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特許6206963有機−無機ハイブリッド粒子の製造方法及び無機中空粒子の製造方法
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  • 特許6206963-有機−無機ハイブリッド粒子の製造方法及び無機中空粒子の製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206963
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】有機−無機ハイブリッド粒子の製造方法及び無機中空粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20170925BHJP
   C04B 38/06 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   C08J3/12 ZCEY
   C04B38/06 D
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-47593(P2014-47593)
(22)【出願日】2014年3月11日
(65)【公開番号】特開2014-198845(P2014-198845A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2016年10月25日
(31)【優先権主張番号】特願2013-49451(P2013-49451)
(32)【優先日】2013年3月12日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年9月20日名古屋工業大学において開催された第61回高分子討論会で発表
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 竜王
(72)【発明者】
【氏名】三木 翔
(72)【発明者】
【氏名】大村 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】山内 博史
【審査官】 中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−001622(JP,A)
【文献】 特表2010−502795(JP,A)
【文献】 特開2009−300239(JP,A)
【文献】 特開2008−274006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00− 3/12
9/00− 9/42
99/00
C04B 37/00− 37/04
38/06
C08F 251/00−283/00
283/02−289/00
291/00−297/08
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リビング重合開始点が表面に導入された樹脂コア粒子を作製する工程1、
アミノ基を有するモノマーを用いて架橋リビング重合を行うことで、前記リビング重合開始点が表面に導入された樹脂コア粒子の粒子表面にアミノ基を含有する架橋シェルポリマー層を形成する工程2、及び、
前記アミノ基を含有する架橋シェルポリマー層中に無機物を析出させる工程3を有し、
工程2において、アミノ基を有するモノマーを用いて、成長ポリマーの自己水素引き抜き反応を伴う架橋リビング重合を行う
ことを特徴とする有機−無機ハイブリッド粒子の製造方法。
【請求項2】
リビング重合開始点が表面に導入された樹脂コア粒子を作製する工程1、
アミノ基を有するモノマーを用いて架橋リビング重合を行うことで、前記リビング重合開始点が表面に導入された樹脂コア粒子の粒子表面にアミノ基を含有する架橋シェルポリマー層を形成する工程2、
前記アミノ基を含有する架橋シェルポリマー層中に無機物を析出させる工程3、及び、
前記無機物を析出させた樹脂粒子の有機成分を除去する工程4を有し、
工程2において、アミノ基を有するモノマーを用いて、成長ポリマーの自己水素引き抜き反応を伴う架橋リビング重合を行う
ことを特徴とする無機中空粒子の製造方法。
【請求項3】
工程4において、無機物を析出させた樹脂粒子を焼成することにより、有機成分を除去することを特徴とする請求項記載の無機中空粒子の製造方法。
【請求項4】
工程4において、無機物を析出させた樹脂粒子を有機溶剤で処理することにより、有機成分を除去することを特徴とする請求項記載の無機中空粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機層の強度が高く、粒子径の小さい有機−無機ハイブリッド粒子が得られるとともに、粒子径や無機層の膜厚を均一に制御することが可能な有機−無機ハイブリッド粒子の製造方法、及び、無機中空粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機中空粒子は、軽量材、塗料の充填材、補強用充填材、低誘電率化のための特性改善材等の様々な用途に用いられており、性能向上のために種々の開発が行なわれている。
通常使用される無機中空粒子としては、例えば、ガラス質中空粒子やアルミナ、ジルコニア等からなる中空粒子が知られている。
【0003】
このような無機中空粒子を製造する方法としては、例えば、特許文献1に開示されているように、無機材料からなる核粒子に、無機アルコキシドを加水分解して生成した物質を核粒子の表面に沈着させた後、酸を用いて核粒子を除去する方法が知られている。
