(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
周方向に環状に連設して配置されると共に、上下方向に複数段に連設して配置された複数のライナープレートを残存外型枠として、これの内側にコンクリートを打設することにより周壁部を構築して、建物の下方に地下空間を形成するための地下空間構造体であって、
建物の下方の基礎地盤を開削して形成した掘削穴の底部に、墨出し用の捨コンクリートに固定されて、前記残存外型枠の設計取付け位置の外周ラインに沿って取り付けられた複数の下端部押え金物と、該下端部押え材に外周面を支持させて周方向に環状に連設して設置された、底盤部の厚さよりも大きな高さを有する複数のベースチャンネル部材と、該複数のベースチャンネル部材を残存外型枠として、これの内側にコンクリートを打設することにより形成された前記底盤部と、前記複数のベースチャンネル部材の上方に重ねて設置された前記複数のライナープレートと、該複数のライナープレート及び前記複数のベースチャンネル部材を残存外型枠として、これの内側に配置された内型枠との間にコンクリートを打設することにより形成された前記周壁部とからなり、
前記複数のベースチャンネル部材は、各々、横長矩形の正面形状を備える外周面プレートと、該外周面プレートの上下の縁部から内側に張り出して一体として設けられた周方向フランジと、前記外周面プレートの左右の縁部から内側に張り出して一体として設けられた上下方向フランジとからなり、
且つ前記複数のベースチャンネル部材は、前記外周面プレートの下端部外周面を前記下端部押え金物に当接させた状態で、周方向に環状に連設して設置されていると共に、上方の前記周方向フランジの上に周方向接合フランジを接合して、前記複数のライナープレートが周方向に環状に連設して取り付けられている地下空間構造体。
前記複数のライナープレートの前記周方向接合フランジは、前記複数のベースチャンネル部材の前記周方向フランジに、ボルト接合によって接合されている請求項1記載の地下空間構造体。
前記下端部押え金物は、L字形断面形状を備える山形鋼からなり、L字形断面形状の一方の辺部が前記捨コンクリートにコンクリート釘等の固定部材を用いて固定されていると共に、立設するL字形断面形状の他方の辺部に、前記ベースチャンネル部材の前記外周面プレートの下端部外周面を当接させて支持させている請求項1〜3のいずれか1項記載の地下空間構造体。
周方向に環状に連設して配置されると共に、上下方向に複数段に連設して配置される複数のライナープレートを残存外型枠として、これの内側にコンクリートを打設することにより、建物の下方に地下空間を形成するための構造体を構築する地下空間構造体の構築施工方法であって、
建物の下方の基礎地盤を開削して形成した立穴の底部に、墨出し用の捨コンクリートに固定して、複数の下端部押え金物を、前記残存外型枠の設計取付け位置の外周ラインに沿って取り付ける工程と、
設置した前記下端部押え金物に外周面を支持させて、底盤部の厚さよりも大きな高さを有する複数のベースチャンネル部材を、周方向に環状に連設させて設置する工程と、
環状に連設させて設置した前記複数のベースチャンネル部材を残存外型枠として、これの内側にコンクリートを打設することにより、前記底盤部を形成する工程と、
環状に連設させて設置した前記複数のベースチャンネル部材の上方に、前記複数のライナープレートを重ねて設置する工程と、
環状に連設させて設置した前記複数のベースチャンネル部材及び前記複数のライナープレートを残存外型枠として、これの内側に配置した内型枠との間にコンクリートを打設することにより、前記周壁部を形成する工程とを含み、
前記複数のベースチャンネル部材は、各々、横長矩形の正面形状を備える外周面プレートと、該外周面プレートの上下の縁部から内側に張り出して一体として設けられた周方向フランジと、前記外周面プレートの左右の縁部から内側に張り出して一体として設けられた上下方向フランジとからなり、前記複数のベースチャンネル部材を設置する工程において、前記複数のベースチャンネル部材を、前記外周面プレートの下端部外周面を前記下端部押え金物に当接させた状態で、周方向に環状に連設させて設置すると共に、前記複数のライナープレートを重ねて設置する工程において、上方の前記周方向フランジの上に周方向接合フランジを接合して、前記複数のライナープレートを、周方向に環状に連設させて取り付ける地下空間構造体の構築施工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の地下空間構造では、残存外型枠となるライナープレートによる簡易な山留め壁は、主として、建物の下方の基礎地盤を掘り下げながら、掘り下げた掘削穴の側壁面を覆ってライナープレートを設置すると共に、掘り下げの進行に伴って、設置したライナープレートの下方に、下段のライナープレートを、掘削壁面を覆って順次差し込んで行く方法によって形成されるようになっている。またライナープレートによる山留め壁を設置したら、設置した山留め壁を外型枠として、これの底部内側にコンクリートを打設して底盤部を形成することで、ライナープレートの底部を固めた後に、底盤部の上方に内型枠を設置してコンクリートを打設することにより、周壁部を構築して、地下空間の周囲の構造体を形成するようになっている。
