なるオイルパーム材と接合され一体化され、前記異なるオイルパーム材と接合されない平面部と比べて大きく圧縮され前記異なるオイルパーム材と接合したものである。
ここで、上記所定のオイルパーム材を高温度及び高湿度中で圧縮力を加えての圧縮変形とは、加える温度は加熱水蒸気であっても、ヒータ加熱であってもよいが、その加熱された温度環境は高湿度であることを必要とするものである。
また、上記オイルパーム材の圧縮変形を固定化してなるオイルパーム成型体とは、オイルパーム材の圧縮変形させる圧力を解いてもその圧縮変形が維持されていることを意味する。但し、圧縮変形に形状の変化が全く生じないものではなく、多少の弾性変形が生じる。
そして、上記オイルパーム材の圧縮方向の両面側の密度を、前記オイルパーム材の圧縮方向の中心部の密度よりも高くしたとは、オイルパーム材に圧縮力を加える両面側の密度を、その両面間の中心位置の密度よりも高くしたことを意味する。当然、単位体積当たりの比重によってそれを判断できる。
【0016】
一般に、オイルパームの樹幹としては、その品種や生産地等が特に限定されるものではなく、通常、果実の生産性が低下した樹幹、20年以上経過した樹幹、再植栽培や計画的な栽培のために廃棄予定の樹幹が使用されるが、樹齢の若い樹幹であってもよい。
また、オイルパーム材として得た材の乾燥は、その乾燥方法が特に問われるものではなく、天然乾燥させてもよいし、人工的に乾燥させてもよいが、当然ながら人工乾燥の方が高コストである。
ここで、建築材料等に一般的に使用されているラワン等の木材が、水や養分の移動が停止した細胞(死細胞)組織から成る二次木部を形成しているのに対し、オイルパームの樹幹は維管束及び柔細胞の一次組織のみで構成され、柔細胞を中心とする殆どの細胞が水や養分の移動が盛んに行われている生活細胞であるため、含水率が極めて高い。その上、オイルパーム幹には、糖類(例えば、フラクト−ス、グルコ−ス、フラクトオリゴ糖、イノシト−ル等)が多く含まれているから、オイルパーム幹からオイルパーム材の厚みが厚い場合、天然乾燥ではカビ等の細菌が繁殖して腐食しやすく生産性や商品価値が損なわれる。そこで、本発明者らの実験研究によれば、マイクロ波による誘電加熱により乾燥すると、カビ等の細菌による商品価値や生産性の低下を招くことなく、低コストに乾燥できることが確認された。
【0017】
また、圧密化とは、前記オイルパーム材等の基材を所定の温度条件下で所定の圧縮力を加えて圧縮し、所定の時間経過後、前記温度を所定の温度まで降下させて解圧し、所定の圧縮率で圧縮した状態を維持する固定化によって、オイルパーム材を所定の圧縮率で圧縮した基材とする加工である。このとき、加熱状態で繊維方向に対して垂直方向に外力を加えることによって、オイルパーム材の木口面の面積を一方向またはその直角方向に小さくすることで、所謂、圧縮の方向性を特定して圧密加工することになる。この圧密加工は、例えば、オイルパーム材の含水率を表面及び裏面側が高く、その表面と裏面との間の中間が低くなるように設定し、所定の条件で加熱圧縮し、固定化することによって圧密化することができる。このときの所定の条件となる温度、圧力、時間、圧縮スピード等については、目的とする圧縮率等をパラメータとして予め実験等によって決定される。
【0018】
上記圧密加工により前記オイルパーム材が圧密化され、例えば、発明者等の実験によれば、切り出したオイルパーム材の厚み32mmを18mmまで圧縮し、前記オイルパーム材全体の気乾比重を0.52、表層の気乾比重0.62を得た。厚みの中央では、気乾比重0.40が確認された。ここで、気乾比重とは、木材を大気中で乾燥した時の比重で、通常、含水率15%の時の比重で表したものであり、木材を乾燥させた時の重さと同じ体積の水の重さを比べた値である。数値が大きいほど重く、小さいほど軽いことを表す。
なお、圧密加工により全体の圧密加工した気乾比重は、本発明者らが、実験を重ねた結果、オイルパーム材の表層が高圧縮して気乾比重0.8以上とすることによって、オイルパームの性質が変化し、硬度が顕著に硬くなると共に、強度、硬度、寸法変化率等の物性値や特性値のばらつきが少なく物理的安定性が増すことを見出した。即ち、圧縮により、強度や硬度等を増大させ、かつ、物理的性質のバラつきを少なくした特性領域であり、圧密加工された木材としての特性であることを示すものである。圧密加工により気乾比重をオイルパーム材の表層が0.8以上にしなくとも、例えば、気乾比重が0.6以上になっておれば、硬度が顕著に高くなり、硬度及び寸法変化率等の物性値や特性値のばらつきが少なくなって物理的安定性が増すことになる。当然、柔細胞の剥がれ落ちはなくなり、通常の成型体として使用できる。特に、パーティション等の芯材とする場合には、断熱、防音、防振等の目的が前提であるから、オイルパーム材の表層の気乾比重が0.6以上であればよい。
【0019】
また、上記気乾比重は、最終的には、コストや、必要とされる強度、硬度等を考慮して設定されるが、気乾比重を大きくするために圧縮率を余りに高くすると木材を構成する繊維が破壊されてクラックが生じ商品性が失われることになるから、高圧縮によりクラックが発生する直前に測定される気乾比重の値が最大値となる。即ち、本発明における気乾比重の上限は圧密加工の圧縮限界で、最大値は有限値となる。また、上記気乾比重の数値は、自然物を相手にするものであるから、厳格であることを要求するものではなくて概ねであり、当然、測定等により誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。
【0020】
本発明にかかる植物成型体としてのオイルパーム成型体の前記オイルパーム材は、金型によって平坦な平面部、上または下に凹部、上または下に凸部のいずれか1つ以上を形成したものである。
ここで、平面部、凹部、凸部のいずれか1つ以上を金型で形成するとは、上記オイルパーム材の圧縮方向の両面側の密度を、その圧縮力を加える両面間の中心位置の密度よりも高く形成し、かつ、平面部、凹部、凸部のいずれか1つ以上を形成したものである。なお、密度よりも高く形成とは、比重を大きくすることを意味する。
【0021】
本発明にかかる植物成型体としてのオイルパーム成型体の前記オイルパーム材に形成した凹部または凸部は、他の平面部と同一の厚みに形成したものである。
ここで、前記オイルパーム材に形成した凹部または凸部を他の平面部と同一の厚みとすることは、上記オイルパーム材の圧縮方向の両面側の密度を、その圧縮力を加える両面間の中心位置の密度よりも高く形成し、かつ、凹部または凸部を他の平面部と同一の厚みとなるように湾曲させたものである。
【0022】
本発明にかかる植物成型体としてのオイルパーム成型体の前記オイルパーム材に形成した表面及び/または裏面の凹部は、その位置が大きな圧縮力で圧縮され、前記オイルパーム材と異なるオイルパーム材で接合し一体化したものである。
ここで、オイルパーム成型体の前記オイルパーム材に形成した表面及び/または裏面の凹部とは、部分的にオイルパーム材の表面または裏面の近傍まで圧縮し、その部分のみを圧縮率を上げて、他のオイルパーム材との接合を行うものである。この接合は、前記オイルパーム材を2枚重ねて、その中間位置で接合してもよい。
【0023】
請求項2の発明にかかる植物成型体としてのオイルパーム成型体の成型方法は、所定長のオイルパーム幹を所定厚のオイルパーム材に形成する材料形成工程と、前記材料形成工程で形成した前記オイルパーム材を乾燥する乾燥工程と、前記乾燥工程で乾燥させた前記オイルパーム材を所定の配置状態に配置する配置工程と、前記配置工程で所定の位置に配置された前記オイルパーム材に対して圧縮力を加える方向の両面を加湿する加湿工程と、前記オイルパーム材の圧縮力を加える方向に対して垂直方向に伸びるのを規制しながら、上金型と下金型とで前記オイルパーム材の面に対して直角方向の圧縮力を加えて所定時間加熱圧縮する加熱圧縮工程と、前記加熱圧縮工程で所定時間加熱圧縮した前記オイルパーム材の温度を降下させて冷却し、固定化させる固定化工程を具備するものである。
