【実施例1】
【0026】
図1は本発明の一実施例の避難用昇降機1の模式的に示した正面図、
図2は
図1の左側面図、
図3は
図1のA−A断面による平面図である。
図4は
図2における概ねカゴ部分の拡大図、
図5は
図3における概ねカゴ部分の拡大図である。
図6(イ)は
図5のB−B断面で示した概ね
図4の要部拡大図(
図7のB’−B’断面図でもある)、
図6(ロ)は(イ)のC−C断面図である。
図7は
図6(イ)のD−D断面図(
図5の要部の90°向きを変えて示した拡大図でもある)である。
【0027】
この避難用昇降機1は、避難者を載せて昇降するカゴ3とこのカゴ3の重量とバランスをとるためのカウンタウエイト4とを有し、前記カゴ3とカウンタウエイト4とは、互いに逆の昇降動作をするように、それぞれ昇降機フレーム構造5に取り付けられた滑車8、9を介在させてロープ10で吊られている。
また、前記カゴ3を昇降させるカゴ昇降機構11を備え、前記カゴ3の内部に、当該カゴを昇降させる動力を前記カゴ昇降機構11に入力する、少なくとも商用電源を利用しないカゴ昇降用の動力入力手段12を備えている。このように実施例の避難用昇降機1は、自走式昇降機である。また、前記カゴ昇降用の動力入力手段12による動力入力がない時には前記カゴ3が昇降しないように拘束するカゴ昇降拘束手段(後述するウォームギヤ21eの部分が相当し、
図6、
図7において符合25で示す)を備えている。
さらに、前記カウンタウエイト4を、前記カゴ3の昇降動作と連動させずに単独で昇降させることが可能なカウンタウエイト単独昇降機構(実施例は後述の
図8、
図9において符号13で示す)を備え、前記カウンタウエイト4を上昇させる動力を前記カウンタウエイト単独昇降機構に入力する、少なくとも商用電源を利用しない後述するカウンタウエイト昇降用の動力入力手段(
図8、
図9において符号14で示す)を備えている。
この実施例では、前記ロープ10が動滑車15を介してカウンタウエイト4を吊る構成としており、この動滑車15を吊るロープ10の前記カゴ3側と反対側の端部が、前記カウンタウエイト単独昇降機構13を構成する詳細は後述するロープ巻上げ機構13に接続されている。
図1ではロープ巻上げ機構13の一部を構成する巻取りリール41のみを示している。
図1において、破線Rは屋上などの避難階の高さ位置を示す。16は緩衝器である。
【0028】
この実施例では、前記昇降機フレーム構造5を、カゴ3を設置したカゴフレーム構造6と、カウンタウエイト4を設置したカウンタウエイトフレーム構造7とに分離して別個に設けている。すなわち、両者6、7を構造的に独立して構築している。また、この両者6、7は、この避難用昇降機1を設置しようとする建物(工作物)2の外壁2aから若干の隙間をもって設置されている(
図3参照)。すなわち、昇降機フレーム構造5を建物2の構造とは構造的に独立して構築している。
図3において6aと7aは、カゴフレーム構造6とカウンタウエイトフレーム構造7のそれぞれ上部フレーム材を示す。
なお、地震によるカゴフレーム構造6の歪みを低減するために、カゴフレーム構造6の左右側面部にブレース材を設けてもよい。
また、昇降機フレーム構造5は、必ずしもカゴフレーム構造6とカウンタウエイトフレーム構造7の両方に独立したフレーム構造を構成しなければならないということはなく、一般的なエレベーターと同様に、一つのフレーム構造で構成された昇降機フレーム構造5に避難用昇降機1の各構成部材を収めるように構成してもよい(後述する
図15、
図16の実施例はそのような構成である)。
【0029】
前記カゴ昇降機構11は、
図6、
図7に拡大して示すように、カゴフレーム構造6に設けられた、走行レールとしても機能する垂直なラック20と、このラック20と噛み合うピニオン21aを有する、カゴ側に設置されたギヤ機構21とを備えている。