【0006】
一方、残存外型枠となるライナープレートによる簡易な山留め壁を、建物の下方の基礎地盤を開削して掘削穴を形成してから設置する工法では、掘削穴の底部にコンクリートを打設して地下空間構造体の底盤部を形成する際に、複数のアンカーボルトを、ライナープレートの取り付け位置に沿って突出させた状態で埋設しておき、最下段のライナープレートは、接合フランジに形成された複数のボルト締着孔を、突出させたアンカーボルトに各々挿通して、ボルト接合することによって、底盤部から立設した状態で設置されるようになっている。また、底盤部にボルト接合された最下段のライナープレートの上方には、上段のライナープレートが、ボルト接合によって順次取り付けられてゆくことになる。
【0007】
しかしながら、残存外型枠となるライナープレートによる簡易な山留め壁を、基礎地盤を開削して掘削穴を形成してから設置する従来の工法では、掘削穴の底部にコンクリートを打設して地下空間構造体の底盤部を形成する際に、複数のアンカーボルトを、ライナープレートの取り付け位置に沿って精度良く位置決めして埋設する作業は、墨出し時の孔芯ずれや、アンカーボルトの鉛直度のずれを生じ易いため、手間のかかる作業になると共に、高度な熟練を要する作業となる。すなわち、ライナープレートの周縁部に沿って設けられた接合フランジには、ボルト締着孔が多数形成されていることから、これらのボルト締着孔の各々の位置に対応させて、複数のアンカーボルトを、精度良く位置決めして底盤部に埋設する作業は、多くの手間と時間を要することになる。またアンカーボルトに位置ずれや鉛直度のずれが生じたままになっていると、最下段のライナープレートを精度良く位置決めして取り付けることが困難になると共に、ライナープレートを複数段に重ね合わせて形成される残存外型枠の品質にばらつきが生じ易くなる。
【0008】
また、例えば大規模な土木工事においては、掘削穴の底部に形成されるコンクリート製の底盤部にアンカーボルトを精度良く据え付ける機材として、アンカーフレームが使用されているが、作業が大掛かりになることから、例えば木造の住宅建築物等の比較的小規模な建物に、地下空間を簡易に設ける工事において採用するのは相応しくない。
【0009】
本発明は、住宅建築物等の比較的小規模な建物に地下空間を設ける際に、残存外型枠となるライナープレートを、建物の下方の基礎地盤を開削して形成した掘削穴に、熟練を要することなく、簡易な作業によって、精度良く位置決めして設置してゆくことを可能にして、効率良く地下空間を形成することのできる地下空間構造体及び地下空間構造体の構築施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、周方向に環状に連設して配置されると共に、上下方向に複数段に連設して配置された複数のライナープレートを残存外型枠として、これの内側にコンクリートを打設することにより周壁部を構築して、建物の下方に地下空間を形成する地下空間の構築構造であって、建物の下方の基礎地盤を開削して形成した掘削穴の底部に、墨出し用の捨コンクリートに固定されて、前記残存外型枠の設計取付け位置の外周ラインに沿って取り付けられた複数の下端部押え金物と、該下端部押え材に外周面を支持させて周方向に環状に連設して設置された、底盤部の厚さよりも大きな高さを有する複数のベースチャンネル部材と、該複数のベースチャンネル部材を残存外型枠として、これの内側にコンクリートを打設することにより形成された前記底盤部と、前記複数のベースチャンネル部材の上方に重ねて設置された前記複数のライナープレートと、該複数のライナープレート及び前記複数のベースチャンネル部材を残存外型枠として、これの内側に配置された内型枠との間にコンクリートを打設することにより形成された前記周壁部とからなり、前記複数のベースチャンネル部材は、各々、横長矩形の正面形状を備える外周面プレートと、該外周面プレートの上下の縁部から内側に張り出して一体として設けられた周方向フランジと、前記外周面プレートの左右の縁部から内側に張り出して一体として設けられた上下方向フランジとからなり、且つ前記複数のベースチャンネル部材は、前記外周面プレートの下端部外周面を前記下端部押え金物に当接させた状態で、環状に連設して設置されていると共に、上方の前記周方向フランジの上に周方向接合フランジを接合して、前記複数のライナープレートが周方向に環状に連設して取り付けられている地下空間の構築構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0011】
