特許第6206971号(P6206971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6206971-リチウム空気二次電池 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206971
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】リチウム空気二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 12/08 20060101AFI20170925BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20170925BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20170925BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20170925BHJP
   H01B 1/08 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H01M12/08 K
   H01M2/16 M
   H01M4/86 M
   H01M4/86 B
   H01B1/06 A
   H01B1/08
【請求項の数】20
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-512440(P2014-512440)
(86)(22)【出願日】2013年4月1日
(86)【国際出願番号】JP2013059841
(87)【国際公開番号】WO2013161516
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2016年2月19日
(31)【優先権主張番号】特願2012-101532(P2012-101532)
(32)【優先日】2012年4月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(72)【発明者】
【氏名】山田 直仁
(72)【発明者】
【氏名】山本 一博
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 賢信
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/104570(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/109670(WO,A1)
【文献】 特開2011−238404(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/108526(WO,A1)
【文献】 特開2009−016090(JP,A)
【文献】 特開2011−073962(JP,A)
【文献】 特開2011−073963(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/073292(WO,A1)
【文献】 Philippe Stevens, et al,Development of an aqueous, rechargeable lithium-air battery operating with untreated air,217th ECS Meeting 2010,Abstract,2010年,746
【文献】 Yuta Shimonishi, et al,Synthesis of garnet-type Li7-xLa3Zr2O12-1/2x and its stability in aqueous solutions,Solid State Ionics,2011年 1月21日,Vol.183,p.48-53
【文献】 Henrik Buschmann, et al,Lithium metal electrode kinetics and ionic conductivity of the solid lithium ion conductors"Li7La3Zr,Journal of Power Sources,2012年 1月23日,Vol.206,p.236-244
【文献】 Shingo Ohta, et al,High lithium ionic conductivity in the garnet-type oxide Li7-xLa3(Zr2-x,Nbx)O12(x=0-2),Journal of Power Sources,2010年11月24日,Vol.196,p.3342-3345
【文献】 武田保雄,今西誠之,山本治,水溶液系リチウム空気電池開発の現状と課題,電子情報通信学会技術研究報告,CPM,電子部品・材料,2010年 1月25日,Vol.109,No.410,p.23-28
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 12/08
H01B 1/06
H01B 1/08
H01M 2/16
H01M 4/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極としての空気極と、
前記空気極の一面側に密着して設けられ、90%以上の相対密度を有する水酸化物イオン伝導性無機固体電解質からなる陰イオン交換体と、
前記陰イオン交換体と離間して設けられ、リチウムイオン伝導性無機固体電解質からなるセパレータと、
前記セパレータとリチウムイオン授受可能に設けられ、リチウムを含んでなる負極と、
前記陰イオン交換体及び前記セパレータの間に充填されるアルカリ電解液と、
を備えた、リチウム空気二次電池。
【請求項2】
前記陰イオン交換体が二酸化炭素を通さない、請求項1に記載のリチウム空気二次電池。
【請求項3】
前記水酸化物イオン伝導性無機固体電解質が緻密質セラミックスである、請求項1又は2に記載のリチウム空気二次電池。
【請求項4】
前記水酸化物イオン伝導性無機固体電解質が、水熱固化法によって緻密化された層状複水酸化物である、請求項1〜のいずれか一項に記載のリチウム空気二次電池。
