特許第6206981号(P6206981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6206981圧力センサの出力周波数平滑化方法およびそれを用いた気圧観測による津波警報装置、津波警報システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206981
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】圧力センサの出力周波数平滑化方法およびそれを用いた気圧観測による津波警報装置、津波警報システム
(51)【国際特許分類】
   G01L 7/00 20060101AFI20170925BHJP
   G01V 1/00 20060101ALI20170925BHJP
   G01L 9/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   G01L7/00 P
   G01V1/00 D
   G01L9/00 C
   G01L9/00 E
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-3184(P2015-3184)
(22)【出願日】2015年1月9日
(65)【公開番号】特開2016-128767(P2016-128767A)
(43)【公開日】2016年7月14日
【審査請求日】2017年6月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501138231
【氏名又は名称】国立研究開発法人防災科学技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100088041
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 龍吉
(74)【代理人】
【識別番号】100145920
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 聡
(72)【発明者】
【氏名】▲功▼刀 卓
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0112705(US,A1)
【文献】 特開2013−96802(JP,A)
【文献】 特許第2978140(JP,B2)
【文献】 欧州特許出願公開第0706038(EP,A1)
【文献】 特許第2586838(JP,B2)
【文献】 特許第2876528(JP,B2)
【文献】 特許第2879677(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L
G01V
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力センサから出力される矩形波の周波数を平滑化する圧力センサの出力周波数平滑化方法であって、
i番目の矩形波の時間幅Xiに対する平滑化された時系列Yi
i=(b0i+b1i-1−a1i-1)/a0 ・・・(3)
によって求めること
(ただし、
0=ω
1=ω
0=2/Xi+ω
1=−2/Xi+ω ・・・(5)
であり、
また、ω=2πfcであり、fcはカットオフ周波数である。)
を特徴とする圧力センサの出力周波数平滑化方法。
【請求項2】
圧力センサから出力される矩形波の周波数を平滑化する圧力センサの出力周波数平滑化方法であって、
i番目の矩形波の時間幅Xiに対する平滑化された時系列Yi
i=(b0i+b1i-1+b2i-2−a1i-1−a2i-2)/a0 ・・・(4)
によって求めること
(ただし、
hをフィルタのダンピングとして、
0=12/Xi2+12hω/Xi+ω2
1=10ω2−24/Xi2
2=12/Xi2−12hω/Xi+ω2
0=ω2
1=10ω2
2=ω2 ・・・(6)
または、
0=4/Xi2+4hω/Xi+ω2
1=2ω2−8/Xi2
2=4/Xi2−4hω/Xi+ω2
0=ω2
1=2ω2
2=ω2 ・・・(7)
であり、
また、ω=2πfcであり、fcはカットオフ周波数である。)
を特徴とする圧力センサの出力周波数平滑化方法。
【請求項3】