そして、本発明の地下空間の構築構造は、前記複数のライナープレートの前記周方向接合フランジが、前記複数のベースチャンネル部材の前記周方向フランジに、ボルト接合によって接合されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の地下空間の構築構造は、前記複数のライナープレート及び前記複数のベースチャンネル部材が、矩形環状に連設して設置されていることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の地下空間の構築構造は、前記下端部押え金物が、L字形断面形状を備える山形鋼からなり、L字形断面形状の一方の辺部が前記捨コンクリートにコンクリート釘等の固定部材を用いて固定されていると共に、立設するL字形断面形状の他方の辺部に、前記ベースチャンネル部材の前記外周面プレートの下端部外周面を当接させて支持させていることが好ましい。
【0014】
さらにまた、本発明の地下空間の構築構造は、前記ベースチャンネル部材が、ライナープレートを用いて形成されていることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、周方向に環状に連設して配置されると共に、上下方向に複数段に連設して配置される複数のライナープレートを残存外型枠として、これの内側にコンクリートを打設することにより、建物の下方に地下空間を形成するための構造体を構築する地下空間構造体の構築施工方法であって、建物の下方の基礎地盤を開削して形成した掘削穴の底部に、墨出し用の捨コンクリートに固定して、複数の下端部押え金物を、前記残存外型枠の設計取付け位置の外周ラインに沿って取り付ける工程と、設置した前記下端部押え金物に外周面を支持させて、底盤部の厚さよりも大きな高さを有する複数のベースチャンネル部材を、周方向に環状に連設させて設置する工程と、環状に連設させて設置した前記複数のベースチャンネル部材を残存外型枠として、これの内側にコンクリートを打設することにより、前記底盤部を形成する工程と、環状に連設させて設置した前記複数のベースチャンネル部材の上方に、前記複数のライナープレートを重ねて設置する工程と、環状に連設させて設置した前記複数のベースチャンネル部材及び前記複数のライナープレートを残存外型枠として、これの内側に配置した内型枠との間にコンクリートを打設することにより、前記周壁部を形成する工程とを含み、前記複数のベースチャンネル部材は、各々、横長矩形の正面形状を備える外周面プレートと、該外周面プレートの上下の縁部から内側に張り出して一体として設けられた周方向フランジと、前記外周面プレートの左右の縁部から内側に張り出して一体として設けられた上下方向フランジとからなり、前記複数のベースチャンネル部材を設置する工程において、前記複数のベースチャンネル部材を、前記外周面プレートの下端部外周面を前記下端部押え金物に当接させた状態で、周方向に環状に連設させて設置すると共に、前記複数のライナープレートを重ねて設置する工程において、上方の前記周方向フランジの上に周方向接合フランジを接合して、前記複数のライナープレートを、周方向に環状に連設させて取り付ける地下空間構造体の構築施工方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の地下空間構造体又は地下空間構造体の構築施工方法によれば、住宅建築物等の比較的小規模な建物に地下空間を設ける際に、残存外型枠となるライナープレートを、建物の下方の基礎地盤を開削して形成した掘削穴に、熟練を要することなく、簡易な作業によって、精度良く位置決めして設置してゆくことを可能にして、効率良く地下空間を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい一実施形態に係る地下空間構造体10は、
図1に示すように、比較的小規模な建物として、例えば木造の住宅建築物20の下方の基礎地盤21に、地下空間22を、ライナープレート12,13を用いて形成するための構造体として採用されたものである。また、本実施形態の地下空間構造体10は、地中に残置されて残存外型枠11となるライナープレート12,13を、建物20の下方の基礎地盤21を開削して形成した掘削穴23の内部に、熟練を要することなく、簡易な作業によって、精度良く位置決めして設置してゆくことを可能にする構造体として採用されたものである。
