特許第6206988号(P6206988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206988
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】フッ素化ベタインを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 303/40 20060101AFI20170925BHJP
   C07C 311/09 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   C07C303/40
   C07C311/09
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-523154(P2015-523154)
(86)(22)【出願日】2013年7月15日
(65)【公表番号】特表2015-522615(P2015-522615A)
(43)【公表日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】US2013050465
(87)【国際公開番号】WO2014014810
(87)【国際公開日】20140123
【審査請求日】2016年6月27日
(31)【優先権主張番号】13/554,659
(32)【優先日】2012年7月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ジェームズ ゲッティ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター マイケル マーフィー
(72)【発明者】
【氏名】ロマン セベラック
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ボリソヴィッチ シタロフ
(72)【発明者】
【氏名】ホリス トーマス ウォーレン
【審査官】 新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】 特表平08−505900(JP,A)
【文献】 特開昭56−005453(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102140338(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 303/40
C07C 311/09
A62D 1/00
C11D 1/92
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(式中、
fは、O、CH2、CHF、またはそれらの組み合わせの1つまたは複数で任意選択的に中断されたC2〜C10フルオロアルキルであり;
1は、C1〜C10アルキレンまたは化学結合であり;
2は、C1〜C6アルキレンであり;
3は、HまたはCH3であり;
4は、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC1〜C6アルキレンであり;
5は、HまたはCH3であり;
6は、HまたはCH3である)
のフッ素化スルホベタイン化合物を調製する方法であって、
水および少なくとも1種のアルキレングリコール、および任意選択的に少なくとも1種のアルキルカーボネートの存在下で、
式(II)
【化2】
(式中、Rf、R1、R2、R3、R5およびR6は、それぞれ式(I)におけるとおりに定義される)
のフッ素化スルホンアミドアミンを、式(III)
【化3】
(式中、R4は、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC1〜C6アルキレンであり;Xは、塩素であり;Mは、Na、K、Li、またはCaである)
の脂肪族クロロスルホン酸またはその塩と接触させる工程を含み;水と、アルキレングリコールおよび任意選択のアルキルカーボネートの合計量との比は、1:19〜1:3である方法。
【請求項2】
前記接触させる工程が、水、アルキレングリコール、アルキルカーボネート、および任意選択的に、38℃を超える引火点を有するアルコールの存在下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接触させる工程が、80℃〜120℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記接触させる工程が、水、ならびにヘキシレングリコールおよび1,2−プロピレングリコールである少なくとも2種のアルキレングリコールの存在下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
fが、C4〜C6フルオロアルキルであり、R1がC2アルキレンである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