ここで、上記材料形成工程は、所定長のオイルパーム幹を所定厚のオイルパーム材に形成する工程である。上記乾燥工程は、前記材料形成工程で形成した前記オイルパーム材を乾燥する工程である。
また、上記配置工程は、前記乾燥工程で乾燥させた前記オイルパーム材を所定の成型しようとする金型に配置する工程である。
そして、上記加湿工程は、配置工程で所定の位置に配置された前記オイルパーム材に対して圧縮力を加える方向の両面を加湿する工程であり、水に浸漬してもよいし、噴霧してもよい。
【0024】
更に、上記加熱圧縮工程は、前記オイルパーム材の圧縮力を加える方向に対して直角方向に伸びるのを規制しながら、上金型と下金型とで前記オイルパーム材の面に対して直角方向の圧縮力を加え、所定時間加熱圧縮する工程である。前記オイルパーム材の圧縮力を加える方向に対して直角方向に伸びるのを規制するのは、複数のオイルパーム材を並列配置する場合には、各オイルパーム材の規制を行うものではなく、シルエットラインを形成する最外周の対応とすることができる。勿論、複数のオイルパーム材の一部の位置の規制を行うこともできる。上記加熱圧縮工程における加熱温度は、110℃〜170℃の範囲内としたものであるから、圧密加工における固定化不良や木材間の接合不良、また、表面炭化、材質強度の低化等の材質劣化を防止することができる。そして、圧加熱縮工程による所定の圧縮圧力は、1〜100kg/cm
2の範囲内としたものであるから、圧密加工における固定化不良や木材間の接合不良、また表面クラックの発生を防止することができる。この加熱圧縮工程に要する時間は、10分間〜120分間の範囲内であることから、圧密加工における固定化不良や木材間の接合不良、表面の炭化を防止できる。
更にまた、上記固定化工程は、前記加熱圧縮工程で所定時間加熱圧縮した前記オイルパーム材の温度を降下させて冷却し、固定化させるものである。
このとき、上記固定化は、所定時間加熱圧縮した前記オイルパーム材は外力の解除で若干弾性変形して、押圧状態よりも復元するが、その量が問題となるものではない。その外力を解除した状態が概略保持されればよい。
【0025】
請求項3の発明にかかる植物成型体としてのオイルパーム成型体の成型方法は、所定長のオイルパーム幹を所定厚のオイルパーム材に形成する材料形成工程と、前記材料形成工程で形成した前記オイルパーム材を乾燥する乾燥工程と、前記乾燥工程で乾燥させた前記オイルパーム材を所定の配置状態に配置する配置工程と、前記配置工程で所定の位置に配置された前記オイルパーム材に対して部分的に加熱圧縮して部分接続する仮接続工程と、前記配置工程で所定の位置に配置され、仮接続された前記オイルパーム材に対して圧縮力を加える方向の両面を加湿する加湿工程と、前記オイルパーム材の圧縮力を加える方向に対して垂直方向に伸びるのを規制しながら、上金型と下金型とで前記オイルパーム材の面に対して直角方向の圧縮力を加えて所定時間加熱圧縮する加熱圧縮工程と、前記加熱圧縮工程で所定時間加熱圧縮した前記オイルパーム材の温度を降下させて冷却し、固定化させる固定化工程を具備するものである。
ここで、上記材料形成工程は、所定長のオイルパーム幹を所定厚のオイルパーム材に形成する工程である。
また、上記乾燥工程は、前記材料形成工程で形成した前記オイルパーム材を乾燥する工程である。この乾燥工程は、オイルパーム材の含水率を5%〜30%の範囲内に乾燥させるものであるから、クラック、変形、膨らみ、破裂等が防止される。よって、より安定した寸法形状性が確保され、歩留りも高いものとなる。
そして、上記配置工程は、前記乾燥工程で乾燥させた前記オイルパーム材を所定の成型しようとする金型に配置する工程である。
【0026】
更に、上記加湿工程は、前記配置工程で所定の位置に配置され、仮接続された前記オイルパーム材に対して圧縮力を加える方向の両面を加湿する工程であり、水に浸漬してもよいし、噴霧してもよい。
更にまた、上記加熱圧縮工程は、前記オイルパーム材の圧縮力を加える方向に対して垂直方向に伸びるのを規制しながら、上金型と下金型とで前記オイルパーム材の面に対して直角方向の圧縮力を加えて所定時間加熱圧縮する工程である。前記オイルパーム材の圧縮力を加える方向に対して直角方向に伸びるのを規制するのは、複数のオイルパーム材を並列配置する場合には、各オイルパーム材の規制を行うものではなく、シルエットラインを形成する最外周の対応とすることができる。勿論、複数のオイルパーム材の一部の位置の規制を行うこともできる。上記加熱圧縮工程における加熱温度は、110℃〜170℃の範囲内としたものであるから、圧密加工における固定化不良や木材間の接合不良、また、表面炭化、材質強度の低化等の材質劣化を防止することができる。そして、圧加熱縮工程による所定の圧縮圧力は、1〜100kg/cm2の範囲内としたものであるから、圧密加工における固定化不良や木材間の接合不良、また表面クラックの発生を防止することができる。この加熱圧縮工程に要する時間は、10分間〜120分間の範囲内であることから、圧密加工における固定化不良や木材間の接合不良、表面の炭化を防止できる。
加えて、上記固定化工程は、前記加熱圧縮工程で所定時間加熱圧縮した前記オイルパーム材の温度を降下させて冷却し、固定化させるものである。このとき、上記固定化は、所定時間加熱圧縮した前記オイルパーム材は外力の解除で若干復元しようとして、押圧状態よりも復元するが、その量は問題とするものではない。その外力を解除した状態が保持されればよい。
【0027】
一般に、上記乾燥工程による前記オイルパーム材の含水率は、5%〜30%の範囲内に乾燥させたものである。ここで、本発明者らは実験を重ねた結果、一般に、含水率が5%未満の場合は、圧密加工によって十分な化学変化を起こさせることができず、また、表面が乾燥し過ぎて、圧密加工後において水に濡れた場合に圧縮した部分が元の厚さ形状に戻る現象、所謂、固定化不良が起こり易くなる。一方、含水率が30%を超えると、内部まで均一に乾燥され難く、圧密加工の固定化処理において木材中に含まれる高温・高圧の水蒸気の作用によってプレス圧に抗する内圧が発生し、プレス圧を除いた後に、割れ・破壊(パンク)等の損傷や変形・膨らみ等が生じ易くなることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
【0028】
また、上記仮接続工程は、前記配置工程で所定の位置に配置された前記オイルパーム材に対して部分的に加熱圧縮して部分的に接続する工程である。
上記仮接続工程における加熱温度は、110℃〜170℃の範囲内としたものである。ここで、本発明者らは実験を重ねた結果、加熱温度が低過ぎると十分な圧密加工がなされず、固定化不良や層間の接合不良が生じることがあり、一方、加熱温度が高過ぎると表面が炭化して黒色に変化し、色調や植物本来の特有の香りが損なわれたり、材質が劣化して強度が低化し脆くなったりすることがあるので、加熱温度が110℃〜170℃の範囲内で圧密加工する必要がある。
【0029】
そして、上記仮接続工程による所定の圧縮圧力は、1〜100kg/cm
2の範囲内としたものである。ここで、本発明者らは実験を重ねた結果、加圧力が低過ぎると十分な圧密加工がなされず、固定化不良や木材間の接合不良が生じる。一方、加圧力が高過ぎると表面にクラックが生じることがある。したがって、1〜100kg/cm
2の範囲内の加圧条件が適切であることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。なお、より好ましくは、10〜50kg/cm
2の範囲内である。
【0030】
更に、上記仮接続工程に要する時間は、10分間〜120分間の範囲内である。本発明者らは、十分な加熱圧縮がなされて固定化不良や木材間の接合不良を防止できる一方で、処理時間が長過ぎることによる表面の炭化を防止できる加熱圧縮の処理時間について実験を重ねた結果、前記オイルパーム材の材料によって時間の違いがあるものの、適切な温度を加える所定時間が10分間〜60分間の範囲内の時間条件が適切であることを見出した。なお、好ましくは、所定時間が20分間〜30分間の範囲内である。