【0019】
そして、本実施形態の地下空間構造体10は、周方向に環状に連設して配置されると共に、上下方向に複数段に連設して配置された複数のライナープレート12,13を残存外型枠11として、これの内側にコンクリートを打設することにより周壁部17を構築して、建物20の下方に地下空間22を形成するための構造であって、建物20の下方の基礎地盤21を開削して形成した掘削穴23の底部に、墨出し用の捨コンクリート24に固定されて、残存外型枠11の設計取付け位置の外周ラインに沿って取り付けられた複数の下端部押え金物16(
図4参照)と、この下端部押え材16に外周面を支持させて周方向に環状に連設して設置された(
図3参照)、底盤部18の厚さよりも大きな高さを有する複数のベースチャンネル部材14,15と、これらの複数のベースチャンネル部材14,15を下端部分の残存外型枠11’として、これの内側にコンクリートを打設することにより形成された底盤部18と、複数のベースチャンネル部材14,15の上方に重ねて設置された複数のライナープレート12,13(
図2参照)と、これらの複数のライナープレート12,13及び複数のベースチャンネル部材14,15を残存外型枠11として、これの内側に配置された内型枠(図示せず)との間にコンクリートを打設することにより形成された周壁部17とからなる。
【0020】
複数のベースチャンネル部材14,15は、
図5(a)〜(d)及び
図6(a)〜(c)に示すように、各々、横長矩形の正面形状を備える外周面プレート14a,15aと、外周面プレート14a,15aの上下の縁部から内側に張り出して一体として設けられた周方向フランジ14b,15bと、外周面プレート14a,15aの左右の縁部から内側に張り出して一体として設けられた上下方向フランジ14c,15cとからなる。
図3及び
図4に示すように、複数のベースチャンネル部材14,15は、外周面プレート14a,15aの下端部外周面を下端部押え金物16に当接させた状態で、周方向に環状に連設して設置されていると共に、上方の周方向フランジ14b,15bの上に周方向接合フランジ12b,13bを接合して、複数のライナープレート12,13が周方向に環状に連設して取り付けられている(
図2参照)。
【0021】
また、本実施形態では、下端部押え金物16は、L字形断面形状を備える山形鋼からなり、
図4に示すように、L字形断面形状の一方の辺部16aが捨コンクリート24にコンクリート釘等の固定部材(図示せず)を用いて固定されていると共に、立設するL字形断面形状の他方の辺部16bに、ベースチャンネル部材14,15の外周面プレート14a,15aの下端部外周面を当接させて支持させている。
【0022】
本実施形態では、残存外型枠11を構成するライナープレート12,13は、主として土木工事において用いる簡易な山留め材料として公知の部材である。ライナープレート12,13は、
図7(a)〜(c)及び
図8(a)〜(c)に示すように、例えば2.7〜7mm程度の厚さの薄い鋼板を、縦方向の断面形状が波形となるように加工して形成された波形プレート12a,13aと、波形プレート12a,13aの上下の縁部に一体として接合されて、残存外型枠11の周方向に延設して配置される周方向接合フランジ12b,13bと、波形プレート12a,13aの左右の縁部に一体として接合されて、残存外型枠11の上下方向に延設して配置される上下方向接合フランジ12c,13cとからなる。ライナープレート12,13は、例えば500mm程度の高さの横長矩形の正面形状を有するように形成されていて、作業員の手作業によっても組立が可能な軽量の山留め部材となっている。ライナープレート12,13の周方向接合フランジ12b,13bや上下方向接合フランジ12c,13cには、複数のライナープレート12,13を周方向や上下方向に一体として接合して連設させるための、ボルト締着孔19aが、所定の配設ピッチで複数箇所に各々開口形成されている。
【0023】
また、本実施形態では、ライナープレート12,13として、
図7(a)〜(c)に示す直線状の上面形状を備える直線部ライナープレート12と、
図8(a)〜(c)に示すL字形の上面形状を備える角部ライナープレート13とが用いられるようになっている。これらのライナープレート12,13は、4箇所の角部に角部ライナープレート13を各々配置して、周方向に矩形環状に連設させて設置することにより、後述するベースチャンネル部材14,15と共に、矩形枠状の平面形状を有する残存外型枠11を形成するようになっている(