しかしながら、この方法では、粒子径分布が広く平均粒子径が大きい無機中空粒子しか作製できないという問題があった。また、核粒子のかなりの部分が残存し空隙率が上がらないという問題もあった。
【0004】
これに対して、特許文献2には、樹脂粉末と、樹脂粉末よりも小径のアルミナ粉末とを圧接させながら混合し、樹脂粉末の表面をアルミナ粉末で被覆した後、焼成することで樹脂粉末を焼失させることにより、アルミナ中空粒子を製造する方法が提案されている。
ところが、このような方法においても、多量の樹脂鋳型が必要となり、材料コストが高くなるという欠点があった。また、この方法で得られるアルミナ中空粒子の粒子径は10μm前後までであり、1μm程度まで粒子径を制御して作製することはできなかった。
無機中空粒子において、高い中空度と小粒径化を実現するためには、シェル(外殻)の強度を向上させることが必要不可欠であるが、従来の無機中空粒子ではシェルの強度が不充分なものとなっていた。
更に、近年は粒子径の小さい無機中空粒子が得られることに加えて、粒子径や膜厚を均一化することが可能な無機中空粒子の製造方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−233611号公報
【特許文献2】特開2003−160330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、無機層の膜厚及び粒子径の小さい有機−無機ハイブリッド粒子が得られるとともに、粒子径や無機層の膜厚を均一に制御することが可能な有機−無機ハイブリッド粒子の製造方法、及び、無機中空粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、リビング重合開始点が表面に導入された樹脂コア粒子を作製する工程1、アミノ基を有するモノマーを用いて架橋リビング重合を行うことで、前記リビング重合開始点が表面に導入された樹脂コア粒子の粒子表面にアミノ基を含有する架橋シェルポリマー層を形成する工程2、及び、前記アミノ基を含有する架橋シェルポリマー層中に無機物を析出させる工程3を有し、工程2において、アミノ基を有するモノマーを用いて、成長ポリマーの自己水素引き抜き反応を伴う架橋リビング重合を行う有機−無機ハイブリッド粒子の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、基材樹脂粒子の表面にリビング重合開始点を導入した後、アミノ基を有するモノマーを用いて架橋リビング重合を行い、更に架橋シェルポリマー層中に無機物を析出させることにより、粒子径や無機層の膜厚を均一に制御できることに加えて、シェル(無機層)の強度が大幅に向上することから、無機層の膜厚及び粒子径の小さい有機−無機ハイブリッド粒子が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の有機−無機ハイブリッド粒子の製造方法は、リビング重合開始点が表面に導入された樹脂コア粒子を作製する工程1を有する。
なお、本明細書では、リビング重合開始点が表面に導入された粒子を「樹脂コア粒子」、リビング重合開始点が表面に導入されていない粒子を「基材樹脂粒子」という。
【0010】
上記リビング重合とは、重合反応点がドーマント種と呼ばれる一時的な重合停止状態と、成長活性種の状態との可逆的平衡状態を保ちながら、モノマー付加が進行する重合形態を表す。上記リビング重合では、ドーマント種と成長活性種の相互変換速度が成長速度(モノマーの付加速度)より充分速いので、各重合反応点からのポリマー成長速度が揃い、結果的に分子量の揃ったポリマーが得られるといった特徴がある。
また、上記リビング重合開始点とは、熱、光、触媒等の作用によって、上記ドーマント種と成長活性種の平衡状態になり、モノマーが存在すればリビング重合が開始する化学結合点をいう。リビング重合開始点が表面に導入された樹脂コア粒子としては、例えば、ハロゲンが表面に導入された樹脂コア粒子、ジチオカルバメート化合物が表面に導入された樹脂コア粒子等が挙げられる。
【0011】
上記工程1において、ハロゲンが表面に導入された樹脂コア粒子を作製する方法としては、例えば、基材樹脂粒子にハロゲンを有するモノマーを添加して重合する方法、基材樹脂粒子にハロゲンガス又はハロゲンを含有する酸等を添加して、樹脂中のいずれかの原子とハロゲン原子とを置換する方法等が挙げられる。
【0012】
上記基材樹脂粒子にハロゲンを有するモノマーを添加して重合する方法としては、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、ミニエマルジョン重合法、ソープフリー重合法、分散重合法、シード重合法等の微粒子重合方法が挙げられる。上記重合法のうち、ソープフリー重合法、分散重合法、シード重合法が均一な粒径を得るために好ましい。なお、ハロゲンを有するモノマーを添加して重合する工程は、基材樹脂粒子の合成工程と同時あるいは連続して行ってもよく、別の工程で行ってもよい。
【0013】
上記ハロゲンを有するモノマーとしては、例えば、2−クロロプロピニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブロモプロピニルオキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸フロリド、(メタ)アクリル酸クロリド、(メタ)アクリル酸ブロミド、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ブロモエチル、(メタ)アクリル酸クロロフェニル、(メタ)アクリル酸ブロモフェニル、α−フルオロアクリル酸メチル、α−クロロアクリル酸メチル、α−クロロアクリロニトリル、α−クロロアクロレイン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、クロロスチレン、ジクロロスチレン、クロロメチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ブロモメチルスチレン、ヨードスチレン、クロロ安息香酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、ジクロロ酢酸ビニル、クロロエチルビニルエーテル、ブロモエチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0014】