なお、オイルパーム成型体の形態または使用対象によっては、仮接続工程としては1回以上繰り返し実行することができる。
【発明の効果】
【0031】
請求項1の植物成型体としてのオイルパーム成型体は、所定のオイルパーム材を高温及び高湿度中で圧縮力を加えて圧縮変形させ、前記オイルパーム材の圧縮変形を維持してなる圧密化したオイルパーム成型体において、前記オイルパーム材の圧縮方向の両面側の密度が前記オイルパーム材の圧縮方向の中心部の密度よりも高くなっているものである。
このように、所定のオイルパーム材を高温度及び高湿度中で圧縮力を加えて圧縮変形させるとき、圧縮力を加える両面に対して予め水分を含ませることによって、圧密化する圧縮力により変位し易くして圧密化したものであるから、オイルパーム材自体が所望の形状に成型でき、表面及び裏面の構造を緻密化でき、オイルパーム材を直接切り出して使用しても、オイルパーム材の表面の合成樹脂によるコーティング処理を行うことなく、柔細胞の剥がれ落ちを防止できる。また、表面及び裏面の構造を緻密化できるが、その間のオイルパーム材は圧縮率を低減して低くできるから、用途によって合成樹脂の発泡体の有する断熱効果、遮音効果、防振効果を得ることができる。また、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒド系接着剤を使用しないから、オイルパームが本来的に有している成分を利用した環境にやさしいオイルパーム成型体が得られる。
【0032】
また、本発明の植物成型体としてのオイルパーム成型体は、前記所定長のオイルパーム材に金型で平面部、凹部、凸部の1以上を形成したものであるから、請求項1に記載の効果に加えて、簡単に三次元的なオイルパーム成型体が得られる。
【0033】
そして、本発明の植物成型体としてのオイルパーム成型体は、前記所定長のオイルパーム材に形成した凹部または凸部は、他の平面部と同一の厚みに形成したものであるから、請求項2に記載の効果に加えて、オイルパーム材の厚みが均一であり、機械的強度も強くなる。また、成型体全体に無理がかからない。
【0034】
更に、本発明にかかる植物成型体としてのオイルパーム成型体の前記複数枚積層したオイルパーム材に形成した表面及び裏面の凹部は、その位置が大きな圧縮力で圧縮され、前記複数枚積層したオイルパーム材を当該凹部位置で一体化したものであるから、請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の効果に加えて、前記複数枚積層したオイルパーム材に形成した表面及び裏面の凹部は、そこで、前記複数枚積層したオイルパーム材を一体に固定するものであるから、平面部の圧縮に左右されない接合が可能になり、そこだけで一体化できるから、緩衝剤、断熱材等としての使用が可能となる。
【0035】
請求項2の植物成型体としてのオイルパーム成型体の
成型方法は、所定長のオイルパーム幹を所定厚のオイルパーム材に形成し、形成した前記オイルパーム材を乾燥し、乾燥させた前記オイルパーム材を所定の配置状態に配置し、所定の位置に配置された前記オイルパーム材に対して圧縮力を加える方向の両面を加湿し、前記オイルパーム材の圧縮力を加える方向に対して垂直方向に伸びるのを規制しながら、上金型と下金型とで前記オイルパーム材の面に対して直角方向の圧縮力を加えて所定時間加熱圧縮して圧密化し、所定時間加熱圧縮した前記オイルパーム材の温度を降下させて冷却し、固定化させるものであるから、特に、水蒸気によって複数枚のオイルパーム材を加熱すると、リグニン等の樹脂成分及びセルロース、ヘミセルロース等の糖類とが、軟化し結合するから固定化工程によって、堅固なオイルパーム成型体が得られる。
【0036】
このとき、配置工程は成型する金型に応じて異なった配置の形態となり、特に、板材間に収める場合には、特定形状の板材間に配置して形成すればよい。また、加湿工程によって配置工程で所定の位置に配置された前記オイルパーム材に対して圧縮力を加える方向の両面を加湿し、オイルパーム材の両側に高密度の層を形成するものであるから、加湿する広さ及び深さによって任意の密度の成型体とすることができる。特に、加湿する面を片側のみとすることもできる。通常は、一方の金型に配置し、その状態で露出面をスプレー等で加湿し、金型を変えて、他方の面もスプレー等で加湿している。勿論、平坦な金型であれば、一方の金型に1mm程度の深さに水を張ってもよい。
【0037】
また、前記オイルパーム材は、前記オイルパーム材の面に対して平行方向に伸びるのを規制しながら、上金型と下金型とで前記オイルパーム材の面に対して直角方向の圧縮力を加えて所定時間圧縮成型するものであるから、前記オイルパーム材の面積が拡大されることなく、圧縮成型でき、所望の立体形状であり、かつ、所望の外径のオイルパーム成型体が得られる。特に、金型からは、加熱圧縮工程で供給していた温度を降下させて冷却し、固定化させるものであるから、オイルパーム成型体が取り出し易い。
したがって、オイルパーム材に圧力を加えて形成したオイルパーム成型体が所望の形状に成型でき、また、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒド系接着剤を使用せず、オイルパームが本来的に有している成分を利用した環境にやさしいオイルパーム成型体が得られる。
【0038】
請求項3の植物成型体としてのオイルパーム成型体の
成型方法は、材料形成工程、乾燥工程、配置工程、仮接続工程、加湿工程、加熱圧縮工程、固定化工程を有し、所定長のオイルパーム幹を所定厚のオイルパーム材に形成し、形成した前記オイルパーム材を乾燥し、乾燥させた前記オイルパーム材を所定の配置状態に配置し、仮接続工程において前記配置工程で所定の位置に配置された前記オイルパーム材に対して部分的に加熱圧縮して部分接続し、所定の位置に配置された前記オイルパーム材に対して圧縮力を加える方向の両面を加湿し、前記オイルパーム材の圧縮力を加える方向に対して垂直方向に伸びるのを規制しながら、上金型と下金型とで前記オイルパーム材の面に対して直角方向の圧縮力を加えて所定時間加熱圧縮して圧密化し、所定時間加熱圧縮した前記オイルパーム材の温度を降下させて冷却し、固定化させるものであるから、特に、水蒸気によって複数枚のオイルパーム材を加熱すると、リグニン等の樹脂成分及びセルロース、ヘミセルロース等の糖類とが、軟化し結合するから固定化工程によって、堅固なオイルパーム成型体が得られる。
【0039】
特に、オイルパーム材の温度を加熱圧縮工程で上昇させるべく加熱し、前記加熱圧縮工程で加熱された前記オイルパーム材の面に対して平行方向に延びるのを規制しながら、前記オイルパーム材の面に対して直角方向の圧縮力を加えて所定時間圧縮するものであるから、前記加熱圧縮工程で付与される圧縮力がオイルパーム材の面に対して平行方向に逃げるという延びが制限され、全ての圧縮力がオイルパーム材に有効的に使用され、かつ、オイルパーム材の外形寸法を均一にすることができる。
よって、前記オイルパーム材が含有する樹脂成分及び糖成分の使用割合を多くし、自然物で接合したオイルパーム成型体が得られ、使用する材料のロスが少なくコストを抑え、また、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒド系接着剤を使用せず、オイルパームが本来的に有している成分を利用したオイルパーム成型体が得られる。
【0040】
そして、前記オイルパームの幹自体が含有する樹脂成分及び糖成分によって接合して前記オイルパーム成型体を形成するものであり、他の合成樹脂、合成ゴムを接着材として使用していないから、自然に戻すことができ公害問題を引き起こすことがない。更に、前記オイルパームの幹自体が含有する樹脂成分及び糖成分によって接合されるときの圧縮力によって、前記オイルパーム材の空隙が殆どなくなり、緻密な組織になるから、耐水性があり、かつ、防水、防虫性に富み、建築材料として使用しても耐用年数が長くなる。
