特許第6206987号(P6206987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6206987網膜剥離の処置のための生体適合性ヒドロゲル製剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206987
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】網膜剥離の処置のための生体適合性ヒドロゲル製剤
(51)【国際特許分類】
   A61L 31/06 20060101AFI20170925BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20170925BHJP
【FI】
   A61L31/06
   A61L31/14 300
   A61K47/34
【請求項の数】13
【全頁数】78
(21)【出願番号】特願2015-511774(P2015-511774)
(86)(22)【出願日】2013年5月10日
(65)【公表番号】特表2015-516240(P2015-516240A)
(43)【公表日】2015年6月11日
(86)【国際出願番号】US2013040619
(87)【国際公開番号】WO2013170195
(87)【国際公開日】20131114
【審査請求日】2016年5月9日
(31)【優先権主張番号】61/646,227
(32)【優先日】2012年5月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/669,577
(32)【優先日】2012年7月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/785,358
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514286974
【氏名又は名称】メディカス バイオサイエンシーズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】アスカリ,サイド,エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,イーオン,エス.
【審査官】 常見 優
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−502380(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/057628(WO,A2)
【文献】 国際公開第2007/016622(WO,A2)
【文献】 特表2001−520979(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0223957(US,A1)
【文献】 東京化成工業株式会社ホームページ, Trimethylolpropane, (CAS番号:77-99-6 製品コード:T0480), 別名 Hexaglycerol, [online], [平成29年7月28日検索], インターネット <URL:http://www.tcichemicals.com/eshop/ja/jp/commodity/T0480/>
【文献】 BOC Scienceホームページ, Hexaglycerol - CAS 36675-34-0, [online], [平成29年7月28日検索], インターネット <URL:http://www.bocsci.com/hexaglycerol-cas-36675-34-0-item-112909.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L15/00−33/18
A61K 9/00− 9/72
47/00−47/69
31/00−33/44
A61P 1/00−43/00
A61F 2/00− 4/00
13/00−13/84
15/00−17/00
A61B13/00−18/28
A61M25/00−99/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
網膜剥離の処置のためのインビボでゲル化する眼科用前製剤であって、該インビボでゲル化する眼科用前製剤は、
(a)つを超える求核のアーム有するマルチARMの求核ポリオールモノマーであって、各求核のアームが、ポリエチレングリコール鎖を含み、ヒドロキシル、チオールおよびアミノから選択される求核基において終了する、マルチARMの求核ポリオールモノマー
(b)つを超える求電子のアーム有するマルチARMの求電子ポリオールモノマーであって、各求電子のアームが、ポリエチレングリコール鎖を含み、エポキシド、マレイミド、スクシンイミジル、およびアルファ−ベータの不飽和エステルから選択される求電子基において終了する、マルチARMの求電子ポリオールモノマー;および
(c)ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アカシア、寒天、アルギン酸、アルギナート、ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、セラトニア、セトステアリルアルコール、キトサン、コロイド状二酸化ケイ素、シクロメチコン、エチルセルロース、ゼラチン、グリセリン、ベヘン酸グリセリル、グアーガム、ヘクトライト、水素化した植物油型I、ヒドロキシプロピルスターチ、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マルトデキストリン、ポリカルボフィル、ポリデキストロース、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)、ポリ酢酸ビニルフタレート、塩化カリウム、アルギン酸プロピレングリコール、サポナイト、アルギン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ステアリルアルコール、スクロース、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン、トラガント、並びにその誘導体および混合物から選択される、粘度増強剤、を含み、
ここで、該インビボでゲル化する眼科用前製剤の粘度は、約5cPから4000cPの間であり、該インビボでゲル化する眼科用前製剤は、眼の標的部位で重合及び/又はゲル化し、生体適合性の網膜用のパッチを形成する、ことを特徴とする、インビボでゲル化する眼科用前製剤。
【請求項2】
約6.0乃至約8.5のpH範囲をもたらす緩衝液をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のインビボでゲル化する眼科用前製剤。
【請求項3】
治療薬剤をさらに含む、請求項1または2に記載のインビボでゲル化する眼科用前製剤。
【請求項4】
マルチARMの求核ポリオールモノマーの求核のアームが、以下から選択され:
【化1】
式中、nが1−200であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインビボでゲル化する眼科用前製剤。
【請求項5】
マルチARMの求核ポリオールモノマーが、以下から選択され:
【化2】
式中、Rがヘキサグリセロールまたはトリペンタエリスリトールであり、nが1−200であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインビボでゲル化する眼科用前製剤。
【請求項6】
マルチARMの求電子ポリオールモノマーの求電子のアームが、以下から選択され:
【化3】
式中、mが2または3であり、nが1−200であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1項に記載のインビボでゲル化する眼科用前製剤。
【請求項7】
マルチARMの求電子ポリオールモノマーが、以下から選択され:
【化4】
式中、Rがヘキサグリセロールまたはトリペンタエリスリトールであり、nが1−200であることを特徴とする、請求項1乃至4または6のいずれか1項に記載のインビボでゲル化する眼科用前製剤。
【請求項8】
インビボでゲル化する眼科用前製剤が、以下のマルチARMのポリオールモノマーから調製され:
【化5】
式中、Rがヘキサグリセロールまたはトリペンタエリスリトールであり、および
nは、ポリオールモノマーの各々の分子量が20kDaであるようなnであることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインビボでゲル化する眼科用前製剤。
【請求項9】
粘度増強剤が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、またはポリビニルピロリドンであることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインビボでゲル化する眼科用前製剤。
【請求項10】
粘度増強剤が、メチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースであることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1項に記載のインビボでゲル化する眼科用前製剤。
【請求項11】
粘度増強剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインビボでゲル化する眼科用前製剤。
【請求項12】
粘度増強剤が、キトサンまたはアルギナートであることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1項に記載のインビボでゲル化する眼科用前製剤。
【請求項13】
網膜剥離を処置するための薬剤の製造における請求項1乃至12のいずれか1項に記載のインビボでゲル化する眼科用前製剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網膜剥離の処置のための生体適合性ヒドロゲル製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
網膜剥離は、網膜が支持組織のその下層から剥がれる目の障害である。網膜が剥離されると、血管領域からの出血は、眼の内側を曇らせ得、そこは通常、硝子体液が充填される。良好な視力の要因である網膜の部分である黄斑が剥離されると、中心視力は深刻な影響を受ける。最も一般的なタイプの網膜剥離は、しばしば、網膜中の裂孔または孔が原因である。眼の液体は、この開口部を通って漏出し得る。これによって、壁紙下の泡のように、網膜を下層組織から分離させる。これは、後部硝子体剥離と呼ばれる疾病によって最も頻繁に引き起こされる。別のタイプの網膜剥離は、牽引性の剥離と呼ばれる。これは、抑制されない糖尿病を有する、以前に網膜手術を受けた、または慢性炎症を有する人に見られる。処置が手遅れになると、それは結果的に盲目につながる。最初の剥離は局所的であり得るが、迅速な処置がないと、全体的な網膜が剥離しかねず、視力喪失および盲目につながる。
【0003】
網膜剥離のほとんどの人々は手術を必要とする。手術は、すぐに又は短期間経った後に行われ得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書には、インビボでゲル化する眼科用前製剤(ophthalmic pre−formulation)が提供され、該インビボでゲル化する眼科用前製剤は、(a)1つを超える求核基を含む少なくとも1つの第1化合物;(b)1つを超える求電子基を含む少なくとも1つの第2化合物;(c)約6.0乃至約8.5のpH範囲の水性緩衝液;および(d)粘度増強剤、を含み、ここで、該インビボでゲル化する眼科用前製剤は、少なくとも部分的に、眼の標的部位で重合及び/又はゲル化し、生体適合性の網膜用のパッチ(retinal patch)を形成する。幾つかの実施形態では、標的部位は、網膜裂孔である。特定の実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチは、少なくとも部分的に、標的部位に付着する。幾つかの実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤は、治療薬剤をさらに含む。幾つかの実施形態では、粘度増強剤は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、またはポリビニルピロリドンから選択される。
【0005】
インビボでゲル化する眼科用前製剤の特定の実施形態では、求核基は、チオールまたはアミノ基である。幾つかの実施形態では、第1化合物は、グリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサグリセロール、またはトリペンタエリスリトール誘導体である。特定の実施形態では、第1化合物は、1つ以上のポリエチレングリコール部分をさらに含む。幾つかの実施形態では、第1化合物は、ペンタエリスリトールまたはヘキサグリセロール誘導体である。特定の実施形態では、第1化合物は、エトキシル化ペンタエリスリトールエチルアミンエーテル、エトキシル化ペンタエリスリトールプロピルアミンエーテル、エトキシル化ペンタエリスリトールアミノ酢酸、エトキシル化ヘキサグリセロールエチルアミンエーテル、エトキシル化ヘキサグリセロールプロピルアミンエーテル、およびエトキシル化ヘキサグリセロールアミノ酢酸から成る群から選択される。特定の実施形態では、第1化合物は、トリメチロールプロパントリメルカプト酢酸、トリメチロールプロパントリ−3−メルカプトプロピオン酸、ペンタエリスリトールテトラメルカプト酢酸、ペンタエリスリトールテトラ−3−メルカプトプロピオン酸、エトキシル化トリメチロールプロパントリメルカプト酢酸、エトキシル化トリメチロールプロパントリ−3−メルカプトプロピオン酸、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラメルカプト酢酸、およびエトキシル化トリメチロールプロパントリ−3−メルカプトプロピオン酸から成る群から選択される。幾つかの実施形態では、第1化合物の分子量は、約100から100,000の間である。特定の実施形態では、第1化合物は、水溶性である。幾つかの実施形態では、求電子基は、エポキシド、N−スクシンイミジルスクシナート、N−スクシンイミジルグルタラート、N−スクシンイミジルスクシンアミドまたはN−スクシンイミジルグルタルアミドである。
【0006】
インビボでゲル化する眼科用前製剤の特定の実施形態では、第2化合物は、トリメチロールプロパン、グリセロール、ジグリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ヘキサグリセロール、トリペンタエリスリトール、またはポリグリセロール誘導体である。幾つかの実施形態では、第2化合物は、1以上のポリエチレングリコール部分をさらに含む。特定の実施形態では、第2の化合物は、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、またはヘキサグリセロール誘導体である。幾つかの実施形態では、第2化合物は、エトキシル化ペンタエリスリトールスクシンイミジルスクシナート、エトキシル化ペンタエリスリトールスクシンイミジルグルタラート、エトキシル化ペンタエリスリトールスクシンイミジルグルタルアミド、エトキシル化ヘキサグリセロールスクシンイミジルスクシナート、エトキシル化ヘキサグリセロールスクシンイミジルグルタラート、およびエトキシル化ヘキサグリセロールスクシンイミジルグルタルアミドから成る群から選択される。特定の実施形態では、第2化合物は、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、およびトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルから成る群から選択される。幾つかの実施形態では、第2化合物の分子量は、約100から100,000の間である。特定の実施形態では、第2化合物は、水溶性である。
【0007】
インビボでゲル化する眼科用前製剤の幾つかの実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチのゲル化時間は、水性緩衝液のpH、緩衝液の種類、緩衝液の濃度、緩衝液中の第1化合物及び/又は第2化合物の濃度、または求電子基の性質によって制御される。特定の実施形態では、ゲル化時間は、約20秒から10分の間である。幾つかの実施形態では、水性緩衝液のpHは、約8からである。特定の実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤は、生体適合性の網膜用のパッチを形成するために予め決められた時間でゲル化する。幾つかの実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチは、生体吸収性ポリマーである。特定の実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチは、約1乃至70日以内に生体吸収される。幾つかの実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチは、実質的に非生体吸収性である。
【0008】
インビボでゲル化する眼科用前製剤の特定の実施形態では、治療薬剤は、生体適合性の網膜用のパッチの拡散、浸透、分解、またはその任意の組み合わせを介して、生体適合性の網膜用のパッチから放出される。幾つかの実施形態では、治療薬剤は、最初に、拡散を介して生体適合性の網膜用のパッチから放出され、その後、生体適合性の網膜用のパッチの分解を介して放出される。特定の実施形態では、治療薬剤は、180日以内に生体適合性の網膜用のパッチから実質的に放出される。幾つかの実施形態では、治療薬剤は、14日以内に生体適合性の網膜用のパッチから実質的に放出される。特定の実施形態では、治療薬剤は、24時間以内に生体適合性の網膜用のパッチから実質的に放出される。幾つかの実施形態では、治療薬剤は、1時間以内に生体適合性の網膜用のパッチから実質的に放出される。特定の実施形態では、第1化合物および第2化合物は、生体適合性の網膜用のパッチの形成中に治療薬剤と反応しない。幾つかの実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチは、治療薬剤と相互作用し、ここで、治療薬剤の10%以上は、生体適合性の網膜用のパッチの分解を介して放出される。特定の実施形態では、治療薬剤の30%以上は、生体適合性の網膜用のパッチの分解を介して放出される。幾つかの実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチは、生体適合性の網膜用のパッチと治療薬剤との間で共有結合を形成することによって、治療薬剤と相互作用する。特定の実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチは、生体適合性の網膜用のパッチと治療薬剤との間で非共有結合を形成することによって、治療薬剤と相互作用する。幾つかの実施形態では、治療薬剤は、生体適合性の網膜用のパッチが分解している間に放出される。特定の実施形態では、治療薬剤の放出は、生体適合性の網膜用のパッチが分解し始める時間まで、本質的に阻害される。幾つかの実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチが分解し始める時間は、生体適合性の網膜用のパッチの架橋度が高ければ高いほど、より長い。特定の実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチが分解し始める時間は、第1化合物または第2化合物中のエステル基の濃度が高ければ高いほど、より短い。
【0009】
本明細書にはまた、(a)1つを超える求核基を含む少なくとも1つの第1化合物;(b)1つを超える求電子基を含む少なくとも1つの第2化合物;(c)約6.0乃至約8.5のpH範囲の水性緩衝液;(d)粘度増強剤;および(e)随意に治療薬剤、を混合することによって作られた、生体適合性の網膜用のパッチが提供され、ここで、混合は、ヒトの眼の外部の外側で行われ、生体適合性の網膜用のパッチは、少なくとも部分的に、ヒトの眼内の標的部位でゲル化する。
【0010】
生体適合性の網膜用のパッチの幾つかの実施形態では、粘度増強剤は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、またはポリビニルピロリドンから選択される。
【0011】
生体適合性の網膜用のパッチの特定の実施形態では、標的部位は、網膜裂孔である。幾つかの実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチは、少なくとも部分的に、標的部位に付着する。
【0012】
生体適合性の網膜用のパッチの特定の実施形態では、求核基は、チオールまたはアミノ基である。幾つかの実施形態では、第1化合物は、グリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサグリセロール、またはトリペンタエリスリトール誘導体である。特定の実施形態では、第1化合物は、1つ以上のポリエチレングリコール部分をさらに含む。特定の実施形態では、第1化合物は、エトキシル化ペンタエリスリトールエチルアミンエーテル、エトキシル化ペンタエリスリトールプロピルアミンエーテル、エトキシル化ペンタエリスリトールアミノ酢酸、エトキシル化ヘキサグリセロールエチルアミンエーテル、エトキシル化ヘキサグリセロールプロピルアミンエーテル、エトキシル化トリメチロールプロパントリ−3−メルカプトプロピオン酸、エトキシル化ヘキサグリセロールアミノ酢酸から成る群から選択される。
【0013】
生体適合性の網膜用のパッチの幾つかの実施形態では、求電子基は、エポキシド、N−スクシンイミジルスクシナート、N−スクシンイミジルグルタラート、N−スクシンイミジルスクシンアミド、またはN−スクシンイミジルグルタルアミドである。特定の実施形態では、第2化合物は、トリメチロールプロパン、グリセロール、ジグリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ヘキサグリセロール、トリペンタエリスリトール、またはポリグリセロール誘導体である。幾つかの実施形態では、第2化合物は、1つ以上のポリエチレングリコール部分をさらに含む。特定の実施形態では、第2化合物は、エトキシル化ペンタエリスリトールスクシンイミジルスクシナート、エトキシル化ペンタエリスリトールスクシンイミジルグルタラート、エトキシル化ペンタエリスリトールスクシンイミジルグルタルアミド、エトキシル化ヘキサグリセロールスクシンイミジルスクシナート、エトキシル化ヘキサグリセロールスクシンイミジルグルタラート、エトキシル化ヘキサグリセロールスクシンイミジルグルタルアミド、およびソルビトールポリグリシジルエーテルから成る群から選択される。
【0014】
生体適合性の網膜用のパッチの特定の実施形態では、第1化合物および第2化合物の分子量は、約100から100,000の間である。幾つかの実施形態では、第1化合物は、水溶性である。特定の実施形態では、第2化合物は、水溶性である。
【0015】
生体適合性の網膜用のパッチの幾つかの実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチのゲル化時間は、水性緩衝液のpH、緩衝液の種類、緩衝液の濃度、緩衝液中の第1化合物及び/又は第2化合物の濃度、または求電子基の性質によって制御される。特定の実施形態では、ゲル化時間は、約20秒から10分の間である。幾つかの実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチは、予め決められた時間にゲル化する。