図3参照)。すなわち、ライナープレート12,13は、上下方向接合フランジ12c,13cを介したボルト接合によって(
図2参照)、周方向に矩形環状に連設して接合一体化されると共に、周方向接合フランジ12b,13bを介したボルト接合によって、上下方向に複数段(本実施形態では2段)に接合一体化される。これらによって、矩形環状に組み立てられたライナープレート12,13は、同じように矩形環状に組み立てられた最下段のベースチャンネル部材14,15と共に、周囲の地盤からの土圧や水圧を効果的に支持する山留め壁としても機能する、残存外型枠11を形成する。
【0024】
ライナープレート12,13と共に残存外型枠11を構成するベースチャンネル部材14,15は、周方向に矩形環状に連設して捨コンクリート24の上に設置されることで、下端部分の残存外型枠11’を形成する(
図1、
図3参照)。ベースチャンネル部材14,15は、
図5(a)〜(d)及び
図6(a)〜(c)に示すように、例えば2.3〜6mm程度の厚さの薄い鋼板を用いて、横長矩形の平板形状を備えるように形成された外周面プレート14a,15aと、外周面プレート14a,15aの上下の縁部から内側に張り出して一体として設けられた周方向フランジ14b,15bと、外周面プレート14a,15aの左右の縁部から内側に張り出して一体として設けられた上下方向フランジ14c,15cとからなる。ベースチャンネル部材14,15は、例えば180mm程度の厚さで形成される底盤部18の厚さよりも大きな高さとして、例えば300〜600mm程度の高さの横長矩形の正面形状を有するように形成されていて、作業員の手作業によっても組立が可能な軽量の山留め部材となっている。ベースチャンネル部材14,15の上方の周方向フランジ14b,15bや、左右両側の上下方向フランジ14c,15cには、ベースチャンネル部材14,15を周方向に一体として接合して連設させたり、ベースチャンネル部材14,15の上にライナープレート12,13を一体として接合して連設させるための、ボルト締着孔19bが、所定の配設ピッチで複数箇所に各々開口形成されている。
【0025】
また、本実施形態では、ベースチャンネル部材14,15として、ライナープレート12,13と同様に、
図5(a)〜(d)に示す直線状の上面形状を備える直線部ベースチャンネル部材14と、
図6(a)〜(c)に示すL字形の上面形状を備える角部ベースチャンネル部材15とが用いられるようになっている。直線部ベースチャンネル部材14は、これの長さを適宜調整して形成した、長さの異なる複数種類のチャンネル部材が用いられる。これらのベースチャンネル部材14,15は、ライナープレート12,13と同様に、4箇所の角部に角部ベースチャンネル部材15を各々配置して、上下方向フランジ14c,15cを介したボルト接合によって、周方向に矩形環状に連設させて設置することにより、下端部分の残存外型枠11’を形成するようになっている(
図3参照)。
【0026】
本実施形態では、上述のライナープレート12,13やベースチャンネル部材14,15を残存外型枠11として用いて、建物20の下方に地下空間構造体10を構築するには、
図1に示すように、建物20の下方の基礎地盤21を掘削(開削)して、ライナープレート12,13やベースチャンネル部材14,15を設置するための掘削穴23を形成する。本実施形態では、地下空間構造体10は、建物20として例えば木造の住宅建築物20における、1階部分の角部領域の床下部分に、縦横2〜4m程度の矩形平面形状を有する、1.3〜1.5m程度の高さの地下空間22を形成するためのものとなっている。掘削穴23は、予定する地下空間22の平面形状よりも一回り大きな底面形状を備えるように、建物20が建築されるのに先立って、例えば掘削穴23の周囲の掘削壁面23aを法面状に形成して安定させた状態で、容易に掘削して形成することができる。なお、
図1においては、掘削穴23は、地下空間構造体10が構築された後の、埋め戻された状態で示されている。
【0027】
建物の下方の基礎地盤21に掘削穴23を形成したら、掘削穴23の底面部に基礎砕石25を締め固めた状態で敷設すると共に、コンクリートを打設して、墨出し用の捨コンクリート24を形成する。本実施形態では、捨コンクリート24は、ライナープレート12,13やベースチャンネル部材14,15が設置される地下空間構造体10の外周部分に沿ってのみ、例えば300〜500mm程度の幅で、矩形環状に帯状に連続させて設けられている。捨コンクリート24によって周囲を囲まれた内側部分には、基礎砕石25が、マット部材や防蟻シート等からなる被覆材26によって覆われた状態で、捨コンクリート24と同様の高さまで敷設される。マット部材や防蟻シート等からなる被覆材26の外周部部分は、捨コンクリート24の下方まで延設させて、捨コンクリート24と基礎砕石25との間に挟み込まれた状態で配設される。