前記ギヤ機構21は、垂直な軸21bに固定されたウォーム21cと、このウォーム21cと噛み合うウォームホイール21dとを備えている。ウォーム21cとウォームホイール21dとからなるウォームギアを符合21eで示す。なお、このウォームギヤ21eは前述したようにカゴ昇降拘束手段25としても機能する。
前記ウォームホイール21dと前記ピニオン21aとは共通の水平軸21fに固定されている。前記ラック20はカゴフレーム構造6と一体に設けられた支持柱22に固定されている。前記ギヤ機構21は、カゴ3に固定したベース部23に設けたケーシング24内に設けられている。
前記支持柱22、ラック20、ピニオン21a、ベース部23、ケーシング24は、カゴ3の
図5で左側にも設けられ、前記ピニオン21aはカゴ3の
図5で左側に延長している前記水平軸21fに固定されている。
【0030】
前記カゴ昇降用の動力入力手段12は、同じく
図6、
図7に示すように、前記カゴ昇降機構11のギヤ機構21を構成する垂直軸21bに固定された傘歯車12a、前記傘歯車12aと噛み合う傘歯車12b、この傘歯車12bの軸12cに固定されたカゴ3内のスプロケット12d、このスプロケット12dの下方に設けられたスプロケット12e、前記2つのスプロケット12d、12e間に掛け渡されたチェーン12f、前記下方のスプロケット12eの軸12gに取り付けられたハンドル12hなどからなる。
【0031】
この実施例において、ハンドル12hを回すと、その手動の回転力がチェーン12f、傘歯車12b、12aを介してウォーム21cに伝達されて、これと噛み合うウォームホイール21dが回転駆動され、これと一体にピニオン21aが回転駆動される。走行レールでもあるラック20は固定なので、回転するピニオン21aがラック20に沿って上下に移動する。したがって、このピニオン21aを有するギヤ機構21及びこのギヤ機構21を一体に固定したカゴ3が昇降する。
なお、図示例ではカゴ昇降用の動力入力手段12の入力部として手動のハンドル12hを用いたが、商用電源ではなく常時充填されるように管理したバッテリ電源により作動する電動モータを利用してもよい。また、電源として可搬式のエンジン発電機を電源とすることも考えられる。なお、電動モータが一方向にのみ回転する構造のものであれば、上昇・下降を切り替える上昇下降切替機構を介在させるとよい。
また、手動による動力入力手段とバッテリ電源による動力入力手段との両方を設けて、切り替えによりいずれも使用可能にすることもできる。
【0032】
前記カゴ昇降機構11を構成するギヤ機構21において、ウォーム21cとウォームホイール21dとからなるウォームギア21eではウォーム21c側からの入力のみ可能なので、カゴ内部のカゴ昇降用の動力入力手段12による動力入力がない時には、ウォームホイール21dの回転は拘束され、ウォームホイール21dとともに水平軸21fに固定されたピニオン21aの回転は拘束され、したがって、ラック20と噛み合うピニオン21aは移動を拘束され、カゴ3は昇降を拘束される。すなわち、カゴ昇降機構11を構成するギヤ機構21におけるウォームギヤ21eの部分は、カゴ3が昇降しないように拘束するカゴ昇降拘束手段25を構成する(カゴ昇降拘束手段25を兼ねている)。このカゴ昇降拘束手段25(ギヤ機構21におけるウォームギヤ21eの部分)により、カゴに乗った人数の多少などに起因するカゴ3とカウンタウエイト4間の重量不均衡が生じても、カゴ3が上又は下に移動することを防止できる。
【0033】
図3、