【0016】
生体適合性の網膜用のパッチの特定の実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチは、生体吸収性ポリマーである。幾つかの実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチは、約1乃至70日以内に生体吸収される。特定の実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチは、実質的に非生体吸収性である。
【0017】
生体適合性の網膜用のパッチの幾つかの実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチは、放射線不透性物質または薬学的に許容可能な色素をさらに含む。
【0018】
生体適合性の網膜用のパッチの特定の実施形態では、治療薬剤は、生体適合性の網膜用のパッチの拡散、浸透、分解、またはその任意の組み合わせを介して、生体適合性の網膜用のパッチから放出される。幾つかの実施形態では、治療薬剤は、最初に、拡散を介して生体適合性の網膜用のパッチから放出され、その後、生体適合性の網膜用のパッチの分解を介して放出される。特定の実施形態では、治療薬剤は、180日以内に生体適合性の網膜用のパッチから実質的に放出される。幾つかの実施形態では、治療薬剤は、24時間以内に生体適合性の網膜用のパッチから実質的に放出される。
【0019】
生体適合性の網膜用のパッチの特定の実施形態では、第1化合物および第2化合物は、生体適合性の網膜用のパッチの形成中に治療薬剤と反応しない。幾つかの実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチは、治療薬剤と相互作用し、ここで、治療薬剤の10%以上は、生体適合性の網膜用のパッチの分解を介して放出される。特定の実施形態では、治療薬剤の放出は、生体適合性の網膜用のパッチの組成物によって決定される。幾つかの実施形態では、治療薬剤は、生体適合性の網膜用のパッチが分解している間に放出される。特定の実施形態では、治療薬剤の放出は、生体適合性の網膜用のパッチが分解し始める時間まで、本質的に阻害される。幾つかの実施形態では、治療薬剤の少なくとも一部分は、生体適合性の網膜用のパッチが分解し始める時間の前に放出される。特定の実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチが分解し始める時間は、生体適合性の網膜用のパッチの架橋度が高ければ高いほど、より長い。幾つかの実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチが分解し始める時間は、第1化合物または第2化合物中のエステル基の濃度が高ければ高いほど、より短い。
【0020】
本明細書にはさらに、インビボでの重合された生体適合性の網膜用のパッチが提供され、該インビボでの重合された生体適合性の網膜用のパッチは、(a)少なくとも1つのアミド、チオエステル、またはチオエーテル結合を介して、少なくとも1つの第2モノマー単位に結合された少なくとも1つの第1モノマー単位;(b)少なくとも1つの第1モノマー単位に結合された少なくとも1つの第2モノマー単位;(c)粘度増強剤;および(d)随意に治療薬剤、を含み、ここで、インビボで重合された生体適合性の網膜用のパッチは、少なくとも部分的に、ヒトの眼内の網膜裂孔で重合される。幾つかの実施形態では、インビボで重合された生体適合性の網膜用のパッチは、少なくとも部分的に、眼の網膜に付着する。特定の実施形態では、粘度増強剤は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、またはポリビニルピロリドンから選択される。
【0021】
インビボで重合された生体適合性の網膜用のパッチの幾つかの実施形態では、第1モノマー単位は、グリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサグリセロール、またはトリペンタエリスリトール誘導体である。特定の実施形態では、第1モノマー単位は、1つ以上のポリエチレングリコール部分をさらに含む。幾つかの実施形態では、第2モノマー単位は、トリメチロールプロパン、グリセロール、ジグリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ヘキサグリセロール、トリペンタエリスリトール、またはポリグリセロール誘導体である。特定の実施形態では、第2モノマー単位は、1つ以上のポリエチレングリコール部分を含む。幾つかの実施形態では、第1モノマー単位および第2モノマー単位の分子量は、約100から100,000の間である。
【0022】
インビボで重合された生体適合性の網膜用のパッチの特定の実施形態では、インビボで重合された生体適合性の網膜用のパッチは、生体吸収性ポリマーである。幾つかの実施形態では、インビボで重合された生体適合性の網膜用のパッチは、約1乃至70日以内に生体吸収される。特定の実施形態では、インビボで重合された生体適合性の網膜用のパッチは、実質的に非生体吸収性である。
【0023】
インビボで重合された生体適合性の網膜用のパッチの幾つかの実施形態では、インビボで重合された生体適合性の網膜用のパッチは、放射線不透性物質または薬学的に許容可能な色素をさらに含む。
【0024】
インビボで重合された生体適合性の網膜用のパッチの特定の実施形態では、治療薬剤は、インビボで重合された生体適合性の網膜用のパッチの拡散、浸透、分解、またはその任意の組み合わせを介して、インビボで重合された生体適合性の網膜用のパッチから放出される。特定の実施形態では、治療薬剤は、最初に、拡散を介してインビボで重合された生体適合性の網膜用のパッチから放出され、その後、インビボで重合された生体適合性の網膜用のパッチの分解を介して放出される。幾つかの実施形態では、治療薬剤は、180日以内に、インビボで重合された生体適合性の網膜用のパッチから実質的に放出される。特定の実施形態では、治療薬剤は、24時間以内に、インビボで重合された生体適合性の網膜用のパッチから実質的に放出される。幾つかの実施形態では、治療薬剤の放出は、インビボで重合された生体適合性の網膜用のパッチの組成物によって決定される。特定の実施形態では、治療薬剤は、インビボで重合された生体適合性の網膜用のパッチが分解している間に、放出される。幾つかの実施形態では、治療薬剤の放出は、インビボで重合された生体適合性の網膜用のパッチが分解し始める時間まで、本質的に阻害される。特定の実施形態では、治療薬剤の少なくとも一部分は、インビボで重合された生体適合性の網膜用のパッチが分解し始める時間の前に放出される。幾つかの実施形態では、インビボで重合された生体適合性の網膜用のパッチが分解し始める時間は、インビボで重合された生体適合性の網膜用のパッチの架橋度が高ければ高いほど、より長い。特定の実施形態では、インビボで重合された生体適合性の網膜用のパッチが分解し始める時間は、第1化合物または第2化合物中のエステル基の濃度が高ければ高いほど、より短い。
【0025】
本明細書にはまた、網膜剥離、網膜裂孔、または網膜円孔を処置する方法が提供され、該方法は、ヒトの眼内の網膜裂孔の部位に、インビボでゲル化する眼科用前製剤を送達する工程を含み、該インビボでゲル化する眼科用前製剤は、(a)1つを超える求核基を含む少なくとも1つの第1化合物;(b)1つを超える求電子基を含む少なくとも1つの第2化合物;(c)約6.0乃至約8.5のpH範囲の水性緩衝液;および(d)粘度増強剤、を含み、ここで、インビボでゲル化する眼科用前製剤は、少なくとも部分的に、ヒトの眼内の網膜裂孔の部位で重合及び/又はゲル化し、生体適合性の網膜用のパッチを形成する。幾つかの実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチは、少なくとも部分的に、網膜裂孔の部位に付着する。特定の実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチは、網膜裂孔の部位を閉じる。
【0026】
方法の幾つかの実施形態において、インビボでゲル化する眼科用前製剤は、治療薬剤をさらに含む。特定の実施形態では、粘度増強剤は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、またはポリビニルピロリドンから選択される。
【0027】
方法の特定の実施形態では、求核基は、チオールまたはアミノ基である。幾つかの実施形態では、第1化合物は、グリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサグリセロール、またはトリペンタエリスリトール誘導体である。特定の実施形態では、第1化合物は、1つ以上のポリエチレングリコール部分をさらに含む。幾つかの実施形態において、第1化合物は、ペンタエリスリトールまたはヘキサグリセロール誘導体である。特定の実施形態では、第1化合物は、エトキシル化ペンタエリスリトールエチルアミンエーテル、エトキシル化ペンタエリスリトールプロピルアミンエーテル、エトキシル化ペンタエリスリトールアミノ酢酸、エトキシル化ヘキサグリセロールエチルアミンエーテル、エトキシル化ヘキサグリセロールプロピルアミンエーテル、およびエトキシル化ヘキサグリセロールアミノ酢酸から成る群から選択される。幾つかの実施形態では、第1化合物は、トリメチロールプロパン トリメルカプト酢酸、トリメチロールプロパン トリ−3−メルカプトプロピオン酸、ペンタエリスリトール テトラメルカプト酢酸、ペンタエリスリトールテトラ−3−メルカプトプロピオン酸、エトキシル化トリメチロールプロパン トリメルカプト酢酸、エトキシル化トリメチロールプロパントリ−3−メルカプトプロピオン酸、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラメルカプト酢酸、およびエトキシル化トリメチロールプロパントリ−3−メルカプトプロピオン酸から成る群から選択される。特定の実施形態では、第1化合物の分子量は、約100から100,000の間である。幾つかの実施形態において、第1化合物は、水溶性である。
【0028】
方法の幾つかの実施形態では、求電子基は、エポキシド、N−スクシンイミジルスクシナート、N−スクシンイミジルグルタラート、N−スクシンイミジルスクシンアミドまたはN−スクシンイミジルグルタルアミドである。特定の実施形態では、第2化合物は、トリメチロールプロパン、グリセロール、ジグリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ヘキサグリセロール、トリペンタエリスリトール、またはポリグリセロール誘導体である。幾つかの実施形態では、第2化合物は、1つ以上のポリエチレングリコール部分をさらに含む。特定の実施形態では、第2化合物は、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、またはヘキサグリセロール誘導体である。幾つかの実施形態では、第2化合物は、エトキシル化ペンタエリスリトールスクシンイミジルスクシナート、エトキシル化ペンタエリスリトールスクシンイミジルグルタラート、エトキシル化ペンタエリスリトールスクシンイミジルグルタルアミド、エトキシル化ヘキサグリセロールスクシンイミジルスクシナート、エトキシル化ヘキサグリセロールスクシンイミジルグルタラート、およびエトキシル化ヘキサグリセロールスクシンイミジルグルタルアミドから成る群から選択される。特定の実施形態では、第2化合物は、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、およびトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルから成る群から選択される。幾つかの実施形態では、第2化合物の分子量は、約10,000から100,000の間である。特定の実施形態では、第2化合物は、水溶性である。
【0029】
方法の特定の実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチのゲル化時間は、水性緩衝液のpH、緩衝液の種類、緩衝液の濃度、緩衝液中の第1化合物及び/又は第2化合物の濃度、または求電子基の性質によって制御される。幾つかの実施形態では、ゲル化時間は、約20秒から10分の間である。特定の実施形態では、水性緩衝液のpHは、約8からである。幾つかの実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤は、生体適合性の網膜用のパッチを形成するために予め決められた時間でゲル化する。
【0030】
方法のいくつかの実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチは、生体吸収性ポリマーである。方法の特定の実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチは、約1乃至70日以内に生体吸収される。方法の幾つかの実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチは、実質的に非生体吸収性である。
【0031】
方法の特定の実施形態では、治療薬剤は、生体適合性の網膜用のパッチの拡散、浸透、分解、またはその任意の組み合わせを介して、生体適合性の網膜用のパッチから放出される。幾つかの実施形態では、治療薬剤は、最初に、拡散を介して生体適合性の網膜用のパッチから放出され、その後、生体適合性の網膜用のパッチの分解を介して放出される。特定の実施形態では、治療薬剤は、180日以内に生体適合性の網膜用のパッチから実質的に放出される。幾つかの実施形態では、治療薬剤は、14日以内に生体適合性の網膜用のパッチから実質的に放出される。特定の実施形態では、治療薬剤は、24時間以内に生体適合性の網膜用のパッチから実質的に放出される。幾つかの実施形態では、治療薬剤は、1時間以内に生体適合性の網膜用のパッチから実質的に放出される。特定の実施形態では、第1化合物および第2化合物は、生体適合性の網膜用のパッチの形成中に治療薬剤と反応しない。幾つかの実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチは、治療薬剤と相互作用し、治療薬剤の10%以上は、生体適合性の網膜用のパッチの分解を介して放出される。特定の実施形態では、治療薬剤の30%以上は、生体適合性の網膜用のパッチの分解を介して放出される。幾つかの実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチは、生体適合性の網膜用のパッチと治療薬剤との間で共有結合を形成することによって、治療薬剤と相互作用する。特定の実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチは、生体適合性の網膜用のパッチと治療薬剤との間で非共有結合を形成することによって、治療薬剤と相互作用する。幾つかの実施形態では、治療薬剤は、生体適合性の網膜用のパッチが分解している間に放出される。特定の実施形態では、治療薬剤の放出は、生体適合性の網膜用のパッチが分解し始める時間まで、本質的に阻害される。幾つかの実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチが分解し始める時間は、生体適合性の網膜用のパッチの架橋度が高ければ高いほど、より長い。特定の実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチが分解し始める時間は、第1化合物または第2化合物中のエステル基の濃度が高ければ高いほど、より短い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の新しい特徴は、特に添付の特許請求の範囲内に明記される。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される、具体例を明記する後述の詳細な説明、および以下の添付図面を参照することによって得られる。
【0033】
図1図1は、以下の2つの製剤のための0.10Mのリン酸反応緩衝液へのモノマー付加に対するpHの効果を示す:1)0.3%のHPMCを有する4.8%の溶液での8ARM−20k−NH2および4ARM−20k−SGA;2)0.3%のHPMCを有する4.8%の溶液での8ARM−20k−AA/8ARM−20k−NH2(70/30)および4ARM−20k−SGA。
図2図2は、0.05Mのリン酸緩衝液を使用する、5%の溶液での8ARM−20k−NH2および8ARM−15k−SGのポリマー製剤のためのゲル化時間に対する反応緩衝液pHの効果を示す。
図3図3は、pH7.4でリン酸緩衝液を使用する、5%の溶液での8ARM−20k−NH2および8ARM−15k−SGのポリマー製剤のためのゲル化時間に対する反応緩衝液のリン酸塩濃度の効果を示す。
図4図4は、pH7.4で0.05Mのリン酸緩衝液を使用する、ゲル化時間に対するポリマー濃度の効果を示す。
図5図5は、以下の2つの製剤のためのゲル化時間に対する温度の効果を示す:1)0.3%のHPMCを有する4.8%の溶液での8ARM−20k−NH2および4ARM−20k−SGA;2)0.3%のHPMCを有する4.8%の溶液での8ARM−20k−AA/8ARM−20k−NH2(70/30)および4ARM−20k−SGA。
図6図6は、ゲル化点に対する時間の%に応じたゲル化点までのポリマー溶液の粘度を示す。
図7図7は、1対1のアミン対エステルのモル比での8ARM−20k−NH2、4ARM−20k−AA、および8ARM−15k−SGを含む製剤のためのおよそ56週間にわたるバルクモノマーの安定性を示す。ポリマーの%溶液は、5%±0.5%であった。異なる反応緩衝液が経時的に使用されたが、組成物は、典型的に、7.4±0.1のpHでの0.058Mのリン酸塩であった。
図8図8は、分解時間に対する分解性の酢酸アミン8ARM−20k−AAまたは4ARM−20k−AAの付加の効果を示す。分解は、37℃でリン酸緩衝食塩水(PBS)中に生じた。
図9図9は、分解時間に対する分解緩衝液pHの効果を示す。分解は37℃で生じた。
図10図10は、円滑な分解プロセスの例として、0.3%のHPMC製剤を有する4.8%の溶液での8ARM−20k−NH2および4ARM−20k−SGAを描写する幾つかの写真を示す。ポリマーは、視覚化目的のための食品用染料を用いて円筒状に作られた。分解緩衝液中のポリマーの初期状態が示される(A)。数日後、ポリマーは膨潤したが、その形状を保持した(B)。分解点が近づくと、ポリマーは柔軟になり、その形状を失った(C)。最終的に、ポリマーは、溶液中に分解された(D)。
図11図11は、断片化する(fragmenting)分解プロセスの例として、2つの異なる製剤を描写する写真を示す。ポリマーは、視覚化目的のための食品用染料を用いて円筒状に作られた。0.3%のHPMCを有する4.8%の溶液での8ARM−20k−AA/8ARM−20k−NH2(60/40)および4ARM−20k−SGAは、分解点の近くに示される(A)。0.3%のHPMCを有する4.8%の溶液での4ARM−20k−AA/8ARM−20k−NH2(70/30)および4ARM−20k−SGAは、分解点の近くに示される(B)。
図12A図12Aは、以下の製剤のための、ゲル化時間に対するポリマー溶液の効果を示す:0.3%のHPMCを有する8ARM−20k−AA/8ARM−20k−NH2(75/25)および4ARM−20k−SGA。エラーバーは3つのサンプルからの標準偏差を表わす。
図12B図12Bは、以下の製剤のための、硬度に対するポリマー溶液の効果を示す: 0.3%のHPMCを有する8ARM−20k−AA/8ARM−20k−NH2(75/25)および4ARM−20k−SGA。 エラーバーは3つのサンプルからの標準偏差を表わす。
図12C図12Cは、以下の製剤のための、粘着度に対するポリマー溶液の効果を示す: 0.3%のHPMCを有する8ARM−20k−AA/8ARM−20k−NH2(75/25)および4ARM−20k−SGA。 エラーバーは3つのサンプルからの標準偏差を表わす。
図12D図12Dは、以下の製剤のための、弾性率に対するポリマー溶液の効果を示す: 0.3%のHPMCを有する8ARM−20k−AA/8ARM−20k−NH2(75/25)および4ARM−20k−SGA。 エラーバーは3つのサンプルからの標準偏差を表わす。
図12E図12Eは、以下の製剤のための、膨潤に対するポリマー溶液の効果を示す: 0.3%のHPMCを有する8ARM−20k−AA/8ARM−20k−NH2(75/25)および4ARM−20k−SGA。 エラーバーは3つのサンプルからの標準偏差を表わす。
図13図13は、膨潤に対する、ポリマー製剤への0、0.3および1.0%でのハイプロメロース(HPMC)の付加の効果を示す。
図14図14は、純水に関連するポリマー溶液の比重を示す。
図15図15は、0.0、1.0、2.0、5.0および10.0%(w/v)の濃度のための溶液粘度に対する硫酸バリウム(BaSO)の効果を示す。
図16図16は、硬度の試験を実行するTexture Analyzer Exponentのソフトウェアによって作り出されたサンプルプロットを示す。ピーク力はポリマー硬度として記録され、これは、4mmの標的の浸透深さがプローブによって到達された点を表わす。
図17図17は、圧縮下での弾性率の試験を実行するTexture Analyzer Exponentのソフトウェアによって作り出されたサンプルプロットを示す。弾性率は、曲線の最初の傾きから最大圧縮応力の10%まで計算された。
図18図18は、付着性の試験を実行するTexture Analyzer Exponentのソフトウェアによって作り出された典型的なプロットを示す。100.0gの接触力が10秒間適用された。粘着度は、サンプルからプローブを持ち上げた後のピーク力として測定された。付着エネルギーまたは付着仕事量は、粘着力を表わす曲線下面積(点1から2)として計算された。曳糸性(stringiness)は、粘着力(1と2を指示する)に影響を及ぼしながらプローブによって移動された距離として定義された。
図19図19は、強度に対する、ポリマー製剤への0、0.3および1.0%でのハイプロメロース(HPMC)の付加の効果を示す(A)。強度に対する、ポリマー製剤への0、70および100%での分解性の酢酸アミン8ARM−20k−AAの付加の効果(B)。
図20図20は、弾性率に対する、ポリマー製剤への0、0.3および1.0%でのハイプロメロース(HPMC)の付加の効果を示し(A)、弾性率に対する、ポリマー製剤への0、70および100%での分解性の酢酸アミン8ARM−20k−AAの付加の効果を示す(B)。
図21A図21Aは、一般的な以下のポリマー製剤の硬度の比較を示す:0.3%のHPMCを有する4.8%の溶液での8ARM−20k−AA/8ARM−20k−NH2(x/y)および4ARM−20k−SGA。Post−It(商標)の付箋に対する測定値は、参照として含まれる。
図21B図21Bは、一般的な以下のポリマー製剤の粘着度の比較を示す: 0.3%のHPMCを有する4.8%の溶液での8ARM−20k−AA/8ARM−20k−NH2(x/y)および4ARM−20k−SGA。 Post−It(商標)の付箋に対する測定値は、参照として含まれる。
図21C図21Cは、一般的な以下のポリマー製剤の付着エネルギーの比較を示す: 0.3%のHPMCを有する4.8%の溶液での8ARM−20k−AA/8ARM−20k−NH2(x/y)および4ARM−20k−SGA。 Post−It(商標)の付箋に対する測定値は、参照として含まれる。
図21D図21Dは、一般的な以下のポリマー製剤の曳糸性の比較を示す: 0.3%のHPMCを有する4.8%の溶液での8ARM−20k−AA/8ARM−20k−NH2(x/y)および4ARM−20k−SGA。 Post−It(商標)の付箋に対する測定値は、参照として含まれる。