上記基材樹脂粒子にハロゲンガス又はハロゲンを含有する酸等を添加して、樹脂中のいずれかの原子とハロゲン原子を置換する方法としては、例えば、基材樹脂粒子を分散させた水に、塩素、臭素等のガスを吹き込む方法や、フッ酸、塩酸等を添加し、所定の時間攪拌混合する方法等が挙げられる。また、必要に応じて加熱やUV照射により反応を促進してもよい。
【0015】
上記ジチオカルバメート化合物が表面に導入された樹脂コア粒子を作製する方法としては、例えば、基材樹脂粒子にジチオカルバメートを有するモノマーを添加して重合する方法、基材樹脂粒子にジチオカルバメート化合物を直接添加して表面に付加する方法等が挙げられる。
【0016】
上記基材樹脂粒子にジチオカルバメートを有するモノマーを添加して重合する方法としては、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、ミニエマルジョン重合法、ソープフリー重合法、分散重合法、シード重合法等の微粒子重合方法が挙げられる。上記重合法のうち、ソープフリー重合法、分散重合法、シード重合法が均一な粒径を得るために好ましい。なお、ジチオカルバメートを有するモノマーを添加して重合する工程は、基材樹脂粒子の合成工程と同時あるいは連続して行ってもよく、別の工程で行ってもよい。
【0017】
上記ジチオカルバメートを有するモノマーとしては、例えば、ビニルジチオカルバメート、アリルジチオカルバメート、ビニルベンジルジチオカルバメート、(メタ)アクリロイルジチオカルバメート、ビニルアセチルジチオカルバメート等が挙げられる。
【0018】
上記ジチオカルバメートを有するモノマーを構成するジチオカルバメート基としては、例えば、N−メチル−ジチオカルバメート、N−エチルジチオカルバメート等のN−アルキルジチオカルバメート基;N,N−ジメチルジチオカルバメート、N,N−ジエチルジチオカルバメート、N,N−ジ−n−プロピルジチオカルバメート、N,N−ジ−i−プロピルジチオカルバメート、N−メチル−N−i−プロピルジチオカルバメート等のN,N−ジアルキルジチオカルバメート基;N−フェニルジチオカルバメート等のN−アリールカルバメート;N−メチル−N−フェニルジチオカルバメート、N−エチル−N−フェニルジチオカルバメート、N−n−プロピル−N−フェニルジチオカルバメート、N−n−ブチル−N−フェニルジチオカルバメート等のN−アルキル−N−アリルジチオカルバメート基;N−シクロヘキシルカルバメート等のN−シクロアルキルジチオカルバメート基;N,N−ジシクロヘキシルジチオカルバメート等のN,N−ジシクロアルキルジチオカルバメート基;N−アリルジチオカルバメート等のN−アルケニルジチオカルバメート基;N,N−ジアリルジチオカルバメート等のN,N−ジアルケニルジチオカルバメート基;N−ベンジルジチオカルバメート等のN−アラルキルジチオカルバメート基;N,N−ジベンジルジチオカルバメート等のN,N−ジアラルキルジチオカルバメート基;N−メチル−N−ベンジルジチオカルバメート、N−エチル−N−ベンジルカルバメート等のN−アルキル−N−アラルキルジチオカルバメート基;ピロリジルジチオカルバメート、ピペリジルジチオカルバメート、モルフォリニルジチオカルバメート等の複素環式ジチオカルバメート基等が挙げられる。
【0019】
上記基材樹脂粒子としては特に限定されないが、例えば、ポリスチレン及びその誘導体、ポリ(メタ)アクリレート及びその誘導体、ポリアルキレン、ポリオレフィン等からなる粒子を使用することができる。なかでも、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエチレンからなる粒子が好ましい。
【0020】
上記基材樹脂粒子は、ソープフリー重合を用いて作製することが好ましい。
上記ソープフリー重合は、水を主成分とする媒体中で、乳化剤ミセルが存在しない状態における重合である。上記ソープフリー重合を用いることで、粒子径分布の狭い基材樹脂粒子を作製することができる。また、粒子表面がクリーンな粒子が作製することができ、乳化剤の除去工程を省略することが可能となる。
【0021】
上記リビング重合開始点が表面に導入された樹脂コア粒子は、平均粒子径の好ましい下限が0.01μm、好ましい上限が100μmである。平均粒子径が0.01μm未満であると、アミノ基を含有する架橋シェルポリマー層(シェル)を重合する工程で粒子が凝集することがある。上記平均粒子径が100μmを超えると、樹脂コア粒子表面上に均一にシェルを被覆することができず、シェルに欠損ができることがある。上記平均粒子径のより好ましい下限は0.02μm、より好ましい上限は20μmである。
なお、上記樹脂コア粒子の平均粒子径は、光学顕微鏡、又は、電子顕微鏡を用いて無作為に選んだ100個の樹脂コア粒子を観察して得られた直径の平均値を意味する。
【0022】
また、上記樹脂コア粒子は、CV値の好ましい上限が10%である。CV値が10%を超えると、有機−無機ハイブリッド粒子が粒子径分布の広いものとなる。CV値のより好ましい上限は7%である。なお、CV値は、標準偏差を平均粒子径で割った値の百分率(%)で示される数値である。