よって、前記オイルパーム材が含有する樹脂成分及び糖成分を使用し、自然物で接合したオイルパーム成型体が得られ、使用する材料のロスが少なくコストを抑え、また、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒド系接着剤を使用することなく、オイルパーム材が本来的に有している成分を利用したオイルパーム成型体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、実施の形態において、図中の同一記号及び同一符号は、同一または相当する機能部分であるから、ここではその重複する説明を省略する。
【0043】
[実施の形態1]
本発明の実施の形態1の植物成型体としてのオイルパーム成型体の製造方法について、
図1を用いて説明する。
まず、この発明の実施の形態で使用するオイルパーム幹WDは、木材の板目と柾目を製材するように寸法取りを行うと、何れも柾目状に繊維(維管束)が並ぶ面になる。即ち、国産材の桧や杉のように年輪がなく、畳表の藺草のように0.4〜1.2mmの維管束繊維が主にオイルパーム幹WDの長さ方向に延びている。
オイルパーム幹WDの成分は産地によって若干違いがあるが、その差は僅かであり、一般にセルロース30.6重量%、ヘミセルロース33.2重量%、リグニン(総リグニン28.5重量%=クラーソンリグニン24.7重量%+酸可溶性リグニン3.8重量%)、抽出成分3.6重量%、灰分4.1重量%といわれており、Characterization in Chemical Composition of the Oil Palm (Elaeis guineensis) (Journal of the Japan Institute of Energy,87,383-388(2008))にも記載がある。
視認できる0.4〜1.2mmの繊維、即ち、維管束と維管束の間は、リグニン等の樹脂成分及びセルロース、ヘミセルロース等の糖類、柔細胞、少ない空孔が一体になっている。
【0044】
本実施の形態にかかる植物成型体としてのオイルパーム成型体を構成する
図3に示すオイルパーム材W(格別、オイルパーム材Wの製材位置または枚数を必要としない場合には、「オイルパーム材W1,・・・,W5」、必要とする場合には、単に「オイルパーム材W」という)について
図1を用いて説明する。
オイルパーム材Wは、20年以上成長した単一の幹を所定長のオイルパーム幹WDとして切断し、それを特定の厚さの板材または柱材として製材する。オイルパーム成型体の厚み、幅、長さは、目的によって異なってくるが、ここでは、その厚みが厚くても、薄くても断面正方形のもの及び断面長方形のものを含み「板材(柱材を含む)」ということにする。したがって、説明では、50cm幅の50cm厚の板材は存在することになる。
【0045】
図3は、オイルパーム幹WDを所定の厚みの板材を製材するように、オイルパーム幹WDを垂直に切断し、
図3(a)では、5枚の板材のオイルパーム材W1,・・・,W5を製材した例である。所定の面積、所定の厚みのオイルパーム材Wは、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、切断され、5枚の所定面積、所定厚さのオイルパーム材W1,・・・,W5が製材される。
図3(b)は、オイルパーム幹WDの長さ方向と、その垂直方向の面の特徴を示したものであり、
図3(c)は製材した5枚の板材W1,・・・,W5のうちの1枚のオイルパーム材Wを示す。
なお、オイルパーム幹WDを所定の厚みの板材を製材する工程は、所定長のオイルパーム幹WDを所定厚のオイルパーム材Wに形成する
図1のステップS1の材料形成工程となる。
【0046】
なお、オイルパームの葉、空果房、根等は、チップ状に裁断され、好気性細菌処理によってコンポスト化(堆肥化)する有機廃棄物発酵処理方法によって処理される。また、空果房は他の実用性のある処理を行ってもよい。特に、細かく破砕し、セルロース、ヘミセルロース、リグニン等の成分抽出を行って、接合補助にそれを利用してもよい。また、そのまま粉体化して、本実施の形態における接合部分または空隙部分にそれを充填または塗布してもよい。
【0047】
通常、オイルパーム幹WDを所定の厚みのオイルパーム材Wに形成する材料形成工程から、その乾燥が開始される。一般に、乾燥時間の確保から、また、カビの発生要因を早い時期に除去するという観点からして、製材直後から乾燥開始するのが望ましい。
図1のステップS2の乾燥工程では、オイルパーム材Wが製材されてからの乾燥であると、端部の製材時の切り屑が出にくくなるので、望ましい乾燥状態となる。これらのオイルパーム材Wを乾燥する工程は、前述の材料形成工程で形成したオイルパーム材Wを乾燥する乾燥工程となる。
ステップS2の乾燥工程では、オイルパーム材Wの含水率を5%〜30%の範囲内に乾燥させるものであり、乾燥状態とすることにより、所定の乾燥室で保存可能となる。得られたオイルパーム材Wは、本実施の形態のオイルパーム成型体の製造方法の原理を示す
図4(a)に示したオイルパーム材Wとなる。
【0048】
上記ステップS2の乾燥工程によるオイルパーム材Wの含水率は、5%〜30%の範囲内に乾燥させたものである。ここで、本発明者らは実験を重ねた結果、一般に、含水率が5%未満の場合は、圧密加工によって十分な化学変化を起こさせることができず、また、表面が乾燥し過ぎて、圧密加工後において水に濡れた場合に圧縮した部分が元の厚さ形状に戻る現象、所謂、固定化不良が起こり易くなる。一方、含水率が30%を超えると、内部まで均一に乾燥され難く、圧密加工の固定化処理において木材中に含まれる高温・高圧の水蒸気の作用によってプレス圧に抗する内圧が発生し、プレス圧を除いた後に、割れ・破壊(パンク)等の損傷や変形・膨らみ等が生じ易くなることを見出した。
【0049】
次いで、
図5(a)に示すように、所定の面積、所定の厚みのオイルパーム材W2,W3,W4の計3枚を下金型10Bに配置する。即ち、乾燥工程で乾燥させたオイルパーム材Wを所定の配置状態に配置するステップS3の配置工程を行う。
ステップS3の配置工程は、成型しようとするオイルパーム成型体の形状によって異なるが、
図5(b)に示すように湾曲したオイルパーム成型体を得る場合または
図6のように波形のオイルパーム成型体を得る場合、その他等があるが、金型にオイルパーム材Wを配置する工程を意味する。したがって、オイルパーム成型体によってその形状が決定される。特に、オイルパーム成型体のシルエットラインは、下金型10Bの側壁10B1と略同一となる。この略同一とは、必ずしも同一ではなく、オイルパーム材Wの膨張によって埋設される部分の存在を意味するものである。
【0050】
ステップS3の配置工程は、下金型10Bまたは上金型10Aの一方または両方に
図4(c)に示すオイルパーム材Wに圧縮力Pを加える方向に対して直角方向に伸び、広がるのを側壁10B1で規制しながら圧縮する機能の存在を示唆するものである。上金型10Aと下金型10Bとでオイルパーム材Wの面に対して直角方向の圧縮力Pを加えているが、オイルパーム材Wは所定以上の圧縮を行うと、圧縮力Pを加える方向に対して直角方向に伸び、広がる性質があるので、特定の側壁10B1で囲まれた空間にオイルパーム材W2,W3,W4を配置する工程である。
【0051】
前述のステップS3の配置工程で所定の位置に配置されたオイルパーム材Wに対して、圧縮力Pを加える方向の両面を水に浸漬するか或いはスプレーすることにより加湿GするステップS4の加湿工程を行う。
図4(b)に示す実施の形態では、平板状のオイルパーム成型体を得るものであるから、
図4(b)のように、オイルパーム材Wの両面に対してスプレーで水滴を噴霧するか、刷毛で水を塗布するか、外部に配置する容器の水に漬けてオイルパーム材Wの両面を加湿Gしてもよい。本実施の形態では、スプレーで水滴を吹き付けて微細な空孔にも加湿Gさせた。
