【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度独立行政法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1および2に記載された装置では、作業補助を行う肘や肩などの各関節に対して一つ以上のアクチュエータを配置するため重量が増しコストも高くなっていた。
また、複数のアクチュエータを適切に制御することが必要となり、ハード面においても装着者に身体的な危害が加わらないように十分に安全性を考慮した設計とすることが不可欠であった。
【0005】
本発明は上記課題を解決するのもので、一つのアクチュエータで装着者の上腕と前腕の作業補助を行うことができるとともに、構造的に装着者の安全性を高めた上肢補助装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、装着者の上肢を上げての作業を補助する上肢補助装置であって、装着者に装着され、装着者の肩部付近に位置する肩フレームを有する装着部と、前記肩フレームに軸支され、装着者の上腕と前腕を支持するリンク機構で構成された上肢支持リンクと、この上肢支持リンクに動力を供給して装着者の上肢を上下させる一つのモータ手段と、このモータ手段から前記上肢支持リンクへの動力伝達経路に設けたウォームギヤ機構と、装着者に操作される操作手段と、この操作手段からの操作信号に基づいて前記モータ手段を駆動させる制御装置と、を備えた上肢補助装置とした。
ウォームギヤ機構は、ウォームとウォームホイールからなり、モータ手段の回転軸にウォームが取り付けられる。また、上腕補助装置によって装着者の上肢を上下させると、手首の位置に相当する部分が円弧状の軌跡をたどるように上腕補助装置を構成することが好ましい。
【0007】
この上肢補助装置は、上肢支持リンクを用い、これを一つのモータ手段によって動作させるものであり、比較的シンプルな構造で、軽量化や低コスト化しやすい。
また、上肢支持リンクがリンク機構で構成されているため限定された動きとなり、構造的に装着者の安全性を高めた上肢補助装置となる。
さらに、装着者が上肢を上げた状態で脱力すると、腕の自重が上肢支持リンクに作用して、モータ手段がトルク負けしてしまい、上肢が下がってしまう場合があった。そのため、従来はラチェット機構等を用いて保持していたが、解除時の作業が必要になるなど、作業者への負担が大きくなりがちであった。今回提案する上肢補助装置は、モータ手段から上肢支持リンクへの動力伝達経路にウォームギヤ機構が設けてあるため、ウォームギヤ機構がセルフロック機能を発揮し、モータ手段が停止している場合であっても装着者の上肢を上げた状態を保持することができ、ラチェット機構を用いた場合のような解除作業も不要となる。
換言すると、上肢支持リンクの位置保持がウォームギヤ機構のセルフロック機能によりなされているため、位置保持するためにエネルギーを消費しない一方、位置を変更する場合だけモータ手段を駆動して任意の位置に変更できるという特徴を有した上肢補助装置を実現することができるのである。
【0008】
上肢支持リンク(3)は、具体的には、肩フレーム(23)に長手方向中間部で軸支され、この軸支された箇所から前方側の部分が上腕に沿って上腕を支持する上腕支持部(311)を構成する第一上腕リンク(31)と、この第一上腕リンク(31)の先端に設けた第一連結軸(41)と、この第一連結軸(41)に長手方向中間部で連結され、この連結箇所から上方側の部分が前腕に沿って前腕を支持する前腕支持部(321)を構成する前腕リンク(32)と、この前腕リンク(32)の下端に設けた第二連結軸(42)と、この第二連結軸(42)に一端が連結され、前記第一上腕リンク(31)と概ね同じ長さで、前記第一上腕リンク(31)に平行な、前記第一上腕リンク(31)の下方に位置する第二上腕リンク(33)と、この第二上腕リンク(33)の他端に設けた第三連結軸(43)と、この第三連結軸(43)に一端が連結され、前記前腕リンク(32)における前記第一連結軸(41)との連結箇所より下方側の部分と概ね同じ長さで、前記前腕リンク(32)に平行な、第三上腕リンク(34)と、この第三上腕リンク(34)の他端と前記第一上腕リンク(31)の後端とを連結する第四連結軸(44)と、前記第三連結軸(43)に一端が連結され、ウォームホイール(52)の回転軸(520)に他端が固定された動力伝達リンク(30)と、を備えた、上肢補助装置とすることができる。