【請求項5】
前記水酸化物イオン伝導性無機固体電解質が、一般式:
2+1−x3+(OH)n−x/n・mH
(式中、M2+は少なくとも1種以上の2価の陽イオンであり、M3+は3価の少なくとも1種以上の陽イオンであり、An−はn価の陰イオンであり、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4であり、mは水のモル数を意味する0を超える任意の数である。
の基本組成を有する層状複水酸化物からなる、請求項1〜のいずれか一項に記載のリチウム空気二次電池。
【請求項6】
2+がMg2+であり、M3+がAl3+であり、An−がCO2−である、請求項に記載のリチウム空気二次電池。
【請求項7】
前記水酸化物イオン伝導性無機固体電解質が、NaCo、LaFeSr10、BiSr14Fe2456、NaLaTiO、RbLaNb及びKLaNbらなる群から選択される少なくとも一種の基本組成を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載のリチウム空気二次電池。
【請求項8】
前記水酸化物イオン伝導性無機固体電解質が板状に形成されてなる、請求項1〜のいずれか一項に記載のリチウム空気二次電池。
【請求項9】
前記リチウムイオン伝導性無機固体電解質が90%以上の相対密度を有する緻密質セラミックスである、請求項1〜のいずれか一項に記載のリチウム空気二次電池。
【請求項10】
前記リチウムイオン伝導性無機固体電解質が、ガーネット系セラミックス材料、窒化物系セラミックス材料、ペロブスカイト系セラミックス材料、及びリン酸系セラミックス材料からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1〜のいずれか一項に記載のリチウム空気二次電池。
【請求項11】
前記リチウムイオン伝導性無機固体電解質が、ガーネット系セラミックス材料である、請求項1〜10のいずれか一項に記載のリチウム空気二次電池。
【請求項12】
前記ガーネット系セラミックス材料が、Li、La、Zr及びOを含んで構成されるガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を有する酸化物焼結体である、請求項11に記載のリチウム空気二次電池。
【請求項13】
前記ガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造がNb及び/又はTaをさらに含んで構成される、請求項12に記載のリチウム空気二次電池。
【請求項14】
前記酸化物焼結体がAl及び/又はMgをさらに含む、請求項12又は13に記載のリチウム空気二次電池。
【請求項15】
前記空気極が、酸化還元触媒機能を有する触媒が担持された多孔質炭素材料である、請求項1〜14のいずれか一項に記載のリチウム空気二次電池。
【請求項16】
前記空気極が、酸化還元触媒機能を有する無機酸化物微粒子で構成された多孔質材料であり、該多孔質材料の一面側に前記陰イオン交換体が膜状に形成されてなる、請求項1〜及び14のいずれか一項に記載のリチウム空気二次電池。
【請求項17】
前記空気極を外部空気と接触可能にするための空気孔を有し、かつ、前記空気極、前記陰イオン交換体、前記アルカリ電解液、前記セパレータ及び前記負極を収容する電池容器をさらに備えた、請求項1〜16のいずれか一項に記載のリチウム空気二次電池。
【請求項18】
前記負極が前記セパレータと直接接触してなる、請求項1〜17のいずれか一項に記載のリチウム空気二次電池。
【請求項19】
前記アルカリ電解液がリチウムイオン含有水溶液である、請求項1〜18のいずれか一項に記載のリチウム空気二次電池。
【請求項20】
前記アルカリ電解液が水酸化リチウム水溶液である、請求項1〜19のいずれか一項に記載のリチウム空気二次電池。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2012年4月26日に出願された日本国特許出願2012−101532号に基づく優先権を主張するものであり、その全体の開示内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、リチウム空気二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0003】
革新電池候補の一つとして金属空気電池が挙げられる。金属空気電池は、電池反応に関与する酸素が空気中から供給されるため、電池容器内のスペースを負極活物質の充填に最大限利用することができ、それにより原理的に高いエネルギー密度を実現することができる。
【0004】
現在提案されている金属空気電池の多くはリチウム空気電池である。通常のリチウム空気電池においては、放電時に、以下の反応式に示されるように、空気極(正極)側でOが還元されてLiOが生成する一方、負極でリチウムが酸化されてLiが生成する。
そして、充電時にはこの逆の反応が起こる。
正極: O + 4e + 4Li → 2Li
負極: Li → Li + e
【0005】
例えば、特許文献1(特開2010−176941号公報)には、リチウム金属を含む負極、負極用の電解液、リチウムイオンのみを通す固体電解質セパレータ、空気極用の電解液、及び空気極がその順に設けられたリチウム空気電池が開示されており、負極用の電解液として有機電解液を、空気極用の電解液としてアルカリ性の水系電解液を用いることが提案されている。この構成は、空気中の二酸化炭素が空気極を通過してアルカリ性の水系電解液に達して反応し、アルカリ金属の炭酸塩が生成することにより電解液が劣化するという問題や,アルカリ金属の炭酸塩が空気極中の細孔を塞ぐといった問題が発生しうるため、長期使用に適したものではない。
【0006】
特許文献2(国際公開第2009/104570号)には、アルカリ性水系電解液を用いた金属空気電池やアルカリ燃料電池において、空気極とアルカリ電解液との界面に陰イオン交換型の高分子膜を配設することで、上述したような二酸化炭素による炭酸塩の析出を抑制することが開示されている。このような構成においては、空気極中の触媒表面において、酸素と水からOHイオンが生成し、OHイオンが陰イオン交換型の高分子膜及び電解液中を移動し、金属空気電池の場合には金属負極と反応して電池動作が可能である。しかしながら、空気極性能の劣化は陰イオン交換型の高分子膜を用いない場合に比べて低減はされるものの完全には抑制できていない。