地震センサと、前記地震センサからの出力をAD変換することで地震データを生成するAD変換器と、からなる地震計と、
圧力センサと、前記圧力センサから出力される矩形波を平滑化することで気圧データを生成する平滑化部と、からなる気圧計と、
前記地震データと、前記気圧データとが入力されると共に、前記地震データと、前記気圧データとに基づいて、津波警報を発する警報判定部と、を有し、
前記平滑化部は、
i番目の矩形波の時間幅Xiに対する平滑化された時系列Yi
i=(b0i+b1i-1−a1i-1)/a0 ・・・(3)
によって求めること
(ただし、
0=ω
1=ω
0=2/Xi+ω
1=−2/Xi+ω ・・・(5)
であり、
また、ω=2πfcであり、fcはカットオフ周波数である。)
を特徴とする津波警報装置。
【請求項4】
地震センサと、前記地震センサからの出力をAD変換することで地震データを生成するAD変換器と、からなる地震計と、
圧力センサと、前記圧力センサから出力される矩形波を平滑化することで気圧データを生成する平滑化部と、からなる気圧計と、
前記地震データと、前記気圧データとが入力されると共に、前記地震データと、前記気圧データとに基づいて、津波警報を発する警報判定部と、を有し、
前記平滑化部は、
i番目の矩形波の時間幅Xiに対する平滑化された時系列Yi
i=(b0i+b1i-1+b2i-2−a1i-1−a2i-2)/a0 ・・・(4)
によって求めること
(ただし、
hをフィルタのダンピングとして、
0=12/Xi2+12hω/Xi+ω2
1=10ω2−24/Xi2
2=12/Xi2−12hω/Xi+ω2
0=ω2
1=10ω2
2=ω2 ・・・(6)
または、
0=4/Xi2+4hω/Xi+ω2
1=2ω2−8/Xi2
2=4/Xi2−4hω/Xi+ω2
0=ω2
1=2ω2
2=ω2 ・・・(7)
であり、
また、ω=2πfcであり、fcはカットオフ周波数である。)
を特徴とする津波警報装置。
【請求項5】
地震センサと、前記地震センサからの出力をAD変換することで地震データを生成するAD変換器と、からなる地震計と、
圧力センサと、前記圧力センサから出力される矩形波を平滑化することで気圧データを生成する平滑化部と、からなる気圧計と、
前記地震データと、前記気圧データとを、通信ネットワークを介して受信する受信部と、
前記受信部で受信した前記地震データと、前記気圧データとに基づいて、津波警報を発する警報判定部と、を有し、
前記平滑化部は、
i番目の矩形波の時間幅Xiに対する平滑化された時系列Yi
i=(b0i+b1i-1−a1i-1)/a0 ・・・(3)
によって求めること
(ただし、
0=ω
1=ω
0=2/Xi+ω
1=−2/Xi+ω ・・・(5)
であり、
また、ω=2πfcであり、fcはカットオフ周波数である。)
を特徴とする津波警報システム。
【請求項6】
地震センサと、前記地震センサからの出力をAD変換することで地震データを生成するAD変換器と、からなる地震計と、
圧力センサと、前記圧力センサから出力される矩形波を平滑化することで気圧データを生成する平滑化部と、からなる気圧計と、
前記地震データと、前記気圧データとを、通信ネットワークを介して受信する受信部と、
前記受信部で受信した前記地震データと、前記気圧データとに基づいて、津波警報を発する警報判定部と、を有し、
前記平滑化部は、
i番目の矩形波の時間幅Xiに対する平滑化された時系列Yi
i=(b0i+b1i-1+b2i-2−a1i-1−a2i-2)/a0 ・・・(4)
によって求めること
(ただし、
hをフィルタのダンピングとして、
0=12/Xi2+12hω/Xi+ω2
1=10ω2−24/Xi2
2=12/Xi2−12hω/Xi+ω2
0=ω2
1=10ω2
2=ω2 ・・・(6)
または、
0=4/Xi2+4hω/Xi+ω2
1=2ω2−8/Xi2
2=4/Xi2−4hω/Xi+ω2
0=ω2
1=2ω2
2=ω2 ・・・(7)
であり、
また、ω=2πfcであり、fcはカットオフ周波数である。)