【0023】
本発明の有機−無機ハイブリッド粒子の製造方法は、アミノ基を有するモノマーを用いて架橋リビング重合を行うことで、上記リビング重合開始点が表面に導入された樹脂コア粒子の粒子表面にアミノ基を含有する架橋シェルポリマー層を形成する工程2を有する。アミノ基を有するモノマーを架橋リビング重合することによって、各リビング重合開始点より成長する分子鎖長が均一となるため、架橋点間分子量及び分子量分布が規制されたアミノ基を有するポリマーを樹脂コア粒子表面に結合することができ、その結果、均一な層厚みのアミノ基を含有する架橋シェルポリマー層を有するコアシェル型樹脂粒子を作製することができる。
特に、本発明では、シェルポリマー層を架橋構造とすることで、良溶媒中においてもシェルポリマー層を構成するポリマー鎖の広がりが抑制され、架橋シェルポリマー層中におけるアミノ基の密度が高くなる。その結果、後の架橋シェルポリマー層中に無機物を析出させる工程3において、無機物の堆積密度も同時に高くなるため、緻密で高強度のシェルを有する有機−無機ハイブリッド粒子を製造することができる。
【0024】
上記アミノ基を有するモノマーを用いて架橋リビング重合を行う際の架橋の方法としては、例えば、上記アミノ基を有するモノマーを用いてリビング重合を行った後、架橋性化合物を添加する方法、上記アミノ基を有するモノマーと架橋性モノマーをリビング共重合する方法、アミノ基を有する架橋性モノマーを用いる方法、アミノ基を有するモノマーを水素引き抜き反応などの移動反応を伴う架橋リビング重合反応を行う方法等が挙げられる。
【0025】
上記アミノ基を有するモノマーを用いて架橋リビング重合を行う際のリビング重合の方法としては、特に限定されないが、原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerisation、以下、ATRP法ともいう)、イニファーター開始剤を用いたリビング重合(イニファーター重合)を用いることが好ましい。
上記ATRP法は、リビングラジカル重合の1種である。上記ATRP法を用いることで、水媒体を用いた不均一系でも高い反応率でリビング重合を行うことができる。
上記イニファーター重合は、光、熱等を用いてラジカルを生成させ、生成したラジカルを開始点として重合を行う方法であり、成長ラジカルが水素引き抜き反応を起こし易く、架橋剤を用いなくても架橋点が生成するため、効率的に架橋リビング重合を行うことができる。また、着色が起りにくく、厚みの制御が容易となるという利点がある。
【0026】
上記ATRP法を用いた方法としては、例えば、上記ハロゲンが表面に導入された樹脂コア粒子、遷移金属錯体、アミノ基を有するモノマー等を使用する方法等を用いることができる。上記樹脂コア粒子の表面に導入されたハロゲンは、ATRP法リビング重合の反応開始点として作用する。
【0027】
上記遷移金属錯体としては、下記一般式(1)で表されるものを用いることができる。
MZ(D) (1)
式(1)中、Mは遷移金属、Zはハロゲン原子、(D)はリガンドを表す。
【0028】
上記Mは遷移金属であれば特に限定されないが、銅原子が好ましい。
上記Zのハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。なかでも、塩素原子が好ましい。
上記(D)のリガンドは、遷移金属と配位結合が可能なものであれば特に限定されないが、次のような多座配位子等が好ましい。
上記多座配位子としては、例えば、2、2’−ビピリジル、2,2’−ビ−4−ヘプチルピリジル、2−(N−ペンチルイミノメチル)ピリジン、スパルテイン、トリス(2−ジメチルアミノエチル)アミン、1,1,4,7,7−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン等が挙げられる。これらのリガンドは、単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
上記遷移金属錯体には、反応を活性化させるための目的で、例えば、過酸化物、アゾ化合物等のラジカル発生剤や、アスコルビン酸、有機スズ化合物等の還元剤が添加されてもよい。
【0030】
上記イニファーター重合とは、開始剤への連鎖移動と1次ラジカル停止のいずれか、または両方を起こしやすい開始剤(イニファーター開始剤)を用いた重合であり、主として加熱や、紫外線等の光照射により、ドーマント種から成長ラジカルを可逆的に生成させる方法を指す。イニファーター重合は、熱や光を当てるだけという簡便な手順で重合を行えるという点で有用である。また、上記イニファーター重合を用いることで、遷移金属錯体等の遷移金属含有物質を用いることなく、架橋リビング重合を行うことが可能となる。その結果、遷移金属錯体由来の残留物の影響を受けないため、特に、着色が無いポリマー粒子や、有機−無機ハイブリッド粒子が得られるという利点が得られる。
【0031】
上記イニファーター重合において、光を用いてイニファーター重合を行う際に用いられる開始剤を光イニファーター、熱を用いてイニファーター重合を行う際に用いられる開始剤を熱イニファーターという。
上記光イニファーターとしては、例えば、ジチオカルバメート類、テトラフェニルエタン類、テトラエチルチウラムジスルフィド類等が挙げられる。
上記ジチオカルバメート類としては、例えば、酢酸N,N’−ジエチルジチオカルバメート、ビニルベンジルN,N’−ジメチルジチオカルバメート等が挙げられる。特に、ビニルベンジルN,N’−ジメチルジチオカルバメートを樹脂コア粒子合成時に用いると、イニファーターの固定化工程が不要になり、操作が簡便になる他、自身が界面活性作用を有しているので、樹脂コア粒子のサイズを、界面活性剤を使用することなく制御することが可能である点で好ましい。