【0052】
なお、
図1(a)は基本的動作を示すものであるが、ステップS4の加湿工程は、
図1(a)のように、ステップS3の配置工程の後であってもよいし、
図1(b)のように、ステップS2の乾燥工程の後に加湿工程(ステップS4´)、配置工程(ステップS3´)であってもよい。何れも、その操作性の良い条件に設定すればよい。
他の
図1(b)の動作は、
図1(a)と同じであるからその説明を省略する。
【0053】
例えば、
図5(a)に示す実施の形態では、平板状のオイルパーム成型体を得るものであるから、
図5(a)の下金型10Bに対して数mm以下の水を入れ、かつ、ステップS3の配置工程で配置したオイルパーム材W2,W3,W4の表面にはスプレーで水滴を噴霧してもよいし、刷毛で水を塗布してもよい。また、外部で配置するオイルパーム材W2,W3,W4の両面を加湿Gしてもよい。
即ち、加湿工程は、ステップS2の乾燥工程の後、配置工程または加湿工程の何れかを先行して行えばよい。なお、上金型10Aと下金型10Bに配設されている配管11及び配管12は、高温の水蒸気を通過させる管路である。しかし、上金型10Aと下金型10Bに加える温度は加熱水蒸気であっても、ヒータ加熱でもよい。勿論、金型内は高い水蒸気圧とする必要がある。
【0054】
ステップS5の加熱圧縮工程は、オイルパーム材Wの圧縮力Pを加える方向に対して垂直方向に伸びる、即ち、圧縮力Pを加える方向に対して直角方向に広がるのを規制しながら、上金型10Aと下金型10Bとでオイルパーム材Wの面に対して直角方向の圧縮力を加え、所定時間加熱圧縮して圧密化の圧縮をなすものである。
図5のオイルパーム材W2,W3,W4で例示すれば、下金型10Bの両側の側壁10B1によって、オイルパーム材W2,W3,W4の圧縮力Pを加える方向に対して直角方向に伸び、広がるのを規制しながら、上金型10Aと下金型10Bとでオイルパーム材Wの面に対して平行方向の圧縮力を加えている。
【0055】
ステップS5の加熱圧縮工程は、オイルパーム材W2,W3,W4の圧縮力Pを加えるのみならず、オイルパーム材W2,W3,W4を加熱する温度及び湿度を付与している。この加熱温度は、110℃〜170℃の範囲内としたもので、圧密加工における固定化不良や木材間の接合不良、また、表面炭化、材質強度の低化等の材質劣化を防止している。そして、加熱圧縮工程による所定の圧縮圧力Pは、1〜100kg/cm
2の範囲内としたものであるから、圧密加工における固定化不良や木材間の接合不良、また表面クラックの発生を防止することができる。この加熱圧縮工程に要する時間は、10分間〜120分間の範囲内であることから、圧密加工における固定化不良や木材間の接合不良、表面の炭化を防止できる。
【0056】
次に、ステップS6の固定化工程は、ステップS5の加熱圧縮工程で所定時間加熱圧縮したオイルパーム材W2,W3,W4の温度を、圧縮圧力Pを加えた状態で徐々に降下させて冷却し、オイルパーム材W2,W3,W4の圧縮状態を固定化させるものである。ステップS6の固定化は、所定時間加熱圧縮したオイルパーム材W2,W3,W4は外力の解除で若干復元しようとして、押圧状態よりも膨張(弾性変化)するから、パーティション等のオイルパーム成型体を金属板で挟む場合には、その変化量も考慮した圧密加工が必要となる。
【0057】
このようにして得られたのがオイルパーム成型体Hである。本実施の形態のオイルパーム成型体は、上側の表面を表層Na、下側の表面を裏層Nbとすると、表層Na及び裏層Nbが共に5mm以下の位置で3mm角の試料を採取し、その表層Naと裏層Nbを含む全体の比重を比較すると、表層Naと裏層Nbの単純平均(Na+Nb)/2による平均比重が0.62、全体の比重が0.52であった。このとき、表層Naと裏層Nbの中間位置でも3mm角の試料を採取し、測定したところ、比重0.4以下であった。
【0058】
即ち、オイルパーム成型体Hの全体の比重に対し、表層Naと裏層Nbの中間位置の比重に対し、表層Naと裏層Nbの比重、即ち、密度を高くすることができる。発明者らの実験によれば、表層Na及び裏層Nbの比重が0.6以上であれば、オイルパーム材Wの樹幹を直接切り出して使用しても、オイルパーム材Wの表面から柔細胞の剥がれ落ちるのを防止でき、かつ、所望の全体比重の成型体を得ることができる。
特に、表層Na及び裏層Nbの密度は、加湿Gによるオイルパーム材Wの部分的な柔軟性の変化に繋がるスプレーによる水滴の噴霧量及び噴霧時間、浸漬する水の深さ及び時間によって密度(比重)が変化する。また、圧縮力Pの速度を速くすると表層Na及び裏層Nbの密度を上げることができる。
【0059】
図4は1枚物のオイルパーム材Wを用いてオイルパーム成型体Hを形成するものであるが、
図5(a)の場合のように、複数枚のオイルパーム材W2,W3,W4を接続して幅広にすることができる。同様に、厚みを増すこともできる。
更に、
図5乃至
図7について詳述する。
図5において、下金型10Bの両側の側壁10B1は、成型しようとするオイルパーム成型体のシルエットラインに沿って形成されており、各オイルパーム材W2とオイルパーム材W3の間、各オイルパーム材W3とオイルパーム材W4との間は、接合を目的とする端部であるから、ここには、下金型10Bの両側の側壁10B1を形成していない。
なお、
図5(a)では、下金型10Bのみ側壁10B1を形成しているが、上金型10Aのみに形成してもよいし、上金型10A及び下金型10Bに形成してもよい。このとき、下金型10Bの両側の側壁10B1に対向する上金型10Aは平板であってもよいし、嵌合する凸状であってもよい。
【0060】
また、オイルパーム材W2とオイルパーム材W3の間、オイルパーム材W3とオイルパーム材W4との間は、接合を目的とする端部であるから、その端部形状は、
図7(a)に示すように、オイルパーム材W2とオイルパーム材W3の圧縮力Pの圧力面に対して垂直接合Y1とするものである。この場合には、オイルパーム成型体Hとして垂直接合Y1の部位に折れ曲がる外力が加わらないものに使用される。
図7(b)に示すものでは、オイルパーム材W2とオイルパーム材W3の圧縮圧力面に対して傾斜接合Y2とするものである。この場合には、オイルパーム成型体Hとして垂直接合Y2の部位に折れ曲がる外力が加わるものに対しても使用が好適である。特に、傾斜接合Y2の幅以内の湾曲に対応させるのに好適である。
【0061】
また、
図7(c)に示すものでは、オイルパーム材W2とオイルパーム材W3、オイルパーム材W3とオイルパーム材W4との圧縮力Pの圧力面に対して階段状接合Y3とするものである。階段状接合Y3は圧縮力Pに対して平行な垂直端面y1及び垂直端面y3と、圧縮力Pに対して直角な水平端面y2からなっている。この実施の形態では、オイルパーム成型体として垂直接合Y3の部位に折れ曲がる外力が加わるものに対して、階段状接合Y3が完全に一体化されていなくても使用が好適である。特に、傾斜接合Y3の幅以内の湾曲に対応させるのに好適である。
そして、
図7(d)に示すものでは、オイルパーム材W2とオイルパーム材W3、オイルパーム材W3とオイルパーム材W4との圧縮圧力面に対して階段傾斜状接合Y4とするものである。階段傾斜状接合Y4は圧縮力Pに対して平行な垂直端面y4及び垂直端面y6と、圧縮力Pに対して直角に近い傾斜端面y5からなっている。この実施の形態では、オイルパーム成型体として垂直接合Y3の部位に折れ曲がる外力が加わるものに対して、階段状接合Y4が完全に一体化されていなくても使用が好適である。特に、傾斜接合Y4の幅以内の湾曲に対応させるのに好適である。
【0062】
一方、
図5(b)は湾曲したオイルパーム成型体に関する技術を紹介するものである。
オイルパーム材W2とオイルパーム材W3を垂直接合Y1の状態で所定時間加熱圧縮すると、上金型10A及び下金型10Bの曲率より接合力が弱い場合が生ずる。勿論、圧縮率が大きいときには、問題のない接合ができることは言うまでもない。