を特徴とする津波警報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気圧変動を計測するための圧力センサの出力周波数平滑化方法、さらに、地震動および気圧変動を計測し、その計測値から津波襲来の危険度を判定する津波警報装置、津波警報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現行の津波警報は、地震観測データから、地震の位置(緯度、経度、深さ)、および規模(マグニチュード)を推定し、地震が引き起こす津波高を理論的に予想することに寄っている。このため、実際に津波が発生したか否かの情報は用いられていない(非特許文献1)。
【0003】
これを改善するために、沖合の海上、海底に津波計を設置し、津波計のデータを用いることが検討されているが、海上、海底への津波計敷設には多くのコストがかかる。
【0004】
一方、巨大な津波に伴い、気圧変動が観測されることが知られている。これは津波による海面の変化が大気に作用して、その変動が気圧変動として観測されるものである。気圧変動の伝播速度は津波の伝播速度に比べると速いので、気圧変動を監視することで沿岸に津波が到達する前に津波発生の有無を知ることが出来る。ただし、気圧変動を引き起こす要因は火山噴火、隕石の飛来、等多岐に渡るため、気圧観測のみからは津波発生を判定することは難しい(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】http://www.jma.go.jp/jma/press/1109/12a/torimatome.pdf(東北地方太平洋沖地震による津波被害を踏まえた津波警報の改善の方向性について)
【非特許文献2】「大地震,津波,火山大爆発などから発生した気圧波」地震第2輯、64巻、47−62
【非特許文献3】http://www.paroscientific.com/Nano-Resolution.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記で問題となった、津波による気圧変動とその他の要因による気圧変動との違いを判定するためには、地震観測と気圧観測を同時に行うことで解決できる。津波発生は大きな地震の発生に伴うため、津波による気圧変動が観測される際には、それに先立ち顕著な地震動が観測されるからである。
【0007】
多くの場合地震観測は、AD変換器をもちいて等間隔のサンプリングで観測が行われている。しかしながら、高精度気圧観測に用いられるセンサは周波数変動をカウントする方式のため、等間隔にサンプリングがされない。
【0008】
不等間隔のサンプリングではその後の処理が煩雑になるため、平滑化処理を施した後に等間隔にサンプリングをし直す処理が行われるが、既存の方法ではこの平滑化処理が不正確である(非特許文献3)。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するために、不等間隔に得られる気圧データに精度の高い平滑化を行った後に等間隔にサンプリングを行うことで正確な出力周波数平滑化方法
を提供すると共に、この出力周波数平滑化方法を用いて、地震動と気圧の同時計測を行い、その計測値から津波襲来の危険度を判定する津波警報システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る発明は、圧力センサから出力される矩形波の周波数を平滑化する圧力センサの出力周波数平滑化方法であって、
i番目の矩形波の時間幅Xiに対する平滑化された時系列Yi
i=(b0i+b1i-1−a1i-1)/a0 ・・・(3)
によって求めること
(ただし、
0=ω
1=ω
0=2/Xi+ω
1=−2/Xi+ω ・・・(5)
であり、
また、ω=2πfcであり、fcはカットオフ周波数である。)
を特徴とする。

【0011】
また、請求項2に係る発明は、 圧力センサから出力される矩形波の周波数を
平滑化する圧力センサの出力周波数平滑化方法であって、
i番目の矩形波の時間幅Xiに対する平滑化された時系列Yi
i=(b0i+b1i-1+b2i-2−a1i-1−a2i-2)/a0 ・・・(4)
によって求めること
(ただし、
hをフィルタのダンピングとして、
0=12/Xi2+12hω/Xi+ω2
1=10ω2−24/Xi2
2=12/Xi2−12hω/Xi+ω2
0=ω2
1=10ω2
2=ω2 ・・・(6)
または、
0=4/Xi2+4hω/Xi+ω2
1=2ω2−8/Xi2
2=4/Xi2−4hω/Xi+ω2
0=ω2
1=2ω2
2=ω2 ・・・(7)
であり、