【0009】
このとき、第一上腕リンク(31)および第二上腕リンク(33)を水平にした状態において、
ウォームホイールの回転軸(520)が、第三上腕リンク(34)よりも後方位置で、第二上腕リンク(33)の水平ラインよりも上方、かつ第一上腕リンク(31)の水平ラインよりも下方に位置するように構成した、上肢補助装置とすることができる。
【0010】
この上肢補助装置は、基本姿勢から上肢を上げる方向にモータ手段を回転させると、手首の位置に相当する前腕リンクの先端部分が、上方に移動するに従って前方にシフトするような円弧状の軌跡をたどるため、人間が上肢を上げる動作をほぼ実現でき、ぶどう栽培などの果樹栽培における上肢を上げての作業に特に適している。
【0011】
またこのとき、第一上腕リンク(31)の上腕支持部(311)と第二上腕リンク(33)とが長さ調整自在に構成されている、上肢補助装置とすることもできる。
【0012】
この上肢補助装置は、装着者の上腕の長さに合わせて上肢支持リンクを調節することができるものであり、汎用性が高い。
【0013】
操作手段は、装着者の手首を手の甲側に曲げた状態を検知する検知手段によって構成されている、上肢補助装置とすることもできる。
【0014】
このとき、検知手段は、装着者の手首付近に装着される手首装着部と、この手首装着部の左右から装着者の手の甲の上方に向って斜めに延びるとともに、先端部側に行くに従い互いの距離が拡がる左右のベースプレートと、これら左右のベースプレートの内側面で前記手首装着部寄りの位置に枢支された左右の補助プレートと、これら左右の補助プレートの先端部と前記左右のベースプレートの先端部の間に取り付けた左右の弾性手段と、前記左右の補助プレートが枢支された箇所に沿って前記左右のベースプレートにそれぞれ設けられた貫通孔を貫通して、前記補助プレートと前記ベースプレートを跨ぐように取り付けられた左右の曲げセンサと、を備えた、上肢補助装置とすることもできる。
この検知手段は、装着者の手首を手の甲側に曲げると曲げセンサが屈曲するように構成されているものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、一つのアクチュエータで装着者の上腕と前腕の作業補助を行うことができるとともに、構造的に装着者の安全性を高めた上肢補助装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、上肢補助装置を例示説明する。上肢補助装置は、装着部と上肢支持リンクとウォームギヤ機構とモータ手段と操作手段と制御装置とを備える。これら各構成要素について、以下に例示説明する。なお、以降の説明で用いられる、前方、後方、上方、下方といった方向を示す表現は、
図1の左上に表示されているように、上肢補助装置を装着した装着者を基準とする方向を示したものである。また、上肢支持リンクを構成する各リンクはアルミ角材などを用いるが、各図においては太い直線で簡略表示してある。
【0018】
[装着部]
装着部2は装着者に装着されて、後述する上肢支持リンク3、ウォームギヤ機構5、モータ手段6などを支えるものである。そして、装着部2は、装着者の肩部付近に位置する肩フレーム23を有し、この肩フレーム23に設けた支持軸40に上肢支持リンク3が軸支されている。
【0019】
本実施形態において、装着部2は、装着者の背中部分から肩に亘るバックプレート21と、このバックプレート21の上端部から肩上部に沿うように前方に向かって円弧状に延びるフック手段22と、バックプレート21の左右から前方に延びて、装着者の肩部外側に位置する肩フレーム23と、バックプレート21の左右から後方に延びるバックフレーム24と、を備えている。肩フレーム23とバックフレーム24は別体としてもよいし、例えば、一枚の板材を用いて連続した構成としてもよい。また、肩フレーム23は、装着者の肩部に近接させて肩部の下に設けてもよい。