図22図22は、以下のポリマー製剤のためのパーセントとして図示された硬度対分解時間を示す:0.3%のHPMCを有する4.8%の溶液での8ARM−20k−AA/8ARM−20k−NH2(70/30)および4ARM−20k−SGA。エラーバーは3つのサンプルからの標準偏差を表わす。ポリマーに対する分解時間は18日間であった。
図23図23は、キットで使用するための直接接続したシリンジの一般的な組立てを示す。
図24図24は、混合用の組立ての一般的な設計を示す(食品用染料が明瞭さの目的で加えられた)。
【発明を実施するための形態】
【0034】
網膜剥離を処置するための現在の方法は、手術、その後の縫合またはレーザー療法に続いて、眼内を不活性ガスまたはシリコーン油で充填することを含む。手術後は、結果的に内部の眼内圧につながり、2−4週間視力がない。もし不活性ガスで充填されると、新しい位置での大気圧の起こり得る変化が原因で、この期間における移動も不可能性である。しかしながら、腔がシリコーン油で充填されると、治癒プロセスが完了した後に、シリコーン油を取り除くために、別の手術が必要となる。さらに、現在の網膜用のパッチは、適所にとどめるのが難しく、一方で、現在市販されている接着剤は、網膜に十分に接合せず、部位に送達するのが難しい。
【0035】
それ故、本明細書には、狭口径の針を使用して、影響を受けた領域に又はその近くに注入され得る、および生体適合性の網膜用のパッチを形成する、インビボでゲル化する生体適合性の眼科用前製剤のファミリーが提供される。一旦標的位置が眼内に確認されると、反応混合物の正確な容量が内部に注入される。一旦部位にあると、液体は、網膜の表面を濡らし、孔を充填する。前設定時間の後に、液体は、固体に変わり、2つの層を一緒に結合し、網膜を付着して、網膜用のパッチを形成する孔も充填する。製剤の粘度は、液体が標的部位で局所化されたままであるように制御される。幾つかの実施形態では、インビボでゲル化する生体適合性の眼科用前製剤はまた、眼内の部位に付着する。特定の実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤の粘度および粘着性は、狭口径の針を介する部位への容易な送達に適しており、一方で同時に、網膜裂孔の部位で適所にとどまること、および網膜裂孔を囲む組織に付着することにも適している。幾つかの実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤は、前製剤が、ゲル化プロセスの間に眼内の標的部位にとどまる及び/又は付着することを確かなものにするために、粘度増強剤を含む。バイオポリマーの物理化学的性質は、周囲の組織および網膜に合わせられ、その結果、自然大気からの圧力の変化はほとんどない。
【0036】
さらなる実施形態では、生体適合性の網膜用のパッチを形成するためのインビボでゲル化する眼科用前製剤は、硝子体への直接的な薬剤の投与を可能にする。ポリマーは、液体の前製剤として始まり(starts out)、1つ以上の随意の治療薬剤と一緒に、低侵襲技術を使用して疾患の部位に送達される。一旦眼内にあると、液体の前製剤は、幾つかの例において組織に付着し、疾患の部位でポリマー/薬物の組み合わせを維持する、固体のヒドロゲルへと重合する。幾つかの例では、重合および分解の時間は、ヒドロゲルポリマーの適切な適用および配置を可能にするモノマーおよび緩衝液の組成物を変えることによって制御される。幾つかの実施形態では、薬物は、正確且つ一貫した方法で放出される。特定の例では、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、定義された期間にわたって生体吸収される。幾つかの実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、標的部位で治療薬剤の持続放出を提供する。特定の実施形態では、持続且つ制御された放出は、治療薬剤への全身曝露を減少させる。制御されたゲル化および分解は、1つ以上の治療薬剤を、疾患によって影響を受けた組織に直接送達し、それによって、治療薬剤への全身曝露を最小限にする、生体適合性のヒドロゲルポリマーの使用を可能にする。
【0037】
幾つかの例では、治療薬剤は、長時間にわたって生体適合性のヒドロゲルポリマーから放出される。特定の例では、生体適合性のヒドロゲルポリマーにおける治療薬剤の送達は、(例えば、皮膚の下の)治療薬剤のデポー(depot)を提供し、ここでデポーは、長時間にわたって(例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、14日、3週、4週の間)治療薬剤を放出する。幾つかの例では、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、遅延バースト(delayed burst)として遅延後に治療薬剤を放出する。
【0038】
幾つかの実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤は、眼の硝子体液と完全に取って代わる。特定の実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤は、眼の硝子体液と部分的に取って代わる。
【0039】
インビボでゲル化する眼科用前製剤は、眼の網膜剥離および他の疾病を処置するのに有用である。眼内の網膜裂孔の部位に送達された後、インビボでゲル化する眼科用前製剤は、少なくとも部分的に、眼内の網膜裂孔の部位で重合及び/又はゲル化し、網膜用のパッチを形成する。網膜用のパッチは、少なくとも部分的に、網膜裂孔に付着し、網膜剥離を処置する孔を閉じ、それを治癒する。
【0040】
さらに、インビボでゲル化する眼科用前製剤は、眼の疾病、例えば、加齢性黄斑変性、糖尿病性網膜症、白内障、眼内圧(緑内障)、または増殖性硝子体網膜症を処置するために、眼内に治療薬剤を送達するのに有用である。
【0041】
典型的なヒドロゲル成分
本明細書には、インビボでゲル化する眼科用前製剤が提供され、該インビボでゲル化する眼科用前製剤は、1つを超える求核基を含む少なくとも1つの第1化合物、1つを超える求電子基を含む少なくとも1つの第2化合物、約5.0乃至約9.5のpH範囲の水性緩衝液、および随意に1つ以上の治療薬剤を含む。特定の実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤は、少なくとも1つの第1化合物、少なくとも1つの第2化合物、および随意の水性緩衝液中の治療薬剤を混合し、生体適合性のヒドロゲルポリマーが、少なくとも部分的に標的部位に重合及び/又はゲル化するように、混合物を標的部位に送達することによって、ヒトの標的部位で生体適合性のヒドロゲルポリマーを形成する。幾つかの実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、水性緩衝液中で第1化合物および第2化合物を混合した後に形成され、ここで、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、標的部位でゲル化する。特定の実施形態では、第1化合物、第2化合物、および随意の水性緩衝液中の治療薬剤を混合し、混合物をヒトの標的部位に送達することによって、インビボでゲル化する眼科用前製剤が生成され、結果として、それは、少なくとも部分的に標的部位で重合及び/又はゲル化し、生体適合性のヒドロゲルポリマーを形成する。
【0042】
幾つかの実施形態では、1つを超える求核基または求電子基を含む第1化合物または第2化合物は、ポリオール誘導体である。特定の実施形態では、第1化合物または第2化合物は、樹状ポリオール誘導体である。幾つかの実施形態では、第1化合物または第2化合物は、グリコール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ジグリセリン、ペンタエリスリトール(pentaerythritiol)、ソルビトール、ヘキサグリセロール、トリペンタエリスリトール、またはポリングリセリン誘導体である。特定の実施形態では、第1化合物または第2化合物は、グリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサグリセロール、またはトリペンタエリスリトール誘導体である。幾つかの実施形態では、第1化合物または第2化合物は、トリメチロールプロパン、グリセロール、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ヘキサグリセロール、トリペンタエリスリトール、またはポリングリセリン誘導体である。幾つかの実施形態では、第1化合物または第2化合物は、ペンタエリスリトール、ジ−ペンタエリスリトール、またはトリ−ペンタエリスリトール誘導体である。特定の実施形態では、第1化合物または第2化合物は、ヘキサグリセロール(2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン)誘導体である。幾つかの実施形態では、第1化合物または第2化合物は、ソルビトール誘導体である。特定の実施形態では、第1化合物または第2化合物は、グリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、またはポリグリセリン誘導体である。
【0043】
幾つかの実施形態では、第1化合物及び/又は第2化合物は、1乃至200のエチレングリコールのサブユニットを含む、ポリエチレングリコール(PEG)鎖をさらに含む。特定の実施形態では、第1化合物及び/又は第2化合物は、1乃至200のプロピレングリコールのサブユニットを含む、ポリプロピレングリコール(PPG)鎖をさらに含む。ポリオールから伸びるPEGまたはPPGの鎖は、ポリオールコアを求核または求電子の基に連結する「アーム(arms)」である。
【0044】
典型的な求核モノマー
インビボでゲル化する眼科用前製剤は、1つを超える求核基を含む少なくとも1つの第1化合物を含む。幾つかの実施形態では、求核基は、ヒドロキシル、チオール、またはアミノ基である。好ましい実施形態では、求核基は、チオールまたはアミノ基である。
【0045】
特定の実施形態では、求核基は、適切なリンカーを介してポリオール誘導体に接続される。適切なリンカーは、限定されないが、エステル(例えば、酢酸塩)またはエーテルを含む。幾つかの例では、エステルリンカーを含むモノマーは、生物分解をより受けやすい。求核基を含むリンカーの例は、限定されないが、メルカプト酢酸、アミノ酢酸(グリシン)および他のアミノ酸エステル(例えば、アラニン、β−アラニン、リジン、オルニチン)、3−メルカプトプロピオン酸、エチルアミンエーテル、またはプロピルアミンエーテルを含む。幾つかの実施形態では、ポリオールコア誘導体は、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールのサブユニットに結合され、これは求核基を含むリンカーに接続される。第1化合物(求核モノマー)の分子量は、約100乃至100,000である。特定の実施形態では、第1化合物(求核モノマー)の分子量は、約100、約500、約1,000、約2,000、約3,000、約4,000、約5,000、約6,000、約7,000、約8,000、約9,000、約10,000、約12,000、約15,000、約20,000、約25,000、約30,000、約35,000、約40,000、約50,000、約60,000、約70,000、約80,000、約90,000、または約100,000である。特定の実施形態では、第2化合物の分子量は、約500乃至40,000である。幾つかの実施形態では、第1化合物の分子量は、約500乃至2,000である。特定の実施形態では、第1化合物の分子量は、約15,000乃至約40,000である。幾つかの実施形態では、第1化合物は、水溶性である。
【0046】
1つを超える求核基を含むモノマーの構成の例は、トリメチロールプロパンまたはペンタエリスリトールコアポリオールとともに以下に示される。示される化合物は、酢酸塩、プロピオン酸塩またはエチルエーテルのリンカー(例えば、ETTMP(A;n=1)、4ARM−PEG−NH2(B;n=1)、および4ARM−PEG−AA(C;n=1)の下記の構造)を介して可変長PEGサブユニットに接続される、チオールまたはアミンの求電子基を有する。他のポリオールコアを使用するモノマーは、類似した方法で構築される。
【0047】
【化1】
【0048】
(アミン−エステルの化学作用(chemistry)で使用される)求核基を含む適切な第1化合物は、限定されないが、ペンタエリスリトール ポリエチレングリコールアミン(4ARM−PEG−NH2)(約5,000乃至約40,000から選択された分子量、例えば、5,000、10,000、または20,000)、ペンタエリスリトール ポリエチレングリコールアミノ酢酸(4ARM−PEG−AA)(約5,000乃至約40,000から選択された分子量、例えば、5,000、10,000、または20,000)、ヘキサグリセリン ポリエチレングリコールアミン(8ARM−PEG−NH2)(約5,000乃至約40,000から選択された分子量、例えば、10,000、20,000、または40,000)、またはトリペンタエリスリトール グリコールアミン(8ARM(TP)−PEG−NH2)(約5,000乃至約40,000から選択された分子量、例えば、10,000、20,000、または40,000)を含む。
化合物のこの種類内で、4(または8)ARM−PEG−AAは、エステル(または酢酸塩)の基を含み、一方で、4(または8)ARM−PEG−NH2モノマーは、エステル(または酢酸塩)の基を含まない。
【0049】
(チオール−エステルの化学作用で使用される)求核基を含む他の適切な第1化合物は、限定されないが、グリコール ジメルカプト酢酸(THIOCURE(登録商標)GDMA)、トリメチロールプロパントリメルカプト酢酸(THIOCURE(登録商標)TMPMA)、ペンタエリスリトール テトラメルカプト酢酸(THIOCURE(登録商標)PETMA)、グリコールジ−3−メルカプトプロピオン酸(THIOCURE(登録商標)GDMP)、トリメチロールプロパントリ−3−メルカプトプロピオン酸(THIOCURE(登録商標)TMPMP)、ペンタエリスリトールテトラ−3−メルカプトプロピオン酸(THIOCURE(登録商標)PETMP)、ポリオール−3−メルカプトプロピオン酸)、ポリエステル−3−メルカプトプロピオン酸、プロピレングリコール−3−メルカプトプロピオン酸(THIOCURE(登録商標)PPGMP 800)、プロピレングリコール−3−メルカプトプロピオン酸(THIOCURE(登録商標)PPGMP 2200)、エトキシル化トリメチロールプロパントリ−3−メルカプトプロピオン酸(THIOCURE(登録商標)ETTMP−700)、およびエトキシル化トリメチロールプロパントリ−3−メルカプトプロピオン酸(THIOCURE(登録商標)ETTMP−1300)を含む。
【0050】
典型的な求電子モノマー
インビボでゲル化する眼科用前製剤は、1つを超える求電子基を含む少なくとも1つの第1化合物を含む。幾つかの実施形態では、求電子基は、エポキシド、マレイミド、スクシンイミジル、またはアルファ−ベータの不飽和エステルである。好ましい実施形態では、求電子基は、エポキシドまたはスクシンイミジルである。
【0051】
特定の実施形態では、求電子基は、適切なリンカーを介してポリオール誘導体に接続される。適切なリンカーは、限定されないが、エステル、アミド、またはエーテルを含む。幾つかの例では、エステルリンカーを含むモノマーは、生物分解を受けやすい。求電子基を含むリンカーの例は、限定されないが、スクシンイミジルスクシナート、スクシンイミジルグルタラート、スクシンイミジルスクシンアミド、スクシンイミジルグルタルアミド、またはグリシジルエーテルを含む。幾つかの実施形態では、ポリオールコア誘導体は、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールのサブユニットに結合され、これは求電子基を含むリンカーに接続される。第2化合物(求電子モノマー)の分子量は、約100乃至100,000である。特定の実施形態では、第2化合物(求電子モノマー)の分子量は、約100、約500、約1,000、約2,000、約3,000、約4,000、約5,000、約6,000、約7,000、約8,000、約9,000、約10,000、約12,000、約15,000、約20,000、約25,000、約30,000、約35,000、約40,000、約50,000、約60,000、約70,000、約80,000、約90,000、または約100,000である。特定の実施形態では、第2化合物の分子量は、約500乃至40,000である。幾つかの実施形態では、第2化合物の分子量は、約500乃至2,000である。特定の実施形態では、第2化合物の分子量は、約15,000乃至約40,000である。幾つかの実施形態では、第2化合物は、水溶性である。
【0052】
1つを超える求電子基を含むモノマーの構成の例は、ペンタエリスリトールコアポリオールとともに以下に示される。示される化合物は、スクシンイミジル求電子基、グルタラートまたはグルタルアミドのリンカー、および可変長PEGサブユニット(例えば、下記の構造、4ARM−PEG−SG(D;n=3)および4ARM−PEG−SGA(E;n=3)の以下の構造)を有する。他のポリオールコアまたは異なるリンカー(例えば、スクシナート(SS)またはスクシンアミド(SSA))を使用するモノマーは、類似した方法で構築される。
【0053】
【化2】
【0054】
求電子基を含む適切な第2化合物は、限定されないが、ペンタエリスリトール ポリエチレングリコールマレイミド(4ARM−PEG−MAL)(約5,000乃至約40,000から選択された分子量、例えば、10,000または20,000)、およびペンタエリスリトール ポリエチレングリコール スクシンイミジルスクシナート(4ARM−PEG−SS)(約5,000乃至約40,000から選択された分子量、例えば、10,000または20,000)、ペンタエリスリトール ポリエチレングリコール スクシンイミジルグルタラート(4ARM−PEG−SG)(約5,000乃至約40,000から選択された分子量、例えば、10,000または20,000)、ペンタエリスリトール ポリエチレングリコール スクシンイミジルグルタルアミド(4ARM−PEG−SGA)(約5,000乃至約40,000から選択された分子量、例えば、10,000または20,000)、ヘキサグリセリン ポリエチレングリコール スクシンイミジルスクシナート(8ARM−PEG−SS)(約5,000乃至約40,000から選択された分子量、例えば、10,000または20,000)、ヘキサグリセリン ポリエチレングリコール スクシンイミジルグルタラート(8ARM−PEG−SG)(約5,000乃至約40,000から選択された分子量、例えば、10,000、15,000、20,000、または40,000)、ヘキサグリセリン ポリエチレングリコール スクシンイミジルグルタルアミド(8ARM−PEG−SGA)(約5,000乃至約40,000から選択された分子量、例えば、10,000、15,000、20,000、または40,000)、トリペンタエリスリトール ポリエチレングリコール スクシンイミジルスクシナート(8ARM(TP)−PEG−SS)(約5,000乃至約40,000から選択された分子量、例えば、10,000または20,000)、トリペンタエリスリトール ポリエチレングリコール スクシンイミジルグルタラート(8ARM(TP−PEG−SG)(約5,000乃至約40,000から選択された分子量、例えば、10,000、15,000、20,000、または40,000)、またはトリペンタエリスリトール ポリエチレングリコール スクシンイミジルグルタルアミド(8ARM(TP)−PEG−SGA)(約5,000乃至約40,000から選択された分子量、例えば、10,000、15,000、20,000、または40,000)を含む。4(または8)ARM−PEG−SGモノマーは、エステル基を含み、一方で、4(または8)ARM−PEG−SGAモノマーは、エステル基を含まない。
【0055】
求電子基を含む他の適切な第2化合物は、限定されないが、ソルビトール ポリグリシジルエーテル(DENACOL(登録商標)EX−611)、ソルビトール ポリグリシジルエーテル(DENACOL(登録商標)EX−612)、ソルビトール ポリグリシジルエーテル(DENACOL(登録商標)EX−614)、ソルビトール ポリグリシジルエーテル(DENACOL(登録商標)EX−614B)、ポリグリセロール ポリグリシジルエーテル(DENACOL(登録商標)EX−512)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(DENACOL(登録商標)EX−521)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(DENACOL(登録商標)EX−421)、グリセロールポリグリシジルエーテル(DENACOL(登録商標)EX−313)、グリセロールポリグリシジルエーテル(DENACOL(登録商標)EX−313)、トリメチロールプロパン ポリグリシジルエーテル(DENACOL(登録商標)EX−321)、ソルビトール ポリグリシジルエーテル(DENACOL(登録商標)EJ−190)を含む、ソルビトール ポリグリシジルエーテルである。
【0056】
粘度増強剤
インビボでゲル化する眼科用前製剤、生体適合性の網膜用のパッチ、およびインビボで重合された生体適合性の網膜用のパッチは、粘度増強剤を含む。幾つかの例では、粘度増強剤は、前製剤の粘度を増加させることで、前製剤が拡散することを防ぎ、前製剤が標的部位にとどまることを可能にする。粘度増強剤は、限定されないが、アカシア、寒天、アルギン酸、ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、セラトニア、セトステアリルアルコール、キトサン、コロイド状二酸化ケイ素、シクロメチコン、エチルセルロース、ゼラチン、グリセリン、ベヘン酸グリセリル、グアーガム、ヘクトライト、水素化した植物油型I、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ハイプロメロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マルトデキストリン、メチルセルロース、ポリデキストロース、ポリエチレングリコール、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)、ポリ酢酸ビニルフタレート、ポリビニルアルコール、塩化カリウム、ポビドン、アルギン酸プロピレングリコール、サポナイト、アルギン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ステアリルアルコール、スクロース、スルホブチルエーテル(sulfobutylether)(3−シクロデキストリン)、トラガント、キサンタンガム、並びにそれらの誘導体および混合物、を含む。特定の実施形態では、粘度増強剤は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、またはポリビニルピロリドンから選択される。幾つかの実施形態では、粘度増強剤は、メチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。好ましい実施形態では、粘度増強剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0057】