また、ω=2πfcであり、fcはカットオフ周波数である。)
を特徴とする。
【0012】
また、請求項3に係る発明は、地震センサと、前記地震センサからの出力をAD変換することで地震データを生成するAD変換器と、からなる地震計と、圧力センサと、前記圧力センサから出力される矩形波を平滑化することで気圧データを生成する平滑化部と、からなる気圧計と、前記地震データと、前記気圧データとが入力されると共に、前記地震データと、前記気圧データとに基づいて、津波警報を発する警報判定部と、を有し、
前記平滑化部は、
i番目の矩形波の時間幅Xiに対する平滑化された時系列Yi
i=(b0i+b1i-1−a1i-1)/a0 ・・・(3)
によって求めること
(ただし、
0=ω
1=ω
0=2/Xi+ω
1=−2/Xi+ω ・・・(5)
であり、
また、ω=2πfcであり、fcはカットオフ周波数である。)
を特徴とする津波警報装置である。
【0013】
また、請求項4に係る発明は、地震センサと、前記地震センサからの出力をAD変換することで地震データを生成するAD変換器と、からなる地震計と、圧力センサと、前記圧力センサから出力される矩形波を平滑化することで気圧データを生成する平滑化部と、からなる気圧計と、前記地震データと、前記気圧データとが入力されると共に、前記地震データと、前記気圧データとに基づいて、津波警報を発する警報判定部と、を有し、
前記平滑化部は、
i番目の矩形波の時間幅Xiに対する平滑化された時系列Yi
i=(b0i+b1i-1+b2i-2−a1i-1−a2i-2)/a0 ・・・(4)
によって求めること
(ただし、
hをフィルタのダンピングとして、
0=12/Xi2+12hω/Xi+ω2
1=10ω2−24/Xi2
2=12/Xi2−12hω/Xi+ω2
0=ω2
1=10ω2
2=ω2 ・・・(6)
または、
0=4/Xi2+4hω/Xi+ω2
1=2ω2−8/Xi2
2=4/Xi2−4hω/Xi+ω2
0=ω2
1=2ω2
2=ω2 ・・・(7)
であり、
また、ω=2πfcであり、fcはカットオフ周波数である。)
を特徴とする津波警報装置である。
【0014】
また、請求項5に係る発明は、地震センサと、前記地震センサからの出力をAD変換することで地震データを生成するAD変換器と、からなる地震計と、圧力センサと、前記圧力センサから出力される矩形波を平滑化することで気圧データを生成する平滑化部と、からなる気圧計と、前記地震データと、前記気圧データとを、通信ネットワークを介して受信する受信部と、前記受信部で受信した前記地震データと、前記気圧データとに基づいて、津波警報を発する警報判定部と、を有し、
前記平滑化部は、
i番目の矩形波の時間幅Xiに対する平滑化された時系列Yi
i=(b0i+b1i-1−a1i-1)/a0 ・・・(3)
によって求めること
(ただし、
0=ω
1=ω
0=2/Xi+ω
1=−2/Xi+ω ・・・(5)
であり、
また、ω=2πfcであり、fcはカットオフ周波数である。)
を特徴とする津波警報システムである。
【0015】
また、請求項6に係る発明は、地震センサと、前記地震センサからの出力をAD変換することで地震データを生成するAD変換器と、からなる地震計と、圧力センサと、前記圧力センサから出力される矩形波を平滑化することで気圧データを生成する平滑化部と、からなる気圧計と、前記地震データと、前記気圧データとを、通信ネットワークを介して受信する受信部と、前記受信部で受信した前記地震データと、前記気圧データとに基づいて、津波警報を発する警報判定部と、を有し、
前記平滑化部は、
i番目の矩形波の時間幅Xiに対する平滑化された時系列Yi
i=(b0i+b1i-1+b2i-2−a1i-1−a2i-2)/a0 ・・・(4)
によって求めること
(ただし、
hをフィルタのダンピングとして、
0=12/Xi2+12hω/Xi+ω2
1=10ω2−24/Xi2
2=12/Xi2−12hω/Xi+ω2
0=ω2
1=10ω2
2=ω2 ・・・(6)
または、
0=4/Xi2+4hω/Xi+ω2
1=2ω2−8/Xi2
2=4/Xi2−4hω/Xi+ω2
0=ω2
1=2ω2
2=ω2 ・・・(7)
であり、
また、ω=2πfcであり、fcはカットオフ周波数である。)