図5に示すように、カゴ3の上から見て四隅における左右部に左右幅保持ローラ31が設けられ、前後部に前後幅保持ローラ32が設けられている。各ローラ31、32はそれぞれカゴフレーム構造6を構成する四隅の支柱33に固定されたガイド部材34に当接して転動可能であり、これによりカゴ3の円滑な昇降を案内する。
【0034】
前述のカウンタウエイト単独昇降機構13及びカウンタウエイト昇降用の動力入力手段14は、例えば
図8、
図9に示すような構成とすることができる。
前述したようにこの実施例では、ロープ10が動滑車15を介してカウンタウエイト4を吊る構成であり、この動滑車15を吊るロープ10の前記カゴ3側と反対側の端部が、カウンタウエイト単独昇降機構であるロープ巻上げ機構13に接続されている。
このロープ巻上げ機構13は、前記動滑車15を吊るロープ10の前記カゴ3側と反対側部分を巻き取る前記巻取りリール41と、この巻取りリール41の軸42のカウンタウエイトフレーム構造7の建物側の外側に水平に延びた端部に固定されたウォームホイール43と、垂直なウォーム軸44aに固定されて前記ウォームホイール43と噛み合うウォーム44とからなる。41aは巻取りリール41の鍔部を示す。
また、カウンタウエイト4を上昇させる動力をロープ巻上げ機構13に入力するカウンタウエイト昇降用の動力入力手段14は、前記ウォーム軸44aの下端に固定された傘歯車45と、この傘歯車45と噛み合う傘歯車46と、この傘歯車46の軸46aに取り付けられたハンドル47とからなる。このハンドル47の位置は、建物2の屋上(避難階)Rから操作できる高さ位置にある。
【0035】
カゴ3を利用して避難者の全員が建物の屋上へ避難した後、例えば避難誘導員などが建物の屋上に立ってハンドル47を回すと、その手動による回転力が傘歯車46、45、ウォーム軸44a・ウォーム44、ウォームホイール43、リール軸42へと伝達され、巻取りリール41によりロープ10が巻き上げられ、カウンタウエイト4が引き上げられる。
したがって、カウンタウエイト4が津波や洪水の波力で流されることを防止でき、カウンタウエイト4を吊っているロープ10を介してそのロープ10に係合する滑車9、8やロープ他端に連結されているカゴ3が破損することを防止できる。これにより、津波や洪水が過ぎ去った後に、地上へ降りるためにカゴを再び利用することができる。
【0036】
この実施例のように、カウンタウエイト4を吊る滑車を動滑車15にすると、動滑車・カウンタウエイトの昇降移動距離はカゴ3の昇降移動距離の半分となるので、カウンタウエイト4の最下位置をカゴ3の上下移動範囲の真中位置程度にすることができる。したがって、カゴ3が上階に位置している状態でカウンタウエイト4の位置が地上近くより十分高い位置となり、仮にカウンタウエイト4を引き上げる操作が遅れたとしても、カウンタウエイト4が津波や洪水で流されずに済むか、あるいは流されることによる被害が少なく済む。
また、ロープ巻上げ機構13によりカウンタウエイト4を巻き上げている最中でも、カゴ3を吊るロープ10に働く荷重(張力)はカウンタウエイト4が静止している場合と同じなので、カゴ3の停止に伴うカゴ昇降拘束手段(ウォームギヤ21eの部分)25に対するカゴ自重の負担が増すことはない。
【実施例3】
【0038】
図11〜
図14に他の実施例の避難用昇降機1’を示す。
この避難用昇降機1’におけるカゴ昇降機構11’は、ロープが少なくとも1周以上巻かれたドラム61aを有するロープ巻取り機61をカゴ3の上面部に設け、前記ドラム61aを、カゴフレーム構造6の上部のロープ端固定部62と、カウンタウエイト4側に向かうロープ10を案内する滑車8との間のロープ10(10”)で吊られる動滑車として機能させ、前記ロープ巻取り機61の前記ドラム61aに回転力を伝達するウォーム減速機63を設けて構成し、前記ウォーム減速機63を駆動する動力が、カゴ3内部のカゴ昇降用の動力入力手段68により入力されるようにしたものである。