【0007】
非特許文献1(ECS Transactions, 28(32)1-12(2010))には、水系リチウム空気電池に、リチウム超イオン伝導体(LISICON)製の膜を固体電解質セパレータとして用いて特許文献1のようにリチウム金属負極を隔離し、かつ、特許文献2のようにポリマー製の陰イオン交換膜を備えた空気極を設けた、大気中の二酸化炭素の浸入を防止する構造が開示されている。しかしながら、非特許文献1による陰イオン交換膜を配置した空気極を用いても、寿命は延びるものの、二酸化炭素に伴う問題を完全には解決できていない。これは、ポリマー製の陰イオン交換膜は、二酸化炭素の透過を完全に防止できないためではないかと考えられる。
【0008】
ところで、近年、水酸化物イオン伝導性を有する固体電解質として、M2+1−x3+(OH)n−x/n・mHOなる一般式(式中、M2+は2価の陽イオンであり、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオンである)で表わされる層状複水酸化物(LDH)が知られている。例えば、特許文献3(国際公開第2010/109670号)には、直接アルコール燃料電池のアルカリ電解質膜として、層状複水酸化物の膜を用いることが提案されている。また、層状複水酸化物以外の水酸化物イオン伝導性固体電解質として、特許文献4(国際公開第2011/108526号)に、主成分がNaCo、LaFeSr10、BiSr14Fe2456、NaLaTiO、RbLaNb、KLaNb、SrCo1.6Ti1.4(OH)・xHOからなる水酸化物イオン伝導性固体電解質層を燃料電池に用いることが開示されている。
【0009】
一方、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質として、LiLaZr12(以下、LLZという)系の組成を有するガーネット型のセラミックス材料が注目されている。例えば、特許文献5(特開2011−051800号公報)には、LLZの基本元素であるLi,La及びZrに加えてAlを加えることで、緻密性やリチウムイオン伝導率を向上できることが開示されている。特許文献6(特開2011−073962号公報)には、LLZの基本元素であるLi、La及びZrに加えてNb及び/又はTaを加えることで、リチウムイオン伝導率を更に向上できることが開示されている。特許文献7(特開2011−073963号公報)には、Li、La、Zr及びAlを含み、Laに対するLiのモル比を2.0〜2.5とすることで、緻密性を更に向上できることが開示されている。
【0010】
また、アルカリ電解液に関して、特許文献8(特開2012−33490号公報)には、水系電解質が水酸化リチウムとリチウムハライドとを含むリチウム空気電池が開示されており、水系電解質内にリチウムハライドを含めることによって、水酸化リチウムと固体電解質膜との反応を抑制して負極を保護できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−176941号公報
【特許文献2】国際公開第2009/104570号
【特許文献3】国際公開第2010/109670号
【特許文献4】国際公開第2011/108526号
【特許文献5】特開2011−051800号公報
【特許文献6】特開2011−073962号公報
【特許文献7】特開2011−073963号公報
【特許文献8】特開2012−33490号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Philippe Stevens et al.,"Development of a lithium air rechargeable battery", ECS Transactions, 28(32)1-12(2010)
【発明の概要】
【0013】
本発明者らは、今般、空気極とアルカリ電解液との間に水酸化物イオン伝導性固体電解質を陰イオン交換体として介在させ、かつ、負極とアルカリ電解液とを隔離するセパレータとしてリチウムイオン伝導性固体電解質を用いることにより、アルカリ電解液、空気極及び負極の劣化を効果的に防止して、長寿命でかつ長期信頼性が高いリチウム空気二次電池を実現できるとの知見を得た。
【0014】
したがって、本発明の目的は、アルカリ電解液、空気極及び負極の劣化を効果的に防止可能な、長寿命でかつ長期信頼性が高いリチウム空気二次電池を提供することにある。
【0015】
本発明の一態様によれば、正極としての空気極と、
前記空気極の一面側に密着して設けられ、水酸化物イオン伝導性無機固体電解質からなる陰イオン交換体と、
前記陰イオン交換体と離間して設けられ、リチウムイオン伝導性無機固体電解質からなるセパレータと、
前記セパレータとリチウムイオン授受可能に設けられ、リチウムを含んでなる負極と、
前記陰イオン交換体及び前記セパレータの間に充填されるアルカリ電解液と、
を備えた、リチウム空気二次電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明によるリチウム空気二次電池を説明するための概念図である。
図2】本発明によるリチウム空気二次電池の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
リチウム空気二次電池
図1に、本発明によるリチウム空気二次電池の構成を概念的に示す。図1に示されるリチウム空気二次電池10は、正極としての空気極12と、陰イオン交換体14と、セパレータ16と、負極18と、アルカリ電解液20とを備える。陰イオン交換体14は、空気極12の一面側に密着して設けられ、水酸化物イオン伝導性無機固体電解質からなる。セパレータ16は、陰イオン交換体14と離間して設けられ、リチウムイオン伝導性無機固体電解質からなる。負極18は、セパレータ16とリチウムイオン授受可能に設けられ、リチウムを含んでなる。アルカリ電解液20は、陰イオン交換体14及びセパレータ16の間に充填されてなる。