水と、アルキレングリコールおよび任意選択のアルキルカーボネートの合計量との比が、1:10〜1:4である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
式(I)の化合物の溶液は、ろ過されて、金属塩化物が除去され、このようなろ過後に式(I)の化合物の3重量%未満の遊離塩化物含量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
グリコール、アルキルカーボネートまたはアルコールから選択された1種または複数の追加の有機溶媒が、ろ過前に式(I)の化合物の溶液に添加される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記式(I)の化合物の溶液が、加熱されて、ろ過前に水を部分的に蒸留除去する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
式(I)の化合物の溶液が、ろ過後、水および任意選択的に他の有機共溶媒で希釈されて、安定溶液をもたらす、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火組成物中の活性成分としての使用のための、減少した遊離塩化物および低可燃性を有するフッ素化ベタインを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベタイン基を組み込んでいるフルオロ界面活性剤は、消火組成物中の添加剤としての使用が知られている。ベタイン基は、このようなフルオロ界面活性剤が、消火組成物中の他の成分との静電相互作用を受けることを可能にし、したがって、性能を改善する。
【0003】
米国特許第4,383,929号明細書、Bertocchioらには、フッ素化スルホベタイン化合物およびそれらの製造方法が開示されている。これらのフッ素化スルホベタインは、a)クロロホルム中スルトンプロパンまたはb)水もしくはエタノール中クロロスルホン酸塩のいずれかによるフッ素化アミンのアルキル化によって調製される。Bertocchioらに開示された水性プロセスは、典型的には8〜16重量パーセント付近の高塩化物含量を有する。塩化物含量を減少させるために、Bertocchioらは、高可燃性無水エタノールに乾燥フッ素化スルホベタインを溶解させることを教示しており、次いで、金属塩化物塩は、フィルタにかけて取り除かれ、エタノールを蒸留し、そして固体フッ素化スルホベタインを水に再溶解させ得る。
【0004】
フッ素化スルホベタインを生成させるための公知の水性プロセスより、遊離塩化物が多い最終生成物が生成する。高塩化物は、金属貯蔵容器における腐食の促進上の問題を提起する。塩化物レベルを減少させるための現在の試みは、蒸留によりエタノールおよび水を除去して、乾燥フッ素化スルホベタインを得、それを無水エタノールに再溶解させ、金属塩化物をろ過し、続いて、エタノールを蒸留し、固体スルホベタインを単離することにより、エタノールおよび水を除去することの周辺に集中されている。これらの追加の工程は、最終塩化物レベルを減少させる一方で、面倒であり、大量のエタノール、ろ過装置、蒸留、および粉末状または固体の生成物の取り扱いを必要とする。
【0005】
代替として、塩化物含量を減少させるために、フッ素化スルホベタインは可燃性有機溶媒中で調製される。得られた組成物は、極めて可燃性であり、輸送前に引火点を上げるために蒸留によって可燃性有機溶媒を除去することを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高可燃性のエタノールを添加し、続いてエタノールを蒸留する必要なしに、塩化物の減少をもたらす方法は、製造コストを低減するだけでなく、必要とされるエタノールの使用も減少させる。高引火点の生成物の安定な均一溶液ももたらす方法は、最終的な消火泡処方が必要なる前にフッ素化スルホベタインの輸送を可能にする。低塩化物、高引火点のフッ素化スルホベタイン生成物の溶液を製造する方法を提供するというこれらの必要性を、本発明は満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
式(I)
【0008】
【化1】
【0009】
(Rfは、O、CH2、CHF、またはそれらの組み合わせの1つまたは複数で任意選択的に中断されたC2〜C10フルオロアルキルであり;
1は、C1〜C10アルキレンまたは化学結合であり;
2は、C1〜C6アルキレンであり;
3は、HまたはCH3であり;
4は、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC1〜C6アルキレンであり;
5は、HまたはCH3であり;
6は、HまたはCH3である)
のフッ素化スルホベタイン化合物を調製する方法であって、