【0039】
図13、
図14に示すように、前記カゴ昇降機構11’のウォーム減速機63は、ケーシング64内でロープ巻取り機61のドラム軸61bの延長部に固定したウォームホイール65と、このウォームホイール65と噛み合う、垂直なウォーム軸66aに固定されたウォーム66とを有している。このカゴ昇降機構11’において、ウォーム減速機63を用いているので、このウォーム減速機(ウォーム66とウォームホイール65によるウォームギヤ部分)63がカゴ3が昇降しないように拘束するカゴ昇降拘束手段75を兼ねている。
前記カゴ昇降用の動力入力手段68は、前記ウォーム66の垂直軸66aのカゴ3内に延びた下端に固定された傘歯車68a、この傘歯車68aにかみ合う、水平軸68cに固定された傘歯車68b、前記水平軸68bに固定されたスプロケット68d、このスプロケット68dの下方に設けられたスプロケット68e、前記2つのスプロケット68d、68e間に掛け渡されたチェーン68f、前記下方のスプロケット68eの軸68gに取り付けられたハンドル68hなどからなる。
【0040】
この実施例では、ハンドル68hを回すと、その手動の回転力がチェーン68f、傘歯車68b、68aを介してウォーム減速機63に伝達され、ロープ巻取り機61のドラム61aが回転駆動され、ロープ10(10”)を巻き取り又は巻き戻して、カゴ3を昇降させる。
なお、この場合もバッテリ電源や、可搬式エンジン発電機の電源により作動する電動モータを利用してもよい。また、電動モータが一方向にのみ回転する構造であれば、上昇下降切替機構を介在させる。
【実施例4】
【0041】
図15は
図11〜
図14で模式的に示した実施例の避難用昇降機1’を具体化した場合の一実施例として避難用昇降機1”を示す図である。
この避難用昇降機1”は、津波の際に避難する場所として津波想定高さより高く建設された避難タワー80に設置した場合のものであり、避難タワー80の鉄骨骨組みが昇降機フレーム構造81となる。したがって、この昇降機フレーム構造81は、カゴフレーム構造とカウンタウエイトフレーム構造とが構造体として一体であり分離されていない。
この避難用昇降機1”は、基本的な機構としては模式的に示した
図11〜
図14の避難用昇降機1’と概ね同じであり、同じ符合を付して説明は省略する。
また、この避難用昇降機1”は、避難用昇降機1’で備える左右幅保持ローラ31や前後幅保持ローラ32、ガイド部材34などのカゴ3を安定させるガイドレールに相当する構造を備えておらず、ロープ10”による吊り足場構造である。
図15におけるロープ巻上げ機構(カウンタウエイト単独昇降機構)13”の部分の詳細を
図16に示す。このロープ巻上げ機構13”は、
図11における符合13の部分に相当し、詳細には
図8、
図9で模式的に示したロープ巻上げ機構13を具体化した場合の一実施例であり、基本的な機構としては模式的に示した
図8、
図9のロープ巻上げ機構13と概ね同じであり、同じ符合を付して説明は省略する。
【0042】
本発明において、カゴ昇降機構、カゴ昇降用の動力入力手段、カウンタウエイト単独昇降機構、カウンタウエイト昇降用の動力入力手段、カゴ昇降拘束手段は、上述した各実施例に限定されるものではない。例えば、各実施例では、カゴ昇降、及びカウンタウエイト昇降の動力源を、いずれも手動などの商用電源を利用しない動力源としているが、商用電源を利用してもよい。さらに、昇降可能なカゴとカウンタウエイトとが互いに逆の昇降動作をするように滑車を介在させてロープで吊られていること、及びカウンタウエイトをカゴの昇降とは連動させずに単独で昇降可能、という本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。