例えば、オイルパーム成型体の表層Na及び裏層Nbが、その表層Naと裏層Nbを含む全体の比重と比較して、表層Naと裏層Nbの単純平均(Na+Nb)/2による平均比重との差が大きくできない場合で、圧縮率が小さい場合には、垂直接合Y1の接合が弱い可能性がある。
そのような事例の場合には、
図6に示された本実施の形態のオイルパーム成型体の使用が可能である。
【0063】
[実施の形態2]
図6は同一厚さによる波状のように凹凸面がある場合、例えば、
図6(c)に示すように、上に凸の位置でオイルパーム材W2とオイルパーム材W3との接続部分があり、それを
図6(c)のように上金型10Aと下金型10Bで処理するとき、オイルパーム材W2とオイルパーム材W3の接続部の上面側が開く方向の力が働き、成型後のオイルパーム成型体のオイルパーム材W2とオイルパーム材W3の接続部にクラックが入ったり、接合が甘かったりする。そこで、本実施の形態では、まず、仮接続工程を設けている。
【0064】
仮接続工程では、目的の圧縮率に対して50〜70%程度の圧縮を行うものである。圧縮は
図6(a)に示すように、上仮金型20Aに垂直方向に立設した複数の補助金型A01を配設する。また、下仮金型20Bにも垂直方向に立設した複数の補助金型B01を配設する。補助材W01と補助材W02は、別の場所でオイルパーム材を50〜80%の圧縮率で圧密成型した成型板である。補助材W01及び補助材W02は、長方形状の板であり、厚みが厚いが、50〜80%の圧縮率で圧密加工したものであるから、比較的硬く、オイルパーム材W2,W3,W4をその上に重ねても、オイルパーム材W2,W3,W4側が変形しても、殆ど補助材W01と補助材W02は変形しない。即ち、オイルパーム材W2,W3,W4側が補助材W01と補助材W02の厚みを吸収することになる。
【0065】
上仮金型20Aに垂直方向に立設した複数の補助金型A01、下仮金型20Bに垂直方向に立設した複数の補助金型B01は、その太さでオイルパーム材W2,W3,W4を圧縮し、複数の補助金型A01及び補助金型B01に加えられた熱によって、部分的に圧密加工がなされ、圧縮されたオイルパーム材W2,W3,W4と補助材W01と補助材W02が接合する。この状態で加熱圧縮工程に入り、上仮金型20Aと下仮金型20Bを開き、ステップS14の仮接続工程で一体化したオイルパーム材W2,W3,W4と補助材W01及び補助材W02を取り出し、オイルパーム材W2,W3,W4の圧縮力Pを加える方向に対して垂直方向に伸びるのを側壁10B1で規制しながら、上金型10Aと下金型10Bとでオイルパーム材W2,W3,W4側の面に対して直角方向の圧縮力Pを加えて所定時間加熱圧縮して圧密化する。
【0066】
なお、オイルパーム材W2,W3,W4の上に凸の頂及び下に凸の頂に各補助材W01及び補助材W02を接合する場合について説明した。しかし、本発明を実施する場合には、オイルパーム材W2,W3,W4の上に凸の頂及び凹の底並びに下に凸の頂及び凹の底となる位置に、1対の補助材W01及び1対の補助材W02を配設し、仮接続工程で成型した成型体に表裏のない構造とすることもできる。
即ち、この仮接続工程は、配置工程で所定の位置に配置されたオイルパーム材Wに対して部分的に加熱圧縮して部分接続するものである。
したがって、オイルパーム材W2、W3、W4の上に凸の頂及び下に凸の頂に各補助材W01及び補助材W02を接合するという仮接続工程を設けることにより、複雑なオイルパーム成型体を金型で成型することができる。
【0067】
この仮接続工程を組み込んだ本実施の形態2のオイルパーム成型体の成型方法は、
図2に示されるように行われる。
ステップS11の材料形成工程で、オイルパーム幹WDを所定の厚みの板材を製材する。ステップS12の乾燥工程では、ステップS11の材料形成工程で形成したオイルパーム材Wを乾燥する。この乾燥工程では、オイルパーム材Wの含水率を5%〜30%の範囲内に乾燥するものであり、乾燥状態とすることにより、所定の乾燥室で保存可能となる。次いで、所定の面積、所定の厚みのオイルパーム材Wを下金型10Bに配置するステップS13の配置工程を行う。
【0068】
ステップS3の配置工程で、成型しようとするオイルパーム成型体の形状によって異なるが、金型に1枚または複数枚のオイルパーム材Wを配置する。この配置工程は、下金型10Bまたは上金型10Aの一方または両方に示すオイルパーム材Wに圧縮力Pを加える方向に対して直角方向に伸び、広がるのを側壁10B1で規制しながら圧縮する機能の存在を示唆するものであるが、得ようとするオイルパーム成型体が凹凸変化に富む形状であると、成型体が良好な状態で一体化されているかが不明となる。そこで、ステップS14では、ステップS13の配置工程で所定の位置に配置されたオイルパーム材Wに対して、例えば、オイルパーム材W2、W3、W4の上に凸の頂及び下に凸の頂に各補助材W01及び補助材W02を接合する部分的に加熱圧縮して部分接続する仮接続工程を行う。この仮接続工程によって本成型を容易にするものである。
なお、この仮接続工程はステップS16の加熱圧縮工程の特定湿度条件下での加熱及び加圧条件と同一または略同一であり、相違するのは、部分的に圧縮力Pを加えて接合する点にある。したがって、部分的に圧縮力Pを加えて接合する部位以外は、圧縮力Pを加えていない。
【0069】
ステップS14の仮接続工程で所定の位置に配置されたオイルパーム材Wに対して、圧縮力Pを加える方向の両面を水に浸漬するか或いはスプレーすることにより加湿GするステップS15の加湿工程を行う。次に、ステップS16の加熱圧縮工程で、オイルパーム材Wの圧縮力Pを加える方向に対して垂直方向に伸びる、即ち、圧縮力Pを加える方向に対して直角方向に広がるのを側壁10B1で規制しながら、上金型10Aと下金型10Bとでオイルパーム材Wの面に対して直角方向の圧縮力を加え、所定時間加熱圧縮して圧密化の圧縮をなす。
【0070】
ステップS16の加熱圧縮工程は、オイルパーム材W2,W3,W4の圧縮力Pを加えるのみならず、オイルパーム材W2,W3,W4を加熱する温度及び湿度を付与している。この加熱温度は、110℃〜170℃の範囲内としたもので、圧密加工における固定化不良や木材間の接合不良、また、表面炭化、材質強度の低化等の材質劣化を防止している。そして、加熱圧縮工程による所定の圧縮圧力Pは、1〜100kg/cm2の範囲内としたものであるから、圧密加工における固定化不良や木材間の接合不良、また表面クラックの発生を防止することができる。この加熱圧縮工程に要する時間は、10分間〜120分間の範囲内であることから、圧密加工における固定化不良や木材間の接合不良、表面の炭化を防止できる。
【0071】
次に、ステップS17の固定化工程は、ステップS16の加熱圧縮工程で所定時間加熱圧縮したオイルパーム材W2,W3,W4の温度を、圧縮力Pを加えた状態で徐々に降下させて冷却し、オイルパーム材W2,W3,W4の圧縮状態を固定化させるものである。ステップS6及びステップS17の固定化は、所定時間加熱圧縮したオイルパーム材W2,W3,W4は圧縮力Pの解除で弾性により若干復元しようとして、押圧状態よりも膨張するから、パーティション等のオイルパーム成型体を金属板で挟む場合には、その変化量も考慮した圧密加工が必要となる。
【0072】
このようにして得られたのがオイルパーム成型体である。本実施の形態のオイルパーム成型体は、所定長のオイルパーム材Wに圧縮力Pを加える方向に対する垂直方向の伸びを規制しながら、オイルパーム材Wに圧縮力を加え、その後、前記圧縮状態を維持し、温度を低下させて圧密化してなるオイルパーム成型体において、オイルパーム材Wの圧縮方向の両面側の密度が、オイルパーム材Wの圧縮方向の中心部の密度よりも高くなっている構成を有している。
【0073】
即ち、オイルパーム成型体の全体の比重に対し、表層Naと裏層Nbの中間位置の比重に対し、表層Naと裏層Nbの比重、即ち、密度を高くすることができる。したがって、オイルパーム材Wの樹幹を直接切り出して使用しても、オイルパーム材Wの表面から柔細胞の剥がれ落ちを防止でき、かつ、所望の全体比重の成型体を得ることができる。