水および少なくとも1種のアルキレングリコールおよび任意選択的に少なくとも1種のアルキルカーボネートの存在下で、
式(II)
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、Rf、R1、R2、R3、R5およびR6は、それぞれ式(I)におけるとおりに定義される)
のフッ素化スルホンアミドアミンを、式(III)
【0012】
【化3】
【0013】
(式中、R4は、少なくとも1個のヒドロシル基を有するC1〜C6アルキレンであり;Xは、塩素であり;Mは、Na、K、Li、またはCaである)
の脂肪族クロロスルホン酸またはその塩と接触させる工程を含み;水と、アルキレングリコールおよび任意選択のアルキルカーボネートの合計量との比は、約1:19〜約1:3である方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、式(I)
【0015】
【化4】
【0016】
(式中、
fは、O、CH2、CHF、またはそれらの組み合わせの1つまたは複数で任意選択的に中断されたC2〜C10フルオロアルキルであり;
1は、C1〜C10アルキレンまたは化学結合であり;
2は、C1〜C6アルキレンであり;
3は、HまたはCH3であり;
4は、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC1〜C6アルキレンであり;
5は、HまたはCH3であり;
6は、HまたはCH3である)
のフッ素化スルホベタイン化合物を調製する方法であって、
水および少なくとも1種のアルキレングリコールおよび任意選択的に少なくとも1種のアルキルカーボネートの存在下で、
式(II)
【0017】
【化5】
【0018】
(式中、Rf、R1、R2、R3、R5およびR6は、それぞれ式(I)におけるとおりに定義されている)
のフッ素化スルホンアミドアミンを式(III)
【0019】
【化6】
【0020】
(式中、R4は、少なくとも1個のヒドロシル基を有するC1〜C6アルキレンであり;Xは、塩素であり;Mは、Na、K、Li、またはCaである)
の脂肪族クロロスルホン酸またはその塩と接触させる工程を含み;水と、アルキレングリコールおよび任意選択のアルキルカーボネートの合計量との比は、約1:19〜約1:3である方法に関する。
【0021】
本発明の方法により生成された好ましいフッ素化スルホベタイン化合物は、RfがC2〜C6フルオロアルキルである、式(I)のものである。RfがC2〜C4であるものがより好ましい。
【0022】
別の実施形態において、本発明の方法により生成された好ましいフッ素化スルホベタイン化合物は、R1がC1〜C6アルキレンである、式(I)のものである。R1がC1〜C4アルキルであるものがより好ましい。R1がC2アルキレンであるものがより好ましい。
【0023】
別の好ましい実施形態は、本発明の方法により生成されたフッ素化スルホベタイン化合物が、RfがC4〜C6フルオロアルキルであり、R1がC2〜C4アルキレンである、式(I)のものである。また好ましい実施形態は、RfがC4〜C6フルオロアルキルであり、R1がC2アルキレンである。
【0024】
さらに好ましい実施形態は、RfがC2〜C4フルオロアルキルであり、R1がC2〜C4アルキレンである。RfがC2〜C4フルオロアルキルであり、R1がC2アルキレンであるのも、また好ましい。
【0025】
さらなる実施形態において、式(II)の化合物と式(III)の化合物とを接触させる工程は、水、少なくとも1種のアルキレングリコール、および任意選択的に低可燃性の少なくとも1種のアルコールの存在下で行われる。さらには、接触させる工程は、水、アルキレングリコール、アルキルカーボネート、および低可燃性のアルコールの存在下で行うことができる。
【0026】
本発明において有用な、式(II)
【0027】
【化7】
【0028】
(式中、Rf、R1、R、R3、R4、R5、およびR6は、上に定義されたとおりである)
のフッ素化スルホンアミドアミンは、市販されているか、または合成により製造することができる。例えば、式(II)のフッ素化スルホンアミドアミンを製造するために、フッ素化アルキルスルホニルクロリド、Rf1SO2Cl(ここで、RfおよびR1は、それぞれ式(II)に上記のとおり定義される)は、少なくとも1種の第2級アミン、例えば、2−(ジメチルアミノ)エチル(メチル)アミンを有するアルキルジアミンと反応させて、式(II)のフッ素化スルホンアミドアミンを製造する。フッ素化アルキルスルホニルクロリドは、フッ素化アルキルチオシアネートを塩素と反応させることによって調製される。フッ素化チオシアネートは、J.Fluorine Chemistry,42(1),59−68,(1989)に記載された手順に従ってフッ素化ヨウ化物から調製することができる。一例は、フルオロアルキルエチレンヨウ化物とチオ酢酸ナトリウムとを反応させ、続いて、加水分解することである。
【0029】