【0028】
掘削穴23の底面部に墨出し用の捨コンクリート24を形成したら、捨コンクリート24の上に、ベースチャンネル部材14,15の外周面プレート14a,15aの設計取付け位置の外周ラインに沿って、墨出しを行う。また墨出しによって描かれた墨出し線をガイドとして、複数の下端部押え金物16を、残存外型枠11の設計取付け位置である、ベースチャンネル部材14,15の外周面プレート14a,15aの設計取付け位置の外周ラインに沿った所定の位置に配置して、捨コンクリート24に固定する(
図3参照)。
【0029】
複数の下端部押え金物16を取り付ける工程では、下端部押え金物16は、底盤部18のコンクリートを打設する際に、下端部分の残存外型枠11’に負荷される荷重を安定した状態で支持できるように、その配設位置や配設ピッチを適宜設定して取り付けることができる。また下端部押え金物16は、
図3に示すように、周方向に連設して接合される、ベースチャンネル部材14,15の上下方向フランジ14c,15cによる継ぎ目部分において、隣接する両側のベースチャンネル部材14,15に跨るように配置して、取り付けることが好ましい。これによって、下端部押え金物16に外周面を支持させて設置されたベースチャンネル部材14,15が、例えば底盤部18のコンクリートを打設する際に位置ずれするのを、さらに効果的に回避することが可能になる。また、作業員は、捨コンクリート24の上に描かれた墨出し線をガイドとして下端部押え金物16を取り付けることで、熟練を要することなく、複数の下端部押え金物16を、所定の取付け位置に、各々精度良く位置決めして固定することが可能になる。
【0030】
捨コンクリート24の上に複数の下端部押え金物16を固定したら、設置した下端部押え金物16に外周面を支持させて、底盤部18の厚さよりも大きな高さを有する複数のベースチャンネル部材14,15を、周方向に矩形環状に連設させて設置する。このような複数のベースチャンネル部材14,15を設置する工程では、
図4に示すように、外周面プレート14a,15aの下端部外周面を、例えばL字形断面形状を備える山形鋼からなる下端部押え金物16の、立設するL字形断面形状の他方の辺部16bに、内側から当接させて位置決めしながら、複数のベースチャンネル部材14,15を、捨コンクリート24の上に載置しただけの状態で、周方向に環状に連設させて容易に設置することができる。
【0031】
本実施形態では、複数のベースチャンネル部材14,15は、捨コンクリート24の表面の不陸を調整すると共に、ベースチャンネル部材14,15のレベルを調整するための、例えば鉄板からなる1枚又は複数枚のレベル調整材27を、下方の周方向フランジ14b,15bと捨コンクリート24との間に挟み込んで、捨コンクリート24の上に載置されることによって、周方向フランジ14b,15bや上下方向フランジ14c,15cを内側に張り出させた状態で取り付けられている。なお、下端部押え金物16は、レベル調整材27をベースチャンネル部材14,15の直下部分に位置決めして配置するためのガイドとしても機能する共に、レベル調整材27が外側に動こうとする力を支えるストッパーとしても機能するようになっている。
【0032】
また、本実施形態では、複数のベースチャンネル部材14,15は、上下方向フランジ14c,15cを、締着ボルト28(
図2参照)を用いたボルト接合により互いに接合することによって、周方向に矩形環状に連設して設置されて、下端部分の残存外型枠11’を形成するようになっている(
図3参照)。
【0033】
さらに、本実施形態では、接合される一対の上下方向フランジ14c,15cの間に、公知の帯板形状の止水用パッキン材29(
図2参照)を挟み込んだ状態で、上下方向フランジ14c,15cがボルト接合によって接合されるようになっている。これによって、上下方向フランジ14c,15cによる継ぎ目部に、強固な止水性を付与することが可能になる。止水用パッキン材29としては、例えばブチルゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等の合成ゴムを用いることができる。より具体的には、商品名「エプトシーラー」(日東電工株式会社製)を好ましく用いることができる。「エプトシーラー」は、各種機器の間隙を充填する発泡シール材で、EPDMの混和物を発泡させたものである。