【0020】
本実施形態では、装着部2が、フック手段22によって装着者に装着されているが、しっかりと装着できるのであれば、これに限定されない。例えば、ランドセルの肩ベルトを模したものや、結束バンドを胸部に巻き付けて固定するなどしてもよい。
【0021】
[上肢支持リンク]
上肢支持リンク3は、装着者の上腕A1と前腕A2を支持するリンク機構で構成され、装着部2の肩フレーム23に軸支されている。上肢支持リンク3は、上肢の上げ下げに追従した動作をするように構成されている。
【0022】
この上肢支持リンク3は、四つのリンクを備えた、横長の平行リンクをベースにしたものである。そして、平行リンクを構成するリンクのうち前側のリンク(32)が、上方側に突出するように延長されている。この上方側に突出した部分が、前腕A2に沿って前腕A2を支持する前腕支持部321となる。一方、平行リンクを構成するリンクのうち上側のリンク(31)は、その長手方向中間部の後方寄りの位置で、肩フレーム23に設けた支持軸40に軸支されている。これによって上肢支持リンク3が肩フレーム23に軸支されることとなる。この支持軸40は、上肢補助装置1を装着した際に、肩関節に相当する位置となる。上側のリンク(31)のうち、支持軸40に軸支された箇所から前方側の部分が上腕に沿って上腕を支持する上腕支持部311となる。
【0023】
以下、上肢支持リンク3について詳細に説明する。肩フレーム23に設けた支持軸40には第一上腕リンク31が軸支(連結)されている。軸支箇所は、第一上腕リンク31の長手方向中間部の後方寄りの位置であり、第一上腕リンク31の先端から軸支箇所までの部分が上腕支持部311として上腕A1を支持することができるように、この部分の長さが、概ね、装着者の上腕A1の長さ(装着者の肩関節から肘関節の距離)となるような位置である。
また、上腕支持部311には、上腕を支持するための上腕支持手段(図示せず)が設けてある。例えば結束バンドで上腕A1を固定する手段や、上腕A1を載置等するテーブルを上腕支持部311に設けることができる。
そして、この第一上腕リンク31の先端には第一連結軸41が設けてある。この第一連結軸41は装着者の肘関節に相当する。
支持軸40から第一連結軸41までの距離(L311)は、装着者の上腕A1の長さと概ね等しく、通常は25〜35cmである。本実施形態では概ね31cmとした。
また、支持軸40から後述する第四連結軸44までの距離は、支持軸40から第一連結軸41までの距離(L311)の1/3程度とすることが好ましく、本実施形態では概ね10cmとした。
【0024】
第一連結軸41には、前腕リンク32が連結されている。連結箇所は、前腕リンク32の長手方向中間部の下方寄りの位置であり、前腕リンク32の上端から第一連結軸41の連結箇所までの部分が前腕支持部321として前腕A2を支持することができるように、この部分の長さが、概ね、装着者の前腕A2の長さ(装着者の手首付近から肘関節までの距離)となるような位置である。
前腕リンク32の上端から第一連結軸41の連結箇所までの部分の長さ(L321)は、装着者の前腕A2の長さと概ね等しいか、それよりも短く、通常は20〜30cmである。本実施形態では概ね28cmとした。
また、前腕支持部321には、前腕A2を支持するための前腕支持手段(図示せず)が設けてある。例えば結束バンドで前腕A2を固定する手段や、前腕A2を伸ばしたときに下方から支えるテーブルを前腕支持部321に設けることができる。
そして、この前腕リンク32の下端には第二連結軸42が設けてある。第一連結軸41から第二連結軸42までの距離は、前腕リンク32の上端から第一連結軸41の連結箇所までの部分の長さ(L321)の1/2〜1/3程度とすることが好ましく、本実施形態では概ね10cmとした。
【0025】
この第二連結軸42には、第二上腕リンク33の一端(前方端)が連結されている。第二上腕リンク33は、第一上腕リンク31と概ね同じ長さであり、第一上腕リンク31から間隔をおいて、第一上腕リンク31の下方に位置する。第二上腕リンク33は第一上腕リンク31に平行なリンクとなる。