本発明の方法において、式(II)のフッ素化スルホンアミドアミンと式(III)の脂肪族クロロスルホン酸またはその塩とを接触させる工程は、水および1種または複数のアルキレングリコールを含む溶媒の存在下で行われる。アルキレングリコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチルジエチレングリコールなどのポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマーなどが挙げられる。一実施形態において、2種のアルキレングリコールの使用が好ましい。この実施形態において、2種のグリコール、例えば、ヘキシレングリコールとエチレングリコールとが用いられる。水とアルキレングリコールの比は、約1:19〜約1:3である。好ましい比は、約1:10〜約1:4である。より好ましい比は、約1:7〜約1:5である。フッ素化スルホンアミドアミンに対して存在するアルキレングリコールおよび水の量は、変わるが、但し、存在する水/アルキレングリコールの量が、フッ素化スルホベタインのすべてを溶解させるのに適していることを条件とする。
【0030】
本発明の方法において有用である、式(III)
【0031】
【化8】
【0032】
(式中、XはClであり、R4は、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC1〜C6アルキレンであり、Mは、Na、K、Li、またはCaである)
の脂肪族クロロスルホン酸またはその塩は、市販されている。例えば、R4は、二価ラジカル基またはヒドロキシアルキレン二価基であり得る。それぞれの例は、限定されないが、2−ヒドロキシプロピレン、1−ヒドロキシプロピレン、および1−ヒドロキシブチレンである。式(III)の化合物としては、限定されないが、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム塩、3−クロロ−1−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム塩、4−クロロ−1−ヒドロキシブタンスルホン酸ナトリウム塩、4−クロロ−3−ヒドロキシブタンスルホン酸ナトリウム塩、および4−クロロ−2−ヒドロキシブタンスルホン酸ナトリウム塩が挙げられる。
【0033】
本発明の方法は、約80〜約120℃、好ましくは約90〜約110℃の温度で行われる。反応は、フッ素化スルホンアミドアミンを結果として得られる式(I)のフッ素化スルホベタインに変換するのに十分適切な時間の任意の長さの間、好ましくは約20〜約40時間生じ得る。反応後、フッ素化スルホベタイン溶液はろ過されて、金属塩化物を除去し、フッ素化スルホベタインの重量当たり3%未満の減少した塩化物含量をもたらす。
【0034】
金属塩化物の除去をさらに向上させるために、フッ素化スルホベタイン溶液は、グリコールまたはアルキルカーボネート溶媒で任意選択的に希釈することができ、水の一部は、任意選択的にろ過前に蒸留除去される。アルキルカーボネート溶媒の例としては、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、およびエチレンカーボネートが挙げられる。水の一部の任意選択の蒸留は、大気圧または減圧下で行われる。しかしながら、この任意選択の希釈および蒸留工程は、本発明の方法を用いて低塩化物含量を得るために必要とされない。
【0035】
次いで、式(I)のフッ素化スルホベタイン、水、アルキレングリコール、任意選択的にアルキルカーボネートを含む他の共溶媒、および他の任意選択の低可燃性のアルコール溶媒を含むろ液は、水、または水および他の任意選択の共溶媒で希釈されて、溶液の全体量に対して約20重量%の固体〜約40重量%の固体の固体濃度を有する安定溶液を与えることができる。任意選択のアルコール溶媒としては、限定されないが、1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、および1−ヘキサノールが挙げられる。好ましいアルキレングリコール、アルキルカーボネート、およびアルコール溶媒は、約38℃を超える、より好ましくは約69℃を超える引火点を有するものである。本明細書で使用される場合、「低可燃性」という用語は、38℃を超える引火点を有することを意味し、「高可燃性」という用語は、38℃未満の引火点を有することを意味する。
【0036】
本発明によって製造された式(I)のフッ素化スルホンベタインは、代替の従来技術の方法により製造されたフッ素化スルホベタインと比較して減少した塩化物含量を有する。金属塩化物は、フッ素化アミンとクロロスルホン酸塩とのアルキル化反応の不要な副生成物である。本発明の方法により、フッ素化スルホベタインの重量当たり3.0重量%未満の遊離塩化物を有するフッ素化スルホベタインが製造される。好ましくは、フッ素化スルホベタインは、2重量%未満の遊離塩化物を有する。より好ましくは、フッ素化スルホベタインは、1.5重量%未満の遊離塩化物を有する。フッ素化スルホベタインを製造するための公知の手順は、典型的には水中であり、エタノールを含有し得る。塩化物含量は、3重量%を超え、6重量%と同じ程度であり得る。