【0034】
下端部押え金物16に外周面を支持させて、複数のベースチャンネル部材14,15を、捨コンクリート24の上に周方向に矩形環状に連設させて設置したら、設置した複数のベースチャンネル部材14,15を下端部分の残存外型枠11’として、これの内側にコンクリートを打設することにより、地下空間構造体10の底盤部18を形成する。底盤部18を形成する工程では、残存外型枠11’の内側に補強用の鉄筋を適宜配筋した後に、常法に従って、コンクリートを打設して硬化させることにより、底盤部18を容易に形成することができる。
【0035】
ここで、ベースチャンネル部材14,15による下端部分の残存外型枠11’は、ベースチャンネル部材14,15の下端部外周面を下端部押え金物16に支持させて、ベースチャンネル部材14,15を捨コンクリート24の上に載置しただけの簡易な構成のものとなっているが、ベースチャンネル部材14,15は、矩形環状に一体として連設されることで、その矩形枠形状を強固に保持できるようになっていると共に、周囲に配置された下端部押え金物16に支持させることで、横方向への位置ずれが効果的に回避されるので、残存外型枠11’の内側に底盤部18のコンクリートを打設する作業を、安定した状態でスムーズに行うことが可能になる。また打設された底盤部18のコンクリートが硬化することで、ベースチャンネル部材14,15による下端部分の残存外型枠11’が強固に固められることになるので、以後のライナープレート12,13の組立て作業や、周壁部17のコンクリートの打設作業を、安定した状態でスムーズに行うことが可能になる。
【0036】
下端部分の残存外型枠11’の内側にコンクリートを打設して底盤部18を形成したら、矩形環状に連設させて設置した複数のベースチャンネル部材14,15の上方に、
図1及び
図2に示すように、複数のライナープレート12,13を2段に重ねて設置する。複数のライナープレート12,13を重ねて設置する工程では、下端部分の残存外型枠11’を構成する、下方に設置されたベースチャンネル部材14,15の上方の周方向フランジ14b,15bの上に、締着ボルト28を用いたボルト接合によって周方向接合フランジ12b,13bを接合して、1段目の複数のライナープレート12,13を、周方向に矩形環状に連設させて取り付ける。
【0037】
すなわち、ライナープレート12,13の周方向接合フランジ12b,13bや上下方向接合フランジ12c,13cには、ボルト締着孔19aが複数箇所に開口形成されており、ベースチャンネル部材14,15の上方の周方向フランジ14b,15bには、ライナープレート12,13の周方向接合フランジ12b,13bのボルト締着孔19aと対応する位置に、ボルト締着孔19bが複数箇所に開口形成されている。これらのボルト締着孔19a,19bを合致させて、適宜選択したボルト締着孔19a,19bに締着ボルト28を締着させることにより、ベースチャンネル部材14,15の上方に、1段目のライナープレート12,13を連設させて、容易に接合することが可能になる。
【0038】
ここで、ベースチャンネル部材14,15は、底盤部18の厚さよりも大きな高さを有しているので、残存外型枠11’の内側にコンクリートを打設して底盤部18を形成した後においても、ベースチャンネル部材14,15の上方の周方向フランジ14b,15bと、底盤部18との間には、例えば120mm程度の隙間が保持されることになる。この隙間を介して、ボルト締着孔19a,19bに締着ボルト28を締着する作業を、容易に行うことが可能になる。締着ボルト28を用いたボルト接合による、ベースチャンネル部材14,15の上方の周方向フランジ14b,15bと、ライナープレート12,13の周方向接合フランジ12b,13bとの接合は、公知の帯板形状の止水用パッキン材29を挟み込んだ状態で行われるようになっている(
図4参照)。
【0039】
また、本実施形態では、1段目の複数のライナープレート12,13は、矩形環状に連設させた複数のベースチャンネル部材14,15の上方の周方向フランジ14b,15bに沿って、周方向に矩形環状に連設して配置されて、ベースチャンネル部材14,15の上方に接合されることで、中間部分の残存外型枠11を構成する。周方向に連設させた複数のライナープレート12,13は、ライナープレートを設置する常法に従って、締着ボルト28を用いたボルト接合によって、上下方向接合フランジ12c,13cの間に公知の帯板形状の止水用パッキン材29を挟み込んだ状態で、周方向に一体として接合される。
【0040】