【0018】
このように、本発明のリチウム空気二次電池10は、空気極12の一面側に、水酸化物イオン伝導性無機固体電解質からなる陰イオン交換体14が密着して設けられてなる。このような構成によれば、空気極12とアルカリ電解液20との間に、水酸化物イオン伝導性無機固体電解質からなる陰イオン交換体14が介在することになるので、空気極12で生成した水酸化物イオン(OH)のみをアルカリ電解液20に通過させる一方、空気中に含まれる二酸化炭素等の望ましくない物質の混入を阻止することができる。これにより、アルカリ電解液の劣化を防止して、寿命の長いリチウム空気電池を実現できる。同時に、陰イオン交換膜14の介在により、アルカリ電解液20中のリチウムイオン(Li)が空気極12まで移動するのを阻止して、LiOH析出物が空気極12中の細孔内で生成して細孔を塞ぐという問題を回避することもでき、これは長期信頼性の向上に寄与する。
また、アルカリ電解液20と負極18とを隔離するセパレータ16として、緻密性に優れるリチウムイオン伝導性固体電解質を用いることにより、セパレータからのアルカリ電解液20及びそれに含まれる水酸化物イオンの漏れ、及びそれによるアルカリ電解液ないし水酸化物イオンと負極18との反応による負極の劣化を効果的に防止することができる。
その結果、本発明によれば、長寿命でかつ長期信頼性が高いリチウム空気二次電池の提供が可能となる。
【0019】
すなわち、本発明によるリチウム空気二次電池10における、空気極(正極)12、電解液20及び負極18における放電時の反応は以下のとおりであり、充電時はその逆となる。
正極: 2HO + O + 4e → 4OH
電解液: Li + OH → LiOH
負極: Li → Li + e
【0020】
なお、本発明のリチウム空気二次電池10では、陰イオン交換体14が空気極12の一面側に密着して設けられるため、アルカリ電解液20は陰イオン交換体14の負極18側にのみに存在し、空気極12側には存在しない。この場合、正極反応に必要なHOは分子構造中に含水可能な陰イオン交換体においては浸入したHOを使用できるが、併せて空気中の水分を正極反応に必要なHOとして使用することもできる。したがって、電池動作を効率的に行うには、本発明の電池は加湿空気の存在下で使用されるのが好ましい。
【0021】
空気極(正極)
空気極12は、リチウム空気電池における正極として機能するものであれば特に限定されず、酸素を正極活物質として利用可能な種々の空気極が使用可能である。空気極12の好ましい例としては、黒鉛等の酸化還元触媒機能を有するカーボン系材料、白金、ニッケル等の酸化還元触媒機能を有する金属、ペロブスカイト型酸化物、二酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト、スピネル酸化物等の酸化還元触媒機能を有する無機酸化物といった触媒材料が挙げられる。
【0022】
空気極12は、酸化還元触媒機能を有する触媒が担持された多孔質炭素材料であるのが好ましい。この場合、上記したような触媒材料をMg−Al型層状複水酸化物(LDH)からなる水酸化物イオン伝導性固体電解質板の空気極側にペースト化して塗布して空気極を形成してもよい。
【0023】
また、空気極12は、酸化還元触媒機能を有する無機酸化物微粒子で構成された多孔質材料であってもよく、その場合には多孔質材料の一面側に陰イオン交換体が膜状に形成されてなるのが好ましい。この場合、ペロブスカイト型酸化物の粉末粒子を焼結により多孔質体として成形し、この多孔質体の一面側にMg−Al型層状複水酸化物(LDH)を水熱法等により緻密に製膜して、空気極と無機固体電解質体の積層構造を形成してもよい。
【0024】
空気極12は導電材を含んでいてもよい。導電材は、導電性を有する材料であれば特に限定されないが、好ましい例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、鱗片状黒鉛のような天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等のグラファイト類、炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維類、銅、銀、ニッケル、アルミニウム等の金属粉末類、ポリフェニレン誘導体等の有機導電性材料、及びこれらの任意の混合物が挙げられる。
【0025】
空気極12はバインダーを含んでいてもよい。バインダーは、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂であってよく特に限定されないが、好ましい例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、及びこれらの任意の混合物が挙げられる。
【0026】
空気極12は、陰イオン交換体14と同質の水酸化物イオン伝導性固体電解質からなる物質との混合物又は複合体であることが好ましい。このような構成により、陰イオン交換体の表面積が増大し、正極反応で生成したOHイオンをより効果的に移動させることができる。これは、陰イオン交換体を備えた亜鉛空気電池等の他の空気電池にも有効である。
【0027】
空気極12は陰イオン交換体14と反対側の面に正極集電体を備えたものであってもよい。この場合、正極集電体は空気極12に空気が供給されるように通気性を有するのが好ましい。正極集電体の好ましい例としては、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属板若しくは金属メッシュ、カーボンペーパー、及び酸化物導電体等が挙げられ、耐食性及び通気性の点でステンレス金網が特に好ましい。
【0028】
陰イオン交換体