そして、この第二上腕リンク33の他端(後方端)には第三連結軸43が設けてある。
【0026】
この第三連結軸43には、第三上腕リンク34の一端(下方端)が連結されている。第三上腕リンク34は、前腕リンク32における第一連結軸41との連結箇所より下方側の部分と概ね同じ長さである。第三上腕リンク34は、前腕リンク32に平行なリンクとなる。
そして、この第三上腕リンク34の他端(上方端)には第四連結軸44が設けてあり、この第四連結軸44によって、第三上腕リンク34の他端が第一上腕リンク31の後端に連結されている。
【0027】
そして、第三連結軸43には、動力伝達リンク30の一端(前方端)が連結されている。動力伝達リンク30の他端(後方端)は、後述するウォームホイール52の回転軸520に固定されており、ウォームホイール52が所定角度回転すると、動力伝達リンク30の一端(前方端)は円弧状の軌跡で運動する。動力伝達リンク30の長さによって、手首の位置に相当する前腕リンク32の先端の軌跡を微調整することができる。動力伝達リンク30の長さは、通常は15〜25cmである。本実施形態では概ね18cmとした。
【0028】
これらに加えて本実施形態の上肢支持リンク3では、補助リンク35を設けている。補助リンク35は第三上腕リンク34と概ね同じ長さであり、一端(上方端)が肩フレーム23に設けた支持軸40に軸支され、第三上腕リンク34と平行になるように、他端(下方端)が第二上腕リンク33の長手方向中間部の後方寄りの位置に、補助支持軸45によって連結されている。
【0029】
[ウォームギヤ機構]
ウォームギヤ機構5は、ウォーム51とウォームホイール52からなる。ウォームギヤ機構5は、モータ手段6(後述)から上肢支持リンク3への動力伝達経路に設ける。詳しくは、モータ手段6の回転軸にウォーム51を固定し、ウォーム51と係合するウォームホイール52の回転軸520に動力伝達リンク30の他端(後方端)を固定する。このような構成によって、上肢支持リンク3の位置保持が容易になる(セルフロック機能)。
【0030】
また、ウォームギヤ機構5は、それ自身が減速機構を有しているために、モータ手段に取り付けている減速機が不要となるか、又は取り付けるとしても減速比を小さくすることができるため、モータ手段等の小型化・軽量化・低コスト化を図ることができる。
【0031】
そして、上肢補助装置1を装着して起立姿勢をとり、第一上腕リンク31および第二上腕リンク33を水平にした状態(
図1に示す状態)において、ウォームホイール52は、ウォームホイール52の回転軸520が、第三上腕リンク34よりも後方位置で、第二上腕リンク33の水平ラインよりも上方、かつ第一上腕リンク31の水平ラインよりも下方に位置するように装着部2に取り付けられている。
このような構成によって、基本姿勢から上肢を上げる方向にモータ手段6を回転させると、手首の位置に相当する前腕リンク32の先端部分が、上方に移動するに従って前方にシフトするような円弧状の軌跡をたどる。
【0032】
ここで、ウォームホイール52の回転軸520が、第二上腕リンク33の水平ラインよりも下方にあると、手首の位置に相当する前腕リンク32の先端部分が、上方に移動するに従って後方(作業者側)にシフトするような円弧状の軌跡をたどるため、不自然な動作となり、作業上好ましくない。
また、ウォームホイール52の回転軸520が、第一上腕リンク31の水平ラインよりも上方にあると、手首の位置に相当する前腕リンク32の先端部分が、上方に移動するに従って極端に前方にシフトするような円弧状の軌跡をたどりがちとなるため、こちらも不自然な動作となり、作業上好ましくない。
【0033】
また、ウォームホイール52は、上肢支持リンク3と干渉しないように、特に第三連結軸43、第四連結軸44、第三上腕リンク34と干渉しないように、取り付ける必要がある。
【0034】
[モータ手段]
モータ手段6は、ウォームギヤ機構5を介して上肢支持リンク3に動力を供給して装着者の上肢を上下させるものである。本発明の上肢補助装置1では一つのモータ手段6を用いる。本実施形態では、モータ手段6が装着部2に取り付けられている。