幾つかの実施形態では、粘度増強剤は、生体接着性であるか、または生体接着性のポリマーである。特定の例では、生体接着剤は、生体組織及び/又は生体液と相互作用する任意の接着剤である。生体接着性のポリマーは、限定されないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸ナトリウム、キトサン、アルギナート、キサンタンガム、アクリルポリマー(例えば、カルボマー、ポリカルボフィル)、並びにその誘導体および混合物を含む。
【0058】
幾つかの実施形態では、緩衝液中の粘度増強剤の濃度は、0.1乃至20%の範囲にある。特定の実施形態では、緩衝液中の粘度増強剤の濃度は、5乃至20%の範囲にある。他の実施形態では、緩衝液中の粘度増強剤の濃度は、0.1乃至2%の範囲にある。具体的な実施形態では、緩衝液中の粘度増強剤の濃度は、0.1乃至0.5%の範囲にある。幾つかの実施形態では、粘度増強剤の濃度は、20%未満、15%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1.8%未満、1.6%未満、1.5%未満、1.4%未満、1.2%未満、1%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、または0.1%未満である。幾つかの実施形態では、粘度増強剤の濃度は、少なくとも10%、少なくとも8%、少なくとも6%、少なくとも5%、少なくとも4%、少なくとも2%、少なくとも1.8%、少なくとも1.6%、少なくとも1.5%、少なくとも1.4%、少なくとも1.2%、少なくとも1%、少なくとも0.9%、少なくとも0.8%、少なくとも0.7%、少なくとも0.6%、少なくとも0.5%、少なくとも0.4%、少なくとも0.3%、少なくとも0.2%、または少なくとも0.1%である。幾つかの実施形態では、粘度増強剤の濃度は、約20%、約15%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、約1.8%、約1.6%、約1.5%、約1.4%、約1.2%、約1%、約0.9%、約0.8%、約0.7%、約0.6%、約0.5%、約0.4%、約0.3%、約0.2%、または約0.1%である。
【0059】
特定の実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤の粘度は、4,000cP未満、2,000cP未満、1,000cP未満、800cP未満、600cP未満、500cP未満、400cP未満、200cP未満、100cP未満、80cP未満、60cP未満、50cP未満、40cP未満、20cP未満、10cP未満、8cP未満、6cP未満、5cP未満、4cP未満、3cP未満、2cP未満、1cP未満である。幾つかの実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤の粘度は、少なくとも4,000cP、少なくとも2,000cP、少なくとも1,000cP、少なくとも800cP、少なくとも600cP、少なくとも500cP、少なくとも400cP、少なくとも200cP、少なくとも100cP、少なくとも80cP、少なくとも60cP、少なくとも50cP、少なくとも40cP、少なくとも20cP、少なくとも10cP、少なくとも8cP、少なくとも6cP、少なくとも5cP、少なくとも4cP、少なくとも3cP、少なくとも2cP、少なくとも1cPである。特定の実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤の粘度は、約4000cP、約2,000cP、約1,000cP、約800cP、約600cP、約500cP、約400cP、約200cP、約100cP、約80cP、約60cP、約50cP、約40cP、約20cP、約10cP、約8cP、約6cP、約5cP、約4cP、約3cP、約2cP、約1cPである。幾つかの実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤の粘度は、約5cPと50cPの間である。特定の実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤の粘度は、約5cPと500cPの間である。
【0060】
ヒドロゲルの形成
特定の実施形態では、1つを超える求核基または1つを超える求電子基を含む、第1化合物および第2化合物は、哺乳動物の身体内、例として眼内、例えば、網膜裂孔の部位で安全に重合される。特定の実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤は、部分的に又は完全に、眼内での硝子体と取って代わる。幾つかの実施形態では、第1化合物および第2化合物は、第1化合物中の求核基の第2化合物中の求電子基との反応を介してポリマーを形成するモノマーである。特定の実施形態では、モノマーは、予め決められた時間に重合される。幾つかの実施形態では、モノマーは、軽度および略中性のpH条件下で重合される。特定の実施形態では、ヒドロゲルポリマーは、硬化後に容量を変化させない。
【0061】
幾つかの実施形態では、第1化合物および第2化合物は、反応し、アミド、チオエステル、またはチオエーテルの結合を形成する。チオール求核試薬が、スクシンイミジル求電子と反応するときに、チオエステルは形成される。アミノ求核試薬が、スクシンイミジル求電子と反応するときに、アミドは形成される。
【0062】
幾つかの実施形態では、アミノ基を含む1つ以上の第1化合物は、スクシンイミジルエステル基を含む1つ以上の第2化合物と反応し、アミド結合した第1モノマー単位および第2モノマー単位を形成する。特定の実施形態では、チオール基を含む1つ以上の第1化合物は、スクシンイミジルエステル基を含む1つ以上の第2化合物と反応し、チオエステル結合した第1モノマー単位および第2モノマー単位を形成する。幾つかの実施形態では、アミノ基を含む1つ以上の第1化合物は、エポキシ基を含む1つ以上の第2化合物と反応し、アミン結合した第1モノマー単位および第2モノマー単位を形成する。特定の実施形態では、チオール基を含む1つ以上の第1化合物は、エポキシ基を含む1つ以上の第2化合物と反応し、チオエーテル結合した第1モノマー単位および第2モノマー単位を形成する。
【0063】
幾つかの実施形態では、第1化合物は、1つ以上の第2化合物に加える前に、異なる第1化合物と混合される。他の実施形態では、第2化合物は、1つ以上の第1化合物に加える前に、異なる第2化合物と混合される。特定の実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤および生体適合性のヒドロゲルポリマーの特性は、少なくとも1つの第1モノマーおよび少なくとも1つの第2モノマーの混合物の特性によって制御される。
【0064】
幾つかの実施形態では、1つの第1化合物が、生体適合性のヒドロゲルポリマー中で使用される。特定の実施形態では、2つの異なる第1化合物が、生体適合性のヒドロゲルポリマー中で混合且つ使用される。幾つかの実施形態では、3つの異なる第1化合物が、生体適合性のヒドロゲルポリマー中で混合且つ使用される。特定の実施形態では、4つ以上の異なる第1化合物が、生体適合性のヒドロゲルポリマー中で混合且つ使用される。
【0065】
幾つかの実施形態では、1つの第2化合物が、生体適合性のヒドロゲルポリマー中で使用される。特定の実施形態では、2つの異なる第2化合物が、生体適合性のヒドロゲルポリマー中で混合且つ使用される。幾つかの実施形態では、3つの異なる第2化合物が、生体適合性のヒドロゲルポリマー中で混合且つ使用される。特定の実施形態では、4つ以上の異なる第2化合物が、生体適合性のヒドロゲルポリマー中で混合且つ使用される。
【0066】
幾つかの実施形態では、求核基へのエーテル結合を含む第1化合物は、求核基へのエステル結合を含む異なる第1化合物と混合される。これによって、結果として生じる生体適合性のヒドロゲルポリマー中のエステル基の濃度の制御が可能となる。特定の実施形態では、求電子基へのエステル結合を含む第2化合物は、求電子基へのエーテル結合を含む異なる第2化合物と混合される。幾つかの実施形態では、求電子基へのエステル結合を含む第2化合物は、求電子基へのアミド結合を含む異なる第2化合物と混合される。特定の実施形態では、求電子基へのアミド結合を含む第2化合物は、求電子基へのエーテル結合を含む異なる第2化合物と混合される。
【0067】
幾つかの実施形態では、アミノ酢酸求核試薬を含む第1化合物は、指定されたモル比(x/y)でエチルアミンエーテル求核試薬を含む異なる第1化合物と混合される。特定の実施形態では、モル比(x/y)は、5/95、10/90、15/85、20/80、25/75、30/70、35/65、40/60、45/55、50/50、55/45、60/40、65/35、70/30、75/25、80/20、85/15、90/10、または95/5である。特定の実施形態では、2つの第1化合物の混合物は、xおよびyの合計と等しいモル量で、1つ以上の第2化合物と混合される。幾つかの実施形態では、2つの第1化合物の組み合わさったモル量の、第2化合物のモル量に対する比率は、同等ではない。
【0068】
幾つかの実施形態では、第1化合物の組み合わさったモル量の、第2化合物の組み合わさったモル量に対するモル比は、1より多い。特定の実施形態では、第1化合物の組み合わさったモル量の、第2化合物の組み合わさったモル量に対するモル比は、1未満である。幾つかの実施形態では、第1化合物の組み合わさったモル量の、第2化合物の組み合わさったモル量に対するモル比は、約1である。特定の実施形態では、第1化合物の組み合わさったモル量の、第2化合物の組み合わさったモル量に対するモル比は、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、または約1:1である。幾つかの実施形態では、第1化合物の組み合わさったモル量の、第2化合物の組み合わさったモル量に対するモル比は、約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、または約1:1である。
特定の実施形態では、第1化合物(例えば、アミン)の組み合わさったモル量の、第2化合物(例えば、エステル)の組み合わさったモル量に対するモル比が、1より高いと、結果として生じる網膜用のパッチの粘着性が増加される。
【0069】
幾つかの実施形態では、1つを超える求核基を含む第1化合物および治療薬剤は、水性緩衝液中で予め混合される。一旦予めの混合が完了すると、1つを超える求電子基を含む第2化合物は、予めの混合物に加えられる。最終的な混合の直後に、ヒドロゲルポリマーは、標的部位に送達される。特定の実施形態では、随意の放射線不透性物質は、予めの混合物に、第2化合物に、あるいはヒドロゲルポリマー混合物の標的部位への送達の直前に混合物に加えられる。
【0070】
他の実施形態では、1つを超える求電子基を含む第2化合物および治療薬剤は、水性緩衝液中で予め混合される。一旦予めの混合が完了すると、1つを超える求核基を含む第1化合物は、予めの混合物に加えられる。最終的な混合の直後に、ヒドロゲルポリマーは、標的部位に送達される。特定の実施形態では、随意の放射線不透性物質は、予めの混合物に、第1化合物に、あるいはヒドロゲルポリマー混合物の標的部位への送達の直前に混合物に加えられる。
【0071】
幾つかの実施形態では、1つを超える求核基を含む第1化合物および1つを超える求電子基を含む第2化合物は、約5.0乃至約9.5のpH範囲で水性緩衝液中で一緒に混合され、それによって、生体適合性のヒドロゲルポリマーが形成される。特定の実施形態では、1つを超える求核基を含む第1化合物及び/又は1つを超える求電子基を含む第2化合物は、約5.0乃至約9.5のpH範囲で水性緩衝液中に個別に希釈され、ここで、個別の希釈または純粋な(neat)モノマーは、混合され、それによって、生体適合性のヒドロゲルポリマーが形成される。幾つかの実施形態では、水性緩衝液は、約6.0乃至約8.5のpH範囲にある。特定の実施形態では、水性緩衝液は、約8のpH範囲にある。
【0072】
特定の実施形態では、水性緩衝液中のモノマーの濃度は、約1%乃至約100%である。幾つかの実施形態では、希釈は、モノマー希釈の粘度を調整するために使用される。特定の実施形態では、水性緩衝液中のモノマーの濃度は、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%である。
【0073】
幾つかの実施形態では、求電子モノマーおよび求核モノマーは、混合物中にある求電子基のわずかな超過があるような比率で混合される。特定の実施形態では、この過剰は、約10%、約5%、約2%、約1%、約0.9%、約0.8%、約0.7%、約0.6%、約0.5%、約0.4%、約0.3%、約0.2%、約0.1%または0.1%未満である。
【0074】
特定の実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーのゲル化時間または硬化時間は、第1化合物および第2化合物の選択によって制御される。幾つかの実施形態では、第1化合物または第2化合物中の求核基または求電子基の濃度は、インビボでゲル化する眼科用前製剤のゲル化時間に影響を及ぼす。特定の実施形態では、温度は、インビボでゲル化する眼科用前製剤のゲル化時間に影響を及ぼす。幾つかの実施形態では、水性緩衝液のタイプは、インビボでゲル化する眼科用前製剤のゲル化時間に影響を及ぼす。特定の実施形態では、水性緩衝液の濃度は、インビボでゲル化する眼科用前製剤のゲル化時間に影響を及ぼす。幾つかの実施形態では、モノマーの求核基および求電子基の求核性及び/又は求電子性は、インビボでゲル化する眼科用前製剤のゲル化時間に影響を及ぼす。
【0075】
幾つかの実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーのゲル化時間または硬化時間は、水性緩衝液のpHによって制御される。特定の実施形態では、ゲル化時間は、pHの増加とともに減少する。幾つかの実施形態では、ゲル化時間は、緩衝液濃度の増加とともに減少する。特定の実施形態では、ゲル化時間は、温度の上昇とともに減少する。幾つかの実施形態では、ゲル化時間は、溶液(モノマー)濃度の増加とともに減少する。
【0076】
特定の実施形態では、ゲル化時間は、約20秒から10分の間である。幾つかの実施形態では、ゲル化時間は、30分未満、20分未満、10分未満、5分未満、4.8分未満、4.6分未満、4.4分未満、4.2分未満、4.0分未満、3.8分未満、3.6分未満、3.4分未満、3.2分未満、3.0分未満、2.8分未満、2.6分未満、2.4分未満、2.2分未満、2.0分未満、1.8分未満、1.6分未満、1.4分未満、1.2分未満、1.0分未満、0.8分未満、0.6分未満、または0.4分未満である。特定の実施形態では、水性緩衝液のpHは、約5乃至約9.5である。幾つかの実施形態では、水性緩衝液のpHは、約7.0乃至約9.5である。特定の実施形態では、水性緩衝液のpHは、約8である。幾つかの実施形態では、水性緩衝液のpHは、約5、約5.5、約6.0、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.8、約7.9、約8.0、約8.1、約8.2、約8.3、約8.4、約8.5、約9.0、または約9.5である。
【0077】
特定の実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーのゲル化時間または硬化時間は、水性緩衝液のタイプによって制御される。幾つかの実施形態では、水性緩衝液は、生理学的に許容可能な緩衝液である。特定の実施形態では、水性緩衝液は、限定されないが、水性生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、ホウ酸塩緩衝食塩水、ホウ硼酸緩衝液およびリン酸緩衝液の組み合わせ(各成分は個別の緩衝液中に溶解される)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジンN’−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(HEPES)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、2−([2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]アミノ)エタンスルホン酸(TES)、3−[N−トリス(ヒドロキシ−メチル)エチルアミノ]−2−ヒドロキシエチル]−1−ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、トリス[ヒドロキシメチル]−アミノメタン(THAM)、およびトリス[ヒドロキシメチル]メチル アミノメタン(TRIS)、を含む。幾つかの実施形態では、チオール−エステルの化学作用(例えば、SGAまたはSGの求電子とのETTMP求核試薬)は、ホウ酸塩緩衝液中で行われる。特定の実施形態では、アミン−エステルの化学作用(SGAまたはSGの求電子とのNH2またはAAの求核試薬)は、リン酸緩衝液中で行われる。
【0078】
幾つかの実施形態では、網膜用のパッチの粘着度は、約40mNである。特定の実施形態において、網膜用のパッチの粘着度は、約20mNから約100mNの間である。幾つかの実施形態では、網膜用のパッチの粘着度は、約30mNから約50mNの間である。特定の実施形態において、網膜用のパッチの硬度は、約30gから約100gの間である。幾つかの実施形態では、網膜用のパッチの硬度は、約45gから約90gの間である。特定の実施形態では、網膜用のパッチの弾性率は、約50Paから約500Paの間である。幾つかの実施形態では、網膜用のパッチの弾性率は、約100Paから約400Paの間である。
【0079】
特定の実施形態では、第1化合物および第2化合物は、生体適合性のヒドロゲルポリマーの形成中に治療薬剤と反応しない。幾つかの実施形態では、治療薬剤は、第1化合物および第2化合物(すなわち、モノマー)の重合後も変わらない。特定の実施形態では、治療薬剤は、ヒドロゲルポリマーの特性を変化させない。幾つかの実施形態では、治療薬剤およびヒドロゲルポリマー製剤の生理化学的特性は、モノマーの重合によって影響を受けない。
【0080】
処置の領域−標的部位
特定の実施形態では、標的部位は、哺乳動物内にある。幾つかの実施形態では、標的部位は、ヒト内にある。特定の実施形態では、標的部位は、ヒトの身体上にある。幾つかの実施形態では、標的部位は、手術によってアクセス可能である。特定の実施形態では、標的部位は、低侵襲手術によってアクセス可能である。幾つかの実施形態では、標的部位は、内視鏡装置よってアクセス可能である。特定の実施形態では、標的部位は、眼内に、または眼の上にある。幾つかの実施形態では、網膜裂孔、網膜円孔、または網膜剥離を処置する方法は、局所麻酔下の、孔、裂目、または剥離の部位に、インビボでゲル化する眼科用前製剤を送達する工程を含む。特定の実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤は、鋭い24乃至28ゲージの注射針を介して送達される。
【0081】
幾つかの実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤または生体適合性のヒドロゲルポリマーは、治療薬剤とともに、またはそれなしで、密封材または接着剤として使用される。特定の実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤または生体適合性のヒドロゲルポリマーは、ヒトの眼内の網膜裂孔を密封するために使用される。他の実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤または生体適合性のヒドロゲルポリマーは、ヒトの身体における腔、例えば、硝子体液の部分的または完全な置換としての眼を充填するために使用される。
【0082】
標的部位へのヒドロゲル製剤の送達
幾つかの実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤は、標的部位で生体適合性のヒドロゲルポリマーを形成するために、カテーテルまたは針を介する標的部位へのインビボでゲル化する眼科用前製剤として送達される。特定の実施形態では、針またはカテーテルは、送達装置に付けられるか、またはその一部分である。
【0083】
他の実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤は、シリンジおよび針を使用して、眼内の標的部位に送達される。幾つかの実施形態では、送達装置は、インビボでゲル化する眼科用前製剤を標的部位に送達するために使用される。幾つかの実施形態では、針は、約4mm、約3.8mm、約3.6mm、約3.4mm、約3.2mm、約3.0mm、約2.8mm、約2.6mm、約2.4mm、約2.2mm、約2.0mm、約1.8mm、約1.6mm、約1.4mm、約1.2mm、約1.0mm、約0.8mm、または約0.6mmの外径を有している。好ましい実施形態では、針は約1.2mm以下の外径を有している。特定の実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤の粘度は、混合物をカテーテルを介して腫瘍の部位に送達するとき、水の粘度に接近する。幾つかの実施形態では、生体適合性のヒドロゲルを形成するインビボでゲル化する眼科用前製剤は、前製剤がゲル化プロセスの間に標的部位に適所にとどまることを保証するために、薬学的に許容可能な粘度増強剤をさらに含む。
【0084】
特定の実施形態では、随意に治療薬剤を含む、1mLから3mLの間のインビボでゲル化する眼科用前製剤は、標的部位に送達される。幾つかの実施形態では、随意に治療薬剤を含む、約12mL、約11mL、約10mL、約9mL、約8mL、約7.5mL、約7.0mL、約6.5mL、約6.0mL、約5.5mL、約5.0mL、約4.5mL、約4.0mL、約3.5mL、約3.0mL、約2.5mL、約2.0mL、約1.5mL、約1.0mL、約0.5mL、約0.2mL、約0.1mL、約0.05mL、または約0.01mLのインビボでゲル化する眼科用前製剤は、標的部位に送達される。特定の実施形態では、随意に治療薬剤を含む、約12mL未満、約11mL未満、約10mL未満、約9mL未満、約8mL未満、約7.5mL未満、約7.0mL未満、約6.5mL未満、約6.0mL未満、約5.5mL未満、約5.0mL未満、約4.5mL未満、約4.0mL未満、約3.5mL未満、約3.0mL未満、約2.5mL未満、約2.0mL未満、約1.5mL未満、約1.0mL未満、約0.5mL未満、0.2mL未満、0.1mL未満、0.05mL未満、または0.01mL未満のインビボでゲル化する眼科用前製剤は、標的部位に送達される。特定の実施形態では、随意に治療薬剤を含む、約0.05乃至5mLのインビボでゲル化する眼科用前製剤は、標的部位に送達される。
【0085】
幾つかの実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーのゲル化時間は、ヒドロゲルポリマー混合物を標的部位に送達する医者の優先度に従って設定される。ほとんどの例では、医師は、15秒から30秒以内に、ヒドロゲルポリマー混合物を標的に送達する。幾つかの実施形態では、ヒドロゲルポリマー混合物は、標的部位での送達後にゲル化し、標的部位を覆う。
【0086】