特に、表層Na及び裏層Nbの密度は、加湿Gによるオイルパーム材Wの部分的な柔軟性の変化に繋がるスプレーによる水滴の噴霧量及び噴霧時間、浸漬する水の深さ及び時間によって密度(比重)が調整できる。また、圧縮圧力Pの速度を変化させても、表層Na及び裏層Nbの密度を調整できる。
【0074】
図8は厚みを一定としたオイルパーム成型体Hの事例で、オイルパーム材Wの表裏を加湿Gし、その状態で上に凹の凹部EQ、下に凸の凸部ER、平面部EPを同一の厚みで形成したものである。このオイルパーム成型体Hにおいても、表層Naと裏層Nbは、表層Naと裏層Nbの比重、即ち、密度を中間位置Ncよりも高くすることができる。平面部EPから下に凸の凸部ERまでの厚みが、オイルパーム成型体Hの厚みとなる。
【0075】
図8では上に凹の凹部EQ、下に凸の凸部ER、平面部EPを単一の厚みで形成したものであるが、2枚を接合すると空間EOを形成することができる。両者の接合は、凹部EQ相互に対して加熱及び加圧することで両者は軟化し、接合することができる。
即ち、下に凸の凸部ER相互を圧力及び加熱によって接合すると、
図8のオイルパーム成型体Hで形成した平面部EPから下に凸の凸部ERまでの厚みの2倍の厚みのオイルパーム成型体Hが得られる。この一対のオイルパーム成型体Hでは、空間EQを平面部EPから下に凸の凸部ERの対向面によって形成できるから、断熱効果を得る場合の材料に好適となる。
【0076】
図10は厚みを異ならせたオイルパーム成型体Hの事例で、オイルパーム材Wの表裏を加湿Gし、その状態で下に凸の凸部ER、上面の全体を平面とした平面部EPで構成したものである。このオイルパーム成型体Hにおいても、表層Naと裏層Nbは、表層Naと裏層Nbの比重、即ち、密度を中間位置Ncよりも高くすることができる。平面部EPから下に凸の凸部ERまでの厚みが、オイルパーム成型体Hの厚みとなる。
図11も厚みを異ならせたオイルパーム成型体Hの事例で、オイルパーム材Wの表裏を加湿Gし、その状態で上に凹の凹部EQ、上面を平面とした平面部EP、下に凹の凹部EQで構成したものである。このオイルパーム成型体Hにおいても、表層Naと裏層Nbは、表層Naと裏層Nbの比重、即ち、密度を中間位置Ncよりも高くすることができる。上の面の平面部EPから下の面の平面部EPまでの厚みが、オイルパーム成型体Hの厚みとなる。
【0077】
なお、
図11のように上に凹の凹部EQと下に凹の凹部EQを形成し、上に凹の凹部EQと下に凹の凹部EQで挟まれた位置では圧縮率が大きくなり、強靭に一体化される。したがって、
図6(a)に示すように、オイルパーム材W2とオイルパーム材W3との接合、オイルパーム材W3とオイルパーム材W4との接合を図示の金型で行うこともできる。
図11のオイルパーム成型体Hと
図10のオイルパーム成型体Hの厚みが同一であれば、凹部EQの深さを1/2にすることができ、無理のない成型ができる。
【0078】
以上のように、上記実施の形態のオイルパーム成型体Hは、1枚以上の所定長のオイルパーム材Wに圧縮力を加える方向に対する垂直方向の伸びを規制しながら、オイルパーム材Wに圧縮力を加え、前記圧縮を維持し、温度を低下させて圧密化してなるオイルパーム成型体Hにおいて、オイルパーム材Wの圧縮方向の両面側の密度が、オイルパーム材Wの圧縮方向の中心部の密度よりも高くなっているものである。
なお、表層Naと裏層Nbの比重は、中間位置Ncよりも高くすることができればよく、その厚みを問題とするものではない。少なくとも、表面の比重が中間位置Ncよりも高くするものであればよい。また、表層Naと裏層Nbの2面を加湿Gすることを前提として説明したが、本発明を実施する場合には、何れか1面のみとすることもできる。
【0079】
このように、所定のオイルパーム材Wを高温度及び高湿度中で圧縮力を加えて圧縮変形させるとき、圧縮力を加える両面に対して予め水分を含ませることによって、圧密化する圧縮力により変位し易くして圧密化したものであるから、オイルパーム材W自体が所望の形状に成型でき、表面及び裏面の構造を緻密化でき、オイルパーム材Wを直接切り出して使用しても、オイルパーム材Wの表面の合成樹脂によるコーティング処理を行うことなく、柔細胞の剥がれ落ちを防止できる。また、表面及び裏面の構造を緻密化できるが、その間のオイルパーム材Wは圧縮率を低減して低くできるから、用途によって合成樹脂の発泡体の有する断熱効果、遮音効果、防振効果を得ることができる。また、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒド系接着剤を使用しないから、オイルパームが本来的に有している成分を利用した環境にやさしいオイルパーム成型体Hが得られる。
【0080】
本実施の形態のオイルパーム材Wは、金型によって平面部EP、凹部EQ、凸部ERのいずれか1つ以上を形成したものであるから、簡単にオイルパーム成型体Hが得られる。
また、オイルパーム材Wに形成した平面部EP、凹部EQまたは凸部ERは、他の平面部と同一の厚みに形成したものであるから、積層されたオイルパーム材Wの厚みが均一であり、機械的強度も強くなる。また、成型体全体に無理がかからない。
そして、オイルパーム材Wに形成した表面及び/または裏面の、凹部EQは、その位置が大きな圧縮力で圧縮され、オイルパーム材Wと異なるオイルパーム材Wで接合し一体化したものであるから、オイルパーム材Wに形成した表面及び裏面の、凹部EQは、そこで、前記複数枚積層したオイルパーム材Wを一体に固定するものであるから、平面部EP、の圧縮に左右されない接合が可能になり、そこだけで一体化できるから、緩衝剤、断熱材等としての使用が可能となる。
【0081】
本実施の形態のオイルパーム成型体の成型方法は、所定長のオイルパーム幹WDを所定厚のオイルパーム材Wに形成するステップS1、ステップS11からなる材料形成工程と、ステップS1、ステップS11からなる材料形成工程で形成したオイルパーム材Wを乾燥するステップS2、ステップS12からなる乾燥工程と、ステップS2、ステップS12からなる乾燥工程で乾燥させたオイルパーム材Wを所定の配置状態に配置するステップS3、ステップS13からなる配置工程と、オイルパーム材Wに対して圧縮力Pを加える方向の両面を加湿GするステップS4、ステップS15からなる加湿工程と、オイルパーム材Wの圧縮力Pを加える方向に対して垂直方向に伸びるのを規制しながら、上金型10Aと下金型10Bとでオイルパーム材Wの面に対して直角方向の圧縮力を加えて所定時間加熱圧縮して圧密化するステップS5、ステップS16からなる加熱圧縮工程と、ステップS5、ステップS16からなる加熱圧縮工程で所定時間加熱圧縮したオイルパーム材Wの温度を降下させて冷却し、固定化させるステップS6、ステップS17からなる固定化工程を具備するものである。
【0082】
本実施の形態のオイルパーム成型体の製造方法は、所定長のオイルパーム幹WDを所定厚のオイルパーム材Wに形成し、形成したオイルパーム材Wを乾燥し、乾燥させたオイルパーム材Wを所定の配置状態に配置し、所定の位置に配置されたオイルパーム材Wに対して圧縮力Pを加える方向の両面を加湿Gし、オイルパーム材Wの圧縮力Pを加える方向に対して垂直方向に伸びるのを規制しながら、上金型10Aと下金型10Bとでオイルパーム材Wの面に対して直角方向の圧縮力Pを加えてステップS5、ステップS16で所定時間加熱圧縮して圧密化し、ステップS6、ステップS17で所定時間加熱圧縮したオイルパーム材Wの温度を降下させて冷却し、固定化させるものであるから、特に、水蒸気によって複数枚のオイルパーム材Wを加熱すると、リグニン等の樹脂成分及びセルロース、ヘミセルロース等の糖類とが、軟化し結合するからステップS6、ステップS17からなる固定化工程によって、堅固なオイルパーム成型体Hが得られる。
【0083】