本発明においては、アミノ基を有する成分を含有した状態で光を当てると、アミノ基の一部からラジカルが生成し、その地点からも重合が進行するために、分子が分岐や架橋反応が進行するために、特別な架橋剤を用いなくても架橋構造が得られる点で、特に好ましい。
なお、上記ジチオカルバメート類は重合安定性(リビング性)が高いことからより好ましい。上記熱イニファーターとしては、例えば、フェニルアゾトリフェニルメタン類、テトラフェニルエタン類等が挙げられる。
【0032】
上記アミノ基を有するモノマーとしては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、等が挙げられる。
【0033】
上記架橋性化合物としては、例えば、ハロゲン含有官能基を2以上有する化合物が好ましく、ハロゲン置換アルコキシ基を有する化合物が好ましい。具体的には例えば、1,2−ビス(2−ヨードエトキシ)エタン、1,2−ビス(2−ブロモエトキシ)エタン、1,2−ビス(2−クロロエトキシ)エタン等が挙げられる。
【0034】
上記架橋性化合物の添加量としては特に限定されないが、上記アミノ基を有するモノマー100重量部に対して0.1〜50重量部であることが好ましい。上記範囲内とすることで、充分な強度を有するシェルを得ることが可能となる。
【0035】
上記アミノ基を有するモノマーと架橋性モノマーをリビング共重合する方法で架橋リビング重合を行う場合、上記架橋性モノマーとしては特に限定されず、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートや、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のアクリル系多官能性モノマー、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0036】
上記架橋性モノマーの添加量としては特に限定されないが、上記アミノ基を有するモノマー100重量部に対して0.1〜50重量部であることが好ましい。上記範囲内とすることで、充分な強度を有するシェルを得ることが可能となる。
【0037】
上記アミノ基を有する架橋性モノマーを用いる方法で架橋リビング重合を行う場合、上記アミノ基を有する架橋性モノマーとしては、例えば、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、4−(N,N−ジメチルアミノ)ブチル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、4−(N,N−ジメチルアミノ)ブチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0038】
上記アミノ基を有するモノマー、架橋性モノマー、あるいはアミノ基を有する架橋性モノマー等のシェルを構成する目的で添加されるモノマーの合計添加量としては、特に限定されないが、上記樹脂コア粒子100重量部に対して10〜1000重量部であることが好ましい。上記範囲内とすることで、適度なコア/シェル比を有するコアシェル樹脂粒子を得ることが可能となる。
【0039】
本発明の有機−無機ハイブリッド粒子の製造方法は、上記アミノ基を含有する架橋シェルポリマー層中に無機物を析出させる工程3を有する。
【0040】
上記アミノ基を含有する架橋シェルポリマー層中に無機物を析出させる方法としては、特に限定されないが、例えば、上記コアシェル型樹脂粒子に溶媒、有機−無機化合物を添加した後、上記有機−無機化合物を加水分解し、脱水等をさせる方法等が挙げられる。このような方法を用いることで架橋シェルポリマー層中のアミノ基が有機−無機化合物の加水分解、脱水反応を促進する触媒的な効果を生み、架橋シェルポリマーにのみ選択的に収率良く無機物を析出させることができる。
【0041】
上記樹脂コア粒子に結合したアミノ基を含有する架橋シェルポリマー層中に無機物を析出させる際に使用する溶媒としては、特に限定されず、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール、エチレングリコール等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
上記析出させる無機物は粒子状であることが好ましい。また、上記無機物を析出させる際に、急激な反応を抑制し均一な粒子径の無機粒子を析出させる目的で、例えば、アセチルアセトン、ビピリジン、エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤が添加されてもよい。特に、アルコール溶媒に対しアセチルアセトンを添加することが好ましい。
【0043】
上記有機−無機化合物としては、無機物を析出可能な化合物であれば特に限定されないが、チタンアルコキシド、シリコンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド等が挙げられる。
【0044】
上記チタンアルコキシドとしては、例えば、テトラメチルチタネート(TMT)、テトラエチルチタネート(TET)、テトラ−n−プロピルチタネート(TnPT)、テトライソプロピルチタネート(TPT)、テトラ−n−ブチルチタネート(TnBT)、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネート等が挙げられる。これらのなかでは、テトラ−n−ブチルチタネートが好ましい。