陰イオン交換体14は、水酸化物イオン伝導性無機固体電解質で構成され、空気極12で生成した水酸化物イオンをアルカリ電解液20に選択的に通過させることが可能なあらゆる部材であることができる。すなわち、陰イオン交換体14は、空気中に含まれる二酸化炭素等の望ましくない物質の電池内への混入を阻止すると同時に、アルカリ電解液20中のリチウムイオンが空気極12まで移動するのを阻止する。したがって、陰イオン交換体14は二酸化炭素を通さないものであることが望まれる。このため、水酸化物イオン伝導性無機固体電解質が緻密質セラミックスであるのが好ましい。このような緻密な水酸化物イオン伝導性無機固体電解質体は、アルキメデス法で算出して、90%以上の相対密度を有するのが好ましく、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは95%以上であるが、空気中に含まれる二酸化炭素等の望ましくない物質の電池内への混入を阻止できるのであればこれに限定されない。
【0029】
本発明の好ましい態様によれば、水酸化物イオン伝導性無機固体電解質は層状複水酸化物(LDH)である。このような層状複水酸化物は水熱固化法によって緻密化されるのが好ましい。したがって、水熱固化を経ていない単なる圧粉体は、緻密でなく、溶液中で脆いことから本発明の無機固体電解質体として好ましくない。もっとも、水熱固化法によらなくても、緻密で硬い無機固体電解質体が得られるかぎりにおいて、あらゆる固化法が採用可能である。
【0030】
特に好ましい層状複水酸化物(LDH)は、一般式:
2+1−x3+(OH)n−x/n・mH
(式中、M2+は少なくとも1種以上の2価の陽イオンであり、M3+は少なくとも1種以上の3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオンであり、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4であり、mは水のモル数を意味する0を越える任意の数である。)
の基本組成を有するものである。M2+の例としてはMg2+、Ca2+、Sr2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、及びZn2+が挙げられ、M3+の例としては、Al3+、Fe3+、Ti3+、Y3+、Ce3+、Mo3+、及びCr3+が挙げられ、An−の例としてはCO2−及びOHが挙げられる。M2+及びM3+としては、それぞれ1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。特に、M2+がMg2+であり、M3+がAl3+であり、An−がCO2−であるMg−Al型LDHが好ましく、この化合物は、特許文献3(国際公開第2010/109670号)において、水酸化物イオン伝導性を有するものとして、直接アルコール燃料電池のアルカリ電解質膜としての利用が開示されている。しかし、特許文献3におけるアルカリ電解質膜は、Mg−Al型層状複水酸化物の粉末をコールドプレス等で固めただけの膜であり、粉末同士の結合は強固なものではない。水酸化物はいわゆる酸化物セラミックスのように焼結によって粉末を一体緻密化することはできないため、このような手法が採られてきたものと理解される。また、上記一般式においてM3+の一部または全部を4価またはそれ以上の価数の陽イオンで置き換えてもよく、その場合は、上記一般式における陰イオンAn−の係数x/nは適宜変更されてよい。そこで、本発明に使用可能な無機固体電解質体とするために、原料粉末を圧力で固めたペレットを水熱固化法によって緻密化するのが好ましい。この手法は、層状複水酸化物、とりわけMg−Al型層状複水酸化物の一体緻密化に極めて有効である。水熱固化法は、耐圧容器に純水と板状の圧粉体を入れ、120〜250℃、好ましくは180〜250℃の温度、2〜24時間、好ましくは3〜10時間で行うことができる。
【0031】
本発明の別の好ましい態様によれば、水酸化物イオン伝導性無機固体電解質が、NaCo、LaFeSr10、BiSr14Fe2456、NaLaTiO、RbLaNb、KLaNb、及びSrCo1.6Ti1.4(OH)・xHOからなる群から選択される少なくとも一種の基本組成を有するものであってもよい。これらの無機固体電解質は、特許文献4(国際公開第2011/108526号)において、燃料電池用の水酸化物イオン伝導性固体電解質として開示されるものであり、焼結により上記基本組成の緻密質焼結体を作製後、還元・加水処理を行って水酸化物イオン伝導性を発現させることにより得ることができる。
【0032】
陰イオン交換体14の形状は特に限定されず、緻密な板状及び膜状のいずれであってもよいが、板状に形成されてなるのが二酸化炭素の混入及びリチウムイオンの空気極への移動をより一層効果的に阻止できる点で好ましい。もっとも、陰イオン交換体14が、二酸化炭素の混入及びLiイオンの空気極への移動を十分に阻止できる程の緻密性を有するのであれば膜状に形成されるのも好ましい。板状の無機固体電解質体の好ましい厚さは、0.01〜0.5mmであり、より好ましくは0.01〜0.2mm、さらに好ましくは0.01〜0.1mmである。また、無機固体電解質体の水酸化物イオン伝導度は高ければ高い方が望ましいが、典型的には10−4〜10−1S/mの伝導度を有する。
【0033】
陰イオン交換体14は、水酸化物イオン伝導性を有する無機固体電解質を含んで構成される粒子群と、これら粒子群の緻密化や硬化を助ける補助成分との複合体であってもよい。あるいは、陰イオン交換体14は、基材としての開気孔性の多孔質体と、この多孔質体の孔を埋めるように孔中に析出及び成長させた無機固体電解質(例えば層状複水酸化物)との複合体であってもよい。この多孔質体を構成する物質の例としては、アルミナ、ジルコニア等のセラミックスや、発泡樹脂又は繊維状物質からなる多孔性シート等の絶縁性の物質が挙げられる。
【0034】
陰イオン交換体14上により安定に水酸化物イオンを保持するために、陰イオン交換体14の片面又は両面に多孔質基材を設けてもよい。陰イオン交換体14の片面に多孔質基材を設ける場合には、多孔質基材を用意して、この多孔質基材に無機固体電解質を成膜する手法が考えられる。一方、陰イオン交換体14の両面に多孔質基材を設ける場合には、2枚の多孔質基材の間に無機固体電解質の原料粉末を挟んで緻密化を行うことが考えられる。
【0035】
セパレータ