【0037】
本発明の方法によって製造されたフッ素化スルホベタインは、60℃を超える、最も好ましくは93℃を超える引火点を有する。このフッ素化スルホベタインは、水溶液中、または水と低可燃性を有する他の共溶媒との溶液中で安定である。従来技術の方法で作られたフッ素化スルホベタインの水溶液は、周囲温度で2相に分離する傾向がある。本発明の方法によって作られたものは、時間にわたって安定であり、出荷および貯蔵され得る均一水溶液をもたらす。
【0038】
本発明の方法によって調製されたフッ素化スルホベタインは、水溶液の表面張力を低下させ、有用な起泡剤であり、したがって、多目的消火泡濃縮物中の添加剤として有用である。特に、消火泡濃縮物は、炭化水素がガソリン、油、ディーゼル油、燃料油、ヘプタン、ヘキサンもしくはシクロヘキサンである火災などの炭化水素火災を抑制すること;または極性液体がアルコール(例えば、メタノール、エタノールおよびイソプロパノール)、ケトン(例えば、ジメチルケトンおよびメチルイソブチルケトン)、エステル(例えば、酢酸n−ブチル)およびエーテル(例えば、メチルtert−ブチルエーテル)である火災などの極性液体火災を抑制することが意図される。フルオロベタイン化合物は、紙、木材、布、ゴム、およびある種のプラスチックなどの灰残渣を残す燃焼材料によって助長された火災であるクラスA火災を抑制することが意図される多目的の消火泡濃縮物または組成物中の添加剤としても有用である。本発明の方法により製造されたフッ素化スルホベタインは、低塩化物含量、低可燃性、高引火点を有し、他の従来技術の方法により必要とされるような追加の精製工程を必要とすることなく溶液中で安定である。
【0039】
材料および試験方法
以下の材料および試験方法を、本明細書で実施例に用いた。
【0040】
材料
N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−8,8,8,7,7,6,6,5,5,4,4,3,3−トリデカフルオロオクタンスルホンアミドは、E.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,DEから入手した。
【0041】
他の試薬は、Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,WIから市販されていた。
【0042】
試験方法1−表面張力測定
表面張力は、装置と一緒の使用説明書に従ってKruss Tensiometer,K11 MK2 Version2.903を用いて測定した。ウィルヘルミープレート(Wilhelmy Plate)法を用いた。既知の外周の垂直プレートを天秤に取り付けて、濡れによる力を測定した。
【0043】
試験方法2−消火時間
消火時間は、以下の手順に従って測定した。150mLのアセトンを内径115mmの円形金属容器に注いだ。さらに、水道水で6重量パーセントに希釈した消火泡濃縮物からなる水溶液を調製した。この溶液は起泡溶液であった。端部にパドルが取り付けられている、モータと金属ロッドからなる回転式攪拌機は、ロッドが回転しているとき、機械的効果をもたらし;回転速度は、1〜2,800rpmまで調整可能である。ロッドを底部に導入し、出口オリフィスは上部に位置した。計量ポンプにより、入口オリフィスを介して、水溶液は円筒容器の底部に移送され;回転パドルと接触すると泡が生じ、この泡は、形成されるにつれて、出口オリフィスを介して排出された。ポンプの処理量およびロッドの回転速度は、泡が1分当たり約40gに等しい定常泡処理量で連続的に生じるように調整した。泡処理量が安定化したとき、アセトンに点火した。アセトンが90秒間燃焼した後、円周上に位置した単一点を介して泡を金属容器に注ぎ入れた。アセトンが完全に消火したとき、消火時間を記録した。極性溶媒上で最良の性能を有する泡濃縮物は、消火時間が可能な限り短いものであった。
【0044】
試験方法3−再着火時間
再着火時間は、以下の手順に従って測定した。このパラメータは、消火時間が120秒未満である場合に、評価することができる。この場合、泡は、炎シートが消火した後でもアセトンの上に注いだ。ここで説明する事例のすべてにおいて、泡は、120秒間注いだ。泡を注ぐことを止めて60秒後、再着火容器(高さ22mmまでアセトンを充填した、直径55mmおよび高さ40mmの金属容器)の内容物に点火した。再着火容器を上に記載した金属容器の中央部に置き、前記容器内に存在する燃料の表面を泡で覆って保った。火炎が、初期に泡で覆われた表面の25%を破壊し、金属容器の表面上に持続的に広がった終わりの時間を記録した。この時間が長ければ長いほど、泡が炎の復活を防止する能力が良好であることを示した。