幾つかの実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーのゲル化時間または硬化時間は、水性緩衝液のpHによって制御される。特定の実施形態では、ゲル化時間は、約20秒から10分の間である。好ましい実施形態では、ゲル化時間は、約90秒である。幾つかの実施形態では、ゲル化時間は、120分未満、90分未満、60分未満、50分未満、40分未満、30分未満、20分未満、10分未満、9分未満、8分未満、7分未満、6分未満、5分未満、4.8分未満、4.6分未満、4.4分未満、4.2分未満、4.0分未満、3.8分未満、3.6分未満、3.4分未満、3.2分未満、3.0分未満、2.8分未満、2.6分未満、2.4分未満、2.2分未満、2.0分未満、1.8分未満、1.6分未満、1.5分未満、1.4分未満、1.2分未満、1.0分未満、0.8分未満、0.6分未満、または0.4分未満である。特定の実施形態では、ゲル化時間は、120分を超える時間、90分を超える時間、60分を超える時間、50分を超える時間、40分を超える時間、30分を超える時間、20分を超える時間、10分を超える時間、9分を超える時間、8分を超える時間、7分を超える時間、6分を超える時間、5分を超える時間、4.8分を超える時間、4.6分を超える時間、4.4分を超える時間、4.2分を超える時間、4.0分を超える時間、3.8分を超える時間、3.6分を超える時間、3.4分を超える時間、3.2分を超える時間、3.0分を超える時間、2.8分を超える時間、2.6分を超える時間、2.4分を超える時間、2.2分を超える時間、2.0分を超える時間、1.8分を超える時間、1.6分を超える時間、1.5分を超える時間、1.4分を超える時間、1.2分を超える時間、1.0分を超える時間、0.8分を超える時間、0.6分を超える時間、または0.4分を超える時間である。幾つかの実施形態では、ゲル化時間は、約120分、約90分、約60分、約50分、約40分、約30分、約20分、約10分、約9分、約8分、約7分、約6分、約5分、約4.8分、約4.6分、約4.4分、約4.2分、約4.0分、約3.8分、約3.6分、約3.4分、約3.2分、約3.0分、約2.8分、約2.6分、約2.4分、約2.2分、約2.0分、約1.8分、約1.6分、約1.5分、約1.4分、約1.2分、約1.0分、約0.8分、約0.6分、または約0.4分である。特定の実施形態では、水性緩衝液のpHは、約5.0乃至約9.5である。幾つかの実施形態では、水性緩衝液のpHは、約6.0乃至約8.5である。幾つかの実施形態において、水性緩衝液のpHは、約8.0である。幾つかの実施形態では、pHは、約5、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9、約8、約8.1、約8.2、約8.3、約8.4、約8.5、約8.6、約8.7、約8.9、約9、約9.1、約9.2、約9.3、約9.4、または約9.5である。
【0087】
特定の実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーのゲル化時間または硬化時間は、第1化合物および第2化合物の選択によって制御される。幾つかの実施形態では、第1化合物または第2化合物中の求核基または求電子基の濃度は、インビボでゲル化する眼科用前製剤のゲル化時間に影響を及ぼす。
【0088】
幾つかの実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーの硬化は、投与後に確認される。特定の実施形態では、確認は、インビボの送達部位で行われる。他の実施形態では、確認は、エキソビボで行われる。幾つかの実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーの硬化は、視覚的に確認される。生体適合性のヒドロゲルポリマーの流れの欠如は、生体適合性のヒドロゲルポリマーがゲル化され、ヒドロゲルが十分に硬化されていることを示している。さらなる実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーの硬化は、送達装置中の残留物、例えば、気管支鏡装置または他の内視鏡装置のカテーテル中の残留物、または生体適合性のヒドロゲルポリマーを送達するために使用されるシリンジ中の残留物の評価によって確認される。他の実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーの硬化は、1枚の紙上に、または小さな容器に小さなサンプル(例えば、〜1mL)を堆積させ、続いて、ゲル化時間が過ぎた後に流れ特性を評価することによって確認される。
【0089】
幾つかの実施形態では、随意に1以上の治療薬剤を含む、インビボでゲル化する眼科用前製剤は、それが主として標的部位を覆うように、標的部位に送達される。特定の実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤は、病変組織の露出した部分を実質的に覆う。幾つかの実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤は、他の位置に故意には広がらない。幾つかの実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤は、病変組織を実質的に覆い、健康な組織を著しく覆うことはない。特定の実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、健康な組織を著しく覆うことはない。幾つかの実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤は、標的部位上でゲル化し、病変組織を完全に覆う。幾つかの実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、組織に付着する。
【0090】
ヒドロゲルの生体吸収
幾つかの実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、生体吸収性のポリマーである。特定の実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、約5日から30日以内に生体吸収される。幾つかの実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、約30日から180日以内に生体吸収される。好ましい実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、約1日から70日以内に生体吸収される。幾つかの実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、約365日、180日、約150日、約120日、約90日、約80日、約70日、約60日、約50日、約40日、約35日、約30日、約28日、約21日、約14日、約10日、約7日、約6日、約5日、約4日、約3日、約2日、または約1日以内に生体吸収される。特定の実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、365日未満、180日、150日未満、120日未満、90日未満、80日未満、70日未満、60日未満、50日未満、40日未満、35日未満、30日未満、28日未満、21日未満、14日未満、10日未満、7日未満、6日未満、5日未満、4日未満、3日未満、2日未満、または1日未満で生体吸収される。幾つかの実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、365日以上、180日、150日以上、120日以上、90日以上、80日以上、70日以上、60日以上、50日以上、40日以上、35日以上、30日以上、28日以上、21日以上、14日以上、10日以上、7日以上、6日以上、5日以上、4日以上、3日以上、2日以上、または1日以上で生体吸収される。幾つかの実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、実質的に非生体吸収性である。
【0091】
生体適合性のヒドロゲルポリマーは、ゆっくりと、生体吸収され、溶解され、及び/又は分泌される。幾つかの例では、生体吸収の速度は、生体適合性及び/又は生分解性のヒドロゲルポリマー中のエステル基の数によって制御される。他の例では、エステル単位の濃度が生体適合性のヒドロゲルポリマー中で高ければ高いほど、身体内の寿命はより長くなる。さらなる例では、エステル単位のカルボニルでの電子密度は、身体内のヒドロゲルポリマーの寿命を制御する。特定の例では、エステル基のない生体適合性のヒドロゲルポリマーは、本質的に生分解性ではない。追加の例では、第1化合物および第2化合物の分子量は、身体内のヒドロゲルポリマーの寿命を制御する。さらなる例では、ポリマーのグラム当たりのエステル基の数は、身体内のヒドロゲルポリマーの寿命を制御する。
【0092】
幾つかの例では、ヒドロゲルポリマーの寿命は、ヒドロゲルポリマーを緩衝液に晒しながら、生理学的レベルに温度およびpHを制御するモデルを使用して、推定され得る。特定の例では、ヒドロゲルポリマーの生分解は、実質的に非酵素的分解である。
【0093】
幾つかの実施形態では、反応条件の選択は、ヒドロゲルポリマーの分解時間を決定する。特定の実施形態では、第1化合物および第2化合物のモノマーの濃度は、結果として生じるヒドロゲルポリマーの分解時間を決定する。幾つかの例では、より高いモノマー濃度は、結果として生じるヒドロゲルポリマー中のより高い架橋度につながる。特定の例では、より多くの架橋は、ヒドロゲルポリマーの遅い分解につながる。
【0094】
特定の実施形態では、第1化合物及び/又は第2化合物中のリンカーの組成物は、結果として生じるヒドロゲルポリマーの分解の速度に影響を及ぼす。幾つかの実施形態では、エステル基がヒドロゲルポリマー中に多くあればあるほど、ヒドロゲルポリマーの分解は速くなる。特定の実施形態では、メルカプトプロピオン酸(ETTMP)、酢酸アミン(AA)、グルタル酸塩またはスクシナート(SGまたはSS)のモノマーの濃度が高ければ高いほど、分解の速度は速くなる。
【0095】
網膜疾患の処置における網膜用のパッチまたは縫合
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されるインビボでゲル化する眼科用前製剤は、網膜剥離を処置するために、眼の標的部位に送達される。特定の実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤は、盲目を処置するために、眼の標的部位に送達される。幾つかの実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤は、眼内の標的部位で生体適合性の網膜用のパッチを形成する。特定の実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤は、眼内の標的部位で網膜用の接着(retinal glue)として作用する。幾つかの実施形態では、インビボでゲル化する眼科用前製剤は、網膜用の縫合(retinal sutire)を形成する。特定の実施形態では、少なくとも目の内部の標的部位の部品の網膜用のパッチ、網膜の接着剤または網膜の縫合線ゲル剤。幾つかの実施形態では、網膜用のパッチ、網膜用の接着、または網膜用の縫合は、少なくとも部分的に眼内の網膜裂孔でゲル化する。特定の実施形態では、網膜用のパッチ、網膜用の接着、または網膜用の縫合は、少なくとも部分的に眼内の標的部位で重合する。幾つかの実施形態では、網膜用のパッチ、網膜用の接着、または網膜用の縫合は、少なくとも部分的に眼内の網膜裂孔で重合する。幾つかの実施形態では、網膜用のパッチ、網膜用の接着、または網膜用の縫合は、少なくとも部分的に標的部位に付着する。
【0096】
特定の実施形態では、インビボでゲル化するヒドロゲルポリマーは、「液体縫合(liquid suture)」または直接眼内の標的部位に薬剤を輸送するための薬物送達プラットフォームとして使用される。幾つかの実施形態では、ヒドロゲル製剤の、展延性、粘度、光学的透明度、および接着性は、網膜剥離の処置のための液体縫合(剥離した網膜の再結合)として理想的な物質を作り出すために最適化される。特定の実施形態では、ゲル化時間は、50秒から15分までの間で制御される。
【0097】
治療薬剤の放出速度の制御
幾つかの実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、経時的に数時間から数日の範囲にわたって、拡散及び/又は浸透によって治療薬剤を標的部位にゆっくり送達する。特定の実施形態では、薬物は、直接標的部位に送達される。幾つかの実施形態では、必要に応じて、治療薬剤を含む生体適合性のヒドロゲルポリマーを標的部位に送達する手順は、数回繰り返される。他の実施形態では、治療薬剤は、ヒドロゲルポリマーの生分解を介して、生体適合性のヒドロゲルポリマーから放出される。幾つかの実施形態では、治療薬剤は、拡散、浸透、及び/又はヒドロゲル分解の機構の組み合わせによって放出される。特定の実施形態では、ヒドロゲルポリマーからの治療薬剤の放出特性は、単峰性である。幾つかの実施形態では、ヒドロゲルポリマーからの治療薬剤の放出特性は、二峰性である。特定の実施形態では、ヒドロゲルポリマーからの治療薬剤の放出特性は、多峰性である。
【0098】
幾つかの実施形態では、治療薬剤は、拡散または浸透を介して生体適合性のヒドロゲルポリマーから放出される。特定の実施形態では、治療薬剤は、180日以内に生体適合性のヒドロゲルポリマーから実質的に放出される。幾つかの実施形態では、治療薬剤は、14日以内に生体適合性のヒドロゲルポリマーから実質的に放出される。特定の実施形態では、治療薬剤は、24時間以内に生体適合性のヒドロゲルポリマーから実質的に放出される。幾つかの実施形態では、治療薬剤は、1時間以内に生体適合性のヒドロゲルポリマーから実質的に放出される。特定の実施形態では、治療薬剤は、約180日、約150日、約120日、約90日、約80日、約70日、約60日、約50日、約40日、約35日、約30日、約28日、約21日、約14日、約10日、約7日、約6日、約5日、約4日、約3日、約2日、約1日、約0.5日、約6時間、約4時間、約2時間、または約1時間以内に生体適合性のヒドロゲルポリマーから実質的に放出される。幾つかの実施形態では、治療薬剤は、180日を超える期間、150日を超える期間、120日を超える期間、90日を超える期間、80日を超える期間、70日を超える期間、60日を超える期間、50日を超える期間、40日を超える期間、35日を超える期間、30日を超える期間、28日を超える期間、21日を超える期間、14日を超える期間、10日を超える期間、7日を超える期間、6日を超える期間、5日を超える期間、4日を超える期間、3日を超える期間、2日を超える期間、1日を超える期間、0.5日を超える期間、6時間を超える期間、4時間を超える期間、2時間を超える期間、または1時間を超える期間、生体適合性のヒドロゲルポリマーから実質的に放出される。特定の実施形態では、治療薬剤は、180日未満、150日未満、120日未満、90日未満、80日未満、70日未満、60日未満、50日未満、40日未満、35日未満、30日未満、28日未満、21日未満、14日未満、10日未満、7日未満、6日未満、5日未満、4日未満、3日未満、2日未満、1日未満、0.5日未満、6時間未満、4時間未満、2時間未満、または1時間未満で生体適合性のヒドロゲルポリマーから実質的に放出される。幾つかの実施形態では、治療薬剤は、約1日から約14日以内に生体適合性のヒドロゲルポリマーから実質的に放出される。特定の実施形態では、治療薬剤は、約1日から約70日以内に生体適合性のヒドロゲルポリマーから実質的に放出される。
【0099】
幾つかの実施形態では、治療薬剤は、生体分子であり、ヒドロゲルポリマーからの生体分子の放出は、ヒドロゲルポリマーの組成物によって制御される。特定の実施形態では、生体分子は、ヒドロゲルポリマーが分解し始めるときに放出される。幾つかの実施形態では、ヒドロゲルポリマーの孔径は、生体分子の初期放出(すなわち、ヒドロゲルポリマーの分解前の放出)を予防することができるほどに十分小さい。特定の実施形態では、ヒドロゲルポリマーの孔径は、生体分子の初期放出を可能にすることができるほどに十分大きい。幾つかの実施形態では、生体分子の大きさに対するヒドロゲルポリマーの孔径の比率は、生体分子の放出速度を決定する。
【0100】
典型的な抗真菌剤
幾つかの実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、治療薬剤として抗真菌剤を含む。特定の実施形態では、抗真菌剤は、ポリエン抗真菌剤、イミダゾール、トリアゾール、またはチアゾール抗真菌剤、トリアゾール抗真菌剤、チアゾール抗真菌剤、アリルアミン誘導体、またはエキノカンジン誘導体である。抗真菌剤の例は、限定されないが、ナタマイシン、リモシジン(rimocidin)、フィリピン、ナイスタチン、アムホテリシンB、カンジシン(candicin)、ハマイシンのような、ポリエン誘導体;ミコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、オモコナゾール、ビホナゾール、ブトコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾールのような、イミダゾール誘導体;フルコナゾール、イトラコナゾール、イサブコナゾール、ポサコナゾール、ボリコナゾール、テルコナゾール、アルバコナゾールのような、テトラゾール誘導体;アバファンジン(abafungin)のような、チアゾール誘導体;テルビナフィン(terbifine)、ナフチフィン、ブテナフィンのような、アリルアミン誘導体;アニデュラファンギン、カスポファンギン、ミカファンギンのような、エキノカンジン誘導体;ポリゴジアール、安息香酸、シクロピロックス、トルナフタート(tonaftate)、ウンデシレン酸、フルシトシン、グリセオフルビン、ハロプロジン、炭酸水素ナトリウム、ピロクトンオラミン、ピリチオン亜鉛、硫化セレン、タール、またはティーツリー油のような、他の抗真菌剤、を含む。
【0101】
典型的な抗生物質
幾つかの実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、抗生物質を含む。特定の実施形態では、抗生物質は、アミノグリコシド、アンサマイシン、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン、グリコペプチド、リンコサミド、リポペプチド、マクロライド、モノバクタム、ニトロフラン、ペニシリン、ポリペプチド、キノロン、スルホンアミド、またはテトラサイクリンである。抗生物質の例は、限定されないが、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、トブラマイシン、パロモマイシンのような、アミノグリコシド誘導体;ゲルダナマイシン、ハービマイシンのような、アンサマイシン誘導体;ロラカルベフのようなカルバセフェム誘導体、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム、メロペネムのような、カルバペネム誘導体;セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン、セファレキシン、セファクロル、セファマンドール、セホキシチン、セフプロジル、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、セフトビプロールのような、セファロスポリン誘導体;テイコプラニン、バンコマイシン、テラバンシンのような、グリコペプチド誘導体;クリンダマイシン、リンコマイシンのような、リンコサミド;ダプトマイシンのような、リポペプチド誘導体;アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシンのような、マクロライド誘導体;テリスロマイシン、スペクチノマイシン;アズトレオナムのような、モノバクタム誘導体;フラゾリドン、ニトロフラントインのような、ニトロフラン誘導体;アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンG、ペニシリンV、ピペラシリン、テモシリン、チカルシリンのような、ペニシリン誘導体;アモキシシリン/クラブラン、アンピシリン/スルバクタム、ピペラシリン/タゾバクタム、チカルシリン/クラブランのような、ペニシリンの組み合わせ;バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンBのような、ポリペプチド誘導体;シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ナリジキシン酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、グレパフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシンのような、キノロン誘導体;マフェナイド、スルホンアミドクリソイジン、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファジアジン銀、スルファメトキサゾール、スルファニルイミド(sulfanilimide)、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリム、トリメトプリム/スルファメトキサゾールのような、スルホンアミド誘導体;デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリンのような、テトラサイクリン誘導体;クロファジミン、ダプソン、カプレオマイシン、シクロセリン、エタンブトール、エチオナミド(ethioamide)、イソニアジド、ピラジンアミド、リファンピン、リファンピシン、リファブチン、リファペンチン、ストレプトマイシンのような、ミコバクテリアに対する誘導体;あるいは、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、ホスホマイシン、フシジン酸、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、プラテンシマイシン、キヌプリスチン/ダルホプリスチン、リファキシミン、チアンフェニコール、チゲサイクリン、チニダゾールのような、他の抗生物質、を含む。
【0102】
典型的な抗ウイルス剤
幾つかの実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、抗ウイルス剤を含む。特定の実施形態では、抗ウイルス剤は、核酸系逆転写酵素阻害剤、非核酸系逆転写酵素阻害剤、融合阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、核酸アナログ、プロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤である。抗ウイルス剤の例は、限定されないが、アバカビル、アシクロビル(aciclovir)、アシクロビル(acyclovir)、アデフォビル、アマンタジン、アンプレナビル、アムプリゲン(ampligen)、アルビドール、アタザナビル、ボセプレビル、シドホビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ドコサノール、エドクスジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、ファムシクロビル、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、ガンシクロビル、イバシタビン、イムノビル(imunovir)、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル、イノシン、インターフェロンIII型、インターフェロンII型、インターフェロンI型、インターフェロン、ラミブジン、ロピナビル、ロビリド(loviride)、マラビロク、モロキシジン、メチサゾン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネクサバール、オセルタミビル、ペグインターフェロンアルファ−2a、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、ラルテグラビル、リバビリン、リマンタジン、リトナビル、ピリミジン、サキナビル、スタブジン、ティーツリー油、テノホビル、テノホビルジソプロキシル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バラシクロビル(Valtrex)、バルガンシクロビル、ビクリビロック、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル、ジドブジン、を含む。