モータ手段6としては、装着者の上腕A1と前腕A2を支持した状態で上肢支持リンク3を動作させるだけのトルクがあれば特に制限されない。本発明では、前述したウォームギヤ機構5を用いるため、静止トルクの大きなステッピングモータなどを用いる必要性に乏しく、専用のドライバ回路が不要となり安価で消費電力が小さな、一般的なDCモータを用いることが好ましい。
【0035】
[操作手段と制御装置]
操作手段は、モータ手段6を制御することを目的として、装着者等が操作するものである。一方、制御装置8は、操作手段からの操作信号に基づいてモータ手段6を駆動させるものである。そして、これら操作手段と制御装置8によって、モータ手段6の回転、反転、停止などが切り替えられることになる。
【0036】
操作手段としては、種々のものを用いることができる。しかし、基本的に上腕A1と前腕A2が上肢支持リンク3に支持されているため、操作手段を操作する動作は制限される。そのため、例えば、二個のスイッチそれぞれに、モータ手段6の回転、反転を割り当ててフットスイッチとして足下においたりすればよい。
【0037】
また、操作手段として、フットスイッチを用いるのでなく、プッシュスイッチを手首付近に装着しておき、反対側の手で操作するようにしてもよい。この場合、プッシュスイッチを操作する便宜から、前腕A2は、結束バンドで上腕支持部311に固定するよりも、上腕支持部311に設けたテーブルにのせるようにすることが好ましい。
【0038】
そして、制御装置8は、操作手段に対して行われた操作に応じて出力される操作信号に基づいてモータ手段6を駆動させる制御信号を生成する。例えば、モータ手段6の回転動作が割り当てられたスイッチが押された場合には、モータ手段6が時計方向に回転するように制御し、モータ手段6の反転動作が割り当てられたスイッチが押された場合には、モータ手段6が反時計方向に回転するように制御し、これらスイッチを押していない場合には、モータ手段6を停止(電力が供給されない)ように制御することができる。モータ手段を駆動させるための電源としては、上肢補助装置1に取り付けたバッテリーを用いる他、外部電源を引き込んで用いてもよい。
【0039】
また、操作手段として、装着者の手首を手の甲側に曲げた状態を検知する検知手段7を用いてもよい。
例えば、
図4と
図5に例示するような、手首装着部71とベースプレート72と補助プレート73と弾性手段74と曲げセンサ75とからなる検知手段7で操作手段を構成することができる。以下、これら各構成要素について、詳細に説明する。
【0040】
手首装着部71は、装着者の手首付近で手首の動きを阻害しにくい位置に装着される。例えば、面テープ等で手首付近に固定されるリストバンドのように構成すればよい。
左右のベースプレート72は、手首装着部71の左右からから装着者の手の甲の上方に向って斜め(前腕に対して概ね45度。40〜70度が好ましい)に延びるように構成される。そして、左右のベースプレート72は、先端部側に行くに従い互いの距離が拡がるように構成されている。
左右の補助プレート73は、左右のベースプレート72の内側(手側)に位置し、左右のベースプレート72の内側面で手首装着部71寄りの位置に枢支手段731で枢支されている。
弾性手段74は、左右の補助プレート73の先端部と左右のベースプレート72の先端部の間に挟み込まれるように取り付けられており、補助プレート73に応力がかかっていないときに、両者の間隔を一定に保つ働きを担っている。弾性手段74としては、バネなどを用いることができる。
左右の曲げセンサ75は、左右の補助プレート73が枢支された箇所に沿って左右のベースプレート72にそれぞれ設けられた貫通孔720を貫通して、補助プレート73とベースプレート72を跨ぐように取り付けられており、補助プレート73やベースプレート72に貼付などによって固定され、補助プレート73が折り曲げられると抵抗値が上昇等するようになっている。なお、貫通孔720を画する端縁のうち補助プレート73が枢支された箇所に沿う端縁部分は、その切り口が補助プレート73の長手方向に沿うように、ベースプレート72の表面に対して斜めに形成されている。
【0041】