を特徴とする津波警報システムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る圧力センサの出力周波数平滑化方法よれば、正確な平滑化処理を行うことが可能となる。さらに、本発明に係る津波警報装置および津波警報システムによれば、陸上の観測のみで津波発生の有無を判定し、津波警報を配信することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る津波警報装置100の主要構成を示す図である。
図2】本発明に係る気圧センサの出力周波数平滑化の方法を模式的に説明する図である。
図3】本発明の実施形態に係る津波警報装置100の地震発生判定処理のフローチャートを示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る津波警報装置100の津波発生判定処理のフローチャートを示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る地震警報システム300の主要構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る津波警報装置100の主要構成を示す図である。津波警報装置100は、南北、東西、上下方向の地震動を計測する3つの地震計1を備える。それぞれの地震計1は地震センサ2の出力を高精度に時刻同期されたAD変換器3で、デジタル値に変換し、これを地震データとして、処理部11に送信する。
【0021】
ここで、処理部11としては、データの送受、データの演算、データの記憶を行うことができる汎用の情報処理装置を用いることができる。
【0022】
また、津波警報装置100は、一つ以上の気圧を計測する気圧計5を備える。気圧計5は圧力センサ6の出力を平滑化部7で、平滑化を行い等間隔サンプリングのデジタル値に変換し気圧データとして、処理部11に送信する。処理部11における警報判定部12では地震計1からの地震動データ、気圧計5からの気圧データを基に、地震発生判定および津波警報判定を行う。
【0023】
ここで、気圧計5における圧力センサ6としては、パロサイエンティフィック(Paroscientific)社製のものを用いることができる。この圧力センサ6による高精度の気圧観測は圧力に応じてその周波数が変動する矩形波を出力する周波数出力方式のもの(非特許文献3参照)で、圧力センサ6の出力である矩形波の周波数を平滑化することで気圧データを算出する。このような算出処理を行うのが平滑化部7である。
【0024】
警報判定部12において、津波警報判定がなされた場合は、警報が、通信部21から通信回線を介して、遠隔地に向けて送信がなされる。また、適宜、表示部22への表示および警報出力部23への警報出力がなされる。津波警報装置100は蓄電池26でバックアップがなされた電源装置25から供給される電源24で動作する。
【0025】
以上のように構成される平滑化部7における出力周波数平滑化方法について、具体的に説明する。ここで、まず、従来の平滑化部7における出力周波数平滑化方法について説明し、次いで、本発明に係る圧力センサ6の出力周波数平滑化方法について説明することとする。
【0026】
図2は圧力センサ6の出力周波数平滑化を模式的に表したものである。圧力センサの周波数算出は、周波数の逆数である矩形波の時間幅を計測することで行う。なお、矩形波の時間幅は、矩形波をゲートとして、矩形波の周波数より高速なクロック(例えば10MHz)。をカウントすることにより計測することができる。
iはi番目の矩形波の時間幅である。Xiは変動するためXiの時系列は不等間隔で得ら
れることになる。なおXiの平均的な値をTaとする。不等間隔データを等間隔データに
することは、平滑化を行い一定間隔にサンプリングし直すことにより実現される。
【0027】
平滑化の方法として非特許文献3記載の従来の方法では、下式(1)によって行われている。
i=α・Xi+(1−α)Yi-1 ・・・(1)
ここで、
iは平滑化された時系列、
iは入力時系列(矩形波の時間幅データ)、
iは時系列のステップ数、
αは定数
である。
【0028】
式(1)は一次のローパスフィルタとなっており、そのカットオフ周波数fc
c=(α・fs)/(2π) ・・・(2)
である。
【0029】
また、fs=1/Taとなっているとしているが、これは等間隔サンプリングの場合に
