(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記で問題となった、津波による気圧変動とその他の要因による気圧変動との違いを判定するためには、地震観測と気圧観測を同時に行うことで解決できる。津波発生は大きな地震の発生に伴うため、津波による気圧変動が観測される際には、それに先立ち顕著な地震動が観測されるからである。
【0007】
多くの場合地震観測はGPS信号等の高精度な時刻基準をもとに観測が行われている。これには、AD変換器のクロックを同期する方法がとられる。
【0008】
しかしながら、高精度気圧観測に用いられるセンサは周波数変動をカウントする方式のため、AD変換器のクロックを同期する方法をとることができず、高精度に時刻同期を行うことはされていなかった。気圧変動と地震動の時間関係が不明確では、地震動と気圧変動の双方を用いた処理ができず、津波による気圧変動とそれ以外の気圧変動の区別を行うことが出来ない。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するために、高精度な時刻同期を行うことのできる圧力センサの出力周波数算出方法を提供すると共に、この出力周波数算出方法を用いて、地
震動と気圧の同時計測を行い、その計測値から津波襲来の危険度を判定する津波警報装置、津波警報システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る発明は、圧力センサから出力される矩形波の周波数を算出する圧力センサの出力周波数算出方法であって、時間フレーム中の矩形波の数をカウントする際には、時間フレームの開始時間に重なる開始時矩形波は、開始時矩形波が時間フレーム中に含まれる時間幅を、開始時矩形波の時間幅で除したものによりカウントし、時間フレームの終了時間に重なる終了時矩形波は、終了時矩形波が時間フレーム中に含まれる時間幅を、終了時矩形波の時間幅で除したものによりカウントすることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に係る発明は、地震センサと、前記地震センサからの出力をAD変換することで地震データを生成するAD変換器と、からなる地震計と、圧力センサと、前記圧力センサから出力される矩形波を算出することで気圧データを生成する周波数算出部と、からなる気圧計と、前記地震データと、前記気圧データとが入力されると共に、前記地震データと、前記気圧データとに基づいて、津波警報を発する警報判定部と、を有
し、前記周波数算出部は、時間フレーム中の矩形波の数をカウントする際には、時間フレームの開始時間に重なる開始時矩形波は、開始時矩形波が時間フレーム中に含まれる時間幅を、開始時矩形波の時間幅で除したものによりカウントし、時間フレームの終了時間に重なる終了時矩形波は、終了時矩形波が時間フレーム中に含まれる時間幅を、終了時矩形波の時間幅で除したものによりカウントすることを特徴とする津波警報装置である。
【0012】
また、請求項3に係る発明は、地震センサと、前記地震センサからの出力をAD変換することで地震データを生成するAD変換器と、からなる地震計と、圧力センサと、前記圧力センサから出力される矩形波を算出することで気圧データを生成する周波数算出部と、からなる気圧計と、前記地震データと、前記気圧データとを、通信ネットワークを介して受信する受信部と、前記受信部で受信した前記地震データと、前記気圧データとに基づいて、津波警報を発する警報判定部と、を有
し、前記周波数算出部は、時間フレーム中の矩形波の数をカウントする際には、時間フレームの開始時間に重なる開始時矩形波は、開始時矩形波が時間フレーム中に含まれる時間幅を、開始時矩形波の時間幅で除したものによりカウントし、時間フレームの終了時間に重なる終了時矩形波は、終了時矩形波が時間フレーム中に含まれる時間幅を、終了時矩形波の時間幅で除したものによりカウントすることを特徴とする津波警報システムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る圧力センサの出力周波数算出方法よれば、正確な時刻同期を行うことが可能となる。さらに、本発明に係る津波警報装置および津波警報システムによれば、陸上の観測のみで津波発生の有無を判定し、津波警報を配信することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施形態に係る津波警報装置100の主要構成を示す図である。津波警報装置100は、南北、東西、上下方向の地震動を計測する3つの地震計1を備える。それぞれの地震計1は地震センサ2の出力を高精度に時刻同期されたAD変換器3で、デジタル値に変換し、これを地震データとして、処理部11に送信する。
【0018】
ここで、処理部11としては、データの送受、データの演算、データの記憶を行うことができる汎用の情報処理装置を用いることができる。
【0019】
また、津波警報装置100は、一つ以上の気圧を計測する気圧計5を備える。気圧計5は圧力センサ6の出力を高精度に時刻同期された周波数算出部7で、デジタル値に変換し気圧データとして、処理部11に送信する。処理部11における警報判定部12では地震計1からの地震動データ、気圧計5からの気圧データを基に、地震発生判定および津波警報判定を行う。