上記シリコンアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラシクロヘキシルシリケート、テトラベンジルシリケート等が挙げられる。これらのなかでは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。
上記ジルコニウムアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−t−ブトキシジルコニウム、テトラフェノキシジルコニウム等が挙げられる。
これらの金属アルコキシドにおいて、金属に結合している4つのアルコキシドのうち1〜3個が他の種類のアルコキシドと置換されてもよい。
【0045】
上記有機−無機化合物の添加量としては特に限定されないが、上記コアシェル型樹脂粒子100重量部に対して10〜50000重量部であることが好ましい。上記範囲内とすることで、適度な厚みを有する無機物の層を形成することが可能となる。
【0046】
上記工程3において無機粒子を析出させる場合、上記無機粒子の平均粒子径の好ましい下限が0.0001μm、好ましい上限が10μmである。平均粒子径が0.0001μm未満であると、無機粒子が溶媒中に分散し、架橋シェルポリマー層中に固定化されないことがある。平均粒子径が10μmを超えると、架橋シェルポリマー層上に突起を形成し、表面が平滑な有機−無機ハイブリッド粒子が得られないことがある。上記平均粒子径のより好ましい下限は0.001μm、より好ましい上限は1μmである。
なお、上記無機粒子の平均粒子径は、光学顕微鏡、又は、電子顕微鏡を用いて無作為に選んだ50個の樹脂コア粒子を観察して得られた直径の平均値を意味する。
また、上記無機粒子は析出の過程で近傍の無機粒子と互いに結合して凝集体を形成しても良い。
【0047】
上述した工程1〜工程3を行った後、更に上記無機物を析出させた樹脂粒子の有機成分を除去する工程4を行うことにより、無機中空粒子を製造することができる。
このように、リビング重合開始点が表面に導入された樹脂コア粒子を作製する工程1、アミノ基を有するモノマーを用いて架橋リビング重合を行うことで、上記リビング重合開始点が表面に導入された樹脂コア粒子の粒子表面にアミノ基を含有する架橋シェルポリマー層を形成する工程2、前記アミノ基を含有する架橋シェルポリマー層中に無機物を析出させる工程3、及び、前記無機物を析出させた樹脂粒子の有機成分を除去する工程4を有し、工程2において、アミノ基を有するモノマーを用いて、成長ポリマーの自己水素引き抜き反応を伴う架橋リビング重合を行う無機中空粒子の製造方法もまた本発明の1つである。
【0048】
本発明の有機−無機ハイブリッド粒子の製造方法、及び、本発明の無機中空粒子の製造方法の一例について、図1を使って説明する。
本発明では、まず、樹脂コア粒子(図1(a))の表面に、リビング重合開始点としてハロゲン(塩素)を導入する(図1(b))。
次いで、アミノ基を有するモノマーを用いてリビング重合を行うことで、塩素が表面に導入された樹脂コア粒子の粒子表面にアミノ基を含有するシェルポリマー層を形成する(図1(c))。
その後、シェルポリマー層を形成した樹脂粒子に架橋性化合物を添加することで、シェルポリマー層中のポリマーを架橋させて架橋シェルポリマー層を形成する(図1(d))。
更に、アミノ基を含有する架橋シェルポリマー層中に無機物(無機粒子)を析出させることにより、有機−無機ハイブリッド粒子が得られる(図1(e))。
そして、例えば、無機粒子を析出させた樹脂粒子を焼成することで、樹脂が熱分解するとともに無機粒子同士が焼結し、無機中空粒子が得られる(図1(f))。
【0049】
本発明の無機中空粒子の製造方法を用いることで、粒子径の小さい無機中空粒子を得ることができる。また、粒子径やシェルの膜厚を均一化することも可能となる。更に、シェルの強度が大幅に向上することから、得られる無機中空粒子は中空度が極めて高いものとなり、小粒径化も可能となる。
【0050】
上記工程4において、無機物を析出させた樹脂粒子の有機成分を除去する方法としては、無機物を析出させた樹脂粒子を焼成する方法、無機物を析出させた樹脂粒子を有機溶剤で処理する方法が好ましい。
【0051】
上記無機物を析出させた樹脂粒子を焼成する方法を用いる場合、焼成工程における焼成条件(焼成温度、焼成時間)については、有機成分を完全に消失させるのに充分な温度、時間を、樹脂の種類等に応じて適宜設定する。具体的には焼成温度は300〜1500℃が好ましく、焼成時間は5〜300分が好ましい。
【0052】
上記無機物を析出させた樹脂粒子を有機溶剤で処理する方法を用いる場合、使用する有機溶剤については、有機成分を完全に消失させるのに充分な有機溶剤を、樹脂の種類等に応じて適宜選択する。具体的にはトルエン、キシレン、エチルメチルケトン、アセトン、クロロホルム、ジクロロメタンが好ましい。
【0053】
本発明で得られる有機−無機ハイブリッド粒子及び無機中空粒子は、塗料をはじめ各種成形体の充填材として使用できるほか、特に無機材料としてチタンを用いた場合、優れた光触媒作用を示す半導体材料に用いることができる。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、無機層の膜厚及び粒子径の小さい有機−無機ハイブリッド粒子が得られるとともに、粒子径や無機層の膜厚を均一に制御することが可能な有機−無機ハイブリッド粒子の製造方法、及び、無機中空粒子の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本発明の有機−無機ハイブリッド粒子の製造方法、及び、本発明の無機中空粒子の製造方法の一例を模式的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