さらに、本実施形態では、1段目の複数のライナープレート12,13の上方には、2段目の複数のライナープレート12,13が、ライナープレートを設置する常法に従って、締着ボルト28を用いたボルト接合によって、周方向フランジ14b,15bの間に公知の帯板形状の止水用パッキン材29を挟み込んだ状態で、一体として接合される。また2段目の複数のライナープレート12,13は、締着ボルト28を用いたボルト接合によって、上下方向接合フランジ12c,13cの間に公知の帯板形状の止水用パッキン材29を挟み込んだ状態で、周方向に矩形環状に連設させて取り付けられる。
【0041】
これらによって、矩形環状に連設させて設置した複数のベースチャンネル部材14,15と、これの上方に重ね合わせて2段に設置された複数のライナープレート12,13とが一体となった残存外型枠11が、簡易に且つ容易に形成されることになる。
【0042】
複数のベースチャンネル部材14,15及び複数のライナープレート12,13による残存外型枠11を形成したら、これの内側に組み立てて配置した内型枠(図示せず。)との間にコンクリートを打設することによって、
図1に示すように、地下空間構造体10の周壁部17を形成する。周壁部17を形成する工程では、底盤部18を作業用の足場として、常法に従って、残存外型枠11の内側に内型枠を組み立てると共に、残存外型枠11と内型枠との間の型枠空間に補強用の鉄筋を適宜配筋した後に、コンクリートを打設して硬化させることにより、矩形環状の中空の平面形状を備える周壁部17を、底盤部18から連続して一体として立設させた状態で、容易に形成することが可能になる。
【0043】
そして、本実施形態によれば、上述のような工程を含む構築施工方法によって、ベースチャンネル部材14,15及び複数のライナープレート12,13を残存外型枠11として、底盤部18と周壁部17とからなる地下空間構造体10を、容易に構築することが可能になる。
【0044】
地下空間構造体10の周壁部17を形成したら、従来の技術と同様に、例えば周壁部17を形成するのに用いた内型枠をさらに上方に延設させて組み立てると共に、組み立てた内型枠の外側に鉄筋及び外型枠を組み立ててから、コンクリートを打設することにより、周壁部17の上方に連続して立上り基礎部30を形成する。また掘削穴23を埋め戻した後に、立上り基礎部30の基端部分から外側に横方向に延設させて、基礎スラブ31を形成する。しかる後に、例えば立上り基礎部30の上に土台32を設置すると共に、この土台32に支持させて床部33や地下室天井部34等を取り付ける。さらに、地下空間構造体10の内壁面を覆って、例えば押出法ポリスチレンフォーム等からなる断熱材、ボード下地、せっこうボード、構造用合板、フロア張り等が、適宜取り付けられる。これらによって、床部33及び地下室天井部34に形成された出入り口部35から出入り可能な地下空間22が、地下空間構造体10の底盤部18及び周壁部17と、地下室天井部34とによって周囲を囲まれた状態で、簡易に形成されることになる。
【0045】
したがって、本実施形態によれば、住宅建築物等の比較的小規模な建物20に地下空間22を設ける際に、残存外型枠11となるライナープレート12,13を、建物20の下方の基礎地盤21を開削して形成した掘削穴23に、熟練を要することなく、簡易な作業によって、精度良く位置決めして設置してゆくことを可能にして、効率良く地下空間22を形成することが可能になる。
【0046】
また、本実施形態によれば、下端部分の残存外型枠11’となるベースチャンネル部材14,15は、これの内側にコンクリートを打設して形成される底盤部18の厚さよりも大きな高さを有しており、これによって底盤部18と周壁部17と間のコンクリートの打継ぎ目の部分を外側から覆うことができるので、打継ぎ目に向かう水の流れを効果的に遮断して、地下空間構造体10の止水性をさらに向上させることが可能になる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、複数のベースチャンネル部材の上方に重ねて設置される複数のライナープレートは、2段に重ねて設置される必要は必ずしもなく、1段又は3段以上に重ねて設置することもできる。複数のライナープレート及び複数のベースチャンネル部材は、周方向に矩形環状に連設して設置される必要は必ずしも無く、多角形、長円形、円形等のその他の形状の環状に連設して設置することもできる。さらに、ベースチャンネル部材は、公知のライナープレートを用いて形成することもできる。ライナープレートは、例えばこれの下端部外周面を平坦な面とすることで下端部押え金物に当接支持させて、捨コンクリートの上に周方向に環状に連設させて載置することにより、下端部分の残存外型枠とすることができる。