【0020】
ここで、気圧計5における圧力センサ6としては、パロサイエンティフィック(Paroscientific)社製のものを用いることができる。この圧力センサ6による高精度の気圧観測は圧力に応じてその周波数が変動する矩形波を出力する周波数出力方式のもの(http://www.paroscientific.com/Nano-Resolution.pdf参照)で、圧力センサ6の出力である矩形
波の周波数を算出することで気圧データを算出する。このような算出処理を行うのが周波数算出部7である。
【0021】
警報判定部12において、津波警報判定がなされた場合は、警報が、通信部21から通信回線を介して、遠隔地に向けて送信がなされる。また、適宜、表示部22への表示および警報出力部23への警報出力がなされる。津波警報装置100は蓄電池26でバックアップがなされた電源装置25から供給される電源24で動作する。
【0022】
以上のように構成される周波数算出部7における周波数算出方法について、具体的に説明する。ここで、まず、従来の周波数算出部7における周波数算出方法について説明し、次いで、本発明に係る圧力センサ6の周波数算出方法について説明することとする。
【0023】
図2は従来技術(より詳しくは、例えば、http://www.jamstec.go.jp/scdc/top#j.htmlを参照。この例は水圧計測であるが気圧計測と計測方法は同一である)による周波数算出を模式的に表したものである。
【0024】
ここで、時間フレームはGPS信号等の高精度な時刻標準と同期している。この時間フレームの時間間隔(ΔT)は、一般的なAD変換のサンプリング間隔に相当するものである。
【0025】
周波数算出は、時間フレーム(ΔT)中に含まれる、矩形波の数の合計を、矩形波の占める時間幅で除して行う。なお、矩形波の時間幅は、矩形波をゲートとして、矩形波の周波数より高速なクロック(例えば10MHz)をカウントすることにより計測することが
できる。ここで時間フレーム(ΔT)中に含まれる矩形波とは、矩形波終了の立ち上がりが時間フレーム中に含まれる矩形波であるものとする。すなわち、
図2に示す1からNまでナンバリングされた矩形波が、周波数を算出するためにカウントされる。
【0026】
図2において、Nは時間フレーム中に含まれるものとカウントされた矩形波の数、
T
iはi番目の矩形波の時間幅とすれば、圧力センサからの出力周波数F
1は、下式(1)によって算出される。
F
1=N/(T
1+T
2+…+T
N) ・・・(1)
しかしながら、この従来の周波数算出方法では、矩形波の占める時間幅は、(T
1+T
2+…+T
N)であり、ΔTとは必ずしも一致せず変動することとなる。このように、従来
方法では、一定間隔のサンプリングを行う事ができないため正確な時刻同期ができない。
【0027】
一方、
図3は周波数算出部7で行われる、本発明による周波数算出方法を表したものである。周波数算出部7は、時間フレーム中に含まれる矩形波の数をカウントするが、その際、時間フレームの開始と終了にかかる矩形波の数については、その矩形波が時間フレーム中に占める時間の割合で案分する。
【0028】
より具体的には、
図3において、
ΔTは時間フレームの時間幅、
1とナンバリングされた矩形波は時間フレームの開始時間に重なる開始時矩形波、
N+1とナンバリングされた矩形波は時間フレームの終了時間に重なる終了時矩形波、
T
1は1番目の矩形波(開始時矩形波)の時間幅、
T
N+1はN+1番目の矩形波(終了時矩形波)の時間幅、
T
aは1番目の矩形波が着目している時間フレーム中に含まれる時間幅、
T
bはN+1番目の矩形波が着目している時間フレーム中に含まれる時間幅、
とすれば、圧力センサの出力周波数F
2を下式(2)によって算出する。
F
2=(T
a/T
1+T
b/T
N+1+N−1)/ΔT・・・(2)
すなわち、周波数算出部7における周波数算出方法においては、時間フレーム中の矩形波の数をカウントする際には、時間フレームの開始時間に重なる開始時矩形波は、開始時矩形波が時間フレーム中に含まれる時間幅(T
a)を、開始時矩形波の時間幅(T
1)で除したものによりカウントし、時間フレームの終了時間に重なる終了時矩形波は、終了時矩形波が時間フレーム中に含まれる時間幅(T
b)を、終了時矩形波の時間幅(T
N+1)で除したものによりカウントするようにしている。
【0029】
上記のような周波数算出部7における周波数算出方法によれば、圧力センサ6の出力をGPS信号等に同期した一定間隔でサンプリングすることが可能になる。地震動は既存技術によってGPS信号等に同期した一定間隔でサンプリングすることができるので、高精度に時刻同期した、気圧と地震の同時観測が可能になる。
【0030】
次に、以上のように構成される津波警報装置100の処理・動作について説明する。
図4は本発明の実施形態に係る津波警報装置100の地震発生判定処理のフローチャートを示す図である。また、このような処理は、処理部11の警報判定部12で実行される。
【0031】
図4において、ステップS100で地震発生判定処理が開始されると、続くステップS101においては、地震計1から地震動データを取得する。次に、ステップS102においては、地震動データをフィルタ処理(若しくは微分処理)することにより地震波形を生成する。次に、ステップS103において、前ステップで生成された地震波形の絶対値を演算する。