【0103】
典型的な免疫抑制剤
幾つかの実施形態において、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、免疫抑制剤を含む。特定の実施形態では、免疫抑制剤は、カルシニューリン阻害剤、mTor阻害剤、抗増殖剤(例えば、アルキル化剤または代謝拮抗剤)、グルココルチコステロイド、抗体、またはイムノフィリンに作用する薬剤である。免疫抑制剤の例は、限定されないが、シクロスポリン、タクロリムスのような、カルシニューリン阻害剤;シロリムス、エベロリムスのような、mTOR阻害剤;アザチオプリン、ミコフェノール酸のような、抗増殖剤;プレドニゾロン、ヒドロコルチゾンのような、コルチコステロイド;バシリキシマブ、ダクリズマブのような、モノクローナル抗−IL−2Rα受容体抗体;抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、抗リンパ球グロブリン(ALG)のような、ポリクローナル抗T細胞抗体;リツキシマブのような、モノクローナル抗CD20抗体;ダクリズマブ、バシリキシマブ、アナキンラ、リロナセプト、ウステキヌマブ、メポリズマブ、トシリズマブ、カナキヌマブ、ブリアキヌマブのような、インターロイキン阻害剤;エタネルセプト、インフリキシマブ、アフェリモマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴール、ゴリムマブのような、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)阻害剤;ムロモナブ−CD3、抗リンパ性免疫グロブリン(ウマ)、抗胸腺細胞免疫グロブリン(ウサギ)、ミコフェノール酸、シロリムス、レフルノミド、アレファセプト、エベロリムス、グスペリムス、エファリズマブ、アベチムス、ナタリズマブ、アバタセプト、エクリズマブ、ベリムマブ、フィンゴリモド、ベラタセプトのような、選択的免疫抑制剤;またはアザチオプリン、サリドマイド、メトトレキサート、レナリドミドのような、他の免疫抑制剤、を含む。
【0104】
典型的な止血剤
幾つかの実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、止血剤(または抗出血剤)を含む。特定の実施形態では、止血剤は、抗線維素溶解薬(アミノ酸またはプロティナーゼ阻害剤)、ビタミンK、フィブリノゲン、局所性止血薬、または血液凝固因子である。止血剤の例は、限定されないが、アミノカプロン酸、トラネキサム酸、アミノメチル安息香酸のような、アミノ酸;アプロチニン、アルファ1抗トリプシン、C1阻害剤、カモスタットのような、プロテイナーゼ阻害剤;フィトメナジオン、メナジオンのような、ビタミンK;ヒトフィブリノゲンのような、フィブリノゲン;吸収ゼラチンスポンジ、酸化セルロース、テトラガラクツロン酸、ヒドロキシメチルエステル(hydroxymethylester)、アドレナロン、トロンビン、コラーゲン、アルギン酸カルシウム、エピネフリン、ヒトフィブリノゲンのような、局所性止血薬;凝固IX因子、II因子、VII因子およびX因子の組み合わせ、凝固VIII因子、第VIII因子阻害物質の迂回活性、凝固IX因子、凝固VII因子、フォンビルブラント因子および凝固VIII因子の組み合わせ、凝固XIII因子、エプタコグアルファ、ノナコグアルファ、トロンビンのような、血液凝固因子;エタンシラート、カルバゾクロム、バトロキソビン、ロミプロスチム、エルトロンボパグのような、他の全身性止血薬、を含む。
【0105】
典型的な非ステロイド性抗炎症剤
幾つかの実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、抗炎症剤を含む。特定の実施形態では、抗炎症剤は、非ステロイド性抗炎症剤である。他の実施形態では、抗炎症剤は、グルココルチコステロイドである。幾つかの実施形態では、非ステロイド性抗炎症剤は、ブチルピラゾリジン(butylpyrazolidine)、酢酸誘導体、オキシカム、プロピオン酸誘導体、フェナム酸、またはコキシブである。抗炎症剤の例は、限定されないが、フェニルブタゾン、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾン、クロフェゾン、ケブゾンのような、ブチルピラゾリジン;インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ゾメピラク、ジクロフェナク、アルクロフェナック、ブマジゾン、エトドラク、ロナゾラク、フェンチアザク、アセメタシン、ジフェンピラミド、オキサメタシン、プログルメタシン、ケトロラク、アセクロフェナク、ブフェキサマク、インドメタシンの組み合わせ、ジクロフェナクの組み合わせのような、酢酸誘導体および関連物質;ピロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、メロキシカムのような、オキシカム;イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、ベノキサプロフェン、スプロフェン、ピルプロフェン、フルルビプロフェン、インドプロフェン、チアプロフェン酸(tioprofenoic acid)、オキサプロジン、イブプロキサム、デクスイブプロフェン、フルノキサプロフェン、アルミノプロフェン、デクスケトプロフェン、ナプロキシノドのような、プロピオン酸誘導体;メフェナム酸、トルフェナム酸、フルフェナム酸、メクロフェナム酸のような、フェナム酸;セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブのような、コキシブ;ナブメトン、ニフルム酸、アザプロパゾン、グルコサミン、ベンジダミン、グルコサミノグリカンポリスルファート、プロカゾン、オルゴテイン、ニメスリド、フェプラゾン、ジアセレイン、モルニフルマート、テニダップ、オキサセプロール、コンドロイチン硫酸塩のような、他の抗炎症性および抗リウマチ性の薬剤、を含む。
【0106】
典型的な鎮痛剤および麻酔薬
幾つかの実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、鎮痛剤または麻酔薬を含む。特定の実施形態では、鎮痛剤または麻酔薬は、パラセタモール、オピエート、ジプロクアロン(diproqualone)、アンチピリン、コカイン、またはリドカインを含む。特定の実施形態では、オピオイドは、天然のケシアルカロイド、フェニルピペリジン誘導体、ジフェニルプロピルアミン誘導体、ベンゾモルファン誘導体、オリパビン誘導体、またはモルフィナン誘導体である。幾つかの実施形態では、鎮痛剤は、サリチル酸誘導体、ピラゾロン、またはアニリドである。他の実施形態では、鎮痛剤は、麦角アルカロイド、コルチコステロイド誘導体、または選択的セロトニン(5HT1)アゴニストである。局所麻酔薬の例は、限定されないが、メタブテサミン、プロカイン、テトラカイン、クロロプロカイン、ベンゾカインのような、アミノ安息香酸のエステル;ブピカイン、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン、ブタニリカイン、シンコカイン、エチドカイン、アルチカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン、テトラカイン、クロロプロカイン、ベンゾカインのような、アミド;コカインのような、安息香酸のエステル;塩化エチル、ディクロニン、フェノール、カプサイシンのような、他の局所麻酔薬、を含む。
【0107】
典型的なタンパク質および他の生体分子
幾つかの実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、タンパク質または他の生体分子を含む。タンパク質および他の生体分子の例は、限定されないが、アバレリクス、アバタセプト、アカルボース、アダリムマブ、アルグルコシダーゼ アルファ(alglucosidase alfa)、組み換え型抗血友病因子、抗トロンビン組換え型の再構成のための凍結乾燥粉末、ベラタセプト、ベリムマブ、ベバシズマブ、A型ボツリヌス毒素、カナキヌマブ、セルトリズマブペゴール、セトロタイド(Cetrotide)、セツキシマブ、絨毛性のヒト組換え型ゴナドトロピン(chorionic human recombinant gonadotropin)、凝固IX因子(組換え型)、コラゲナーゼ クロストリジウム−ヒストリチカム、接合エストロゲン、シアノコバラミン、ダーベポエチンアルファ、 デノスマブ、吸収されたジフテリア破傷風混合トキソイドおよび非細胞性百日咳ワクチン(Diphtheria and Tetanus Toxoids and Acellular Pertussis Vaccine Adsorbed)、吸収されたジフテリア破傷風混合トキソイドおよび非細胞性百日咳ワクチン、ドルナーゼアルファ、ドロトレコギンアルファ[活性化]、エカランチド、エクリズマブ、エンフビルチド、エノキサパリンナトリウム、エポエチンアルファ、エタネルセプト、エクセナチド、フィルグラスチム、フォリトロピンアルファ、フォリトロピンベータ、フラグミン、ガルスルファーゼ、ジェムツツマブオゾガミシン、酢酸グラチラマー、グルカゴン、ゴリムマブ、酢酸ゴセレリン、ヘモフィルスb結合型ワクチン(Haemophilus b Conjugate Vaccine)−破傷風トキソイド抱合体、酢酸ヒストレリン、イブリツモマブチウクセタン、イデュルスルファーゼ、インコボツリヌムトキシンA(incobotulinumtoxin A)、インフリキシマブ、インフルエンザウイルスワクチン、インスリン誘導体、インスリンアスパルト、インスリングラルギン[rDNA由来]、インスリンスリプロ、インターフェロンアルファコン−1、インターフェロンベータ−1a、インターフェロンベータ−1b、イピリムマブ、日本脳炎ワクチン−不活性化された−吸収された(Japanese Encephalitis Vaccine − Inactivated − Adsorbed)、酢酸ランレオチド、ラロニダーゼ、デポー懸濁液用の酢酸ロイプロリド、酢酸ロイプロリド、リナグリプチン、リラグルチド、メカセルミン、メノトロピン、メトキシポリエチレングリコール−エポエチンベータ、ナタリズマブ、 オファツムマブ、オマリズマブ、オナボツリヌス毒素A(onabotulinumtoxin A)、パリビズマブ、パンクレリパーゼ、パンクレリパーゼ、パニツムマブ、ペガプタニブ、ペグフィルグラスチム、ペグインターフェロンアルファ−2a、ペグインターフェロンアルファ−2b、ペグロチカーゼ、ペグビソマント、ペントサンポリサルフェートナトリウム、プラムリンチド、4価のヒトパピローマウイルス(型6、11、16、18)組換え型ワクチン、ラニビズマブ、ラスブリカーゼ、組換え型ヒトパピローマウイルスの二価の(型16および18)ワクチン、組換え型インターフェロンアルファ−2b、レテプラーゼ、リツキシマブ、ロミプロスチム、サルグラモスチム、セクレチン、セベラマーカーボネート、セベラマー塩酸塩、シプリューセル−T(sipuleucel−T)、ソマトロピン、ソマトロピン[rDNA由来]、テリパラチド、トシリズマブ、トラスツズマブ、トリプトレリンパモエート、ウステキヌマブ、注入用のベラグルセラーゼアルファ、を含む。
【0108】
特定の実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、薬学的に活性な生体分子としてタンパク質を含む。タンパク質の例は、限定されないが、オクトレオチド、エプチフィバチド、デスモプレシン、ロイプロリド/リュープロレリン、ゴセレリン、シクロスポリン、ビバリルジン、グルカゴン、カルシトニン、リパラチド、エンフビルチド、エカランチド、ロミプロスチムを含む。幾つかの実施形態では、生体適合性のポリマーは、薬学的に活性な生体分子として組換え型タンパク質を含む。組換え型タンパク質の例は、限定されないが、インスリン、レピルジン、ソマトロピン、アルデスロイキン、インターフェロンγ1b、アナキンラ、インターフェロンアルファ−2b、インターフェロンベータ−1b、インターフェロンベータ1a、PEGインターフェロンアルファ2a、フィルグラスチム、ペグフィルグラスチム、オプレルベキン、レテプラーゼ、デニロイキンジフチトクス、フォリトロピンアルファ、recFSH、チロトロピンアルファ、イミグルセラーゼ、ベカプレルミン、サルグラモスチム、ダーベポエチン、エリスロポエチン、DNAse、VIIa因子、IX因子、XIII因子、ドロトレコギン、アルテプラーゼ、テネクテプラーゼ、モロクトコグアルファ(moroctocog alfa)(BDDrFVIII)、VIII因子−2、VIII因子、ペグインターフェロン、リバビリン(ribavarin)、クロストリディウムコラゲナーゼ、アルグルコシダーゼアルファ2、インコボツリヌムトキシンA、ペグロチカーゼ、パリフェルミン、ガルスルファーゼ、イデュルスルファーゼ、を含む。特定の実施形態では、生体適合性のヒドロゲルポリマーは、薬学的に活性な生体分子として抗体を含む。抗体の例は、限定されないが、エタネルセプト、アブシキシマブ、ゲムツズマブ、リツキシマブ、アダリムマブ、パリビズマブ、トラスツズマブ、ベバシズマブ、ナタリズマブ、オマリズマブ、インフリキシマブ、アレムツズマブ、エファリズマブ、セツキシマブ、ゴリムマブ、アボボツリヌス毒素A、カナキヌマブ、ウステキヌマブ、オファツムマブ、セルトリズマブペゴール、トシリズマブ、デノスマブ、アバタセプト、ラニビズマブ、パニツムマブ、エクリズマブ、ブレンツキシマブ、イピリムマブ、ベリムマブ、リロナセプト、を含む。
【実施例】
【0109】
以下の具体的な例は、単に例示的なものとして解釈されるべきであり、方法はどうであれ、開示の残りを限定するものとして、解釈されるべきではない。
【0110】
モノマーおよびポリマーの以下の一般的特徴は、副作用をもたらすことなく、網膜を結合することに成功させるために必要とされる。
【0111】
【表1】
【0112】
以下は、幾つかの接着性ポリマー特性である。
【0113】
【表2】
【0114】
現場での適用のために、所望のゲル化時間は、120秒を下回る。さらに、粘度は、標的の処置領域のまわりの過度の展着を防ぐのに十分高くあるべきだが、その部位で任意の小さな腔に入るのに十分低くあるべきである。また、反応緩衝液は、生理学的条件に近くあるべきである。所望の分解時間およびポリマー孔径は、適用によって変化する。ポリマーは、身体内の分断(fragmentation)に抵抗するのに十分な弾性および強度を有するべきである。
【0115】
ポリマーの化学成分は表1にリストされる。化学的モノマーは、略語によって引用される。幾つかのUSPグレードの眼病用の使用が認可された粘度増強剤を、Sigma−Aldrichから購入し、25℃で貯蔵した。それらは、MCと略されたメチルセルロース(Methocel(登録商標)MC、10−25MPA.S);HPMCと略されたハイプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910);およびPVPと略されたポビドンK−30(ポリビニルピロリドン)、を含む。モノマーを、5℃で貯蔵し、使用前に室温まで暖め、これは典型的に30分かかった。使用後、内容物を、パラフィルムにより密封し、5℃に戻す前に、およそ30秒間Nでパージした。
【0116】
0.15Mのリン酸緩衝液を、磁気撹拌によって25℃で500mLの蒸留水中に9.00g(0.075mol)のNaHPOを溶解することによって作った。その後、50%の水性のNaOHを滴下で加えることによって、pHを7.99に調整した。幾つかの他のリン酸緩衝液を同様の方法:pH9での0.10Mのリン酸、pH7.8での0.10Mのリン酸、pH7.72での0.10Mのリン酸、pH7.46での0.10Mのリン酸、pH7.94での0.15Mのリン酸、pH7.90での0.15Mのリン酸、pH9での0.4Mのリン酸、およびpH7.40での0.05Mのリン酸、で調整した。
【0117】
0.30%のHPMCによるpH7.58での無菌の0.10Mのリン酸緩衝液を、キットでの使用のために調製した。最初に、1.417gのHPMCを、活発な振盪によってpH7.58で0.10Mのリン酸緩衝液、471mL中に溶解した。粘性溶液を、一晩浄化させた。溶液を、光真空の適用によって0.22μmのフィルター(Corning#431097)を通してろ過した。結果として生じる溶液の粘度を、20℃で8.48cSt+/−0.06であると測定した。
【0118】
リン酸緩衝食塩水(PBS)を、活発な振盪によって25℃で400mLの蒸留水中に2つのPBS錠剤(Sigma Chemical, P4417)を溶解することによって調製した。溶液を以下の組成およびpHを有する:0.01Mのリン酸、0.0027Mの塩化カリウム、0.137Mの塩化ナトリウム、pH7.46。
【0119】
0.058Mのリン酸緩衝液を、磁気撹拌によって25℃で500mLの蒸留水中に3.45g(0.029mol)のNaHPOを溶解することによって作った。その後、50%の水性のNaOHを滴下で加えることによって、pHを7.97に調整した。0.05Mのホウ酸塩緩衝液を、磁気撹拌によって25℃で500mLの蒸留水中に9.53g(0.025mol)のNa・10 H2Oを溶解することによって作った。その後、6.0NのHClを滴下で加えることによって、pHを7.93または8.35に調整した。
【0120】
アミンまたはチオールの成分(典型的に、0.1mmolのアーム(arms)の同等物の範囲内)を、50mLの遠心分離管に加えた。溶液中の固形物の終末濃度が約5パーセントとなるように、大量の反応緩衝液をピペットを介して管に加えた。混合物を、エステルまたはエポキシドの適正量を加える前に、固形物を溶解するためにそっと回転させた(swirled)。エステルまたはエポキシドを加えた直後に、全体の溶液を、静止させる前に10秒間振動させた。
【0121】
すべての事例に対するゲル化時間を、エステルまたはエポキシドの付加から始めて、溶液のゲル化まで測定した。1mLの反応混合物をピペットで移し、粘度の滴下での増加を観察することによって、ゲル化点を示した。50mLの遠心分離管中でca.5gの物質に5乃至10mLのリン酸緩衝食塩水を加え、37℃で混合物をインキュベートすることによって、ポリマーの分解を行った。リン酸緩衝液の付加の日から、溶液へのポリマーの溶解が完了するまで、分解時間を測定した。
【0122】
【表3】
【0123】
実施例1:ヒドロゲルの製造(アミン−エステルの化学作用)
約2.5mLのリン酸ナトリウム緩衝液(緩衝液pH7.36)中え約0.13gの固体のモノマーを溶解することによって、8ARM−20K−NH2の溶液を、Falconチューブ中で調製した。完全な溶解が得られるまで、混合物を、周囲温度で約10秒間振動させた。Falconチューブを、周囲温度で静置させた。別のFalconチューブでは、0.10gの8ARM−15K−SGを、上記のように同じリン酸緩衝液中で溶解した。混合物を、約10秒間振動させ、この時点で、すべての粉末を溶解した。8ARM−15K−SG溶液を、8ARM−20K−NH2溶液へとすぐに注ぎ、タイマーを起動した。混合物を、約10秒間振動且つ混合し、1mLの混合物の溶液を、機械的な高精度ピペットを使用して移した。1mLの液体のゲル化時間を、収集し、その後、残りの液体のための流れの欠如とともに確認した。製剤のゲル化時間のデータを記録し、それは約90秒であった。
【0124】
実施例2:ヒドロゲルの製造(アミン−エステルの化学作用)
約18mLのリン酸ナトリウム緩衝液(緩衝液pH7.36)中で約0.4gの固体の4ARM−20k−AAおよび約0.2gの固体の8ARM−20k−NH2を溶解することによって、アミンの溶液をFalconチューブ中で調製した。完全な溶解が得られるまで、混合物を、周囲温度で約10秒間振動させた。Falconチューブを、周囲温度で静置させた。この溶液に、0.3gの8ARM−15K−SGを加えた。混合物を、すべて粉末が溶解するまで、約10秒間混合且つ振動した。1mLの混合物の溶液を、機械的な高精度ピペットを使用して移した。製剤のゲル化時間を、上記のプロセスを用いて収集した。ゲル化時間は、約90秒であった。
【0125】
実施例3:ヒドロゲルの製造(チオールエステルの化学作用)
約5mLの硼酸ナトリウム緩衝液(緩衝液pH8.35)中で約0.04gのモノマーを溶解することによって、ETTMP−1300の溶液をFalconチューブ中で調製した。完全な溶解が得られるまで、混合物を、周囲温度で約10秒間振動させた。Falconチューブを、周囲温度で静置させた。この溶液に、0.20gの8ARM−15K−SGを加えた。粉末が溶解するまで、混合物を約10秒間振動した。1mLの混合物の溶液を、機械的な高精度ピペットを使用して移した。ゲル化時間が、約70秒であることが分かった。
【0126】
実施例4:ヒドロゲルの製造(チオール−エポキシドの化学作用)
約5mLのホウ酸ナトリウム緩衝液(緩衝液pH8.35)中で約0.04gのモノマーを溶解することによって、ETTMP−1300の溶液をFalconチューブ中で調製した。完全な溶解が得られるまで、混合物を、周囲温度で約10秒間振動させた。Falconチューブを、周囲温度で静置させた。この溶液に、0.10gのEJ−190を加えた。完全な溶解が得られるまで、混合物を、約10秒間振動した。1mLの混合物の溶液を、機械的な高精度ピペットを使用して移した。ゲル化時間が約6分であることが分かった。
【0127】
実施例5:インビトロでの生体吸収試験
pH7.40の0.10のモル緩衝液を、脱イオン水によって調製した。この溶液の50mLを、Falconチューブに移動した。サンプルポリマーを、20ccのシリンジ中で調製した。硬化後、ポリマースラグ(polymer slug)から2−4mmの厚い切片を切断し、Falconチューブに入れた。循環水浴を、準備し、37℃で維持した。ポリマーを用いるFalconチューブを、水浴内に入れ、時間を計り始めた。ポリマーの溶解を、モニタリングし、記録した。溶解時間は、サンプルポリマーのタイプに依存して、1−90日の範囲であった。
【0128】
実施例6:アミン−エステルのポリマーのゲル化および分解の時間
研究したアミンは、8ARM−20k−NH2および4ARM−5k−NH2であった。製剤の詳細および物質特性を表2に示す。8ARM−20k−NH2では、0.058Mのリン酸および7.97のpHを有するリン酸緩衝液が、約100秒の許容可能なゲル化時間を得るのに必要であったことが分かった。終わった7.41のpHを有する0.05Mのリン酸緩衝液を使用すると、結果として、ゲル化時間(270秒)は2倍以上増加した。
【0129】
8ARM−20k−NH2では、4ARM−10k−SSの4ARM−20k−SGAに対する比率は、50:50から90:10までで様々であった。ゲル化時間は一貫したままであったが、およそ80:20の比率で分解時間に著しい変化があった。75:25および50:50の比率を有する製剤に対して、分解時間は、1か月まで及びそれを超えて急上昇した。より少ない量の4ARM−20k−SGA(80:20、85:15、90:10)を使用すると、結果として、分解時間は、7日未満となった。
【0130】
比較として、4ARM−5k−NH2を、80:20の、4ARM−10k−SSの4ARM−20k−SGAに対する比率で、製剤中で使用した。予期されるように、分解時間は、一貫したままであり、これは、分解の機構がアミンの変化に影響されなかったことを示唆している。しかしながら、ゲル化時間は、60秒増加し、これは、高分子量の8ARMアミンおよび低分子量の4ARMアミン中の反応基の相対的な利用可能性を反映しているかもしれない。