成り立つものである。
【0030】
実際のカットオフ周波数は平均的にはfcに一致するが、短時間で見ればfcには一致せず常に変動する。したがって式(1)による平滑化は不正確となる。これを正確にするためにはサンプリングが不等間隔であることの補正を要する。
【0031】
このため本発明に係る出力周波数平滑化方法では、平滑化部で行う平滑化の方法として、
(一次フィルタの場合)
i=(b0i+b1i-1−a1i-1)/a0 ・・・(3)
または、
(二次フィルタの場合)
i=(b0i+b1i-1+b2i-2−a1i-1−a2i-2)/a0 ・・・(4)
を用いる。
【0032】
ここで、フィルタの各係数a0,a1,a2,b0,b1,b2の実際の値にはサンプリング間隔ΔTが現れるが、本発明に係る出力周波数平滑化方法では、このΔTを毎サンプル異なる値であるXiとする。結果として本発明に係る出力周波数平滑化方法では時刻毎に異
なるフィルタ係数を用いて(3)、(4)の演算を行うことになる。
【0033】
式(3)で行われる一次フィルタの場合
係数は、
0=ω
1=ω
0=2/Xi+ω
1=−2/Xi+ω ・・・(5)
となる。ここで、ω=2πfcであり、fcはカットオフ周波数である。

【0034】
また、式(4)で行われる二次フィルタの場合
hをフィルタのダンピング(通常h=2-1/2)として、
0=12/Xi2+12hω/Xi+ω2
1=10ω2−24/Xi2
2=12/Xi2−12hω/Xi+ω2
0=ω2
1=10ω2
2=ω2 ・・・(6)
または、
0=4/Xi2+4hω/Xi+ω2
1=2ω2−8/Xi2
2=4/Xi2−4hω/Xi+ω2
0=ω2
1=2ω2
2=ω2 ・・・(7)
となる。
【0035】
なお、ΔTをXiとする代わりに平滑化された値であるYi-1とすることもできる。
【0036】
式(5)、(6)、または(7)によれば圧力センサ6の出力を高い精度で平滑化することができる。平滑化した出力を等間隔にサンプリングすれば、気圧変動を一定間隔でサンプリングすることが可能になる。地震動は既存技術によって初めから一定間隔でサンプリングすることができるので、気圧と地震の同時計測が可能になる。
【0037】
次に、以上のように構成される津波警報装置100の処理・動作について説明する。図3は本発明の実施形態に係る津波警報装置100の地震発生判定処理のフローチャートを示す図である。また、このような処理は、処理部11の警報判定部12で実行される。
【0038】
図3において、ステップS100で地震発生判定処理が開始されると、続くステップS101においては、地震計1から地震動データを取得する。次に、ステップS102においては、地震動データをフィルタ処理(若しくは微分処理)することにより地震波形を生成する。次に、ステップS103において、前ステップで生成された地震波形の絶対値を演算する。
【0039】
ステップS104においては、当該絶対値が所定の閾値を超えるか否かが判定される。ステップS104の判定がNOである場合には、ステップS101に戻る。
【0040】
一方、ステップS104の判定がYESである場合には、地震が発生したものと判定し、ステップS105に進む。
【0041】
ステップS105では、所定の一定時間が経過したか否かが判定される。ステップS105の判定がNOである間には、ステップS105をループし、ステップS105の判定がYESとなると、地震が終了したものと判定して、再びステップS101に戻る。
【0042】
次に、津波警報装置100の津波発生判定処理について説明する。図4は本発明の実施形態に係る津波警報装置100の津波発生判定処理のフローチャートを示す図である。また、このような処理は、処理部11の警報判定部12で実行される。
【0043】
ステップS200において、津波発生判定処理が開始されると、続くステップS201においては、気圧計5から気圧データを取得する。次に、ステップS202においては、気圧データをフィルタ処理(若しくは微分処理)することにより気圧波形を生成する。次に、ステップS203において、前ステップで生成された気圧波形の絶対値を演算する。
【0044】
ステップS204においては、当該絶対値が閾値を超えるか否かが判定される。ステップS204の判定がNOである場合には、ステップS201に戻る。