【0045】
消火処方
試験方法2および試験方法3について、以下の処方を用いた。
【0046】
【表1】
【0047】
この溶液を水道水中3%に希釈し、燃焼液体の表面で泡として適用した。上記処方の成分は、示した会社から市販されていた。
【実施例】
【0048】
実施例1
攪拌棒、熱電対、加熱マントル、窒素ブランケット、およびコンデンサを備えた三つ口丸底フラスコに、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−8,8,8,7,7,6,6,5,5,4,4,3,3−トリデカフルオロオクタンスルホンアミド(35.1g、0.068mol)、3−クロロ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩水和物(14.4g)、ヘキシレングリコール(27.75g)、エチレングリコール(12.28g)、および脱イオン水(4.08g)を添加し、この混合物を103℃で24時間加熱した。この反応混合物を白色固体(塩化ナトリウム)からろ過し、追加の水56.4gで希釈して、式(I)のフッ素化スルホベタインを溶解させた。固体パーセントは、28.71%固体と測定された。塩化物含量は、pH=8.29において0.64%(フッ素化スルホベタインの重量当たり2.2%)であると測定された。引火点を測定し、93℃を超えていた。この生成物を溶液中界面活性剤の固形分に基づく重量で脱イオン水に添加し、試験方法1に従って表面張力を試験した。標準偏差を測定し、1mN/m未満であり、温度は約23℃であった。脱イオン水の標準表面張力は、72mN/mである。結果は、表1にある。
【0049】
【表2】
【0050】
実施例2
攪拌棒、熱電対、加熱マントル、窒素ブランケット、およびコンデンサを備えた、250mLの三つ口丸底フラスコ中ヘキシレングリコール(23.56g)、プロピレングリコール(18.14g)、及び水(3.68g)に、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−8,8,8,7,7,6,6,5,5,4,4,3,3−トリデカフルオロオクタンスルホンアミド(29.00g、0.057mol)を100℃で溶解させた。このフラスコに、3−クロロ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩水和物(11.55g)を添加し、この混合物を100℃で21時間加熱した。この反応混合物を真空下に100℃でろ過し、少量の白色固体(塩化ナトリウム)を除去し、追加の水(50.65g)で希釈した。式(I)のフッ素化スルホベタインである最終組成物を攪拌して、均一溶液を得た。固体パーセントは、27.51%と測定された。塩化物含量は、0.51%(フルオロ界面活性剤の重量当たり1.85%)であると測定された。消火泡は、前に記載した処方を用いて調製し、消火時間および再着火時間は、試験方法2および試験方法3を用いて測定した。得られたデータは、表3にある。
【0051】
実施例3
攪拌棒、熱電対、加熱マントル、窒素ブランケット、およびコンデンサを備えた三つ口丸底フラスコに、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−8,8,8,7,7,6,6,5,5,4,4,3,3−トリデカフルオロオクタンスルホンアミド(30g、0.059mol)、3−クロロ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩水和物(11.75g)、ヘキシレングリコール(19.8g)、1,2−ブタンジオール(15.0g)、および脱イオン水(3.74g)を添加し、この混合物を103℃で21時間加熱した。この高温反応混合物を、存在する白色固体(塩化ナトリウム)からデカントして、水で希釈した。式(I)のフッ素化スルホベタインである最終組成物を攪拌して、均一溶液を得た。固体パーセントは、22.6%と測定された。塩化物含量は、0.48%(フッ素化スルホベタインの重量当たり2.1%)であると測定された。
【0052】
実施例4
攪拌棒、熱電対、加熱マントル、窒素ブランケット、およびコンデンサを備えた三つ口丸底フラスコに、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−8,8,8,7,7,6,6,5,5,4,4,3,3−トリデカフルオロオクタンスルホンアミド(35g、0.068mol)、3−クロロ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩水和物(14.11g)、ヘキシレングリコール(14.35g)、1,2−プロピレングリコール(10.33g)、および脱イオン水(3.57g)を添加し、この混合物を103℃で21時間加熱した。追加のヘキシレングリコール(1.75g)、およびプロピレンカーボネート(14.0g)を添加し、この反応混合物を白色固体(塩化ナトリウム)からろ過し、追加の水46gで希釈した。式(I)のフッ素化スルホベタインである最終組成物を攪拌して、均一溶液を得た。固体パーセントは、33.23%と測定された。塩化物含量は、0.426%(フッ素化スルホベタインの重量当たり1.3%)であると測定された。得られたフッ素化ベタイン溶液の引火点は、99℃を超えていた。