セパレータ16は、リチウムイオン伝導性無機固体電解質で構成され、アルカリ電解液20と負極18とを隔離し、それによりアルカリ電解液20や水酸化物イオンが負極18と直接接触して反応してしまうのを防止することができる。したがって、無機固体電解質はリチウムイオンを選択的に通過させ、アルカリ電解液及び水酸化物イオン等を通過させない緻密質セラミックスであることが望まれる。また、無機固体電解質を金属リチウムよりも硬く構成することで、充電時に負極でリチウムデンドライトが成長してきてもセパレータ18で確実に阻止して、リチウムデンドライトによる正負極間の短絡を回避することも可能である。このため、有機固体電解質のセパレータは本発明では使用されない。無機固体電解質は、アルカリ電解液及び水酸化物イオン等が通過する連通孔が存在すると負極の劣化に繋がるため緻密であることが望ましく、例えば、90%以上の相対密度を有するのが好ましく、より好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上であり、このような高い相対密度は無機固体電解質の原料粉末の粒径及び焼結温度等を適宜制御することにより実現することができる。なお、相対密度は、アルキメデス法により測定することができる。無機固体電解質は10−5S/cm以上のリチウムイオン伝導率を有するのが好ましく、より好ましくは10−4S/cm以上のリチウムイオン伝導率を有する。
【0036】
リチウムイオン伝導性無機固体電解質の好ましい例としては、ガーネット系セラミックス材料、窒化物系セラミックス材料、ペロブスカイト系セラミックス材料、及びリン酸系セラミックス材料からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。ガーネット系セラミックス材料の例としては、Li−La−Zr−O系材料(具体的には、LiLaZr12など)、Li−La−Ta−O系材料(具体的には、LiLaTa12など)が挙げられ、特許文献5(特開2011−051800号公報)、特許文献6(特開2011−073962号公報)及び特許文献7(特開2011−073963号公報)に記載されているものも用いることができる。窒化物系セラミックス材料の例としては、LiN、LiPONなどが挙げられる。ペロブスカイト系セラミックス材料の例としては、Li−La−Ti−O系材料(具体的には、LiLa1−xTi(0.04≦x≦0.14)など)が挙げられる。リン酸系セラミックス材料の例としては、Li−Al−Ti−P−O,Li−Al−Ge−P−O、及びLi−Al−Ti−Si−P−O(具体的には、Li1+x+yAlTi2−xSi3−y12(0≦x≦0.4、0<y≦0.6)など)が挙げられる。
【0037】
特に好ましいリチウムイオン伝導性無機固体電解質は、負極リチウムと直接接触しても反応が起きない点で、ガーネット系セラミックス材料である。とりわけ、Li、La、Zr及びOを含んで構成されるガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造を有する酸化物焼結体が、焼結性に優れて緻密化しやすく、かつ、イオン伝導率も高いことから好ましい。この種の組成のガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造はLLZ結晶構造と呼ばれ、CSD(Cambridge Structural Database)のX線回折ファイルNo.422259(LiLaZr12)に類似のXRDパターンを有する。なお、No.422259と比較すると構成元素が異なり、またセラミックス中のLi濃度などが異なる可能性があるため、回折角度や回折強度比が異なる場合もある。Laに対するLiのモル数の比Li/Laは2.0以上2.5以下であることが好ましく、Laに対するZrのモル比Zr/Laは0.5以上0.67以下であるのが好ましい。このガーネット型又はガーネット型類似の結晶構造はNb及び/又はTaをさらに含んで構成されるものであってもよい。すなわち、LLZのZrの一部がNb及びTaのいずれか一方又は双方で置換されることにより、置換前に比べて伝導率を向上させることができる。ZrのNb及び/又はTaによる置換量(モル比)は、(Nb+Ta)/Laのモル比が0.03以上0.20以下となる量にすることが好ましい。また、このガーネット系酸化物焼結体はAl及び/又はMgをさらに含んでいるのが好ましく、これらの元素は結晶格子に存在してもよいし、結晶格子以外に存在していてもよい。Alの添加量は焼結体の0.01〜1質量%とするのが好ましく、Laに対するAlのモル比Al/Laは、0.008〜0.12であるのが好ましい。Mgの添加量は0.01〜1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05〜0.30質量%である。Laに対するMgのモル比Mg/Laは、0.0016〜0.07であるのが好ましい。
【0038】
負極
負極18は、リチウムを含んで構成され、放電時に負極でリチウムがリチウムイオンに酸化されるものであれば特に限定されず、金属リチウム、リチウム合金、リチウム化合物等を含んで構成されることができる。リチウムは他の金属元素と比べて高い理論電圧及び電気化学当量を有するとの点で負極材料として優れる一方、充電時にデンドライトを成長させてしまうことがある。しかし、本発明によれば無機固体電解質のセパレータ16でデンドライトの貫通を阻止し、正負極間の短絡を回避することができる。負極18を構成する材料の好ましい例としては、金属リチウム、リチウム合金、リチウム化合物等が挙げられ、リチウム合金の例としては、リチウムアルミニウム、リチウムシリコン、リチウムインジウム、リチウム錫などが挙げられ、リチウム化合物の例としては、窒化リチウム、リチウムカーボン等が挙げられるが、金属リチウムが大容量及びサイクル安定性の観点からより好ましい。
【0039】
負極18には負極集電体を備えたものであってもよい。負極集電体の好ましい例としては、ステンレス鋼、銅、ニッケル、白金、貴金属等の金属板や金属メッシュ、カーボンペーパー、酸化物導電体等が挙げられる。
【0040】
負極18は、セパレータとリチウムイオン授受可能に設けられていれば、その配置は特に限定されない。したがって、負極18はセパレータ16と直接接触してなるものであってもよいし、非水系電解液を介して間接的に接触する構成としてもよい。