(樹脂コア粒子の作製)
フラスコ中にスチレン3.5g、ビニルベンジルN,N−ジメチルジチオカルバメート0.45g、N−ブチル−N−メタクリロイロキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムブロマイド0.090gと2,2’−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)ジハイドロクロライド(和光純薬工業社製、V−50)0.15g、イオン交換水100gを添加し、攪拌速度100rpmで攪拌しながら温度60℃まで昇温した。10時間ソープフリー重合を行って、平均粒子径0.081μmの樹脂コア粒子のエマルションを作製した。
【0058】
(コアシェル型樹脂粒子の作製)
その後、得られたジチオカルバメート化合物が表面に導入された樹脂コア粒子0.20g、ジメチルアミノエチルメタクリレート0.63g、イオン交換水20gを入れ、窒素で15分バブリングした。高圧水銀ランプHL400BH−8(46mW/cm、波長365nm、セン特殊光源株式会社製)で光照射させることにより重合を開始させた。2時間後光照射を止めることで重合を停止させ、架橋シェルポリマーを有する平均粒子径0.151μmのコアシェル型樹脂粒子のエマルションを得た。
【0059】
(有機−無機ハイブリッド粒子の作製)
得られた架橋ポリマーが結合したコアシェル型樹脂粒子0.25gにメタノール20g、イオン交換水30gを添加し、マグネックスターラーで攪拌しながら、テトラエトキシシラン0.50gをゆっくり滴下した。
48時間経過した後、得られたエマルションについて、遠心分離(13,500rpm、15分)→上澄み除去→エタノールへの再分散を3回繰り返し、最後にイオン交換水で同様に遠心分離を行うことにより精製し、最終的にイオン交換水に分散させることにより、有機−無機ハイブリッド粒子の分散液を得た。
【0060】
(無機中空無機粒子の作製)
その後、有機−無機ハイブリッド粒子を凍結乾燥させることにより得られた粒子を電気炉を用いて500℃で2時間焼成することにより、無機中空無機粒子を得た。
【0061】
(実施例2)
(樹脂コア粒子、コアシェル型樹脂粒子の作製)
フラスコ中にスチレン2.9g、ビニルベンジルN,N−ジメチルジチオカルバメート0.56g、ポリスチレン0.35g、N−ドデシル−N−メタクリロイロキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムブロマイド0.17gと2,2’−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)ジハイドロクロライド(和光純薬工業社製、V−50)0.090g、イオン交換水15gを添加し、氷浴中で撹拌しながら超音波照射し、乳化エマルションを調製した。温度60℃まで昇温した。6時間ミニエマルション重合を行って、平均粒子径0.105μmの樹脂コア粒子のエマルションを作製した。その後、得られたジチオカルバメート化合物が表面に導入された樹脂コア粒子を用い、実施例1と同様にして、架橋シェルポリマーを有する平均粒子径0.120μmのコアシェル型樹脂粒子のエマルションを得た。
【0062】
(有機−無機ハイブリッド粒子の作製)
得られたポリマーが結合したコアシェル型樹脂粒子0.25gにメタノール20g、イオン交換水30g、アセチルアセトン0.026gを添加し、マグネックスターラーで攪拌しながら、テトラ−n−ブチルチタネート0.10gをゆっくり滴下した。
48時間経過した後、得られたエマルションについて、遠心分離(13,500rpm、15分)→上澄み除去→エタノールへの再分散を3回繰り返し、最後にイオン交換水で同様に遠心分離を行うことにより精製し、最終的にイオン交換水に分散させることにより、有機−無機ハイブリッド粒子の分散液を得た。
【0063】
(無機中空無機粒子の作製)
その後、有機−無機ハイブリッド粒子を凍結乾燥させることにより得られた粒子0.20gをテトラヒドロフラン200gを添加し、マグネックスターラーで48時間攪拌した。得られたエマルションについて、遠心分離(13,500rpm、15分)→上澄み除去→テトラヒドロフランへの再分散を3回繰り返し、最後にテトラヒドロフランを乾燥除去して無機中空無機粒子を得た。
【0064】
参考例3)
(樹脂コア粒子の作製)
フラスコ中にスチレン3.5g、N−ブチル−N−メタクリロイロキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムブロマイド0.090g、2,2’−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)ジハイドロクロライド(和光純薬工業社製、V−50)0.15g、イオン交換水100gを添加し、攪拌速度100rpmで攪拌しながら温度60℃まで昇温した。10時間ソープフリー重合を行って、基材樹脂粒子エマルションを作製した。
【0065】
次いで、得られた基材樹脂粒子エマルションに、2−クロロプロピオニルオキシメタクリレート0.5gを一括添加して攪拌速度100rpm、重合温度70℃、重合時間8時間で反応させることで、平均粒子径0.086μmの塩素が表面に導入された樹脂コア粒子のエマルションを作製した。
【0066】
(コアシェル型樹脂粒子、有機−無機ハイブリッド粒子、無機中空粒子の作製)