【0053】
実施例5
攪拌棒、熱電対、加熱マントル、窒素ブランケット、およびコンデンサを備えた三つ口丸底フラスコに、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−8,8,8,7,7,6,6,5,5,4,4,3,3−トリデカフルオロオクタンスルホンアミド(45g、0.088mol)、3−クロロ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩水和物(18.15g)、ヘキシレングリコール(22.5g)、1,2−プロピレングリコール(14.85g)、および脱イオン水(10.28g)を添加し、この混合物を103℃で21時間加熱した。この反応混合物を、窒素流とともに115〜130℃に加熱して、水8.0gを除去した。この高温反応混合物を白色固体(塩化ナトリウム)から80〜90℃でろ過し、水で希釈した。式(I)のフッ素化スルホベタインである最終組成物を攪拌して、溶解させた。固体パーセントは、43.44%と測定された。塩化物含量は、0.45%(フッ素化スルホベタインの重量当たり1.0%)であると測定された。この混合物を、エチレンカーボネートおよび水(比1:1.3)でさらに希釈して、29.4%固体を含有する均一溶液を得た。
【0054】
実施例6
攪拌棒、熱電対、加熱マントル、窒素ブランケット、およびコンデンサを備えた三つ口丸底フラスコに、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−8,8,8,7,7,6,6,5,5,4,4,3,3−トリデカフルオロオクタンスルホンアミド(45.0g、0.088mol)、3−クロロ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩水和物(18.15g)、ヘキシレングリコール(14.86g)、1,2−プロピレングリコール(14.86g)、および脱イオン水(4.44g)を添加し、この混合物を103℃で24時間加熱した。この反応混合物を、ヘキシレングリコール(13.5g)、4−メチル−2−ペンタノール(5.86g)でさらに希釈し、白色固体(塩化ナトリウム)から90℃でろ過し、水42gで希釈して、式(I)のフッ素化スルホベタインを含有する均一溶液を得た。固体パーセントは、36.5%と測定された。塩化物含量は、0.53%(フッ素化スルホベタインの重量当たり1.5%)であると測定された。この混合物を、水、4−メチル−2−ペンタノール、ヘキシレングリコール、および1,2−プロピレングリコール(比21:6:3:4)で30%固体にさらに希釈した。得られたフッ素化ベタイン溶液の引火点は、72℃であった。
【0055】
比較例A
機械式攪拌機、熱電対、加熱マントル、窒素ブランケット、およびコンデンサを備えた三つ口丸底フラスコに、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−8,8,8,7,7,6,6,5,5,4,4,3,3−トリデカフルオロオクタンスルホンアミド(378g、0.738mol)、3−クロロ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩水和物(153g)、エタノール(347g)、および脱イオン水(201g)を添加し、この混合物を82℃で24時間加熱した。この反応混合物を、白色固体(塩化ナトリウム)からろ過し、追加の水860gで希釈して、公称27.1%固体を含有する、式(I)のスルホベタインの溶液を得た。この溶液の塩化物含量は、1.33%(フッ素化スルホベタインの重量当たり4.9%)であると測定された。この溶液の引火点は、35℃であると決定された。この生成物を、溶液中界面活性剤の固形分に基づく重量により脱イオン水に添加し、試験方法1に従って表面張力を試験した。標準偏差は、1mN/m未満であり、温度は約23℃であった。脱イオン水の標準表面張力は、72mN/mであった。結果は表2にある。消火泡は、試験方法とともに前に記載したとおりの処方を用いて調製した。消火時間および再着火時間は、試験方法2および試験方法3に従って測定した。結果は、表3にある。
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
表3は、本発明の方法により調製した化合物(実施例2)を含有する消火泡が、従来技術の方法を用いて調製した比較例Aに対して優れた再着火時間を有したことを実証するデータを与える。