【0041】
アルカリ電解液
アルカリ電解液20は、アルカリ性の水系電解液である。アルカリ電解液20は、リチウムイオン含有水溶液が充電可能性の観点から好ましいが、放電時に負極18からリチウムイオンが供給されれば足りるため、充電末状態においては必ずしもリチウムイオンを含まなくてもよい。アルカリ電解液中のリチウムイオンが負極反応に関与する一方、アルカリ電解液中の水酸化物イオンが正極反応に関与する。アルカリ電解液の好ましい例としては、水酸化リチウムを水又は水系溶媒に溶解させたものが挙げられ、特に好ましくは水酸化リチウム水溶液である。また、アルカリ電解液はリチウムハライドを含むものであってもよく(例えば、特許文献8を参照)、リチウムハライドの好ましい例としては、フッ化リチウム(LiF)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、ヨウ化リチウム(LiI)等が挙げられる。
【0042】
アルカリ電解液20には、充電容量を上げるため、放電生成物として水酸化リチウム一水和物等の粉末を予め混合させておいてもよく、これは放電末状態で電池を構築する場合に特に有利となる。すなわち、充電が進むにつれて電解液中のリチウムイオン濃度及び水酸化物イオン濃度が下がるべきところ、水酸化リチウム一水和物の粉末が電解液中に溶解することでリチウムイオン及び水酸化物イオンが電解液に新たに供給される。
【0043】
電解液の漏洩を防止するために電解液をゲル化してもよい。ゲル化剤としては電解液の溶媒を吸収して膨潤するようなポリマーを用いるのが望ましく、ポリエチレンオキサイド,ポリビニルアルコール,ポリアクリルアミドなどのポリマーやデンプンが用いられる。
【0044】
電池容器
空気極12、陰イオン交換体14、アルカリ電解液20、セパレータ16及び負極18は電池容器に収容されることができる。この容器は、空気極12を外部空気と接触可能にするための空気孔を有するのが好ましい。電池容器の材質、形状及び構造は特に限定されないが、電解液への空気(特に二酸化炭素)の混入及び電解液の漏れが無いように構成されることが望まれる。
【0045】
電池容器は、正極容器及び負極容器を、ガスケットを介して互いに嵌合可能に備えてなるのが好ましい。また、電池容器(特に負極容器)の内壁と負極との間に導電性緩衝材を介在させて、充放電による負極の厚さの変動によらず負極18と電池容器又は負極端子との接続を常に保つ構成とするのが好ましい。すなわち、導電性緩衝材の厚さが弾性的に変動可能なため負極18と電池容器(特に負極容器)との接続が常に保たれる。導電性緩衝材の好ましい例としては、カーボンフェルト、ステンレス製金属繊維を綿状にしたウェブ等が挙げられる。
【0046】
この態様によるリチウム空気二次電池が図2に示される。同図に示されるリチウム空気二次電池30は、少なくとも空気極32を収容する正極容器42と、負極38側に設けられる負極容器44とを備えてなる。正極容器42には空気孔42aが設けられ、空気が空気極32に到達可能とされてなる。正極容器42がガスケット46,48及びその間のセパレータ36を介して負極容器44と嵌合され、これにより電池容器内の密閉性が確保される。具体的には、正極容器42の底部に空気極32及び陰イオン交換体34が順に積層され、陰イオン交換体34上には正極容器42の内周縁に沿って正極ガスケット46が配設されるとともに、正極ガスケット46及び陰イオン交換体34によって形成された空間には電解液40が正極ガスケット46の上端と同じ高さとなるように充填される。セパレータ36は、正極ガスケット46に接しながら電解液40を正極ガスケット46及び陰イオン交換体34で形成される空間に封じ込めるように設けられる。セパレータ36上の中央部分には負極38及び導電性緩衝材50が積層される一方、セパレータ36上の正極容器42の内周縁に沿って正極ガスケット48が配設される。
【0047】
リチウム空気二次電池30は放電末状態で構築してもよいし、充電末状態として構築してもよい。すなわち、放電末状態で構築する場合には、負極38は先ず負極集電体のみで構成しておき、充電時に金属リチウムを析出させて負極としての機能を付与すればよい。
一方、充電末状態で構築する場合にはセパレータ36上に金属リチウム及び負極集電体を積層して負極38を構成すればよい。負極容器44の外径は正極容器42の内径よりも小さく設計されており、正極容器42の内周縁に沿って配設された負極ガスケット48を介して正極容器42と嵌合される。このように本態様のリチウム空気二次電池30は、空気極32、陰イオン交換体34、電解液40、セパレータ36、負極38及び導電性緩衝材50が、正極容器42及び負極容器44によってガスケット46,48を介して挟持される構成を有しており、それにより空気孔32a以外の部分の気密性及び水密性が確保される。したがって、ガスケット46,48は気密性及び水密性を確保できるものであれば材質、形状及び構造は特に限定されないが、ナイロン等の絶縁性を有する材質で構成されるのが好ましい。このようなリチウム空気二次電池30によれば、空気成分(特に二酸化炭素)の電池内部、特に電解液への侵入を、陰イオン交換体34及びガスケット46,48を介して確実に阻止することができる。
【0048】
本発明のリチウム空気二次電池は、あらゆる形状であることができ、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型等であることができる。また、小型の二次電池のみならず、電気自動車等に用いる大型の二次電池等にも適用可能である。
【0049】
本発明のリチウム空気二次電池は、充電専用の正極を更に備えていてもよい(例えば、特許文献1を参照)。充電専用正極を備えることで、陰イオン交換体の水酸化物イオン伝導性が低い場合でも、充電時にはこれを利用せずに充電専用正極を用いることができ、それにより充電を高速に行うことができる。その上、充電時における空気極での酸素の発生を回避して空気極の腐食や劣化を防ぐこともできる。この充電専用電極は、陰イオン交換体を備えた亜鉛空気電池等の他の空気電池にも有効に働くものである。充電専用正極の好ましい例としては、カーボンあるいは金属チタンメッシュが挙げられる。