このように構成された検知手段7を手首付近に装着し、例えば
図4に示す状態から手首を手の甲側に曲げると、左右の補助プレート73の間に手が入り込むことで補助プレート73が屈曲して曲げセンサ75の抵抗値が変化する。この抵抗値の変化を操作信号として制御装置8を動作させるのである。
例えば、検知手段7を左右両方の手首に装着して操作手段とし、一方の検知手段7を操作するとモータ手段6が回転し、他方の検知手段7を操作するとモータ手段6が反転するように制御することができる。また、例えば、一つの検知手段7と、他のスイッチを組み合わせて、検知手段7を操作するとモータ手段6が回転し、他のスイッチを操作するとモータ手段6が反転するように制御することなどもできる。
【0042】
[上肢補助装置の動作]
以下、上記構成の上肢補助装置1の動作について説明する。
上肢補助装置1を装着して第一上腕リンク31を水平にして上腕A1がほぼ水平になった状態を基本姿勢とする。この基本姿勢では、
図1に示すように、第一上腕リンク31と前腕リンク32のなす角度が概ね90度となっており、装着者の肘が直角に曲がった状態となっている。
この基本姿勢から上肢を上昇させるには、モータ手段6が時計方向に回転するように操作手段を操作する。そうすると、
図2に示すように、第三連結軸43が、ウォームホイール52の回転軸520を中心とした円弧状の軌跡(時計回り)で移動するとともに、これに従って上肢支持リンク3が動作して、手首の位置に相当する前腕リンク32の先端(上方端)部分が円弧状の軌跡で移動する。このとき、手首の位置が、上方に行くに従って前方に位置するような円弧状の軌跡をたどる。
上肢を上昇させた状態を維持したい場合には、上肢支持リンク3の動作を停止させる。具体的にはモータ手段6の回転が停止するように操作手段を操作する。ここで、モータ手段6の回転が停止した場合であっても、ウォームギヤ機構5のセルフロック機能により上肢支持リンク3の位置保持がなされる。
そして、上肢を上昇させた状態から基本姿勢まで下げるには、モータ手段6が反時計方向に回転するように操作手段を操作する。そうすると、第三連結軸43が上昇時とは反対方向に移動して前腕リンク32の先端(上方端)部分も上昇時とは反対方向に移動する。
すなわち、上肢補助装置は、パンタグラフ(拡大器)のように動作するのである。
【0043】
図3には、上肢補助装置1を装着していない作業者(被験者)が無意識に腕を斜め前に上げて5秒間静止させた後に元に戻した手首の軌跡と、上肢補助装置1を装着した装着者の前腕リンク32の先端(手首の位置に相当)の軌跡を示してある。
これによると、上肢補助装置は、人間が腕を上げる動作をほぼ実現できていることがわかる。
【0044】
以上、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、当該技術分野における熟練者等により、本出願の願書に添付された特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変更及び修正が可能である。
【0045】
例えば、第一上腕リンク31の上腕支持部311と、第二上腕リンク33を、長さ調整ができるように構成してもよい。具体的には、大きさの違う筒状体を組み合わせて、小さい方を挿入・引き出しすることによって長さ調整するように構成してもよい(テレスコピック構造)。このとき、任意のリンク長で固定できるように、貫通棒などの固定手段を設けることが好ましい。なお、第二上腕リンク33に関しては、前方側で長さ調整ができるように構成することが好ましい。
【0046】
また、上肢補助装置1は、基本的に、左右それぞれの上肢を上げての作業を補助することができるように構成される。即ち、肩フレーム23は装着者の左右の肩部付近にそれぞれ設けるとともに、上肢支持リンク3とウォームギヤ機構5なども左右それぞれに設けるのが通常である。
【0047】
また、上肢補助装置は、果実栽培だけでなく、上肢を上げての汎用的な作業に用いることができる。例えば、トンネル内の作業など上を向いての作業に応用することも可能であり、さらに、高い位置にある重いものを下ろす作業へも応用することができる。