【0045】
一方、ステップS204の判定がYESである場合には、津波発生可能性ありと判定し、続いてステップS205に進み、先の地震発生判定処理を参照して、地震が発生中であるか否かが判定される。
【0046】
ステップS205における判定がNOである場合には、気圧の変化が地震によるものではなく、従って、津波の発生がないものと判定し、ステップS201に戻る。
【0047】
一方、ステップS205における判定がYESである場合には、気圧の変化が地震によるものであり、津波が発生したものと判定し、ステップS206に進む。
【0048】
ステップS206においては、通信部21、表示部22や警報出力部23などを利用して、各種警報を発する。
【0049】
以上のように、本発明に係る圧力センサ6の出力周波数平滑化方法よれば、正確な平滑化処理を行うことが可能となる。さらに、本発明に係る津波警報装置100によれば、陸上の観測のみで津波発生の有無を判定し、津波警報を配信することが可能となる。
【0050】
次に、本発明に係る圧力センサの出力周波数平滑化方法を津波警報システムに適用した例について説明する。図5は本発明の実施形態に係る地震警報システム300の主要構成を示す図である。
【0051】
先の津波警報装置100のように地震計1、気圧計5や警報判定部12といった構成を、一つの装置として構成することも可能であるが、地震計1、気圧計5や警報判定部12といった構成を分散すると共に、各構成同士をデータ通信可能に接続し、図5に示すような津波警報システム300として構成することも可能である。
【0052】
すなわち、警報判定部12は、地震計1、気圧計5は同一の地点に存在してもよいし、地震データ、気圧データを通信回線等で遠隔地にあるセンター等に設けられた地震気圧データ処理装置200に伝送し、そこで地震発生判定と津波警報判定を行ってもよい。
【0053】
図5において、201は地震計、205は気圧計、150は通信ネットワーク、200は地震気圧データ処理装置である。
【0054】
津波警報システム300で用いる地震計201及び気圧計205には、それぞれ地震データ及び気圧データを、通信ネットワーク150を介して、地震気圧データ処理装置200に送信する機能を有している。
【0055】
地震気圧データ処理装置200は、受信部211で地震データ、気圧データを受信する。また、図1で示した津波警報装置100と、同様の警報判定部212をもち、地震発生判定と津波警報判定を行うことができるようになっている。
【0056】
なお、地震気圧データ処理装置200は、データセンター(通信ネットワーク150上に複数あっても一つであってもよい)に設置される情報処理装置であり、データ処理機能、データ記憶機能、データの送受信機能などを備える、例えば、汎用のサーバーを用いることができる。
【0057】
津波警報判定がなされた場合は配信部213より警報配信を行う。地震気圧データ処理装置200における配信部213は津波警報を情報端末(携帯電話、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、テレビ、ラジオなど)に地震警報を配信する。
【0058】
このシステムでは、地震計201と気圧計205で観測された、地震データ、気圧データを通信ネットワーク150経由でセンターに転送し、離れた場所で地震発生判定と津波警報判定を行うものである。ここで、地震計201、気圧計205および地震気圧データ処理装置200はそれぞれ複数設けるようにしてもよい。
【0059】
以上のように構成される、本発明に係る津波警報システム300によれば、陸上の観測のみで津波発生の有無を判定し、津波警報を配信することが可能となる。
【符号の説明】
【0060】
1・・・地震計
2・・・地震センサ
3・・・AD変換器
5・・・気圧計
6・・・圧力センサ
7・・・平滑化部
11・・・処理部
12・・・警報判定部
21・・・通信部
22・・・表示部
23・・・警報出力部
24・・・電源
25・・・電源装置
26・・・蓄電池
100・・・津波警報装置
150・・・通信ネットワーク
200・・・地震気圧データ処理装置
201・・・地震計
205・・・気圧計
211・・・受信部
212・・・警報判定部
213・・・配信部
300・・・津波警報システム
図1
図2
図3
図4
図5