【実施例】
【0050】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0051】
例1:水酸化物イオン伝導性無機固体電解質からなる陰イオン交換体の作製
Mg(NO及びAl(NOをMg/Alのモル比が3/1となるように含む混合水溶液を用意した。この混合水溶液をNaCO水溶液中に滴下することによって沈殿物を得た。その際、水酸化ナトリウム溶液を添加することにより、溶液中のpHを約10で一定になるように制御した。得られた沈殿物を濾過し、洗浄及び乾燥をして、平均一次粒径が0.5μm以下で平均二次粒径が5μm以下の層状複水酸化物粉末を得た。
この層状複水酸化物粉末を一軸加圧成形法で加圧して板状の圧粉体とした。耐圧容器に、純水と板状の圧粉体とを入れ、150℃で4時間加熱して、板状の無機固体電解質体を陰イオン交換体として得た。得られた無機固体電解質体の相対密度をアルキメデス法で測定したところ95%であった。
【0052】
例2:リチウムイオン伝導性無機固体電解質からなるセパレータの作製
焼成用原料調製のための各原料成分として、水酸化リチウム(関東化学株式会社)、水酸化ランタン(信越化学工業株式会社)、酸化ジルコニウム(東ソー株式会社)、酸化タンタルを用意した。これらの粉末をLiOH:La(OH):ZrO:Ta=7:3:1.625:0.1875になるように秤量及び配合し、ライカイ機にて混合して焼成用原料を得た。
【0053】
第一の焼成工程として、上記焼成用原料をアルミナ坩堝に入れて大気雰囲気で600℃/時間にて昇温し900℃にて6時間保持した。
【0054】
第二の焼成工程として、第一の焼成工程で得られた粉末に対しγ−Al及び/又は酸化マグネシウムをAl濃度が0.16wt%となるように添加し、この粉末と玉石を混合し振動ミルを用いて3時間粉砕した。得られた粉砕粉を篩通しした後、得られた粉末を、金型を用いて約100MPaにてプレス成形してペレット状にした。得られたペレットをマグネシアセッター上に乗せ、セッターごとマグネシア製のサヤ内に入れて、Ar雰囲気にて200℃/時間で昇温し、1000℃で36時間保持することにより、35mm×18mmのサイズで厚さ11mmの焼結体を得て、そこから10mm×10mmのサイズで厚さ0.2mmのセパレータに加工した。なお、Ar雰囲気として、事前に容量約3Lの炉内を真空引きした後、純度99.99%以上のArガスを電気炉に2L/分で流した。こうして、リチウムイオン伝導性無機固体電解質からなるセパレータを得た。
【0055】
得られた焼結体試料の上下面を研磨した後、以下に示される各種の評価ないし測定を行った。焼結体試料のX線回折測定を行ったところ、CSD(Cambridge Structural Database)のX線回折ファイルNo.422259(LiLaZr12)類似の結晶構造が得られた。このことから、得られた試料がLLZ結晶構造の特徴を有することが確認された。また、焼結体試料のAl及びMg含有量を把握するため、誘導結合プラズマ発光分析(ICP分析)により化学分析を行ったところ、Al含有量は0.15wt%、Mg含有量は0.06wt%であった。さらに、焼結体試料の重量を測定した後、マイクロメーターを用いて焼結体試料の直径を数箇所測定して平均値を算出した後、同様にペレットの厚みを測定して焼結体試料の体積を算出し、密度を算出したところ、5.04g/cmであった。また、試料から所定形状の試験片を切り出し、JIS R1601(2008)に準拠して、強度試験器(INSTRON社製3366型ツインコラム卓上試験システム)で4点曲げ強度を測定したところ134MPaであった。
【0056】
例3:リチウム空気二次電池の作製
例1で作製された陰イオン交換体と、例2で作製されたセパレータとを用いて、図2に示されるようなリチウム空気二次電池30を組み立てる。まず、空気孔42aが設けられたステンレス製の円形の正極容器42を用意する。正極容器42の底に白金担持カーボンを塗布したステンレス金網の正極集電体からなる空気極32、及び例1で作製した陰イオン交換体34を積層し、その外縁に密着するようにナイロン製の絶縁性の正極ガスケット46を正極容器42の内周縁に沿って配設する。次に、正極容器42内に水酸化リチウム一水和物の粉末と水酸化リチウム飽和水溶液を混合した放電生成物入りの電解液40を充填する。正極ガスケット46に接しながら電解液40を正極ガスケット46及び陰イオン交換体34で形成される空間に封じ込めるように、セパレータ36を設置する。セパレータ36上にはステンレス厚膜からなる負極集電体38を予めスパッタリング法により形成しておく。集電体38のセパレータ36とは反対側に導電性緩衝材50としてカーボンフェルトが配設される。負極ガスケット48及び負極容器44を用いて正極容器42との間で各部材を挟持して、正極側のアルカリ電解液40と負極側の空間とがセパレータ35を介して互いに密閉して、気密性及び水密性を備えたリチウム空気二次電池30を得る。
【0057】
こうして得られるリチウム空気電池30は、放電末状態となっている。すなわち、この状態の負極集電体38には金属リチウムが存在していない。この電池を充電すると、アルカリ電解液40中のリチウムイオンがセパレータ36を通過して、負極集電体38との界面に金属リチウムとして析出して負極を形成する。一方、電解液40中の水酸化物イオンは空気極32で酸素と水に転換され、外部に放出される。充電が進むにつれて電解液中のリチウムイオン濃度及び水酸化物イオン濃度が下がるため、水酸化リチウム一水和物の粉末が電解液中に溶解し、粉末が消失して充電が終了する。その際、セパレータ36と負極集電体38の界面に金属リチウムが析出するために負極集電体38と負極容器44の間の距離が変動することになるが、導電性緩衝材50の厚さが弾性的に変動可能なため、負極集電体38と負極容器44との接続が常に保たれる。なお、電解液50に水酸化リチウム一水和物粉末を混合せず、セパレータ36と負極集電体38との間に金属リチウムを配設して組み込むことも可能であり、こうして組み立てられた電池は充電末状態となる。
図1
図2