【0131】
【表4】
【0132】
実施例7:チオール−エステルのポリマーのゲル化および分解の時間
研究したチオールは、4ARM−5k−SHおよびETTMP−1300であった。製剤の詳細および物質特性を表3に示す。7.93のpHを有する0.05Mのホウ酸塩緩衝液が、約120秒のゲル化時間をもたらしたことが分かった。製剤中で4ARM−20k−SGAの量が増加することで、ゲル化時間は、最大390秒(0:100の、4ARM−10k−SSの4ARM−20k−SGAに対する比率)までの、190秒(25:75の、4ARM−10k−SSの4ARM−20k−SGAに対する比率)に増加した。8.35のpHを有する0.05Mのホウ酸塩緩衝液を使用すると、ゲル化時間は、結果として、約2倍の減少である、65秒になった。したがって、ゲル化時間は、単に反応緩衝液のpHを調整することによって合わせられ得る。
【0133】
4ARM−10k−SSの4ARM−20k−SGAに対する比率は、0:100から100:0までで様々である。すべての事例において、分解時間は、著しく変化することはなく、典型的に3乃至5日であった。分解が代替経路によって生じる傾向がある。
【0134】
【表5】
【0135】
実施例8:アミン−エステルおよびチオール−エステルのポリマーのゲル化および分解の時間
アミン(4ARM−5k−NH2)およびチオール(4ARM−5k−SH)を、エステル4ARM−10k−SGを用いて研究した。製剤の詳細および物質特性を表4に示す。7.97のpHを有する0.058Mのリン酸緩衝液は、アミンにより150秒のゲル化時間をもたらした。8.35のpHを有する0.05Mのホウ酸塩緩衝液は、チオールにより75秒のゲル化時間をもたらした。
【0136】
アミンベースのポリマーは、分解可能な基の欠如から予期されるように、分解の徴候を示さないようであった。しかしながら、チオールベースのポリマーは5日で分解した。これは、4ARM−10k−SSおよび4ARM−20k−SGAを有するチオール製剤中で観察されるように(上記参照)、分解が代替経路によって生じることを示唆している。
【0137】
【表6】
【0138】
実施例9:チオール−ソルビトールのポリグリシジルエーテルポリマーのゲル化および分解の時間
高いpH(10)などのETTMP−1300条件では、高い溶液濃度(50%)、または高いホウ酸塩濃度(0.16M)が、混合物をゲル化するのに必要であった。ゲル化時間は、約30分から長時間にわたる範囲であった。調査された条件は、以下のものを含む:7から12までのpH;5%から50%までの溶液濃度;0.05Mから0.16Mまでのホウ酸塩濃度;および1:2から2:1までのチオールのエポキシドに対する比率。
【0139】
反応を生じさせるのに必要な高いpHは、結果的に、チオールの分解をもたらし得る。したがって、EJ−190および4ARM−5k−SHを有するポリマーを調製した。13%の溶液製剤は、9乃至10のpHで230秒のゲル化時間を示した。分解時間は32日間であった。約8のより低いpHでは、混合物は、1乃至2時間の範囲のゲル化時間を示した。
【0140】
実施例10:インビボで重合可能な物質の調製のための一般的手順
幾つかの代表的な粘着性の製剤を、インビボで重合可能な物質の調製のための具体的な反応の詳細とともに表5にリストする。ポリマーを、リン酸緩衝液中でアミン成分またはホウ酸塩緩衝液中でチオール成分を最初に溶解することによって調製した。その後、適正量のエステル成分を加え、全体の溶液を10乃至20秒間活発に混合した。ゲル化時間を、エステルの付加から始めて溶液のゲル化まで測定した。
【0141】
【表7-1】
【0142】
【表7-2】
【0143】
【表8】
【0144】
【表9】
【0145】
ゲル化時間は、60秒乃至300秒の範囲であり、反応緩衝液pH、緩衝液濃度、またはポリマー濃度の調整によって容易に調節されることが分かった。単一の製剤に対するゲル化時間の制御の例を、表6に示し、ここで、8ARM−20k−NH2/4ARM−20k−SGA(1/1)ポリマーに対するゲル化時間は、1.5分から15.5分までで様々である。
【0146】
特定の例では、ポリマーの粘着性は、成分のモル当量の不適合から生じる。2,000乃至20,000の分子量の4または8アームの(4 or 8 armed)アミンおよび1,000乃至20,000の分子量の4または8アームのエステルの組み合わせを使用する様々な粘着性の物質を生成した。8アームのと比較して、4アームのとエステルは、結果的に、より粘着性のある物質をもたらした。アミン成分に関して、より小さな分子の量が、より粘着性のある物質およびより高いアミン対エステルのモル比につながることが分かった。
【0147】
少なくとも3の不適合(アミン対エステルのモル比)は、粘着性を質的に感知することが必要とされた。より好ましくは、約5の比率は、ポリマーの強度と組み合わせた粘着性の望ましいレベルをもたらした。5より高いアミン対エステルのモル比を有するポリマーも、形成され得るが、ポリマー濃度などの幾つかの反応条件は、合理的なゲル化時間を得るために調整される必要があるかもしれない。さらに、粘度を増強した溶液の使用が、ポリマーを、その強度および弾性を高めることにより改善し、より高いアミン対エステルのモル比を可能にすることが分かった(実施例11、表8)。
【0148】
形成された物質は、典型的に、透明且つ弾性であった。粘着性を、質的に触って試験した。したがって、粘着性の物質は、ヒトの指または他の表面に付着し、取り除かれるまでその場所に残った。分解時間は、1日から53日までで様々であった。特定の例では、ゲル化および分解の時間、孔径、膨潤などのポリマー特性は、粘着性を失うことなく、異なる適用のために最適化され得る。
【0149】
実施例11:増強した粘度を有する溶液の調製のための一般的手順
増強した粘度を有するポリマー溶液を、粘度増強剤を反応緩衝液に加えることによって調製した。表8のBは、形成されたポリマーの特性についての観察を含む、研究された粘度増強剤をリストする。反応緩衝液の貯蔵溶液を、様々な濃度のメチルセルロース(MC)、ハイプロメロース(HPMC)またはポリビニルピロリドン(PVP)によって調製した。例として、緩衝液中の2%(w/w)のHPMC溶液を、pH7.80で0.2gのHPMCを0.10Mのリン酸緩衝液、9.8mLに加え、その後、活発な振動によって作り出した。溶液を、一晩静置させた。0.01%乃至2.0%の範囲のHPMC濃度を有する緩衝液を、同様の方法で調製した。5%乃至20%の範囲のPVP濃度を有する緩衝液および1.0乃至2.0%の範囲のMC濃度を有する緩衝液も、同様の方法で調製した。
【0150】
ポリマーを、粘着性の物質の調製のための一般的手順において記載されるのと同じ方法で形成した(実施例10)。典型的な手順は、粘度増強剤の所望の濃度を含有しているリン酸緩衝液中のアミン成分を最初に溶解することを含んだ。その後、適正量のエステル成分を加え、全体の溶液を、10乃至20秒間活発に混合した。ゲル化時間を、エステルの付加から始めて溶液のゲル化まで測定した。
【0151】
幾つかの代表的な製剤を、具体的な反応の詳細とともに表7にリストする。モル当量による分解可能な酢酸アミン成分のパーセントを、括弧で指定した比率によって表わす。例えば、75%の分解可能なアミンを有する製剤は、8ARM−20k−AA/8ARM−20k−NH2(75/25)として記載される。ポリマーを、リン酸緩衝液中のアミン成分を最初に溶解することによって調製した。その後、適正量のエステル成分を加え、全体の溶液を、10乃至20秒間活発に混合した。ゲル化時間を、エステルの付加から始めて溶液のゲル化まで測定した。
【0152】
ゲル化時間は、以下の幾らかの因子に依存する:pH、緩衝液濃度、ポリマー濃度、温度および使用されるモノマー。先の実験は、一旦成分が溶液中にあると、混合の程度が、ゲル化時間に対してほとんど効果がないことを示し、その時間は、典型的に、10秒までである。図1は、緩衝液pHに対するモノマーの付加の効果を示す。8ARM−20k−NH2および4ARM−20k−SGAの製剤について、緩衝液pHは、モノマーの付加でわずかに7.42から7.36まで低下する。8ARM−20k−AA/8ARM−20k−NH2(70/30)および4ARM−20k−SGAの製剤については、緩衝液pHは、モノマーの付加で7.4から7.29まで低下する。pHのさらなる減少が、分解可能な酢酸アミン中の酸性残留物から生じることが分かった。同じpH低下の現象は、4ARM−20k−AAアミンに対しても観察された。特定の例では、酢酸アミン溶液のpHに対する品質管理の規格(specification)が、分解可能な製剤の整合性を改善するために必要とされ得る。
【0153】
図2は、ゲル化時間に対する反応緩衝液pHの効果を描写する。ゲル化時間は、およそ直線的に、ヒドロニウムイオンの濃度の増加とともに増加する。より一般には、ゲル化時間は、緩衝液pHの増加とともに減少する。図3は、ゲル化時間に対する反応緩衝液リン酸濃度の効果を示す。ゲル化時間は、リン酸濃度の増加とともに減少する。図4は、ゲル化時間に対するポリマー濃度の効果を例証する。ゲル化時間は、ポリマー濃度の増加とともに著しく減少する。ゲル化時間が5分より長い低いポリマー濃度では、エステルの加水分解反応は、ポリマーの形成と競合し始める。図5で見られるように、ゲル化時間に対する温度の効果は、アレニウス式に従っているようである。ゲル化時間は、ポリマー溶液の反応進行度に直接関連し、したがって、この作用は異常ではない。
【0154】
図6では、ゲル化プロセスの間のポリマーのレオロジーを、ゲル化点に対するパーセント時間に応じて示す。したがって、100%は、ゲル化点を表わし、50%は、ゲル化点前の時間の半分を表わす。反応溶液の粘度は、ゲル化点の約80%まで比較的一定したままである。その後、粘度は劇的に増加し、これは、固形ゲルの形成を表わす。
【0155】
図7は、約1年にわたる、モノマーの同じロットを使用する、単一の製剤のゲル化時間の安定性を示す。モノマーを、上に概説する標準プロトコルに従って処理した。ゲル化時間は、比較的安定したままであり、反応緩衝液の幾らかの変化は、ゲル化時間の差の原因であり得る。
【0156】
【表10-1】
【0157】
【表10-2】
【0158】
【表10-3】
【0159】
【表10-4】
【0160】
【表11-1】
【0161】
【表11-2】
【0162】
【表11-3】
【0163】
細胞毒性および溶血反応の評価
幾つかのポリマーサンプルを、細胞毒性および溶血反応の評価のためにNAMSAに送った。細胞毒性を、ISO 10993−5のガイドラインに従って評価した。溶血反応を、ASTM F756およびISO 10993−4に基づいた手順に従って評価した。
【0164】
0.3%のHPMCを有する4.8%の溶液でのポリマー8ARM−20k−NH2および4ARM−20k−SGAが、非細胞毒性且つ非溶血性であることが分かった。0.3%のHPMCを有する4.8%の溶液でのポリマー8ARM−20k−AA/8ARM−20k−NH2(70/30)および4ARM−20k−SGAが、非細胞毒性且つ非溶血性であることが分かった。さらに、4ARM−20kAAおよび8ARM−15k−SGを含む製剤もまた、非細胞毒性且つ非溶血性であった。
【0165】
ゲル化および分解の時間の測定
すべての事例に対するゲル化時間を、エステルの付加から始めて溶液のゲル化まで測定した。1mLの反応混合物をピペットで移し、混合物が流れが止まるまで粘度の滴下での増加を観察することによって、ゲル化点を示した。ポリマーの分解を、50mLの遠心分離管中で1gの物質につき1乃至10mLのリン酸緩衝食塩水を加え、混合物を37℃でインキュベートすることによって行った。デジタル式の水浴を、温度を維持するために使用した。リン酸緩衝液の付加の日から、溶液へのポリマーの溶解が完了するまで、分解時間を測定した。
【0166】
ゲル化時間に対する、反応緩衝液pH、リン酸濃度、ポリマー濃度および反応温度の効果を特徴づけした。緩衝液pHは、50%の水性のNaOHまたは6.0NのHClのいずれかを滴下で加えることによって、7.2から8.0までで様々であった。0.01、0.02および0.05Mのリン酸濃度を、調製し、pH7.4に調整した。2乃至20%の溶液のポリマー濃度を研究した。モノマー、緩衝液、および反応混合物を適温で維持することによって、5、20、および37℃の反応温度を試験した。冷蔵庫によって5℃の環境を提供し、37℃の温度を水浴によって維持した。室温が20℃であることが分かった。
【0167】
分解時間に対するポリマー製剤中の分解緩衝液pHおよび分解可能なアミンの割合の効果を調査した。分解緩衝液pHは、50%の水性のNaOHまたは6.0NのHClのいずれかを滴下で加えることによって、7.2から9.0までで様々であった。研究した分解可能なアミン成分は、4ARM−20k−AAまたは8ARM−20k−AAのいずれかであり、分解可能なアミンの非分解性のアミンに対するパーセントは、50から100%までで様々であった。
【0168】
分解時間は、緩衝液pH、温度、および使用されるモノマーに大きく依存する。分解は、主として、エステル結合の加水分解を介して生じ、生体系では、酵素経路も役割を果たし得る。図8は、変化する量での、製剤の分解時間と4ARM−20k−AAおよび8ARM−20k−AAとを比較する。一般に、非分解性のアミンと比べた分解可能な酢酸アミンの量の増加は、分解時間を減少させる。さらに、幾つかの例では、8ARM−20k−AAは、モル当量当たりの4ARM−20k−AAよりも長い分解時間を示し、これは、酢酸アミンのパーセントが70%未満に低下するときに特に明白となる。
【0169】
図9は、分解時間に対する緩衝液pHの効果を示す。7.2乃至9.0のpH範囲を研究した。一般に、高いpH環境は、結果的に、大幅に加速された分解をもたらす。例えば、およそ7.4乃至7.7のpHの増加は、分解時間を約半分に減少させる。
【0170】
製剤中で使用されるモノマーは、ポリマーが分解する方法で役割を果たすことが分かった。8ARM−20k−AA/8ARM−20k−NH2(70/30)および4ARM−20k−SGAポリマーについては、分解は、物質の全体にわたって均質的に生じ、結果的に「円滑な(smooth)」分解プロセスにつながり、これは図10に描写される。ポリマーの初期状態を、図10のAに示す。ポリマーは、水を吸収し、わずかに最初の数日間にわたってわずかに膨潤した(図10のB)。その後、ポリマーは、その形状をまだ維持しながら、徐々により柔らかくなった(図10のC)。最終的に、ポリマーは、その形状を失い、高い粘性の流体になった(図10のD)。ポリマーが14日目までその形状を維持したため、その21日の分解期間にもかかわらず、70/30の製剤を、14日の眼科用の適用のために選択した。14日目から21日目まで、ポリマーは、その形状を失い始め、粘性流体の段階に入った。
【0171】
分解プロセスを細分化する例を、図11に示す。分解可能なアミンの量が低くなるときに、ポリマー中の非分解性の領域が生まれ得る。図11のAは、およそ80日後の、8ARM−20k−AA/8ARM−20k−NH2(60/40)および4ARM−20k−SGAの製剤を描写する。図11のBは、幾つかの大きなフラグメントに分解した、4ARM−20k−AA/8ARM−20k−NH2(70/30)および4ARM−20k−SGAの製剤を描写する。ポリマーが大きな力にさらされる場合の適用のために、ポリマーが、経時的により柔らかくなる且つ弱くなると、分断も生じ得る。
【0172】
ポリマー濃度
より希薄なポリマー溶液は、機械的性質の最小の変化とともに利用され得る。4ARM−20k−SGAおよび0.3%のHPMCを有する製剤8ARM−20k−AA−20K/8ARM−20k−NH2(75/25)については、3.0、3.5および4.0%のポリマー濃度を研究した。図12Aは、ゲル化時間を示し、これは、ポリマー濃度が低下するとともに着実に増加した。ポリマー濃度が低下するとともに、硬度はわずかに減少した(図12B)。粘着度を図12Cに示す。ポリマーの接着性の変化は本質的になかった。ポリマー濃度が低下するとともに、弾性率はわずかに減少した(図12D)。膨潤または水の吸収を、図12Eに示す。
【0173】
【表12】
【0174】
【表13】
【0175】
【表14】
【0176】
メチルセルロース(MC)が、ハイプロメロース(HPMC)と同様に作用することが分かり、0乃至2%(w/w)の濃度範囲で実用可能な粘性溶を提供した。しかしながら、HPMCは、MCよりも容易に溶解し、HPMC溶液は、より高い光学的透明度を有し;したがって、HPMCの使用が好まれた。ポビドン(PVP)は、緩衝液中に容易に溶解したが、20%(w/w)でさえ最小限の粘度増強を提供した。
【0177】
大部分で、ポリマーは、低濃度のHPMCまたはPVPを加えることによって変わらないままである。しかしながら、切断なしで通常よりも延長する物質の能力によって証拠づけられるように、増強された弾性によって特徴づけられる、ポリマーの約0.3%のHPMCの顕著な変更があった。1.5%のHPMCを超えて、ポリマーは、わずかに柔らかくなり、より少ないバウンスを示した。ゲル化時間はまた、増粘剤のない製剤に対するゲル化時間の10秒以内のままであった。PVPの場合には、ポリマーの著しい変化は、10%のPVPを超えて生じた。ポリマーは、弾性および粘着性の顕著な増加にとともにより不透明になった。15%乃至20%のPVPで、ポリマーは、粘着性の物質に類似したが、よい優れた機械強度を有した。ゲル化時間はまた、増粘剤のない製剤と比べて、およそ20分増加した。したがって、ポリマー溶液へのより低い濃度のPVPまたはHPMCの付加は、ポリマーの弾性および潤滑性の改善において有益であり得る。
【0178】
ヒドロゲル表面の展着試験の結果は、ほとんどの製剤がカテゴリー2に属することを示す。
【0179】
これらの観察に基づいて、0.3%のHPMCを利用する製剤を、さらなる評価のために選択した。1.0%を超えるHPMCでは、溶液は、混合するのがかなり難しくなり、モノマーの溶解が問題となった。0.5%のHPMCおよびそれを超えると、混合中の大気泡の形成が際立った。さらに、溶液は、大気泡を取り除くために0.5μmのシリンジフィルターを介してろ過するのは容易ではなかった。しかしながら、0.3%のHPMC溶液は、中程度の混合後でさえ容易にろ過され、結果として、大気泡のない、光学的に透明なポリマーをもたらした。
【0180】
粘度測定
結果として生じる緩衝液の粘度を、Ace Glassからの適切にサイズが合わせられたCannon−Fenskeの粘度計チューブによって測定した。使用した粘度計のサイズは25から300までの範囲であった。選択した溶液の測定を、20℃および37℃の両方で3回繰り返して行った。結果を表8のBに示す。およその動粘度を計算するために、すべての緩衝液が水と同じ密度を有していると仮定した。
【0181】
ゲル化プロセスの間のポリマーのレオロジーを特徴づけるために、サイズ300の粘度計を、およそ15分後にゲル化するように設計した製剤とともに使用した。使用した製剤は、2.5%の溶液および0.3%のHPMCで4ARM−20k−SGAを有する8ARM−20k−NH2を含んだ。反応が、7.2のpHで0.05Mのリン酸緩衝液中に生じた。したがって、サイズ300の粘度計での1回の粘度測定が、約1分で得られ、事後測定は、ゲル化点まで立て続けに得られ得る。
【0182】
ヒドロゲル表面の展着試験
網膜の表面が極端に親水性であり、これによって、液体の滴下が投与の所望部位を越えて展着する傾向があるため、展着を、極端に親水性である表面を使用してモデル化した。親水性表面上のポリマー溶液の効能をモデル化するために、約30°傾斜での高含水量のヒドロゲル表面上の液滴の展着および滴下の程度を記録した。ペトリ皿においてpH7.4で7mLの0.05Mリン酸緩衝液中の0.10g(0.04molのアームeq.)の8ARM−20k−NH2を溶解し、その後、0.075g(0.04molのアームeq.)の8ARM−15k−SGエステルを加えることによって、ヒドロゲルを作り上げた。溶液を、10乃至20秒間スパーテルによって撹拌し、ゲル化させ、これには、典型的に5乃至10分かかった。結果として生じるポリマーの含水量は、97.5%であった。
【0183】
最初にポリマー溶液を通常の方法で調製することによって、試験を行った。徹底的い混合した後、ポリマー溶液を、22ゲージの注射針を介してヒドロゲル表面上に滴下で調剤した。結果を、表8のBに示し、以下の3つの一般的なカテゴリーに分類した:1)展着なし、適所にとどまる密な滴剤;2)軽度の展着、滴剤をゆっくり下に落ちる;3)重度の展着、完全に湿潤面に落ちる。水はカテゴリー3にある。水は、カテゴリー3にある。
【0184】
膨潤の測定
分解プロセスの間のポリマー中の膨潤の程度を、ポリマーの液体吸収として定量化した。既知の質量のポリマーを、37℃でPBSに入れた。規定時間の間隔で、ポリマーを、緩衝液から分離し、ペーパータオルで水気を取り、計量した。質量のパーセント増加を、最初の質量から計算した。
【0185】
0、0.3および1.0%のHPMCを有する8ARM−20k−NH2/4ARM−20k−SGAのポリマーによる水の吸収のパーセントを、図13に示す。1.0%のHPMCポリマーは、20日目までの水におけるその重量の30%までを吸収した。20日後、ポリマーは、水におけるその重量の約10%まで戻った。それに比べて、0%のHPMCポリマーは、最初に、水におけるその重量の10%までを吸収したが、徐々に水を失い始め、水におけるその重量は約5%にとどまった。0.3%のHPMCポリマーは、中間の方法(intermediate fashion)で作用した。それは、最初に、水におけるその重量の20%までを吸収したが、一週間後に水におけるその重量の約10%まで戻り、水をゆっくりと失い続けた。
【0186】
比重の測定
ポリマーの比重を、通常の方法でポリマー溶液を調製し、1.00mLの徹底的に混合した溶液を化学天秤上にピペットで移すことによって得た。測定を、20℃で3回繰り返して行った。比重を、参照として4℃での水の密度を使用することによって計算した。
【0187】
比重に対して得た値を、図14に示す。ポリマーの比重は、緩衝液のみの比重と著しく異なることはなく、その両方は、水の比重と本質的に同じであった。ポリマー溶液がろ過されず、大気泡がポリマーマトリックスに埋め込まれるときに、例外が生じ得る。
【0188】
硫酸バリウムの懸濁液
撮像目的のために、硫酸バリウムを、放射性造影剤として幾つかのポリマー製剤に加えた。1.0、2.0、5.0および10.0%(w/v)の硫酸バリウム濃度を調査した。結果として生じるポリマー溶液の粘度を測定し、ポリマーゲル時間に対する硫酸バリウムの付加の効果および注射可能性(syringability)の特性も研究した。
【0189】
1.0、2.0、5.0および10.0%(w/v)の硫酸バリウム濃度を調査した。不透明で、乳白色の懸濁液は、不透明且つ白色のポリマーを同様に形成した。ゲル化時間の変化は観察されなかった。質的に、ポリマーは、硫酸バリウムのないポリマーの特性に類似した特性を有するように見えた。すべての製剤を、22ゲージの注射針を介して容易に調剤することができた。
【0190】
1.0、2.0、5.0および10.0%の硫酸バリウム濃度に対する粘度測定の結果を、図15に示す。粘度は、2.0%まで比較的安定したままであり、5.0%で、粘度は約2.5cPまでわずかに増加した。濃度が10.0%に接近すると、ほぼ10cPまでの粘度の急増があった。したがって、5.0%の硫酸バリウム濃度を、高コントラストの強度と変更されていないポリマー製剤との類似性との間のバランスとして選択した。
【0191】
ヒドロゲル硬度、弾性率、および付着