その後、得られた塩素が表面に導入された樹脂コア粒子0.5gに、ジメチルアミノエチルメタクリレート2.4g、2水和塩化銅0.043g、トリス(ジメチルアミノエチル)アミン0.058g、アスコルビン酸0.35g、イオン交換水50gを添加して攪拌速度100rpm、重合温度25℃、重合時間24時間で反応させることで、ジメチルアミノエチルメタクリレートからなるポリマーが結合した樹脂粒子のエマルションを作製した。得られた樹脂粒子0.50gに、1,2−ビス(2−ヨードエトキシ)エタン0.0023g、イオン交換水50gを添加して、72時間攪拌して、架橋シェルポリマーを有する平均粒子径0.102μmのコアシェル型樹脂粒子のエマルションを得た。
以下、実施例1と同様にして、有機−無機ハイブリッド粒子と無機中空粒子を作製した。
【0067】
(実施例4)
(コアシェル型樹脂粒子、有機−無機ハイブリッド粒子の作製)
実施例2と同様の方法で架橋シェルポリマーを有する平均粒子径0.120μmのコアシェル型樹脂粒子のエマルションを得た。
得られた架橋ポリマーが結合したコアシェル型樹脂粒子0.25gにメタノール20g、イオン交換水30gを添加し、マグネチックスターラーで撹拌しながらテトラエトキシシラン0.50gをゆっくりと滴下した。48時間経過した後、得られたエマルションについて、遠心分離(13,500rpm、15分)→上澄み除去→エタノールへの再分散を3回繰り返し、最後にイオン交換水で同様に遠心分離を行うことにより精製し、最終的にイオン交換水に分散させることにより、有機−無機ハイブリッド粒子の分散液を得た。
【0068】
(無機中空無機粒子の作製)
得られた有機−無機ハイブリッド粒子を用い、実施例2と同様の方法で無機中空無機粒子を作製した。
【0069】
(比較例1)
(樹脂コア粒子の作製)
フラスコ中にスチレン4.5g、N−ブチル−N−メタクリロイロキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムブロマイド0.1g、2,2’−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)ジハイドロクロライド(和光純薬工業社製、V−50)0.15g、イオン交換水100gを添加し、攪拌速度100rpmで攪拌しながら温度60℃まで昇温した。10時間ソープフリー重合を行って、平均粒子径0.081μmの基材樹脂粒子エマルションを作製した。
【0070】
次いで、得られた基材樹脂粒子エマルションに、2−クロロプロピオニルオキシメタクリレート0.5gを一括添加して攪拌速度100rpm、重合温度70℃、重合時間8時間で反応させることで、塩素が表面に導入された樹脂コア粒子のエマルションを作製した。
【0071】
(コアシェル型樹脂粒子、有機−無機ハイブリッド粒子、無機中空粒子の作製)
その後、得られた塩素が表面に導入された樹脂コア粒子のエマルションに、ジメチルアミノエチルメタクリレート25g、2水和塩化銅0.5g、トリス(ジメチルアミノエチル)アミン0.5g、アスコルビン酸0.35gを添加して攪拌速度100rpm、重合温度25℃、重合時間24時間で反応させることで、ジメチルアミノエチルメタクリレートからなるポリマーが結合した平均粒子径0.19μmのコアシェル型樹脂粒子のエマルションを作製した。
以下、実施例1と同様にして、有機−無機ハイブリッド粒子と無機中空粒子を作製した。
【0072】
(比較例2)
実施例1と同様にして、基材樹脂粒子(ポリスチレン粒子)エマルションを作製した。
(コアシェル型樹脂粒子の作製)
得られたポリスチレン粒子のエマルションに、ジメチルアミノエチルメタクリレート5.0g、ジエチレングリコールジメタクリレート2.0g、過硫酸カリウム0.1gを一括添加して攪拌速度100rpm、重合温度70℃、重合時間8時間で反応させたところ、粒子の凝集が発生し、平均粒子径0.43μmのコアシェル型樹脂粒子のエマルションを作製した。
以下、実施例1と同様にして、有機−無機ハイブリッド粒子を合成したが、粒子同士の凝集がひどく、単独粒子の評価は不可能であった。
【0073】
(評価)
(1)平均粒子径の測定
動的光散乱式粒度分布計(Particle Sizing Systems社製、「NICOMP model 380 ZLS−S」)を用いて、各実施例、参考例及び比較例で用いた有機−無機ハイブリッド粒子及び無機粒子の体積平均粒子径及び粒子径のCV値を測定した。
【0074】
(2)シェルの膜厚及び中空度の測定
電子顕微鏡(日本電子社製、「JEM−1200EXII」)を用いて観察し、粒子の写真映像より任意に100個抽出し、有機−無機ハイブリッド粒子及び無機粒子のシェルの膜厚を測定した。
また、無機粒子について、粒子外径の長径と短径、粒子空孔部の長径と短径を計測した。下記式(2)を用いて各々の粒子の中空度を計算し、粒子100個の中空度の平均値をその粒子の中空度とした。
中空度(%)=((空孔部長径+空孔部短径)/(外径の長径+外径の短径))×100(2)
【0075】
(3)形状評価
電子顕微鏡(日本電子社製、「JEM−1200EXII」)を用いて観察し、粒子の写真映像より任意に100個抽出し、無機粒子の形状を観察した。
○:50個以上が略真球形状となっている。
×:割れや変形が生じている粒子が50個以上あり、略真球形状の粒子が50個未満となっている。
【0076】
(4)着色
得られたコアシェル粒子分散液の色を目視で観察した。
○:白色であった。
△:わずかに黄褐色に着色していた。
×:黄褐色に着色していた。
【0077】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、無機層の膜厚及び粒子径の小さい有機−無機ハイブリッド粒子が得られるとともに、粒子径や無機層の膜厚を均一に制御することが可能な有機−無機ハイブリッド粒子の製造方法、及び、無機中空粒子の製造方法を提供できる。
図1