このとき、ステップS3、ステップS13からなる配置工程は成型する金型に応じて異なった配置の形態となり、特定形状の板材を配置して形成すればよい。また、ステップS4、ステップS15からなる加湿工程によってステップS3、ステップS13からなる配置工程で所定の位置に配置されたオイルパーム材Wに対して圧縮力Pを加える方向の表面及び裏面の両面を加湿Gし、オイルパーム材Wの両側に高密度の層を形成するものであるから、加湿Gする広さ及び深さによって任意の密度の成型体とすることができる。特に、加湿Gする面を片側のみとすることもできる。通常は、一方の金型に配置し、その状態で露出面をスプレー等で加湿Gし、金型を変えて、他方の面もスプレー等で加湿Gしている。勿論、平坦な金型であれば、一方の金型に1mm程度の深さに水を張ってもよい。
【0084】
また、オイルパーム材Wは、オイルパーム材Wの面に対して平行方向に伸びるのを規制しながら、上金型10Aと下金型10Bとでオイルパーム材Wの面に対して直角方向の圧縮力を加えて所定時間圧縮成型するものであるから、オイルパーム材Wの面積が拡大されることなく、圧縮成型でき、所望の立体形状であり、かつ、所望の外径のオイルパーム成型体Hが得られる。特に、金型からは、加熱圧縮工程で供給していた温度を降下させて冷却し、固定化させるものであるから、オイルパーム成型体Hが取り出し易い。
したがって、オイルパーム材Wに圧力を加えて形成したオイルパーム成型体Hが所望の形状に成型でき、また、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒド系接着剤を使用せず、オイルパームが本来的に有している成分を利用した環境にやさしいオイルパーム成型体Hが得られる。
【0085】
本実施の形態のオイルパーム成型体の
成型方法は、所定長のオイルパーム幹WDを所定厚のオイルパーム材に形成するステップS11からなる材料形成工程と、ステップS11からなる材料形成工程で形成したオイルパーム材Wを乾燥するステップS12からなる乾燥工程と、ステップS12からなる乾燥工程で乾燥させたオイルパーム材Wを所定の配置状態に配置するステップS13からなる配置工程と、ステップS13からなる配置工程で所定の位置に配置されたオイルパーム材Wに対して部分的に加熱圧縮して部分接続するステップS14からなる仮接続工程と、オイルパーム材Wに対して圧縮力Pを加える方向の両面を加湿GするステップS15からなる加湿工程と、オイルパーム材Wの圧縮力Pを加える方向に対して垂直方向に伸びるのを規制しながら、上金型10Aと下金型10Bとでオイルパーム材Wの面に対して直角方向の圧縮力を加えて所定時間加熱圧縮して圧密化するステップS16からなる加熱圧縮工程と、ステップS16からなる加熱圧縮工程で所定時間加熱圧縮したオイルパーム材Wの温度を降下させて冷却し、固定化させるステップS17からなる固定化工程を具備するものである。
【0086】
このオイルパーム成型体の製造方法は、ステップS11からなる材料形成工程、ステップS12からなる乾燥工程、ステップS13からなる配置工程、ステップS14からなる仮接続工程、ステップS15からなる加湿工程、ステップS16からなる加熱圧縮工程、ステップS17からなる固定化工程を有し、所定長のオイルパーム幹WDを所定厚のオイルパーム材Wに形成し、形成したオイルパーム材Wを乾燥し、乾燥させたオイルパーム材Wを所定の配置状態に配置し、ステップS14からなる仮接続工程でステップS13からなる配置工程で所定の位置に配置されたオイルパーム材Wに対して部分的に加熱圧縮して部分接続し、所定の位置に配置されたオイルパーム材Wに対して圧縮力を加える方向の両面を加湿Gし、オイルパーム材Wの圧縮力を加える方向に対して垂直方向に伸びるのを規制しながら、上金型10Aと下金型10Bとでオイルパーム材Wの面に対して直角方向の圧縮力を加えて所定時間加熱圧縮して圧密化し、所定時間加熱圧縮したオイルパーム材Wの温度を降下させて冷却し、固定化させるものであるから、特に、水蒸気によって複数枚のオイルパーム材Wを加熱すると、リグニン等の樹脂成分及びセルロース、ヘミセルロース等の糖類とが、軟化し結合するからステップS17からなる固定化工程によって、堅固なオイルパーム成型体Hが得られる。
【0087】
特に、オイルパーム材Wの温度をステップS16からなる加熱圧縮工程で上昇させるべく加熱し、ステップS16からなる加熱圧縮工程で加熱されたオイルパーム材Wの面に対して平行方向に延びるのを規制しながら、オイルパーム材Wの面に対して直角方向の圧縮力を加えて所定時間圧縮するものであるから、ステップS16からなる加熱圧縮工程で付与される圧縮力Pがオイルパーム材Wの面に対して平行方向に逃げるという延びが制限され、全ての圧縮力Pがオイルパーム材Wに有効的に使用され、かつ、オイルパーム材Wの外形寸法を均一にすることができる。
よって、オイルパーム材Wが含有する樹脂成分及び糖成分の使用割合を多くし、自然物で接合したオイルパーム成型体Hが得られ、使用する材料のロスが少なくコストを抑え、また、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒド系接着剤を使用せず、オイルパームが本来的に有している成分を利用したオイルパーム成型体Hが得られる。
【0088】
そして、オイルパーム幹WD自体が含有する樹脂成分及び糖成分によって接合してオイルパーム成型体Hを形成するものであり、他の合成樹脂、合成ゴムを接着材として使用していないから、自然に戻すことができ公害問題を引き起こすことがない。更に、オイルパーム幹WD自体が含有する樹脂成分及び糖成分によって接合されるときの圧縮力によって、オイルパーム材Wの空隙が殆どなくなり、緻密な組織になるから、耐水性があり、かつ、防水、防虫性に富み、建築材料として使用しても耐用年数が長くなる。
よって、オイルパーム材Wが含有する樹脂成分及び糖成分を使用し、自然物で接合したオイルパーム成型体Hが得られ、使用する材料のロスが少なくコストを抑え、また、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒド系接着剤を使用することなく、オイルパーム材Wが本来的に有している成分を利用したオイルパーム成型体Hが得られる。
【0089】
上記実施の形態は、オイルパーム成型体Hを形成するのが幅方向に並べて併設されるオイルパーム材W2,W3,W4について説明したが、本発明を実施する場合には、オイルパーム材Wを上下に2枚以上重ねても実施できる。
また、上記実施の形態では、加湿Gの層を水に浸漬させることにより、水を含浸させたり、スプレーで噴射したりして形成するが、本発明を実施する場合には、何れの方法によって加湿Gの層を形成してもよい。例えば、オイルパーム材Wを脱気した状態で水を含浸させてもよいし、所定の時間だけスチームをオイルパーム材Wに噴射させてもよい。何れにせよ、オイルパーム材Wの1面のみまたは2面が加湿Gされればよい。
【0090】
本実施の形態のオイルパーム成型体Hは、簡易に室内を区画するパーティションとして使用できる他、机または室内装飾のパネル、車両においては車体本体の内側に配設し、ドア等の板金の内部に配設し、断熱材として、防音材として、補強材として使用できる。
特に、本実施の形態のオイルパーム成型体Hは、内部に空気層を含むものであるから、中実のものよりも軽量化できるから、住宅の壁材として使用すると省エネ設計ができる。また、船舶等の内装材料として使用すると、その浮力によって室内装飾品が容易に沈み込むことがない。
【0091】
本実施の形態のオイルパーム成型体Hは、表層Na及び裏層Nb及び中間位置Ncの全体の圧密加工により、更に、中間位置Ncよりも表層Na及び裏層Nbの圧縮率を上げることについて説明したが、加湿面を特定することにより、圧縮率を上げるのを表層Naまたは裏層Nbの一方のみとすることができる。また、表層Na及び裏層Nbの加湿時間を変化させることにより、両表層Naと裏層Nbの圧縮率を変化させることができる。同様に、表層Na及び裏層Nbの圧縮率を高くし、中間位置Ncの圧縮を殆どしない形態とすることもできる。