【0032】
ステップS104においては、当該絶対値が所定の閾値を超えるか否かが判定される。
ステップS104の判定がNOである場合には、ステップS101に戻る。
【0033】
一方、ステップS104の判定がYESである場合には、地震が発生したものと判定し、ステップS105に進む。
【0034】
ステップS105では、所定の一定時間が経過したか否かが判定される。ステップS105の判定がNOである間には、ステップS105をループし、ステップS105の判定がYESとなると、地震が終了したものと判定して、再びステップS101に戻る。
【0035】
次に、津波警報装置100の津波発生判定処理について説明する。
図5は本発明の実施形態に係る津波警報装置100の津波発生判定処理のフローチャートを示す図である。また、このような処理は、処理部11の警報判定部12で実行される。
【0036】
ステップS200において、津波発生判定処理が開始されると、続くステップS201においては、気圧計5から気圧データを取得する。次に、ステップS202においては、気圧データをフィルタ処理(若しくは微分処理)することにより気圧波形を生成する。次に、ステップS203において、前ステップで生成された気圧波形の絶対値を演算する。
【0037】
ステップS204においては、当該絶対値が閾値を超えるか否かが判定される。ステップS204の判定がNOである場合には、ステップS201に戻る。
【0038】
一方、ステップS204の判定がYESである場合には、津波発生可能性ありと判定し、続いてステップS205に進み、先の地震発生判定処理を参照して、地震が発生中であるか否かが判定される。
【0039】
ステップS205における判定がNOである場合には、気圧の変化が地震によるものではなく、従って、津波の発生がないものと判定し、ステップS201に戻る。
【0040】
一方、ステップS205における判定がYESである場合には、気圧の変化が地震によるものであり、津波が発生したものと判定し、ステップS206に進む。
【0041】
ステップS206においては、通信部21、表示部22や警報出力部23などを利用して、各種警報を発する。
【0042】
以上のように、本発明に係る圧力センサ6の出力周波数算出方法よれば、正確な時刻同期を行うことが可能となる。さらに、本発明に係る津波警報装置100によれば、陸上の観測のみで津波発生の有無を判定し、津波警報を配信することが可能となる。
【0043】
次に、本発明に係る圧力センサの出力周波数算出方法を津波警報システムに適用した例について説明する。
図6は本発明の実施形態に係る地震警報システム300の主要構成を示す図である。
【0044】
先の津波警報装置100のように地震計1、気圧計5や警報判定部12といった構成を、一つの装置として構成することも可能であるが、地震計1、気圧計5や警報判定部12といった構成を分散すると共に、各構成同士をデータ通信可能に接続し、
図6に示すような津波警報システム300として構成することも可能である。
【0045】
すなわち、警報判定部12は、地震計1、気圧計5は同一の地点に存在してもよいし、地震データ、気圧データを通信回線等で遠隔地にあるセンター等に設けられた地震気圧データ処理装置200に伝送し、そこで地震発生判定と津波警報判定を行ってもよい。
【0046】
図6において、201は地震計、205は気圧計、150は通信ネットワーク、200は地震気圧データ処理装置である。
【0047】
津波警報システム300で用いる地震計201及び気圧計205には、それぞれ地震データ及び気圧データを、通信ネットワーク150を介して、地震気圧データ処理装置200に送信する機能を有している。
【0048】
地震気圧データ処理装置200は、受信部211で地震データ、気圧データを受信する。また、
図1で示した津波警報装置100と、同様の警報判定部212をもち、地震発生判定と津波警報判定を行うことができるようになっている。
【0049】
なお、地震気圧データ処理装置200は、データセンター(通信ネットワーク150上に複数あっても一つであってもよい)に設置される情報処理装置であり、データ処理機能、データ記憶機能、データの送受信機能などを備える、例えば、汎用のサーバーを用いることができる。
【0050】
津波警報判定がなされた場合は配信部213より警報配信を行う。地震気圧データ処理装置200における配信部213は津波警報を情報端末(携帯電話、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、テレビ、ラジオなど)に地震警報を配信する。
【0051】
このシステムでは、地震計201と気圧計205で観測された、地震データ、気圧データを通信ネットワーク150経由でセンターに転送し、離れた場所で地震発生判定と津波警報判定を行うものである。ここで、地震計201、気圧計205および地震気圧データ処理装置200はそれぞれ複数設けるようにしてもよい。
【0052】
以上のように構成される、本発明に係る津波警報システム300によれば、陸上の観測のみで津波発生の有無を判定し、津波警報を配信することが可能となる。