ポリマーの硬度を、Exponentソフトウェアのバージョン6.0.6.0を有するTexture AnalyzerモデルTA.XT.plusによって特徴付けた。方法は、ゼラチンの硬度の測定のための工業規格「Bloom Test」に従った。この試験では、ポリマーサンプルを定義された深さまで浸透させて、その後、サンプルから原位置に戻すために、TA−8 1/4”のボールプローブを使用した。測定したピーク力を、サンプルの「硬度」として定義する。研究したポリマーについて、0.50mm/秒の試験速度、4mmの浸透深さ、および5.0gの引き金作用を使用した。ポリマーを、直接、5mLのサイズのバイアル中の2.5mLのスケール上で調製し、一貫したサンプル寸法を確かなものとした。使用したバイアルは、ThermoScientific/Nalgene LDPEのサンプルバイアル、product# 6250−0005(LOT# 7163281060)であった。測定を20℃で行った。ポリマーを、測定前のおよそ1時間、室温で静止させた。測定を、少なくとも3つのサンプルに対して3回繰り返して行った。硬度の試験を実行するExponentソフトウェアによって作り出されたサンプルプロットを、図16に示す。プロットのピークは、4mmの標的の浸透深さに達した時点を表わす。
【0192】
ポリマーの弾性率を、Exponentソフトウェアのバージョン6.0.6.0を有するTexture AnalyzerモデルTA.XT.plusによって特徴付けた。この試験では、ポリマーの破損が生じるまで、既知の寸法のポリマーシリンダーを圧縮するために、TA−19 kobeのプローブを使用した。プローブは、1cmの定義された表面積を有する。弾性率を、最大圧縮応力の10%まで最初の傾きとして計算した。研究したポリマーについて、5.0mm/minの試験速度および5.0gの引き金作用を使用した。サンプルの高さを、プローブによって自動検出した。ポリマーを、直接、5mLのサイズのバイアルキャップ中の2.5mLのスケール上で調製し、一貫したサンプル寸法を確かなものとした。使用したバイアルは、ThermoScientific/Nalgene LDPEのサンプルバイアル、product# 6250−0005(LOT# 7163281060)であった。測定を20℃で行った。ポリマーを、測定前のおよそ1時間、室温で静止させた。測定を、少なくとも3つのサンプルに対して行った。弾性率の試験を実行するExponentソフトウェアによって作り出されたサンプルプロットを、図17に示す。ほぼ直線的なプロットによって証拠づけられるように、ポリマーは、典型的に、最初の圧縮のために弾性に作用した。
【0193】
ポリマーの接着性を、Exponentソフトウェアのバージョン6.0.6.0を有するTexture AnalyzerモデルTA.XT.plusによって特徴付けた。接着性の試験では、特定の期間、ポリマーサンプルを定義された力に接触させ、その後、サンプルから原位置に戻すために、TA−57R 7mm直径のパンチプローブを使用した。粘着性の試験を実行するExponentソフトウェアによって作られた典型的なプロットを、図18に示す。プローブがポリマーの表面を当たるときに、プロットは始まる。標的作用は、定義された単位時間の間、サンプルに適用され、これは、プロットにおける特定の作用領域によって表わされる。その後、プローブは、サンプルから原位置に戻り、プローブとサンプルとの間の付着力を、「粘着度」として測定し、これは、サンプルからプローブを取り除くのに必要なピーク力である。測定された他の特性は、付着エネルギーまたは付着仕事量、および物質の「曳糸性」を含む。付着エネルギーは、単純に、粘着力を表わす曲線下面積である。したがって、高い粘着度および低い付着エネルギーを有するサンプルは、質的に非常に粘着性に感じるが、迅速に引くことによって清潔に取り除かれる得、高い粘着度および高い接着エネルギーを有するサンプルも、非常に粘着性に感じるが、物質の除去は、より困難になり、ポリマーの伸張、繊維形成および粘着性の残留物が付随し得る。ポリマーの弾性は、測定された「曳糸性」に比例し、これは、ポリマーが、接着の失敗前にプローブに付着される中で伸長する距離である。研究したポリマーについては、0.50mm/秒の試験速度、2.0gの引き金作用、および100.0gの接触力および10.0秒の接触時間を使用した。ポリマーを、直接、5mLのサイズのバイアル中の1.0乃至2.5mLのスケール上で調製し、一貫したサンプル表面を確かなものとした。使用したバイアルは、ThermoScientific/Nalgene LDPEのサンプルバイアルであった。測定を20℃で行った。ポリマーを、測定前のおよそ1時間、室温で静止させた。参照物質として、基準のPost−It Note(登録商標)およびScotch Tape(登録商標)の接着性を測定した。すべての測定を、3回繰り返して行った。平均および標準偏差を計算した。
【0194】
ポリマーの機械的性質に対するHPMCの付加の効果を、分解可能な8ARM−20k−AAアミンを加える効果とともに調査した。結果を図19および図20に示す。硬度の試験の明示された条件下では、0.3%のHPMCの付加が、ポリマーの硬度をおよそ半分減少させたことが分かった(図19のA)。これは、弾性率のわずかな減少に相当する(図20のA)。1.0%のHPMCポリマーは、0.3%のHPMCポリマーと略同じ硬度を有したが、弾性率のわずかな減少があった。硬度と弾性率の試験との間の相違は、恐らく実験誤差が原因である。ポリマー溶液は、ろ過されず、そのため、大気泡の存在は誤差を増加させる傾向にあった。ポリマーの含水量はまた、ポリマーが空気中に静置していると変化し得、これは、本質的に、物質の物理的性質を変化させる。
【0195】
分解可能な8ARM−20k−AAアミンを加えることによって、硬度または弾性率の測定値を実質的に変化させなかったことが分かった(図19のBおよび図20のB)。付着検査の結果を図21に示す。標準の商用のPost−It(商標)Noteに対する測定値も、参照として含まれる。ポリマー粘着度は、約40mNであることが分かり、これは、Post−It(商標)Noteの約3分の1であった。ポリマーの接着性は、分解可能なアミンを加えることで変化しないことが分かった。
【0196】
図22は、0.3%のHPMCを有する4.8%の溶液での8ARM−20k−AA/8ARM−20k−NH2(70/30)および4ARM−20k−SGAに対する硬度対分解時間を示す。エラーバーは3つのサンプルからの標準偏差を表わす。ポリマーに対する分解時間は18日間であった。ポリマーの硬度は、分解の程度に強く相互関連した。
膨潤はまた、初期段階の間に役割を果たし得る。
【0197】
光学的透明度
Thermo Scientific GENESYS 10S UV−Visの分光光度計を、粘性溶液の光学的透明度を測定するために使用した。クォーツキュベットに、1.5mLのサンプル溶液をピペットで移した。添加剤のない緩衝液を、参考として使用した。サンプルの安定した%透過を、650nmで記録し、結果を表8のCにリストする。
【0198】
考察中の粘性溶液のすべてが、使用される濃度範囲下で優れた光学的透明度に対して許容可能であることが分かった(97%より高い透過率)。高い粘性の溶液について、混合中の空気泡の形成を観察し、これは、消泡剤を加えることよって、またはシリンジフィルターの使用を介して分解され得る。
【0199】
実施例12:インビボで重合可能な薄膜の調製おための一般的手順
粘着性および非粘着性両方の膜のための幾つかの代表的な製剤を、具体的な反応の詳細とともに表9にリストする。膜は、100乃至500μmの範囲の厚さを有し、複合膜中の異なる製剤によって層状にされ得る。
【0200】
【表15】
【0201】
【表16】
【0202】
実施例13:キットの準備およびその使用
幾つかのキットを、以前に試験したポリマー製剤とともに準備した。キットを集めるために使用される物質を、表10にリストし、使用される製剤を、表11にリストする。キットは、典型的に、2つのシリンジから成り、1つは固体成分を含み、もう1つは液体緩衝液を含んでいる。シリンジは、混合管および一方向弁を介して接続される。シリンジの内容物は、10から20秒間繰り返しで、バルブを開き、1つのシリンジの内容物を他方へ移動させることによって混合される。その後、使用済みのシリンジおよび混合管を、取り除き、廃棄し、実行中のシリンジに、針またはカニューレなどの調剤ユニットを備え付け、ポリマー溶液を、ゲル化の発生まで放出する。他の実施形態では、粘性溶液は、固体成分の溶解を妨げるため、第3シリンジが利用される。第3シリンジは、一旦すべての成分が溶解すると、溶液の粘度を増強する濃縮した粘性緩衝液を含む。幾つかの実施形態では、結果として生じるポリマーの光学的透明度は、シリンジフィルターを加えることによって改善される。
【0203】
試験した製剤をすべて、22ゲージの注射針を介して容易に調剤した。2つのシリンジ間の混合作用は激しく(turbulent)、かなりの量の大気泡の導入が明白であった。軽い混合は、結果として、気泡がない透明な物質をもたらす。あるいは、シリンジフィルターの使用が、ポリマー特性が変化することなく、気泡を取り除くことが分かった。
【0204】
【表17】
【0205】
【表18】
【0206】
幾つかの追加のキットを、最初の試験で最良に効果を発揮したポリマー製剤とともに準備した。キットを集めるために使用される物質を、表12にリストする。キットは、典型的に、2つのシリンジから成り、1つは固体成分を含み、もう1つは液体緩衝液を含んでいる。プランジャーを取り除き、成分を加えて、20秒間窒素ガスの軽く流してパージし、その後、プランジャーを取り替えることによって、シリンジを充填した。最終的に、プランジャーを、シリンジの内容積を減少させるのにできるだけ抑圧した。キット中の化学成分の量に対する仕様を、表13のAにリストする。準備したキットのロットを記載する概要を、表13のBにリストする。
【0207】
シリンジを、蓋を外した後に直接、雌部へとロックする雄部に接続した(図23)。シリンジの内容物を、10乃至20秒間繰り返しで、1つのシリンジの内容物を他方へ移動させることよって混合した。その後、使用済みのシリンジを、取り除き、廃棄し、実行中のシリンジに、針またはカニューレなどの調剤ユニットを備え付け、ポリマー溶液を、ゲル化の発生まで放出した。他の実施形態では、粘性溶液は、固体成分の溶解を妨げるため、第3シリンジを利用した。第3シリンジは、一旦すべての成分が溶解すると、溶液の粘度を増強する濃縮した粘性緩衝液を含んだ。
【0208】
試験した製剤をすべて、22ゲージの注射針を介して容易に調剤した。2つのシリンジ間の混合作用は激しく、かなりの量の大気泡の導入が明白であった。シリンジフィルターの使用が、ポリマー特性が変化することなく、気泡を取り除くことが分かった。
【0209】
準備したキットを、パウチ当たり1つの酸素を吸収するパケットとともにフォイルパウチに入れた。パウチを、CHTC−280 PROMAXの卓上用のチャンバシーリングユニットによって熱融着した。シーリングの2つの異なるモードを、窒素下および真空下で調査した。窒素下に密封するための設定は、次のとおりであった:30秒の真空、20秒の窒素、1.5秒の熱融着、および3.0秒の冷却。真空下に密封するための設定は、次のとおりであった:60秒の真空、0秒の窒素、1.5秒の熱融着、3.0秒の冷却。
【0210】
【表19】
【0211】
【表20】
【0212】
【表21】
【0213】
実施例14:採取したブタの眼内の網膜用のパッチ
採取したブタの眼内の、付着性、粘着性、厚さ、および透明性に関してポリマーを評価するために、表14にリストする製剤を使用して試験した。0.15Mのリン酸緩衝液を、磁気撹拌によって25℃で500mLの蒸留水中に9.00g(0.075mol)のNaHPOを溶解することによって作った。その後、50%の水性のNaOHを滴下で加えることによって、pHを7.99に調整した。リン酸緩衝食塩水(PBS)を、活発な振盪によって25℃で400mLの蒸留水中に2つのPBS錠剤(Sigma Chemical, P4417)を溶解することによって調製した。溶液を以下の組成およびpHを有する:0.01Mのリン酸、0.0027Mの塩化カリウム、0.137Mの塩化ナトリウム、pH7.46。
【0214】
【表22】
【0215】
送達装置の一般的設計を、図24に示す。キットは、2つのシリンジから成り、1つは固体成分を含み、もう1つは液体を含んでいる。シリンジは、混合管および一方向弁を介して接続される。シリンジの内容物を、10乃至20秒間繰り返しで、一方向弁を開いて、1つのシリンジの内容物を他方へ移動させた後に混合した。その後、使用済みのシリンジおよび混合管を、取り除き、廃棄し、実行中のシリンジに針を備え付け、ポリマー溶液を、まだ液体状態である間に所望の部位に注入する。液状ポリマーは、所望の部位で予め設定した時間に固体に変わり、組織に粘着する。シリンジフィルターの付加を介して大気泡を取り除くことによって、結果として生じるポリマーの光学的透明度は、改善される。
【0216】
網膜組織の試験
ブタの眼を、適切に得て、保存した。手術は慎重に行い、硝子体液を網膜から分離し、次に、網膜を、幾つかの位置で切断し、その後、適切にスタイロフォーム基材にピンで留め、基本的に平らな網膜表面を作り出した。表14の液体の縫合製剤を、上記の混合手順によって混合し、網膜表面にわたって慎重に一滴ずつ堆積させた。その位置からの滴剤の展着を、慎重に観察し、記録した。試験サンプルが約60秒乃至120秒でゲル化した後、付着の付着強度を評価した。すべての3つの製剤を、同じ方法で適用した。結果を表15に概説する。
【0217】
【表23】
【0218】
3つの製剤はすべて満足な結果を提供したが、試験した3つの製剤のタイプのうち、製剤「C」が最も成功した。
【0219】
透明度を改善し、ポリマーの展着を制御するために、気泡の形成および滴剤の展着を評価した。
【0220】
気泡の形成を回避するために、混合手順を変更するか、より広い直径の混合管を使用するか、シリンジのサイズは変更するか、消泡剤を加するか、DMSOなどの有機溶剤を製剤に加えるか、またはフィルターを使用した。すべての選択肢を検査した後、5ミクロンのフィルターの使用が、最も有効且つ実際的な手順であると考えられた。気泡の形成を、注入プロセス中に5ミクロンのフィルターを使用することによって除去した。0.2ミクロンのフィルターはまた、フィルターを詰まらせるより高い粘度の物質を除いて、許容可能であった。
【0221】
幾つかの例では、より高い粘度の物質は、より低い粘度の物質ほど速く広がらない。それ故、幾つかの粘度増強剤を、表16に示されるような最初の製剤とともに製剤した。粘度に対する最初の結果を、表11に含む。光学的透明度のデータを、表8に含む。
【0222】
【表24】
【0223】
20のブタの眼を、研究に使用した。3ポートの経毛様体扁平部硝子体切除術の後(フェイコによる白内障摘出術後)、23ゲージの経結膜の技術を使用して、網膜裂孔または網膜円孔を作り出した。インビボでゲル化する眼科用前製剤を、空気/流体交換の後に23ゲージの眼内のカニューレを介して送達し、網膜の病変上に網膜用のパッチを作り出した。ポリマーが、網膜裂孔領域を覆い、損傷した網膜上のパッチを作り出したことが確認された。約1分後、液体は、固体になり、網膜の病変領域に付着した。パッチの抵抗性を評価するために、染色された液体(トリパンブルー)を、網膜下腔に注入した。光学的透明度は期待に沿うものであった。
【0224】
実施例15:生きた動物(ラビット)における網膜用のパッチ
この研究は、付着性、粘着性、厚さ、および透明度の点で、最良のポリマーを選択するように設計されており;これによって、送達システムと技術の設計を改善し;網膜用のパッチの付着を維持しながら、網膜用のパッチの効果を評価し;および網膜に対する炎症反応または他の毒性作用の点で、ポリマーの安全性を評価する。
【0225】
40のラビットを、研究で使用し、ここで40の眼は、処置にさらされ、一方で他眼は対照の眼として使用される。3ポートの毛様体扁平部硝子体切除術の後(フェイコによる白内障摘出術後)、網膜裂孔または網膜円孔を作り出す。20のラビットにおいて網膜病変上に網膜用のパッチを作り出すために、インビボでゲル化する眼科用前製剤を送達し、一方で、全体の硝子体腔を、他の20のラビットにおいてポリマーで充填する。
【0226】
眼を、スリットランプ評価、眼底の評価、および眼内圧検査によって、1、7、15、および30日目に眼内の炎症に対して評価する。眼を、(パッチと接触しているか又はしていない)網膜の解剖病理学的(anatomopathologic)評価、多局所ERGおよび+/−DNA分析によって、1、7、15、および30日目に網膜毒性に対して評価する。
【0227】
実施例16:局所麻酔を使用して網膜裂孔を処置する方法
この研究は、局所麻酔を使用して、網膜裂孔を処置するように設計されている。網膜円孔、網膜裂孔、または網膜剥離の部位を、既存の及び十分に確立された技術を使用して特定する。一旦、網膜円孔/網膜裂孔/網膜剥離位置が特定されると、キットを、実施例13に従って準備する。鋭い24乃至28ゲージの注射針を使用して、約10乃至500マイクロリットルのポリマーを、網膜円孔のまわり及びその上に注入し、全体の表面領域がポリマー混合物で完全に覆われていることを確かなものにする。反応混合物の粘度は、注入の部位を通りすぎる液体の過度の流れを可能にしないものである。安定位置で被験体を維持することによって、網膜円孔、網膜裂孔、または網膜剥離の部位の近くにポリマー注入を維持するために、あらゆる試みがなされる。別の領域での少量の流れであっても、それは、約14乃至17日で溶解して消える。網膜裂孔が覆われた後、ポリマーは、混合が始まった時間から3分未満で凝固する。ポリマーは、14乃至17日間その部位にとどまり、その後、溶解して消える。
【0228】
実施例17:手術後のヒドロゲル製剤による網膜剥離の処置のための臨床試験
研究の目的は、毛様体扁平部硝子体切除術後の患者において、光干渉断層撮影(OCT)を使用することによって、網膜の神経線維層の厚さに対する典型的なヒドロゲル製剤Cの影響を評価することである。研究は、裂孔原性網膜剥離および増殖性硝子体網膜症に対して、毛様体扁平部硝子体切除術によって外科的に処置される、本明細書で提供される製剤Cを用いる60人の患者を含む。すべての被験体は、眼科検診、OCT検診による網膜の神経線維層の厚さの測定、Octopus計算した視野計(自動化した静的周辺視野計測法)およびFDT視野測定の使用(両方とも手術前)、および術後期間中の検査のための管理訪問(on control visits)を完了するように抑圧される。術後検診によって提供されるすべての結果は、互いに比較される。研究は、網膜の神経線維層の厚さに対する典型的な製剤Cの効果に関するデータを提供すると期待される。研究はまた、眼内の製剤Cを用いる患者の経過観察における選択の方法として、OCTの可能性および利点を示すように計画される。
【0229】
【表25】
【0230】
研究タイプ:観察。研究設計:観察上のモデル:ケースコントロール。時間的展望:見込み有り。
【0231】
資格
研究に適格な年齢:18歳乃至80歳
【0232】
研究に適格な性別:両方
【0233】
健康なボランティアの参加:なし
サンプリング方法:確率サンプル基準
【0234】
包含基準:裂孔原性網膜剥離を有する患者
【0235】
除外基準:
先在の緑内障
過去の網膜手術
手術中の強膜バックルの配置
【0236】
さらなる研究の詳細:
主要評価項目:光干渉断層撮影によって測定された網膜の神経線維層の厚さの変化の証拠、時間枠:6ヶ月。
【0237】
光干渉断層撮影によって測定された網膜の神経線維層の厚さの変化は、典型的な製剤Cを有する患者における医療判断に新しい見識を提供し得る、さらなるパラメーターとなり得る。
【0238】
副次的評価項目:製剤C、時間枠に続発する上昇した眼内圧を有する患者における網膜の神経線維層の厚さの変化、時間枠:6ヶ月。
【0239】
製剤Cに続発する上昇した眼内圧を有する患者において網膜の神経線維層の厚さの変化を評価すること。
【0240】
【表26】
【0241】
実施例18:製剤Cを充填した眼を用いる光干渉断層撮影の臨床試験
この研究の目的は、製剤Cを充填した眼内で、スペクトルドメインの光干渉断層撮影(SD−OCT)によって黄斑円孔の状態を検出する条件を決定することである。黄斑領域は、術後1、3、7、および30日目に、黄斑円孔の閉塞を検出するために、黄斑円孔に対する硝子体手術を受けた患者において、SD−OCT(OCT−4000、Carl Zeiss Meditec)によってスキャンされる。
【0242】
26の眼は、特発性黄斑円孔(MH)で研究され、7の眼は、MH網膜剥離(MHRD)で研究され、および4の眼は、近視の牽引黄斑症を有するMHで研究される。これは前向き研究である。年齢、性別、病気にかかった眼の側性、Gass分類に基づくMHの段階、およびSnellenの最高矯正視力(BCVA)が記録される。軸方向長に対する網膜剥離の影響を回避するために、軸方向長は、手術前にMHを有する眼内で、および手術後にMHRDおよび近視の牽引黄斑症を有する眼内で測定される。後部の血管アーケード内の後極ブドウ膜腫の存在は、検眼鏡検査法および超音波検査によって決定される。
【0243】
【表27】
【0244】
研究タイプ:観察
【0245】
研究設計:観察上のモデル:コホート
【0246】
時間的展望:見込み有り。
【0247】
資格
研究に適格な年齢:35歳乃至85歳。研究に適格な性別;両方。健康なボランティアの参加:なしサンプリング方法:非確率サンプル。
【0248】
研究群。黄斑円孔、黄斑円孔の網膜剥離、近視の牽引黄斑症のための硝子体手術、および検査されたスペクトルドメインの光干渉断層撮影を手術前および手術後に受ける患者。
【0249】
基準
包含基準:黄斑円孔、黄斑円孔の網膜剥離、近視の牽引黄斑症を有する黄斑円孔のための硝子体手術、および検査されたスペクトルドメインの光干渉断層撮影を手術前および手術後に受ける患者。
【0250】
除外基準:他の疾患に対する硝子体手術を受けた患者;スペクトルドメインの光干渉断層撮影の術後検診を受けなかった患者。
【0251】
さらなる研究の詳細
主要評価項目:スペクトルドメインの光干渉断層撮影によって検出された黄斑円孔の閉塞、時間枠:手術前の状態から術後の30日目までの変化。製剤Cを用いる眼内での黄斑円孔の閉塞は、スペクトルドメインの光干渉断層撮影によって検出される。
【0252】
副次的評価項目:手術前および術後の視力。視力は、手術前および術後30日目に測定される。手術前および術後の視力が測定される。
【0253】
【表28】
【0254】
標準的な毛様体扁平部硝子体切除術を行う。内境界膜(ILM)を、すべての眼内でトリアムシノロンアセトニドまたはインドシアニングリーンによって可視にした後に取り除く。手術前の白内障を、軽度(核性硬化1+)または中程度から高度(核性硬化2+または3+)までとして類別し、眼内レンズの挿入による水晶体乳化を、グレード1より高いすべての白内障の眼の上で行う。製剤Cを、網膜に充填するために使用する。
【0255】
すべての手術を、球後麻酔下で行い、書面のインフォームドコンセントを、処置の目的および起こり得る合併症の十分な説明後にすべての患者から得る。全体の黄斑領域を、MHを逃さないように、静置する位置でSD−OCTによってスキャンする。5ラインのラスターモードを、術後1、3、7、および30日目に、高画質の画像を得るために使用する。SD−OCTによって、閉塞したMHまたは中心窩の剥離またはスキーシスの状態を検出する能力を評価し、OCT画像に影響を与えた手術前および術後の因子を調査する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10(A)】
図10(B)】
図10(C)】
図10(D)】
図11(A)】
図11(B)】
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図21C
図21D
図22
図23(A)】
図23(B)】
図24